説明

電動二輪車のスロットル開度検知装置

【課題】バッテリ、モータ、制御部等を内装したスイングアームを有する電動二輪車に好適なスロットル開度検知装置を提供する。
【解決手段】電動二輪車1の後輪WRを軸支すると共に車体に揺動自在に取り付けられるスイングアーム30の内部に、バッテリ、後輪WRを駆動する電動モータMおよび該電動モータMを制御する制御装置としての基板50を内装する。スロットルグリップとスロットル開度センサ60との間が物理的な伝達手段62で連結されることにより、スロットルグリップの回動確度を検知できるように構成し、スロットル開度センサ60を基板50に取り付ける。基板50は、平面部を車幅方向に指向させて配置する。スロットル開度センサ60を、センサ軸の回動角度を検知すると共に、センサ軸が車幅方向に指向するように基板50の車幅方向外側の面に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車のスロットル開度検知装置に係り、特に、乗員の操作に応じたスロットル開度を電気信号として検知する電動二輪車のスロットル開度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二輪車のハンドルバーに回動可能に取り付けられたスロットルグリップを操作することで車両の動力源の出力を変化させる構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、スロットルグリップに近接配置されたセンサでその回動確度を検知し、このセンサ信号に基づいて、内燃機関の吸気管に備えられたスロットルバルブをアクチュエータで開閉するようにしたTBW(スロットル・バイ・ワイヤ)システムが開示されている。スロットル開度のセンサ信号は、配線を介して車体の所定位置に配設された制御部に入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−32299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータを駆動源とする電動二輪車においても、乗員の意思に応じてモータを駆動するために特許文献1に記載されたようなスロットル操作装置が必要となる。しかしながら、バッテリ、モータ、制御部等をスイングアーム(ユニットスイング)に内装するスクータ型の電動二輪車に対して、スロットルグリップ近傍にスロットル開度センサを配置する特許文献1の構成をそのまま適用すると、センサ自身をケースで保護したり、防水を考える必要がある上に、スロットルグリップ近傍に取り付けられるセンサとスイングアーム内の制御部との間を接続する配線が長くなり、センサ信号にノイズが乗りやすくなったり、配線の振動および防水対策等が必要となる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、バッテリ、モータ、制御部等を内装したスイングアームを有する電動二輪車に好適なスロットル開度検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、電動二輪車(1)の操向ハンドル(8)に取り付けられて乗員が操作するスロットルグリップ(80)の開度を検知するスロットル開度検知装置において、前記電動二輪車(1)の後輪(WR)を軸支すると共に車体に揺動自在に取り付けられるスイングアーム(30)の内部に、バッテリ(56)、後輪(WR)を駆動する電動モータ(M)および該電動モータ(M)を制御する制御装置としての基板(50)が内装されており、前記スロットルグリップ(80)と前記スロットル開度センサ(60)との間が物理的な伝達手段(62,85,86)で連結されることにより、前記スロットルグリップ(80)の回動確度を検知できるように構成されており、前記スロットル開度センサ(60)が、前記基板(50)に取り付けられている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記基板(50)は、車幅方向に平面部を指向して配置されており、前記スロットル開度センサ(60)は、センサ軸(65)の回動角度を検知する構成を有すると共に、前記センサ軸(65)が車幅方向に指向するように前記基板(50)の車幅方向外側の面に取り付けられており、前記伝達手段(62,85,86)は、前記センサ軸(65)に固定されたプーリ(61)に係合されるインナワイヤ(62a,85a,86a)を有するスロットルケーブルであり、前記プーリ(61)は、スロットル開度センサ(60)の車幅方向外側に配設されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記スイングアーム(30)は、前記後輪(WR)を単一のアーム部(39)で軸支する片持ち式であり、前記基板(50)は、車幅方向両側のうちの前記アーム部(39)側の端部に配設されている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記基板(50)は、発熱量の小さい制御素子が実装される制御基板(50a)と、発熱量の大きい発熱素子が実装される発熱素子基板(50b)とを含み、前記制御基板(50a)の車体後方側に前記発熱素子基板(50b)が配設され、前記スロットル開度センサ(60)は、前記制御基板(50a)に取り付けられている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記スイングアーム(30)の車幅方向外側の一面には、少なくとも前記基板(50)を覆うスイングアームカバー(58)が取り付けられており、前記スイングアームカバー(58)に設けられた貫通孔に、前記伝達手段(62)を支持する支持部材(63)が取り付けられている点に第5の特徴がある。
【0012】
さらに、前記制御基板(50a)は、バッテリ(56)の車幅方向側端部で、前記スイングアーム(30)の揺動軸(19)の貫通孔(19a)に近接配置されている点に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0013】
第1の特徴によれば、電動二輪車の後輪を軸支すると共に車体に揺動自在に取り付けられるスイングアームの内部に、バッテリ、後輪を駆動する電動モータおよび該電動モータを制御する制御装置としての基板が内装されており、スロットルグリップとスロットル開度センサとの間が物理的な伝達手段で連結されることにより、スロットルグリップの回動確度を検知できるように構成されており、スロットル開度センサがモータ制御用の基板に取り付けられているので、センサ自身をケースで保護したり、防水を考える必要がなくなるばかりか、センサから制御基板までの配線が短くなり、ノイズタフネスが向上する。スロットルグリップ近傍にスロットル開度センサが配置されないため、スロットルまわりをすっきりとして外観性を高めることもできる。
【0014】
第2の特徴によれば、基板は、車幅方向に平面部を指向して配置されており、スロットル開度センサは、センサ軸の回動角度を検知する構成を有すると共に、センサ軸が車幅方向に指向するように基板の車幅方向外側の面に取り付けられており、伝達手段は、センサ軸に固定されたプーリに係合されるインナワイヤを有するスロットルケーブルであり、プーリは、スロットル開度センサの車幅方向外側に配設されているので、インナワイヤが係合するプーリが車幅方向外側に配設されることとなり、ワイヤの着脱や遊び調整等が容易となる。また、センサ部がプーリより車幅方向内側に配設されることとなり、センサ部が外乱等の影響を受けにくくなる。
【0015】
第3の特徴によれば、スイングアームは後輪を単一のアーム部で軸支する片持ち式であり、基板は、車幅方向両側のうちのアーム部側の端部に配設されているので、基板およびスロットル開度センサがスイングアームのアーム部側に集中配置され、整備性を高めることができる。
【0016】
第4の特徴によれば、基板は、発熱量の小さい制御素子が実装される制御基板と、発熱量の大きい発熱素子が実装される発熱素子基板とを含み、制御基板の車体後方側に発熱素子基板が配設され、スロットル開度センサは制御基板に取り付けられているので、発熱量の小さい制御基板にスロットル開度センサを取り付けることで発熱量の小さい電子部品を集中配置できると共に、スロットル開度センサが発熱素子が生じる熱の影響を受けにくくなる。
【0017】
第5の特徴によれば、スイングアームの車幅方向外側の一面には、少なくとも基板を覆うスイングアームカバーが取り付けられており、スイングアームカバーに設けられた貫通孔に、伝達手段を支持する支持部材が取り付けられているので、スイングアームカバーによって伝達手段が支持されるので、スイングアームが車体フレームに対して揺動しても、スロットルケーブルに生じるたわみ等がプーリにそのまま伝達されることを防ぐことができる。また、支持部材をゴム等で形成することでスイングアーム内への水分等の浸入を防止することができる。
【0018】
第6の特徴によれば、制御基板は、バッテリの車幅方向側端部でスイングアームの揺動軸の貫通孔に近接配置されているので、スロットル開度センサがスイングアームの揺動軸に近接配置されることとなり、スロットル開度センサに連結されるスロットルケーブルがスイングアームの揺動動作の影響を受けにくくなる。また、スロットル開度センサがスイングアームの前端寄りに配設されることで、スロットルグリップと接続するためのスロットルケーブルの長さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動二輪車の側面図である。
【図2】スイングアームの拡大側面図である。
【図3】スイングアームの上面図である。
【図4】スイングアームの斜視図である。
【図5】ポッティング処理後の状態を示すスイングアームの上面図である。
【図6】電動二輪車に適用される電気系統の全体構成を示すブロック図である。
【図7】電動二輪車に適用される電気系統の充電器部分の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態の変形例に係るスイングアームの側面図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例に係るスイングアームの上面図である。
【図10】スロットル開度センサの正面図である。
【図11】スロットル開度センサの側面図である。
【図12】スロットルグリップとスロットル開度センサとを連結するスロットルケーブルの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動二輪車1の側面図である。電動二輪車1は、低床フロア16を有するスクータ型の鞍乗型車両であり、スイングアーム(ユニットスイング)30に収納された電動モータMによって後輪WRを駆動する。車体フレーム2の前部には、ステムシャフト(不図示)を回転自在に軸支するヘッドパイプ3が結合されている。ステムシャフトの上部には、ハンドルカバー11で覆われる操向ハンドル8が結合されており、一方の下部には、車軸7によって前輪WFを回動自在に軸支する左右一対のフロントフォーク6が結合されている。
【0021】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ3の後部から下方に延びるメインパイプ4と、該メインパイプ4の後端部に連結されて車体後部上方へ延びるリヤフレーム5とを備える。低床フロア16の下部に位置するメインパイプ4には、低床フロア16を支持するフロアフレーム15が取り付けられている。また、メインパイプ4とリヤフレーム5との結合部には、左右一対のピボットプレート17が取り付けられている。
【0022】
スイングアーム30は、車幅方向左側のみにアーム部を有する片持ち式であり、ピボットプレート17に取り付けられたリンク18を貫通する揺動軸19を介して、車体フレーム2に揺動自在に軸支されている。スイングアーム30は、アルミ等の金属からなる一部中空構造体であり、車軸32の近傍に電動モータMが収納されると共に、電動モータMの車体前方には、制御装置としての基板50が配設されている。電動モータMに電力を供給するバッテリ56(図3参照)は、基板50の車幅方向右側に配設されている。
【0023】
後輪WRは、車軸32によってスイングアーム30に回転自在に軸支されており、スイングアーム30の後端部は、リヤクッション26を介してリヤフレーム5に吊り下げられている。また、シート20の下部には、荷物入れスペースとなる収納ボックス21が、左右一対のリヤフレーム5に挟まれるように配設されている。
【0024】
車体フレーム2のメインパイプ4は、車体前方側のフロントカウル13および車体後方側のレッグシールド12で覆われている。ハンドルカバー11の上部には、メータ装置9が配設されており、メータ装置9の車体前方側には前照灯10が取り付けられている。フロントフォーク6の上部には、前輪WFを覆うフロントフェンダ14が固定されている。
【0025】
リヤフレーム5の車幅方向外側はシートカウル23で覆われており、シートカウル23の後端部には尾灯装置24が取り付けられている。尾灯装置24の上方には、リヤフレーム5に結合されたリヤキャリア22が突出しており、尾灯装置24の下方には、後輪WRの後方上方を覆うリヤフェンダ25が設けられている。
【0026】
図2は、スイングアーム30の拡大側面図である。また、図3はスイングアーム30の上面図であり、図4は、スイングアーム30の分解斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。前記したように、スイングアーム30は、アルミ等の金属からなる一部中空構造体であり、後輪WRを車幅方向左側のアーム部39で支持する片持ち式とされる。スイングアーム30の車体前方側下部には、揺動軸19(図1参照)の貫通孔19aが形成された左右一対のピボットフランジ36が設けられている。
【0027】
ピボットフランジ36の車体上方側には、複数のバッテリセル56が挿入される収納空間35が形成されており、この収納空間35の外殻部を形成する幅広ケース部38とアーム部39とは、湾曲部40を介して連続的に形成されている。収納空間35およびアーム部39の車幅方向左側には、基板50および電動モータMを一体的に覆う薄板状のスイングアームカバー57が取り付けられている。
【0028】
アーム部39の後端部には、電動モータMの回転を減速する減速機が収納された減速機ケース33,41が取り付けられている。車軸32は、減速機ケース41から車幅方向右側に向けて突出しており、この車軸32の端部に、後輪WRのホイール34がナット32aによって固定されている。後輪WRにはチューブレスタイヤが使用され、ホイール34にはエアバルブ42が設けられている。また、減速機ケース33には、リヤクッション26(図1参照)を取り付けるための貫通孔26aが形成された取付フランジ37が設けられている。
【0029】
本実施形態に係るバッテリ56は、複数のバッテリセルを接続することで所定の高電圧を得るようにしたモジュール構造を有する。板状のバッテリセル56は、その平面部を車体前後方向に指向させて積層された状態で、幅広ケース部38に形成された略直方体形状の収納空間35に収められる。これにより、重量物としてのバッテリ56がスイングアーム30の揺動軸19に近接配置されることとなり、スイングアーム30の揺動時の慣性モーメントを低減してスムーズな揺動動作が可能となる。また、各バッテリセルは、軟質のラミネートシートで1セル毎にパッキングされたラミネート型とされる。このラミネート型バッテリによれば、高いエネルギ密度や放熱性能の向上が期待できるほか、スイングアーム30への取付作業やバッテリの交換作業が容易になる。
【0030】
本実施形態に係る制御装置としての基板50は、バッテリ56の車幅方向左側に近接配設されている。基板50は、制御基板50aと発熱素子基板50bとアルミ基板50cとからなり、それぞれの平面部が車幅方向に指向するように配置されている。制御基板50aは、バッテリ56の車幅方向左側に近接配置されており、発熱素子基板50bは、制御基板50aの車体後方側に連結されている。アルミ基板50cは、バッテリ56の車幅方向左側に近接配置されている。
【0031】
バッテリ56とアルミ基板50cとの間には、所定の厚みを有するスポンジラバー501が配設されている。スポンジラバー501には、各バッテリセルの図示左端部に設けられた板状端子を差し込むための複数のスリットが形成されている。板状端子501を各スリットに挿入することで、板状端子の位置が規定されることとなる。また、スポンジラバー500によれば、ポッティング剤59の使用量を低減して、スイングアーム30の軽量化を図ることができる。アルミ基板50cは、このスポンジラバー500に近接配置されている。
【0032】
制御基板50aには、主に信号素子や半導体(FET)等の熱容量が小さい素子が実装されている。これに対し、発熱素子基板50bには、サーミスタ51、充電器用の入出力フィルタ群52、充電器力率改善用コンデンサ(PFC回路)53、充電器DC変換用コンデンサ(AC−DCトランス)54、各種トランス群(DC−DCトランス等)55等の発熱量が大きな素子、すなわち、発熱素子が実装されている。そして、アルミ基板50cには、発熱基板50bに実装される発熱素子に比して発熱量の小さな半導体素子等が配設されている。このように、発熱量の大きい発熱素子のみを集中配置した発熱素子基板50bを設けることで、発熱素子の発熱が他の素子へ与える熱負荷を低減することが可能となる。また、発熱素子の配設位置と他の制御素子との配設位置を分けたことにより、ピボットフランジ39および貫通孔19a等のレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0033】
また、制御基板50aの車体後方側に発熱素子基板50bを配置することにより、車体進行方向の上流側に位置する制御基板50aに発熱素子の熱影響が及ぶことを防ぐことができる。さらに、バッテリ56の車幅方向外側に制御基板50aが配置されることで、車幅方向の厚みを小さくできる。そして、発熱基板50bは、車体側面視で後輪WRとオーバーラップする位置に配設されているので、バッテリ56と電動モータMとの間に形成されるスペースを有効活用して発熱素子を配設することができ、スイングアーム長が長くなりすぎることを防止できる。
【0034】
また、図4に示すように、バッテリ56は、車体前後方向に所定枚数が積層されることにより、その長手方向が車幅方向に指向する略直方体形状をなして、幅広ケース部38の収納空間35に収納される。収納空間35の内面43には、板状の各バッテリセルをそれぞれ所定位置に収めるためのガイド溝44が形成されている。
【0035】
幅広ケース部38には、塞栓45を嵌合させる貫通孔38aが形成されている。一方、バッテリ56と基板50とを車体前方で連結する連結板46には、塞栓45が嵌合する貫通孔47が形成されている。この塞栓45および貫通孔38a,47は、スイングアーム30の組立時に行われる「樹脂ポッティング処理」において使用される。このポッティング処理は、バッテリ56および基板50をスイングアーム30に対して物理的に固定すると共に、基板50の絶縁および防振を図り、さらに各部の放熱性を高めるものである。
【0036】
ポッティング処理は、幅広ケース部38にバッテリ56および基板50を挿入し、貫通孔38a,47に塞栓47を嵌合することによって位置決めを行った後、幅広ケース38の開口部を上方に向けて、時間の経過により硬化する液状樹脂によるポッティング剤59をバッテリ56の周囲に流し込むことで行われる。ポッティング剤59は、図5に示すように、制御基板50aおよびアルミ基板50cを覆うと共に、発熱基板50bに実装されたコンデンサ53や各種トランス群55等の実装面側の一部を覆うように注入される。ポッティング剤59は、バッテリ56等の放熱性を高める機能も有する。
【0037】
そして、ポッティング剤59が硬化した後に塞栓45を除去すると、この塞栓45のあった位置に幅広ケース部38の内外を連通する連通孔が形成される。この連通孔によれば、バッテリ56からガスが排出されても、このガスがスムーズに外部へ排出されることとなり、スイングアーム30内の圧力上昇を防ぐことができる。
【0038】
図6および図7は、電動二輪車1に適用される電気系統の構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。図7は充電器のみの構成回路を示し、図6はそれ以外の全体構成を示している。図6,7では、制御基板50aに実装されている素子を「破線」で、アルミ基板50cに実装されている素子を「一点鎖線」で、発熱素子基板50bに実装されている素子を「実線」でそれぞれ示している。
【0039】
制御基板aには、制御信号用の小電流が流れる素子が実装される。これらの素子はほとんど発熱せず、制御基板aはガラスエポキシ基板によって形成されている。また、アルミ基板50cには、主に、大電流が流れると共に自己放熱ができない素子が実装される。これらの電子部品は、例えば、半導体素子(FET、ダイオード)、抵抗、フィルムコンデンサ等であり、熱伝導性の高いアルミ基板50cに実装されることにより放熱性が高められる。さらに、発熱素子基板50bには、主に、大電流が流れると共に自己放熱ができる大型の電子部品が実装される。これらの電子部品は、例えば、インダクタ、トランス、電解コンデンサ等であり、発熱素子基板50bをバッテリ熱の影響を受けにくい位置に配設することで、発熱性の向上が図られている。
【0040】
なお、図6,7のブロック図において、発熱素子基板50cに実装されるのは、充電器200の入力フィルタ209および出力フィルタ201(前記入出力フィルタ群52に相当)、PFC回路207(前記充電器力率改善用コンデンサ53に相当)、AC−DCトランス204(前記充電器DC変換用コンデンサ54に相当)、DC−DC部106のDC−DCトランス108(各種トランス群55に相当)および出力フィルタ110となる。
【0041】
図6を参照して、リチウム・イオンのバッテリ56は、コンタクタ104を介してインバータ123の入力側に電気的に接続され、インバータ123の出力側は、三相交流ラインによって電動モータMに接続されている。電磁力で動作する機械的接点によりオン・オフ制御されるコンタクタ104には、供給電流の急な立ち上がりを防ぐプリチャージリレー105が並列接続されている。
【0042】
BMU(バッテリ・マネージメント・ユニット)100には、バッテリ56の電圧や温度等の監視用回路(ASIC)101、バッテリセルの容量バラツキを補正するためのセルバランス放電部102およびこれらを制御するコントローラ103が含まれる。
【0043】
BMU100内のコントローラ103と、インバータ123を制御する制御装置としてのコントローラ122との間には、常時系統116、制御系統117、メインスイッチ系統118、CAN通信119の各ラインが配設されている。また、BMU100のコントローラ103からは過充電のアラート信号120が発信され、インバータ123のコントローラ122からはコンタクタ制御信号121が発信される。
【0044】
インバータ123のコントローラ122には、電動モータMの回転角度を検知するアングルセンサ124、乗員のスロットル操作量を検知するスロットルセンサ125、シート20に着座しているか否かを検知するシートSW(スイッチ)126、電動車両1のサイドスタンド(不図示)が格納されているか否かを検知するサイドスタンドSW127、電動車両の傾斜角(バンク角)を検知するバンクアングルセンサ129からのセンサ信号が入力される。警報装置としてのブザー128は、バッテリ56の過放電状態等が検知された際にコントローラ122からの作動信号に応じて作動する。
【0045】
常時系統116は、バッテリ56から供給される大電流を制御用の電流に変換するDCDC部106に接続されている。DCDC部106には、1次側駆動部107、DC−DCトランス108、出力整流回路109、出力フィルタ110、前記1次側駆動部107にPWM信号を供給する1次側駆動IC113、前記出力整流回路109にPWM信号を供給する2次側駆動IC114が含まれる。1次側駆動IC113には、コントローラ122から起動信号115が供給される。また、常時系統116には、盗難防止アラームユニット133およびメインSW136の一端側が接続される。
【0046】
制御系統117は、インバータ123のコントローラ122に接続されている。制御系統117には、盗難防止アラームユニット133の作動表示灯としてのメータインジケータ132の一端が接続される。また、メータインジケータ133には車速を検知するスピードセンサが接続されており、メータインジケータ133は車速が所定値を超えた際に速度警告灯として機能するように構成されている。
【0047】
メインSW系統118には、ウインカ装置等の灯火器130、ヘッドライト(H/L)10、バッテリ冷却用ファン等の一般電装131が接続されている。メインSW系統118の端部は、メインSW136がオフにされても所定条件下でヘッドライト10等の作動を可能とするオートパワーオフリレー135に接続されている。
【0048】
図7を参照して、充電器200には、バッテリ56に接続される直流電流の入出力ライン(A,B)と、商用交流電源等に接続されるACプラグ215とが接続される。充電器209には、入力フィルタ209、ブリッジダイオード208、力率改善回路としてのPFC回路207、1次側駆動部206、AC−DCトランス204、出力整流回路203、出力フィルタ201が含まれる。1次側駆動部206とAC−DCトランス204との間に配設される過電流検出回路212の信号は、PFC−PWM駆動IC213に入力され、一方、出力フィルタ201に接続された電圧検出回路202の信号は、フォトカプラ205を介してPFC−PWM駆動IC213に入力される。PFC回路207および1次側駆動部206は、PFC−PWM駆動IC213から出力されるPWM信号210,214によってそれぞれ駆動される。PFC−PWM駆動IC213には、インバータ123のコントローラ122からの起動信号214(C)が入力される。
【0049】
図8は、本発明の一実施形態の変形例に係るスイングアーム30の側面図である。図9は、同上面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この変形例では、発熱基板50bの車幅方向内側の面にも発熱素子90,91を設ける一方、この発熱素子90,91が、湾曲部40の内部空間に発熱素子が収まるように構成されている。この構成によれば、アーム部39と幅広ケース部38との結合強度を確保するために必要な湾曲部40の内部スペースを有効活用して、発熱素子を配設することができる。
【0050】
さらに、本変形例では、基板50を形成する制御基板50aおよび発熱素子基板50bのうち、車体前方側に位置する制御基板50aの車幅方向左側、すなわち、車幅方向外側の面に、乗員のスロットル操作を検知するスロットル開度センサ60が取り付けられている点に特徴がある。スロットル開度センサ60は、図6に示したスロットルセンサ125に相当するものである。
【0051】
スロットル開度センサ60は、スロットルケーブル62のインナワイヤ62aに連結されたプーリ61の回転角度によって乗員のスロットル操作量を検知するロータリ式センサであり、そのセンサ軸65(図10参照)が車幅方向に指向するように制御基板50aに取り付けられている。
【0052】
スロットルケーブル62のインナワイヤ62aの他端部は、操向ハンドル8に回動自在に取り付けられたスロットルグリップ(図12参照)に連結されており、これにより、プーリ61がスロットルグリップの回動動作に応じて回動される。スロットルグリップからスイングアーム30の前端までの長さを有するスロットルケーブル62には、スイングアーム30の揺動動作に応じて曲がりや振動等が生じるものの、元々、操向ハンドルの回動動作に対応できる構造を有しているため、スロットル操作に影響を与えることはない。
【0053】
上記したように、スロットル開度センサ60をスイングアーム内の制御基板50aに取り付ける構成によれば、センサ類を基板に集中的に配置できると共に、スロットルグリップ部分等への固定部品を廃止することができる。また、スロットルグリップ近傍にスロットル開度センサが配置されないため、スロットルまわりにすっきりとした外観性を与えることができる。また、スロットル開度センサと制御部とを長い配線で接続する必要がなく、構造を簡略化することができる。
【0054】
また、スイングアーム30の車幅方向左側に取り付けられるスイングアームカバー58は、制御基板50aに取り付けられたスロットル開度センサ60も覆っている。そして、スロットルケーブル62は、スイングアームカバー58に形成された貫通孔に係合するグロメット63を通って車体前方に導かれる。支持部材としてのグロメット63は、スロットルケーブル62およびスイングアームカバー58の密閉を保つためにゴム等で形成され、スイングアーム30内への水分等の浸入を防ぐことができる。
【0055】
また、スロットル開度センサ60がスイングアーム30の揺動軸19に近接配置されることとなり、スロットル開度センサ60に連結されるケーブルがスイングアーム30の揺動動作の影響を受けにくくなる。また、スロットル開度センサ60がスイングアーム30の前端寄りに配設されることで、操向ハンドル8のスロットルグリップ(図8参照)と接続するためのケーブルの長さを低減することができる。
【0056】
図10は、スロットル開度センサ60の正面図である。また、図11は同側面図であり、図12は、スロットルグリップ80とスロットル開度センサ60とを連結するスロットルケーブルの構成を示す斜視図である。なお、図8,9では、スロットル開度センサ60のプーリ61を1本のワイヤで引く片引き方式を示したが、図10ないし12では、2本のスロットルケーブル85,86によってプーリ61を回動させる両引き方式を適用している。
【0057】
スロットル開度センサ60は、本体部64に形成された貫通孔66を貫通する取付ボルト71,72を用いて、制御基板50aの車幅方向左側の面に取り付けられている。本体部64には、センサ軸65が回動可能に軸支されており、このセンサ軸65にプーリ61が固定されている。スロットルグリップ80とスロットル開度センサ60とを連結する伝達手段には、可撓性のアウターチューブにインナワイヤ85a,86aを挿通してなる2本のスロットルケーブル85,86が適用されている。
【0058】
インナワイヤ85a,86aの両端部には、それぞれタイコ87,68が取り付けられている。スロットルグリップ80には、グリップ側プーリ81が固定されており、このグリップ側プーリ81にタイコ87を係合させることでスロットルグリップ80の回動操作がワイヤに伝達されることとなる。グリップ側プーリ81は、ハンドル固定部材82,83に収納されると共に固定ネジ84によってハンドルバー8に対して固定される。この構成によれば、ハンドルグリップの近傍にスロットル開度センサが存在しないため、スロットルグリップまわりにすっきりとした外観を与えることができる。
【0059】
インナワイヤ85a,86aの他端部に取り付けられたタイコ68は、スロットル開度センサ60のプーリ61にそれぞれ係合される。また、スロットル開度センサ60の本体部64には、2点鎖線で示すように2本のスロットルケーブルを所定方向Cに案内するための案内板69が取り付けられている。
【0060】
プーリ61は、戻しスプリング70によって常にスロットルグリップ80を閉じる方向(スロットル開度がゼロとなる方向)に付勢されている。また、プーリ61は、車幅方向左側の端部に配設されているため、整備時のワイヤの着脱や遊び調整が容易である。さらに、プーリ61が車幅方向左側の端部に配設され、センサ信号の出力コネクタ67aが設けられたセンサ部67がその内側に配設されているため、センサ部67が外乱等の影響を受けにくくなる。また、スロットル開度センサ60が制御基板50aに直接取り付けられているため、両者間の配線が短縮され、レイアウトの自由度や耐振動性を高めることが可能となる。
【0061】
なお、電動二輪車、スイングアーム、基板、バッテリ、スロットル開度センサの形状や構造、基板の配設位置や支持構造、基板に実装される制御素子や発熱素子の種類や形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、スイングアームのアーム部を車幅方向右側の片持ち式とし、このアーム部側に制御基板および発熱素子基板を配設してもよい。本発明に係る基板やスロットル開度センサ等は、電動二輪車に限られず、鞍乗型三輪車等の各種車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…電動二輪車、2…車体フレーム、8…操向ハンドル、19…揺動軸、30…スイングアーム、32…車軸、35…収納空間、38…幅広ケース部、39…アーム部、40…湾曲部、50…基板(制御装置)、50a…制御基板、50b…発熱素子基板、50c…アルミ基板、56…バッテリ、57,58…スイングアームカバー、60…スロットル開度センサ(スロットル開度検知装置)、61…プーリ、61…センサ軸、80…スロットルグリップ、62,85,86…スロットルケーブル(伝達手段)、62a,85a,86a…インナワイヤ、63…グロメット(支持部材)、M…電動モータ、WR…後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車(1)の操向ハンドル(8)に取り付けられて乗員が操作するスロットルグリップ(80)の開度をスロットル開度センサ(60)によって検知するスロットル開度検知装置において、
前記電動二輪車(1)の後輪(WR)を軸支すると共に車体に揺動自在に取り付けられるスイングアーム(30)の内部に、バッテリ(56)、後輪(WR)を駆動する電動モータ(M)および該電動モータ(M)を制御する制御装置としての基板(50)が内装されており、
前記スロットルグリップ(80)と前記スロットル開度センサ(60)との間が物理的な伝達手段(62,85,86)で連結されることにより、前記スロットルグリップ(80)の回動確度を検知できるように構成されており、
前記スロットル開度センサ(60)が、前記基板(50)に取り付けられていることを特徴とする電動二輪車のスロットル開度検知装置。
【請求項2】
前記基板(50)は、車幅方向に平面部を指向して配置されており、
前記スロットル開度センサ(60)は、センサ軸(65)の回動角度を検知する構成を有すると共に、前記センサ軸(65)が車幅方向に指向するように前記基板(50)の車幅方向外側の面に取り付けられており、
前記伝達手段(62,85,86)は、前記センサ軸(65)に固定されたプーリ(61)に係合されるインナワイヤ(62a,85a,86a)を有するスロットルケーブルであり、
前記プーリ(61)は、スロットル開度センサ(60)の車幅方向外側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電動二輪車のスロットル開度検知装置。
【請求項3】
前記スイングアーム(30)は、前記後輪(WR)を単一のアーム部(39)で軸支する片持ち式であり、
前記基板(50)は、車幅方向両側のうちの前記アーム部(39)側の端部に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動二輪車のスロットル開度検知装置。
【請求項4】
前記基板(50)は、発熱量の小さい制御素子が実装される制御基板(50a)と、発熱量の大きい発熱素子が実装される発熱素子基板(50b)とを含み、
前記制御基板(50a)の車体後方側に前記発熱素子基板(50b)が配設され、
前記スロットル開度センサ(60)は、前記制御基板(50a)に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動二輪車のスロットル開度検知装置。
【請求項5】
前記スイングアーム(30)の車幅方向外側の一面には、少なくとも前記基板(50)を覆うスイングアームカバー(58)が取り付けられており、
前記スイングアームカバー(58)に設けられた貫通孔に、前記伝達手段(62)を支持する支持部材(63)が取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電動二輪車のスロットル開度検知装置。
【請求項6】
前記制御基板(50a)は、バッテリ(56)の車幅方向側端部で、前記スイングアーム(30)の揺動軸(19)の貫通孔(19a)に近接配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電動二輪車のスロットル開度検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−51448(P2012−51448A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195036(P2010−195036)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】