電力変換装置
【課題】コモンモード電圧がコモンモードチョークコイルを磁気飽和させる程度に大き
くなることを防止する。
【解決手段】整流回路2とPWMインバータ回路4とを含むとともに、コモンモードチョークコイルLc1およびコンデンサCc1を含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置において、コモンモードフィルタLc1の共振周波数は、整流回路2のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路4のキャリア周波数の2倍以上に設定してある。
くなることを防止する。
【解決手段】整流回路2とPWMインバータ回路4とを含むとともに、コモンモードチョークコイルLc1およびコンデンサCc1を含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置において、コモンモードフィルタLc1の共振周波数は、整流回路2のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路4のキャリア周波数の2倍以上に設定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置が提案されていた(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、ダイオード整流回路とPWMインバータ回路からなる電力変換装置を介してモータを駆動するモータ駆動システムを示す電気回路図である。このモータ駆動システムにおいては、3相交流電圧をダイオード整流回路で直流電圧に整流し、PWMインバータ回路のスイッチング素子で、搬送波である三角波信号と変調波との比較によりパルス幅変調することで、所望の電圧・周波数の交流電圧を出力し、モータに供給する。そして、PWMインバータ回路の各スイッチング素子が動作すると、図2に示すようにコモンモード電圧Vinv{図2中(E)参照}が発生する。PWMインバータの出力端子U、V、W点と直流部の中点Nとの間の電位をVun、Vvn、Vwnとすると、コモンモード電圧Vinvは、
Vinv=(Vun+Vvn+Vwn )/3
となり、Ed/2、Ed/6、−Ed/6、−Ed/2の4つの値をとり、PWMインバータのキャリア周波数fcを基本波成分とするステップ状の波形をとる。
【0004】
このコモンモード電圧Vinvは、高周波漏れ電流やインバータで電動機を駆動する際の軸電圧の原因となる。高周波漏れ電流は、伝導ノイズとなり、雑音端子電圧の主要因となる。したがって、このコモンモード電圧Vinvに起因する問題を解決するため、様々な対策が検討されている。
【0005】
これらの対策のうちでは、コモンモードチョークコイルとコンデンサとの組み合わせによるコモンモードフィルタを用いて高周波漏れ電流を抑制する方法が一般的に用いられている。コモンモードフィルタを用いたモータ駆動システムの、コモンモードに対する等価回路は図3に示す通りになる。コモンモードフィルタに用いるコモンモードチョークコイルは、磁性体コアに3相の巻線を極性と巻数が等しくなるように巻いたもので、ノーマルモードに対しては3相の電流による起磁力が相殺されるためインダクタンスが零となるが、コモンモードに対しては、大きなリアクトルとして動作する。しかし、コモンモードチョークコイルの磁束密度が飽和磁束密度Bmaxを越えてしまうと、インダクタンスが激減し、コモンモードフィルタとして機能しなくなる。
【0006】
ここで、コモンモードチョークに印加される電圧をVLC1、コモンモードチョークコイルの巻数をNとすると、コアの磁束φLC1は数1で表され、磁性体のコアの有効断面積をSとすると、磁束密度BLC1は数2となる。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
また、コモンモード電圧の絶対値が最も大きくなるのは、インバータの三相アームすべて正側がオンもしくは負側がオンしている場合である(インバータの変調率は零)。ここで、インバータのキャリア周期をTiとし、コモンモード電圧Vinvがすべてコモンモードチョークに印加された場合の鎖交磁束φinvは数3となり、直流電圧Edが高い場合や、スイッチング周期が大きい場合に大きくなり、コモンモードチョークが磁気飽和しやすいことになる。
【0010】
【数3】
【0011】
また、コモンモードチョークコイルが飽和しないように、磁束密度を小さくするには、コイルの断面積Sを大きくするか、巻数Nを多くする必要がある。すなわち、何れの場合にも、コアサイズが大きくなってしまう。図4にインバータの変調率Kiが1の時の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinv{図4中(A)参照}、および0の時の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinv{図4中(B)参照}を示す。
【0012】
また、高調波電流規制に対応するため、ダイオードと並列にスイッチング素子を設けたPWM整流回路(図5参照)を用いる場合がある。この場合には、PWM整流回路のスイッチング素子もPWMインバータ回路と同様の動作を行うため、PWM整流回路からもコモンモード電圧Vrecが発生することになる。
【0013】
PWM整流回路、PWMインバータ回路のコモンモードに対する等価回路は、図6に示す通りであり、直流リンクに対してPWM整流回路とPWMインバータ回路とが発生するコモンモード電圧Vrec、Vinvは逆直列となる。
【0014】
そして、両変換器の搬送波を共通にした場合(スイッチング周波数を互いに等しくした場合)には、図7に示すように、両変換器のコモンモード電圧は互いに打ち消しあい、全体としてのコモンモード電圧Vccは、それぞれの変換器が発生するコモンモード電圧よりも小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−18853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とを異なる周波数に設定する必要がある場合においては、両変換器が発生するコモンモード電圧は、増幅したり打ち消し合うことなる。具体的には、PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2倍である場合のコモンモード電圧は図8に示す通りであり、PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2.4倍である場合のコモンモード電圧は図9に示す通りである。
【0017】
このように、両変換器のスイッチング周波数の関係により、PWM整流回路を用いることでコモンモード電圧が大きくなる場合があり、その結果、ダイオード整流回路で用いていたコモンモードチョークコイルと同等のものを用いると磁気飽和してしまうため、フィルタとしての機能が失われ、雑音端子電圧などの伝導性ノイズの抑制効果がなくなってしまう(PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とが等しい場合の雑音端子電圧を示す図10、およびPWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2倍である場合の雑音端子電圧を示す図11を参照)。
【0018】
特に、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むモータ駆動システムにおいては、PWM整流回路のスイッチング周波数を、騒音などの影響を及ぼさないように高い周波数に設定する一方、PWMインバータ回路のスイッチング周波数を、スイッチングロスを少なくするように低い周波数に設定するのであるから、上述のようにPWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とを異なる周波数に設定することは決して特殊なことではなく、この結果、上述の不都合が一般的に発生していた。
【0019】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コモンモード電圧がコモンモードチョークコイルを磁気飽和させる程度に大きくなることを防止することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の電力変換装置は、整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含むものにおいて、コモンモードフィルタの共振周波数を、整流回路のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路のキャリア周波数の2倍以上に設定したものである。
【0021】
請求項2の電力変換装置は、整流回路(2)はPWM整流回路であって、PWM整流回路のキャリア周波数はPWMインバータ回路のキャリア周波数の3倍であり、コモンモードフィルタの共振周波数は、PWM整流回路のキャリア周波数の2倍以上である。
【0022】
請求項3の電力変換装置は、PWMインバータ回路として、圧縮機駆動用モータに駆動用電力を供給するものを採用するものである。
【0023】
また、コモンモードフィルタは、共振周波数近傍ではインピーダンスが小さくなるので、PWM整流回路、PWMインバータ回路の何れか一方のスイッチング周波数がコモンモードフィルタの共振周波数近傍になると、コモンモードチョークコイルに印加される電圧が極端に大きくなり、コモンモードチョークコイルが磁気飽和を起こし易くなるのであるが、本発明では、コモンモードフィルタの共振周波数を整流回路のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路のキャリア周波数の2倍以上に設定してあるので、コモンモードチョークコイルが磁気飽和することを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、コモンモードフィルタのコモンモードチョークコイルの磁気飽和を防止し、ひいてはコモンモードチョークコイルの小型化を達成することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の電力変換装置の一例を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成示す概略図である。
【図2】コモンモード電圧波形の生成を説明する図である。
【図3】コモンモードに対する等価回路を示す図である。
【図4】変調率が1、0の場合の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinvを示す図である。
【図5】従来の電力変換装置の他の例を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【図6】コモンモードに対する等価回路を示す図である。
【図7】PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータのスイッチング周波数とが等しい場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図8】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2倍である場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図9】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2.4倍である場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図10】PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータのスイッチング周波数とが等しい場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図11】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2倍である場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図12】本発明の電力変換装置の一実施形態を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【図13】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図14】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを逆相に設定している場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図15】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定した場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図16】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数と等しく設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図17】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の2倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図18】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の3倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図19】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の4倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図20】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数と等しく設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図21】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の2倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図22】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図23】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の4倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の電力変換装置の実施の形態を詳細に説明する。図12は本発明の電力変換装置の一実施形態を組み込んでなる圧縮機駆動用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【0027】
この圧縮機駆動用モータ駆動システムは、Y接続の3相交流電源1の各相出力端子に、コモンモードチョークコイルLc1、およびリアクトルLnを直列に介してPWM整流回路2の入力端子を接続し、PWM整流回路2の出力端子間に、互いに等しい容量の1対のコンデンサ3を直列接続し、1対のコンデンサ3の直列接続回路の端子間電圧をPWMインバータ4の入力端子に印加し、PWMインバータ4の出力を圧縮機駆動用モータ5に供給している。そして、各相のコモンモードチョークコイルLc1とリアクトルLnとの接続点と3相交流電源1の中性点との間にコンデンサCc1を接続している。さらに、PWM整流回路2の各スイッチング素子を制御するPWM整流回路制御部6と、PWMインバータ4の各スイッチング素子を制御するPWMインバータ制御部7とを有している。
【0028】
そして、PWM整流回路制御部6は、PWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定している。そして、PWM整流回路制御部6およびPWMインバータ制御部7は、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している。
【0029】
なお、両制御部6、7の他の処理は従来公知であるから、詳細な説明を省略する。また、コモンモードチョークコイルLc1とコンデンサCc1とでコモンモードフィルタを構成している。
【0030】
上記の構成の圧縮機駆動用モータ駆動システムの作用は次のとおりである。PWM整流回路制御部6によりPWM整流回路2のスイッチング素子を制御することによって、3相交流電圧を直流電圧に変換し、コンデンサ3により平滑化する。そして、PWMインバータ制御部7によりPWMインバータ4のスイッチング素子を制御することによって、直流電圧を3相交流電圧に変換し、圧縮機駆動用モータ5に印加する。
【0031】
そして、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している{図13中(A)(B)参照}のであるから、全体のコモンモード電圧Vccは図13中(C)に示す通りになり、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φccは図13中(D)に示す通りになる。図14は、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを逆相に設定した場合の電圧波形、および磁束波形を示している。
【0032】
図13と図14とを対比することにより分かるように、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φccのピークを抑えることができる。
【0033】
また、雑音端子電圧は図15に示す通りであり、図11に示す雑音端子電圧よりも大幅に低減することができた。
【0034】
したがって、コモンモードチョークコイルLc1の磁気飽和を防止し、コモンモードフィルタの小型化、およびコストダウンを達成することができる。
【0035】
また、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定する代わりに、または加えて、コモンモードフィルタの共振周波数を、PWM整流回路2のスイッチング周波数のスイッチング周波数の2倍以上に設定することができる。
【0036】
この場合にも、コモンモードチョークコイルLc1の磁気飽和を防止し、コモンモードフィルタの小型化、およびコストダウンを達成することができる。
【0037】
さらに説明する。
【0038】
コモンモードフィルタは、共振周波数近傍ではインピーダンスが小さくなるので、PWM整流回路2、PWMインバータ4の何れか一方のスイッチング周波数がコモンモードフィルタの共振周波数近傍になると、コモンモードチョークコイルLc1に印加される電圧が極端に大きくなり、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和を起こし易くなるのであるが、上述のように、コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のキャリア周波数、またはPWMインバータ4のキャリア周波数の2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。図16から図19は、コモンモードフィルタの共振周波数fcが、それぞれPWM整流回路2のスイッチング周波数frecの1倍、2倍、3倍、4倍である場合における、全体としてのコモンモード電圧Vcc{(A)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の電圧VLC1{(B)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1{(C)参照}を示している。
【0039】
図16から図19を参照すれば分かるように、共振周波数fcをPWM整流回路2のスイッチング周波数frecの2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1を抑えることができ、ひいてはコモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【0040】
また、この実施形態において、PWM整流回路2に代えてダイオード整流回路を採用することが可能である。ただし、この場合には、コモンモードフィルタの共振周波数fcを、PWMインバータ4のスイッチング周波数finvの2倍以上に設定する。この場合にも、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【0041】
図20から図23は、コモンモードフィルタの共振周波数fcが、それぞれPWMインバータ4のスイッチング周波数finvの1倍、2倍、3倍、4倍である場合における、全体としてのコモンモード電圧Vcc{(A)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の電圧VLC1{(B)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1{(C)参照}を示している。
【0042】
図20から図23を参照すれば分かるように、共振周波数fcをPWMインバータ4のスイッチング周波数finvの2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1を抑えることができ、ひいてはコモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 PWM整流回路
4 PWMインバータ
5 圧縮機駆動用モータ
Lc1 コモンモードチョークコイル
Cc1 コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置が提案されていた(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、ダイオード整流回路とPWMインバータ回路からなる電力変換装置を介してモータを駆動するモータ駆動システムを示す電気回路図である。このモータ駆動システムにおいては、3相交流電圧をダイオード整流回路で直流電圧に整流し、PWMインバータ回路のスイッチング素子で、搬送波である三角波信号と変調波との比較によりパルス幅変調することで、所望の電圧・周波数の交流電圧を出力し、モータに供給する。そして、PWMインバータ回路の各スイッチング素子が動作すると、図2に示すようにコモンモード電圧Vinv{図2中(E)参照}が発生する。PWMインバータの出力端子U、V、W点と直流部の中点Nとの間の電位をVun、Vvn、Vwnとすると、コモンモード電圧Vinvは、
Vinv=(Vun+Vvn+Vwn )/3
となり、Ed/2、Ed/6、−Ed/6、−Ed/2の4つの値をとり、PWMインバータのキャリア周波数fcを基本波成分とするステップ状の波形をとる。
【0004】
このコモンモード電圧Vinvは、高周波漏れ電流やインバータで電動機を駆動する際の軸電圧の原因となる。高周波漏れ電流は、伝導ノイズとなり、雑音端子電圧の主要因となる。したがって、このコモンモード電圧Vinvに起因する問題を解決するため、様々な対策が検討されている。
【0005】
これらの対策のうちでは、コモンモードチョークコイルとコンデンサとの組み合わせによるコモンモードフィルタを用いて高周波漏れ電流を抑制する方法が一般的に用いられている。コモンモードフィルタを用いたモータ駆動システムの、コモンモードに対する等価回路は図3に示す通りになる。コモンモードフィルタに用いるコモンモードチョークコイルは、磁性体コアに3相の巻線を極性と巻数が等しくなるように巻いたもので、ノーマルモードに対しては3相の電流による起磁力が相殺されるためインダクタンスが零となるが、コモンモードに対しては、大きなリアクトルとして動作する。しかし、コモンモードチョークコイルの磁束密度が飽和磁束密度Bmaxを越えてしまうと、インダクタンスが激減し、コモンモードフィルタとして機能しなくなる。
【0006】
ここで、コモンモードチョークに印加される電圧をVLC1、コモンモードチョークコイルの巻数をNとすると、コアの磁束φLC1は数1で表され、磁性体のコアの有効断面積をSとすると、磁束密度BLC1は数2となる。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
また、コモンモード電圧の絶対値が最も大きくなるのは、インバータの三相アームすべて正側がオンもしくは負側がオンしている場合である(インバータの変調率は零)。ここで、インバータのキャリア周期をTiとし、コモンモード電圧Vinvがすべてコモンモードチョークに印加された場合の鎖交磁束φinvは数3となり、直流電圧Edが高い場合や、スイッチング周期が大きい場合に大きくなり、コモンモードチョークが磁気飽和しやすいことになる。
【0010】
【数3】
【0011】
また、コモンモードチョークコイルが飽和しないように、磁束密度を小さくするには、コイルの断面積Sを大きくするか、巻数Nを多くする必要がある。すなわち、何れの場合にも、コアサイズが大きくなってしまう。図4にインバータの変調率Kiが1の時の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinv{図4中(A)参照}、および0の時の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinv{図4中(B)参照}を示す。
【0012】
また、高調波電流規制に対応するため、ダイオードと並列にスイッチング素子を設けたPWM整流回路(図5参照)を用いる場合がある。この場合には、PWM整流回路のスイッチング素子もPWMインバータ回路と同様の動作を行うため、PWM整流回路からもコモンモード電圧Vrecが発生することになる。
【0013】
PWM整流回路、PWMインバータ回路のコモンモードに対する等価回路は、図6に示す通りであり、直流リンクに対してPWM整流回路とPWMインバータ回路とが発生するコモンモード電圧Vrec、Vinvは逆直列となる。
【0014】
そして、両変換器の搬送波を共通にした場合(スイッチング周波数を互いに等しくした場合)には、図7に示すように、両変換器のコモンモード電圧は互いに打ち消しあい、全体としてのコモンモード電圧Vccは、それぞれの変換器が発生するコモンモード電圧よりも小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−18853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とを異なる周波数に設定する必要がある場合においては、両変換器が発生するコモンモード電圧は、増幅したり打ち消し合うことなる。具体的には、PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2倍である場合のコモンモード電圧は図8に示す通りであり、PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2.4倍である場合のコモンモード電圧は図9に示す通りである。
【0017】
このように、両変換器のスイッチング周波数の関係により、PWM整流回路を用いることでコモンモード電圧が大きくなる場合があり、その結果、ダイオード整流回路で用いていたコモンモードチョークコイルと同等のものを用いると磁気飽和してしまうため、フィルタとしての機能が失われ、雑音端子電圧などの伝導性ノイズの抑制効果がなくなってしまう(PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とが等しい場合の雑音端子電圧を示す図10、およびPWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータ回路のスイッチング周波数の2倍である場合の雑音端子電圧を示す図11を参照)。
【0018】
特に、PWM整流回路とPWMインバータ回路とを含むモータ駆動システムにおいては、PWM整流回路のスイッチング周波数を、騒音などの影響を及ぼさないように高い周波数に設定する一方、PWMインバータ回路のスイッチング周波数を、スイッチングロスを少なくするように低い周波数に設定するのであるから、上述のようにPWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータ回路のスイッチング周波数とを異なる周波数に設定することは決して特殊なことではなく、この結果、上述の不都合が一般的に発生していた。
【0019】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コモンモード電圧がコモンモードチョークコイルを磁気飽和させる程度に大きくなることを防止することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の電力変換装置は、整流回路とPWMインバータ回路とを含むとともに、コモンモードチョークコイルおよびコンデンサを含むコモンモードフィルタを含むものにおいて、コモンモードフィルタの共振周波数を、整流回路のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路のキャリア周波数の2倍以上に設定したものである。
【0021】
請求項2の電力変換装置は、整流回路(2)はPWM整流回路であって、PWM整流回路のキャリア周波数はPWMインバータ回路のキャリア周波数の3倍であり、コモンモードフィルタの共振周波数は、PWM整流回路のキャリア周波数の2倍以上である。
【0022】
請求項3の電力変換装置は、PWMインバータ回路として、圧縮機駆動用モータに駆動用電力を供給するものを採用するものである。
【0023】
また、コモンモードフィルタは、共振周波数近傍ではインピーダンスが小さくなるので、PWM整流回路、PWMインバータ回路の何れか一方のスイッチング周波数がコモンモードフィルタの共振周波数近傍になると、コモンモードチョークコイルに印加される電圧が極端に大きくなり、コモンモードチョークコイルが磁気飽和を起こし易くなるのであるが、本発明では、コモンモードフィルタの共振周波数を整流回路のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路のキャリア周波数の2倍以上に設定してあるので、コモンモードチョークコイルが磁気飽和することを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、コモンモードフィルタのコモンモードチョークコイルの磁気飽和を防止し、ひいてはコモンモードチョークコイルの小型化を達成することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の電力変換装置の一例を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成示す概略図である。
【図2】コモンモード電圧波形の生成を説明する図である。
【図3】コモンモードに対する等価回路を示す図である。
【図4】変調率が1、0の場合の搬送波、各相電圧、コモンモード電圧Vinv、コモンモードチョークコイルの鎖交磁束φinvを示す図である。
【図5】従来の電力変換装置の他の例を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【図6】コモンモードに対する等価回路を示す図である。
【図7】PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータのスイッチング周波数とが等しい場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図8】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2倍である場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図9】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2.4倍である場合におけるコモンモード電圧波形を示す図である。
【図10】PWM整流回路のスイッチング周波数とPWMインバータのスイッチング周波数とが等しい場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図11】PWM整流回路のスイッチング周波数がPWMインバータのスイッチング周波数の2倍である場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図12】本発明の電力変換装置の一実施形態を組み込んだ圧縮機用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【図13】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図14】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを逆相に設定している場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図15】PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定した場合における雑音端子電圧を示す図である。
【図16】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数と等しく設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図17】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の2倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図18】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の3倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図19】コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のスイッチング周波数の4倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図20】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数と等しく設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図21】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の2倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図22】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【図23】PWM整流回路に代えてダイオード整流回路を採用し、コモンモードフィルタの共振周波数をPWMインバータ4のスイッチング周波数の4倍に設定した場合におけるコモンモード電圧波形、およびコモンモードチョークコイルの鎖交磁束を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の電力変換装置の実施の形態を詳細に説明する。図12は本発明の電力変換装置の一実施形態を組み込んでなる圧縮機駆動用モータ駆動システムの構成を示す概略図である。
【0027】
この圧縮機駆動用モータ駆動システムは、Y接続の3相交流電源1の各相出力端子に、コモンモードチョークコイルLc1、およびリアクトルLnを直列に介してPWM整流回路2の入力端子を接続し、PWM整流回路2の出力端子間に、互いに等しい容量の1対のコンデンサ3を直列接続し、1対のコンデンサ3の直列接続回路の端子間電圧をPWMインバータ4の入力端子に印加し、PWMインバータ4の出力を圧縮機駆動用モータ5に供給している。そして、各相のコモンモードチョークコイルLc1とリアクトルLnとの接続点と3相交流電源1の中性点との間にコンデンサCc1を接続している。さらに、PWM整流回路2の各スイッチング素子を制御するPWM整流回路制御部6と、PWMインバータ4の各スイッチング素子を制御するPWMインバータ制御部7とを有している。
【0028】
そして、PWM整流回路制御部6は、PWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定している。そして、PWM整流回路制御部6およびPWMインバータ制御部7は、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している。
【0029】
なお、両制御部6、7の他の処理は従来公知であるから、詳細な説明を省略する。また、コモンモードチョークコイルLc1とコンデンサCc1とでコモンモードフィルタを構成している。
【0030】
上記の構成の圧縮機駆動用モータ駆動システムの作用は次のとおりである。PWM整流回路制御部6によりPWM整流回路2のスイッチング素子を制御することによって、3相交流電圧を直流電圧に変換し、コンデンサ3により平滑化する。そして、PWMインバータ制御部7によりPWMインバータ4のスイッチング素子を制御することによって、直流電圧を3相交流電圧に変換し、圧縮機駆動用モータ5に印加する。
【0031】
そして、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定している{図13中(A)(B)参照}のであるから、全体のコモンモード電圧Vccは図13中(C)に示す通りになり、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φccは図13中(D)に示す通りになる。図14は、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定しているとともに、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを逆相に設定した場合の電圧波形、および磁束波形を示している。
【0032】
図13と図14とを対比することにより分かるように、PWM整流回路2が発生するコモンモード電圧VrecとPWMインバータ4が発生するコモンモード電圧Vinvとを同相に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φccのピークを抑えることができる。
【0033】
また、雑音端子電圧は図15に示す通りであり、図11に示す雑音端子電圧よりも大幅に低減することができた。
【0034】
したがって、コモンモードチョークコイルLc1の磁気飽和を防止し、コモンモードフィルタの小型化、およびコストダウンを達成することができる。
【0035】
また、PWM整流回路制御部6によるPWM整流回路2のスイッチング周波数を、PWMインバータ制御部7によるPWMインバータ4のスイッチング周波数の3倍に設定する代わりに、または加えて、コモンモードフィルタの共振周波数を、PWM整流回路2のスイッチング周波数のスイッチング周波数の2倍以上に設定することができる。
【0036】
この場合にも、コモンモードチョークコイルLc1の磁気飽和を防止し、コモンモードフィルタの小型化、およびコストダウンを達成することができる。
【0037】
さらに説明する。
【0038】
コモンモードフィルタは、共振周波数近傍ではインピーダンスが小さくなるので、PWM整流回路2、PWMインバータ4の何れか一方のスイッチング周波数がコモンモードフィルタの共振周波数近傍になると、コモンモードチョークコイルLc1に印加される電圧が極端に大きくなり、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和を起こし易くなるのであるが、上述のように、コモンモードフィルタの共振周波数をPWM整流回路2のキャリア周波数、またはPWMインバータ4のキャリア周波数の2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。図16から図19は、コモンモードフィルタの共振周波数fcが、それぞれPWM整流回路2のスイッチング周波数frecの1倍、2倍、3倍、4倍である場合における、全体としてのコモンモード電圧Vcc{(A)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の電圧VLC1{(B)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1{(C)参照}を示している。
【0039】
図16から図19を参照すれば分かるように、共振周波数fcをPWM整流回路2のスイッチング周波数frecの2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1を抑えることができ、ひいてはコモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【0040】
また、この実施形態において、PWM整流回路2に代えてダイオード整流回路を採用することが可能である。ただし、この場合には、コモンモードフィルタの共振周波数fcを、PWMインバータ4のスイッチング周波数finvの2倍以上に設定する。この場合にも、コモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【0041】
図20から図23は、コモンモードフィルタの共振周波数fcが、それぞれPWMインバータ4のスイッチング周波数finvの1倍、2倍、3倍、4倍である場合における、全体としてのコモンモード電圧Vcc{(A)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の電圧VLC1{(B)参照}、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1{(C)参照}を示している。
【0042】
図20から図23を参照すれば分かるように、共振周波数fcをPWMインバータ4のスイッチング周波数finvの2倍以上に設定することによって、コモンモードチョークコイルLc1の磁束φLc1を抑えることができ、ひいてはコモンモードチョークコイルLc1が磁気飽和することを防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 PWM整流回路
4 PWMインバータ
5 圧縮機駆動用モータ
Lc1 コモンモードチョークコイル
Cc1 コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路(2)とPWMインバータ回路(4)とを含むとともに、コモンモードチョークコイル(Lc1)およびコンデンサ(Cc1)を含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置において、
コモンモードフィルタの共振周波数は、整流回路(2)のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路(4)のキャリア周波数の2倍以上に設定してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
整流回路(2)はPWM整流回路であって、
PWM整流回路のキャリア周波数はPWMインバータ回路のキャリア周波数の3倍であり、
コモンモードフィルタの共振周波数は、PWM整流回路のキャリア周波数の2倍以上である請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
PWMインバータ回路(4)は、圧縮機駆動用モータ(5)に駆動用電力を供給するものである請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項1】
整流回路(2)とPWMインバータ回路(4)とを含むとともに、コモンモードチョークコイル(Lc1)およびコンデンサ(Cc1)を含むコモンモードフィルタを含む電力変換装置において、
コモンモードフィルタの共振周波数は、整流回路(2)のキャリア周波数、またはPWMインバータ回路(4)のキャリア周波数の2倍以上に設定してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
整流回路(2)はPWM整流回路であって、
PWM整流回路のキャリア周波数はPWMインバータ回路のキャリア周波数の3倍であり、
コモンモードフィルタの共振周波数は、PWM整流回路のキャリア周波数の2倍以上である請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
PWMインバータ回路(4)は、圧縮機駆動用モータ(5)に駆動用電力を供給するものである請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−246391(P2010−246391A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177554(P2010−177554)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2004−291316(P2004−291316)の分割
【原出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2004−291316(P2004−291316)の分割
【原出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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