説明

電力増幅器および無線機

【課題】電源電圧の上昇に伴う余分な消費電流の増加を抑え、効率を改善した電力増幅器及びそれを備えた無線機を構成する。
【解決手段】電力増幅器101は、エミッタ接地された電力増幅用トランジスタQ1、この電力増幅用トランジスタQ1のベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路31、電力増幅用トランジスタQ1のコレクタと電源電圧入力端Vccとの間に接続されたインダクタL5、およびベース電圧調整回路41を備えている。電源電圧(Vcc)が上昇すれば、ベース電圧制御用トランジスタQaのベース電流(Iba)が増大し、コレクタ電流(Ica)が増大する。これにより、抵抗R3による電圧降下が大きくなって、A点の電位が下がり、電力増幅用トランジスタQ1のベース電位(Vb1)が下がる。そのため電力増幅用トランジスタQ1の消費電流(Icc)が抑制される方向に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波信号を電力増幅する電力増幅器およびそれを備えた無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラトランジスタを用いて高周波信号を増幅すると共に、該トランジスタの出力信号を検波し、この検波信号のレベルに応じてトランジスタのベースバイアス電圧を制御する電力増幅器が特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、特許文献1の従来例として挙げられている、高周波信号の電力増幅器の基本回路図を図1に示す。
図1において、電力増幅器20は、トランジスタ2のエミッタEが接地され、コレクタCと電源電圧入力端CCinとの間にチョークコイル6が接続され、トランジスタ2のベースBとバイアス端子Binとの間に抵抗21および抵抗3が接続されている。RFin端子と抵抗3との間にはコンデンサ4が接続されている。RFout端子とトランジスタ2のコレクタとの間にはコンデンサ5が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−166101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示される電力増幅器では、トランジスタ2は、コレクタCに印加される電源電圧(Vcc)の上昇に伴って、消費電流であるコレクタ電流Icがアーリー効果により上昇する。そのため、電力増幅器の電源電圧(Vcc)が必要な電圧以上に上昇すると、余分な消費電流の増加が起こるという問題があった。
【0006】
本発明は、電源電圧の上昇に伴う余分な消費電流の増加を抑え、効率を改善した電力増幅器及びそれを備えた無線機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本願の請求項1の電力増幅器は、
電力増幅用トランジスタ(Q1)、この電力増幅用トランジスタのベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路を備え、前記電力増幅用トランジスタのコレクタが電源電圧入力端に直接または第1のインピーダンス回路を介して接続され、
前記ベースバイアス回路は、電源電圧の上昇に伴って前記電力増幅用トランジスタ(Q1)のベース電圧を減少させるように制御するベース電圧調整回路を備えたことを特徴とする。
【0008】
(2)本願の請求項2の電力増幅器は、ベースバイアス回路は、前記制御電圧入力端と基準電位端(接地)との間に接続された分圧回路を備え、
前記ベース電圧調整回路は、前記分圧回路に第2のインピーダンス回路を介してそのコレクタが接続されるベース電圧制御用トランジスタ(Qa)と、このベース電圧制御用トランジスタ(Qa)のベースと電源電圧入力端との間に接続された第3のインピーダンス回路とを備えたことを特徴とする。
【0009】
(3)本願の請求項3の電力増幅器は、ベースバイアス回路は、前記電源電圧入力端と前記電力増幅用トランジスタのベースとの間に接続されたベース電流供給用トランジスタ(Tr2)を備え、
前記ベース電圧調整回路は、前記ベース電流供給用トランジスタのベースに第2のインピーダンス回路を介してそのコレクタが接続されるベース電圧制御用トランジスタ(Qa)と、このベース電圧制御用トランジスタ(Qa)のベースと電源電圧入力端との間に接続された第3のインピーダンス回路とを備えたことを特徴とする。
【0010】
(4)本願の請求項4の電力増幅器は、前記ベース電圧制御用トランジスタ(Qa)と基準電位端(接地)との間に、前記制御電圧入力端への制御電圧の非入力時に遮断状態になるリーク電流抑制トランジスタ(Qb)が接続されたことを特徴とする。
【0011】
(5)本願の請求項5の電力増幅器は、前記第3のインピーダンス回路が、前記電源電圧入力端から前記ベース電圧制御用トランジスタの方向に順方向に接続された定電圧降下素子を含むことを特徴とする。
【0012】
(6)本願の請求項6の無線機は、送信信号を電力増幅する電力増幅器と、この電力増幅器によって電力増幅された信号を送信するアンテナとを備えた無線機であって、
前記電力増幅器は、電力増幅用トランジスタ(Q1)、この電力増幅用トランジスタのベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路を備え、前記電力増幅用トランジスタのコレクタが電源電圧入力端に接続され、
前記ベースバイアス回路は、電源電圧の上昇に伴って前記電力増幅用トランジスタ(Q1)のベース電圧を減少させるように制御するベース電圧調整回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源電圧の上昇に伴う余分な消費電流の増加が抑えられるので、広い電源電圧範囲で高効率な電力増幅器及び無線機が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は特許文献1の従来例として挙げられている、高周波信号の電力増幅器の基本回路図である。
【図2】図2は第1の実施形態に係る電力増幅器101の回路図である。
【図3】図3はRF信号を入力せずに電源電圧(Vcc)を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果である。
【図4】図4は、RFoutの出力電力を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果であり、図4(A)は第1の実施形態の電力増幅器101の特性、図4(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。
【図5】図5はRFoutの出力電力Poutを掃引したときの利得(Gain)の計算結果であり、図5(A)は第1の実施形態の電力増幅器101の特性、図5(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。
【図6】図6は第2の実施形態に係る電力増幅器102の回路図である。
【図7】図7はRF信号を入力せずに電源電圧(Vcc)を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果である。
【図8】図8は、RFoutの出力電力を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果であり、図8(A)は第2の実施形態の電力増幅器102の特性、図8(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。
【図9】図9はRFoutの出力電力Poutを掃引したときの利得(Gain)の計算結果であり、図9(A)は第2の実施形態の電力増幅器102の特性、図9(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。
【図10】図10は第3の実施形態に係る電力増幅器103の回路図である。
【図11】図11(A)はRF入力電力に対する消費電流(Icc)の関係を示す図である。図11(B)はRF入力電力に対するAM-PM歪の関係を示す図である。
【図12】図12は第4の実施形態に係る無線機201の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
図2は第1の実施形態に係る電力増幅器101の回路図である。この電力増幅器101は例えば5.5GHz帯で動作するように設計されている。電力増幅器101は、エミッタ接地された電力増幅用トランジスタQ1、この電力増幅用トランジスタQ1のベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路31、電力増幅用トランジスタQ1のコレクタと電源電圧入力端Vccとの間に接続されたインダクタL5、およびベース電圧調整回路41を備えている。前記インダクタL5はRF信号を遮断するチョークコイルとして機能している。このインダクタL5は特許請求の範囲に記載の「第1のインピーダンス回路」に相当する。
【0016】
なお、電力増幅器101が電子機器に組み込まれるモジュールである場合などでは、モジュールの電源電圧入力端に電力増幅用トランジスタQ1のコレクタが直接接続されることもある。この場合は、モジュールの電源電圧入力端と組み込み先電子機器の電源ラインとの間に、配線ライン等によって第1のインピーダンス回路が設けられることになる。
【0017】
電力増幅用トランジスタQ1のコレクタとベースとの間には、抵抗R5およびコンデンサC4の直列回路による負帰還回路が設けられている。この負帰還回路によって発振が防止されて安定化される。また、高利得を得るため、高周波信号入力端RFinと電力増幅用トランジスタQ1のベースとの間に、インダクタL6,L7およびコンデンサC1による整合回路が設けられている。同様に、高周波信号出力端RFoutと電力増幅用トランジスタQ1のコレクタとの間に、インダクタL8,L9およびコンデンサC3,C5による整合回路が設けられている。
【0018】
ベースバイアス回路31は制御電圧入力端Vctlと基準電位端(接地)との間に接続された抵抗分圧回路R3,R4およびこの抵抗分圧回路の出力電圧を電力増幅用トランジスタQ1のベースへ供給する抵抗R2を備えている。
【0019】
ベース電圧調整回路41は、ベース電圧制御用トランジスタQaとダイオードD1,D2を備えている。ベース電圧制御用トランジスタQaのエミッタ端子は接地されている。ベース電圧制御用トランジスタQaのコレクタは抵抗R7を介して、ベースバイアス回路31の「A」点に接続されている。ベース電圧制御用トランジスタQaのベースはダイオードD1,D2と抵抗R6を介して電源電圧入力端Vccに接続されている。ダイオードD1,D2はそれぞれトランジスタのベースコレクタ間が直接接続された回路で構成されている。前記抵抗R7は、特許請求の範囲に記載の「第2のインピーダンス回路」に相当する。また、前記ダイオードD1,D2および抵抗R6は、特許請求の範囲に記載の「第3のインピーダンス回路」に相当する。さらに、前記ダイオードD1,D2は、特許請求の範囲に記載の「定電圧降下素子」に相当する。
【0020】
図2に示した電力増幅器101は次に述べるように作用する。
電源電圧(Vcc)が上昇すれば、先ずベース電圧制御用トランジスタQaのベース電流(Iba)が増加する。
このベース電流Ibaの増加に応じてベース電圧制御用トランジスタQaのコレクタ電流(Ica)が増加する。
これにより、抵抗R3による電圧降下が大きくなって、A点の電位が下がる。
したがって電力増幅用トランジスタQ1のベース電位(Vb1)が下がる(ベース電圧の絶対値が減少する)。
そのため電力増幅用トランジスタQ1の消費電流(Icc)が減少する。
このように、電源電圧(Vcc)が上昇したときに、電力増幅用トランジスタQ1の消費電流(Icc)が抑制される方向に作用する。
【0021】
図3はRF信号を入力せずに電源電圧(Vcc)を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果である。ここで曲線Aは第1の実施形態に係る電力増幅器101の特性、曲線Bは、図2に示したベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性をそれぞれ示している。
【0022】
ベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器では電源電圧(Vcc)が大きくなるにつれて消費電流(Icc)が大きくなるが、第1の実施形態に係る電力増幅器101では「Vcc=3.3V」付近にある変化点を境にして、電源電圧(Vcc)が大きくなるにつれて消費電流(Icc)が減少する。なお、この変化点は、ベース電圧調整回路41のダイオード(D1,D2)の段数により調整できる。この例では、電力増幅器の使用電源電圧範囲「Vcc=3〜5V」に最適化されている。
【0023】
図4は、RFoutの出力電力を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果であり、図4(A)は第1の実施形態の電力増幅器101の特性、図4(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。また、図5はRFoutの出力電力Poutを掃引したときの利得(Gain)の計算結果であり、図5(A)は第1の実施形態の電力増幅器101の特性、図5(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。図5(A)(B)の図中に必要最低利得および必要最低出力電力の位置(Spec)を記している。
【0024】
ベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器では、図4(B)に表れているように、消費電流(Icc)は電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)の方が大きくなっている。また、5(B)に表れているように、電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)には、電源電圧が低い時(Vcc=3Vの時)と比較して、高い出力電力まで余分に高利得が保持されている。
【0025】
これに対し、第1の実施形態の電力増幅器101では、図4(A)に表れているように、消費電流(Icc)は電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)の方が小さくなっている。また、図5(A)に表れているように、電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)でも、電源電圧が低い時(Vcc=3Vの時)との変動が少なく、高い出力電力まで余分に高利得が保持されていない。
【0026】
このことから、第1の実施形態では、RF特性を劣化させることなく電源電圧上昇時の消費電流を低減し、効率を改善できていることが確認できる。また、電源電圧が高い状態での消費電流が抑制されるので、回路の信頼性も向上する。
【0027】
《第2の実施形態》
図6は第2の実施形態に係る電力増幅器102の回路図である。電力増幅器102は、エミッタ接地された電力増幅用トランジスタQ1、この電力増幅用トランジスタQ1のベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路32、電力増幅用トランジスタQ1のコレクタと電源電圧入力端Vccとの間に接続されたインダクタL5、およびベース電圧調整回路41を備えている。ベースバイアス回路32の構成以外は第1の実施形態で図2に示した電力増幅器101と同じである。
【0028】
ベースバイアス回路32は制御電圧入力端Vctlと基準電位端(接地)との間に接続された抵抗R3およびダイオードD3,D4の直列回路を備えている。また、ベース電流供給用トランジスタQ2および抵抗R2を備え、ベース電流供給用トランジスタQ2のベースがダイオードD3と抵抗R3との接続点(「A」点)に接続され、コレクタが電源電圧入力端Vccに接続され、エミッタが抵抗R2の一方端に接続されている。抵抗R2は他方端は電力増幅用トランジスタQ1のベースに接続されている。
【0029】
図6に示した電力増幅器102は次に述べるように作用する。
電源電圧(Vcc)が上昇すれば、先ずベース電圧制御用トランジスタQaのベース電流(Iba)が増加する。
このベース電流Ibaの増加に応じてベース電圧制御用トランジスタQaのコレクタ電流(Ica)が増加する。
これにより、抵抗R3による電圧降下が大きくなって、A点の電位が下がる。
そのため、ベース電流供給用トランジスタQ2のエミッタ電位(B点の電位)が低下する。
【0030】
したがって電力増幅用トランジスタQ1のベース電位(Vb1)が下がる。
そのため電力増幅用トランジスタQ1の消費電流(Icc)が減少する。
このように、電源電圧(Vcc)が上昇したときに、電力増幅用トランジスタQ1の消費電流(Icc)が抑制される方向に作用する。
【0031】
図7はRF信号を入力せずに電源電圧(Vcc)を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果である。ここで曲線Aは第2の実施形態に係る電力増幅器102の特性、曲線Bは、図6に示したベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性をそれぞれ示している。
【0032】
ベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器では電源電圧(Vcc)が大きくなるにつれて消費電流(Icc)が大きくなるが、第2の実施形態に係る電力増幅器101では「Vcc=3.4V」付近にある変化点を境にして、電源電圧(Vcc)が大きくなるにつれて消費電流(Icc)が小さくなっていく。なお、この変化点は、ベース電圧調整回路41のダイオード(D1,D2)の段数により調整できる。
【0033】
図8は、RFoutの出力電力を掃引したときの消費電流(Icc)の計算結果であり、図8(A)は第2の実施形態の電力増幅器102の特性、図8(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。また、図9はRFoutの出力電力Poutを掃引したときの利得(Gain)の計算結果であり、図9(A)は第2の実施形態の電力増幅器102の特性、図9(B)はベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器の特性である。
【0034】
ベース電圧調整回路41を備えない電力増幅器では、図8(B)に表れているように、消費電流(Icc)は電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)の方が大きくなっている。また、9(B)に表れているように、電源電圧が高い時(Vcc=5Vの時)には、電源電圧が低い時(Vcc=3Vの時)と比較して、高い出力電力まで余分に高利得が保持されている。
【0035】
これに対し、第2の実施形態の電力増幅器102では、図8(A)に表れているように、消費電流(Icc)は電源電圧(Vcc)に殆ど依存しない。また、図9(A)に表れているように、電源電圧が高くても(Vcc=5V)、電源電圧が低い時(Vcc=3Vの時)との変動が少なく、高い出力電力まで余分に高利得が保持されていない。
【0036】
このことから、第2の実施形態でも、RF特性を劣化させることなく電源電圧上昇時の消費電流を低減し、効率を改善できていることが確認できる。また、電源電圧が高い状態での消費電流が抑制されるので、回路の信頼性も向上する。
【0037】
なお、第1の実施形態で図2に示した電力増幅器に比べて、増幅用トランジスタのベースに低いインピーダンスで電流を供給できるため、特にAB級増幅器では高出力時に消費電流が増加しやすく、より高出力が得られる。
【0038】
《第3の実施形態》
図10は第3の実施形態に係る電力増幅器103の回路図である。電力増幅器103は、エミッタ接地された電力増幅用トランジスタQ1、この電力増幅用トランジスタQ1のベースと制御電圧入力端Vctlとの間に接続されたベースバイアス回路33、電力増幅用トランジスタQ1のコレクタと電源電圧入力端Vccとの間に接続されたインダクタL5、およびベース電圧調整回路42を備えている。
【0039】
ベースバイアス回路33は制御電圧入力端Vctlと基準電位端(接地)との間に接続された抵抗R3およびダイオードD3,D4の直列回路を備えている。また、ベース電流供給用トランジスタQ2および抵抗R2を備え、ベース電流供給用トランジスタQ2のベースがダイオードD3と抵抗R3との接続点(「A」点)に接続され、コレクタが電源電圧入力端Vccに接続され、エミッタが抵抗R2の一方端に接続されている。抵抗R2の他方端は電力増幅用トランジスタQ1のベースに接続されている。また、高周波信号入力端RFinと電力増幅用トランジスタQ1のベースとの間に、コンデンサC2と抵抗R8の並列回路が直列に接続されている。コンデンサC2と抵抗R8の並列回路のRFin側とベース電流供給用トランジスタQ2のエミッタとの間に、コンデンサC6と抵抗R9の並列回路が接続されている。
【0040】
ベース電圧調整回路42は、ベース電圧制御用トランジスタQa、リーク電流抑制用トランジスタQb、抵抗R7およびダイオードD1,D2を備えている。ベース電圧制御用トランジスタQaのエミッタ端子と接地との間にリーク電流抑制用トランジスタQbが挿入されている。ベース電圧制御用トランジスタQaのコレクタ端子は抵抗R7を介して、ベースバイアス回路31の「A」点に接続されている。ベース電圧制御用トランジスタQaのベース端子はダイオードD1,D2と抵抗R6を介して電源電圧入力端Vccに接続されている。ダイオードD1,D2はトランジスタのベースコレクタ間が直接接続された回路で構成されている。
【0041】
リーク電流抑制用トランジスタQbのベースには抵抗R8を介して制御電圧入力端Vctlが接続されている。そのため、制御電圧が入力されないオフ時(Vctl=0V)にベース電圧制御用トランジスタQaのベース電流Ibaが流れるのを阻止できる。その結果、待機時の消費電流を削減できる。
このリーク電流阻止用のスイッチ素子は電源電圧入力端Vccからベース電圧制御用トランジスタQaのベースまでの間に設けてもよい。
【0042】
図10においてコンデンサC2に対して並列接続した抵抗R8は発振防止用安定化抵抗である。また、抵抗R2は熱暴走防止用バラスト抵抗である。
【0043】
ところで、例えば無線LAN用高周波電力増幅器においては高効率化のために無信号時の消費電流を小さくするためにAB級増幅回路が構成される。しかし無信号時の消費電流を小さくすると一般に歪特性が劣化する。図10に示したコンデンサC6と抵抗R9の並列回路は、入力電力に応じて電流を増加させるためにRF信号をベースバイアス回路に結合させるための結合回路である。
【0044】
図11(A)はRF入力電力に対する消費電流(Icc)の関係を示す図である。図11(A)において実線Aは図10に示した第3の実施形態に係る電力増幅器103の特性、破線BはコンデンサC6および抵抗R9による結合回路を設けない場合の特性である。この結合回路を設けることにより、RF入力電力の増大に伴い消費電流Iccが増大する。
【0045】
図11(B)はRF入力電力に対するAM-PM歪(振幅対位相の歪み)の関係を示す図である。図11(B)において実線Aは図10に示した第3の実施形態に係る電力増幅器103の特性、破線BはコンデンサC6および抵抗R9による結合回路を設けない場合の特性である。
【0046】
図11(A)に表れているように、RF入力電力の増大に伴って消費電流Iccが増大することにより、AM-PM歪が改善される。
【0047】
《第4の実施形態》
図12は第4の実施形態に係る無線機201の構成を示すブロック図である。この無線機201において、アンテナ54およびアンテナ共用器53でアンテナ系の回路が構成され、送信回路51および電力増幅器101で送信系の回路が構成されていて、LNA56および受信回路57で受信系の回路が構成されている。ベースバンド回路50は例えば携帯電話端末として機能させる各種信号処理を行う。電力増幅器101は第1の実施形態で示したものであり、送信回路51から出力される送信信号を電力増幅する。
【0048】
この無線機201は電源電圧が高くても電力増幅器101の消費電流が抑制されるので、電源である電池の使用時間を伸ばすことができる。また、電源電圧が高い状態での消費電流のピークが抑制されるので、無線機の信頼性が向上する。
【0049】
《他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、ベース電圧制御用トランジスタQaのベースと電源電圧入力端Vccとの間に接続されたインピーダンス回路の例として複数のダイオードを直列接続した回路を示したが、単なるpn接合ダイオードやツェナーダイオード等、その他の定電圧降下素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
D1,D2…ダイオード
D3,D4…ダイオード
Iba…ベース電流
Icc…消費電流
Q1…電力増幅用トランジスタ
Q2…ベース電流供給用トランジスタ
Qa…ベース電圧制御用トランジスタ
Qb…リーク電流抑制用トランジスタ
RFin…高周波信号入力端
RFout…高周波信号出力端
Vcc…電源電圧入力端
Vctl…制御電圧入力端
31〜33…ベースバイアス回路
41,42…ベース電圧調整回路
50…ベースバンド回路
51…送信回路
53…アンテナ共用器
54…アンテナ
56…LNA
57…受信回路
101〜103…電力増幅器
201…無線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅用トランジスタ、この電力増幅用トランジスタのベースと制御電圧入力端との間に接続されたベースバイアス回路を備え、前記電力増幅用トランジスタのコレクタが電源電圧入力端に直接または第1のインピーダンス回路を介して接続された電力増幅器において、
前記ベースバイアス回路は、電源電圧の上昇に伴って前記電力増幅用トランジスタのベース電圧を減少させるように制御するベース電圧調整回路を備えたことを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記ベースバイアス回路は、前記制御電圧入力端と基準電位端との間に接続された分圧回路を備え、
前記ベース電圧調整回路は、前記分圧回路に第2のインピーダンス回路を介してそのコレクタが接続されるベース電圧制御用トランジスタと、このベース電圧制御用トランジスタのベースと電源電圧入力端との間に接続された第3のインピーダンス回路とを備えた、請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記ベースバイアス回路は、前記電源電圧入力端と前記電力増幅用トランジスタのベースとの間に接続されたベース電流供給用トランジスタを備え、
前記ベース電圧調整回路は、前記ベース電流供給用トランジスタのベースに第2のインピーダンス回路を介してそのコレクタが接続されるベース電圧制御用トランジスタと、このベース電圧制御用トランジスタのベースと電源電圧入力端との間に接続された第3のインピーダンス回路とを備えた、請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記ベース電圧制御用トランジスタと基準電位端との間に、前記制御電圧入力端への制御電圧の非入力時に遮断状態になるリーク電流抑制トランジスタが接続された、請求項2または3に記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記第3のインピーダンス回路は、前記電源電圧入力端から前記ベース電圧制御用トランジスタの方向に順方向に接続された定電圧降下素子を含む、請求項2〜4のいずれかに記載の電力増幅器。
【請求項6】
送信信号を電力増幅する電力増幅器と、この電力増幅器によって電力増幅された信号を送信するアンテナとを備えた無線機であって、
前記電力増幅器は、電力増幅用トランジスタ、この電力増幅用トランジスタのベースと制御電圧入力端との間に接続されたベースバイアス回路を備え、前記電力増幅用トランジスタのコレクタが電源電圧入力端に接続され、
前記ベースバイアス回路は、電源電圧の上昇に伴って前記電力増幅用トランジスタのベース電圧を減少させるように制御するベース電圧調整回路を備えたことを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−65105(P2012−65105A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206943(P2010−206943)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】