説明

電動切削研磨工具

【課題】電動モータ等の小規模な駆動源であってもルータ本体の切削刃に横方向の振動を与えることによって切削力が増強し、且つルータ先端を広角域に照明することで被切削物を効率良く切削加工及び研磨することができる電動切削研磨工具を提供する。
【解決手段】切削刃5の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ2、ルータ先端に配した発光ダイオード7を備えたルータ本体1と、該ルータ本体1を挿着し内部スイッチ機構9に接続することで発光ダイオード7を通電点灯し、且つ電動モータ2を通電作動して切削刃5を駆動するための電源10を内蔵した電源用ハウジング11とを備えた電動切削研磨工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板切削(ルータ)や面取り等に使用される携帯用の電動切削研磨工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、旋盤加工におけるバイトの切削方向に超音波振動を印加して切削効率を向上させることが周知の技術として知られている。例えば特許文献1に開示されているように、被加工物に対し切削工具による切り込み量を与えつつ、被加工物と切削工具とを相対的に移動及び軸回転することによって、被加工物の加工面に沿って、被加工物と切削工具との相対的な切削方向と交差する方向に微揺動の超音波振動を付与させる技術が存在する。
【0003】
この場合、超音波振動を印加する手段としては、圧電素子を用いた圧電効果を利用したものや磁気歪効果を利用したもの等が挙げられる。これらの超音波振動子やアクチュエータ等を切削工具に組み付け超音波振動を切削刃に印加していた。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加して切削効率を向上させる切削加工方法において、超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射して超音波振動を切削刃に印加する技術が存在する。
【特許文献1】特開2006−159331号公報
【特許文献2】特開2008−044086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来におけるこのような超音波振動を利用したものでは、圧電素子、超音波振動子、アクチュエータ等を切削工具に組み付けることから、非常に複雑で且つ高価な切削工具となる。しかも超音波振動子、アクチュエータ等のような比較的大きな駆動源を切削工具に組み付けるため、切削工具自体が大型化してしまうので、狭所での使用が非常に困難なものとなるという問題点を有していた。
【0006】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、電動モータ等の小規模な駆動源であってもルータ本体の切削刃に横方向の振動を与えることによって切削力が増強され、これにより被切削物を効率良く切削加工することができる電動切削研磨工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を挿着し内部スイッチ機構に接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成る電動切削研磨工具を特徴とする。
【0008】
また、切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を、外部スイッチ機構を備えた脱着可能な電気コードで接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成る電動切削研磨工具を特徴とする。
【0009】
更に、ルータ本体は、電動モータの電磁石のN極・S極に切れ目を形成させて磁気的アンバランス若しくはアンバランスウエイト状態にしておくことにより切削刃の回転軸に横振動を付与する電動切削研磨工具を特徴とする。
【0010】
また、電源としては、充電可能なニッケル水素電池を使用した電動切削研磨工具を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動モータ等の小規模な駆動源であってもルータ本体の切削刃に横方向の振動を与えることによって切削力が増強され、これにより被切削物を効率良く切削加工及び研磨することができる。
【0012】
すなわち、本発明は、切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を挿着し内部スイッチ機構に接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成るので、電動モータ等の小規模な駆動源であっても駆動源の回転による振動が切削刃に横方向の振動を付与することから、当該切削刃を被切削物の面取り面に接触させた際に、ノコギリのような往復動作により効率良く切削及び研磨が可能となる。
【0013】
また、狭所へ潜り込んでの作業となる場合には、ルータ本体の長手方向の長さを極力短くすることが求められていたが、本発明による電動切削研磨工具は、ハンドタイプで持ち易く、重さも50〜60g程度に作成することができることから、狭所へ潜り込んでの作業が容易となる。
【0014】
しかも、ルータ先端に配された発光ダイオードにより、切削刃先端側の広角域が照明されるため、暗所での切削作業が容易に行える。
【0015】
更に、ルータ本体を電源用ハウジングに挿着することで内部スイッチ機構に接続され、これにより発光ダイオードの通電点灯及び電動モータの通電作動が可能となることから、ルータ本体の切削時の把持部となる外周部にスイッチ機構を設ける必要が無くなり、作業の邪魔になることがない。
【0016】
或いは、切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を、外部スイッチ機構を備えた脱着可能な電気コードで接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成るので、電源用ハウジングとルータ本体とを電気コードで接続し、電源用ハウジング側をポケット等に入れておくことができる。しかも、このように電源用ハウジングを別体とすることでルータ本体側に放電を生じさせることなく対応できる。
【0017】
ルータ本体は、電動モータの電磁石のN極・S極に切れ目を形成させて磁気的アンバランス若しくはアンバランスウエイト状態にしておくことにより切削刃の回転軸に横振動を付与するので、従来のような圧電素子、超音波振動子、アクチュエータ等を切削工具に組み付ける必要が無く、非常に簡単且つ安価な振動モータを備えた切削研磨工具を提供することができる。しかも、アルミニウム、銅、真鍮、鋼、ステンレス等のような大抵の金属の面取り等の切削及び研磨に利用可能である。
【0018】
電源としては、充電可能なニッケル水素電池を使用したので、長寿命で小型軽量な電源として使用することができる。
【0019】
また、ルータ本体には、必要に応じて電動モータの横振動を規制するための回転振動規制ボタンを備え、回転方向への振動幅を調整しながら切削及び研磨をすることができる。研磨への切り換え手段としても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明に係る電動切削研磨工具Pは、図1に示すように、切削刃5を備えたルータ本体1と、電源10を内蔵した電源用ハウジング11とから構成されている。尚、ルータ本体1と電源用ハウジング11との全体の重さは50〜60g程度となるように形成してある。
【0022】
ルータ本体1は、長さ6〜10cm程度の筒体内部に電動モータ2が内装されており、該電動モータ2の出力軸2aには長尺なチャック本体3が嵌着されている。このチャック本体3の先端側は若干大径のルータ頭部1aから外方へ突出され、ルータ頭部1a内側でチャック本体3の中間部分が複数の軸受4によって支持されている。そして、チャック本体3の先端には尖端に刃を形成した切削刃5が挿着され、外周側から固定ナット6を締め付けることで当該切削刃5が固定されている。
【0023】
電動モータ2は、図3に示すように、電磁石のN極・S極に切れ目を形成させて磁気的アンバランス若しくはアンバランスウエイト状態にしておくことにより、切削刃5の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与するようにしてある。
【0024】
また、ルータ頭部1a側における切削刃5を保持するチャック本体3の近傍には、広角照射可能な発光ダイオード7が、例えば切削刃5に対して対称位置となる2箇所に、設けられている。
【0025】
ルータ本体1内の電動モータ2後方には、2本の発光ダイオード7側配線と2本の電動モータ2側配線のうち、発光ダイオード7側配線と電動モータ2側配線の各1本ずつがプラス端子8a側に接続され、発光ダイオード7側配線と電動モータ2側配線の他の各1本ずつがマイナス端子8b側に接続されている。
【0026】
電源用ハウジング11は、長さ5〜7cm程度の筒体内部に、充電可能で且つアンペアの大きなニッケル水素電池等の電源10が内装されており、その一端側は、ルータ本体1の後部が挿着される筒状の開口挿入部12となっている。この開口挿入部12の内奥側中央には、電源接続用の内部スイッチ機構9が設けられており、挿着されたルータ本体1のプラス端子8a及びマイナス端子8bが電源用ハウジング11の内部スイッチ機構9を介して電源10のプラス極及びマイナス極にそれぞれ接続されるようになっている。
【0027】
上記により、図2に示すように、ルータ本体1を電源用ハウジング11に挿着し、両端子8a,8bを内部スイッチ機構9に接続することで発光ダイオード7を通電点灯させ且つ電動モータ2を通電作動させて切削刃5を駆動させるものとしてある。
【0028】
また、ルータ本体1には、電動モータ2の横振動を規制するための回転振動規制ボタン13を備え、この回転振動規制ボタン13を手指で押し込んだときには、この先端がチャック本体3の周面を押し当てることとなり、これによって横振動を抑えながら高速回転の切削や研磨が可能となる。
【0029】
また、ルータ本体1と電源用ハウジング11とを別体に構成し、外部スイッチ機構を備えた脱着可能な電気コードで両者を接続することで、発光ダイオード7を通電点灯させ且つ電動モータ2を通電作動させて切削刃5を駆動させるように構成しても良い。
【0030】
次に、以上のように構成された最良の形態についての使用の一例を説明する。先ず、図1及び図2に示すように、ルータ本体1を電源用ハウジング11の開口挿入部12に挿着する。このとき、挿着されたルータ本体1のプラス端子8a及びマイナス端子8bが電源用ハウジング11の内部スイッチ機構9を介して電源10のプラス極及びマイナス極にそれぞれ接続される。
【0031】
而して、電動モータ2のスイッチがONの状態となり、切削刃5が振動回転し、同時に発光ダイオード7が通電して点灯する。こうして、狭所であっても或いは暗所であっても切削加工が容易に行えるものとなる。
【0032】
このとき、電動モータ2は、図3に示すように、電磁石のN極・S極に切れ目を形成させて磁気的アンバランス若しくはアンバランスウエイト状態にしてあるため、切削刃5の回転軸方向と直交する横方向へ振動が付与され、切削刃5を被切削物の面取り面に接触させた際には、ノコギリのような往復動作により被切削物は効率良く切削され、研磨される。
【0033】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良変形等は本発明に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における電動切削研磨工具の電源用ハウジングとルータ本体とを分離した状態の断面図である。
【図2】同じく電源用ハウジングにルータ本体を挿着した状態の断面図である。
【図3】電動モータの振動回転の原理を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
P 電動切削研磨工具
1 ルータ本体
1a ルータ頭部
2 電動モータ
2a 出力軸
3 チャック本体
4 軸受
5 切削刃
6 固定ナット
7 発光ダイオード
8a プラス端子
8b マイナス端子
9 内部スイッチ機構
10 電源
11 電源用ハウジング
12 開口挿入部
13 回転振動規制ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を挿着し内部スイッチ機構に接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成ることを特徴とする電動切削研磨工具。
【請求項2】
切削刃の回転軸方向と直交する横方向への振動を付与する電動モータ、ルータ先端に配された発光ダイオードを備えたルータ本体と、該ルータ本体を、外部スイッチ機構を備えた脱着可能な電気コードで接続することで発光ダイオードを通電点灯させ、且つ電動モータを通電作動させて切削刃を駆動させる電源を内蔵した電源用ハウジングとを備えて成ることを特徴とする電動切削研磨工具。
【請求項3】
ルータ本体は、電動モータの電磁石のN極・S極に切れ目を形成させて磁気的アンバランス若しくはアンバランスウエイト状態にしておくことにより切削刃の回転軸に横振動を付与することを特徴とする請求項1又は2記載の電動切削研磨工具。
【請求項4】
電源としては、充電可能なニッケル水素電池を使用したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動切削研磨工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−94782(P2010−94782A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268427(P2008−268427)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(506364019)イー・エス・タイキョウ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】