説明

電力変換装置、および過電流保護回路

【課題】直流電力をスイッチングして生成した交流電力を電動機に供給し、当該電動機を駆動する電力変換装置の直流部に含まれる平滑化用のコンデンサの破損を招くことなく、スイッチング用の半導体スイッチを過電流による破損から保護することを可能にする。
【解決手段】自装置から電動機に供給する電流を検出する電流検出部と、電流検出部により検出された電流レベルと過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合にスイッチングの緊急停止を行う電力変換装置に、電動機の運転状態が駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかを判別する駆動制動判別部と、電動機の運転状態に応じて上記閾値を設定する閾値設定部であって、制動運転状態と判別された場合の上記閾値を駆動運転状態と判別された場合よりも低く設定する閾値設定部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電力を交流電力に変換して交流電動機に供給し、当該交流電動機の駆動制御を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴い、動力源として交流電動機(以下、単に「電動機」)を用いる電気自動車や、電動機と内燃機関とを使い分けるハイブリッド(Hybrid)自動車の普及が急速に進んでいる。電動機は、内燃機関のように二酸化炭素を排出することはなく、二酸化炭素の排出量の削減に寄与するからである。図13は、電気自動車或いはハイブリッド自動車用の電動機の速度−トルク特性の一例を示す図である。この種の電動機は広い運転速度範囲を有し、低速時は一定の大トルク、高速時はトルクを絞った一定出力で運転される。また、電気自動車やハイブリッド自動車においては、電動機の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生する制動運転も積極的に行われる。例えば、図13に示す速度−トルク特性では、駆動運転時の最大トルクは180N・m、制動運転時の最小トルクは−127N・mとなっており、回転速度(1分当りの回転数)3000min−1までが定トルク特性、3000min−1以上8000min−1以下が定出力特性となっている。図14は、電気自動車用或いはハイブリッド自動車用の電動機の速度−電流特性の一例を示す図である。図14に示すように、この種の電動機におけるトルク−電流間には強い相関があり、トルクの絶対値が大きいほど電流も大きくなる。
【0003】
電気自動車或いはハイブリッド自動車における電動機の可変速制御には、インバータが用いられることが多い。インバータとは、バッテリなどの直流電源から供給される直流電力をIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチのスイッチングによって任意の周波数および任意の電圧の交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置のことをいう。前述したように、電気自動車やハイブリッド自動車用の電動機は広い運転速度範囲を有し、トルクの絶対値が大きいほど電流も大きくなる。電動機に大きな電流を供給している状況下で電力変換装置において地絡等が発生すると、半導体スイッチに過剰に大きい電流(以下、過電流)が流れ、その半導体スイッチを破損させる虞がある。このため、電力変換装置には、過電流による半導体スイッチの破損を防止するための過電流保護機能が設けられていることが多い。
【0004】
過電流保護機能とは、閾値を超える電流の発生を検知した場合に電力変換に関わる全ての半導体スイッチをオフにし、さらに直流電源と電力変換装置とを接続する電源スイッチをオフにして電力変換動作を緊急停止させる機能のことをいう。この閾値は、電力変換装置が備える半導体スイッチの許容電流により決定され、従来の電力変換装置においては基本的に一定である。また、半導体スイッチの許容電流は、半導体スイッチの温度に応じて変化するため、保護対象の半導体スイッチの温度を検出(或いは、推定)し、保護対象の半導体スイッチの温度の検出結果(或いは、推定結果)に応じて当該閾値を変化させることも提案されている(特許文献1参照)。さらに、電力変換装置のなかには、過電流保護機能に加えて、電流制限機能を有するものもある。電流制限機能とは、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値(以下、第1の閾値)とは別個に第2の閾値を設定し、当該第2の閾値を上回る電流が流れないようにスイッチングを抑制するものの、電力変換装置全体の動作を停止させないようにする機能のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−10649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電力変換装置において直流電源からの直流電力の供給を受ける直流部には、当該直流電力を平滑化するためのコンデンサ(或いはキャパシタ(Capacitor)とも呼ばれる)が設けられている。前述したように、過電流保護機能が動作すると、電力変換に関わる全ての半導体スイッチはオフにされ、電動機から電力変換装置にエネルギーが回生する。このとき、電源スイッチが開放されると、電力変換装置の直流部に設けられたコンデンサが上記回生エネルギーによって充電され、当該コンデンサの電極間電圧が上昇する。電気自動車やハイブリッド自動車では、電動機として永久磁石型同期電動機が用いられることが多く、永久磁石型同期電動機では回転数と無負荷誘起電圧が比例する。このため、過電流保護機能が働いた場合、高速時ほど電動機から電力変換装置へ回生されるエネルギーは大きくなる。つまり、電動機の高速運転を要求される電気自動車やハイブリッド自動車では、過電流保護機能動作後の回生エネルギーが大きく、直流部に設けられている平滑化用コンデンサの耐圧を超えて電極間電圧が上昇し、当該コンデンサを破損させる虞がある。
【0007】
また、制動運転時に過電流保護機能が働くと、過電流保護機能動作以前から回生されていたエネルギーに、電力変換に関わる全ての半導体スイッチをオフにすることに起因して電動機から電力変換装置に回生するエネルギーが上乗せされることになる。このため、制動運転時に過電流保護機能が働いた場合の上記コンデンサの電極間電圧の上昇量は、駆動運転時に過電流保護機能が働いた場合の上昇量に比較して大きくなる。また、電気自動車やハイブリッド自動車では、電力変換装置に印加される直流電圧が車種によって異なることがあり、詳細については後述するが、電力変換装置に印加される直流電圧が高いほど過電流保護機能が働いた場合に電力変換装置に回生されるエネルギーは大きくなる。したがって、電気自動車やハイブリッド自動車用の電力変換装置については、過電流保護機能を働かせた際に直流部に含まれる平滑化用コンデンサの電極間電圧がその耐圧を超えて上昇することがないように配慮する必要があるが、従来は充分な配慮は為されていなかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、直流電力をスイッチングして生成した交流電力を電動機に供給し当該電動機を駆動する電力変換装置の直流部に含まれる平滑化用のコンデンサの破損を招くことなく、スイッチング用の半導体スイッチを過電流による破損から保護することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電力変換装置は、電力変換部、平滑化用のコンデンサ、スイッチング制御部、電流検出部、過電流検知部、および閾値設定部を有している。これら各部の役割は以下の通りである。電力変換部は、直流電源から供給される直流電力を半導体スイッチのスイッチングによって交流電力に変換し、電動機に供給する。平滑化用のコンデンサは直流電源から電力変換部に印加される直流電圧を平滑化する役割を担う。スイッチング制御部は、外部から与えられるトルク指令等に応じて電力変換部におけるスイッチングを制御する。電流検出部は、電力変換部から電動機へ供給される電流を検出し、検出した電流レベル(電流の絶対値)を示す電流情報を過電流検知部に与える。閾値設定部は、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を設定する。過電流検知部は、電流情報の示す電流レベルと閾値設定部により設定された閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合に、電力変換部におけるスイッチングの停止を指示する過電流検知信号をスイッチング制御部に与える。スイッチング制御部は、過電流検知信号を受け取ったことを契機として、電力変換部におけるスイッチングを停止させ、これにより、過電流による半導体スイッチの破損が回避される。
【0010】
ここで、閾値設定部による閾値の設定態様としては、電動機の運転状態に応じて上記閾値を設定する態様(以下、第1の態様)、直流電源から電力変換部に供給される直流電圧の大きさに応じて上記閾値を設定する態様(第2の態様)、第1および第2の態様を併用した態様(第3の態様)が考えられる。第1の態様としては、電動機が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのかという観点から電動機の運転状態を判別し、その判別結果に応じて上記閾値を設定する態様が考えられる。この態様においては、閾値設定部は、制動運転状態と判別された場合には、駆動運転状態と判別された場合よりも上記閾値を低く設定する。その理由は以下の通りである。過電流保護機能を働かせた場合における平滑化用コンデンサの電極間電圧の上昇量は、閾値を同一にして過電流保護機能を働かせた場合であっても、制動運転状態のほうが駆動運転状態に比較して大きくなる。過電流保護機能を働かせた場合における平滑化用コンデンサの電極間電圧の上昇によって当該コンデンサが破損しないようにするために、制動運転状態における閾値を駆動運転状態における閾値よりも低く設定するのである。
【0011】
なお、電動機が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのかを判別する具体的な方法としては、電力変換部から電動機へ供給される電流のq軸成分を参照して判別する方法、或いは電動機の運転状態を指示するための操作子(例えば、電気自動車やハイブリッド自動車におけるアクセルペダル)の操作量に基づいて判別する方法が考えられる。例えば、電力変換部から電動機へ供給される電流のq軸成分を参照して判別する態様では、q軸成分の符号が非負であれば駆動運転状態と判別し、逆にq軸成分の符号が負であれば制動運転状態と判別するといった具合である。
【0012】
電動機の運転状態に応じて上記閾値を設定する態様の別の好ましい態様としては、電動機の運転状態を示すパラメータとして電動機の回転数(より正確には、1分などの単位時間当りの回転数、すなわち回転速度)を利用する態様が考えられる。より詳細に説明すると、電動機の回転数が高いほど、上記閾値を低く設定するのである。過電流保護機能を働かせる直前の電動機の回転数が高いほど、過電流保護機能を働かせた場合に電動機から電力変換装置へ回生するエネルギーは大きく、平滑化用コンデンサの電極間電圧の上昇量も大きくなるからである。かかる態様の具体的な実現方法としては、電動機の回転数を検出する回転数検出部を設け、当該回転数検出部により検出された回転数が高いほど上記閾値を低く設定する態様が考えられる。また、電動機に供給される電流を参照して当該電動機の回転数を推定する回転数推定部を設け、当該回転数推定部により推定された回転数が高いほど上記閾値を低く設定する態様も考えられる。
【0013】
また、電動機の運転状態として、駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかと電動機の回転数との両者に着目する態様も考えられる。電動機の運転状態として、駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかと電動機の回転数の両者に着目する場合には、回転数検出部により検出された回転数(或いは回転数推定部により推定された回転数)が高いほど、上記閾値を低くするとともに、同一回転数においては制動運転時の閾値を駆動運転時の閾値よりも低くすることが考えられる。
【0014】
上記第1の態様に対して第2の態様は、電動機の運転状態とは無関係に、直流電源から電力変換部に印加される直流電圧が高いほど、上記閾値を低く設定する態様である。直流電源から電力変換部に印加される直流電圧が高いほど、過電流保護機能を働かせた後の平滑化用コンデンサの電極間電圧の上昇量は大きくなるからである。
【0015】
また、第3の態様としては、同一の運転状態であれば、直流電源から電力変換部に印加される直流電圧が高いほど、上記閾値を低く設定する態様が考えられる。同一の運転状態において過電流の発生の有無を判定するための閾値を同一にして過電流保護機能を働かせた場合であっても、直流電源から電力変換部に印加される直流電圧が高いほど平滑化用コンデンサの電極間電圧の上昇量は大きくなるからである。
【0016】
さらに好ましい態様としては、電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値を過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値よりも低く設定し、過電流検知部には、電力変換部から電動機へ出力される各相の電流毎にその電流レベルが第2の閾値を上回ったか否かを判定させ、スイッチング制御部には、第2の閾値を上回ったと判定された相に関するスイッチングを停止若しくは当該相のパルスを低減させる制御、または前記電動機のトルクを低減させる制御を行わせるようにする態様も考えられる。ここで、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を電動機の運転状態、直流電源から電力変換部に印加される直流電圧、或いはその両方に応じて設定する場合には、当該閾値の設定に連動させて上記第2の閾値を設定するようにすれば良い。具体的には、閾値設定部により設定された閾値のa(0<a<1)倍を上記第2の閾値とする態様が考えられる。また、第2の閾値を設定する第2閾値設定部を上記閾値設定部とは別個に設け、閾値設定部に与えたものと同一のパラメータを与え、閾値設定部において当該パラメータに基づいて設定される閾値よりも低くいという大小関係を維持しつつ第2の閾値を同パラメータに基づいて設定する処理を当該第2閾値設定部に実行させるようにしても良い。
【0017】
また、本発明の別の態様としては、電力変換装置から電動機へ供給される電流を検出する電流検出部と、電流検出部により検出された電流の電流レベルと過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合に、スイッチングの停止を指示する過電流検知信号を電力変換装置に出力する過電流検知部と、電動機の運転状態に応じて前記閾値を設定する閾値設定部とを組み合わせて過電流保護回路を構成し、この過電流保護回路単体で(すなわち、電力変換装置とは別個に)提供する態様も考えられる。同様に、上記電流検出部と、上記過電流検知部と、直流電源から電力変換装置に印加される直流電圧を検出する直流電圧検出部と、直流電圧検出部により検出された電圧が高いほど、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を低く設定する閾値設定部とを組み合わせて構成した過電流保護回路を単体で(すなわち、電力変換装置とは別個に)提供しても良い。本発明による過電流保護回路を従来の電力変換装置に装着する(或いは、従来の電力変換装置の過電流保護回路に換えて装着する)ことで従来の電力変換装置を本発明による電力変換装置として機能させることが可能になるからである。
【0018】
また、さらに別の態様としては、本発明による過電流保護回路を構成する各部の機能をCPU(Central Processing Unit)などのコンピュータに実現させるプログラムを提供しても良い。このようなプログラムにしたがってコンピュータを作動させることで、そのコンピュータを本発明の過電流保護回路として動作させることが可能になるからである。このようなプログラムの具体的な配布態様としては、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)やメモリスティック、ROMチップなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に当該プログラムを書き込んで配布する態様や、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の電力変換装置20Aの構成例を示す図である。
【図2】過電流検知部2470の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の効果を説明するためのシミュレーションを説明するための図である。
【図4】同シミュレーションの結果を示す図である。
【図5】同シミュレーションの結果を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態の電力変換装置20Bの構成例を示す図である。
【図7】過電流保護機能を働かせても平滑化用コンデンサの電極間電圧が耐圧を上回らない電流値と、電力変換装置の直流部に印加される直流電圧および交流電動機の回転数の関係を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態の電力変換装置20Cの構成例を示す図である。
【図9】直流電源10から直流部に印加される直流電圧に応じて閾値設定部2462が設定する閾値の一例を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態の電力変換装置20Dの構成例を示す図である。
【図11】直流電源10から電力変換装置20Dの直流部に印加される直流電圧および電動機30の運転状態に応じて閾値設定部2464が設定する閾値の一例を示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態の電力変換装置20Eの構成例を示す図である。
【図13】電気自動車或いはハイブリッド自動車用の電動機の駆動時および制動時における速度−最大トルク特性の一例を示す図である。
【図14】電気自動車或いはハイブリッド自動車用の電動機の駆動時および制動時における速度と電流の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
(A:第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電力変換装置20Aの構成例を示す図である。
図1に示す電力変換装置20Aは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載され、それらの車両の動力源たる電動機の可変速制御を行うためのものである。図1には、電力変換装置20Aとともに、電力変換装置20Aに直流電力を供給する直流電源10と、電力変換装置20Aによる可変速制御の対象となる電動機30が図示される。電力変換装置20Aは、直流電源10から供給される直流電力を任意の周波数および任意の電圧の交流電力に変換して電動機30に供給する。電動機30に供給する交流電力の周波数または電圧(或いはその両方)を調整することで、電動機30の可変速制御が実現される。
【0021】
図1に示すように、電力変換装置20Aは、電源スイッチ210、コンデンサ220、電力変換部230、および制御部240Aを含んでいる。電源スイッチ210は、直流電源10から電力変換部230への直流電圧の入力経路の途中に設けられている。電源スイッチ210は、電力変換部230と直流電源10とを接続若しくは開放するためのものであり、安全確保の観点から設けられる。コンデンサ220は、直流電源10から電力変換装置20Aに供給される直流電力を平滑化する役割を担う。電力変換部230は、例えばIGBTなどの半導体スイッチを複数含んでいる。電力変換部230には、電源スイッチ210を介して直流電源10から直流電力が供給される。電力変換部230に供給された直流電力は、上記各半導体スイッチのスイッチングによって任意の周波数および任意の電圧の三相交流電力に変換され、この三相交流電力が電動機30に供給される。
【0022】
制御部240Aは、電力変換装置20Aの各部の駆動制御を行うものであり、例えば外部から与えられるトルク指令等に応じて電力変換部230におけるスイッチングの制御を行う。加えて、制御部240Aは、電力変換部230に含まれる各半導体スイッチを過電流による破損から保護する役割(すなわち、前述した過電流保護機能)も担っている。図1に示すように、制御部240Aは、電流検出部2410、スイッチング制御部2420、三相二相変換部2430、座標変換部2440、駆動制動判別部2450、閾値設定部2460、および過電流検知部2470を含んでいる。制御部240Aの各構成要素は電子回路などのハードウェアにより構成されている。このように、制御部240Aを構成する各部をハードウェアにより実現したのは、過電流保護機能を迅速かつ確実に働かせるためである。
【0023】
電流検出部2410は、電力変換部230から電動機30に供給される三相交流電流を検出し、各相の電流を示す電流情報を過電流検知部2470に与える。過電流検知部2470は、電流検出部2410から与えられる電流情報の示す各相の電流レベルを過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値と常時比較し、何れかの相の電流レベルが当該閾値を上回った場合に、過電流の発生を報知する過電流検知信号をスイッチング制御部2420に与える。詳細については後述するが、本実施形態では、各相の電流レベルとの比較対象となる閾値は、電動機30の運転状態(制動運転状態であるのか駆動運転状態であるのか)に応じて閾値設定部2460によって設定される。
【0024】
図2は、過電流検知部2470の構成例を示す図である。図2に示すように、過電流検知部2470は、絶対値変換部2470aと比較部2470bとを含んでいる。絶対値変換部2470aは、電流検出部2410から与えられる電流情報から上記三相交流電流の各相の電流の絶対値(電流レベル)を算出し、比較部2470bに与える。比較部2470bは、絶対値変換部2470aにより算出された各相の電流レベルと閾値設定部2460により設定された閾値とを相毎に比較する。そして、比較部2470bは、電流レベルが上記閾値を上回る相が一つでもある場合には、信号値がHighレベルの過電流検知信号を出力し、逆に、何れの相についても電流レベルが上記閾値を下回っている場合には、信号値がLowレベルの過電流検知信号を出力する。
【0025】
スイッチング制御部2420は、電力変換部230に含まれる各半導体スイッチのオン/オフを制御するためのゲート信号を、外部から与えられるトルク指令等に応じて生成し、電力変換部230の各半導体スイッチに与える。これにより、電力変換部230におけるスイッチングの制御が実現される。より詳細に説明すると、スイッチング制御部2420には、電力変換部230から電動機30に供給される三相交流電流のd軸成分I、およびq軸成分Iを示す信号が与えられる。そして、スイッチング制御部2420は、上記d軸成分I、およびq軸成分Iの示すトルクとトルク指令の示すトルクとの差が解消されるように電力変換部230におけるスイッチングを制御する。加えて、スイッチング制御部2420は、信号値がHighレベルの過電流検知信号を過電流検知部2470から受け取った場合に、電力変換部230に含まれる全ての半導体スイッチをオフにし、さらに電源スイッチ210をオフにする緊急停止処理を行う。これにより、電力変換部230に含まれる半導体スイッチの過電流保護が実現される。
【0026】
図1に示すように、電流検出部2410から出力される電流情報は過電流検知部2470に与えられるとともに、三相二相変換部2430にも与えられる。三相二相変換部2430は、電流検出部2410から与えられる電流情報をIαおよびIβの二相の電流を表す電流情報に変換して座標変換部2440に与える。座標変換部2440は、三相二相変換部2430から与えられる電流情報から、前述したd軸成分I、およびq軸成分Iを求める。そして、座標変換部2440は、当該d軸成分Iおよびq軸成分Iの各々を表す信号をスイッチング制御部2420に与えるとともに、q軸成分Iを示す信号を駆動制動判別部2450に与える。駆動制動判別部2450は、座標変換部2440により求められたq軸成分Iの符号から、電動機30の運転状態が駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態であるのかを判別し、その判別結果を示す判別結果信号を閾値設定部2460に与える。具体的には、駆動制動判別部2450は、q軸成分Iの符号が負であれば制動運転状態であると判別してHighレベルの判別結果信号を出力し、逆にq軸成分Iの符号が非負であれば駆動運転状態であると判別してLowレベルの判別結果信号を出力する。
【0027】
閾値設定部2460は、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を駆動制動判別部2450による判別結果に応じて決定し、過電流検知部2470に設定する。より詳細に説明すると、閾値設定部2460は、Lowレベルの判別結果信号を駆動制動判別部2450から受け取った場合には、上記閾値を定格電流の300%に設定する。逆に、Highレベルの判別結果信号を駆動制動判別部2450から受け取った場合には、閾値設定部2460は、上記閾値を定格電流の200%に設定する。つまり、本実施形態では、電動機30の運転状態が制動運転状態であると判別された場合には、上記閾値は駆動運転状態であると判別された場合よりも低く設定される。ここで、駆動運転時および制動運転時の各々における上記閾値の設定については、各運転状態における閾値を示すデータを閾値設定部2460の記憶部(図示省略)に予め記憶させておき、運転状態に応じたデータを読み出すことでその設定を行っても良く、また、当該記憶部には定格電流の電流値を示すデータと、各運転状態における上記閾値を算出する際に定格電流の電流値に乗算する係数を記憶させておき、その都度演算によって各運転状態における閾値を算出しても良い。
【0028】
本実施形態において、制動運転状態において過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を、駆動運転状態におけるものよりも低く設定した理由は以下の通りである。駆動運転状態と制動運転状態とで上記閾値を同一にしておくと、制動運転状態において過電流保護機能を働かせた場合のコンデンサ220の電極間電圧の上昇量は、駆動運転状態において過電流保護機能を働かせた場合の上昇量に比較して、過電流保護機能動作以前に回生されていたエネルギーの分だけ大きくなる。本願発明者は、同一の閾値を設定して過電流保護機能を働かせた場合に、制動運転状態と駆動運転状態とでコンデンサ220の電極間電圧の上昇量にどの程度の差が生じるのかをシミュレーションにより明らかにした。図3は、本シミュレーションに用いた回路の回路図であり、図1におけるものと同一の要素には同一の符号が付されている。本願発明者は、図3に示す回路において、ある時刻(図4および図5における時間=0.4の時刻)にて電力変換部230の全半導体スイッチをオフにするのと同時に電源スイッチ210を開放した場合に、コンデンサ220の電極間電圧がどの程度上昇するのかを、駆動運転状態と制動運転状態の各々についてシミュレーションにより算出した。なお、このシミュレーションでは、電動機30の出力トルクを127N・m(制動運転状態では負の値)、電動機30に与える交流電流の電流値を212A、同周波数を150Hz、電動機30の回転速度を3000min−1、直流電圧を400Vとした。
【0029】
図4は、駆動運転状態についてのシミュレーション結果を示す図であり、図5は制動運転状態についてのシミュレーション結果を各々示す図である。図4に示すように、駆動運転状態において過電流保護機能を働かせた場合には、コンデンサ220の電極間電圧は450Vまで上昇した。これに対して、図5に示すように、制動運転状態において過電流保護機能を働かせた場合には、コンデンサ220の電極間電圧は500Vまで上昇した。仮に、コンデンサ220の耐圧が470V程度であるとすると、制動運転状態において過電流保護機能が働いた場合にコンデンサ220は破損する可能性が高い。本実施形態では、過電流保護機能を働かせた場合のコンデンサ220の電極間電圧の上昇量の差分を考慮し、制動運転状態における上記閾値を駆動運転状態よりも低く設定することとしたのである。換言すれば、制動運転状態における閾値を駆動運転状態における閾値に比較してどの程度低くするのかについては、過電流保護機能を働かせた場合のコンデンサ220の電極間電圧の上昇量の差分に応じて定めるようにすれば良い。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置20Aでは、制動運転状態において過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を駆動運転状態における同閾値よりも低く設定するため、制動運転状態において過電流保護機能が働いたとしても、コンデンサ220の電極間電圧がその耐圧を超えて上昇することはなく、コンデンサ220の破損が防止される。つまり、本実施形態によれば、直流電源10から供給される直流電力を交流電力に変換して電動機30に供給する電力変換装置20Aの直流部に含まれる平滑化用のコンデンサ220の破損を招くことなく、電力変換部230に含まれる半導体スイッチを過電流による破損から保護することが可能になる。
【0031】
(B:第2実施形態)
上記第1実施形態では、電動機30の運転状態(駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態であるのか)を電動機30に供給される三相交流電流に三相二相変換および座標変換を施して得られるq軸電流の符号に基づいて判別した。しかし、他の方法を用いて、電動機30の運転状態を判別することも可能である。具体的には、電動機30の運転状態をユーザに指示させるための操作子(例えば、電気自動車におけるアクセルペダル)の操作量に基づいて電動機30の運転状態を判別する態様が考えられる。アクセルペダルを踏み込んでいる状態では駆動運転状態であると判別し、逆に、アクセルペダルの踏み込みを緩めた状態では制動運転状態にあると判定する、といった具合である。本実施形態の電力変換装置20Bは、電動機30の運転状態を指示するための操作子の操作量に基づいて電動機30の運転状態を判別するように構成されている点が、第1実施形態の電力変換装置20Aと異なる。
【0032】
図6は、電力変換装置20Bの構成例を示す図である。図6では、図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。図6と図1とを比較すれば明らかように、電力変換装置20Bの構成は、制御部240Aに換えて制御部240Bを設けた点が電力変換装置20Aの構成と異なる。そして、制御部240Bの構成は、駆動制動判別部2450に換えて駆動制動判別部2452を設けた点が制御部240Aの構成と異なる。駆動制動判別部2452には、電動機30の運転状態を指示するための操作子の操作量を示す信号(以下、操作量信号)が当該操作子の操作量を検出するセンサ(例えばアクセスペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ)から与えられる。駆動制動判別部2452は、上記操作量信号の信号値を参照して電動機30の運転状態を判別し、その判別結果を示す判別結果信号を閾値設定部2460に与える。このような態様によっても、電動機の運動状態(駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態であるのか)に応じて、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を設定することが可能になる。
【0033】
一般に、電動機の運転状態を指示するための操作子に対して何らかの操作が行われると、その操作に応じて電力変換装置20Bから電動機30に供給される交流電流が変化し、電動機30の運転状態に変化が生じる。したがって、本実施形態の判別態様では、操作子に対して為された操作に応じて電動機30の運転状態に生じる変化を先取りすることになる。換言すれば、本実施形態の判別態様では、第1実施形態の判別態様に比較して電動機30の運転状態の判別精度が低下すると考えられる。したがって、電動機30の運転状態に生じる変化を先取りして、上記閾値を素早く設定することが好ましい場合には、本実施形態の判別態様を採用し、逆に、電動機30の運転状態を正確に判別して同閾値を設定することが好ましい場合には第1実施形態の判別態様を採用することが好ましいと言える。
【0034】
(C:第3実施形態)
次いで本発明の第3実施形態について説明する。前述した第1および第2実施形態では、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を電動機30の運転状態(駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのか)に応じて設定した。これに対して、本実施形態では、直流電源10から電力変換装置の直流部に印加される直流電圧の大きさに応じて上記閾値を設定する点に特徴がある。より詳細に説明すると、本実施形態では、直流電源10から電力変換装置の直流部に印加される直流電圧が高いほど、上記閾値を低く設定するのである。このようにした理由は以下の通りである。
【0035】
本願発明者は、電動機の駆動運転時に直流電圧及び電動機の回転数を変化させ、それぞれの状態において過電流保護機能を働かせた場合において、コンデンサ220の電極間電圧が耐圧を超えない電流値をシミュレーションにより求めた。図7は、本シミュレーション結果を示す図である。なお、本シミュレーションに用いた回路図は図3と同様であり、コンデンサ220の耐圧は600Vとした。図7から判るとおり、電動機の回転数が同一であれば直流電圧が高いほど、また、直流電圧が同一であれば電動機の回転数が高いほど、コンデンサ220の電極間電圧が耐圧を超える電流値は小さくなる。このシミュレーション結果は、直流電源10から電力変換装置の直流部に印加される直流電圧が高いほど、上記閾値を低くする(すなわち、過電流保護機能を働かせる電流値を低くする)必要があることを示している。このシミュレーション結果に基づいて、本実施形態では直流電源10から電力変換装置の直流部に印加される直流電圧が高いほど、上記閾値を低く設定するようにしたのである。
【0036】
図8は、本実施形態の電力変換装置20Cの構成例を示す図である。図8では、図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。図8と図1を比較すれば明らかように、電力変換装置20Cの構成は、制御部240Aに換えて制御部240Cを設けた点が電力変換装置20Aの構成と異なる。なお、図8では、制御部240Cを構成する構成要素のうち、上記閾値の設定との関連が薄い構成要素の記載は省略されている。例えば、図8では詳細な図示は省略したが、制御部240Cは制御部240Aと同様に三相二相変換部および座標変換部を含んでおり、座標変換部により算出されたd軸成分I、およびq軸成分Iはスイッチング制御部2420に与えられる。図8のスイッチング制御部2420および過電流検知部2470の動作については、前述した第1および第2実施形態におけるものと同様であるため詳細な説明を省略する。
【0037】
制御部240Cの構成は、駆動制動判別部2450を有していない点と、直流電圧検出部2480を有している点と、閾値設定部2460に換えて閾値設定部2462を設けた点が、制御部240Aの構成と異なる。直流電圧検出部2480は、直流電源10から電力変換装置20Cの直流部に印加される電圧を検出し、検出した電圧値を示す信号を閾値設定部2462に与える。閾値設定部2462は、直流電圧検出部2480から与えられる信号の示す電圧が高いほど、上記閾値を低く設定する。
【0038】
図9は、閾値設定部2462による閾値の設定例を示す図である。図9に示すように、本実施形態では、上記閾値の最大値を定格電流の330%とし、直流電圧の上昇に伴い当該閾値を連続的に低下させている。このような態様による閾値設定の具体的な実現方法としては、図9にて実線のグラフで示した関数関係を表すテーブル(すなわち、当該グラフ上の直流電圧値を示すデータと当該電圧値に対応する閾値を示すデータとを対応付けて格納したテーブル)を閾値設定部2462の記憶部(図示省略)に予め記憶させておき、このテーブルを参照することで各直流電圧に対応する閾値を閾値設定部2462に設定させることが考えられる。また、上記記憶部に上記関数関係を表す数式(すなわち、直流電圧値から当該直流電圧における閾値を算出するための数式)を記憶させておき、その数式にしたがった演算を閾値設定部2462に行わせて上記閾値を設定させることも考えられる。また、図9に示す例では、直流電圧の上昇に伴い、上記閾値を連続的に低下させているが、例えば直流電圧が0〜200Vの場合には当該閾値を定格電流の300%とし、200〜400Vの場合には当該閾値を定格電流の250%とする、といった具合に、上記閾値を段階的に低下させても良い。
【0039】
本実施形態の電力変換装置20Cによれば、直流電源10から供給される直流電圧が高いほど、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値は低く設定されるため、直流電源電圧変更時に過電流保護機能が働いたとしても、コンデンサ220の破損が防止される。
【0040】
(D:第4実施形態)
上述した第1および第2実施形態では、電動機30の運転状態として、駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態であるのかに着目し、制動運転状態において過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を駆動運転状態における同閾値よりも低く設定した。また、第3実施形態では、電力変換装置の直流部に印加される直流電圧に応じて上記閾値を設定した。これに対して本実施形態では、電動機30の運転状態として、駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態にあるのかに加えて電動機30の回転数に着目し、さらに、電動機30の運転状態と電力変換装置の直流部に印加される直流電圧の両者に応じて上記閾値を設定するようにした点に特徴がある。前掲図7に示すように、コンデンサ220の電極間電圧が耐圧を超える電流値は、直流部に印加される直流電圧と電動機30の回転数の両者に依存し、回転数が同一であれば直流電圧が高いほど、また、直流電圧が同一であれば回転数が高いほど当該電流値は低くなり、かかる電流値は駆動運転状態に比較して制動運転状態の方が低くなるからである。
【0041】
図10は本発明の第4実施形態の電力変換装置20Dの構成例を示す図である。図10では、図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。図10と図1とを比較すれば明らかように、電力変換装置20Dの構成は、制御部240Aに換えて制御部240Dを設けた点が電力変換装置20Aの構成と異なる。そして、制御部240Dの構成は、直流電圧検出部2480および回転数検出部2490を有する点と、閾値設定部2460に換えて閾値設定部2464を設けた点が制御部240Aの構成と異なる。なお、図10では図面が煩雑になることを避けるために詳細な図示は省略したが、制御部240Dにおいても座標変換部2440からスイッチング制御部2420に前述したd軸成分I、およびq軸成分Iの各々を示す信号が与えられる。そして、スイッチング制御部2420は上記d軸成分I、およびq軸成分Iの示すトルクとトルク指令の示すトルクとの差が解消されるように電力変換部230におけるスイッチングの制御を行う。回転数検出部2490は、例えばタコジェネレータ(Tachogenerator)であり、電動機30の回転子の回転数を検出し、その検出結果を示す回転数信号を閾値設定部2464に与える。なお、本実施形態では、回転数検出部2490によって電動機30の回転子の回転数を実際に検出する構成を採用したが、電動機30に供給する電流に基づいて電動機30の回転数を推定する回転数推定部を回転数検出部2490の換わりに設け、回転数の推定値を表す回転数信号を回転数推定部から閾値設定部2464に与えるようにしても良い。
【0042】
図10の閾値設定部2464は、直流電圧検出部2480により検出された電圧値、駆動制動判別部2450による判別結果、および回転数検出部2490により検出された回転数(或いは回転数推定部により推定された回転数)に応じて、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を決定し、過電流検知部2470に設定する。より詳細に説明すると、閾値設定部2464は、回転数検出部2490により検出された回転数(或いは回転数推定部により推定された回転数)が高いほど上記閾値を低く設定し、かつ同一回転数においては制動運転時における上記閾値を駆動運転時よりも低く設定する。加えて、閾値設定部2464は、同一の運転状態であれば、直流電圧検出部2480により検出された電圧が高いほど、上記閾値を低く設定する。
【0043】
図11は、電動機30の回転数が基底速度(定格トルクの出力が可能な回転速度の上限)の3000min−1である場合および最高回転速度の8000min−1である場合の各々において、直流電圧に応じて閾値設定部2464により設定される閾値の一例を示す図である。図11に示すように、本実施形態では、回転数3000min−1で電動機30を駆動運転している場合には、上記閾値の最大値を定格電流の330%とし、直流電圧が上昇するにつれて当該閾値を連続的に低下させている。また、回転数8000min−1で電動機30を駆動運転している場合には、各直流電圧における閾値として同一電圧における回転数3000min−1の駆動運転時の閾値の0.85倍の値を設定している。そして、制動運転状態では同一回転数における駆動運転時の同閾値の0.9倍の値を設定している。なお、制動運転時の閾値を駆動運転時に比較してどの程度低くするのかについては、過電流保護機能動作時のコンデンサ220の電極電圧が耐圧を超えない範囲で定めれば良く、制動運転時の閾値と駆動運転時の閾値とを倍率で関連付けることは必須ではない。なお、閾値設定部2464による閾値設定に関しても、直流電圧の上昇あるいは回転数の上昇に従って上記閾値を連続的に低下させてもよいし、段階的に低下させても良い。本実施形態によれば、コンデンサ220の電極電圧が耐圧を超えない閾値を、電動機30が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態にあるのか、電動機30の回転数、および電力変換装置の直流部に印加される直流電圧に応じてきめ細やかに設定することが可能になる。
【0044】
(E:第5実施形態)
図12は本発明の第5実施形態の電力変換装置20Eの構成例を示す図である。図12では図10と同一の構成要素には同一の符号が付されている。図12と図10を比較すれば明らかなように、電力変換装置20Eの構成は制御部240Dに換えて制御部240Eを設けた点が電力変換装置20Dの構成と異なる。そして、制御部240Eの構成は、第2閾値設定部2500を設けた点と、スイッチング制御部2420に換えてスイッチング制御部2422を設けた点が制御部240Dの構成と異なる。なお、図12では図面が煩雑になることを避けるために詳細な図示は省略したが、制御部240Eにおいても座標変換部2440からスイッチング制御部2422にd軸成分I、およびq軸成分Iの各々を示す信号が与えられ、スイッチング制御部2422は上記d軸成分I、およびq軸成分Iの示すトルクとトルク指令の示すトルクとの差が解消されるように電力変換部230におけるスイッチングを制御する。
【0045】
第2閾値設定部2500は、電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値として、閾値設定部2464により設定される閾値よりもさらに低い値を設定する。この第2閾値設定部2500には、回転数検出部2490により検出された電動機30の回転数、駆動制動判別部2450から出力される判別結果信号、および直流電圧検出部2480により検出された直流電圧を示すデータが与えられる。また、第2閾値設定部2500の記憶部(図示省略)には、電動機30の運転状態(駆動運転状態か制動運転状態か、および回転数)と直流部に印加される直流電圧と第2閾値設定部2500により設定する第2の閾値との関数関係を示すテーブル(図12に示す関数関係と類似の関数関係を示すテーブル)が予め記憶されている。第2閾値設定部2500は、上記テーブルを参照して第2の閾値を決定し、過電流検知部2472に設定する。
【0046】
より詳細に説明すると、第2閾値設定部2500は、回転数検出部2490により検出された回転数が高いほど第2の閾値を低く設定し、かつ同一回転数においては制動運転時の第2の閾値を駆動運転時よりも低く設定し、さらに同一の運転状態であれば、直流電圧検出部2480により検出された電圧値が高いほど上記第2の閾値をより低く設定する。なお、本実施形態では、電動機30の運転状態および直流部に印加される直流電圧の大きさに応じて第2の閾値を設定したが、閾値設定2464により設定される閾値のa(0<a<1)倍を第2の閾値としても良く、このような態様であれば第2閾値設定部2500を省略しても良い。
【0047】
図12の過電流検知部2472は、電流検出部2410から与えられる電流情報の示す各相の電流レベルを、第2閾値設定部2500により設定された第2の閾値、および閾値設定部2464により設定された閾値と常時比較する。より詳細に説明すると、過電流検知部2472は、まず、各相の電流レベルを閾値設定部2464により設定された閾値と比較する。そして、過電流検知部2472は、何れかの相の電流レベルが上記閾値を上回った場合には、前述した過電流検知信号を出力し、電力変換部230におけるスイッチングを停止させる制御をスイッチング制御部2422に実行させる。この点は第1〜第4実施形態と同一である。
【0048】
加えて、本実施形態の過電流検知部2472は、全ての相の電流レベルが閾値設定部2464により設定された閾値を下回っている場合には、さらに、各相の電流レベルを第2閾値設定部2500により設定された第2の閾値と比較する。そして、何れかの相について電流レベルが当該第2の閾値を越えると、過電流検知部2472は、電流制限指令をスイッチング制御部2422に与える。ここで、電流制限指令とは、トルクを低下させることを指示する指令、或いは電流制限を施したい相のスイッチングの停止若しくはパルス幅を小さくすることを指示する指令のことである。この電流制限指令を受け取ったスイッチング制御部2422は、その電流制限指令にしたがってトルクを低下させる処理、或いは電流制限を施したい相のスイッチングを停止若しくはパルス幅を小さくする処理を行う。
【0049】
このように、本実施形態の電力変換装置20Eでは、電動機30が駆動運転されているのかそれとも制動運転されているのか、電動機30の回転数、および直流電源10から供給される直流電圧の大きさに応じて、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値が設定されるため、制動時、直流電源電圧変更時、および高速回転時に過電流保護機能が働いたとしても、コンデンサ220の破損が防止される。
【0050】
また、本実施形態の電力変換装置20Eでは、電動機30が駆動運転されているのかそれとも制動運転されているのか、電動機30の回転数、および直流電源10から供給される直流電圧の大きさに応じて、電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値が設定されるので、過負荷時の運転継続能力が高まるといった効果も奏される。なお、第2の閾値は、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値よりも低く設定されるのであるから、本実施形態では、過電流保護機能が働く前に必ず電流制限機能が働く。したがって、電流制限機能の他に過電流保護機能を設ける必要はないかに見える。しかし、電流制限機能によってトルクを低下、或いは電流制限を施したい相のスイッチングの停止若しくはパルス幅を小さくしたとしても電動機30に供給される電流が即座に低下する訳ではない。このため、電流制限機能とは別個に過電流保護機能を設けることが好ましいでのである。また、電気自動車用途或いはハイブリッド自動車用途の電力変換装置では、高速運転時に過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値および電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値を低く設定したとしても、過電流保護機能や電流制限機能が頻繁に作動する、といった不具合は生じない。電気自動車用途或いはハイブリッド自動車用途の電動機では、図14に示すように高速運転時ほど電流値が小さくなるため、電流が、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値および電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値を超えるまでには十分な余裕があるからである。この点からも、本実施形態の電力変換装置はハイブリッド自動車や電気自動車における電動機の可変速制御に好適である。
【0051】
(F:変形)
以上本発明の第1〜第5実施形態について説明したが、これら実施形態を以下のように変形しても勿論良い。
(1)上記第1実施形態では、電動機30が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのかを電動機30に供給する三相交流電流のq軸成分の符号に基づいて判別した。しかし、q軸成分の絶対値の時間変化の態様に基づいて電動機30が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのかを判別しても良い。例えば、q軸成分の絶対値が減少傾向にあり、かつ予め定められた時間内に負の値となると推測される場合には制動状態であると判定し、その他の場合(q軸成分の絶対値が増加傾向である場合、ほとんど増減していない場合、或いはq軸成分の絶対値は減少傾向であるものの、予め定められた時間内には負の値にならないと推測される場合)には駆動状態であると判定する態様が考えられる。
【0052】
(2)上記第1および第2実施形態では、電動機30の運転状態として駆動運転状態であるのか、それとも制動運転状態であるのかに着目し、第4および第5実施形態では、駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかに加えて、電動機30の回転数にも着目した。しかし、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を電動機30の回転数のみに応じて設定しても良い。具体的には、図10に示す構成の電力変換装置20Dの制御部240Dから、駆動制動判別部2450および直流電圧検出部2480を除去して新たな電力変換装置を構成し、回転数検出部2490により検出された回転数が高いほど、上記閾値を低く設定する処理を閾値設定部2464に実行させるようにすれば良い。
【0053】
また、電力変換装置の直流部に印加される直流電圧の大きさと、電動機30が駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのかとに基づいて上記閾値を設定しても良く、電力変換装置の直流部に印加される直流電圧の大きさと電動機30の回転数とに基づいて上記閾値を設定しても良い。
【0054】
(3)上記第4実施形態では、電動機30が駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかを電動機30に供給される交流電流のq軸成分に基づいて判別したが、第2実施形態と同様に電動機30の運転状態を指示するための操作子の操作量に基づいて判別しても良く、また、両者を併用しても良い。そして、電動機30が駆動運転状態であるのか制動運転状態であるのかを、電動機30に供給される交流電流のq軸成分に基づいて判別する態様(以下、第1の判別態様)と電動機30の運転状態を指示するための操作子の操作量に基づいて判別する態様(以下、第2の判別態様)とを併用する場合には、例えば、電動機30の回転数の上昇に伴って、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を下降させる局面では、駆動制動の誤判別により当該閾値が低くなり過ぎないようにするために正確性に優れた第1の判別態様を採用し、逆に電動機30の回転数の下降に伴って同閾値を上昇させる局面では応答性に優れた第2の判別態様を採用することが考えられる。
【0055】
(4)上記第5実施形態の制御部240Eは、第4実施形態の制御部240Dに第2閾値設定部2500を追加し、さらに過電流検知部2470およびスイッチング制御部2420の各々を過電流検知部2472およびスイッチング制御部2422の各々に置き換えた構成となっていた。しかし、第1〜第3実施形態の各電力変換装置の制御部に同様の変更(すなわち、第2閾値設定部2500の追加と、過電流検知部2470およびスイッチング制御部2420の置き換え)を加えて新たな電力変換装置を構成しても良く、また、変形例(2)或いは(3)にて説明した各電力変換装置の制御部に同様の変更を加えて新たな電力変換装置を構成しても勿論良い。要は、電動機の運転状態(駆動運転状態であるのかそれとも制動運転状態であるのか、或いは電動機30の回転数、または両者の組み合わせ)と電力変換装置の直流部に印加される電圧の大きさの何れか一方、或いは両方に応じて、過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値を設定するとともに、当該閾値の設定に連動させて、電流制限機能を働かせるか否かを判定するための第2の閾値を当該閾値よりも低く設定する態様であれば良い。
【0056】
(5)上記各実施形態では、電気自動車の電動機の駆動制御を行う電力変換装置への本発明の適用例を説明したが、電車の電動機の駆動制御を行う電力変換装置や昇降機の電動機の駆動制御を行う電力変換装置などに本発明を適用しても勿論良い。
【0057】
(6)上記各実施形態では、電力変換装置の各部の駆動制御を行う制御部に過電流保護機能(或いは過電流保護機能と電流制限機能)を担わせたが、当該制御部とは別個に過電流保護機能(或いは過電流保護機能と電流制限機能)を担う回路(以下、過電流保護回路)を実装しても良い。例えば、第1実施形態であれば、駆動制動判別部2450、閾値設定部2460および過電流検知部2470を組み合わせて過電流保護回路を構成し、この過電流保護回路を電力変換装置の制御部とは別個の回路として実装するのである。同様に、第2実施形態の駆動制動判別部2452、閾値設定部2460および過電流検知部2470を組み合わせて過電流保護回路を構成しても良く、また、第3実施形態の直流電圧検出部2480、閾値設定部2462および過電流検知部2470を組み合わせて過電流保護回路を構成しても良い。また、第4実施形態の駆動制動判別部2450、直流電圧検出部2480、回転数検出部2490、閾値設定部2464および過電流検知部2470を組み合わせて過電流保護回路を構成しても良く、第5実施形態の駆動制動判別部2450、直流電圧検出部2480、回転数検出部2490、閾値設定部2464、第2閾値設定部2500および過電流検知部2472を組み合わせて過電流保護回路を構成しても良い。
【0058】
そして、これらの過電流保護回路を単体で市場に流通させても良い。これら過電流保護回路を既存の電力変換装置に装着すること(或いは、既存の電力変換装置の過電流保護回路をこれらで置き換えること)で既存の電力変換装置を本発明によれる電力変換装置として機能させることが可能になるからである。また、これら過電流保護回路を構成する各部を電子回路などのハードウェアにより実現するのではなく、ソフトウェアにより実現しても良い。なお、上記プログラムの具体的な配布態様としては、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に上記プログラムを書き込んで配布する態様や、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が考えられる。
【0059】
(7)上記各実施形態ではコンデンサ220に回生される電気エネルギーの用途について特に言及しなかったが、電力変換装置を構成する各回路或いは電力変換装置の構成要素以外の回路の電源回路に当該電気エネルギーを供給し、当該電源回路によって消費させても良く、また、コンデンサ220に並列に抵抗を接続し、当該抵抗においてジュール熱として消費させるようにしても勿論良い。
【符号の説明】
【0060】
10…直流電源、20A,20B,20C,20D,20E…電力変換装置、210…電源スイッチ、220…コンデンサ、230…電力変換部、240A,240B,240C,240D,240E…過電流保護回路、2410…電流検出部、2420,2422…スイッチング制御部、2430…三相二相変換部、2440…座標変換部、2450,2452…駆動制動判別部、2460,2462,2464…閾値設定部、2470,2472…過電流検知部、2470a…絶対値変換部、2470b…比較部、2480…直流電圧検出部、2490…回転数検出部、2500…第2閾値設定部、30…電動機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から入力される直流電力をスイッチングすることにより交流電力に変換して電動機に供給する電力変換部と、
前記直流電源から前記電力変換部に印加される直流電圧を平滑化するコンデンサと、
前記電力変換部から前記電動機へ供給される電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流と過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合に過電流検知信号を出力する過電流検知部と、
前記過電流検知部から過電流検知信号を受け取ったことを契機として、前記電力変換部におけるスイッチングを停止させるスイッチング制御部と、
前記閾値を設定する閾値設定部と、
を具備することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記直流電源から前記電力変換部に印加される直流電圧を検出する直流電圧検出部を備え、
前記閾値設定部は、前記直流電圧検出部により検出された電圧が高いほど、前記閾値を低く設定することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記閾値設定部は、前記電動機が制動運転されている場合の前記閾値を駆動運転されている場合よりも低く設定することを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部は、前記直流電源から入力される直流電力をスイッチングすることにより三相交流電力に変換して前記電動機に供給し、
前記電力変換部から前記電動機へ供給される三相交流電流に対して三相二相変換および座標変換を施して得られるq軸電流に基づいて前記電動機が制動運転されているのか、それとも駆動運転されているのかを判別する駆動制動判別部を備え、
前記閾値設定部は、前記駆動制動判別部による判別結果に応じて前記閾値を設定することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電動機が制動運転されているのか、それとも駆動運転されているのかを、前記電動機の運転状態を指示するための操作子の操作量に応じて判別する駆動制動判別部を備え、
前記閾値設定部は、前記駆動制動判別部による判別結果に応じて前記閾値を設定することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記電動機の回転数が高いほど、前記閾値を低く設定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電動機の回転数を検出する回転数検出部を備え、
前記閾値設定部は、前記回転数検出部により検出された回転数が高いほど、前記閾値を低く設定することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電動機に与えられる電流を参照して前記電動機の回転数を推定する回転数推定部を備え、
前記閾値設定部は、前記回転数推定部により推定された回転数が高いほど、前記閾値を低く設定することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記過電流検知部は、前記電力変換部から前記電動機へ出力される各相の電流毎に、前記閾値設定部により設定された閾値よりも低い第2の閾値を上回ったか否かを判定し、
前記スイッチング制御部は、前記第2の閾値を上回ったと前記過電流検知部によって判定された相に関するスイッチングを停止若しくは当該相のパルスを低減させる制御、または前記電動機のトルクを低減させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値が前記閾値設定部によって設定されるのに連動させて前記第2の閾値を設定する第2閾値設定部を有し、
前記過電流検知部は、前記電動機へ出力される各相の電流毎に、前記第2閾値設定部により設定された第2の閾値を上回っているか否かを判定することを特徴とする請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
直流電源から平滑化用コンデンサを介して入力される直流電力をスイッチングすることにより交流電力に変換して電動機に供給する電力変換装置を過電流による破損から保護する過電流保護回路において、
前記電力変換装置から前記電動機へ供給される電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流と過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合に、スイッチングの停止を指示する過電流検知信号を前記電力変換装置に出力する過電流検知部と、
前記電動機の運転状態に応じて前記閾値を設定する閾値設定部と、
を具備することを特徴とする過電流保護回路。
【請求項12】
直流電源から平滑化用コンデンサを介して入力される直流電力をスイッチングすることにより交流電力に変換して電動機に供給する電力変換装置を過電流による破損から保護する過電流保護回路において、
前記電力変換装置から前記電動機へ供給される電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流と過電流保護機能を働かせるか否かを判定するための閾値とを比較し、前者が後者を上回っている場合に、スイッチングの停止を指示する過電流検知信号を前記電力変換装置に出力する過電流検知部と、
前記直流電源から前記電力変換装置に印加される直流電圧を検出する直流電圧検出部と、
前記直流電圧検出部により検出された電圧が高いほど、前記閾値を低く設定する閾値設定部と、
を具備することを特徴とする過電流保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−106377(P2013−106377A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246683(P2011−246683)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】