説明

電力制御方法、電力制御装置および画像形成装置

【課題】高力率を維持しながら高調波を抑制して電力を供給する。
【解決手段】第1負荷および第2負荷に所定の交流電力を供給するための電力制御方法であって、交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、各周期内の1つの半波において、第1負荷と第2負荷とに供給する交流電力の位相角の範囲がオーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないようにし、かつ、各周期内の1つの半波以外の半波において、第1負荷と第2負荷とに供給する交流電力の位相角の範囲がオーバーラップするようにし、第1負荷および第2負荷に、各周期内において平均的に所定の交流電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御方法、電力制御装置および画像形成装置に関する。本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、およびこれらの複合機などの電子写真方式の画像形成装置などの電力制御に利用される。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、用紙上に形成された未定着トナー像を熱で溶融して定着させるために、その熱源としてヒーターを備えている。ヒーターの温度を制御するために、ヒーターに供給する電力が種々の方法によって制御される。そのような電力制御方法として、位相制御、波数制御、またはこれらを組み合わせた制御が従来から用いられている。
【0003】
図14は位相制御について説明するための電圧の波形を示す図であり、図15は波数制御について説明するための電圧の波形を示す図である。
【0004】
位相制御は、負荷に対して、交流電源からの交流電力を半サイクル(半波)内の任意の位相角からゼロクロス点まで電力を供給し、この任意の位相角を変化させることで供給電力を可変にする制御方法である。例えば、負荷であるヒーターには図14に示す波形の電圧が加えられることになる。図14において、半サイクルが1制御周期である。図14に示すように、1制御周期あたりの電圧の供給量が時間の経過とともに大きくなっていくと、ヒーターに供給される電力も徐々に増加していく。
【0005】
位相制御によって、このようなスルーアップ制御が行われる。また、これとは逆に、ヒーターの通電終期において供給電力を時間の経過とともに徐々に減少させるスルーダウン制御も行われる。
【0006】
このような制御によって、ヒーターへの突入電流による一時的な電源電圧の降下を抑制し、蛍光灯のちらつきなどを低減することができる。
【0007】
また、波数制御は、交流電力の半サイクルを1つの単位として、半サイクルごとにONまたはOFFすることで、負荷に対する供給電力を可変にする制御方法である。例えば、負荷であるヒーターには図15に示す波形の電圧が加えられることになる。図15において、4サイクルが1制御周期である。図15に示す例では、1制御周期あたりの電圧供給量は50%である。
【0008】
しかし、位相制御および波数制御では次のような問題点があった。すなわち、位相制御では、交流の半サイクル内でヒーターをオンまたはオフするため、オンする際に生じる急激な電流変動により高調波電流歪やスイッチングノイズが発生するという問題があった。また、波数制御では、位相制御と比較して交流電源の電圧変動が大きくなる可能性があり、同一電源環境下の蛍光灯などにちらつき(フリッカー)が発生しやすいという問題があった。
【0009】
また、昇圧チョッパなどを用いた電力制御装置もあるが、コストが高くなるという問題がある。
【0010】
他方、高調波が発生を抑制するために、商用電源の3全波以上を1周期として、1周期の平均電力デューティ比が所望の電力のデューティ比となるように、かつ1周期の中に1半波あたりの電力デューティ比が3つ以上存在するように制御することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−002724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上の特許文献1に開示された制御方法による場合には、力率が悪いという問題がある。そのため、大きな電力を得ようとすると大きな電流が流れてしまうこととなり、ブレーカーやインレットなどの定格電流を越えてしまう可能性がある。
【0013】
電力制御においては特に、力率をできるだけ高く維持しつつ、高調波を抑制できることが望ましい。
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされた発明であり、その目的は、力率をできるだけ高く維持しつつ、高調波を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る電力制御方法は、位相制御を行って第1負荷および第2負荷にそれぞれ所定の交流電力を供給するための電力制御方法であって、前記交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、前記各周期内の1つの半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないようにし、かつ、前記各周期内の前記1つの半波以外の半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするようにし、前記第1負荷および前記第2負荷に、前記各周期内において平均的に前記所定の交流電力を供給する。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、位相制御によりそれぞれ所定の交流電力が供給される第1負荷および第2負荷を備えた画像形成装置であって、前記第1負荷への交流電力の供給を制御する第1スイッチング手段と、前記第2負荷への交流電力の供給を制御する第2スイッチング手段と、前記第1スイッチング手段および前記第2スイッチング手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、前記各周期内の1つの半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないように、かつ、前記各周期内の前記1つの半波以外の半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするように、制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、力率をできるだけ高く維持しつつ高調波を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略の内部構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の加熱ローラーの内部を示す透視図である。
【図3】画像形成装置の電力制御に関係する部分についてのブロック図である。
【図4】画像形成装置の電力制御装置の構成を示す図である。
【図5】制御データの例を示す図である。
【図6】制御データの他の例を示す図である。
【図7】第1の実施例における各部の波形を示す図である。
【図8】第1の実施例における各部の値を示す図である。
【図9】第2の実施例における各部の波形を示す図である。
【図10】第2の実施例における各部の値を示す図である。
【図11】第3の実施例における各部の波形を示す図である。
【図12】第3の実施例における各部の値を示す図である。
【図13】スルーアップ制御の例を示す図である。
【図14】位相制御を説明するための図である。
【図15】波数制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明に基づく電力制御方法を採用した画像形成装置1の一実施形態について説明する。実施形態では、画像形成装置1の定着装置に設けられた加熱ローラーを加熱するヒーターに対し、本発明に基づく電力制御方法が適用される。
【0020】
実施形態で説明する電力制御方法では、負荷である2つのヒーターに対して、電源からの交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期(制御サイクル)として位相制御を行う。
【0021】
また、1つの制御サイクルに含まれる1つの半波については、2つの負荷に対する電力の供給がオーバーラップすることなくかつ全位相角にわたって欠落することのないように制御し、他の半波については、2つの負荷に対する電力の供給がオーバーラップするように制御する。なお、オーバーラップとは、お互いの一部が重なることである。
【0022】
複数個の半波からなるブロックを1つの制御サイクルとして位相制御を行う制御方法を「ブロック制御」ということがある。また、2つの負荷に対する電力の供給がオーバーラップするように制御する制御方法を「オーバーラップ制御」ということがある。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構成の例を示す図であり、図2は本実施形態に係る画像形成装置1の加熱ローラー51の内部を示す透視図である。
【0024】
図1に示すように、画像形成装置1はタンデム型のプリントエンジンを内蔵した電子写真方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、一般に複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼ばれる装置であって、コピー、ネットワークプリンティング(PCプリント)、ファックス、およびスキャナなどの機能を集約した装置である。
【0025】
画像形成装置1は、画像形成部20および給紙部60などを備える。給紙部60は、各サイズの用紙YSを収納するための給紙カセット61、および、給紙カセット61に収納された用紙YSを1枚ずつ取り出して搬送路HRへと送るローラー群62〜66を備える。給紙カセット61から搬送路HRへと送られた用紙YSは、矢印M1方向に進む。
【0026】
ローラー群62〜66は、具体的には、ピックアップローラー62、給紙ローラー63、分離ローラー64、搬送ローラー対65、およびレジストローラー対66である。ピックアップローラー62は、給紙カセット61から用紙YSを取り出す。給紙ローラー63は、取り出された用紙YSを搬送路HRへと送る。分離ローラー64は、給紙ローラー63に対して用紙YSを挟んで対向する位置に配置されている。分離ローラー64は、複数枚重なったままの用紙YSが搬送路HRに送られることがないよう、用紙YSを一枚ずつに分離する。搬送ローラー対65は、一枚ずつ送られてくる用紙YSを搬送路HRに沿って送る。レジストローラー対66は、用紙YSを一時待機させた後、所定のタイミングで中間転写部40に供給する。
【0027】
画像形成部20は、電子写真方式によって用紙上に画像を形成するものであって、イメージングユニットU、中間転写部40、および定着部50を備えている。
【0028】
イメージングユニットUは、Y(イエロー)、M(マジェンダ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色にそれぞれ対応するイメージングユニットUY、UM、UC、UKから構成されている。各イメージングユニットUY、UM、UC、UKは、この順で中間転写ベルト41に沿って配置されている。各イメージングユニットUY、UM、UC、UKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電チャージャー22、感光体ドラム21の表面を露光して静電潜像を形成する露光部23、静電潜像を各色のトナーで現像してトナー像を形成する現像部24、トナー像を中間転写ベルト41に転写(一次転写)するための転写チャージャー25、感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーナー26、および、図示しない転写ローラーなどを備えている。イメージングユニットUにより、矢印M2方向に走行している中間転写ベルト41上に各色のトナー像(トナー画像)が、順次、転写位置が合うように重なって転写される。
【0029】
中間転写部40には、トナー像が転写される中間転写ベルト41と、複数のローラー42、43、44と、二次転写ローラー45とが設けられている。中間転写ベルト41は、ローラー42〜44により支持されていて、これらが回転駆動することにより矢印M2方向に走行する。二次転写ローラー45は、中間転写ベルト41を介してローラー44に対向するように配置されている。二次転写ローラー45は、中間転写ベルト41に対して接離可能であり、二次転写ローラー45が中間転写ベルト41に圧接されることで二次転写ローラー45とローラー44との間に転写ニップ部が形成される。
【0030】
用紙YSは中間転写ベルト41の走行と同期して搬送され、転写ニップ部においてトナー像が形成された中間転写ベルト41と接する。二次転写ローラー45にバイアス電圧が加えられることで、中間転写ベルト41上に形成されたトナー像が用紙YS上に転写(二次転写)される。二次転写によってトナー像が転写された用紙YSは定着部50に搬送される。
【0031】
定着部50には、内部に熱源を有する加熱ローラー51、加熱ローラー51と用紙YSを挟んで対向する位置に配置されて加熱ローラー51との間にニップ部を形成する加圧ローラー52、および用紙搬送ガイド53が設けられる。トナー像が形成された用紙YSは定着部50に搬送される。用紙YSは、用紙搬送ガイド53に案内されて搬送路HR上を搬送されて、加熱ローラー51および加圧ローラー52により形成されたニップル部において加熱される。加熱によりトナーが溶融し、トナー像が用紙YSに定着する。
【0032】
加熱ローラー51および加圧ローラー52によってトナー像が定着された用紙YSは、搬送路HR上を搬送されてトレイ70上に排出される。
【0033】
図2に示すように、加熱ローラー51の内部には、熱源である第1ヒーター81および第2ヒーター82が配置されている。第1ヒーター81および第2ヒーター82には、例えばハロゲンヒーターが用いられる。
【0034】
第1ヒーター81は、加熱ローラー51の中央部付近に配置され、加熱ローラー51の軸方向に沿って伸びる棒状の形状であり、加熱ローラー51の中央部付近を加熱する。第2ヒーター82は、加熱ローラー51の両端部付近にそれぞれ配置された2つのヒーター部82a、82bを有し、これら2つのヒーター部82a、82bは互いに離間して設けられている。ヒーター部82a、82bは、例えば、リード線で電気的に直列接続される。さらに、第1ヒーター81および第2ヒーター82のそれぞれには、電力の供給のためのード線L1、L2が接続されている。第1ヒーター81および第2ヒーター82に供給する電力を制御することにより、加熱ローラー51の温度が制御される。
【0035】
また、第1ヒーター81および第2ヒーター82のそれぞれには、これらの温度を測定するための第1温度センサー91および第2温度センサー92が設けられている。第1温度センサー91および第2温度センサー92によって検知された温度検知信号St1、St2は、制御部33に送られる。これら第1温度センサー91および第2温度センサー92として、例えば熱電対または半導体センサーなどが用いられる。
【0036】
次に、画像形成装置1における電力制御について説明する。
【0037】
図3には画像形成装置1の電力制御に関係する部分について説明するためのブロック図が、図4には画像形成装置1の電力制御装置30の構成が、それぞれ示されている。
【0038】
図3に示すように、画像形成装置1には、電力制御装置30および制御部33が設けられる。二次側負荷34は、画像形成装置1のうちの直流電力が供給される要素である。
【0039】
つまり、二次側負荷34は、例えば、イメージングユニットU、中間転写部40、定着部50、給紙部60などにおける各ローラーや各ファンを駆動するためのモーターなどである。制御部33の電子回路(電子部品)を動作させるためにも直流電力が供給されることから、これらの電子回路も二次側負荷34に含まれる。また、感光体ドラム21への静電潜像の形成、中間転写ベルト41へのトナー像の転写および用紙YSへのトナー像の転写などの各工程においても直流電力が用いられる。したがって、これらの各工程による負荷も二次側負荷34に含まれることがある。
【0040】
制御部33および電力制御装置30は、位相制御を行って第1負荷(第1ヒーター81)および第2負荷(第2ヒーター82)に、それぞれ所定の交流電力を供給する。
【0041】
すなわち、交流電源35から供給される交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、各周期内の1つの半波において、第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないようにし、かつ、各周期内の1つの半波以外の半波において、第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするようにし、第1負荷および第2負荷に、各周期内において平均的に所定の交流電力(必要電力)を供給する。
【0042】
そして、第1負荷に交流電力を供給する始点は半波における位相角0とし、第2負荷に交流電力を供給する終点は当該半波における位相角πとする。
【0043】
また、例えば、交流電力における連続する3個の半波を1つの周期とし、各周期内の1つの半波以外の2つの半波のうちの1つについて、所定の交流電力を供給するように、第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とをオーバーラップさせる。
【0044】
交流電力における連続する複数個の半波からなる1つの周期を「制御サイクル」と記載することがある。電力制御の間において、「制御サイクル」に含まれる半波の個数は固定されている場合もあり、所定の交流電力に応じて可変とする場合もある。
【0045】
また、「制御サイクル」には、例えば2個または3個の半波が含まれることがあり、4個以上の半波が含まれることがある。
【0046】
また、1つの周期に含まれる各半波に対応する期間を「区間」と記載し、時間的に先のものから順に、「第1区間」「第2区間」「第3区間」などと記載する。
【0047】
画像形成装置1における電力制御については以下に詳しく説明する。
【0048】
制御部33は、加熱ローラー51の表面が所定の温度となるように、温度検知信号St1、St2に基づいて、第1ヒーター81および第2ヒーター82に供給する電力を制御する。
【0049】
交流電源35は、商用電源からの交流電力を画像形成装置1に供給する。電力制御装置30は、交流電源35から交流電力を供給され、供給された交流電力の一部を加熱ローラー51の第1ヒーター81および第2ヒーター82に供給する。また、交流電力の一部は、電力制御装置30により直流電力に変換されて二次側負荷34および制御部33に供給される。
【0050】
二次側負荷34には、各ローラーを回転駆動させるために用いられるモーター、クラッチなどの負荷、ディスプレイを表示させるための負荷などが含まれる。
【0051】
電力制御装置30は、レギュレーター10、第1スイッチング部31、第2スイッチング部32、およびゼロクロス検出回路36を備える。
【0052】
図4に示すように、レギュレーター10は、コンデンサインプット形の整流回路18、トランス13、ダイオード14、第2平滑コンデンサ15、二次側出力回路16、および整流スイッチング回路17を備える。
【0053】
整流回路18は、4本のダイオードにより構成されたブリッジダイオード11および第1平滑コンデンサ12を備える。整流回路18は、交流電源35から入力された交流電力を整流する。交流電力はブリッジダイオード11により全波整流され、第1平滑コンデンサ12により平滑化される。
【0054】
整流回路18からの出力は、整流回路18の後段に接続された回路により、所定の一定の電圧となるように調整される。整流回路18の後段には整流スイッチング回路17を介してトランス13が接続される。二次側出力回路16からの制御信号Sdによって整流スイッチング回路17が所定の間隔でオン/オフを繰り返すことにより、整流回路18の直流出力(脈流出力)は高周波の交流波形となる。整流スイッチング回路17は、例えばバイポーラトランジスターまたはMOSFETなどを用いて構成することができる。
【0055】
高周波の交流波形は、トランス13により変圧され、ダイオード14により整流され、第2平滑コンデンサ15により平滑化されることで、直流電力に変換される。レギュレーター10によって所定の電圧を生成するよう、二次側出力回路16は整流スイッチング回路17の位相制御を行い、フィードバック制御を行う。電力制御装置30により生成された直流電力は二次側負荷34に供給される。
【0056】
ゼロクロス検出回路36は、交流電源35の交流電圧Viのゼロクロスポイントを検出し、検出したゼロクロスポイントをゼロクロス検知信号Szとして制御部33に送る。
【0057】
第1スイッチング部31および第2スイッチング部32は、それぞれ、制御部33から送られてくるヒーター制御信号Sh1、Sh2に応じてオンまたはオフする。これにより、第1スイッチング部31および第2スイッチング部32は、それぞれ、第1ヒーター81および第2ヒーター82に供給する交流電力の位相制御を行う。第1ヒーター81および第2ヒーター82には、それぞれ、位相制御されたヒーター電流Ih1、Ih2が流れ込む。なお、ヒーター電流Ih1とIh2の合計が後で説明する総合電流Iaである。
【0058】
第1スイッチング部31および第2スイッチング部32は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )などの自己消弧能力のある素子により構成される。これにより、任意の位相タイミングでオンしまたはオフすることができ、後述のような波形のヒーター電流Ih1、Ih2を生成することができる。
【0059】
制御部33は、例えばCPU、ROM、RAM、インターフェース回路、その他の周辺回路またはハードウエア回路などを用いて構成され、画像形成装置1の各部の動作を制御する。画像形成装置1の各部は、制御部33からの指令を受けて動作し、制御部33は各部の動作状態を各部からの信号などにより把握し管理する。
【0060】
制御部33は、温度検知信号St1、St2に基づいて、加熱ローラー51を所定の温度に維持するために第1ヒーター81および第2ヒーター82に供給すべき電力(必要電力)Pn1、Pn2を求める。そして、求めた必要電力Pn1、Pn2が第1ヒーター81または第2ヒーター82に供給されるように、制御部33は、制御データTD1、TD2に基づいて、ヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成する。生成されたヒーター制御信号Sh1、Sh2は、電力制御装置30に出力される。
【0061】
なお、必要電力Pn1、Pn2は、通常は互いに異なるが、互いに同じとなるように制御を行ってもよい。
【0062】
ヒーター制御信号Sh1、Sh2は、第1スイッチング部31および第2スイッチング部32におけるスイッチング素子のオン、オフのタイミング(位相角)、つまり導通角の始点および終点を指定することの可能な信号である。
【0063】
したがって、ヒーター制御信号Sh1、Sh2は、例えば、スイッチング素子の導通角に対応したオンオフ信号であってよい。つまり、スイッチング素子をオンさせる間においてオン(H)となり、オフさせる間においてオフ(L)となる2値信号とすることが可能である。また、スイッチング素子の導通角の始点および終点で立ち上がるパルス信号であってよい。また、第1スイッチング部31に対しては導通角の終点で立ち上がるパルス信号、第2スイッチング部32に対しては導通角の始点で立ち上がるパルス信号であってもよい。または、このような信号を生成することのできる信号、またはこのような信号に対応する信号であってもよい。
【0064】
制御データTD1,2は、第1ヒーター81および第2ヒーター82について、必要電力Pn1、Pn2に対応したヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成するに必要なデータを記録したものである。このような制御データTD1,2は、演算または実験などにより予め取得しておく。制御データTD1,2は、制御部33のメモリ領域または他の適当なメモリ領域に格納されている。
【0065】
図5(A)(B)に、制御データTD1,2の例が示されている。
【0066】
図5において、制御データTD1,2は、種々の必要電力Pn1、Pn2について、制御サイクルの各区間における第1ヒーター81または第2ヒーター82のオン期間のデューティ比を示す。
【0067】
図5によると、例えば、第1ヒーター81は、第1区間において、デューティ比が「Am11」となるように、つまり半波の期間において、位相角0でオンした後、オンが「Am11」で示される期間続いた後である位相角φ1でオフとなる。また、第2ヒーター82は、第1区間において、デューティ比が「Am21」となるように、つまり半波の期間において、位相角φ2でオンし、位相角πでオフとなる。
【0068】
本実施形態においては、第1区間について、第1負荷および第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲がオーバーラップすることなく、かつ全位相角にわたって欠落することのないようにする。
【0069】
つまり、第1区間において、第1負荷および第2負荷に同時に電力が供給されることがなく、かつ、第1区間の全期間(位相角0からπまで)において第1ヒーター81または第2ヒーター82のいずれか一方には必ず電力を供給する。
【0070】
したがって、第1区間では、デューティ比「Am11」と「Am21」との合計は100パーセントとなる。第1区間においては、いずれかの負荷に連続して電力が供給され、しかも負荷の大きな変動を防げるので、力率が良好でありかつ高調波も少ない。
【0071】
なお、デューティ比「Am11」と「Am21」とは互いに異なってもよいが、同じとしてもよい。デューティ比「Am11」と「Am21」とを同じとした場合、つまり両方とも50パーセントととした場合には、制御が容易となる。
【0072】
また、第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。定格電力は互いに同じである場合は、制御が容易となり、力率および高調波も改善される。
【0073】
制御データTD1,2の各数値などは、例えば次のようにして決定される。
【0074】
まず、第1区間におけるデューティ比「Am11」「Am21」が、合計が100パーセントとなるように決定される。例えば、上に述べたように、いずれも50パーセントに決定される。
【0075】
第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力、交流電源35から供給される交流電力の電圧、およびデューティ比「Am11」「Am21」に基づいて、第1ヒーター81および第2ヒーター82にそれぞれ供給される電力(供給電力)Pr11、Pr21が求められる。
【0076】
なお、1つの区間における供給電力Prは、その区間において供給される電力の平均値である。つまり、区間における供給電力Prは、区間における電力波形による面積を区間内において均した高さに等しい。
【0077】
次に、第2区間におけるデューティ比「Am12」「Am22」が、それらによる供給電力Pr12、Pr22がそれぞれ必要電力Pn1、Pn2と等しくなるように求められる。第2区間においては、2つの負荷に供給する交流電力の位相角の範囲がオーバーラップするので、デューティ比「Am12」「Am22」の合計が100を越える。
【0078】
そして、第3区間におけるデューティ比「Am13」「Am23」が、それらによる供給電力Pr13、Pr23が次の(1)式を満たすように求められる。
【0079】
Pn1=(Pr11+Pr12+Pr13)/3 Pn2=(Pr21+Pr22+Pr23)/3 ……(1)
つまり、第1区間から第3区間までの全ての供給電力Prの平均値が必要電力Pnに等しくなるように、第3区間における供給電力Pr13、Pr23が算出される。第3区間においても、2つの負荷に供給する交流電力の位相角の範囲がオーバーラップするので、デューティ比「Am13」「Am23」の合計が100を越え、かつオーバーラップ分は第2区間よりも多くなる。
【0080】
なお、各負荷への供給電力Prは、各負荷の定格電力、交流電源35の電圧、およびデューティ比に基づいて決まるので、供給電力Pr12、Pr22、Pr13、Pr23が求められれば、これからデューティ比を算出することができる。
【0081】
制御部33は、第1ヒーター81および第2ヒーター82への必要電力Pn1、Pn2に対応して、制御データTD1,2を参照し、デューティ比を読み出す。読み出したデューティ比に基づいて、各ヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成する。
【0082】
なお、制御データTD1,2を1つのテーブルとしてまとめることも可能である。また、第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力が互いに同じであり、必要電力Pn1、Pn2が互いに同じである場合に、第1ヒーター81および第2ヒーター82に対して共通の制御データTDとすることが可能である。
【0083】
なお、実際の制御において、必要電力Pnに対応した制御データTDがない場合には、その必要電力Pnに近い複数の制御データTDに基づいて、例えば補間演算などを行って、ヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成すればよい。
【0084】
次に、他の例の制御データTD3,4について説明する。
【0085】
図6(A)には、第1ヒーター81および第2ヒーター82として、いずれも定格が700Wのものを用いた場合で、3個の半波によって1つの制御サイクルを構成するようにし、必要電力Pn1、Pn2がいずれも505Wである場合についてのデューティ比が示されている。
【0086】
図6(A)において、各区間におけるデューティ比は異なっており、第1ヒーター81および第2ヒーター82については同じデューティ比となっている。第1区間ではデューティ比がいずれも50パーセントであり、第2区間、第3区間ではいずれもそれぞれ58パーセント、68パーセントである。
【0087】
このようなデューティ比によって位相制御を行うことにより、1つの制御サイクルにおいて平均的に505Wの電力が供給される。
【0088】
つまり、1つの制御サイクルにおいて、第1区間、第2区間、および第3区間において供給された電力の合計値を区間の個数である3で除算した値が505Wとなる。
【0089】
図6(B)には、第1ヒーター81および第2ヒーター82として、いずれも格700Wのものを用いた場合で、4個の半波によって1つの制御サイクルを構成するようにし、必要電力Pn1、Pn2がいずれも575Wである場合についてのデューティ比が示されている。
【0090】
図6(B)に示すデューティ比によって位相制御を行うことにより、1つの制御サイクルにおいて平均的に575Wの電力が供給される。
【0091】
つまり、1つの制御サイクルにおいて、第1区間、第2区間、第3区間、および第4区間において供給された電力の合計値を区間の個数である4で除算した値が575Wとなる。
【0092】
次に、画像形成装置1の電力制御の実施例について、タイミングチャートを参照しながら説明する。
〔第1の実施例〕
図7は第1の実施例における各部の波形を示す図であり、図8は第1の実施例における各部の値を示す図である。なお、図8に示す値はシミュレーションにより求めたが、これらは実測値とほぼ一致している。第2、第3の実施例においても同様である。
【0093】
第1の実施例では、第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力が共に700Wである。第1ヒーター81および第2ヒーター82に対する必要電力Pn1、Pn2は、いずれも505Wである。第1の実施例では、図6(A)で示した制御データTD3が用いられる。
【0094】
第1の実施例では、第1区間から第3区間までが1つの制御サイクルである。第3区間の後は次の制御サイクルの第1区間が続く。第1区間は時間0〜時間t1bであり、第2区間は時間t1b〜時間t1eであり、第3区間は時間t1e〜時間t1hである。
【0095】
各区間において、第1ヒーター81には位相角0で電力の供給が開始され、第2ヒーター82には位相角πで電力の供給が終わる。
【0096】
第1区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比はそれぞれ50%であり、それぞれのヒーターに409Wの電力が供給される。
【0097】
第2区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比がそれぞれ58%であり、オーバーラップするデューティ比(重複デューティ比)は16%である。これにより、それぞれのヒーターに504Wの電力が供給される。
【0098】
第1ヒーター81および第2ヒーター82に流れるヒーター電流Ih1、Ih2の合計である総合電流Iaは、区間の中央部である時間t1c〜時間t1dにおいて突出している。
【0099】
第3区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比がそれぞれ68%であり、重複デューティ比は36%である。これにより、それぞれのヒーターに602Wの電力が供給される。第3区間において、総合電流Iaは、第2区間の場合よりも広い時間t1f〜時間t1gにおいて突出している。
【0100】
第1〜第3区間における供給電力Prは、いずれのヒーターについても、
Pr=(409+504+602)/3
=505〔W〕
である。このように、平均的な供給電力Prを、必要電力Pn1、Pnに一致させることができる。
【0101】
制御サイクルである第1〜第3区間を連続して繰り返していくことにより、第1ヒーター81および第2ヒーター82への供給電力をそれぞれ平均的に505Wとすることができる。第2区間のヒーターに供給された電力は504Wであり、上記平均値である505Wに極めて近い。
【0102】
また、図8に示すように、第1〜第3区間の総合電流Iaの平均が10.49Aであり、17次、19次、21次、29次高調波の平均は、それぞれ0.435mA、0.427mA、0.337mA、0.208mAである。
【0103】
第1区間では高調波が0であり、高調波が0である第1区間が制御サイクルの中に存在することにより、当該制御サイクルの全体において高調波が低減されることとなる。その結果、制御サイクルの全体における平均の高調波が抑制される。また、力率も良好であって高く維持される。
【0104】
なお、上のようにデューティ比を決めた第1区間、第2区間、第3区間について、この順とは異なる順となるように制御してもよい。例えば、第3区間、第2区間、第2区間の順、第2区間、第1区間、第3区間の順などである。
【0105】
また、連続する2つの制御サイクルにおいて、2つの目の制御サイクルでは区間の順を逆にし、第1区間、第2区間、第3区間、第3区間、第2区間、第1区間の順となるように制御してもよい。または、第2区間、第3区間、第1区間、第2区間、第3区間、第1区間の順となるように制御してもよい。このようにすると電力の変動が少なくなるという効果がある。この場合には、6個の半波で1つの制御サイクルを構成したことにもなる。このように、1つの制御サイクルの中に第1区間に相当する半波が2個以上含まれていてもよい。
〔第2の実施例〕
図9は第2の実施例における各部の波形を示す図であり、図10は第2の実施例における各部の値を示す図である。
【0106】
第2の実施例では、第1ヒーター81の定格電力が800Wであり、第2ヒーター82の定格電力が600Wである。第1ヒーター81に対する必要電力Pn1は537W、第2ヒーター82に対する必要電力Pn2は454Wである。
【0107】
第1区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比は、49%と51%であり、重複デューティ比は0%である。2つのヒーターに、451Wまたは365Wの電力が供給される。
【0108】
第2区間では、重複デューティ比は20%である。これにより、2つのヒーターに、536Wまたは455Wの電力が供給される。
【0109】
第3区間では、重複デューティ比は34%である。これにより、2つのヒーターに、625Wまたは543Wの電力が供給される。
【0110】
第1〜第3区間における第1ヒーター81についの供給電力Pr1は、
Pr1=(451+536+625)/3
=537〔W〕
である。
【0111】
第1〜第3区間における第2ヒーター82についの供給電力Pr2は、
Pr2=(365+455+543)/3
=454〔W〕
である。
【0112】
このように、第1ヒーター81および第2ヒーター82への平均的な供給電力Pr1,2を、必要電力Pn1、Pnにほぼ一致させることができる。
【0113】
また、図10に示すように、第1〜第3区間の総合電流Iaの平均が10.56Aであり、15次、17次、25次、35次高調波の平均は、それぞれ0.602mA、0.360mA、0.316mA、0.182mAである。
【0114】
第1区間においては、15次、17次、25次、35次高調波のいずれもが低い。したがって、第1区間が制御サイクルの中に存在することにより、当該制御サイクルの全体において高調波が低減されることとなる。その結果、制御サイクルの全体における平均の高調波が抑制される。
【0115】
このように、第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力が同じでない場合、および第1区間において第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比が同じでない場合でも、高調波を抑制できることが分かる。
〔第3の実施例〕
図11は第3の実施例における各部の波形を示す図であり、図12は第3の実施例における各部の値を示す図である。
【0116】
第3の実施例では、第1ヒーター81および第2ヒーター82の定格電力が共に700Wである。第1ヒーター81および第2ヒーター82に対する必要電力Pn1、Pn2は、いずれも575Wである。第3の実施例では、図6(B)で示した制御データTD4が用いられる。
【0117】
第3の実施例では、第1区間から第4区間までが1つの制御サイクルである。第4区間の後は次の制御サイクルの第1区間が続く。
【0118】
第1区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比はそれぞれ50%であり、それぞれのヒーターに409Wの電力が供給される。
【0119】
第2区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比がそれぞれ65%であり、重複デューティ比は30%である。これにより、それぞれのヒーターに575Wの電力が供給される。
【0120】
第3区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比がそれぞれ72%であり、重複デューティ比は44%である。これにより、それぞれのヒーターに631Wの電力が供給される。
【0121】
第4区間では、第1ヒーター81および第2ヒーター82のデューティ比がそれぞれ85%であり、重複デューティ比は70%である。これにより、それぞれのヒーターに688Wの電力が供給される。
【0122】
第1〜第4区間における供給電力Prは、いずれのヒーターについても、
Pr=(409W+575W+631+688W)/4
=575.75〔W〕
制御サイクルである第1〜第4区間を連続して繰り返していくことにより、第1ヒーター81および第2ヒーター82への供給電力を必要電力Pn1、Pnにほぼ一致させることができる。
【0123】
また、図12に示すように、第1〜第4区間の総合電流Iaの平均が11.8Aであり、17次、23次、31次、37次高調波の平均は、それぞれ0.309mA、0.149mA、0.157mA、0.112mAである。
【0124】
なお、第2区間の供給電力は575Wであり、必要電力Pnである575Wに近い。制御サイクルにおける平均的な高調波の値は、第2区間の高調波の値よりも低い。また、第3区間および第4区間の高調波の値は、第2区間の高調波の値よりも低い。
【0125】
第1区間では高調波が0であり、第3区間および第4区間においても高調波が低くなっているので、当該制御サイクルの全体において高調波が低減されることとなる。その結果、制御サイクルの全体における平均の高調波が抑制される。
【0126】
このように、いずれの実施例においても、力率をできるだけ高く維持しつつ高調波を抑制することができる。
【0127】
上に述べた第1の実施例において、第1〜3区間の3個の区間によって1つの制御サイクルを構成したが、第2区間を削除し、第1区間および第3区間の2個の区間により制御サイクルを構成してもよい。これによっても、必要電力Pnである505Wを供給することができる。
【0128】
上に述べた第1の実施例において、第1区間以外の区間において、位相角0よりも大きい位相角で電力の供給を開始し、または位相角πよりも小さい位相角で電力の供給を終了するようにしてもよい。
【0129】
なお、第1ヒーター81および第2ヒーター82に対してスルーアップ制御を行うことがあるが、そのような場合においても、上に述べた電力制御方法を適用することができる。
【0130】
図13に、2つのヒーターに対してスルーアップ制御を行う例が示されている。
【0131】
図13において、交流電力の半波に相当する各区間において、第1ヒーターおよび第2ヒーターの2つのヒーターに供給する電力が徐々に上昇している。
【0132】
電圧が印加された間において、第1ヒーターおよび第2ヒーターにはそれぞれ電流が流れる。その合成電流が図13の下段に示されている。
【0133】
図13においては、4個の半波によってスルーアップ制御が完了しているが、実際には50〜100個程度の半波によってスルーアップ制御が完了する。したがって、それらの半波を2個または3個ずつ区画して制御サイクルを構成し、各制御サイクルに対して必要電力Pnを供給するように制御する。または、スルーアップ制御における各半波について、それぞれ2個または3個の半波に引き延ばして1つの制御サイクルとし、各制御サイクルに対して必要電力Pnを供給するように制御する。
【0134】
このように、スルーアップ制御に、上に述べた電力制御方法を適用することにより、高力率を維持しながら高調波を抑制することが可能である。
【0135】
上に述べた実施形態において、制御部33では、制御データTDを用いてヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成したが、制御データTDに代えて、またはこれとともに、メモリに格納した演算式などを用いてヒーター制御信号Sh1、Sh2を生成してもよい。
【0136】
上に述べた実施形態においては、第1負荷および第2負荷の2つの負荷に対してブロック制御およびオーバーラップ制御を行ったが、3つ以上の負荷に対してもそのような制御を適用することが可能である。
【0137】
また、上に述べた説明では、第2ヒーター82を2つのヒーター部82a、82bにより構成したが、1つまたは3つ以上のヒーター部により構成してもよい。このように、ヒーターを複数のヒーター部から構成することにより、精密な温度制御を行うことができるとともに、加熱ローラー51内におけるヒーターの配置の自由度が高まって設計が容易になる。
【0138】
上に述べた実施形態では、画像形成装置1において、第1ヒーター81および第2ヒーター82は、ハロゲンヒーターを用いた構成を例示した。しかし、ハロゲンヒーター以外に、カーボンヒーター、電熱線、セラミックヒーターまたは誘導加熱(IH:Induction Heating )コイルなどを用いて、第1ヒーター81および第2ヒーター82を構成してもよい。
【0139】
上に述べた実施形態において、電力制御装置30、制御部33、制御データTD、または画像形成装置1の全体または各部の構成、構造、形状、寸法、個数、材質、回路構成、処理内容、処理順序、処理タイミングなどは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 画像形成装置
30 電力制御装置
31 第1スイッチング部
32 第2スイッチング部
33 制御部
35 交流電源
36 ゼロクロス検出回路
51 加熱ローラー
81 第1ヒーター(第1負荷)
82 第2ヒーター(第2負荷)
82a、82b ヒーター部(負荷)
91 第1温度センサー
92 第2温度センサー
Pr 供給電力
Pn 必要電力(所定の交流電力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相制御を行って第1負荷および第2負荷にそれぞれ所定の交流電力を供給するための電力制御方法であって、
前記交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、
前記各周期内の1つの半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないようにし、かつ、
前記各周期内の前記1つの半波以外の半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするようにし、
前記第1負荷および前記第2負荷に、前記各周期内において平均的に前記所定の交流電力を供給する、
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
前記第1負荷に交流電力を供給する始点は半波における位相角0とし、前記第2負荷に交流電力を供給する終点は当該半波における位相角πとする、
請求項1記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記交流電力における連続する3個の半波を1つの周期とし、
前記各周期内の前記1つの半波以外の2つの半波のうちの1つについて、前記所定の交流電力を供給するように、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とをオーバーラップさせる、
請求項2記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記各周期における半波の個数を、前記所定の交流電力に応じて可変とする、
請求項2記載の電力制御方法。
【請求項5】
位相制御を行って第1負荷および第2負荷にそれぞれ所定の交流電力を供給する電力制御装置であって、
前記第1負荷への交流電力の供給を制御する第1スイッチング手段と、
前記第2負荷への交流電力の供給を制御する第2スイッチング手段と、
前記第1スイッチング手段および前記第2スイッチング手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、
前記各周期内の1つの半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないように、かつ、
前記各周期内の前記1つの半波以外の半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするように、制御する、
ことを特徴とする電力制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1負荷に交流電力を供給する始点は半波における位相角0とし、前記第2負荷に交流電力を供給する終点は当該半波における位相角πとするように制御する、
請求項5記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記交流電力における連続する3個の半波を1つの周期とし、
前記各周期内の前記1つの半波以外の2つの半波のうちの1つについて、前記所定の交流電力を供給するように、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とをオーバーラップさせる、
請求項6記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記各周期における半波の個数を、前記所定の交流電力に応じて可変とする、
請求項6記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記第1負荷および前記第2負荷の内の少なくともいずれか1つが複数の負荷によって構成されている、
請求項5ないし8のいずれかに記載の電力制御装置。
【請求項10】
位相制御によりそれぞれ所定の交流電力が供給される第1負荷および第2負荷を備えた画像形成装置であって、
前記第1負荷への交流電力の供給を制御する第1スイッチング手段と、
前記第2負荷への交流電力の供給を制御する第2スイッチング手段と、
前記第1スイッチング手段および前記第2スイッチング手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記交流電力における連続する複数個の半波を1つの周期とし、
前記各周期内の1つの半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とが、オーバーラップすることなくかつ当該1つの半波の全位相角にわたって欠落することのないように、かつ、
前記各周期内の前記1つの半波以外の半波において、前記第1負荷に供給する交流電力の位相角の範囲と前記第2負荷に供給する交流電力の位相角の範囲とがオーバーラップするように、制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記第1負荷および前記第2負荷は、定着装置に設けられたヒーターである、
請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第1負荷および前記第2負荷の内の少なくともいずれか1つが複数の負荷によって構成されている、
請求項10または11記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−97027(P2013−97027A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236945(P2011−236945)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】