電力変換器制御方法
【課題】誘導性負荷に交流電圧を出力した場合に、当該負荷に流れる電流の奇数次調波成分に起因した有効電力の脈動を低減する。
【解決手段】インバータ4の変調率kは、直流成分k0と、交流成分k6ncos(6n・ωL・t+φ6n)とを有している。当該交流成分はインバータ4が出力する交流電圧Vu,Vv,Vwの基本周波数(ωL/2π)の6n倍の周波数(6ωL/2π)を有する。負荷電流iu,iv,iwの5次調波成分のみならず、7次調波成分が存在しても、交流成分の大きさと直流成分の比を適宜に設定し、これらの高調波成分に起因した消費電力の脈動を低減することができる。当該脈動の低減は電源高調波の抑制に資する。
【解決手段】インバータ4の変調率kは、直流成分k0と、交流成分k6ncos(6n・ωL・t+φ6n)とを有している。当該交流成分はインバータ4が出力する交流電圧Vu,Vv,Vwの基本周波数(ωL/2π)の6n倍の周波数(6ωL/2π)を有する。負荷電流iu,iv,iwの5次調波成分のみならず、7次調波成分が存在しても、交流成分の大きさと直流成分の比を適宜に設定し、これらの高調波成分に起因した消費電力の脈動を低減することができる。当該脈動の低減は電源高調波の抑制に資する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆる交流電力変換器において、負荷電流の高調波を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の多相交流負荷を駆動する回路としてインバータが挙げられる。当該インバータとして、高効率化と小型化を実現する回路方式として、マトリックスコンバータや、直流リンクを有していながらも大型のコンデンサやリアクトルによる平滑回路を省いた構成(以下、「コンデンサレスインバータ」と称する)が知られている。
【0003】
マトリックスコンバータには直流リンクが設けられないダイレクトマトリックスコンバータ及び直流リンクが設けられるインダイレクトマトリックスコンバータがある。但しダイレクトマトリックスコンバータであっても、特許文献3に紹介されているとおり、平滑回路を伴わない仮想的な直流リンクを介して仮想的な交流−直流変換器と仮想的な直流−交流変換器とが結合された構成の動作に基づいて制御することができる。
【0004】
また、特許文献4には、直流リンクにコンデンサが設けられていても、当該コンデンサの容量が平滑回路として機能するよりも小さく選定された、上述のコンデンサレスインバータも紹介されている。当該技術において直流リンクの電圧は脈動することが前提となっている。
【0005】
よって形式上で直流リンクを有しているか否か、あるいはコンデンサが設けられているか否かを問わず、実質的な平滑回路を介することなく交流電力変換を行う回路を、本願では直接形交流電力変換器と称する。
【0006】
直接形交流電力変換はエネルギバッファを持たないため、多相交流負荷で発生した高調波成分が電源側へ伝わり、電源電流の高調波が増大する。電源電流の高調波は、周辺環境への悪影響を避けるため、低減するように要請される。かかる要請の具体例として、例えばIEC61000−3−2の規定がある。当該規定では電源周波数に対する40次迄の高調波成分が規制されている。
【0007】
例えば多相交流負荷としてモータが採用され、当該モータの電機子巻線の巻回方式に集中巻が採用された場合、電機子巻線に流れる電流(電機子電流)には、インバータから出力される電圧と回転電機の誘導起電力の差電圧に起因して高調波成分、特に5次成分、7次成分が含有されていることが、特許文献1で指摘されている。かかる高調波成分(インバータから出力される電圧の基本波成分に対するもの)は、電源電流の高調波の増大を招来する。
【0008】
特許文献5にはかかる5次成分、7次成分を低減する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−27422号公報
【特許文献2】特開2007−312589号公報
【特許文献3】特開2004−222338号公報
【特許文献4】特許第4067021号公報
【特許文献5】特許第4488122号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lixiang Wei, Thomas.A Lipo,“A Novel Matrix Converter Topology With Simple Commutation", IEEE IAS 2001, vol.3, 2001, pp1749-1754.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5に紹介された技術では、簡単のために高調波成分の位相差が考慮されていないため、効果を改善する余地がある。
【0012】
そこで、本願の目的は、モータで例示される誘導性負荷に交流電圧を出力した場合に、当該負荷に流れる電流の奇数次調波成分に起因した有効電力の脈動を低減することを目的とする。これは、直流リンクを有している場合であっても、平滑コンデンサを有しない直接形電力変換器において、直流リンクの有効電力の脈動を抑制することに繋がり、引いては電源高調波を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明にかかる電力変換器制御方法は、第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法である。
【0014】
そしてその第1の態様では、前記電圧形インバータの変調率(k)は、直流成分(k0)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍の角周波数(6n・ωL)の交流成分(k6n・cos(6n・ωL・t+φ6n))とを有する。
【0015】
また、その第2の態様では、前記電圧形インバータに対する電圧指令(Vd**、Vq**)は、直流成分(Vd*.Vq*)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍の角周波数(6n・ωL)の交流成分((−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n))を有する。
【0016】
これら第1の態様及び第2の態様のいずれにおいても、第1の前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−k6n/k0)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとる。
【0017】
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとる。但しIuh6n<m6n1/2 、χ6n:任意、の関係を有する。
【0018】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第3の態様は、その第1の態様又は第2の態様であって、前記交流成分の前記直流成分に対する比は前記負荷の稼動状態の複数に対する関数として前記負荷の実稼動の前に予め求められており、前記実稼働において前記関数に基づいて前記直接形交流電力変換器(9)を制御する。
【0019】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第4の態様は、その第3の態様であって、前記稼動状態は、前記負荷が消費する複数の電力状態を含み、前記実稼働においては前記電力状態に対応した前記比が採用される。
【0020】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第5の態様は、その第1乃至第4の態様のいずれかであって、前記第2交流電圧の前記基本角周波数(ωL)の所定の範囲においては、前記基本角周波数が増大するほど増大する増感量で前記交流成分の振幅を大きくする。
【0021】
例えば全てのnにおいてIuh6n=0である。
【発明の効果】
【0022】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第1の態様又は第2の態様によれば、負荷における電力の第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分を低減し、以て第1交流電圧の供給源への高調波伝搬を低減する。
【0023】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第3の態様によれば、実稼働の際に第2交流電圧や及び負荷電流に基づいて、交流成分の直流成分に対する比を求める計算を行う必要が無く、実稼働の際に制御にかかる負担が軽減される。
【0024】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第4の態様によれば、電力状態以外の他の稼動状況に対する依存性が小さいため、実稼働の際に第2交流電圧や及び負荷電流に基づいて電力を計算するだけで第1の態様や第2の態様が招来する効果を得ることができる。
【0025】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第5の態様によれば、第2交流電圧の基本角周波数が増大すると、その6n倍の角周波数が電力変換器を制御する周波数に近づくので、当該電力変換器を制御するタイミングで交流成分を反映させても、全体として交流成分の寄与が目減りすることになる。よって所定の範囲内において交流成分の振幅を、基本角周波数が増大するにつれて増大させることにより、この目減りを補償する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用可能な直接形電力変換器の構成を示す回路図である。
【図2】インバータ制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】電圧指令とゲート信号との関係を示すグラフである。
【図4】入力電流の高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。
【図5】入力電流の高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。
【図6】入力電流における高調波含有率の、電力に対する依存性を示すグラフである。
【図7】入力電流における高調波含有率の、電力に対する依存性を示すグラフである。
【図8】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図9】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図10】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図11】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図12】比Ju6,Ju12のそれぞれの平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。
【図13】電機子巻線の巻回方式が集中巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性の平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。
【図14】基本周波数成分と目減りとの関係を示すグラフである。
【図15】回転速度に対するタイミング数を示すグラフである。
【図16】本発明が適用可能なダイレクトマトリックスコンバータの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.直接形電力変換器の構成.
図1は、本発明が適用可能な直接形電力変換器9の構成を示す回路図である。直接形電力変換器9は、コンバータ3とインバータ4と、両者を接続する一対の直流電源線L1,L2とを有している。
【0028】
コンバータ3は整流回路として機能し、交流電源1から得られる三相(ここではR相、S相、T相とする)交流電圧Vr,Vs,Vt(以下「第1交流電圧」とも称す)を整流し、一対の直流電源線L1,L2に対して整流電圧Vdcを出力する。
【0029】
コンバータ3は例えば電流形整流器であって、パルス幅変調で動作する。コンバータ3は直流電源線L1,L2の間で相互に並列に接続された複数の電流経路を有する。コンバータ3の電流経路のうちR相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Srp,Srnを含む。スイッチング素子Srp,Srn同士の接続点には電圧Vrが印加される。コンバータ3の電流経路のうちS相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Ssp,Ssnを含む。スイッチング素子Ssp,Ssn同士の接続点には電圧Vsが印加される。コンバータ3の電流経路のうちT相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Stp,Stnを含む。スイッチング素子Stp,Stn同士の接続点には電圧Vtが印加される。
【0030】
スイッチング素子Srp,Ssp,Stpは直流電源線L1側に、スイッチング素子Srn,Ssn,Stnは直流電源線L2側に、それぞれ接続される。
【0031】
インバータ4は例えば電圧形インバータであり、例えば瞬時空間ベクトル制御(以下、単に「ベクトル制御」と称す)に従ったパルス幅変調で動作する。インバータ4は三相(ここではU相、V相、W相とする)交流電圧Vu,Vv,Vw(以下「第2交流電圧」と称す)を出力する。
【0032】
インバータ4は、直流電源線L1,L2間で並列に接続された複数の電流経路を有する。
【0033】
インバータ4の電流経路のうちU相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Sup,Sunを含む。スイッチング素子Sup,Sun同士の接続点からは出力電圧Vuが得られる。インバータ4の電流経路のうちV相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Svp,Svnを含む。スイッチング素子Svp,Svn同士の接続点からは出力電圧Vv1が得られる。インバータ4の電流経路のうちW相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Swp,Swnを含む。スイッチング素子Swp,Swn同士の接続点からは出力電圧Vwが得られる。
【0034】
スイッチング素子Sup,Svp,Swpは直流電源線L1側に接続される。以下ではこれらのスイッチング素子を上アーム側のスイッチング素子として把握する。スイッチング素子Sun,Svn,Swnは直流電源線L2側に接続される。以下ではこれらのスイッチング素子を下アーム側のスイッチング素子として把握する。つまり直流電源線L1の電位は直流電源線L2の電位よりも高い。
【0035】
上述のスイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stn,Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn自体の構成は公知であって、例えば非特許文献1にも例示されている。
【0036】
負荷2は誘導性負荷であってインバータ4に接続される。具体的には負荷2は、Y結線されて電圧Vu,Vv,Vwが印加される三相コイルを有するモータである。回路図上は三相コイルの各々の抵抗成分が、当該コイルに直列接続される抵抗として記載されている。当該コイルの内、U相、V相、W相に相当するものにはそれぞれ電流iu,iv,iwが流れる。これらの電流は電流センサ(図示省略)によってモニタリングされる。
【0037】
B.高調波を低減する原理.
まず、負荷2の消費電力における高調波について説明する。負荷2に印加される第2交流電圧Vu,Vv,Vw及び流れる電流(以下「負荷電流」と称す)iu,iv,iwについて考察する際、一つの相(U相)について電圧Vu、負荷電流iuを、それぞれ下記の式(1)及び式(2)のように数式化しても一般性を失わない。いま三相が平衡しつつ定常状態にあることを考えれば足りるからである。ここではまず、負荷電流iuの5次調波及び7次高調波のみを考慮する。特許文献5に鑑み、第2交流電圧Vuには基本波成分の係数に直流成分だけでなく交流成分を含ませている。交流成分としてまずは第2交流電圧Vuの基本波成分の6倍の高調波成分のみを考慮する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
但し、インバータ4が出力する電流、電圧の基本波成分が有する角周波数ωL、時間tを導入した。また負荷電流iuの基本波成分、第5次成分及び第7次成分の実効値をそれぞれIu1,Iu5,Iu7とし、第2交流電圧Vuの基本波成分に対する負荷電流iuの基本波成分、5次成分及び第7次成分の位相差をそれぞれφ1,φ5,φ7とした。また、第2交流電圧Vuの基本波成分についての振幅のうち、直流成分及び交流成分のそれぞれ実効値をEu1,Eu6とし、また電圧Vuの基本波成分に対する当該交流成分の位相差をφ6とした。
【0041】
U相の瞬時電力Puは式(3)で表される。
【0042】
【数3】
【0043】
式(3)右辺の第1項が有効電力と無効電力を表し、第2項以降が高調波電力を表す。三相回路では3n次成分以外の高調波電力は0であり、高調波成分同士の積で表される電力は相対的に小さいのでこれらを無視すると、高調波電力Puhは次式(4)で近似できる。
【0044】
【数4】
【0045】
よって高調波電力Puhを零にするには、下式(5)を満足するEu6,φ6を求め、これらの値を用いて式(2)で定義された電圧Vuをインバータ4から出力すればよい。
【0046】
【数5】
【0047】
いま、Pu5=Eu1・Iu5,Pu7=Eu1・Iu7,Pu6=Eu6・Iu1・cos(φ1)とおくと、Pu5,Pu6,Pu7は定数として扱うことができる。そして式(5)は下式に変形される。
【0048】
【数6】
【0049】
式(6)は更に下式(7)へと変形できる。
【0050】
【数7】
【0051】
正弦関数と余弦関数の直交性から、式(7)を満足するための関係は、式(8)(9)となる。
【0052】
【数8】
【0053】
【数9】
【0054】
式(8)(9)から、実効値Eu6及び位相差φ6は、それぞれ式(10)(11)で求められる。
【0055】
【数10】
【0056】
【数11】
【0057】
ここまでは5次調波及び7次調波について説明してきたが、他の6n±1次調波(nは正の整数)についても同様に考察することができる。そして電圧Vuの基本波成分についての振幅のうち、交流成分が複数の6n次の角周波数を有していても、式(3)から式(4)への近似と同様の近似が可能である。よって、電圧Vuとして下式(12)(13)(14)を採用することにより、負荷電流iuの6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。但し総和記号Σはnについての総和を示す。
【0058】
【数12】
【0059】
【数13】
【0060】
【数14】
【0061】
式(12)の形から分かるように、電圧Vuは、21/2Eu1・cosωLtを[1−ΣJu6n(6nωLt+φ6n)で変調した値を採用している。通常、電圧Vuとして正弦波電圧を出力することから、電圧指令を得るためのいわゆる変調率としてはk=(k0−Σk6n・cos(6nωLt+φ6n))が相当することになる。つまりかかる変調率kを採用すれば、上記の電圧Vuに対応する電圧指令が得られる。ここでJu6n=k6n/k0であって、変調率における6n次成分の直流成分に対する比である。
【0062】
上記ではU相について考察したが、V相,W相のそれぞれについても同様の解析ができ、いずれの相についても共通して式(13)(14)を採用することができる。換言すれば、式(13)(14)で求められた値はいずれの相についても共通する。
【0063】
よって6n±1次調波の低減を考慮する前の変調率k0に対し、(1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n))を乗算するか、−k0ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)を加算すればよい。
【0064】
さて、上記の説明では、式(5)を満足するEu6,φ6を求めていた。しかし、式(5)は高調波電力Puhを零にするためのものであった。実際には高調波電力Puhを零にしなくても、式(4)の値を小さくすればよい。より具体的には式(5)の左辺の絶対値を低減すればよい。
【0065】
今、抑制後の6次高調波電力Puh6が下式(15)で表されるとする。ここで位相φuh6は任意に設定できる。高調波電力Puh6は、その絶対値が抑制できれば、どのような位相差をも許す観点である。但し、交流電圧Vuの基本波成分に対する負荷電流iuの基本波成分に対する位相差として位相φuh6を把握し、後述する式において所望の値を設定すれば、抑制しきることなく残った高調波電力Puh6の位相を所望の値へ設定できることになる。
【0066】
【数15】
【0067】
また、高調波電力を抑制する観点から、電流Iuh6は、式(5)の左辺(これは抑制前の高周波電力に相当する)の大括弧内の値よりも小さいことが望まれる。より具体的に説明すると、抑制前の高周波電力の振幅Pu57及び位相差φu57は、それぞれ下式(16)、(17)で計算される。電流Iuh6は値Iu57よりも小さいことが望まれる。
【0068】
【数16】
【0069】
【数17】
【0070】
抑制前の高周波電力の振幅Pu57に対して補正を行うためのEu6,φ6は、下記のようにして求められる。但し振幅Pu6は、式(6)の左辺(これは抑制前の高周波電力に相当する)から式(15)の右辺(これは抑制後の高周波電力に相当する)を差し引いた電力(以下「補正用電力」とも称す)の振幅である。
【0071】
【数18】
【0072】
【数19】
【0073】
【数20】
【0074】
これにより、式(13)、(14)と同様にして、式(21)、(22)が得られる。
【0075】
【数21】
【0076】
【数22】
【0077】
上述のように、位相φuh6は任意に設定できるので、χ6=φuh6+πを導入し、χ6を任意に設定しても良い。また電流Iu57を改めてm6と記載することにすると、この記載方法を6n次にまで同様に適用して、下記のように説明できる。
【0078】
即ち、
m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2
χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
として、
Ju6n=[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]、
φ6n=tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m6n・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]である。
【0079】
同様にして、変調率に関しても、k6n/k0=[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]と表すことができる。
【0080】
もちろん、全てのnについて、Iuh6n=0とすることで、式(21)、(22)は式(13)、(14)と一致する。
【0081】
C.高調波を低減する構成.
(c−1)変調率の修正.
図2は6n±1次調波を低減するための変調率kが採用される、インバータ制御回路7の構成を示すブロック図である。インバータ制御回路7は角周波数ωL及びその指令値ωL*、第2交流電圧Vu、負荷電流iu,iv,iw、位相制御指令値β*、並びにモータ角度推定値θを入力し、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を出力する。
【0082】
振幅・位相抽出部701は、負荷電流iuを入力し、その基本波成分、第6n−1次成分及び第6n+1次成分を生成する。かかる演算は負荷電流iuにフーリエ変換を施して実現できる。これにより、実効値Iu1,Iu6n−1,Iu6n+1が得られる。また出力振幅・位相抽出部701は更に電圧Vuを入力し、その位相と負荷電流iuの基本波成分、第6n−1次成分及び第6n+1次成分の位相とを比較することにより、位相差φ1,φ6n−1,φ6n+1を生成して出力する。
【0083】
6n次成分演算部702は、振幅・位相抽出部701から実効値Iu1,Iu6n−1,Iu6n+1位相差φ1,φ6n−1,φ6n+1を得て、式(13)(14)に則って、比Ju6n及び位相差φ6nを演算して出力する。例えばn=1,2が選定される。あるいは位相差χ6nや電流Iuh6nをも用いて、式(21)(22)に則って、比Ju6n及び位相差φ6nを演算して出力する。位相差χ6nや電流Iuh6nは6n次成分演算部702に対してその外部から入力してもよいし、その内部で設定していてもよい。
【0084】
積和演算部713は、6n次成分演算部702から得られた比Ju6n及び位相差φ6nから[1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)]を演算して出力する。
【0085】
乗算器715は単に正弦波電圧を出力するための変調率k0と、[1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)]とを乗算し、これを新たな変調率kとして出力する。上述のように変調率kを採用することにより、負荷電流iuの(同様にして負荷電流iv,iwの)6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。
【0086】
PWM変調部714は、d軸電圧の指令値Vd*、q軸電圧の指令値Vq*及び変調率kを用いてゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成する。かかるゲート信号の生成については公知の技術を採用して実現されるので、その演算の詳細は省略する。換言すれば、変調率k0を変調率kに置換するだけで、公知の技術を転用して6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。
【0087】
指令値Vd*,Vq*を得るための技術も公知の技術であるので詳細は省略するが、以下に簡単に説明する。
【0088】
減算器705は角周波数ωLとその指令値ωL*との偏差を求めてPI制御部706に入力する。PI制御部706は公知のPI制御(比例・積分制御)を行って電流指令値Ia*を生成する。d軸電流指令値生成部707及びq軸電流指令値生成部708には、電流指令値Ia*及び位相制御指令値β*が入力され、それぞれ位相制御指令値β*の符号を負とした(−β*)についての電流指令値Ia*の正弦成分及び余弦成分がd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*として求められる。
【0089】
座標系変換部704は負荷電流iu,iv,iwとモータ角度推定値θとに基づいてd軸電流Id及びq軸電流Iqを求め、それぞれ減算器709,710に対して出力される。
【0090】
減算器709はd軸電流Idとその指令値Id*との偏差ΔIdを出力する。減算器710はq軸電流Iqとその指令値Iq*との偏差ΔIqを出力する。
【0091】
干渉補償部711はモータのインダクタンスLd,Lqに基づくインピーダンスωL・Ld,ωL・Lqによるd軸/q軸間の相互干渉を補償する演算を行う。d軸電流Idとq軸電流Iqと偏差ΔId,ΔIq及び角周波数ωLを入力してd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を生成する。かかる演算は周知技術であるのでその詳細は省略する。
【0092】
(c−2)電圧指令の修正.
図3はインバータ制御回路7の他の構成の一部を示すブロック図である。図2に示されたインバータ制御回路7とは異なり、乗算器715を用いた変調率の補正はされておらず、PWM変調部714は変調率k0に基づいてゲート信号を生成する。しかし、この際にPWM変調部714が採用するのは、図2を用いて説明されたd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*ではなく、補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**である。
【0093】
図3では比Ju6n及び位相差φ6n、並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を得るための構成は省略しているが、図2で示された構成と同様の構成を採用できることは明白である。
【0094】
なお、図3に示されたインバータ制御回路7では、図2で示されたインバータ制御回路7における積和演算部713,乗算器715の代わりに、加算器716,717及び補正指令生成部703が採用される。
【0095】
以下、補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**の生成について説明する。まず、図2に示されたインバータ制御回路7と同様にして、比Ju6n及び位相差φ6n、並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*が得られる。
【0096】
補正指令生成部703は、比Ju6n及び位相差φ6nを入力して、d軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*を生成する。
【0097】
加算器716はd軸電圧指令Vd*とd軸電圧指令補正値ΔVd*とを加算して補正されたd軸電圧指令Vd**を出力する。加算器717はq軸電圧指令Vq*とq軸電圧指令補正値ΔVq*とを加算して補正されたq軸電圧指令Vq**を出力する。
【0098】
補正指令生成部703は、逓倍器703a、積和演算部703b、正弦値算出器703c、余弦値算出器703d、乗算器703e,703f、総和算出器703g,703iを有している。
【0099】
逓倍器703aは角周波数ωLを入力してこれを6n倍に逓倍し、6n次の角周波数6nωLを出力する。ここでnは正の整数であるので、n個の角周波数6nωLが出力されることを、逓倍器703aから積和演算部703bへ向かう矢印に斜線を付記し、その近傍に「n」と付記した。つまりこの斜線及び「n」はn個の情報が伝達されていることを示している。他の矢印に付記された斜線及び「n」についても同様である。
【0100】
積和演算部703bは角周波数6nωLに対して時刻tを乗算した結果に対して、同じ次数についての位相差φ6nを加算する。つまり積和演算部703bは対応する角周波数毎にn組の乗算及び加算を行う。これにより積和演算部703bから位相(6nωL+φ6n)が、正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dのいずれにも与えられる。正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dはそれぞれ、入力した位相について、正弦値を(−1)倍した値及び余弦値を(−1)倍した値を出力する。具体的には正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dからはそれぞれ、−sin(6nωL+φ6n),−cos(6nωL+φ6n)が出力される。
【0101】
正弦値算出器703cから出力されたn個の値は、乗算器703eにおいて、それぞれの値nに関して対応する比Ju6nと、第2交流電圧Vuの基本波成分についての振幅の直流成分Eu1と、係数√(3/2)が乗算され、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)が出力される。同様にして、乗算器703fからは√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n)が出力される。
【0102】
直流成分Eu1は例えば図2に示された振幅・位相抽出部701において第2交流電圧Vuに対してフーリエ変換を行うことで得ることができる。係数√(3/2)は、dq軸についての電圧指令は線間電圧を決定するものであるところ、直流成分Eu1は相電圧に対応するものであることに鑑みて必要な係数である。
【0103】
総和算出器703gは、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)をnについて総和して、d軸電圧指令補正値ΔVd*として出力する。総和算出器703iは、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n)をnについて総和して、q軸電圧指令補正値ΔVq*として出力する。
【0104】
上述のように、(補正された)d軸電圧指令Vd**は、d軸電圧指令Vd*に対してd軸電圧指令補正値ΔVd*を加算して得られる、(補正された)q軸電圧指令Vq**は、q軸電圧指令Vq*に対してq軸電圧指令補正値ΔVq*を加算して得られる。
【0105】
一般に変調率kは整流電圧Vdcに対する第2交流電圧同士の線間電圧に対する比に比例し、当該線間電圧はd軸電圧指令とq軸電圧指令の平方の和の平方根に比例する。
【0106】
よってPWM変調部714がゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成するに際して、変調率k0と補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**に基づいて処理することは、変調率kと、補正されないd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*に基づいて処理することと等価である。
【0107】
また、d軸電圧指令Vd*、q軸電圧指令Vq*はいずれも第2交流電圧の基本角周波数ωLで回転する回転座標系において直交するフェーザとして把握することができ、いずれも√(3/2)Eu1に対応するものである。よって補正されたd軸電圧指令Vd**において補正前のd軸電圧指令Vd*は直流成分として、d軸電圧指令補正値ΔVd*は6n次の角周波数を有する交流成分として、それぞれ把握することができる。q軸電圧指令Vq**において補正前のq軸電圧指令Vq*は直流成分として、q軸電圧指令補正値ΔVq*は6n次の角周波数を有する交流成分として、それぞれ把握することができる。
【0108】
よってd軸、q軸によらず、交流成分の振幅の直流成分に対する比は、|[√(3/2)(−Ju6n・Eu1)]/[√(3/2)Eu1]|=Ju6nとなり、変調率を補正する場合と等しい。
【0109】
D.高調波を低減する効果.
ここでは、高調波を低減する効果の顕著な場合を例示する。即ち、全てのnについて電流Iuh6n=0の場合が説明される。図4及び図5は、電源1から直接形電力変換器9に供給される入力電流Irの高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。いずれも横軸には電源周波数に基づく次数が採用され、縦軸には第2交流電圧の基本波成分に対する、電流高調波成分の振幅が示されている。
【0110】
図4は負荷2たるモータとして、その電機子巻線の巻回方式に集中巻が採用された場合を示す。図5は負荷2たるモータとして、その電機子巻線の巻回方式に分布巻が採用された場合を示す。図4におけるグラフL10及び図5におけるグラフL20は、いずれも高調波を低減しないで変調率k0並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を用いてインバータ4を動作させた場合における、次数に対する高調波成分の関係を示す。また図4及び図5のいずれにおいても、グラフRがIEC61000−3−2の規定に基づく高調波成分の上限を示している。
【0111】
図4ではグラフL10が21次、23次において大きくなり、グラフRで示されるIEC61000−3−2の規定を満足していないことが分かる。これは以下の理由による。
【0112】
上記式(4)から理解されるように、高調波電力Puhは、負荷電流iuの角周波数(これは第2交流電圧の角周波数でもある)ωLの6n倍の角周波数で脈動する。よって整流電圧Vdcを一定に制御したときですら直流リンクを流れる電流はcos(6n・ωLt)で変動する。
【0113】
ところで、コンバータ3として電流形整流器を用いるときには各相の通流比を考慮して、直流リンクを流れる電流を正弦波で変調することにより、入力電流を正弦波にすることができる(例えば非特許文献1や特許文献2参照)。具体的には電圧Vr,Vs,Vtの角周波数ωSを導入してcos(ωSt)で変調する。このために入力電流Irはcos(ωSt)・cos(6n・ωLt)で脈動することになる。この脈動成分については、(1/2)(cos(6n・ωLt−ωSt)+cos(6n・ωLt+ωSt))と変形される。よって入力電流Irの高調波成分は周波数6n・fL±fSにおいてピークが発生する(fL=ωL/2π、fS=ωS/2π)。
【0114】
図4では電源周波数fSが50Hzであり、第2交流電圧Vuの周波数fLが180Hzに設定されている。よって入力電流Irの高調波成分のうち、180×6±50=1030,1130[Hz]がピークを有することになる。これは電源周波数fS=50Hzに換算すると、1030/50≒21[次]、1130/50≒23[次]となる。
【0115】
同様に、図5ではグラフL20が18次、20次及び37〜40次において大きくなり、グラフRで示されるIEC61000−3−2の規定を満足していないことが分かる。ここで電源周波数fSが50Hzであり、第2交流電圧Vuの周波数fLが160Hzに設定されているので、発生する高調波の周波数は160×6±50=910,1010であり、これらは電源周波数の18次、20次に相当する。また160×12±50=1870,1970であり、これらは電源周波数の37〜40次に相当する。このように電機子巻線の巻回方式に分布巻が採用された場合には、集中巻が採用された場合と比較して、より高次の高調波成分が問題となる傾向がある。
【0116】
図4においてグラフL11は、変調率kとして上記B節で説明した6次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の21〜23次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流において、第2交流電圧の基本周波数成分に対して5次及び7次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。
【0117】
同様にして、図5においてグラフL21は、変調率kとして上記B節で説明した6次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の18次及び20次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流の、第2交流電圧の基本周波数成分に対する5次及び7次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。但し、電源周波数の37〜40次の高調波成分が低減されていない。
【0118】
図5においてグラフL22は、変調率kとして上記B節で説明した6次及び12次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の18次及び20次のみならず、37〜40次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流の、第2交流電圧に対する基本周波数成分の5次及び7次のみならず、11次及び13次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。
【0119】
このように高調波成分を低減するには、上記B節の説明(特に式(4)〜(14))で示されるように、高調波電力Puhに依存して適切な比Ju6n及び位相差φ6nを設定する。換言すれば、これらの値は電力に依存すると考えられる。
【0120】
図6及び図7は、それぞれ図4及び図5に対応したモータについて、入力電流Irにおける高調波含有率[%]の電力(負荷の消費電力:以下同様)に対する依存性を示すグラフである。但し、次数は第2交流電圧の基本周波数に対して換算している。
【0121】
図6からは、集中巻が採用される場合には、電力の増大に対して5次成分が低下し、7次成分はあまり増加しないことが分かる。また図7からは、分布巻が採用される場合には、電力の増大に対して5次成分は若干は増大するものの、7次成分が大きく低下し、11次成分、13次成分が共に増大することがわかる。また分布巻が採用される場合は集中巻が採用される場合と比較して5次成分がかなり小さいことがわかる。
【0122】
以上のことから、またB節の検討に鑑みて、比Ju6は電力の増大と共に減少し、かつ分布巻が採用される場合の比Ju6は集中巻が採用される場合の比Ju6よりも小さいことが予想される。また、電力が同じであれば、電機子巻線の巻回方式(集中巻/分布巻)以外のパラメタには依存しにくいとも予想される。以下、実験結果を用いてこれらの予想の妥当性を説明する。
【0123】
図8及び図9はいずれも電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6[%]の電力に対する依存性を示すグラフである。図10及び図11はいずれも電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12[%]の電力に対する依存性を示すグラフである。それぞれ、三種の負荷トルクT1,T2,T3(T1<T2<T3)についての依存性が示されている。但し図8の結果が得られたモータと図10の結果が得られたモータは同一であり、図9の結果が得られたモータと図11の結果が得られたモータは同一である。そして図8や図10の結果が得られたモータの界磁磁束は、図9や図11の結果が得られたモータの界磁磁束よりも小さい。
【0124】
図8乃至図11から理解されるように、比Ju6は電力の増大に対して減少傾向にあることがわかる。また比Ju12は電力の増大に対して増大傾向にあることがわかる。しかも比Ju6,Ju12はいずれも負荷トルクや界磁磁束の大小には殆ど依存しない。
【0125】
よって予め、巻回方式に分布巻が採用される電機子巻線を有するモータについて、比Ju6,Ju12の電力依存性を得ておけば、トルクなど、電力以外のモータの運転状態や、界磁磁束など、電機子巻線の巻回方式以外のモータの種類について共通して、比Ju6,Ju12を採用することができる。
【0126】
図12は、図8及び図9から得られる比Ju6の平均値を線形近似した曲線と、図10及び図11から得られる比Ju12の平均値を線形近似した曲線とを示すグラフである。このような曲線で示される比Ju6,Ju12の電力依存性を予め測定し、記憶しておくことにより、実稼働において比Ju6,Ju12を得るには、出力電圧及び負荷電流に基づいて電力を計算するだけで足りる。
【0127】
具体的には負荷2の実稼動前に複数の電力状態について比Ju6,Ju12を求め、複数の電力状態と比Ju6,Ju12との関係をテーブルにして、あるいは式として記憶しておけばよい。かかるテーブルや式を記憶するのは、6n次成分演算部702であってもよいし、振幅・位相抽出部701であってもよい。
【0128】
図13は電機子巻線の巻回方式が集中巻であるモータについて、比Ju6[%]の電力に対する依存性の平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。図12と同様に比Ju6は電力の増大と共に減少する傾向があり、かつ上記で予想されたように、電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータと比較して、比Ju6は大きい。
【0129】
よって負荷の実稼働前に予め、電機子巻線の巻回方式毎に、また電力毎に、比Ju6,Ju12を求めて記憶しておくことが望ましい。これにより実稼働の際の計算量についての負担が低減される。
【0130】
上記考察は比Ju6nについて説明したが、B節で説明された原理から、当該考察がd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*にも妥当することはいうまでもない。即ち、負荷の実稼働前に予め、電機子巻線の巻回方式毎に、また電力毎に、d軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*を求めて記憶しておくことが望ましい。これにより実稼働の際の計算量が低減される。
【0131】
もちろん、予め比Ju6nあるいはd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*の依存性を、電力状態及び電機子巻線の巻回方式のみならず、モータトルクの大きさや、モータ回転速度についての複数の稼動状態に対しても得ておき、これらをテーブル若しくは関数として記憶してもよい。電力状態も稼動状態の一種として把握することができる。
【0132】
E.第2交流電圧の周波数上昇に伴う補正
PWM変調部714において、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*並びに変調率k、若しくは補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**並びに変調率k0を用いて、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を時間的に離散されたタイミングで生成する。このタイミングの周期は、例えばPWM変調部714においてキャリア比較方式が採用される場合、比較の基礎となるキャリアの周波数で決定される。
【0133】
通常、当該キャリアの周波数は固定されるので、第2交流電圧の基本周波数成分が高まるほど、当該基本周波数に対して更新されるゲート信号の個数は少なくなる。
【0134】
特に、変調率kや補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**は、当該基本周波数の6n倍の周波数を有しているので、これらがゲート信号の更新に適時に反映されにくくなる。
【0135】
つまり、第2交流電圧の基本周波数成分が高まるほど、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*が実質的に目減りすることになる。そしてその傾向は高調波の次数、即ち値nが大きくなるほど顕著となる。
【0136】
図14はかかる目減りを模式的に示すグラフである。曲線L3は値Ju6n・cos(6nωLt+φ6n)やd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*(以下、「高調波低減用成分」とも称す)が6n次高調波で変動することを示す。また破線はゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成するタイミングを示す。よって当該タイミング同士の間では、高調波低減用成分が、破線と曲線L3との交点を示す黒丸の値をとり続けることになる。即ち理想的には(当該タイミングの間隔が十分に小さければ;換言すると第2交流電圧の基本周波数が十分に小さければ)正弦波状の曲線L3であるはずの高調波低減用成分が、階段状の曲線L4をとることになる。
【0137】
そこで、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*を増大させる増感量を設定し、第2交流電圧Vu,Vv,Vwの基本周波数成分が高まるほど当該増感量を増大させることが望ましい。上記目減りを補償するためである。
【0138】
図15は負荷2としてモータを採用したときの回転速度に対するタイミング数を示すグラフである。当該タイミング数は高調波低減用成分(ここでは12次成分)の1周期当たりにおいて、ゲート信号を生成するタイミングの個数を示す。
【0139】
回転速度は一秒間当たりの回転数(rps)で示されており、モータの極対数を2とすると、回転速度50rpsを周波数に換算した50×2=100[Hz]が第2交流電圧の基本周波数に該当する。よって高調波低減用成分が有する12次成分は1200Hzとなる。今、キャリア周波数を6kHzとすると、回転速度50rpsのときのタイミング数は6000/1200=5となる。
【0140】
図15には増感量も併せて示している。ここで増感量は、B節の考察に基づいて設定された高調波低減用成分に対して乗算すべき値として示されている。増感量は回転速度50〜88rps(これは基本周波数100〜1400Hzに相当する)において、回転速度が増大するほど増大する。つまり第2交流電圧の基本角周波数の所定の範囲においては、基本角周波数が増大するほど増大する増感量で、高調波低減用成分の振幅を大きくする。変調率kを採用する場合には、変調率比Ju6nを大きくすることになる。
【0141】
なお、増感量は回転速度50rps未満では零であり、実質的には高調波低減用成分が採用されない(図15において“OFF”として示している)。これはIEC61000−3−2の規定は電源周波数についての高調波の次数が低いほど高調波電流の上限が大きいからである。具体的に図15で示された例では、第2交流電圧の基本角周波数の12倍が1200Hzであり、入力電流における1200±50Hzの成分は当該規格よりも小さく、負荷電流の高調波を抑制する必要がなかったためである。
【0142】
また、増感量は回転速度88rps以上では零であり、実質的には高調波低減用成分が採用されない(図15において“OFF”として示している)。これはIEC61000−3−2の規定は電源周波数についての40次よりも高い高調波については上限を設定していないからである。具体的に回転速度88rpsに相当する周波数の12倍の値は2112Hzであり、これよりも電源周波数50Hzだけ低い周波数2062Hzは電源周波数の41次に相当し、IEC61000−3−2の規定の制限を受けない。よって回転速度88rps以上では高調波低減用成分を採用しなくてよい。
【0143】
このような増感量も、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*と同様に、予め電力状態及び電機子巻線の巻回方式に対して、あるいは更にモータトルクの大きさや、モータ回転速度に対しても得ておき、これらをテーブル若しくは関数として記憶してもよい。
【0144】
なお、キャリア周波数を高めることにより回転速度に対するタイミング数を増大させることができるので、増感量が必要な回転速度の領域を高めることができる。換言すれば、キャリア周波数が高いほど、回転速が高い領域まで増加量の設定は不要となる。キャリア周波数を高めることに対応するため、スイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stn,Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnとして、スイッチング周波数を高めることができる素子、例えばSiCやGaNを材料とするワイドバンドギャップ素子を採用することができる。
【0145】
F.変形
また、本実施の形態を適用する主回路方式は図1に例示された直流リンクが設けられた場合に限定されない。即ち、特許文献3で紹介された仮想直流リンク方式の直接形交流電力変換器に適用されてもよい。
【0146】
図10は本実施の形態が適用される他の直接形電力変換器の構成を示す回路図である。ここでは直接形電力変換器としてダイレクトマトリックスコンバータMCVが例示される。
【0147】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVは、入力端Pr,Ps,Ptと、出力端Pu,Pv,Pwとを備えている。入力端Pr,Ps,Ptにはそれぞれ交流電圧Vr,Vs,Vtが入力され、出力端Pu,Pv,Pwからはそれぞれ三相交流出力電圧Vu,Vv,Vwが出力される。
【0148】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVは、スイッチング素子Sur,Sus,Sut,Svr,Svs,Svt,Swr,Sws,Swtを備えている。3つのスイッチング素子Sur,Sus,Sutは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Puとの間に接続されている。3つのスイッチング素子Svr,Svs,Svtは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Pvとの間に接続されている。3つのスイッチング素子Swr,Sws,Swtは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Pwとの間に接続されている。
【0149】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVに対して本実施の形態にかかる制御方法を適用する場合、仮想AC/DC/AC制御が採用される。この仮想AC/DC/AC制御では、例えば、図1に示すコンバータ3、インバータ4を仮想する。両者を繋ぐ仮想的な直流リンクとして一対の直流電源線L1,L2が想定できる。つまり、ダイレクトマトリックスコンバータMCVに対して採用される仮想AC/DC/AC制御では、交流電圧Vr,Vs,Vtを仮想的に整流して仮想的な整流電圧Vdcを得る仮想整流回路としてコンバータ3が、仮想的な整流電圧Vdcから交流電圧Vu,Vv,Vwを得る仮想電圧形インバータとしてインバータ4が、それぞれ想定される。そして既に説明された事項と同様にして、仮想電圧形インバータの変調率kに、直流成分k0と、第2交流電圧Vu,Vv,Vwの基本角周波数ωLの6n倍の角周波数6nωLの交流成分(−k0ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)を含ませるべく、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成する。これらのゲート信号は仮想電圧インバータとしてのインバータ4の動作を制御する。
【0150】
仮想整流回路としてのコンバータ3のスイッチングについても、実際のコンバータ3のスイッチングと同様に、例えば非特許文献1や特許文献2を参照して、スイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stnの導通/非導通を制御するゲート信号Srp*,Ssp*,Stp*,Srn*,Ssn*,Stn*を得る。
【0151】
そして、ゲート信号Srp*,Ssp*,Stp*,Srn*,Ssn*,Stn*,Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*から次の式により行列変換して、ダイレクトマトリックスコンバータMCVのスイッチ信号が得られる。
【0152】
【数23】
【0153】
スイッチ信号S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33は、それぞれスイッチング素子Sur,Sus,Sut,Svr,Svs,Svt,Swr,Sws,Swtについてのスイッチ信号である。かかる行列変換が妥当であることは、既に特許文献3から周知である。
【0154】
また特許文献4で紹介されたように、非常に小さなコンデンサが用いられる変換回路に適用してもよい。あるいは直流リンクへ出力するコンバータ3の入力側が単相入力であっても多相入力であってもかまわない。
【符号の説明】
【0155】
2 負荷
3 コンバータ
4 インバータ
9 直接形交流電力変換器
Vr,Vs,Vt,Vu,Vv,Vw 交流電圧
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆる交流電力変換器において、負荷電流の高調波を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の多相交流負荷を駆動する回路としてインバータが挙げられる。当該インバータとして、高効率化と小型化を実現する回路方式として、マトリックスコンバータや、直流リンクを有していながらも大型のコンデンサやリアクトルによる平滑回路を省いた構成(以下、「コンデンサレスインバータ」と称する)が知られている。
【0003】
マトリックスコンバータには直流リンクが設けられないダイレクトマトリックスコンバータ及び直流リンクが設けられるインダイレクトマトリックスコンバータがある。但しダイレクトマトリックスコンバータであっても、特許文献3に紹介されているとおり、平滑回路を伴わない仮想的な直流リンクを介して仮想的な交流−直流変換器と仮想的な直流−交流変換器とが結合された構成の動作に基づいて制御することができる。
【0004】
また、特許文献4には、直流リンクにコンデンサが設けられていても、当該コンデンサの容量が平滑回路として機能するよりも小さく選定された、上述のコンデンサレスインバータも紹介されている。当該技術において直流リンクの電圧は脈動することが前提となっている。
【0005】
よって形式上で直流リンクを有しているか否か、あるいはコンデンサが設けられているか否かを問わず、実質的な平滑回路を介することなく交流電力変換を行う回路を、本願では直接形交流電力変換器と称する。
【0006】
直接形交流電力変換はエネルギバッファを持たないため、多相交流負荷で発生した高調波成分が電源側へ伝わり、電源電流の高調波が増大する。電源電流の高調波は、周辺環境への悪影響を避けるため、低減するように要請される。かかる要請の具体例として、例えばIEC61000−3−2の規定がある。当該規定では電源周波数に対する40次迄の高調波成分が規制されている。
【0007】
例えば多相交流負荷としてモータが採用され、当該モータの電機子巻線の巻回方式に集中巻が採用された場合、電機子巻線に流れる電流(電機子電流)には、インバータから出力される電圧と回転電機の誘導起電力の差電圧に起因して高調波成分、特に5次成分、7次成分が含有されていることが、特許文献1で指摘されている。かかる高調波成分(インバータから出力される電圧の基本波成分に対するもの)は、電源電流の高調波の増大を招来する。
【0008】
特許文献5にはかかる5次成分、7次成分を低減する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−27422号公報
【特許文献2】特開2007−312589号公報
【特許文献3】特開2004−222338号公報
【特許文献4】特許第4067021号公報
【特許文献5】特許第4488122号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lixiang Wei, Thomas.A Lipo,“A Novel Matrix Converter Topology With Simple Commutation", IEEE IAS 2001, vol.3, 2001, pp1749-1754.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5に紹介された技術では、簡単のために高調波成分の位相差が考慮されていないため、効果を改善する余地がある。
【0012】
そこで、本願の目的は、モータで例示される誘導性負荷に交流電圧を出力した場合に、当該負荷に流れる電流の奇数次調波成分に起因した有効電力の脈動を低減することを目的とする。これは、直流リンクを有している場合であっても、平滑コンデンサを有しない直接形電力変換器において、直流リンクの有効電力の脈動を抑制することに繋がり、引いては電源高調波を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明にかかる電力変換器制御方法は、第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法である。
【0014】
そしてその第1の態様では、前記電圧形インバータの変調率(k)は、直流成分(k0)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍の角周波数(6n・ωL)の交流成分(k6n・cos(6n・ωL・t+φ6n))とを有する。
【0015】
また、その第2の態様では、前記電圧形インバータに対する電圧指令(Vd**、Vq**)は、直流成分(Vd*.Vq*)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍の角周波数(6n・ωL)の交流成分((−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n))を有する。
【0016】
これら第1の態様及び第2の態様のいずれにおいても、第1の前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−k6n/k0)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとる。
【0017】
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとる。但しIuh6n<m6n1/2 、χ6n:任意、の関係を有する。
【0018】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第3の態様は、その第1の態様又は第2の態様であって、前記交流成分の前記直流成分に対する比は前記負荷の稼動状態の複数に対する関数として前記負荷の実稼動の前に予め求められており、前記実稼働において前記関数に基づいて前記直接形交流電力変換器(9)を制御する。
【0019】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第4の態様は、その第3の態様であって、前記稼動状態は、前記負荷が消費する複数の電力状態を含み、前記実稼働においては前記電力状態に対応した前記比が採用される。
【0020】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第5の態様は、その第1乃至第4の態様のいずれかであって、前記第2交流電圧の前記基本角周波数(ωL)の所定の範囲においては、前記基本角周波数が増大するほど増大する増感量で前記交流成分の振幅を大きくする。
【0021】
例えば全てのnにおいてIuh6n=0である。
【発明の効果】
【0022】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第1の態様又は第2の態様によれば、負荷における電力の第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分を低減し、以て第1交流電圧の供給源への高調波伝搬を低減する。
【0023】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第3の態様によれば、実稼働の際に第2交流電圧や及び負荷電流に基づいて、交流成分の直流成分に対する比を求める計算を行う必要が無く、実稼働の際に制御にかかる負担が軽減される。
【0024】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第4の態様によれば、電力状態以外の他の稼動状況に対する依存性が小さいため、実稼働の際に第2交流電圧や及び負荷電流に基づいて電力を計算するだけで第1の態様や第2の態様が招来する効果を得ることができる。
【0025】
この発明にかかる電力変換器制御方法の第5の態様によれば、第2交流電圧の基本角周波数が増大すると、その6n倍の角周波数が電力変換器を制御する周波数に近づくので、当該電力変換器を制御するタイミングで交流成分を反映させても、全体として交流成分の寄与が目減りすることになる。よって所定の範囲内において交流成分の振幅を、基本角周波数が増大するにつれて増大させることにより、この目減りを補償する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用可能な直接形電力変換器の構成を示す回路図である。
【図2】インバータ制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】電圧指令とゲート信号との関係を示すグラフである。
【図4】入力電流の高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。
【図5】入力電流の高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。
【図6】入力電流における高調波含有率の、電力に対する依存性を示すグラフである。
【図7】入力電流における高調波含有率の、電力に対する依存性を示すグラフである。
【図8】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図9】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図10】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図11】電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12の電力に対する依存性を示すグラフである。
【図12】比Ju6,Ju12のそれぞれの平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。
【図13】電機子巻線の巻回方式が集中巻であるモータについて、比Ju6の電力に対する依存性の平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。
【図14】基本周波数成分と目減りとの関係を示すグラフである。
【図15】回転速度に対するタイミング数を示すグラフである。
【図16】本発明が適用可能なダイレクトマトリックスコンバータの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.直接形電力変換器の構成.
図1は、本発明が適用可能な直接形電力変換器9の構成を示す回路図である。直接形電力変換器9は、コンバータ3とインバータ4と、両者を接続する一対の直流電源線L1,L2とを有している。
【0028】
コンバータ3は整流回路として機能し、交流電源1から得られる三相(ここではR相、S相、T相とする)交流電圧Vr,Vs,Vt(以下「第1交流電圧」とも称す)を整流し、一対の直流電源線L1,L2に対して整流電圧Vdcを出力する。
【0029】
コンバータ3は例えば電流形整流器であって、パルス幅変調で動作する。コンバータ3は直流電源線L1,L2の間で相互に並列に接続された複数の電流経路を有する。コンバータ3の電流経路のうちR相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Srp,Srnを含む。スイッチング素子Srp,Srn同士の接続点には電圧Vrが印加される。コンバータ3の電流経路のうちS相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Ssp,Ssnを含む。スイッチング素子Ssp,Ssn同士の接続点には電圧Vsが印加される。コンバータ3の電流経路のうちT相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Stp,Stnを含む。スイッチング素子Stp,Stn同士の接続点には電圧Vtが印加される。
【0030】
スイッチング素子Srp,Ssp,Stpは直流電源線L1側に、スイッチング素子Srn,Ssn,Stnは直流電源線L2側に、それぞれ接続される。
【0031】
インバータ4は例えば電圧形インバータであり、例えば瞬時空間ベクトル制御(以下、単に「ベクトル制御」と称す)に従ったパルス幅変調で動作する。インバータ4は三相(ここではU相、V相、W相とする)交流電圧Vu,Vv,Vw(以下「第2交流電圧」と称す)を出力する。
【0032】
インバータ4は、直流電源線L1,L2間で並列に接続された複数の電流経路を有する。
【0033】
インバータ4の電流経路のうちU相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Sup,Sunを含む。スイッチング素子Sup,Sun同士の接続点からは出力電圧Vuが得られる。インバータ4の電流経路のうちV相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Svp,Svnを含む。スイッチング素子Svp,Svn同士の接続点からは出力電圧Vv1が得られる。インバータ4の電流経路のうちW相に対応するものは、直流電源線L1,L2間で直列に接続された一対のスイッチング素子Swp,Swnを含む。スイッチング素子Swp,Swn同士の接続点からは出力電圧Vwが得られる。
【0034】
スイッチング素子Sup,Svp,Swpは直流電源線L1側に接続される。以下ではこれらのスイッチング素子を上アーム側のスイッチング素子として把握する。スイッチング素子Sun,Svn,Swnは直流電源線L2側に接続される。以下ではこれらのスイッチング素子を下アーム側のスイッチング素子として把握する。つまり直流電源線L1の電位は直流電源線L2の電位よりも高い。
【0035】
上述のスイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stn,Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn自体の構成は公知であって、例えば非特許文献1にも例示されている。
【0036】
負荷2は誘導性負荷であってインバータ4に接続される。具体的には負荷2は、Y結線されて電圧Vu,Vv,Vwが印加される三相コイルを有するモータである。回路図上は三相コイルの各々の抵抗成分が、当該コイルに直列接続される抵抗として記載されている。当該コイルの内、U相、V相、W相に相当するものにはそれぞれ電流iu,iv,iwが流れる。これらの電流は電流センサ(図示省略)によってモニタリングされる。
【0037】
B.高調波を低減する原理.
まず、負荷2の消費電力における高調波について説明する。負荷2に印加される第2交流電圧Vu,Vv,Vw及び流れる電流(以下「負荷電流」と称す)iu,iv,iwについて考察する際、一つの相(U相)について電圧Vu、負荷電流iuを、それぞれ下記の式(1)及び式(2)のように数式化しても一般性を失わない。いま三相が平衡しつつ定常状態にあることを考えれば足りるからである。ここではまず、負荷電流iuの5次調波及び7次高調波のみを考慮する。特許文献5に鑑み、第2交流電圧Vuには基本波成分の係数に直流成分だけでなく交流成分を含ませている。交流成分としてまずは第2交流電圧Vuの基本波成分の6倍の高調波成分のみを考慮する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
但し、インバータ4が出力する電流、電圧の基本波成分が有する角周波数ωL、時間tを導入した。また負荷電流iuの基本波成分、第5次成分及び第7次成分の実効値をそれぞれIu1,Iu5,Iu7とし、第2交流電圧Vuの基本波成分に対する負荷電流iuの基本波成分、5次成分及び第7次成分の位相差をそれぞれφ1,φ5,φ7とした。また、第2交流電圧Vuの基本波成分についての振幅のうち、直流成分及び交流成分のそれぞれ実効値をEu1,Eu6とし、また電圧Vuの基本波成分に対する当該交流成分の位相差をφ6とした。
【0041】
U相の瞬時電力Puは式(3)で表される。
【0042】
【数3】
【0043】
式(3)右辺の第1項が有効電力と無効電力を表し、第2項以降が高調波電力を表す。三相回路では3n次成分以外の高調波電力は0であり、高調波成分同士の積で表される電力は相対的に小さいのでこれらを無視すると、高調波電力Puhは次式(4)で近似できる。
【0044】
【数4】
【0045】
よって高調波電力Puhを零にするには、下式(5)を満足するEu6,φ6を求め、これらの値を用いて式(2)で定義された電圧Vuをインバータ4から出力すればよい。
【0046】
【数5】
【0047】
いま、Pu5=Eu1・Iu5,Pu7=Eu1・Iu7,Pu6=Eu6・Iu1・cos(φ1)とおくと、Pu5,Pu6,Pu7は定数として扱うことができる。そして式(5)は下式に変形される。
【0048】
【数6】
【0049】
式(6)は更に下式(7)へと変形できる。
【0050】
【数7】
【0051】
正弦関数と余弦関数の直交性から、式(7)を満足するための関係は、式(8)(9)となる。
【0052】
【数8】
【0053】
【数9】
【0054】
式(8)(9)から、実効値Eu6及び位相差φ6は、それぞれ式(10)(11)で求められる。
【0055】
【数10】
【0056】
【数11】
【0057】
ここまでは5次調波及び7次調波について説明してきたが、他の6n±1次調波(nは正の整数)についても同様に考察することができる。そして電圧Vuの基本波成分についての振幅のうち、交流成分が複数の6n次の角周波数を有していても、式(3)から式(4)への近似と同様の近似が可能である。よって、電圧Vuとして下式(12)(13)(14)を採用することにより、負荷電流iuの6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。但し総和記号Σはnについての総和を示す。
【0058】
【数12】
【0059】
【数13】
【0060】
【数14】
【0061】
式(12)の形から分かるように、電圧Vuは、21/2Eu1・cosωLtを[1−ΣJu6n(6nωLt+φ6n)で変調した値を採用している。通常、電圧Vuとして正弦波電圧を出力することから、電圧指令を得るためのいわゆる変調率としてはk=(k0−Σk6n・cos(6nωLt+φ6n))が相当することになる。つまりかかる変調率kを採用すれば、上記の電圧Vuに対応する電圧指令が得られる。ここでJu6n=k6n/k0であって、変調率における6n次成分の直流成分に対する比である。
【0062】
上記ではU相について考察したが、V相,W相のそれぞれについても同様の解析ができ、いずれの相についても共通して式(13)(14)を採用することができる。換言すれば、式(13)(14)で求められた値はいずれの相についても共通する。
【0063】
よって6n±1次調波の低減を考慮する前の変調率k0に対し、(1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n))を乗算するか、−k0ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)を加算すればよい。
【0064】
さて、上記の説明では、式(5)を満足するEu6,φ6を求めていた。しかし、式(5)は高調波電力Puhを零にするためのものであった。実際には高調波電力Puhを零にしなくても、式(4)の値を小さくすればよい。より具体的には式(5)の左辺の絶対値を低減すればよい。
【0065】
今、抑制後の6次高調波電力Puh6が下式(15)で表されるとする。ここで位相φuh6は任意に設定できる。高調波電力Puh6は、その絶対値が抑制できれば、どのような位相差をも許す観点である。但し、交流電圧Vuの基本波成分に対する負荷電流iuの基本波成分に対する位相差として位相φuh6を把握し、後述する式において所望の値を設定すれば、抑制しきることなく残った高調波電力Puh6の位相を所望の値へ設定できることになる。
【0066】
【数15】
【0067】
また、高調波電力を抑制する観点から、電流Iuh6は、式(5)の左辺(これは抑制前の高周波電力に相当する)の大括弧内の値よりも小さいことが望まれる。より具体的に説明すると、抑制前の高周波電力の振幅Pu57及び位相差φu57は、それぞれ下式(16)、(17)で計算される。電流Iuh6は値Iu57よりも小さいことが望まれる。
【0068】
【数16】
【0069】
【数17】
【0070】
抑制前の高周波電力の振幅Pu57に対して補正を行うためのEu6,φ6は、下記のようにして求められる。但し振幅Pu6は、式(6)の左辺(これは抑制前の高周波電力に相当する)から式(15)の右辺(これは抑制後の高周波電力に相当する)を差し引いた電力(以下「補正用電力」とも称す)の振幅である。
【0071】
【数18】
【0072】
【数19】
【0073】
【数20】
【0074】
これにより、式(13)、(14)と同様にして、式(21)、(22)が得られる。
【0075】
【数21】
【0076】
【数22】
【0077】
上述のように、位相φuh6は任意に設定できるので、χ6=φuh6+πを導入し、χ6を任意に設定しても良い。また電流Iu57を改めてm6と記載することにすると、この記載方法を6n次にまで同様に適用して、下記のように説明できる。
【0078】
即ち、
m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2
χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
として、
Ju6n=[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]、
φ6n=tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m6n・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]である。
【0079】
同様にして、変調率に関しても、k6n/k0=[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]と表すことができる。
【0080】
もちろん、全てのnについて、Iuh6n=0とすることで、式(21)、(22)は式(13)、(14)と一致する。
【0081】
C.高調波を低減する構成.
(c−1)変調率の修正.
図2は6n±1次調波を低減するための変調率kが採用される、インバータ制御回路7の構成を示すブロック図である。インバータ制御回路7は角周波数ωL及びその指令値ωL*、第2交流電圧Vu、負荷電流iu,iv,iw、位相制御指令値β*、並びにモータ角度推定値θを入力し、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を出力する。
【0082】
振幅・位相抽出部701は、負荷電流iuを入力し、その基本波成分、第6n−1次成分及び第6n+1次成分を生成する。かかる演算は負荷電流iuにフーリエ変換を施して実現できる。これにより、実効値Iu1,Iu6n−1,Iu6n+1が得られる。また出力振幅・位相抽出部701は更に電圧Vuを入力し、その位相と負荷電流iuの基本波成分、第6n−1次成分及び第6n+1次成分の位相とを比較することにより、位相差φ1,φ6n−1,φ6n+1を生成して出力する。
【0083】
6n次成分演算部702は、振幅・位相抽出部701から実効値Iu1,Iu6n−1,Iu6n+1位相差φ1,φ6n−1,φ6n+1を得て、式(13)(14)に則って、比Ju6n及び位相差φ6nを演算して出力する。例えばn=1,2が選定される。あるいは位相差χ6nや電流Iuh6nをも用いて、式(21)(22)に則って、比Ju6n及び位相差φ6nを演算して出力する。位相差χ6nや電流Iuh6nは6n次成分演算部702に対してその外部から入力してもよいし、その内部で設定していてもよい。
【0084】
積和演算部713は、6n次成分演算部702から得られた比Ju6n及び位相差φ6nから[1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)]を演算して出力する。
【0085】
乗算器715は単に正弦波電圧を出力するための変調率k0と、[1−ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)]とを乗算し、これを新たな変調率kとして出力する。上述のように変調率kを採用することにより、負荷電流iuの(同様にして負荷電流iv,iwの)6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。
【0086】
PWM変調部714は、d軸電圧の指令値Vd*、q軸電圧の指令値Vq*及び変調率kを用いてゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成する。かかるゲート信号の生成については公知の技術を採用して実現されるので、その演算の詳細は省略する。換言すれば、変調率k0を変調率kに置換するだけで、公知の技術を転用して6n±1次調波に基づいた高調波電力を低減することができる。
【0087】
指令値Vd*,Vq*を得るための技術も公知の技術であるので詳細は省略するが、以下に簡単に説明する。
【0088】
減算器705は角周波数ωLとその指令値ωL*との偏差を求めてPI制御部706に入力する。PI制御部706は公知のPI制御(比例・積分制御)を行って電流指令値Ia*を生成する。d軸電流指令値生成部707及びq軸電流指令値生成部708には、電流指令値Ia*及び位相制御指令値β*が入力され、それぞれ位相制御指令値β*の符号を負とした(−β*)についての電流指令値Ia*の正弦成分及び余弦成分がd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*として求められる。
【0089】
座標系変換部704は負荷電流iu,iv,iwとモータ角度推定値θとに基づいてd軸電流Id及びq軸電流Iqを求め、それぞれ減算器709,710に対して出力される。
【0090】
減算器709はd軸電流Idとその指令値Id*との偏差ΔIdを出力する。減算器710はq軸電流Iqとその指令値Iq*との偏差ΔIqを出力する。
【0091】
干渉補償部711はモータのインダクタンスLd,Lqに基づくインピーダンスωL・Ld,ωL・Lqによるd軸/q軸間の相互干渉を補償する演算を行う。d軸電流Idとq軸電流Iqと偏差ΔId,ΔIq及び角周波数ωLを入力してd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を生成する。かかる演算は周知技術であるのでその詳細は省略する。
【0092】
(c−2)電圧指令の修正.
図3はインバータ制御回路7の他の構成の一部を示すブロック図である。図2に示されたインバータ制御回路7とは異なり、乗算器715を用いた変調率の補正はされておらず、PWM変調部714は変調率k0に基づいてゲート信号を生成する。しかし、この際にPWM変調部714が採用するのは、図2を用いて説明されたd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*ではなく、補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**である。
【0093】
図3では比Ju6n及び位相差φ6n、並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を得るための構成は省略しているが、図2で示された構成と同様の構成を採用できることは明白である。
【0094】
なお、図3に示されたインバータ制御回路7では、図2で示されたインバータ制御回路7における積和演算部713,乗算器715の代わりに、加算器716,717及び補正指令生成部703が採用される。
【0095】
以下、補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**の生成について説明する。まず、図2に示されたインバータ制御回路7と同様にして、比Ju6n及び位相差φ6n、並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*が得られる。
【0096】
補正指令生成部703は、比Ju6n及び位相差φ6nを入力して、d軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*を生成する。
【0097】
加算器716はd軸電圧指令Vd*とd軸電圧指令補正値ΔVd*とを加算して補正されたd軸電圧指令Vd**を出力する。加算器717はq軸電圧指令Vq*とq軸電圧指令補正値ΔVq*とを加算して補正されたq軸電圧指令Vq**を出力する。
【0098】
補正指令生成部703は、逓倍器703a、積和演算部703b、正弦値算出器703c、余弦値算出器703d、乗算器703e,703f、総和算出器703g,703iを有している。
【0099】
逓倍器703aは角周波数ωLを入力してこれを6n倍に逓倍し、6n次の角周波数6nωLを出力する。ここでnは正の整数であるので、n個の角周波数6nωLが出力されることを、逓倍器703aから積和演算部703bへ向かう矢印に斜線を付記し、その近傍に「n」と付記した。つまりこの斜線及び「n」はn個の情報が伝達されていることを示している。他の矢印に付記された斜線及び「n」についても同様である。
【0100】
積和演算部703bは角周波数6nωLに対して時刻tを乗算した結果に対して、同じ次数についての位相差φ6nを加算する。つまり積和演算部703bは対応する角周波数毎にn組の乗算及び加算を行う。これにより積和演算部703bから位相(6nωL+φ6n)が、正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dのいずれにも与えられる。正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dはそれぞれ、入力した位相について、正弦値を(−1)倍した値及び余弦値を(−1)倍した値を出力する。具体的には正弦値算出器703c及び余弦値算出器703dからはそれぞれ、−sin(6nωL+φ6n),−cos(6nωL+φ6n)が出力される。
【0101】
正弦値算出器703cから出力されたn個の値は、乗算器703eにおいて、それぞれの値nに関して対応する比Ju6nと、第2交流電圧Vuの基本波成分についての振幅の直流成分Eu1と、係数√(3/2)が乗算され、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)が出力される。同様にして、乗算器703fからは√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n)が出力される。
【0102】
直流成分Eu1は例えば図2に示された振幅・位相抽出部701において第2交流電圧Vuに対してフーリエ変換を行うことで得ることができる。係数√(3/2)は、dq軸についての電圧指令は線間電圧を決定するものであるところ、直流成分Eu1は相電圧に対応するものであることに鑑みて必要な係数である。
【0103】
総和算出器703gは、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)をnについて総和して、d軸電圧指令補正値ΔVd*として出力する。総和算出器703iは、値√(3/2)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n)をnについて総和して、q軸電圧指令補正値ΔVq*として出力する。
【0104】
上述のように、(補正された)d軸電圧指令Vd**は、d軸電圧指令Vd*に対してd軸電圧指令補正値ΔVd*を加算して得られる、(補正された)q軸電圧指令Vq**は、q軸電圧指令Vq*に対してq軸電圧指令補正値ΔVq*を加算して得られる。
【0105】
一般に変調率kは整流電圧Vdcに対する第2交流電圧同士の線間電圧に対する比に比例し、当該線間電圧はd軸電圧指令とq軸電圧指令の平方の和の平方根に比例する。
【0106】
よってPWM変調部714がゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成するに際して、変調率k0と補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**に基づいて処理することは、変調率kと、補正されないd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*に基づいて処理することと等価である。
【0107】
また、d軸電圧指令Vd*、q軸電圧指令Vq*はいずれも第2交流電圧の基本角周波数ωLで回転する回転座標系において直交するフェーザとして把握することができ、いずれも√(3/2)Eu1に対応するものである。よって補正されたd軸電圧指令Vd**において補正前のd軸電圧指令Vd*は直流成分として、d軸電圧指令補正値ΔVd*は6n次の角周波数を有する交流成分として、それぞれ把握することができる。q軸電圧指令Vq**において補正前のq軸電圧指令Vq*は直流成分として、q軸電圧指令補正値ΔVq*は6n次の角周波数を有する交流成分として、それぞれ把握することができる。
【0108】
よってd軸、q軸によらず、交流成分の振幅の直流成分に対する比は、|[√(3/2)(−Ju6n・Eu1)]/[√(3/2)Eu1]|=Ju6nとなり、変調率を補正する場合と等しい。
【0109】
D.高調波を低減する効果.
ここでは、高調波を低減する効果の顕著な場合を例示する。即ち、全てのnについて電流Iuh6n=0の場合が説明される。図4及び図5は、電源1から直接形電力変換器9に供給される入力電流Irの高調波成分の、電源周波数に対する次数への依存性を示すグラフである。いずれも横軸には電源周波数に基づく次数が採用され、縦軸には第2交流電圧の基本波成分に対する、電流高調波成分の振幅が示されている。
【0110】
図4は負荷2たるモータとして、その電機子巻線の巻回方式に集中巻が採用された場合を示す。図5は負荷2たるモータとして、その電機子巻線の巻回方式に分布巻が採用された場合を示す。図4におけるグラフL10及び図5におけるグラフL20は、いずれも高調波を低減しないで変調率k0並びにd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を用いてインバータ4を動作させた場合における、次数に対する高調波成分の関係を示す。また図4及び図5のいずれにおいても、グラフRがIEC61000−3−2の規定に基づく高調波成分の上限を示している。
【0111】
図4ではグラフL10が21次、23次において大きくなり、グラフRで示されるIEC61000−3−2の規定を満足していないことが分かる。これは以下の理由による。
【0112】
上記式(4)から理解されるように、高調波電力Puhは、負荷電流iuの角周波数(これは第2交流電圧の角周波数でもある)ωLの6n倍の角周波数で脈動する。よって整流電圧Vdcを一定に制御したときですら直流リンクを流れる電流はcos(6n・ωLt)で変動する。
【0113】
ところで、コンバータ3として電流形整流器を用いるときには各相の通流比を考慮して、直流リンクを流れる電流を正弦波で変調することにより、入力電流を正弦波にすることができる(例えば非特許文献1や特許文献2参照)。具体的には電圧Vr,Vs,Vtの角周波数ωSを導入してcos(ωSt)で変調する。このために入力電流Irはcos(ωSt)・cos(6n・ωLt)で脈動することになる。この脈動成分については、(1/2)(cos(6n・ωLt−ωSt)+cos(6n・ωLt+ωSt))と変形される。よって入力電流Irの高調波成分は周波数6n・fL±fSにおいてピークが発生する(fL=ωL/2π、fS=ωS/2π)。
【0114】
図4では電源周波数fSが50Hzであり、第2交流電圧Vuの周波数fLが180Hzに設定されている。よって入力電流Irの高調波成分のうち、180×6±50=1030,1130[Hz]がピークを有することになる。これは電源周波数fS=50Hzに換算すると、1030/50≒21[次]、1130/50≒23[次]となる。
【0115】
同様に、図5ではグラフL20が18次、20次及び37〜40次において大きくなり、グラフRで示されるIEC61000−3−2の規定を満足していないことが分かる。ここで電源周波数fSが50Hzであり、第2交流電圧Vuの周波数fLが160Hzに設定されているので、発生する高調波の周波数は160×6±50=910,1010であり、これらは電源周波数の18次、20次に相当する。また160×12±50=1870,1970であり、これらは電源周波数の37〜40次に相当する。このように電機子巻線の巻回方式に分布巻が採用された場合には、集中巻が採用された場合と比較して、より高次の高調波成分が問題となる傾向がある。
【0116】
図4においてグラフL11は、変調率kとして上記B節で説明した6次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の21〜23次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流において、第2交流電圧の基本周波数成分に対して5次及び7次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。
【0117】
同様にして、図5においてグラフL21は、変調率kとして上記B節で説明した6次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の18次及び20次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流の、第2交流電圧の基本周波数成分に対する5次及び7次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。但し、電源周波数の37〜40次の高調波成分が低減されていない。
【0118】
図5においてグラフL22は、変調率kとして上記B節で説明した6次及び12次の交流成分を含ませた場合の入力電流Irの高調波成分を示す。グラフL10と比較して特に電源周波数の18次及び20次のみならず、37〜40次の高調波成分が低減していることが分かる。これは、上述の説明から、負荷電流の、第2交流電圧に対する基本周波数成分の5次及び7次のみならず、11次及び13次の高調波成分が低減されたことに起因することがわかる。
【0119】
このように高調波成分を低減するには、上記B節の説明(特に式(4)〜(14))で示されるように、高調波電力Puhに依存して適切な比Ju6n及び位相差φ6nを設定する。換言すれば、これらの値は電力に依存すると考えられる。
【0120】
図6及び図7は、それぞれ図4及び図5に対応したモータについて、入力電流Irにおける高調波含有率[%]の電力(負荷の消費電力:以下同様)に対する依存性を示すグラフである。但し、次数は第2交流電圧の基本周波数に対して換算している。
【0121】
図6からは、集中巻が採用される場合には、電力の増大に対して5次成分が低下し、7次成分はあまり増加しないことが分かる。また図7からは、分布巻が採用される場合には、電力の増大に対して5次成分は若干は増大するものの、7次成分が大きく低下し、11次成分、13次成分が共に増大することがわかる。また分布巻が採用される場合は集中巻が採用される場合と比較して5次成分がかなり小さいことがわかる。
【0122】
以上のことから、またB節の検討に鑑みて、比Ju6は電力の増大と共に減少し、かつ分布巻が採用される場合の比Ju6は集中巻が採用される場合の比Ju6よりも小さいことが予想される。また、電力が同じであれば、電機子巻線の巻回方式(集中巻/分布巻)以外のパラメタには依存しにくいとも予想される。以下、実験結果を用いてこれらの予想の妥当性を説明する。
【0123】
図8及び図9はいずれも電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju6[%]の電力に対する依存性を示すグラフである。図10及び図11はいずれも電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータについて、比Ju12[%]の電力に対する依存性を示すグラフである。それぞれ、三種の負荷トルクT1,T2,T3(T1<T2<T3)についての依存性が示されている。但し図8の結果が得られたモータと図10の結果が得られたモータは同一であり、図9の結果が得られたモータと図11の結果が得られたモータは同一である。そして図8や図10の結果が得られたモータの界磁磁束は、図9や図11の結果が得られたモータの界磁磁束よりも小さい。
【0124】
図8乃至図11から理解されるように、比Ju6は電力の増大に対して減少傾向にあることがわかる。また比Ju12は電力の増大に対して増大傾向にあることがわかる。しかも比Ju6,Ju12はいずれも負荷トルクや界磁磁束の大小には殆ど依存しない。
【0125】
よって予め、巻回方式に分布巻が採用される電機子巻線を有するモータについて、比Ju6,Ju12の電力依存性を得ておけば、トルクなど、電力以外のモータの運転状態や、界磁磁束など、電機子巻線の巻回方式以外のモータの種類について共通して、比Ju6,Ju12を採用することができる。
【0126】
図12は、図8及び図9から得られる比Ju6の平均値を線形近似した曲線と、図10及び図11から得られる比Ju12の平均値を線形近似した曲線とを示すグラフである。このような曲線で示される比Ju6,Ju12の電力依存性を予め測定し、記憶しておくことにより、実稼働において比Ju6,Ju12を得るには、出力電圧及び負荷電流に基づいて電力を計算するだけで足りる。
【0127】
具体的には負荷2の実稼動前に複数の電力状態について比Ju6,Ju12を求め、複数の電力状態と比Ju6,Ju12との関係をテーブルにして、あるいは式として記憶しておけばよい。かかるテーブルや式を記憶するのは、6n次成分演算部702であってもよいし、振幅・位相抽出部701であってもよい。
【0128】
図13は電機子巻線の巻回方式が集中巻であるモータについて、比Ju6[%]の電力に対する依存性の平均値を線形近似した曲線を示すグラフである。図12と同様に比Ju6は電力の増大と共に減少する傾向があり、かつ上記で予想されたように、電機子巻線の巻回方式が分布巻であるモータと比較して、比Ju6は大きい。
【0129】
よって負荷の実稼働前に予め、電機子巻線の巻回方式毎に、また電力毎に、比Ju6,Ju12を求めて記憶しておくことが望ましい。これにより実稼働の際の計算量についての負担が低減される。
【0130】
上記考察は比Ju6nについて説明したが、B節で説明された原理から、当該考察がd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*にも妥当することはいうまでもない。即ち、負荷の実稼働前に予め、電機子巻線の巻回方式毎に、また電力毎に、d軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*を求めて記憶しておくことが望ましい。これにより実稼働の際の計算量が低減される。
【0131】
もちろん、予め比Ju6nあるいはd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令Vq*の依存性を、電力状態及び電機子巻線の巻回方式のみならず、モータトルクの大きさや、モータ回転速度についての複数の稼動状態に対しても得ておき、これらをテーブル若しくは関数として記憶してもよい。電力状態も稼動状態の一種として把握することができる。
【0132】
E.第2交流電圧の周波数上昇に伴う補正
PWM変調部714において、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*並びに変調率k、若しくは補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**並びに変調率k0を用いて、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を時間的に離散されたタイミングで生成する。このタイミングの周期は、例えばPWM変調部714においてキャリア比較方式が採用される場合、比較の基礎となるキャリアの周波数で決定される。
【0133】
通常、当該キャリアの周波数は固定されるので、第2交流電圧の基本周波数成分が高まるほど、当該基本周波数に対して更新されるゲート信号の個数は少なくなる。
【0134】
特に、変調率kや補正されたd軸電圧指令Vd**及びq軸電圧指令Vq**は、当該基本周波数の6n倍の周波数を有しているので、これらがゲート信号の更新に適時に反映されにくくなる。
【0135】
つまり、第2交流電圧の基本周波数成分が高まるほど、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*が実質的に目減りすることになる。そしてその傾向は高調波の次数、即ち値nが大きくなるほど顕著となる。
【0136】
図14はかかる目減りを模式的に示すグラフである。曲線L3は値Ju6n・cos(6nωLt+φ6n)やd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*(以下、「高調波低減用成分」とも称す)が6n次高調波で変動することを示す。また破線はゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成するタイミングを示す。よって当該タイミング同士の間では、高調波低減用成分が、破線と曲線L3との交点を示す黒丸の値をとり続けることになる。即ち理想的には(当該タイミングの間隔が十分に小さければ;換言すると第2交流電圧の基本周波数が十分に小さければ)正弦波状の曲線L3であるはずの高調波低減用成分が、階段状の曲線L4をとることになる。
【0137】
そこで、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*を増大させる増感量を設定し、第2交流電圧Vu,Vv,Vwの基本周波数成分が高まるほど当該増感量を増大させることが望ましい。上記目減りを補償するためである。
【0138】
図15は負荷2としてモータを採用したときの回転速度に対するタイミング数を示すグラフである。当該タイミング数は高調波低減用成分(ここでは12次成分)の1周期当たりにおいて、ゲート信号を生成するタイミングの個数を示す。
【0139】
回転速度は一秒間当たりの回転数(rps)で示されており、モータの極対数を2とすると、回転速度50rpsを周波数に換算した50×2=100[Hz]が第2交流電圧の基本周波数に該当する。よって高調波低減用成分が有する12次成分は1200Hzとなる。今、キャリア周波数を6kHzとすると、回転速度50rpsのときのタイミング数は6000/1200=5となる。
【0140】
図15には増感量も併せて示している。ここで増感量は、B節の考察に基づいて設定された高調波低減用成分に対して乗算すべき値として示されている。増感量は回転速度50〜88rps(これは基本周波数100〜1400Hzに相当する)において、回転速度が増大するほど増大する。つまり第2交流電圧の基本角周波数の所定の範囲においては、基本角周波数が増大するほど増大する増感量で、高調波低減用成分の振幅を大きくする。変調率kを採用する場合には、変調率比Ju6nを大きくすることになる。
【0141】
なお、増感量は回転速度50rps未満では零であり、実質的には高調波低減用成分が採用されない(図15において“OFF”として示している)。これはIEC61000−3−2の規定は電源周波数についての高調波の次数が低いほど高調波電流の上限が大きいからである。具体的に図15で示された例では、第2交流電圧の基本角周波数の12倍が1200Hzであり、入力電流における1200±50Hzの成分は当該規格よりも小さく、負荷電流の高調波を抑制する必要がなかったためである。
【0142】
また、増感量は回転速度88rps以上では零であり、実質的には高調波低減用成分が採用されない(図15において“OFF”として示している)。これはIEC61000−3−2の規定は電源周波数についての40次よりも高い高調波については上限を設定していないからである。具体的に回転速度88rpsに相当する周波数の12倍の値は2112Hzであり、これよりも電源周波数50Hzだけ低い周波数2062Hzは電源周波数の41次に相当し、IEC61000−3−2の規定の制限を受けない。よって回転速度88rps以上では高調波低減用成分を採用しなくてよい。
【0143】
このような増感量も、比Ju6nやd軸電圧指令補正値ΔVd*及びq軸電圧指令補正値ΔVq*と同様に、予め電力状態及び電機子巻線の巻回方式に対して、あるいは更にモータトルクの大きさや、モータ回転速度に対しても得ておき、これらをテーブル若しくは関数として記憶してもよい。
【0144】
なお、キャリア周波数を高めることにより回転速度に対するタイミング数を増大させることができるので、増感量が必要な回転速度の領域を高めることができる。換言すれば、キャリア周波数が高いほど、回転速が高い領域まで増加量の設定は不要となる。キャリア周波数を高めることに対応するため、スイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stn,Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnとして、スイッチング周波数を高めることができる素子、例えばSiCやGaNを材料とするワイドバンドギャップ素子を採用することができる。
【0145】
F.変形
また、本実施の形態を適用する主回路方式は図1に例示された直流リンクが設けられた場合に限定されない。即ち、特許文献3で紹介された仮想直流リンク方式の直接形交流電力変換器に適用されてもよい。
【0146】
図10は本実施の形態が適用される他の直接形電力変換器の構成を示す回路図である。ここでは直接形電力変換器としてダイレクトマトリックスコンバータMCVが例示される。
【0147】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVは、入力端Pr,Ps,Ptと、出力端Pu,Pv,Pwとを備えている。入力端Pr,Ps,Ptにはそれぞれ交流電圧Vr,Vs,Vtが入力され、出力端Pu,Pv,Pwからはそれぞれ三相交流出力電圧Vu,Vv,Vwが出力される。
【0148】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVは、スイッチング素子Sur,Sus,Sut,Svr,Svs,Svt,Swr,Sws,Swtを備えている。3つのスイッチング素子Sur,Sus,Sutは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Puとの間に接続されている。3つのスイッチング素子Svr,Svs,Svtは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Pvとの間に接続されている。3つのスイッチング素子Swr,Sws,Swtは、入力端Pr,Ps,Ptの各々と出力端Pwとの間に接続されている。
【0149】
ダイレクトマトリックスコンバータMCVに対して本実施の形態にかかる制御方法を適用する場合、仮想AC/DC/AC制御が採用される。この仮想AC/DC/AC制御では、例えば、図1に示すコンバータ3、インバータ4を仮想する。両者を繋ぐ仮想的な直流リンクとして一対の直流電源線L1,L2が想定できる。つまり、ダイレクトマトリックスコンバータMCVに対して採用される仮想AC/DC/AC制御では、交流電圧Vr,Vs,Vtを仮想的に整流して仮想的な整流電圧Vdcを得る仮想整流回路としてコンバータ3が、仮想的な整流電圧Vdcから交流電圧Vu,Vv,Vwを得る仮想電圧形インバータとしてインバータ4が、それぞれ想定される。そして既に説明された事項と同様にして、仮想電圧形インバータの変調率kに、直流成分k0と、第2交流電圧Vu,Vv,Vwの基本角周波数ωLの6n倍の角周波数6nωLの交流成分(−k0ΣJu6n・cos(6nωLt+φ6n)を含ませるべく、ゲート信号Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*を生成する。これらのゲート信号は仮想電圧インバータとしてのインバータ4の動作を制御する。
【0150】
仮想整流回路としてのコンバータ3のスイッチングについても、実際のコンバータ3のスイッチングと同様に、例えば非特許文献1や特許文献2を参照して、スイッチング素子Srp,Ssp,Stp,Srn,Ssn,Stnの導通/非導通を制御するゲート信号Srp*,Ssp*,Stp*,Srn*,Ssn*,Stn*を得る。
【0151】
そして、ゲート信号Srp*,Ssp*,Stp*,Srn*,Ssn*,Stn*,Sup*,Svp*,Swp*,Sun*,Svn*,Swn*から次の式により行列変換して、ダイレクトマトリックスコンバータMCVのスイッチ信号が得られる。
【0152】
【数23】
【0153】
スイッチ信号S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33は、それぞれスイッチング素子Sur,Sus,Sut,Svr,Svs,Svt,Swr,Sws,Swtについてのスイッチ信号である。かかる行列変換が妥当であることは、既に特許文献3から周知である。
【0154】
また特許文献4で紹介されたように、非常に小さなコンデンサが用いられる変換回路に適用してもよい。あるいは直流リンクへ出力するコンバータ3の入力側が単相入力であっても多相入力であってもかまわない。
【符号の説明】
【0155】
2 負荷
3 コンバータ
4 インバータ
9 直接形交流電力変換器
Vr,Vs,Vt,Vu,Vv,Vw 交流電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法であって、
前記電圧形インバータの変調率(k)は、直流成分(k0)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍(nは自然数)の角周波数(6n・ωL)の交流成分(k6n・cos(6n・ωL・t+φ6n))とを有し、
前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−k6n/k0)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとり、
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとり、
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
の関係を有することを特徴とする、電力変換器制御方法。
【請求項2】
第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法であって、
前記電圧形インバータに対する電圧指令(Vd**、Vq**)は、直流成分(Vd*.Vq*)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍(nは自然数)の角周波数(6n・ωL)の交流成分((−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n))を有し、
前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−Ju6n)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとり、
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとり、
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
の関係を有することを特徴とする、電力変換器制御方法。
【請求項3】
前記交流成分の前記直流成分に対する比は前記負荷の稼動状態の複数に対する関数として前記負荷の実稼動の前に予め求められており、
前記実稼働において前記関数に基づいて前記直接形交流電力変換器(9)を制御する、請求項1又は請求項2に記載の電力変換器制御方法。
【請求項4】
前記稼動状態は、前記負荷が消費する複数の電力状態を含み、
前記実稼働においては前記電力状態に対応した前記比が採用される、請求項3記載の電力変換器制御方法。
【請求項5】
前記第2交流電圧の前記基本角周波数(ωL)の所定の範囲においては、前記基本角周波数が増大するほど増大する増感量で前記交流成分の振幅を大きくする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電力変換器制御方法。
【請求項6】
全てのnにおいてIuh6n=0である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の電力変換器制御方法。
【請求項1】
第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法であって、
前記電圧形インバータの変調率(k)は、直流成分(k0)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍(nは自然数)の角周波数(6n・ωL)の交流成分(k6n・cos(6n・ωL・t+φ6n))とを有し、
前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−k6n/k0)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとり、
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとり、
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
の関係を有することを特徴とする、電力変換器制御方法。
【請求項2】
第1交流電圧(Vr,Vs,Vt)を入力し整流電圧(Vdc)を出力する整流回路(3)と、前記整流電圧を入力し三相の第2交流電圧(Vu,Vv,Vw)を負荷に印加して三相の負荷電流(Iu,Iv,Iw)を前記負荷に出力する電圧形インバータ(4)とを備える直接形交流電力変換器(9)を制御する方法であって、
前記電圧形インバータに対する電圧指令(Vd**、Vq**)は、直流成分(Vd*.Vq*)と、前記第2交流電圧の基本角周波数(ωL)の6n倍(nは自然数)の角周波数(6n・ωL)の交流成分((−Ju6n・Eu1)・sin(6nωL+φ6n)(−Ju6n・Eu1)・cos(6nωL+φ6n))を有し、
前記負荷電流の基本波成分、第(6n−1)次成分及び第(6n+1)次成分をそれぞれIu1,Iu6n−1,Iu6n+1とし、前記負荷電流の前記基本波成分、前記第(6n−1)次成分及び前記第(6n+1)次成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差をそれぞれφ1,φ6n−1,φ6n+1とすると、
前記交流成分の振幅の前記直流成分に対する比(−Ju6n)は、
−[m6n2+Iuh6n2+2・m6n・Iuh6ncos(θ-χ6n)]1/2/[Iu1・cos(φ1)]
(m6n=[I(6n−1)2+I(6n+1)2+2・I(6n−1)・I(6n+1)cos(φ6n−1-φ6n+1)]1/2)
で表される比率をとり、
前記交流成分の前記第2交流電圧の基本波成分に対する位相差(φ6n)は、
tan−1[{m6n・sin(χ6n)+Iuh6n・sin(χ6n)}/{m(6n)・cos(χ6n)+Iuh6n・cos(χ6n)}]
(χ6n=tan−1[{I(6n−1)・sin(φ6n−1)+I(6n+1)・sin(φ6n+1)}/{I(6n−1)・cos(φ6n−1)+I(6n+1)・cos(φ6n+1)}]
で表される角度をとり、
Iuh6n<m6n1/2
χ6n:任意
の関係を有することを特徴とする、電力変換器制御方法。
【請求項3】
前記交流成分の前記直流成分に対する比は前記負荷の稼動状態の複数に対する関数として前記負荷の実稼動の前に予め求められており、
前記実稼働において前記関数に基づいて前記直接形交流電力変換器(9)を制御する、請求項1又は請求項2に記載の電力変換器制御方法。
【請求項4】
前記稼動状態は、前記負荷が消費する複数の電力状態を含み、
前記実稼働においては前記電力状態に対応した前記比が採用される、請求項3記載の電力変換器制御方法。
【請求項5】
前記第2交流電圧の前記基本角周波数(ωL)の所定の範囲においては、前記基本角周波数が増大するほど増大する増感量で前記交流成分の振幅を大きくする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電力変換器制御方法。
【請求項6】
全てのnにおいてIuh6n=0である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の電力変換器制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−85451(P2013−85451A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202176(P2012−202176)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]