説明

電力変換システムおよび方法

電力変換のためのシステム(20)および方法について説明する。タービン発電装置からの高電圧DC電力出力を、AC電力グリッドへの接続に好適なAC電力信号に変換する際に使用するためのシステム(20)が意図される。本システム(20)は、分離を提供するために同期発電装置(28)を駆動するとともに、本システムによる実電力出力の制御を可能にする同期モータ(26)間の機械的結合(27)を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換システムおよび方法に関し、特に、AC電気グリッドへの接続のための潮流発電構成用の電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー源を開発しているたくさんの形態の発電は、発電装置を採用し、支配的な条件に応じて変わる速度で発電装置を駆動させる。たとえば、風力タービンは、風速に依存する速度で発電装置を駆動し、潮流タービンは、水流の支配的な速度に依存する速度で発電装置を駆動し、波力コンバータは、周期的に変わる速度で駆動される発電装置を含むことができる。そのような場合には、発電装置からの電気出力の電圧および周波数は、絶えず変化する。しかしながら、電気グリッドは、一定の電圧および周波数で動作し、グリッドコードで実施される厳格な調節が、グリッドに接続されるべき発電システムに適用される。
【0003】
風車群または潮流タービン群のような大型発電システムの場合、グリッドコードは、典型的には、以下の主要要件を含む。
1.大型発電システムは、支配的な風速、潮速などから独立して出力された実電力を修正するための静電容量を有することによって、グリッド周波数の制御に寄与することができなければならない。
2.大型発電システムは、最大で特定の規定された割合の供給された実電力となる無効電力を供給するための静電容量を有することによって、グリッド電圧の制御に寄与することができなければならない。
3.大型発電システムは、正弦波形の電流を生成することができなければならない。この電流は、DC成分を有さなくてもよく、すべての高調波成分および副高調波成分は、前述の上限に満たなくてもよい。
4.発電システムは、グリッド上の低電圧の一時的フォールト全体を通して、グリッドに接続されたままであり、それにより、当該フォールトが解消されたときには電力を供給し続けるように準備できていなければならない。
【0004】
これらのレギュレーションのうち第1の要件を満たすために、最も大型の風力タービンは、最大で支配的な風速に対応する最大値となる、ブレードによって生成された機械的動力を調節するためのピッチ制御メカニズムを含むことができる。
【0005】
第2および第3の要件を満たすために、発電装置からの電力は、通常はパルス幅変調(PWM)インバータを採用するパワーエレクトロニクスシステムによって、一定の周波数(50Hzまたは60Hz)の3相ACに変換される。
【0006】
最後の要件を満たすために、インバータは、短絡からインバータを保護するために、単に接続解除するのではなく、出力電流を制限するように制御される。
【0007】
好適なインバータは、好ましい標準的な電圧のうちの1つである、ライン間で最大690Vrmsの出力電圧定格で利用可能である。より高い電圧も可能であるが、コストが高くなり、効率が低くなり、変調周波数が低くなることの代償として、より高い電圧が達成され、グリッドに送られたより高い高調波電流、したがって、補助フィルタに対するニーズにつながる。したがって、電圧をグリッド電圧まで上昇させる変圧器を介して、接続点でグリッドに接続される690Vインバータを使用するのが一般的である。
【0008】
陸上風力タービンの場合、この構成は定置型である。しかしながら、提案された潮流タービンの場合、この構成は、いくつかの相違点を提供する。
【0009】
第一に、海底に設置された潮流タービンは、記載される形態の変換機器を収容するために、非常に大型で高価な海中エンクロージャを必要とすることになる。変換機器が故障すると、変換機器を回収し、交換するために、高価な海洋作業が必要になり、支配的な気象条件により、長期間にわたって作業が遅延することがある。したがって、一般には、グリッドに接続するために、タービンから海岸まで、または、そのようなタービンの集合から電力を受ける特別な変電施設を収容するオフショアプラットフォームまで電力を送るためのケーブルの受端部に、できるだけ多くの変換機器を配置することが望ましい。
【0010】
送電距離を理由にして、送電損失を低減させるために、ほどよい高さの送電電圧を使用することが好ましい。たとえば、コンダクタ断面が250mmであり、送電損失が4%である2コアケーブルを介して、5kmの距離にわたって5MWを送電するためには、約10kVの作動電圧が必要となる。この大きさの電圧は、発電装置によって発生させることができ、それにより、電力変換機器を全く必要としないシステムがタービンにおいて存在することが可能である。
【0011】
海中ケーブルおよびその設置には高いコストがかかるので、共通ケーブルを共有する、できるだけ多くのタービンを有することが望ましい。各タービンの電気出力がACである場合、もしタービンが一緒に接続されているのであれば、それらの出力を同期させなければならない。しかしながら、タービン出力がDCである場合、タービンが同じ電圧で動作することができると仮定するなら、それらを並列に安全に接続することができる。
【0012】
コストが高く、海中環境において、ピッチ制御メカニズムが故障するリスクがあるので、一定のピッチのブレードをもつタービンを使用することが望ましい。単純性および効率を理由にして、中間ギヤボックスのないタービンによって直接的に駆動される発電装置を使用すること、および発電装置フィールドの永久磁石励起を使用することがさらに好ましい。AC出力は、発電装置巻線または端子ボックスに埋め込むことができるダイオードを用いて、DCに容易かつ効率的に変換される。次いで、タービンおよび発電装置の回転速度、ならびに関連付けられた出力電力は、支配的なフロー、およびタービン−発電装置−ダイオードがフィードするDCシステムの電圧に応じて変化する。
【0013】
したがって、潮流タービン群の好ましい電気的構成を図1に示し、(整流ダイオード12を介して)直流電力出力を生成する一連のタービン発電機10が示されている。発電機10は、短いケーブル14のセットおよびより長いケーブル16によって、受電ステーション18に並列に接続される。受電ステーション18は、海岸にあってもよく、あるいは機器を修理点検するためにアクセスできるオフショアプラットフォームに設けてもよい。受電ステーション18の出力は、AC電力グリッドに接続される。
【0014】
HVDCをAC電力に変換するための既知の方法は、サイリスタインバータ回路を使用するものである。図2に、サイリスタ100のアレイを有する3相電流源サイリスタインバータが示される。動作中、DC電圧は、端子A全体に印加される。サイリスタ100の点孤角を制御する信号の位相は交互に変わり、したがって、3相AC信号が、端子X、YおよびZで提供される。サイリスタインバータは、比較的安価であるとともに、効率と信頼性の組合せという利点を提供する。
【0015】
電流源サイリスタインバータは、HVDCからAC電力への変換のために使用されることが知られているが、電流源サイリスタインバータは、大振幅高調波電流を発生させ、グリッドから無効電力を取り出すので、一般には、グリッド接続に好適ではない。さらに、電流源サイリスタインバータは、電圧のグリッドに依拠して導通期間の終わりにサイリスタをオフし、それにより、低電圧グリッド障害中には動作することができない。
【0016】
Michael Owenの「Homopolar Electro−mechanical Rotary Power Converter (HERPC)」(IEEE Melecon 2004、2004年5月12〜15日、クロアチア、ドゥブロヴニク)は、高電圧DC電力をACグリッド供給電力に変換するための電力変換システムを開示し、このシステムは、高電圧DC電力入力を受けるためのライン電圧入力と、前記高電圧DC電力入力をAC電力に変換するための変換モジュールと、前記変換モジュールによって提供されたAC電力によって駆動される同期モータと、グリッド供給への接続のためにAC出力電力を提供するように動作可能な同期発電装置とを備え、前記同期発電装置は、前記同期モータによって駆動される。
【0017】
本発明の目的は、高DC電圧で動作することができ、グリッドコードのすべての要件を満たすDC−ACコンバータを提供することである。
【発明の概要】
【0018】
したがって、請求項1に記載の特徴部分による電力変換システムが提供される。
【0019】
同期発電装置は、同期モータによって駆動されるので、もともとのDC入力信号から、または変換されたAC信号からの任意の高調波を通した供給を妨げる機械的分離段が存在する。本発明は、本質的には、潮流タービンのアレイとともに使用することが意図されるが、他の電力変換環境、たとえば、オフショア風力タービンまたは波力コンバータにおいて使用できることが理解できよう。さらに、本発明による電力変換システムとともに使用するための、比較的単純で経済的な設計の陸上風力タービンを実現することができる。同期発電装置の駆動は、同期モータのシャフトに直接的に結合される、あるいは、モータと発電装置との間の任意の好適な機械的結合が可能であることが理解されよう。
【0020】
好ましくは、前記変換モジュールは、多相サイリスタブリッジインバータを備える。
【0021】
多相サイリスタブリッジインバータの位相数は、同期モータに供給される高調波電流、ならびに/あるいはライン電圧入力にフィードバックされるリップル電流および電圧の効果を低減するように選択することができる。
【0022】
好ましくは、前記変換モジュールは、3相サイリスタブリッジインバータを備える。
【0023】
好ましくは、前記同期モータの位相数は、多相サイリスタブリッジインバータの位相数に等しい。
【0024】
代替的には、変換モジュールは、多相サイリスタブリッジインバータの出力を、前記同期モータを駆動するのに好適な電圧を有するAC電力に変換するための変圧器をさらに備える。
【0025】
好ましくは、本システムは、コントローラをさらに備え、このコントローラは、前記1つまたは複数のタービン発電装置の動作を調整するためにDCライン電圧入力を変動させるように、サイリスタブリッジインバータの位相角を調節することによって、前記AC出力電力の実電力成分を制御するように動作可能である。
【0026】
サイリスタブリッジインバータの動作を調節すると、これにより、関連付けられたタービン発電装置に関するDCライン電圧の変動が可能になる。ライン電圧の調節は、タービンの作動条件に影響を与え、それに応じて、変換システムによってグリッドに提供される実電力の調整が可能になる。
【0027】
それに加えて、またはそれに代えて、前記同期モータは、界磁巻線タイプ同期モータであり、本システムは、前記タービン発電装置の動作を調整するためにDCライン電圧入力を変動させるように、同期モータの界磁巻線の励起を調節することによって、前記AC出力電力の実電力成分を制御するように動作可能なコントローラを備える。
【0028】
同様に、同期モータの励起フィールドが変動するにつれて、モータ端末におけるAC電圧、したがって、DCライン電圧が変動し、関連付けられたタービンの作動条件の調節によって、出力AC電力の実電力成分を調節することができるようになる。
【0029】
好ましくは、当該システムは、前記同期モータと並列に設けられた補助負荷回路をさらに備え、当該システムは、前記変換モジュールによって提供されたAC電力の少なくとも一部分を前記補助負荷回路に供給するように動作可能である。
【0030】
補助負荷回路という手段は、関連付けられたタービン発電装置によって発生した余剰電力がある場合には、それを負荷回路中に破棄することができることを意味し、それにより、本変換システムが、必要なグリッド条件を満たすことができるようになる。
【0031】
好ましくは、補助負荷回路は、前記変換モジュールからのAC電力を蓄積するためのエネルギー蓄積デバイスを備え、前記エネルギー蓄積デバイスは、さらに、そのデバイスに蓄積されたAC電力を前記同期モータに選択的に提供するように動作可能である。
【0032】
補助負荷回路は、エネルギー蓄積デバイス、たとえば、バッテリー、フライホール、キャパシタなどを備えるので、関連付けられたタービンによって発生する余剰電力を蓄積し、は、後の段でエネルギー変換システムに提供することができる。これは、潮流タービン発電装置に関する場合であり得、余剰電力は、高潮流期間中には蓄積し、低潮流期間中および/またはグリッドの高需要期間中には、変換システム(および、延長によって、電力グリッド)中に戻して放出することができる。
【0033】
それに加えて、またはそれに代えて、補助負荷回路は、負荷バンクを備える。
【0034】
負荷バンクは、余剰電力を破棄し、変換システムがグリッド要件を満たし続けることを保証する、効果的な方法として使用することができる。
【0035】
請求項11の特徴部分による、タービン発電装置からの高電圧DC電力をACグリッド供給電力に変換するための方法がさらに提供される。
【0036】
好ましくは、本方法は、前記タービン発電装置の動作を調節するために、DC電力のライン電圧を変動させることによって、同期発電装置の実電力出力を制御する、さらなるステップを含む。
【0037】
好ましくは、変換する前記ステップは、多相サイリスタブリッジインバータの位相角を制御するステップを含み、前記制御するステップが、DCライン電圧入力を変動させるために、サイリスタブリッジインバータの位相角を調節するステップを含む。
【0038】
それに加えて、またはそれに代えて、前記制御するステップは、DC電力入力のライン電圧を変動させるために、同期モータの励起を調節するステップを含む。
【0039】
好ましくは、本方法は、同期発電装置の出力が所要のレベルを超えたときに、前記変換されたAC電力の少なくとも一部分を補助負荷回路に迂回させるステップをさらに含む。
【0040】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を単に例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】潮流タービンの先行技術のセットアップを示す図である。
【図2】既知のサイリスタインバータ回路を示す図である。
【図3】本発明による、電力変換システムの図である。
【図4】図3のシステムの第1のエンハンスメントの図である。
【図5】図3のシステムの第2のエンハンスメントの図である。
【図6】サンプルタービン特性曲線のプロットである。
【図7】潮流速度が異なるアレイにおいて動作する5つのタービンのセットに関するタービン特性曲線のプロットである。
【図8】負荷バンク回路をさらに備える図3のシステムの図である。
【図9】エネルギー蓄積デバイス回路をさらに備える図3のシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
必要な分離を有し、適切な実電力制御および無効電力制御と組み合わせられた変換システムを提供するために、電力は、電気モータによって駆動される同期発電装置により、ACグリッドに送達される。このモータには、1つまたは複数のタービンから受け、モータにフィードするのに好適な形態に変換された高電圧直流電流からの電力が供給される。
【0043】
図3を参照すると、本発明による電力変換システムが全体的に20で示されている。高電圧DC(HVDC)電力は、入力端子22で提供される。入来するHVDCは、電流源サイリスタインバータ24を用いてACに変換される。個々のサイリスタは、最大で約8kVの電圧定格で利用可能である。したがって、図3に示された回路は、最大で約5kVのDC電圧をもつシステムに好適となる。
【0044】
次いで、変換されたAC電力は、同期モータ26を駆動するために使用される。入来するHVDC電力は、通常、モータタイプの具体的な選択とすべきDC電気モータには電圧が高すぎるので、したがって、図3の構成は、励起のための従来の界磁巻線または永久磁石のいずれかを有するAC同期モータ26を利用する。
【0045】
同期モータ26の出力(シャフト27)は、同期発電装置28の入力に結合される。同期発電装置28は、直接的にAC電力グリッドに容易に接続することができるAC出力30を提供する。このような同期発電装置は、化石燃料によって燃料供給される従来の発電所において見られるものと同じタイプのものとすることができる。このような発電装置は、グリッドコードの要件のほとんどを満たすことになり、最大で1GWの電力定格で利用可能である。
【0046】
上述のように、一般には、電流源サイリスタインバータは、グリッド接続には好適ではない。ただし、本発明のシステムでは、電流源サイリスタインバータは、グリッドには接続されず、要求に応じてサイリスタをオフするために必要な無効電力および電圧を提供する同期モータに接続される。さらに、高調波電流が同期モータに及ぼす影響は大きくない。
【0047】
同期発電装置を駆動させるための同期モータを機械的に結合することにより、グリッド接続から、サイリスタインバータの不完全性が機械的に分離される。したがって、図3のシステムは、HVDCをACグリッド供給に変換するための変換システムを提供する。
【0048】
上述のように、図3のシステムは、最大で約5kVのDC入力電圧をもつシステムには好適となる。ただし、最大DC入力電圧が、この値、たとえば、最大10kVよりも高い場合には、初期変換段を変えることができる。たとえば、図4を見ると分かるように、直列の2つのサイリスタを使用して、サイリスタブリッジ24を構築することができ、それにより、入力電圧定格をより高くすることができるようになる。
【0049】
代替的には、図5の回路に関して、2つ以上の完全なサイリスタインバータ24を、それらのAC出力を1対の変換器用変圧器32への入力として図5に示されたように組み合わせて、それらのDC入力で直列に接続することができる。次いで、変圧器32のAC出力を組み合わせて、同期モータ26の入力として提供することができる。
【0050】
図5に示された変換器用変圧器32の各々は、各々が専用のインバータブリッジインバータによって給電される2つの別々の入力巻線34を有する。一方の巻線34aは、星形接続されており、他方の巻線34bはデルタ接続されている。2つのブリッジは、30電気角度だけ位相が異なる電流を供給し、出力巻線における電流は、12パルスパターンに従う。これは、単一の3相ブリッジによって生成された6パルスパターンよりもはるかに小さい高調波含有率を有する。整流回路およびサイリスタ回路における電流の高調波含有率を低減させるためのこの構成により、高調波電流に関連付けられた同期モータ26における損失の一部が回避される。
【0051】
図3から図5に示されたシステムは、3相インバータを使用しているが、所望に応じて、様々な数の位相を使用することも可能となる。これは、同期モータ26に供給される高調波電流、あるいはDCシステム上のリップル電流および電圧を制限するために好ましいことがある。
【0052】
電流源サイリスタインバータ24からのAC出力は、好適に接続された変圧器32を用いて3相に変換することができるが、代替的には、同期モータ26を、使用されるインバータ24と同じ数の位相を有するように構成してもよいことが理解されよう。
【0053】
一般には、サイリスタインバータ24は、入力DC電圧を超えるピーク値をもつAC電圧を必要とする。したがって、変換器用変圧器34は、サイリスタインバータ24の電圧を、関連付けられたモータ26の定格に合う値と適合させるという、さらなる目的を有する。
【0054】
同期発電装置28の回転速度は、ACグリッドの周波数に結合される。たとえば、50Hzグリッドに接続された2極発電装置は、3000rpmで回転しなければならず、4極機械は1500rpmで回転し、6極機械は、1000rpmで回転する。好ましい機械的構成は、モータ26と発電装置28とに直接的に結合されるものであり、この場合、モータ26は、同じ速度で回転する。モータ26は、発電装置28と同じ数の磁極を有する必要はない。同様に、モータ26のAC端末におけるAC電流および電圧の周波数は、モータ26の回転速度に結び付けられる。
【0055】
モータ26の磁極数と発電装置28の磁極数とが等しく、2つの機械が、同じ回転速度で作動するために、シャフト27を介して直接的に結合されている場合、モータ26への入力における電圧および電流の周波数は、ACグリッドの周波数に等しい。この構成により、全く同じ機械を、モータ26と発電装置28の両方に使用することができるようになる。
【0056】
モータ26の磁極数が発電装置28よりも高い場合、モータ周波数は、グリッド周波数よりも高くなる。代替的には、モータ26と発電装置28との間の結合により、モータ26が、たとえばギヤボックスを用いて、発電装置28よりも早く回転する場合、モータ周波数は、発電装置周波数よりも高くなる。
【0057】
反対に、モータ26の磁極数が、発電装置28の磁極数よりも小さい場合、あるいはモータ26の回転速度が、(2つの機械の間で使用されるカップリングに起因して)発電装置28の回転速度よりも低い場合、モータ周波数は、グリッド周波数よりも低くなる。
【0058】
たとえば、50Hzグリッドに接続された4極発電装置を駆動する6極モータは、75Hzの供給周波数を必要とすることになる。このようにしてモータ周波数を上昇させるために構成する際の1つの利点は、変圧器の物理的サイズおよび効率が、作動周波数に部分的に依存することである。好適な作動周波数を選択することによって、変換器用変圧器34を、それに応じて、より小さくし、より効率的にすることができる。
【0059】
タービン特性曲線の一例を図6に示す。グリッド30に送達された実電力を制御するために、DC電圧を制御することができ、それにより、関連付けられたタービンの作動条件と、それらによって送達された電力とに影響が及ぼされる。たとえば、電圧が上昇した場合、各タービンの速度が上昇することになり、典型的なタービン特性にしたがって発生する電力の変化につながる。
【0060】
実際には、タービン群は、それぞれ、海底の領域にわたる流速が変化するので、他のタービン群からの異なる流速を受けることになる。したがって、各タービンは、電力対速度(したがって、電圧)の異なる特性を有するが、タービン群は全体として、電力対DC電圧の特性の集合的な特性を有する。図7は、一緒に動作しているが、潮流速度が1.8m/sから2.6m/sまでに及ぶ5つのタービンの例を示している。これらのタービンを、全部がたとえば5kVで動作するように、並列で接続する場合、総電力は、約2100kWとなる。流速が最も高いタービンは、最適電圧よりもわずかに低い電圧で動作し、流速が最も低いタービンは、最適電圧よりもわずかに高い電圧、したがって速度で動作することになる。電圧が、たとえば6kVまで上昇する場合、総電力は、約1900kWまで低減されることになる。電圧を8kVまで上昇させると、総電力が1MW未満まで低減される。したがって、電圧制御は、グリッドコードとの適応性に関する要求に応じて、電力を調節する好適な手段である。
【0061】
DC電圧は、使用されるサイリスタインバータ24のサイリスタゲート端子に供給される切替信号の位相制御を用いて調節することができる。代替的には、従来の界磁巻線によって同期モータ26が励起される場合、同期モータ26の励起は、要求に応じて、その端末におけるAC電圧、次いで、関連付けられたタービンに提供されるDCライン電圧を調節するように制御することができる。
【0062】
図8は、抵抗負荷バンク36のような、同期モータ26と並列の補助負荷中に余剰電力を廃棄することにより、グリッド30に送達した電力の制御に影響を与え得るさらなる代替実施形態を示す。図8では、抵抗負荷バンク36は、制御混合サイリスタブリッジインバータ38によって制御され、整流を制御するために他に必要なものはない。制御混合ブリッジ38は、前記同期モータ26の電圧を使用して、ブリッジ38のサイリスタをオフし、ブリッジ38によって吸収される無効電力を提供する。
【0063】
代替的には、図9に示されるように、余剰電力は、駆動モータ26と並列のバッテリー40のようなエネルギー蓄積デバイスに提供され、バッテリー40は、適切な整流回路42と結合されている。図9に示されたシステムは、電力制御のニーズを満たすだけではなく、高潮流期間中にタービンからのエネルギーを吸収し、この過剰な電力をグリッド30に後で提供するために、エネルギー蓄積システム(バッテリー40)を使用することができるようにする。
【0064】
タービンが高電力を生成する高潮流期間は、しばしば、グリッド30の高重要期間と一致しないことが予想される。したがって、エネルギー蓄積システムは、発生したエネルギーの値を上昇させること、ならびにグリッドコードの電力および周波数レギュレーション態様を満たすための手段を提供することができる。さらに、エネルギーシステムは、同期モータ26および発電装置28を逆向きの電力潮流構成で動作させることによって、潮流速が低いときには、グリッド30からエネルギーを引き出すことができ、それにより、モータ26は発電装置を動作させ、その逆も可能である。この場合、低需要時には、エネルギーをグリッド30から吸収し、高需要時には、エネルギーをグリッド30に戻す。これにより、図9の実施形態のさらなる追加の利点が提供される。
【0065】
本発明は、本明細書に記載した実施形態に限定されるものではないが、本発明の範囲から逸脱することなく、補正または修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン発電装置(10)からの高電圧DC電力を、ACグリッド供給電力(30)に変換するための電力変換システム(20)であって、前記システムが、
高電圧DC電力入力を受けるためのライン電圧入力(22)と、
前記高電圧DC電力入力をAC電力に変換するための変換モジュール(24)と、
前記変換モジュールによって提供された前記AC電力によって駆動される同期モータ(26)と、
前記同期モータによって駆動され、グリッド供給への接続のためにAC出力電力を提供するように動作可能な同期発電装置(28)とを備え、
前記ライン電圧入力(22)が、1つまたは複数のタービン発電装置(10)からのみ前記高電圧DC電力入力を受けることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記変換モジュール(24)が、多相サイリスタブリッジインバータを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変換モジュール(24)が、3相サイリスタブリッジインバータを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記同期モータ(26)の位相数が、前記多相サイリスタブリッジインバータにおける位相数に等しい、請求項2または請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記変換モジュール(24)が、前記多相サイリスタブリッジインバータの出力を、前記同期モータ(26)を駆動するのに好適な位相を有するAC電力に変換するための変圧器(32)をさらに備える、請求項2または請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記システム(20)が、コントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記1つまたは複数のタービン発電装置(10)の動作を調整するために前記DCライン電圧入力(22)を変動させるように、前記サイリスタブリッジインバータ(24)の位相角を調節することによって、前記AC出力電力の実電力成分を制御するように動作可能である、請求項2から請求項5のうちのいずれか1つに記載のシステム。
【請求項7】
前記同期モータ(26)が、界磁巻線タイプ同期モータであり、前記システム(20)が、前記1つまたは複数のタービン発電装置(10)の前記動作を調整するために前記DCライン電圧入力(22)を変動させるように、前記同期モータ(26)の前記界磁巻線の励起を調節することによって、前記AC出力電力の前記実電力成分を制御するように動作可能なコントローラを備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記システム(20)が、前記同期モータ(26)と並列に設けられた補助負荷回路(36)をさらに備え、前記システムが、前記変換モジュール(24)によって提供された前記AC電力の少なくとも一部分を前記補助負荷回路(36)に供給するように動作可能である、請求項1から請求項7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記補助負荷回路(36)が、前記変換モジュール(24)からのAC電力を蓄積するためのエネルギー蓄積デバイス(40)を備え、前記エネルギー蓄積デバイスが、さらに、前記デバイスに蓄積されたAC電力を前記同期モータ(26)に選択的に提供するように動作可能である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記補助負荷回路(36)が、負荷バンクを備える、請求項8または請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
1つまたは複数の発電装置(10)からの高電圧DC電力を、ACグリッド供給電力(30)に変換するための方法であって、
高電圧DC電力入力(22)を提供するステップと、
前記高電圧DC電力入力(22)をAC電力に変換するステップと、
前記変換されたAC電力を用いて同期モータ(26)を駆動するステップと、
前記同期モータ(26)の出力を用いて同期発電装置(28)を駆動するステップであって、前記同期発電装置が、ACグリッド供給電力(30)を出力するように動作可能である、同期発電装置(28)を駆動するステップとを含み、
1つまたは複数のタービン発電装置(10)からのみ前記高電圧DC電力入力(22)を提供するステップによって特徴付けられる、方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数のタービン発電装置の動作を調節するために、前記DC電力入力(22)のライン電圧を変動させることによって、前記同期発電装置(28)の実電力出力を制御するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
変換する前記ステップが、多相サイリスタブリッジインバータ(24)の位相角を制御するステップを含み、前記制御するステップが、前記DCライン電圧入力(22)を変動させるために、前記サイリスタブリッジインバータの前記位相角を調節するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御するステップが、前記DC電力入力(22)の前記ライン電圧を変動させるために、前記同期モータ(26)の励起を調節するステップを含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記同期発電装置(28)の出力が所要のレベルを超えたときに、前記変換されたAC電力の少なくとも一部分を補助負荷回路(36)に迂回させるステップをさらに含む、請求項11から請求項14うちののいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−506397(P2013−506397A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531406(P2012−531406)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064449
【国際公開番号】WO2011/039249
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511144343)オープンハイドロ アイピー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】