説明

電動アクチュエータ

【課題】ピストンロッドをネジ軸を介して電動モータで駆動する電動アクチュエータにおいて、ピストンロッドの伸張位置におけるネジ軸に作用する外力および衝撃を小さくすることができる構造を備えた電動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】油を収容するシリンダ本体2と、シリンダ本体2の中に配置され電動モータ23で回転駆動されるネジ軸3と、ネジ軸3の回転により直線運動するピストンロッド4と、ピストンロッド4が前進する側であるシリンダ本体2のロッド側シリンダ室5aの内側面に形成された第1ポート6と、ピストンロッド4が後退する側であるシリンダ本体2のヘッド側シリンダ室5bの内側面に形成された第2ポート7と、第1ポート6と第2ポート7とをつなぐシリンダ室連通通路9とを備える電動アクチュエータ1である。電動アクチュエータ1は、ピストンロッド4を前進させたときに、当該ピストンロッド4のピストン部4aで第1ポート6が閉にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関し、特に、航空機用脚を昇降させるのに好適な電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用脚を昇降させるためのアクチュエータに関する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された航空機用脚昇降装置は、緊急脚下げを含む脚昇降機構をユニット化してレイアウト容易性を図ることを目的とするものであって、油圧源としてのポンプと、そのポンプを駆動するモータと、ポンプの吐出圧を受けて伸縮するロッドと、ロッドの伸縮動作を規制するメカニカルロック機構とを、共通のボディ内に実装したことを特徴とする昇降装置である。
【0003】
ここで、航空機技術の分野では、油圧系統をなくして航空機の軽量化を図るために、EMA(Electro Mechanical Actuator)、EHA(ElectroHydrostatic Actuator)の研究開発が世界的な流れになっているが、航空機用脚の昇降装置の昇降系統に関しては依然として油圧アクチエータが主流である。
【0004】
航空機用脚を昇降させるために開発されたEMAとしては、例えば図3に示したようなものがある。図3に示した電動アクチュエータ101は、シリンダ本体84と、シリンダ本体84の中に配置され電動モータ23で回転駆動されるネジ軸3と、ネジ軸3に螺合されたピストンロッド83とを備えている。また、シリンダ本体84の中には機械式ブレーキ81が配置され、シリンダ本体84の端部側面にはリミットスイッチ82が取り付けられている。
【0005】
電動モータ23を動作させると、ネジ軸3の回転によりピストンロッド83は前進(脚下げ)方向や後退(脚上げ)方向に直線運動する。ここで、ピストンロッド83を脚下げ方向に移動させると、ピストンロッド83のピストン部83aがリミットスイッチ82をたたき、その信号を受けて電動モータ23が停止するとともに機械式ブレーキ81がかかる。これにより、ピストンロッド83はその脚下げ位置(伸張位置)で停止しロックされる。この電動アクチュエータ101によると、ピストンロッド83の駆動に油圧を用いないため、これにより従来必要であった油圧系統をなくすことができ航空機の軽量化を図ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−59592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示した電動アクチュエータ101では、ピストンロッド83をその脚下げ位置(伸張位置)にして航空機が離着陸するとき、ピストンロッド83を介して作用する外力および衝撃を、ネジ軸3および機械式ブレーキ81で受ける必要があり、すなわち、ネジ軸3および機械式ブレーキ81に大きな負荷がかかるので、これら機器の強度や制動性能を十分なものにしておく必要があり、非常に大きな部品となってしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ピストンロッドをネジ軸を介して電動モータで駆動する電動アクチュエータにおいて、ピストンロッドの伸張位置におけるネジ軸に作用する外力および衝撃を小さくすることができる構造を備えた電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ピストンロッドの伸張位置において、シリンダ本体に収容した流体でピストンロッドをロックすることで、ネジ軸に作用する外力および衝撃を小さくすることができ、これにより前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、流体を収容するシリンダ本体と、前記シリンダ本体の中に配置され、電動モータで回転駆動されるネジ軸と、前記ネジ軸の回転により直線運動するピストンロッドと、前記ピストンロッドが前進する側である前記シリンダ本体のロッド側シリンダ室の内側面に形成された第1ポートと、前記ピストンロッドが後退する側である前記シリンダ本体のヘッド側シリンダ室の内側面に形成された第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとをつなぐシリンダ室連通通路と、を備え、前記ピストンロッドを前進させたときに、当該ピストンロッドのピストン部で前記第1ポートが閉にされる電動アクチュエータである。
【0011】
この構成によると、前進するピストンロッドのピストン部が第1ポートを閉じると、シリンダ室連通通路が遮断される。これにより、シリンダ本体のヘッド側シリンダ室は封流体状態となる。この状態で、電動アクチュエータに対してピストンロッドの後退方向に外力および衝撃が作用すると、ネジ軸だけでなくヘッド側シリンダ室の流体でも外力および衝撃を受けることになる。したがって、本電動アクチュエータによると、ピストンロッドが伸張位置において、当該ピストンロッドの後退方向に作用する外力および衝撃を、流体に分散させることができ、ネジ軸に作用する衝撃などの力を小さくすることができる。また、その結果、従来の電動アクチュエータに比して、アクチュエータを小型・軽量化することができる。
【0012】
また本発明において、前記ネジ軸に螺合されるナットと、前記ナットと前記ピストン部との間に配置される弾性体と、を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によると、外力および衝撃を弾性体に吸収させて、これらの外力および衝撃が流体の剛性分により、直接、ネジ軸に作用することを防止し、シリンダ本体全体で外力および衝撃を受けることができる。
【0014】
さらに本発明において、前記シリンダ本体の側部に固定され、流体を収容する一方の室が前記ロッド側シリンダ室に連通されるリザーバを備えることが好ましい。
【0015】
この構成によると、上記リザーバにより、流体の蓄圧に加え、流体の温度(高低温)による熱膨張差を吸収することができ、ピストンロッドのアンバランスな動きを防止できる。
【0016】
さらに本発明において、前記リザーバの他方の室から当該リザーバの一方の室へ向かう方向を順方向とする第1逆止弁を備えることが好ましい。
【0017】
この構成によると、ピストンロッドに作用する外力および衝撃により、封流体状態となったロッド側シリンダ室が真空状態になることを防止できる。
【0018】
さらに本発明において、前記ヘッド側シリンダ室と前記リザーバの一方の室とを連通させるための連通弁を備えることが好ましい。
【0019】
この構成によると、第1ポートと第2ポートとをつなぐ前記シリンダ室連通通路が閉塞してしまった場合に、上記連通弁を動作させることで、シリンダ本体のヘッド側シリンダ室とロッド側シリンダ室とを、リザーバの上記一方の室を介して連通させることができる。これにより、ピストンロッドの直線運動を確保することができる。
【0020】
さらに本発明において、前記ピストンロッドのピストン部に設けられ、前記ロッド側シリンダ室から前記ヘッド側シリンダ室へ向かう方向を順方向とする第2逆止弁を備えることが好ましい。
【0021】
この構成によると、ピストンロッドに作用する外力および衝撃により、封流体状態となったヘッド側シリンダ室が真空状態になることを防止できる。
【0022】
さらに本発明において、前記ピストンロッドのピストン部に設けられ、前記ヘッド側シリンダ室の圧力が所定値以上になると、当該ヘッド側シリンダ室と前記ロッド側シリンダ室とを連通させるリリーフ弁を備えることが好ましい。
【0023】
この構成によると、ピストンロッドに作用する外力および衝撃が想定以上の大きさであったり、ヘッド側シリンダ室の流体温度が高くなって流体の熱膨張が想定以上の大きさであったりした場合に、ヘッド側シリンダ室の流体をロッド側シリンダ室に逃がして、ヘッド側シリンダ室の流体圧が過剰上昇することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。以下に説明する電動アクチュエータは、小型航空機用脚を昇降させるために用いるものであるが、中型・大型の航空機用脚を昇降させるためのアクチュエータとしても使用可能である。また、本電動アクチュエータは、航空機のドアなどをロックするための(ドア開閉用の)アクチュエータとしても使用可能であるし、さらには、航空機以外の機械にも適用することができるアクチュエータである。また、本発明の電動アクチュエータに収容する流体は、主に油を用いるが、油以外の液体、空気などの気体なども電動アクチュエータに収容する流体として採用することができる。なお、以下の実施形態では、流体として油を用いた例で説明している。
【0025】
(電動アクチュエータの構成)
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ1を示す概略の断面図である。図1は、そのピストンロッド4が退避位置(後退位置)に位置するときの図であり、図2は、そのピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に位置するときの図である。
【0026】
図1および図2に示すように、電動アクチュエータ1は、油を収容するシリンダ本体2と、シリンダ本体2の中に配置された電動モータ23・電磁ブレーキ24・ネジ軸3・ピストンロッド4と、シリンダ本体2の側部に一体固定(一体形成)されたリザーバ12とを備えている。
【0027】
(シリンダ本体)
シリンダ本体2は、筒状の形態であり、航空機の脚が取り付けられる側に形成されたシリンダ室5と、機体側に形成されたモータ室26およびブレーキ室28とを有している。そして、シリンダ本体2の機体側の端部には、機体への取付部21が設けられている。なお、航空機の車輪、ホイール、およびそのアームなどを含めて航空機の脚と呼ぶこととする。
【0028】
上記シリンダ室5は、後述するピストンロッド4のピストン部4aによって、ロッド側シリンダ室5aとヘッド側シリンダ室5bとに区画されている。ロッド側シリンダ室5aは、シリンダ室5のうち航空機の脚が取り付けられる側、すなわちピストンロッド4が前進する側の室であり、ヘッド側シリンダ室5bは、シリンダ室5のうちモータ室26側、すなわちピストンロッド4が後退する側の室である。
【0029】
ロッド側シリンダ室5aの内側面8aには、第1ポート6および第3ポート27が形成されている。第3ポート27は、ロッド側シリンダ室5aの内側面8aのうちピストンロッド4が前進する側の端部に形成され、第1ポート6は、第3ポート27よりもピストンロッドが後退する側に形成されている。また、ヘッド側シリンダ室5bの内側面8bには、第2ポート7が形成されている。第2ポート7は、ヘッド側シリンダ室5bの内側面8bのうちピストンロッド4が後退する側の端部に形成されている。ここで、シリンダ本体2の側部には、第1ポート6と第2ポート7とをつなぐシリンダ室連通通路9が形成されている。このシリンダ室連通通路9は、ピストンロッド4が直線運動するX方向と同じ向きに形成された直線状の通路である。なお、シリンダ室連通通路9は第1ポート6と第2ポート7とをつなぐ通路であればよく、直線状の通路に限られることはない。X方向に沿う直線状の通路とすることで、第1ポート6と第2ポート7とを最短距離でつなぐことができ、これにより、シリンダ室連通通路9がより閉塞しにくい。
【0030】
(電動モータ)
電動モータ23は、後述するネジ軸3を回転駆動するためのものであり、モータ室26に配置されている。電動モータ23にはエンコーダ(不図示)が内蔵されており、このエンコーダからのパルス信号により電動モータ23を任意の位置で停止させることができる。なお、ピストンロッド4の止めたい位置で作動するように図3で示したリミットスイッチ82などをシリンダ本体2などに必要数取り付けて、その信号で電動モータ23を停止させてもよい。
【0031】
(電磁ブレーキ)
電磁ブレーキ24は、ネジ軸3の回転を阻止するためのパーキングブレーキであり、モータ室26に隣接して形成されたブレーキ室28に配置されている。電磁ブレーキ24を配置することで、ピストンロッド4が退避位置(後退位置)に位置するときに、ピストンロッド4がそれ自体の自重や航空機の脚の自重などにより前進側(脚下げ側)に移動することを完全にロックすることができる。なお、電磁ブレーキ24の制動性能(ブレーキ性能)は、上記したようなピストンロッド4の前進側(脚下げ側)への自重などによる移動を阻止できる程度のものであればよく、それ以上の多大な性能は必要でない。また、電磁ブレーキ24は、手動のブレーキ解除レバー25を有している。
【0032】
(ネジ軸)
電動モータ23には、ネジ軸3が取り付けられている。ネジ軸3は、ネジが切られている部分がシリンダ室5内となるように、シリンダ室5およびモータ室26の中に配置されている。シリンダ室5とモータ室26とはシールされている。このシールは、シリンダ室5からモータ室26へ衝撃時の圧力が直接作用しない程度のシールであり、必ずしも必要なものではない。なお、電動モータ23は、その冷却のためWET用のモータを使用している。また、ネジ軸3には、ナット10が螺合されている。電動モータ23によりネジ軸3を回転駆動することで、ナット10は直線運動する。
【0033】
(ピストンロッド)
シリンダ室5内にはピストンロッド4が配置されている。ピストンロッド4は、端部に航空機の脚が取り付けられる取付部22が形成されたロッド部4bと、シリンダ室5の内側面8a・8bに沿って(摺動して)直線運動するピストン部4aとを有する。
【0034】
ここで、ロッド部4bは、中空の筒状形態であり、内部にネジ軸3が挿入されている。次に、ピストン部4aの内部には、第2逆止弁16およびリリーフ弁17が設けられている。第2逆止弁16は、シリンダ室5のロッド側シリンダ室5aからヘッド側シリンダ室5bへ向かう方向を順方向とする逆止弁である。また、リリーフ弁17は、ヘッド側シリンダ室5bの油圧が所定値以上になると、ヘッド側シリンダ室5bとロッド側シリンダ室5aとを連通させるリリーフ弁である。
【0035】
また、ピストン部4aのピストンロッド4が前進する側の端面には、リング状の突起部4cが設けられている。この突起部4cは、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)にあるときに(図2参照)、ロッド側シリンダ室5aの底面とピストン部4aの端面との間の隙間を確保して、第2逆止弁16およびリリーフ弁17の作動を確実なものとするためのものである。さらに、ピストン部4aのピストンロッド4が後退する側には、リング状の係止部4dが設けられている。この係止部4dは、ピストンロッド4を後退(退避)させるときに、ナット10が係止する部分である。
【0036】
また、ピストン部4aとナット10との間には皿バネ10(弾性体)が配設されている。なお、ピストン部4aとナット10との間に配設する弾性体は、皿バネ10に限られることはなく、所定の厚みのリング状のゴムなどであってもよい。
【0037】
(リザーバ)
次に、ピストンロッド4が前進する側のシリンダ本体2の側部にはリザーバ12が一体形成されている。このリザーバ12は、そのピストン15により、油を収容する一方の室12aと、内部にコイルバネ13が配設された他方の室12bとに区画されている(室12bには、コイルバネ13および空気が収容されることになる)。ここで、リザーバ12の室12aとシリンダ室5のロッド側シリンダ室5aとは第3ポート27で連通している。また、ピストン15の内部には、室12bから室12aへ向かう方向を順方向とする第1逆止弁14が設けられている。なお、コイルバネ13は必ずしも必要なものではない。コイルバネ13は、非常用で、ブレーキ解除して強制的に油をながすためのものである。
【0038】
また、リザーバ12の一方の室12aとシリンダ室5のヘッド側シリンダ室5bとは、連通弁18を介して通路19・20で接続されている。連通弁18は2位置2ポートの電磁弁であり、通路19と通路20とを遮断する遮断位置と、通路19と通路20とを連通させる連通位置を有する。なお、本実施形態では電磁式の連通弁18としているが、油圧パイロット式の弁としてもよいし、空気圧パイロット式の弁としてもよい。また、連通弁18は、シリンダ本体2やリザーバ12の側部などに設けられる。
【0039】
(電動アクチュエータの動作)
次に、電動アクチュエータ1の動作について説明する。
【0040】
(ピストンロッドの前進動作)
まず、ピストンロッド4が退避位置(後退位置)に位置する状態(図1)から、伸張位置(前進位置)に位置する状態(図2)への動作について説明する。航空機の制御部から、脚下げの指令が出されると、電磁ブレーキ24が解除されるとともに電動モータ23が駆動される。これによりネジ軸3が回転し、ナット10とともにピストンロッド4は前進していく。このとき、シリンダ本体2のロッド側シリンダ室5aからヘッド側シリンダ室5bへシリンダ室連通通路9を通って油が移動していく。そして、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に達すると、ピストンロッド4のピストン部4aが第1ポート6を閉にする。これにより、ロッド側シリンダ室5aからヘッド側シリンダ室5bへの油の移動が停止し、ロッド側シリンダ室5aおよびヘッド側シリンダ室5bはいずれも封油状態となる。なお、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に達した時点で、エンコーダからの信号で電動モータ23を停止させるとともに、電磁ブレーキ24を動作させる。なお、ヘッド側シリンダ室5bに密封された油により、ピストンロッド4がロックされるので(後退方向に動かない)、必ずしも電磁ブレーキ24を動作させる必要はない。
【0041】
なお、電気系統に故障が発生してしまった場合であっても、ピストンロッド4のピストン部4aが第1ポート6を閉にすることで、ロッド側シリンダ室5aおよびヘッド側シリンダ室5bはいずれも封油状態となり、その結果、ピストンロッド4は停止するとともに、その後退方向への動きはロックされる。
【0042】
(ピストンロッドの後退動作)
航空機の制御部から、脚上げの指令が出されると、連通弁18が励磁されるとともに電磁ブレーキ24が解除され電動モータ23が駆動される。連通弁18の励磁により、リザーバ12の一方の室12aとヘッド側シリンダ室5bとが連通する。電動モータ23の駆動によりネジ軸3が回転し、ナット10とともにピストンロッド4は後退していく。このとき、ヘッド側シリンダ室5bからリザーバ12の一方の室12aへ通路19・20を通って油が移動していく。第1ポート6が開になれば連通弁18への通電を止め、その後はシリンダ室連通通路9を通ってヘッド側シリンダ室5bからロッド側シリンダ室5aへ油が移動する。そして、ピストンロッド4が退避位置(後退位置)に達すると(エンコーダからの信号で判断)、電動モータ23を停止させるとともに、電磁ブレーキ24を動作させる。
【0043】
本発明に係る電動アクチュエータ1によると、前記したように、前進するピストンロッド4のピストン部4aが第1ポート6を閉じると、シリンダ室連通通路9が遮断される。これにより、シリンダ本体2のヘッド側シリンダ室5bは封油状態となる。この状態で、ピストンロッド4の後退方向に外力および衝撃が作用すると、ネジ軸3だけでなくヘッド側シリンダ室5bに封油された油でも外力および衝撃を受けることになる。したがって、ピストンロッド4が伸張位置において、当該ピストンロッド4の後退方向に作用する外力および衝撃を、油に分散させることができ、ネジ軸3に作用する衝撃などの力を小さくすることができる。その結果、従来よりもアクチュエータを小型・軽量化することができる。
【0044】
また、ピストン部4aとナット10との間に配置された皿バネ11に、外力および衝撃を吸収させて、これらの外力および衝撃が油の剛性分により、直接、ネジ軸3に作用することを防止し、シリンダ本体2全体で外力および衝撃を受けることができる。
【0045】
また、コイルバネ13を備えるリザーバ12により、油の蓄圧に加え、油の温度(高低温)による熱膨張差を吸収することができ、ピストンロッド4のアンバランスな動きを防止できる。また、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に位置する場合において、ピストンロッド4の後退方向に外力および衝撃が作用すると、封油されているシリンダ本体2のロッド側シリンダ室5aは真空状態になろうとするが、ピストン15に設けられた第1逆止弁14によりロッド側シリンダ室5aが真空状態になることを防止できる。
【0046】
また、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に位置する場合において、外力および衝撃の反作用によりピストンロッド4が前進方向に移動しようとすると、シリンダ本体2のヘッド側シリンダ室5bは真空状態になろうとするが、ピストン部4aに設けられた第2逆止弁16によりロッド側シリンダ室5aからヘッド側シリンダ室5bへ油が移動し、ヘッド側シリンダ室5bが真空状態になることを防止できる。
【0047】
また、ピストンロッド4が伸張位置(前進位置)に位置する場合において、ピストンロッド4の後退方向に作用する外力および衝撃が想定以上の大きさであったり、ヘッド側シリンダ室5bの油温度が高くなって油の熱膨張が想定以上の大きさであったりした場合に、ピストン部4aに設けられたリリーフ弁17により、ヘッド側シリンダ室5bの油をロッド側シリンダ室5aに逃がして、ヘッド側シリンダ室5bの油圧が過剰上昇することを防止できる。
【0048】
また、連通弁18により、第1ポート6と第2ポート7とをつなぐシリンダ室連通通路9が閉塞してしまった場合に、当該連通弁18を動作させることで、シリンダ本体2のヘッド側シリンダ室5bとロッド側シリンダ室5aとを、リザーバ12の室12aを介して連通させることができ、ピストンロッド4の直線運動を確保することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。



【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータを示す概略の断面図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータにおいてそのピストンロッドが伸張位置にあるときの概略の断面図である。
【図3】従来技術に係る電動アクチュエータを示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:電動アクチュエータ
2:シリンダ本体
3:ネジ軸
4:ピストンロッド
5a:ロッド側シリンダ室
5b:ヘッド側シリンダ室
6:第1ポート
7:第2ポート
9:シリンダ室連通通路
10:ナット
11:皿バネ(弾性体)
12:リザーバ
13:コイルバネ
14:第1逆止弁
16:第2逆止弁
17:リリーフ弁
18:連通弁
23:電動モータ
24:電磁ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するシリンダ本体と、
前記シリンダ本体の中に配置され、電動モータで回転駆動されるネジ軸と、
前記ネジ軸の回転により直線運動するピストンロッドと、
前記ピストンロッドが前進する側である前記シリンダ本体のロッド側シリンダ室の内側面に形成された第1ポートと、
前記ピストンロッドが後退する側である前記シリンダ本体のヘッド側シリンダ室の内側面に形成された第2ポートと、
前記第1ポートと前記第2ポートとをつなぐシリンダ室連通通路と、
を備え、
前記ピストンロッドを前進させたときに、当該ピストンロッドのピストン部で前記第1ポートが閉にされる、電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記ネジ軸に螺合されるナットと、
前記ナットと前記ピストン部との間に配置される弾性体と、
を備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記シリンダ本体の側部に固定され、流体を収容する一方の室が前記ロッド側シリンダ室に連通されるリザーバを備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記リザーバの他方の室から当該リザーバの一方の室へ向かう方向を順方向とする第1逆止弁を備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記ヘッド側シリンダ室と前記リザーバの一方の室とを連通させるための連通弁を備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動アクチュエータにおいて、
前記ピストンロッドのピストン部に設けられ、前記ロッド側シリンダ室から前記ヘッド側シリンダ室へ向かう方向を順方向とする第2逆止弁を備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電動アクチュエータにおいて、
前記ピストンロッドのピストン部に設けられ、前記ヘッド側シリンダ室の圧力が所定値以上になると、当該ヘッド側シリンダ室と前記ロッド側シリンダ室とを連通させるリリーフ弁を備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−127456(P2010−127456A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306517(P2008−306517)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】