説明

電力変換装置

【課題】従来の構成では交流電圧の整流後電圧よりも低い電圧には制御不能であるため、モータの低速運転時には最適な電圧を与えることができないという課題を有していた。本発明は、前記従来の課題を解決するもので、モータの低速時にも最適なフラットな電圧を供給することを目的とする。
【解決手段】コンデンサ容量とインバータ出力電流、出力電圧からリップル電圧の大きさを推定し、この計算結果に同期したPWM制御による降圧チョッパ制御を行い交流電圧の整流電圧より低意電圧を与えるとともに、フラットな電圧を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動に使用される電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術の一実施例を図5、図6に示す。
【0003】
図5において、交流電源(100V)10lはリアクトル110を介してIGBT111、IGBT112およびダイオード102a、ダイオード102bから成る昇圧チョッパに供給される。
【0004】
マイクロプロセッサ108は温度センサ107の出力に応じてインバータ周波数基準をPWM回路109へ与えると共に、直流電圧基準を電圧制御回路113に入力し、コンデンサ104の電圧と比較増幅して電流基準を出力し、この電流基準と変流器116の出力とを電流制御回路114で比較増幅し、PWM回路115を介して昇圧チョッパのIGBT111、IGBT112をPWM制御する。
【0005】
すなわち、電圧制御回路113、電流制御回路114、PWM回路115、リアクトル110、変流器116、IGBT111、IGB112、ダイオード102a、ダイオード102b、およびコンデンサ104によって昇圧コンバータを形成し、交流入力電流を正弦波にPWM制御し、直流出力電圧(コンデンサ104両端子間電圧)を一定に制御する。
【0006】
交流入力電圧100VACに対して直流出力電圧は約280VDCに制御され、これによってインバータ出力は交流200Vに制御される。またインバータ周波数を変えるときは、上記直流出力電圧およびインバータ出力電圧は図6のように制御される。
【0007】
一般に、インバータ電圧VACと直流入力電圧VDC、変調率M(1以下)との間にはkを定数として、数1で示す関係がある。
【0008】
【数1】

【0009】
本発明ではインバータ周波数がbの点で直流電圧を定格値(280V)にし、PWM変調率量高にしてインバータ電圧を最高にする。
【0010】
インバータ周波数がb→aの間はPWM変調率量高にしたまま、直流電圧をインバータ周波数に比例しで制御し、インバータ電圧を直線的に変化させる。インバータ周波数がa以下では、直流電圧を一定とし、PWM変調率を下げてインバータ電圧を低下させる。また直流電圧の最低値は、交流入力電圧のピーク値より少し高い値(約150V程度、これ以下では制御不能)に設定される。
【0011】
以上のように、インバータの広い周波数範囲でPWM変調率量高に保持することによって入力力率が1で電流歪のほとんど無い良質の出力が得られ、またインバータ周波数の低い範囲では直流電圧を下げてPWMを行っているのでリップル電流に起因する電動機騒音を著しく減少させることができる。
【0012】
電動機のリップル電流は、直流電圧が一定の場合は変調率M=0.5附近が最高になり、M=0.4の付近は少なくなる。Mが一定の場合は、直流電圧にほぼ比例して増加する。一般に家庭用のエアコンでは、夜間は安眠運転として冷却作用を弱めるので、インバータの周波数は図6のa附近となり、電動機の騒音は著しく低減される。
【0013】
なお、図6では直流電圧をa−b間で直線的に変化させているが段階的に変化させることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−145893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら,前記従来の構成では交流電圧の整流後電圧よりも低い電圧には制御不能であるため、モータの低速運転時には最適な電圧を与えることができないという課題を有していた。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、モータの低速時にも最適なフラットな電圧を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために,本発明の電力変換装置は、リップル電圧の大きさに同期したPWM制御による降圧チョッパ制御を行い交流電圧の整流後電圧より低い電圧を与えるとともに、フラットな電圧を生成するものである。
【0018】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、コンデンサ容量とインバータ出力電流、出力電圧からリップル電圧の大きさを推定し、この計算結果に同期したPWM制御による降圧チョッパ制御を行い交流電圧の整流電圧より低意電圧を与えるとともに、フラットな電圧を生成するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電力変換装置は,整流後電圧よりも低い電圧を出力可能とし、さらにリップル電圧を改善することで低速運転時に適したフラットな低電圧を出力できることにより、モータの運転時に発生するリップル電圧の影響による騒音、振動の改善を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1における回路ブロック図
【図2】本発明の実施例1における電圧波形を示す図
【図3】本発明の実施例1における電圧波形を示す図
【図4】本発明の実施例2における回路ブロック図
【図5】従来の実施例における回路ブロック図
【図6】従来の実施例における制御パラメータの関係図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第一の発明は、降圧チョッパ回路を用い、整流後電圧よりも低い電圧を出力可能とし、リップル電圧を補正することで低速運転時に適した低電圧出力を得ることが出来るものである。
【0022】
(実施の形態1)
図1、図2、図3を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、交流電源1を全波整流するダイオードをブリッジ接続して構成された整流回路2と、整流回路2の負荷側の2線に並列に接続されたコンデンサ3と、コンデンサ3の負荷側に直列に接続されたスイッチング素子5と、スイッチング素子5の負荷側の2線に並列に接続されたフライホイールダイオード6と、スイッチング素子5の出力側に直列に接続されたリアクトル7と、リアクトル7の負荷側の電圧を検出する電圧検出回路8と、リアクトル7の負荷側に接続されたコンデンサ9と、スイッチング素子5をスイッチング素子5やインバータ回路11を制御する制御手段10と、コンデンサ9の負荷側に並列に接続されたインバータ回路11と、インバータ回路11の出力によって駆動されるモータ12が接続される。
【0024】
スイッチング素子5とフライホイールダイオード6とリアクトル7によって降圧チョッパ回路が構成される。
【0025】
図2に示すように、交流電源1の電圧VACとコンデンサ3の電圧VDC3がVAC>VDC3(実際は整流回路2による順方向電圧と配線抵抗による電圧降下を含む)の関係となる場合にだけ電流が流れるため、負荷電流による放電とが組み合わさった充放電によってコンデンサ3にはリップル電圧が発生する。制御手段10のPWM制御によって、スイッチング素子5は駆動され、スイッチング素子5のオン時間で決まる電圧がコンデンサ9に供給されるため、コンデンサ9の電圧VDC9にもリップル電圧が発生する。
【0026】
このリップル電圧がインバータ回路11で交流出力に変換され負荷へ出力されると、インバータ出力電圧にもリップル電圧が重畳されたものとなり、モータの騒音、振動の原因の一つとなる。
【0027】
これを改善するために制御手段10は図3に示すように電圧検出回路8の出力を検出し、以下のようにオン時比率を決定する。
【0028】
制御手段10内部で持つ交流電源周波数に対して十分大きい任意の周波数の比較用三角波は、目標電圧Vrとピーク電圧Vpの比をVr/Vp=Rvとすると、三角波をVpと比較したときのオン時比率をRv%、目標電圧Vrと比較したときオン時比率100%となるように計算され、スイッチング素子5へのPWM駆動信号の時比率が決定される。
【0029】
このとき、実際出力して目標電圧対し過不足がある場合は、一般に既知のPI制御を行い時比率を調整することで目標電圧を達成する。
【0030】
また、リアクトル7とコンデンサ9により電流の遅れ、進みがあるため一定の時定数を持たせて駆動することで、コンデンサ9の電圧が一定になるように制御する。
【0031】
この制御により、モータの低速時にも最適な大きさで安定したVDC9を得ることが出来るものである。
【0032】
(実施の形態2)
第二の発明は第一の発明のオン時比率決定をインバータの出力電力と関連付けて行うものであり、同様に降圧チョッパ回路を用い、整流後電圧よりも低い電圧を出力可能とし、リップル電圧を補正することで低速運転時に適した低電圧出力を得ることが出来るものである。
【0033】
図4を用いて本発明の実施の形態を説明する。ただし、第一の発明と同じ箇所は説明を
省略する。
【0034】
図4に示すように、図1の構成に加え、インバータ出力電流を検出する電流検出手段13、電流検出手段14を備えるものである。モータ12をベクトル制御で駆動する場合においては内部で各相の出力電圧を算出しており、電流検出手段13、電流検出手段14と各相出力電圧から出力電力を算出することが可能である。
【0035】
この出力電力によってコンデンサ9の放電量が決まるため、出力電力量にオン時比率を比例させることで、第一の発明と同様に、モータ低速時にも最適な大きさで安定したVDC9を得ることが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電力変換装置に幅広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 交流電源
2 整流回路
3 コンデンサ
5 スイッチング素子
6 フライホイールダイオード
7 リアクトル
8 電圧検出回路
9 コンデンサ
10 制御手段
11 インバータ回路
12 モータ
13 電流検出手段
14 電流検出手段
102a ダイオード
102b ダイオード
104 コンデンサ
107 温度センサ
108 マイクロプロセッサ
109 PWM回路
115 PWM回路
110 リアクトル
111 IGBT
112 IGBT
113 電圧制御回路
114 電流制御回路
116 変流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、前記交流電源を整流する整流回路と,前記整流回路の負荷側に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子の負荷側に並列に接続されたダイオードと、前記スイッチング素子と直列に接続されたリアクトルと、前記リアクトルの負荷側に接続された電圧検出手段と、前記電圧検出手段と並列に接続されたコンデンサと、前記スイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段と、前記コンデンサの負荷側に接続された3相フルブリッジ回路で構成されたインバータとを備え、前記コンデンサのリップル電圧を基に前記スイッチング素子を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
インバータ出力電流を検出する電流検出手段を持つ請求項1に記載の電力変換装置において、前記電流検出手段で検出された電流値と、前記インバータの出力電圧から算出した消費電力を前記スイッチング素子の制御に利用することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85411(P2012−85411A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228285(P2010−228285)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】