説明

電力変換装置

【課題】回路を切替えることで、昇圧降圧用のリアクトルL1とスイッチ手段Tr1、Tr3を共通使用して、太陽電池1、燃料電池2、風力発電装置4の少なくともいずれか一つから成る発電手段の発電電力を商用電源系統15に供給すると共に発電手段及び商用電源系統15にて蓄電池2を充電する電力変換が行える電力変換装置を提供する。
【解決手段】発電手段からの電流が一次側から二次側に向けて流れるリアクトルL1と該リアクトルL1への通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段Tr1、Tr3を備えた電圧変換回路101、電圧変換回路101の出力に対して直流交流変換を行って商用電源系統15に出力する直流交流変換回路10、及び電圧変換回路101内のリアクトルL1を介して流れる電流を、蓄電池2側と商用電源系統15側とに選択的に導く回路切替スイッチ手段SW1〜SW5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電手段の発電電力を少なくとも電圧変換及び直流交流変換を行って商用電源系統に供給すると共に発電手段及び商用電源系統にて蓄電池を充電する電力変換装置に関するもので、特に住宅用であって太陽電池と蓄電池による電力貯蔵機能を有する電力変換装置において有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の太陽電池および蓄電池を併用した電力変換装置の構成が知られている。そして、この種の電力変換には次のような種類が有る。
【0003】
1.太陽電池から商用電源系統への電力変換
2.太陽電池から蓄電池への電力変換
3.商用電源系統から蓄電池への電力変換
このような、少なくとも3種類の電力変換を行う場合、各部の電圧が異なること、及び交流直流の変換が必要となる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の電力変換装置には、太陽電池用の昇圧チョッパ、蓄電池用昇圧チョッパ、及び直流交流変換回路(インバータ)を必要とし、特に2つの昇圧用のチョッパが必要になっている。
【0005】
また、一般に各部の電圧は次のようになっている。
・太陽電池の電圧 DC50V〜380V
・蓄電池の電圧 DC200V〜350V
・系統電圧 AC200V、またはAC100V
また、特許文献2は、太陽電池の電力を蓄電池に蓄電するための電力変換装置であるが、太陽電池の電圧が蓄電池の電圧より低い場合は昇圧し、反対に太陽電池の電圧が蓄電池の電圧より高い場合は降圧する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−171674号公報
【特許文献2】特開2000−287382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術を使用した場合、複数の電圧範囲に対応して2つのチョッパが必要となり、2つのチョッパ夫々に昇圧用または降圧用のリアクトル(コイル)とリアクトルへの通電を制御するためのスイッチ手段を必要とする。これでは回路部品が多くなり、製造コストが高くなる。
【0008】
つまり、従来技術では、太陽電池用の昇圧チョッパおよび蓄電池用昇圧チョッパを持つため、チョッパ用のリアクトルの2つ必要であり高コストになる。従って、より低コスト化し、小型化が可能な構成が望まれる。
【0009】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、部品数を削減でき、よりコストを低減できる電力変換装置を提供することにある。
【0010】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、発電手段の発電電力を少なくとも電圧変換及び直流交流変換を行って商用電源系統に供給すると共に発電手段及び商用電源系統にて蓄電池を充電する装置において、発電手段からの電流が一次側から二次側に向けて流れるリアクトルと該リアクトルへの通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段を備えた電圧変換回路、電圧変換回路の出力に対して直流交流変換を行って商用電源系統に出力する直流交流変換回路、及び電圧変換回路内のリアクトルを介して流れる電流を、蓄電池側と商用電源系統側とに選択的に導く回路切替スイッチ手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、発電手段からの電流が流れるリアクトルと該リアクトルへの通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段を備えた電圧変換回路、及び電圧変換回路内のリアクトルを介して流れる電流を蓄電池側と商用電源系統側とに導く回路切替スイッチ手段を設けたから、電圧変換回路の部品であるリアクトルを共通使用して、少なくとも蓄電池と商用電源系統とに向けた電力変換が行える電力変換装置を提供することができる。また、少なくともリアクトルを共通使用しているから、回路構成の簡素化を達成することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、発電手段は太陽電池、燃料電池、風力発電装置の少なくともいずれか一つから成る事を特徴とする。
【0014】
この発明によれば、発電手段は太陽電池、燃料電池、風力発電装置の少なくともいずれか一つから成るから、これらのいずれか一つからの電力を用いて商用電源系統に電力を供給したり蓄電池に充電したりすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、発電手段の電流が流れるリアクトルへの通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段は、少なくともリアクトルの二次側に設けられたスイッチ素子から成り、リアクトルを介して供給された電圧変換回路の出力に対して、直流交流変換回路が直流交流変換を行い、電圧変換回路内のリアクトルとスイッチ素子の一つを介して流れる電流を蓄電池側と商用電源系統側とに切替えて導く回路切替スイッチ手段を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、断続スイッチ手段は少なくともリアクトルの二次側に設けられたスイッチ素子から成り、リアクトルとスイッチ素子の一つを介して流れる電流を蓄電池側と商用電源系統側とに導く回路切替スイッチ手段を備えるから、電圧変換回路の部品であるリアクトル及びスイッチ素子を共通使用して、少なくとも蓄電池と商用電源系統とに向けた電力変換が行える電力変換装置を提供することができ、少なくともリアクトルとスイッチ素子とを共通使用しているから、回路構成の簡素化を達成することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、回路切替スイッチ手段は、発電手段を太陽電池、燃料電池、風力発電装置のうちのいずれか一つに切替えるために、リアクトルの一次側に接続されていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、回路切替スイッチ手段は、太陽電池、燃料電池、風力発電装置のうちのいずれか一つに発電手段を切替えるためのリアクトルの一次側に接続されたスイッチ手段から成るから、発電手段を選択し、かつ、電圧変換回路の部品であるリアクトルを共通使用して、少なくとも蓄電池と商用電源系統とに向けた電力変換が行える電力変換装置を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、リアクトルへの通電を制御して電圧変換する電圧変換回路の断続スイッチ手段は、少なくともリアクトルの一次側と二次側とに接続されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、断続スイッチ手段は、リアクトルの一次側と二次側とに接続されているから、一次側の断続スイッチ手段をチョッピング作動させて降圧機能を発揮させ、二次側の断続スイッチ手段でリアクトルに高電圧を誘起させて昇圧することが出来るため、電圧変換回路の出力として、任意の電圧の出力を得ることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、蓄電池は、リアクトルの一次側と二次側とに回路切替スイッチ手段を介して接続されており、少なくともリアクトルの一次側に接続された回路切替スイッチ手段を介して、蓄電池の電力を商用電源系統または家電製品に供給し、リアクトルの二次側に接続された回路切替スイッチ手段を介して商用電源から蓄電池が充電されることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、リアクトルの一次側と二次側とに回路切替スイッチ手段を介して接続されており、少なくともリアクトルの一次側に接続された回路切替スイッチ手段を介して、蓄電池の電力を商用電源系統または家電製品に供給し、リアクトルの二次側に接続された回路切替スイッチ手段を介して、商用電源系統の電力で蓄電池を充電することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態における電力変換装置の電気回路図である。
【図2】上記実施形態において、太陽電池から商用電源系統へ電力変換を行なう場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図3】上記実施形態において、太陽電池から蓄電池への電力変換を行なう場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図4】上記実施形態において、蓄電池から商用電源系統への電力変換を行なう場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図5】上記実施形態において、商用電源系統から蓄電池への電力伝送の場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図6】上記実施形態において、燃料電池から商用電源系統への電力変換を行う場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図7】上記実施形態において、燃料電池から蓄電池への電力変換を行う場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図8】上記実施形態において、風力発電装置から商用電源系統への電力変換を行う場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図9】上記実施形態において、風力発電装置から蓄電池への電力変換を行う場合の電力変換装置の作動を示す電気回路図である。
【図10】上記実施形態において、単相交流を直流に変換、または逆変換する直流交流変換回路の電気回路図である。
【図11】上記実施形態において、三相交流を直流に変換する交流直流変換回路の電気回路図である。
【図12】本発明の第2実施形態における電力変換装置となる特に太陽光発電用電力変換装置の電気回路図である。
【図13】第2実施形態において、太陽電池の電力を商用電源系統に売電するかまたは家庭の冷蔵庫等の家電製品で消費する場合の電力変換装置の電気回路図である。
【図14】第2実施形態において、太陽電池の電力で蓄電池を充電する場合の太陽光発電用電力変換装置の電気回路図である。
【図15】第2実施形態において、蓄電池の電力を商用電源系統に売電する場合の電力変換装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0025】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
以下、具体的に、本発明の第1実施形態について図1乃至図11を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における電力変換装置100の電気回路図である。図1において、この第1実施形態では、発電手段として太陽電池1、燃料電池3、風力発電装置4を用いている。
【0027】
これらの発電手段及び蓄電池2に接続されたフィルタ5〜8は、コンデンサや抵抗等で構成され、発電された電圧または充電用の電圧のリップル成分を減少させるものである。
【0028】
また、直流交流変換装置(インバータ)10に接続されたフィルタ11は、直流交流変換装置10内のPWM(パルス幅変調)回路によって交流化された波形のリップル成分を減少させるものである。9は風力発電装置4の三相交流出力を直流に変換する交流直流変換回路である。
【0029】
断続スイッチ手段を成すトランジスタTr1、Tr2、及びTr3としては、IGBT、スーパージャンクションMOS(SJ−MOS)、SiCパワートランジスタ等のスイッチング時の損失の少ないスイッチ素子が使用できる。
【0030】
D1、D4はダイオードである。また、断続スイッチ手段Tr2、Tr3と並列にフライホイールダイオードD2、D3を設けている。また、C1、C2、C3、C4、及びC5はコンデンサである。
【0031】
リアクトルL1は、断続スイッチ手段を成すトランジスタTr1、Tr2、及びTr3によって通電され、通電電流が遮断されたときに高い誘起起電力を発生する。また、降圧時には後段のコンデンサC5に対する充電時定数を設定する役割を持つ。
【0032】
つまり、リアクトルL1に通電されることにより、リアクトルL1に蓄積された電磁エネルギーをトランジスタTr1、Tr2、及びTr3からなるスイッチ手段で調整して、高い電圧から低い電圧までを得ることができ、昇圧または降圧が可能となっている。この種の電圧変換回路101を成す昇圧降圧回路自体は周知のものである。
【0033】
電圧変換回路101の部品を切替えて選択することで、リアクトルL1と断続スイッチ手段を成すトランジスタTr1、Tr2、及びTr3を共通で使用して、各種の電力変換が行える電力変換装置を提供している。
【0034】
このために、この第1実施形態においては、マグネットスイッチの接点SW1、SW2、SW3、SW4、及びSW5から成る回路切替スイッチ手段を設けることで、使用する断続スイッチ手段を成すトランジスタTr1、Tr2、及びTr3を選択している。これにより単一のリアクトルL1で電圧変換回路101を構成し、上述の各種の電力変換を可能としている。
【0035】
直流交流変換回路10は、直流を交流の所定電圧に変換するインバータとしての作用と、交流を所定電圧の直流に変換する整流兼電圧調整機能を有し、内部にPWM(パルス幅変調)回路を内蔵している周知のものである。
【0036】
上述のように、SW1、SW2、SW3、SW4、及びSW5は、マグネットスイッチ(電磁開閉器)の接点であり、内部のコイルに通電されることにより電磁力で接点が駆動され回路の導通または遮断を行う。これらの接点を無接点化して無接点パワーリレーを使用することも可能である。なお、実際には更に短絡防止のためのサーキットブレーカ、売電用メータ、電力計及びCT(変流器)等が設けられるが省略している。
【0037】
以上のように、少なくとも太陽電池1と蓄電池2と商用電源系統15とを有する。更に、この第1実施形態の場合は、燃料電池3と風力発電装置4とを有する。また、電圧変換回路101の出力を商用電源系統15の交流に変換する直流交流変換回路10を有する。この直流交流変換回路10は、逆に交流電力を直流電力に変換し蓄電池2に充電する機能も備える。
【0038】
更に、電圧変換回路101内のリアクトルL1への通電及びリアクトルL1からの高電圧誘起状態を、断続スイッチ手段を成すトランジスタTr1、Tr2、及びTr3のON、OFFで制御することで、任意の大きさの電圧変換を行なっている。また、回路切替スイッチ手段を成す接点SW1〜SW5を切替えることにより、単一のリアクトルL1で上記複数の発電手段及び蓄電池1、2、3、4の電力変換を可能としている。
【0039】
正弦波交流の実効値は最大値の0.707倍に等しい。この図1において、商用電源系統15の電圧をAC200V(交流200ボルトの実効値)とすると、200÷0.707=283となり、ピーク間電圧(最大値)は約280Vになる。
【0040】
このため、直流交流変換回路(インバータ)10で、直流を交流に変換して商用電源系統15にAC200V(交流200ボルトの実効値)の電圧の電力を供給するためには、直流交流変換回路10の入力段電圧Vaに280ボルト以上の高い電圧を印加する必要がある。
【0041】
この直流交流変換回路10の入力段の電圧を以下の説明においてVa電圧と称することにする。このVa電圧は、この実施形態では、DC350V(直流350ボルト)〜DC400Vに設定している。
【0042】
太陽電池1、風力発電装置4、燃料電池3といった発電手段から最大電力を得ようとすると、これらの発電手段の出力電圧は変化してしまう。例えば、発電手段が太陽電池1の場合は、この太陽電池1から最大電力を得ようとすると、太陽電池1の出力電圧はDC50V〜DC380Vの範囲で変化してしまう。発電手段が燃料電池3の場合は、この燃料電池3から最大電力を得ようとすると、燃料電池3の出力電圧は種類によりDC20V〜DC200Vの範囲がある。
【0043】
発電手段が風力発電装置4で、この風力発電装置4内の発電機が三相交流発電機の場合は、三相交流発電機の出力を図1のように交流直流変換回路9で変換する。この交流直流変換回路9の出力電圧はDC50V〜DC380Vの範囲内で変化してしまう。蓄電池2の電圧はSOC(残容量)の状態によりDC200V〜DC350Vの範囲内で変化するものを使用している。
【0044】
また、商用電源系統15の電圧は単相AC200Vであるとして説明する。なお、商用電源系統の電圧は、AC100Vでもよく、その他、三相交流を使用したり、単相三線式の配線を使用したりすることも可能であるであるが、ここでは、単相2線のAC200Vが住宅内に給電されているものとして説明する。
【0045】
このような発電手段1、3、4の電圧の変動を考慮し、かつ、上述の制約されたVa電圧のもとで、回路切替スイッチ手段SW1〜SW5、電圧変換回路101、及び直流交流変換回路10を制御して、電圧を調整しながら電力変換を行う必要がある。以下、これについて、各場合に分けて説明する。
(1)太陽電池から系統への電力変換の場合
図2は、図1において、太陽電池1から系統15への電力変換の場合の太陽光発電用電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。
【0046】
この太陽電池1から系統15への電力変換の場合においては、回路切替スイッチ手段を構成するマグネットスイッチの常開接点SW1、SWa、及びSWbを図2のようにONにする。このマグネットスイッチ内の図示しないコイルの励磁(付勢)信号は図示しない切替制御手段を構成する電子制御装置(ECU)から出力される。
【0047】
また、パワートランジスタ(以下単にトランジスタ)から成る断続スイッチ手段Tr1を常時ONにする。太陽電池1の電圧が、Va電圧より低い場合は昇圧する必要がある。従って、断続スイッチ手段Tr3とダイオードD2とリアクトルL1で電圧変換回路101の昇圧機能を発揮させる。
【0048】
すなわち、トランジスタTr1及びTr3をONしてリアクトルL1に電流を流し、次にトランジスタTr3をOFFしてリアクトルL1の誘起起電力をダイオードD2を介してコンデンサC5を充電する。これを高速で繰り返し、昇圧された電圧を直流交流変換回路10に供給する。なお、このときにダイオードD2と並列のトランジスタTr2をトランジスタTr3のOFFに連動してONするようにするとダイオードD2での損失を少なくできる。
【0049】
太陽電池1の電圧が上記Va電圧と同等もしくはそれ以上の電圧となるまで昇圧する。昇圧後、更に、直流交流変換回路10で直流から交流に変換して商用電源の系統15へ出力する。
【0050】
太陽電池1の電圧が上記Va電圧と同等もしくはそれより高い場合は、直流交流変換回路10(インバータ)内のPWM(パルス幅変調)回路で系統電圧のAC200Vになるよう電圧、周波数、及び位相を調整して系統15に電力を供給する。
(2)太陽電池から蓄電池への電力変換の場合
図3は、図1において、太陽電池1から蓄電池2への電力変換の場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この太陽電池1から蓄電池2への電力変換の場合においては、マグネットスイッチの常開接点SW1とSW3とをONする。
【0051】
太陽電池1の電圧が蓄電池2の電圧より高い場合は、トランジスタTr1とダイオードD1及びD4と、リアクトルL1と、コンデンサC2とで電圧変換回路101の降圧機能を発揮させる。
【0052】
すなわち、断続スイッチ手段となるトランジスタTr1をチョッパとして使用し必要な電力のみを後段のLCフィルタを成すリアクトルL1とコンデンサC2に供給して平滑し、所定電圧まで降圧された電圧として蓄電池2に印加している。
【0053】
太陽電池1の電圧が蓄電池2の電圧より低い場合は、断続スイッチ手段となるトランジスタTr1を常時ONにし、トランジスタTr3と、ダイオードD1及びD4と、リアクトルL1とで昇圧機能を発揮させ、太陽電池1の電圧を昇圧する。
(3)蓄電池から商用電源系統への電力変換の場合
図4は、図1において、蓄電池2から商用電源系統15への電力変換の場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この蓄電池2から系統15への電力変換の場合においては、図示しない電子制御装置(ECU)が、常開接点SW2、SWa、及びSWbをONする。
【0054】
蓄電池2の電圧が上記Va電圧より低い場合は昇圧する必要がある。よって、トランジスタTr3とダイオードD2とリアクトルL1とで電圧変換回路101の昇圧機能を発揮させ、蓄電池2の電圧を昇圧する。つまり、トランジスタTr3をOFFした後のリアクトルL1の高電圧を、ダイオードD2(またはONさせたトランジスタTr2)を介してコンデンサC5に印加する。
(4)商用電源系統から蓄電池への電力伝送の場合
図5は、図1において、商用電源系統15から蓄電池2への電力伝送の場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この商用電源系統15から蓄電池2への電力伝送の場合においては、電子制御装置(ECU)が、常開接点SW2、SWa、及びSWbをONにする。
【0055】
上記Va電圧が蓄電池2の電圧より高い場合は降圧する必要がある。この場合は、直流交流変換回路10で交流から直流に変換した後で、トランジスタTr2と、ダイオードD3と、リアクトルL1とで降圧機能を発揮させ、上記Va電圧を降圧し、降圧後の電圧で蓄電池2に充電する。
(5)燃料電池から商用電源系統への電力変換を行う場合
図6は、図1において、燃料電池3から商用電源系統15への電力変換を行う場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この燃料電池3から商用電源系統15へ電力変換する場合、常開接点SW4、SWa、SWbをONにする。
【0056】
燃料電池3の電圧が上記Va電圧より低いので昇圧する必要がある。トランジスタTr3とダイオードD2とリアクトルL1とで電圧変換回路101の昇圧機能を発揮させ、燃料電池3の電圧を昇圧する。昇圧後、直流交流変換回路10で直流から交流に変換して商用電源系統15へ供給する。
(6)燃料電池から蓄電池への電力変換する場合
図7は、図1において、燃料電池3から蓄電池2への電力変換する場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この燃料電池3から蓄電池2への電力変換する場合は、常開接点SW3及びSW4をONにする。
【0057】
燃料電池3の電圧が蓄電池2の電圧より低いので、トランジスタTr3とダイオードD4とリアクトルL1とで電圧変換回路101の昇圧機能を発揮させ、燃料電池3の電圧を昇圧して蓄電池2に充電する。
(7)風力発電から系統への電力変換する場合
図8は、図1において、風力発電装置4から商用電源系統15への電力変換する場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この風力発電装置4から商用電源系統15への電力変換する場合は、常開接点SW5、SWa、及びSWbをONにする。
【0058】
風力発電装置4の三相交流出力をフィルタ8を介して交流直流変換回路9で変換した後の直流電圧は、上記Va電圧より低いので昇圧する必要がある。よって、トランジスタTr3とダイオードD2とリアクトルL1とで電圧変換回路101の昇圧機能を発揮させる。
【0059】
風力発電装置4からの三相交流出力を交流直流変換回路9で交流から直流に変換した後、直流の出力電圧を昇圧し、更に直流交流変換回路10で直流から交流に変換して商用電源系統15へ出力する。
(8)風力発電から蓄電池への電力変換する場合
図9は、図1において、風力発電装置4から蓄電池2への電力変換する場合の電力変換装置100の作動を示す電気回路図である。この風力発電装置4から蓄電池2への電力変換する場合は、常開接点SW3、SW5をONにする。
【0060】
風力発電装置4から交流直流変換回路9で交流直流変換した後の出力電圧が、蓄電池2の電圧より低いのでトランジスタTr3とダイオードD4とリアクトルL1とで昇圧機能を発揮させる。こうして、風力発電装置4の交流出力から交流直流変換回路9で交流から直流に変換した後の電圧を昇圧し、蓄電池2に充電する。
【0061】
次に、図10は単相交流を直流に変換、または逆変換する直流交流変換回路10の概略回路図である。この直流交流変換回路10は4つのパワートランジスタでブリッジを形成している。パワートランジスタと並列のダイオードはフライホイールダイオードである。図11は、三相交流を直流に変換する交流直流変換回路9の概略図である。この交流直流変換回路9は6つのダイオードで全波整流用のブリッジを形成している。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。この第2実施形態は、回路切替スイッチ手段を成すマグネットスイッチがコモン接点の左右または上下の常開接点及び常閉接点に接続片が切り替わる切替スイッチから成る場合を示している。
【0063】
図12は本発明の第2実施形態における電力変換装置100を成す、特に太陽光発電用電力変換装置の電気回路図である。図12において、太陽電池1はノイズカット用のフィルタを成すコイル5a、5bに接続されている。
【0064】
太陽電池1の出力はコイル5a、5bを通過した後、トランジスタTr1を介して回路切替スイッチ手段を成す切替スイッチRly1と電圧調整用のリアクトルL1、トランジスタTr2、及びTr3を介して、インバータを成す直流交流変換回路10に至る。
【0065】
リアクトルL1とトランジスタTr1、Tr2、Tr3及びダイオードD1、D2、D3、D4で電圧変換回路101を形成している。そして、直流交流変換回路10によって交流化された電力を商用電源系統15に供給している。
【0066】
直流交流変換回路10の前段にはノイズ除去用のコンデンサC5が接続されている。切替スイッチRly1は2組のパワーリレーRly11及びRly12が、破線で示すように、連動するようになっている。
【0067】
2組のパワーリレーRly11及びRly12の一方である図中上方のパワーリレーRly11は、商用電源系統15側と太陽電池1側とを連結するか商用電源系統15側と蓄電池2側とを連結するかの切替機能を有する。
【0068】
また、2組のパワーリレーRly11及びRly12の他方である図中下方のパワーリレーRly12は、商用電源系統15側と蓄電池2とを連結するか、電圧変換回路101を介する太陽電池1側と蓄電池2とを連結するかの切替機能を有する。
【0069】
また、切離しスイッチSWdが、電圧変換回路101のダイオードD4側と切替スイッチRly1の他方のパワーリレーRly12との間に接続されている。この切離しスイッチSWdは、太陽電池1の電力を商用電源系統15に売電するときに、蓄電池2を切離すものである。
【0070】
なお、切替スイッチRly1は2組のパワーリレーRly11、Rly12が連動するものを使用したが、2組のパワーリレーRly11、Rly12が連動せずに独立して作動するものを使用すれば、切離しスイッチはSWdは不要にできる。以下、この図12の電気回路の作動を、場合ごとに分けて説明する。
【0071】
図13は図12において、太陽電池1の電力を商用電源系統15に売電するかまたは家庭の冷蔵庫等の家電製品16で消費する場合の電力変換装置100の電気回路図である。
【0072】
この場合、切替スイッチRly1の2組のパワーリレーRly11、Rly12が連動して上側に切替わり、太陽電池1の出力は、電圧変換回路101の昇圧機能を発揮するリアクトルL1、トランジスタTr3、ダイオードD2で昇圧され、更に、直流交流変換回路10を介して商用電源系統15の単相交流に変換される。また、切離しスイッチSWdはOFFしている。
【0073】
図14は、図12において、太陽電池1の電力で蓄電池2を充電する場合の太陽光発電用電力変換装置100の電気回路図である。この場合、切替スイッチRly1の2組のパワーリレーRly11、Rly12が連動して上側に切替わり、切離しスイッチSWdはONして閉成している。
【0074】
よって、太陽電池1の出力は、電圧変換回路101の昇圧機能を発揮するリアクトルL1、トランジスタTr3、ダイオードD4で昇圧されて、蓄電池2に充電される。
【0075】
図15は図12において、蓄電池2の電力を商用電源系統15に売電する場合の電力変換装置100の電気回路図である。この場合、回路切替スイッチ手段を成す切替スイッチRly1の2組のパワーリレーRly11、Rly12が連動して下側に切替わり、切離しスイッチSWdはOFFしている。
【0076】
よって、蓄電池2の出力は、電圧変換回路101のリアクトルL1、トランジスタTr3、ダイオードD2によって昇圧され、更に、直流交流変換回路10を介して商用電源系統15の単相交流に変換され売電される。
【0077】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、蓄電池は定置式のものを示したが、電気自動車(EV)に搭載された蓄電池(バッテリ)であっても良い。
【0078】
すなわち、車庫に置かれている電気自動車内の蓄電池を屋根上の太陽電池で充電したり、電気自動車(EV)のバッテリの余剰電力を商用電源系統に売電したりすることもできる。
【0079】
また、商用電源系統から電気自動車(EV)のバッテリを充電できることは勿論である。また、燃料電池も同様に電気自動車に搭載された燃料電池であっても良い。更に、第1実施形態において、第2実施形態と同様に、商用電源系統15の手前に家電製品を接続しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 太陽電池
2 蓄電池
3 燃料電池
4 風力発電装置
5〜8、11 フィルタ
5a、5b ノイズカット用のフィルタを成すコイル
9 交流直流変換回路
10 直流交流変換装置(インバータ)
15 商用電源系統
100 電力変換装置
101 電圧変換回路を成す昇圧降圧回路
C1、C2、C3、C4、C5 コンデンサ
D1、D2、D3、D4 ダイオード
L1、Tr2、Tr3、D4 昇圧降圧回路
L1 リアクトル
Rly1 切替スイッチ
Rly11及びRly12 切替スイッチを成すパワーリレー
SW1〜SW5、SWa、SWb、Rly1 回路切替スイッチ手段
SWd 切離しスイッチ
Tr1、Tr2、及びTr3 断続スイッチ手段を成すトランジスタ
Va 直流交流変換回路の入力段電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電手段の発電電力を少なくとも電圧変換及び直流交流変換を行って商用電源系統に供給すると共に発電手段及び前記商用電源系統にて蓄電池を充電する装置において、
前記発電手段からの電流が一次側から二次側に向けて流れるリアクトルと該リアクトルへの通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段を備えた電圧変換回路、
前記電圧変換回路の出力に対して前記直流交流変換を行って前記商用電源系統に出力する直流交流変換回路、及び
前記電圧変換回路内の前記リアクトルを介して流れる電流を、前記蓄電池側と前記商用電源系統側とに選択的に導く回路切替スイッチ手段を設けたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記発電手段は太陽電池、燃料電池、風力発電装置の少なくともいずれか一つから成る事を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記発電手段の電流が流れる前記リアクトルへの通電を制御して電圧変換する断続スイッチ手段は、少なくとも前記リアクトルの前記二次側に設けられたスイッチ素子から成り、
前記リアクトルを介して供給された前記電圧変換回路の出力に対して、前記直流交流変換回路が前記直流交流変換を行い、
前記電圧変換回路内の前記リアクトルと前記スイッチ素子の一つを介して流れる電流を前記蓄電池側と前記商用電源系統側とに切替えて導く前記回路切替スイッチ手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記回路切替スイッチ手段は、前記発電手段を前記太陽電池、前記燃料電池、前記風力発電装置のうちのいずれか一つに切替えるために、前記リアクトルの一次側に接続されていることを特徴とする請求項2ないし3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記リアクトルへの通電を制御して電圧変換する前記電圧変換回路の前記断続スイッチ手段は、少なくとも前記リアクトルの前記一次側と前記二次側とに接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記蓄電池は、前記リアクトルの前記一次側と前記二次側とに前記回路切替スイッチ手段を介して接続されており、少なくとも前記リアクトルの前記一次側に接続された前記回路切替スイッチ手段を介して、前記蓄電池の電力を前記商用電源系統または家電製品に供給し、前記リアクトルの二次側に接続された前記回路切替スイッチ手段を介して前記商用電源から前記蓄電池が充電されることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−250605(P2011−250605A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121884(P2010−121884)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】