説明

電力用ガス遮断器の異常診断装置及び方法

【課題】接点の開閉の駆動源にばねを用いたばね操作方式のガス遮断器において、開閉動作の異常の有無を簡単に判定する。
【解決手段】接点の開閉の駆動源にコイルばねを用いるばね操作機構で、遮断ばね26の外周に設けた遮断ばねケース71の自由端に遮断ばね受34の近接を検出可能な位置センサ73を配設する。遮断動作で遮断ばね受34がセンサ73に近づくとセンサ73の信号が出力され、遮断指令を受信してから所定時間内にセンサ73の信号が得られれば、異常なし、所定時間を超えた場合に、要注意あるいは異常であることを診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力用ガス遮断器の異常診断装置及び方法に係り、特に変電所や開閉所などの高電圧仕様に好適な電力用ガス遮断器の異常診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用ガス遮断器の位置検出装置の例が特許文献1に記載されている。この位置検出装置は、駆動主軸のスリーブ内に検出センサを設けて、電力用ガス遮断器の開閉操作に伴い、駆動主軸が移動すると、被検出体も同様に移動して、検出センサ部のコイルの電磁結合の割合が変化する。この変化を検出して監視盤等に伝送するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−308144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の位置検出装置には以下の問題があった。まず、検出装置部では被検出体と検出センサ部との間で非接触で信号を検出可能である。しかし、被検出体を可動部である駆動主軸に取付け、さらに、この被検出体に非接触で近接するように検出センサ群を取付けねばならず、構造が複雑化する上に、取付け精度に神経を使う必要があるなどの欠点があった。
【0005】
また、駆動主軸は開閉器の操作機構と遮断部とを接続するものであり、変電所や開閉所などに設置された既存のガス遮断器に対しては適用できない恐れがあった。
【0006】
特に、ばね操作式器ガス遮断器においては、機構系の構成上、駆動主軸が揺動動作する場合があるので、非接触で近接するように検出センサ群を取付けることが、さらに難しく、採用できない恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、駆動源にばねを用いたばね操作方式のガス遮断器において、変電所などに納入後の必要な時に簡単に取付け可能であり、また、開閉動作の異常の有無を簡単に診断可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一面において、絶縁性ガスが封入された接地容器内に対向配置された固定接触子と可動接触子からなる接点と、遮断器に対する投入指令および遮断指令に応動して、前記可動接触子を、リンク機構を介して前記接点の投入および遮断方向に駆動するための投入ばねおよび遮断ばねと、前記遮断ばねの自由端に取付けられ、リンクの先端を支持しながら所定の可動ストロークを移動するばね受を備えた電力用ガス遮断器の異常診断装置において、前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、前記遮断指令が発せられた所定時間の後に、前記位置センサが前記ばね受を検出しなかったとき、遮断動作の異常を診断する診断装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は他の一面において、前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、前記位置センサが所定の時間帯に動作あるいは不動作であることに応じて、遮断動作の異常を診断する診断装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明はさらに他の一面において、前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、前記遮断指令が発せられた後、前記位置センサが動作するまでの時間を計測する手段と、この計測手段の出力を記録する記録手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記位置センサとして、ギャップセンサ又は近接センサを用いて構成することが望ましい。
【0012】
また、動作検出センサと開閉指令、補助開閉器接点の信号をデータベースに記録して、動作毎の出力から電力用ガス遮断器の開閉動作の異常の有無を判断するように構成するとよい。また、開閉動作の異常が検出された場合には、異常表示を監視用モニタなどに出力するように構成するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の望ましい実施態様によれば、駆動源にばねを用いるガス遮断器において、遮断ばねを収納する遮断ばねケースの一端に開閉動作を検出するセンサを配設するので、変電所などに既存のガス遮断器に対しても適用可能である。
【0014】
また、操作器の開閉指令、補助開閉器接点の信号と組合わせることにより、可動部の全ストロークを測定することなく、簡単なセンサにより、ガス遮断器の開閉動作の異常の有無を判定可能である。
【0015】
また、このような開閉動作の異常を診断する診断装置をガス遮断器に設けることにより、信頼性の高いガス遮断器を提供することができる。
【0016】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施例による異常診断装置を付加したガス遮断器の正面図である。ガス遮断器100では、円筒形の接地容器103を架台105上に設置している。円筒形の接地容器103には絶縁性のガス、例えばSFガス(六弗化硫黄ガス)が規定の圧力で封入されている。接地容器103の軸方向中間部から斜め上方に図示を略したブッシングが突き出ており、このブッシング内に変電所や開閉所の電線を接続して電路を構成する導体101、102が収納されている。また、架台105の側部には、ガス遮断器100のばね操作器400が取付けられている。ばね操作器400の詳細構造は後述する。
【0019】
接地容器103内には、固定接触子62と可動接触子63を有する接点が配設されている。図1は、遮断部の接点が投入されている状態であり、可動接触子63が固定接触子62に接している。遮断動作時には、可動接触子63が固定接触子62から離れる。可動接触子63は、固定接触子62との接触端との反対端で、絶縁ロッド64に接続されている。接地容器103に回転軸66が回動自在に支持されている。この回転軸66にレバー65およびレバー67の一端が固定されている。レバー65の他端は絶縁ロッド64の一端に接続されている。同様にレバー67の他端はリンク68に接続されている。
【0020】
ばね操作機構の主軸4にレバー69の一端が固定されている。レバー69の他端はリンク68に接続されている。主軸4及びレバー69、リンク68、レバー67、回転軸66が4節リンク機構を形成して、ばね操作機構と遮断部とを接続する。
【0021】
このように構成したガス遮断器100の動作を説明する。通電時に電力が図示しない系統から上流側のブッシング内の導体101に供給される。導体101から接地容器103内の接点に電気が導かれ、下流側のブッシング102を経て、再び系統に供給される。
【0022】
落雷などで系統に事故が発生すると、ばね操作器400を駆動して、主軸4及びレバー69を時計回りに回転させて、リンク68を下方に移動させる。リンク68が移動すると、レバー67及び回転軸66、レバー65が時計回りに回転し、絶縁ロッド64を図の右方へ移動させる。これにより、固定接触子62から可動接触子63が離れて接点が開き、電流が遮断される。
【0023】
なお、本実施例では接地容器103を水平方向に延在しているが、鉛直方向に延在してもよい。また、接地容器103にブッシングを直接取付ける単体のガス遮断器を説明するが、ガス絶縁開閉装置の中に組み込まれた遮断器であってもよい。また、SFガスを使用したガス遮断器を例にとり説明するが、真空遮断器など他の開閉装置であってもよい。
【0024】
図2は、図1で示したばね操作器400の詳細を示す模式図である。ばね操作器400は、遮断ばね部403、投入ばね部404、投入制御機構402、遮断制御機構401、および図示しない投入ばね蓄勢装置からなる。遮断ばね部403は、主軸4および遮断ばね26を有する。投入ばね部404は、カム軸2および投入ばね28を有する。投入制御機構402は、投入ばね28の駆動力を保持開放する。遮断制御機構401は、遮断ばね26の駆動力を保持開放する。投入ばね蓄勢装置は、図示を略した電動機と、小歯車51、大歯車52とを有している。
【0025】
図2には、ばね操作機構400の投入ばね28及び遮断ばね26が共に圧縮されている投入状態を示す。
【0026】
投入ばね部404の構造を図2を用いて説明する。筐体1内に回動自在に支持された回転軸2の一端にカム3が取付けられ、他端に大歯車52が取付けられている。大歯車52の中間部には、投入ばねリンク27の一端が回動自在に取付けられている。投入ばねリンク27の他端部には投入ばね受35が取付けられており、投入ばね28の一端側を保持する。投入ばね28は、そのコイル部が投入ばねリンク27の外周に配置されており、ばね受35の反対側が固定端として、筐体1によって保持されている。また、投入ばね28の外周に円筒状の投入ばねケース72が設けられている。小歯車51には図示を省略した電動機から駆動力が伝達され、投入ばね28を蓄勢する際には小歯車51が駆動側、大歯車52が従動側となる。投入動作では、逆に大歯車52が駆動側、小歯車51が従動側となる。
【0027】
次に、投入制御機構402の概要を説明する。カム3に取付けられたローラ18に係合可能に投入ラッチ19が配置されている。この投入ラッチ19は略V字形をしており、その屈曲部を軸19aに回動自在に取付けられている。投入ラッチ19のV字の一端にはカム3のローラ18に係合する係合部19bが形成されている。また、投入ラッチ19のV字型の他端にはローラ21が取付けられている。
【0028】
ローラ21に一端部が当接可能に、投入トリガ22が配置されている。投入トリガ22は折れ曲がった形に形成されており、その折れ曲がり部を軸22aに回動自在に取付けられている。回転軸22aは筐体1に回転自在に支持されている。軸19aから投入ラッチ19のローラ21までの中間に、一端が筐体1に固定された復帰ばね20が取付けられている。投入トリガ22がローラ21に当接する側の反対端には投入トリガ22bが形成されており、この投入トリガ22bに当接可能に投入ソレノイド301のプランジャ311が配置されている。
【0029】
次に、遮断ばね部403の概要を説明する。主軸4には、略Y字型の主レバー5の中間部が取付けられている。略Y字型をした主レバー5の2つの端部には、ローラ6、7が取付けられている。また、主レバー5の残りの端部には遮断ばねリンク25の一端が回動自在に取付けられている。遮断ばねリンク25の他端には金属製の遮断ばね受34が取付けられており、遮断ばねリンク25の外周に配置されたコイル状の遮断ばね26を保持する。遮断ばね26は、遮断ばね受34で保持された自由端部と、反対側を固定端部として筐体1で保持されている。また、遮断ばね26の外周に円筒状の遮断ばねケース71を設けている。遮断ばねケースは、一端が筐体1に接続され、他端が自由になっているが、この自由端にセンサ73が取付けられている。センサ73は、ギャップセンサや近接センサなど、検出物体である金属製の遮断ばね受け34がセンサに近づくと電磁誘導により検出物体に渦電流が流れて、この電流によって検出コイルのインピーダンスが変化することで検出可能なセンサである。
【0030】
遮断ばね部403に隣り合って、遮断制御機構401が配置されている。遮断制御機構401の概要を説明する。筐体1に固定した軸8aに中間部を回動自在に取付けた第2遮断ラッチ8が、一端部に形成した係合部8bで、略Y字型の主レバー5の一端に設けたローラ7に係合する。第2遮断ラッチ8の他端部にはローラ10が取付けられている。また、第2遮断ラッチ8は、軸8a部で折れ曲がった形状に形成されている。また、軸8aと第2遮断ラッチの係合部8bとの中間に、第2遮断ラッチ8を元の位置に復帰させる復帰ばね9の一端部が取付けられている。この復帰ばね9の他端部は、筐体1に固定されている。
【0031】
第2遮断ラッチ8の一端に設けられたローラ10と係合可能に、遮断ラッチ11が配置されている。遮断ラッチ11の中間部は小筐体61に支持された軸11aに回動自在に取付けられている。また、遮断ラッチ11は軸11a部で折れ曲がった形状に形成されており、軸11aとローラ13との中間に、小筐体61に一端が固定された遮断ラッチ11を元の位置に復帰させる復帰ばね12の一端部が取付けられている。遮断ラッチ11がローラ10と係合する係合部11bの反対側にはローラ13が取付けられている。このローラ13と係合可能に略L字形状をした遮断トリガ14aの先端部が当接している。この先端部は曲面に形成されている。
【0032】
遮断トリガ14aの略L字の角部は軸14cに取付けられている。軸14cは小筐体61に回動自在に支持され、水平方向に伸びるトリガレバー14bが取付けられており、この部材14bに当接可能に引外し用ソレノイド201のプランジャ211が配置されている。また、遮断トリガ14aの中間部に一端が小筐体61に固定され、遮断トリガ14を元の位置に復帰させる復帰ばね15が取付けられている。復帰ばね9、12、15は、図2に示す投入保持状態で圧縮状態にある。
【0033】
なお、本実施例ではこれらの復帰ばねをコイルばねとしたが、ねじりコイルばね、皿ばねなどのばねであってもよい。
【0034】
以上のように構成したガス遮断器100の遮断動作を以下に説明する。投入状態において、遮断指令が入力されると、ガス遮断器100は遮断動作を開始する。遮断制御機構401の引外しソレノイド201が励磁され、プランジャ211が突出する。プランジャ211がトリガレバー14bを押圧する。その結果、遮断トリガ14aと遮断ラッチ11との係合が外れる。
【0035】
遮断トリガ14aとの係合が外れて、遮断ラッチ11が回動自由になる。遮断ラッチ11は第2遮断ラッチ8のローラ10から押圧されているので、軸11a回りに右回転する。回動が規制されていた第2遮断ラッチ8が回動自由になり、主レバー5のローラ7からの押圧力により、第2遮断ラッチ8が軸8a回りに右回転する。主レバー5のローラ7と第2遮断ラッチ8との係合が外れて、主レバー5が回動自由となる。すると、圧縮状態にある遮断ばね26の規制が外れたので、遮断ばね26が放勢され、主レバー5が時計回りに回転する。これにより遮断部接点の遮断動作が行われる。遮断ばね26が放勢し切ると、遮断動作が終了する。主レバー5の端部のローラ6がカム3の外周面にほぼ当接して止まる。
【0036】
次に、遮断器の接点が遮断状態から投入状態に移る動作を簡単に説明する。ガス遮断器100に投入指令が入力されると、投入用ソレノイド301が励磁される。投入用ソレノイド301のプランジャ311が左方向に突出し,投入トリガ22を押圧する。投入トリガ22が時計回りに回動し,投入ラッチ19のローラ21と投入トリガ22との係合が解除される。回動が規制されていた投入レバー19が回動自由になり,カム3のローラ18からの押圧力により,投入ラッチ19が時計回りに回動する。すると,投入ラッチ19とカム3のローラ18との係合が解除される。カム3の回動の規制がなくなったので,投入ばね28のばね力が放勢される。投入ばねリンク27が左方向に移動し,大歯車52および回転軸2,カム3が時計回りに回転する。
【0037】
カム3の回動に伴い,カム3の外周面が主レバー5のローラ6に当接する。主レバー5が反時計回りに回転する。カム3が略半回転すると,カム3の最大曲率半径部分でカム3の外周面が主レバー5のローラ6に当接する。この時,主レバー5に接続した遮断ばねリンク25が遮断ばね26をほぼ元の位置まで圧縮する。
【0038】
投入ばね28が放勢しきると遮断器の接点が投入される。なお,投入動作終了時に引外し制御機構401の各レバー8,11,14が復帰ばね9,12,15の力により元の位置に復帰する。これにより遮断ばね26が蓄勢される。
【0039】
図3ないし図8を用いて開閉動作の異常の有無を判定する方法について述べる。
【0040】
図3は、引外しソレノイド201、投入ソレノイド301を駆動する電気回路である。151は、直流電源である。遮断指令は156で、投入指令は150で入力される。また、155は補助開閉器であり、遮断器が切状態で開いているa接点155aと、遮断器が切状態で閉じているb接点155bから成る。
【0041】
図4は、本発明の一実施例によるガス遮断器の異常診断装置の診断部の構成図である。この診断部は、マイクロコンピュータ部41と、監視室に設けられ、マイクロコンピュータ部41の出力によって動作する表示部42によって構成されている。
【0042】
マイクロコンピュータ部41には、図3の投入指令信号150、遮断指令信号156、および補助開閉器接点信号155a,155bが入力され、次に述べる処理フローによってガス遮断器の異常を診断し、表示部42の表示装置421や422を駆動する。
【0043】
後述する異常診断の結果、ガス遮断器の開閉動作の異常が検出された際、第1の表示装置421により、正常、要注意、または異常であることを表示することが望ましい。また、取り込んだ遮断時間や投入時間などを、データベースに蓄積し、その遷移を第2の表示装置422に表示することにより、遮断器の異常の予兆を監視することができる。これにより、信頼性が高いガス遮断器の異常診断装置を提供することができる。
【0044】
図5は、本発明の一実施例によるガス遮断器の異常診断装置における診断部の処理フローである。
【0045】
まず、ステップ501では、遮断器の現在の状態を把握する。例えば、図3の接点155aの開閉状態から、投入状態あるいは遮断状態を判断できる。投入状態であると判断すると、ステップ502において、遮断指令の受信を待つ。遮断指令を受信すると、ステップ503において、遮断指令を受信後の経過時間を計時する。ステップ504では、位置センサ73の動作を待ち、位置センサ73の出力が得られれば、ステップ505で計時結果を読み込む。ステップ506では、計時結果を基準時間と比較し、所定時間内であればステップ507にて、正常であると判断する。遮断動作がやや遅れ気味であれば、ステップ508にて、要注意であると判断する。遮断動作が基準時間を越えていれば、ステップ509にて、遮断動作の異常を判定する。
【0046】
一方、ステップ501で、遮断器の現在の状態が遮断状態であることを把握した場合には、ステップ510において、投入指令の受信を待つ。投入指令を受信すると、ステップ511において、投入指令を受信後の経過時間を計時する。ステップ512では、位置センサ73のOFF動作を待ち、位置センサ73のOFF出力が得られれば、ステップ513で計時結果を読み込む。ステップ514では、計時結果を基準時間と比較し、所定時間内であればステップ515にて、正常であると判断する。投入動作がやや遅れ気味であれば、ステップ516にて、要注意であると判断する。投入動作が基準時間を越えていれば、ステップ517にて、投入動作の異常を判定する。
【0047】
次に、図6〜8を参照して、異常診断動作のタイムチャートを説明する。
【0048】
まず、図6には、ガス遮断器が正常動作をする場合の指令、センサー、補助開閉器接点の出力を示している。図において、t=0では遮断器が投入状態であり、補助開閉器155では、a接点が入状態、b接点が切状態である。
【0049】
遮断動作では、遮断指令156が入力されると、前述したように、引外しソレノイド201が励磁され、遮断ばね力が開放されて遮断部の可動接触子が作動する。遮断動作にともない、遮断ばね受34は、投入保持位置から移動し、変位量がLに達すると、補助開閉器のa接点155aが切状態に変わる。これにより、引外しソレノイド201に流れていた電流が遮断され、遮断指令が切となる。また、t5の時間差でb接点155bが入状態に変わる。その後も遮断ばね受34が移動して、遮断ばね受34が遮断ばねケース71に近づくと、センサ73が遮断ばね受34を検知して信号を出力する。図6では、この距離がLでセンサ73が検知する。
【0050】
ここで、遮断指令開始から遮断ばね受34が遮断終了位置に達するまでの時間区分を図6のt1、t2で示す。t1は遮断指令が入力されてから補助開閉器155のa接点155aが切になるまでの時間であり、t2はt1に引き続き遮断ばね受34が遮断終了位置に達するまでの時間である。
【0051】
次に、投入動作を説明する。遮断終了状態では、補助開閉器155のa接点155aが切状態であり、b接点155bが入状態である。投入指令150が入力されると投入ソレノイド301が励磁され、投入ばねが開放され、遮断ばね受34が遮断ばねケース71の端部から離れていく。これにより、センサ73の信号出力がゼロになる。投入動作後半で遮断ばね受34が投入保持位置との距離がL以下になると補助開閉器155のb接点155bが切状態に変わる。これにより、投入ソレノイド301に流れていた電流が遮断され、投入指令が切となる。また、t6の時間差でa接点155aが入状態に変わる。その後も遮断ばね受34が移動して、投入動作が終了する。
【0052】
ここで、投入指令開始から投入指令終了までの時間区分を図6のt3、t4で示す。t3は、投入指令が入力されてからセンサ73の信号出力がゼロになるまでの時間であり、t4は引き続き投入指令が切られるまでの時間である。
【0053】
図7、8に開閉動作に異常がある場合の一例の指令、センサ、補助開閉器接点の出力を示す。図7には遮断動作の異常を、図8に投入動作の異常の例を示す。まず、図6と図7を用いて遮断動作の異常判定を説明する。いま、図6と図7で、t1=t1’であり、遮断指令が入力されてから補助開閉器155のa接点155aが切状態になるまでの時間が同一である。これにより、遮断制御機構401には異常が発生していないと判定できる。これに対して、a接点155aが切状態に変わってから遮断ばね受34が遮断終了位置に達するまでの時間は、t2<t2’となっている。これにより、遮断ばね部403またはリンク68から可動接触子63までの何れかの部品に摺動抵抗増加などによる固渋などの異常が発生していると考えられる。
【0054】
このように、遮断指令、補助開閉器接点、センサの信号出力を組合わせることにより、遮断動作時の可動部の全ストロークを計測することなく異常診断が可能である。この実施例では、遮断ばね受34が、遮断終了位置にあるべき(離れるべき)ときに、遮断終了位置にない(離れない)異常を検出できる。
【0055】
次に、図6と図8を用いて投入動作の異常判定を説明する。いま、図6と図8で、t4=t4’であり、センサ73の信号出力がゼロになってから補助開閉器接点155bが切状態に変わるまでの時間が同一である。これにより、遮断ばね部403またはリンク68から可動接触子までの機構には異常が発生していないと判定できる。これに対して、投入指令150が入力されてからセンサ73の信号出力がゼロになるまでの時間がt3<t3’となっている。これにより、投入制御機構402の何れかの部品に摺動抵抗増加などの異常が発生していると考えられる。このように、投入動作においてもセンサ73、投入指令、補助開閉器接点の信号出力を組合わせることにより、異常診断が可能である。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、遮断ばね受の全ストロークを計測することなく、ストロークの一部を検出するセンサを遮断ばねケースの一端に配設することにより、開閉動作の異常診断を容易に実施できる。
【0057】
また、ストローク検出センサを使用しない場合には遮断ばねケースから取り外し、遮断ばねケースの取付け孔を塞ぐことによって、センサの劣化を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例による異常診断装置を付加したガス遮断器の正面図。
【図2】図1に示した電力用ガス遮断器の操作器の詳細を示す模式図。
【図3】引外しソレノイド201、投入ソレノイド301を駆動する電気回路図。
【図4】本発明の一実施例によるガス遮断器の異常診断装置の診断部の構成図。
【図5】本発明の一実施例によるガス遮断器の異常診断部の処理フロー図。
【図6】本発明の他の実施例による正常時の異常診断動作のタイムチャート図。
【図7】本発明の他の実施例による遮断動作の異常時のタイムチャート図。
【図8】本発明の他の実施例による投入動作の異常時のタイムチャート図。
【符号の説明】
【0059】
1…筐体、2…カム軸、3…カム、41…マイクロコンピュータ部、42…表示部、5…主レバー、26…遮断ばね、28…投入ばね、34…遮断ばね受、71…遮断ばねケース、73…位置センサ、150…投入指令、155…補助開閉器、156…遮断指令、201…引外しソレノイド、301…投入ソレノイド、400…ばね操作器、401…遮断制御機構、402…投入制御機構、403…遮断ばね部、404…投入ばね部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスが封入された接地容器内に対向配置された固定接触子と可動接触子からなる接点と、
遮断器に対する投入指令および遮断指令に応動して、前記可動接触子を、リンク機構を介して前記接点の投入および遮断方向に駆動するための投入ばねおよび遮断ばねと、
前記遮断ばねの自由端に取付けられ、リンクの先端を支持しながら所定の可動ストロークを移動するばね受を備えた電力用ガス遮断器の異常診断装置において、
前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、
前記遮断指令が発せられた所定時間の後に、前記位置センサが前記ばね受を検出しなかったとき、遮断動作の異常を診断する診断装置を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項2】
絶縁性ガスが封入された接地容器内に対向配置された固定接触子と可動接触子からなる接点と、
遮断器に対する投入指令および遮断指令に応動して、前記可動接触子を、リンク機構を介して前記接点の投入および遮断方向に駆動するための投入ばねおよび遮断ばねと、
前記遮断ばねの自由端に取付けられ、リンクの先端を支持しながら所定の可動ストロークを移動するばね受を備えた電力用ガス遮断器の異常診断装置において、
前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、
前記位置センサが所定の時間帯に動作あるいは不動作であることに応じて、遮断動作の異常を診断する診断装置を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項3】
絶縁性ガスが封入された接地容器内に対向配置された固定接触子と可動接触子からなる接点と、
遮断器に対する投入指令および遮断指令に応動して、前記可動接触子を、リンク機構を介して前記接点の投入および遮断方向に駆動するための投入ばねおよび遮断ばねと、
前記遮断ばねの自由端に取付けられ、リンクの先端を支持しながら所定の可動ストロークを移動するばね受を備えた電力用ガス遮断器の異常診断装置において、
前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する位置センサと、
前記遮断指令が発せられた後、前記位置センサが動作するまでの時間を計測する手段と、
この計測手段の出力を記録する記録手段を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記位置センサを、前記遮断ばねを収納するケースの一端に取付けたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記位置センサは、ギャップセンサ又は近接センサを含むことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記遮断ばねは、前記遮断器を駆動する操作器を収納した筐体に固定端を設け、前記ばね受を支持する自由端が、前記遮断ばねの蓄勢力により、前記筐体から離れる方向に移動するように配置され、前記自由端に前記位置センサを配置したことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記位置センサが所定の時間帯に動作あるいは不動作であるとき、異常を報知する報知手段を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項8】
請求項2において、前記投入および遮断指令、前記遮断器の補助開閉器接点の動作、並びに前記位置センサの出力の組合せ論理に基いて遮断器の異常の有無を診断する診断装置を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項9】
請求項3において、前記ガス遮断器の正常動作でのセンサ出力のタイミングを記録したデータベースと、実動作毎のセンサ出力を前記データベースの記録内容と比較する異常診断手段を備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断装置。
【請求項10】
絶縁性ガスが封入された接地容器内に対向配置された固定接触子と可動接触子からなる接点と、
遮断器に対する投入指令および遮断指令に応動して、前記可動接触子を、リンク機構を介して前記接点の投入および遮断方向に駆動するための投入ばねおよび遮断ばねと、
前記遮断ばねの自由端に取付けられ、リンクの先端を支持しながら所定の可動ストロークを移動するばね受を備えた電力用ガス遮断器の異常診断方法において、
前記電力用ガス遮断器に対する遮断指令を受信するステップと、
前記ばね受が、前記可動ストロークの自由端に来たことを検出する遮断ばね放勢検知ステップと、
前記遮断指令を受信後の所定時間内に、前記遮断ばね放勢検知ステップの出力が得られなかったとき、遮断動作の異常を診断するステップを備えたことを特徴とする電力用ガス遮断器の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−160926(P2010−160926A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1206(P2009−1206)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】