説明

電力増幅器

【課題】チップサイズを増加させることなく、使用する経路に応じてフィードバック経路の接続・未接続を切替えることができる電力増幅器を得る。
【解決手段】スイッチSW1は、制御信号に従って入力端子Tin1を出力端子Tout1と出力端子Tout2の何れかに接続する1入力多出力のスイッチである。スイッチSW1の入力端子Tin1は、トランジスタTr1のコレクタ(出力端子)に接続されている。フィードバック経路12は、スイッチSW1の出力端子Tour1をトランジスタTr1のベース(入力端子)に接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式携帯端末の電力増幅器に関し、特にチップサイズを増加させることなく、使用する経路に応じてフィードバック経路の接続・未接続を切替えることができる電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
CDMA方式携帯端末では、基地局での受信電力を一定にするため、基地局までの距離に応じて携帯端末の送信出力電力を制御する必要がある。携帯端末の電力増幅器では、最大出力時に顕著となる熱の発生を抑制するために、増幅段トランジスタのサイズや回路構成の最適化などにより低消費電力化が行われている。また、最大出力時だけでなく、基地局が多い市街地で使用頻度の高い低出力時での低消費電力化が求められている。これに対して、高出力時と低出力時において増幅器内の経路を切替える電力増幅器が提案されている。
【0003】
また、増幅器の外部(入力側や出力側)のインピーダンスが変動した場合に、増幅段トランジスタの動作状態が変化して発振する場合がある。これを防ぐために、増幅段にフィードバック経路を接続した電力増幅器も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、増幅段にフィードバック経路が常に接続されており、使用する経路に応じてフィードバック経路の接続・未接続を切替えることができなかった。また、フィードバック経路中に新たにスイッチを設ければ、フィードバック経路の接続・未接続を切替えることができるが、チップサイズが増加してしまう。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はチップサイズを増加させることなく、使用する経路に応じてフィードバック経路の接続・未接続を切替えることができる電力増幅器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力増幅器は、入力端子と出力端子とを持つ増幅段と、前記増幅段の前記出力端子に接続された1つの入力端子と、複数の出力端子とを持ち、制御信号に従って前記入力端子を前記複数の出力端子の何れかに接続する1入力多出力のスイッチと、前記スイッチの前記複数の出力端子の1つを前記増幅段の前記入力端子に接続させるフィードバック経路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、チップサイズを増加させることなく、使用する経路に応じてフィードバック経路の接続・未接続を切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。
【図2】比較例1に係る電力増幅器を示す図である。
【図3】比較例2に係る電力増幅器を示す図である。
【図4】実施の形態2に係る電力増幅器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る電力増幅器について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。トランジスタTr1のベースは、入力整合回路10を介して入力端子INに接続されている。トランジスタTr1のエミッタは接地されている。スイッチSW1は、2つのスイッチSW1a,SW1bと、1つの入力端子Tin1と、2つの出力端子Tout1,Tout2とを持つ。スイッチSW1は、制御信号に従って入力端子Tin1を出力端子Tout1と出力端子Tout2の何れかに接続する1入力多出力のスイッチである。スイッチSW1の入力端子Tin1は、トランジスタTr1のコレクタ(出力端子)に接続されている。フィードバック経路12は、容量Cfと抵抗Rfを持ち、スイッチSW1の出力端子Tour1をトランジスタTr1のベース(入力端子)に接続させる。
【0012】
トランジスタTr2のベースは、段間整合回路14を介してスイッチSW1の出力端子Tout1に接続されている。トランジスタTr2のエミッタは接地されている。スイッチSW2は、2つのスイッチSW2a,SW2bと、2つの入力端子Tin2,Tin3と、1つの出力端子Tout3とを持つ。スイッチSW2は、制御信号に従って入力端子Tin2と入力端子Tin3の何れかを出力端子Tout3に接続する多入力1出力のスイッチである。スイッチSW2の入力端子Tin2は、出力整合回路16を介してトランジスタTr2のコレクタに接続されている。スイッチSW2の入力端子Tin3は、出力整合回路18を介してスイッチSW1の出力端子Tout2に接続されている。スイッチSW2の出力端子Tout3は出力端子OUTに接続されている。
【0013】
続いて実施の形態1に係る電力増幅器の動作を説明する。電力増幅器が高出力で動作する高出力モード(High Power Mode)では、スイッチSW1a,SW2aがオン、スイッチSW1b,SW2bがオフする。従って、入力端子INから入力されたRF信号は、経路1を通り2つのトランジスタTr1,Tr2で増幅されて、出力端子OUTから出力される。
【0014】
一方、電力増幅器が低出力で動作する低出力モード(Low Power Mode)では、スイッチSW1a,SW2aがオフ、スイッチSW1b,SW2bがオンする。従って、入力端子INから入力されたRF信号は、経路2を通り1つのトランジスタTr1のみで増幅されて、出力端子OUTから出力される。
【0015】
続いて本実施の形態の効果について比較例1,2と比較して説明する。図2は、比較例1に係る電力増幅器を示す図である。トランジスタTr1に常にフィードバック経路12が接続されている。従って、高出力モードの経路1と低出力モードの経路2に対してフィードバック経路12の接続・未接続を切替えることができない。
【0016】
図3は、比較例2に係る電力増幅器を示す図である。フィードバック経路12中にスイッチSWfが設けられている。このスイッチSWfによりフィードバック経路12の接続・未接続を切替えることができる。しかし、新たにスイッチSWfを追加する必要があるため、チップサイズが増加してしまう。
【0017】
これに対して、本実施の形態では、経路切替え用のスイッチSW1の1つの出力端子Tout1のみにフィードバック経路12を接続している。これにより、経路1を使用する高出力モードでは、フィードバック経路12が接続される。従って、トランジスタTr1の出力信号がスイッチSW1及びフィードバック経路12を経由してトランジスタTr1の入力側へ帰還する(負帰還)ため、発振を抑制して動作を安定化することができる。また、フィードバック経路12の容量Cfや抵抗Rfの値を変えることで、トランジスタTr1の利得を調整することができる。
【0018】
一方、経路2を使用する低出力モードでは、フィードバック経路12は未接続となるため、トランジスタTr1の増幅能力を抑制しない。従って、利得の低下を防ぎ、消費電流を抑制することができる。
【0019】
よって、実施の形態1では、経路1を使用する場合にフィードバック経路12を接続に、経路2を使用する場合にフィードバック経路12を未接続にそれぞれ切り替えることができる。また、新たにスイッチを追加する必要が無いため、チップサイズを増加させることもない。
【0020】
なお、経路2に配置された出力整合回路18を低出力モードに最適化することで、トランジスタTr1の電力消費を抑えることができる。これにより、高出力モードだけでなく低出力モードにおいても高効率化を実現できる。
【0021】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る電力増幅器を示す図である。実施の形態2では、フィードバック経路12は、スイッチSW1の出力端子Tout2をトランジスタTr1のベースに接続させる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0022】
これにより、経路1を使用する高出力モードでは、フィードバック経路12は未接続となるため、利得の低下を防ぎ、消費電流を抑制することができる。一方、経路2を使用する低出力モードでは、フィードバック経路12が接続されるため、動作を安定化し、利得を調整することができる。
【0023】
よって、実施の形態2では、経路1を使用する場合にフィードバック経路12を未接続に、経路2を使用する場合にフィードバック経路12を接続にそれぞれ切り替えることができる。また、新たにスイッチを追加する必要が無いため、チップサイズを増加させることもない。
【符号の説明】
【0024】
12 フィードバック経路
SW1 スイッチ(第1のスイッチ)
SW2 スイッチ(第2のスイッチ)
Tin1 第1のスイッチの入力端子
Tin2 第2のスイッチの入力端子(第1の入力端子)
Tin3 第2のスイッチの入力端子(第2の入力端子)
Tout1 第1のスイッチの出力端子(第1の出力端子)
Tout2 第1のスイッチの出力端子(第2の出力端子)
Tout3 第2のスイッチの出力端子
Tr1 トランジスタ(増幅段、第1の増幅段)
Tr2 トランジスタ(第2の増幅段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子とを持つ増幅段と、
前記増幅段の前記出力端子に接続された1つの入力端子と、複数の出力端子とを持ち、制御信号に従って前記入力端子を前記複数の出力端子の何れかに接続する1入力多出力のスイッチと、
前記スイッチの前記複数の出力端子の1つを前記増幅段の前記入力端子に接続させるフィードバック経路とを備えることを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
入力端子と出力端子とを持つ第1の増幅段と、
前記第1の増幅段の前記出力端子に接続された入力端子と、第1及び第2の出力端子とを持ち、制御信号に従って前記入力端子を前記第1及び第2の出力端子の何れかに接続する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチの前記第1の出力端子に接続された入力端子と、出力端子とを持つ第2の増幅段と、
前記第2の増幅段の前記出力端子に接続された第1の入力端子と、前記第1のスイッチの前記第2の出力端子に接続された第2の入力端子と、出力端子とを持ち、制御信号に従って前記第1及び第2の入力端子の何れかを前記出力端子に接続する第2のスイッチと、
前記スイッチの前記第1の出力端子を前記増幅段の前記入力端子に接続させるフィードバック経路とを備えることを特徴とする電力増幅器。
【請求項3】
入力端子と出力端子とを持つ第1の増幅段と、
前記第1の増幅段の前記出力端子に接続された入力端子と、第1及び第2の出力端子とを持ち、制御信号に従って前記入力端子を前記第1及び第2の出力端子の何れかに接続する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチの前記第1の出力端子に接続された入力端子と、出力端子とを持つ第2の増幅段と、
前記第2の増幅段の前記出力端子に接続された第1の入力端子と、前記第1のスイッチの前記第2の出力端子に接続された第2の入力端子と、出力端子とを持ち、制御信号に従って前記第1及び第2の入力端子の何れかを前記出力端子に接続する第2のスイッチと、
前記スイッチの前記第2の出力端子を前記増幅段の前記入力端子に接続させるフィードバック経路とを備えることを特徴とする電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−120104(P2012−120104A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270484(P2010−270484)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】