説明

電動工具

【課題】交流用の電動工具のプラグを誤って直流用のコンセントに接続した場合でも、モータが動作しないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る電動工具は、交流電力の位相制御を行なう位相制御手段10と、位相制御手段10を動作させるための電力を供給する電力供給手段4,5と、プラグが接続されたコンセントの電源が交流電源か直流電源かを判定する電源判定手段2,3とを有し、電源判定手段2,3は、直流電源と判定した場合に、電力供給手段4,5が位相制御手段10に供給する電力を遮断するように、その電力供給手段4,5に対してオフ信号を出力し、交流電源と判定した場合に、電力供給手段4,5が位相制御手段10に電力を供給するように、その電力供給手段4,5に対してオン信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コードの先端のプラグをコンセントに接続することにより得られた交流電力を位相制御により調整してモータに供給し、前記モータの回転速度制御を行なう構成の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
商用周波数の交流電源に接続されたモータの回転速度を制御する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載されたモータの回転速度制御手段は、図4に示すように、制御部、補正部、信号変換部から構成されており、モータの速度検出手段と回転速度設定手段との偏差Eが減少するようにスイッチング素子を動作させて、モータの回転速度を制御する。即ち、モータの回転速度制御手段は、スイッチング素子をオンさせるタイミングを交流電圧の位相に応じて変化させることで、モータに対する電力供給時間を調整し、モータの回転速度を制御する(位相制御)。前記モータの回転速度制御手段は交流用の電動工具の制御回路にも一般的に使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平08−154392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交流用の電動工具は電源コードを備えており、その電源コードの先端に取り付けられたプラグをコンセントに差し込んだ状態で使用する。ここで、電動工具のプラグは、AC用コンセントの形状に合わせて形成されているため、通常、直流電源等のコンセントに接続することはできない。しかし、外国の一部のエンジン付溶接機では、AC用コンセントの形状と等しい形状の直流電源用(DC用)コンセントを備えているものがある。このため、前記電動工具のプラグを誤ってDC用コンセントに接続して使用することも考えられる。
上記したモータの回転速度制御手段を備える電動工具を直流電源に接続した場合、電圧が一定であるためスイッチング素子が一旦オンするとオフしなくなり、モータには常に最大電力が供給される。このため、モータが常に全速駆動となって、モータの回転速度制御が行われなくなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、電動工具のプラグを誤って直流電源コンセントに接続した場合でも、モータが動作しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、電源コードの先端のプラグをコンセントに接続することにより得られた交流電力を位相制御により調整してモータに供給し、前記モータの回転速度制御を行なう構成の電動工具であって、交流電力の位相制御を行なう位相制御手段と、前記位相制御手段を動作させるための電力を供給する電力供給手段と、前記プラグが接続された前記コンセントの電源が交流電源か直流電源かを判定する電源判定手段とを有し、前記電源判定手段は、前記コンセントの電源が直流電源と判定した場合に、前記電力供給手段が前記位相制御手段に供給する電力を遮断するように、その電力供給手段に対してオフ信号を出力し、前記コンセントの電源が交流電源と判定した場合に、電力供給手段が前記位相制御手段に電力を供給するように、その電力供給手段に対してオン信号を出力することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、プラグが接続されたコンセントの電源が交流電源か直流電源かを判定する電源判定手段を有している。そして、電源判定手段は、コンセントの電源が直流電源と判定した場合に、電力供給手段が位相制御手段に供給する電力を遮断するように、その電力供給手段に対してオフ信号を出力する。即ち、プラグが直流電源に接続された場合には、電力供給手段が位相制御手段に電力を供給しないため、位相制御手段は動作しなくなる。このため、モータが回転することはなく、従来のように、モータが起動した状態で回転制御不能になるような不具合が生じない。
なお、電源判定手段は、コンセントの電源が交流電源と判定した場合には、電力供給手段が前記位相制御手段に電力を供給するように、その電力供給手段に対してオン信号を出力する。このため、位相制御手段が動作可能になり、通常どおりモータに供給する交流電力を調整できるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、電源判定手段は、電源の電圧波形に基づいて交流電源か直流電源かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電動工具のプラグを誤って直流電源コンセントに接続した場合でも、モータが動作しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、図1から図3に基づいて、本発明の実施形態1に係る電動工具の説明を行なう。本実施形態に係る電動工具は、交流電力を位相制御により調整してモータの回転速度制御を行なう構成の電動工具である。ここで、図1は本実施形態に係る電動工具の信号ブロック図、図2は電動工具の模式回路図である。また、図3は電動工具の動作を表すフローチャートである。
【0011】
<電動工具の基本回路構成について>
電動工具は、交流用であり、図1、図2に示すように、モータMと、モータ制御用IC10と、双方向サイリスタ(トライアック)等からなる駆動部15とを備えている。モータ制御用IC10は、回転速度設定部11からの速度設定信号n0に基づいてモータMの回転速度nが速度設定信号n0に近づくように、駆動部15を駆動させる。即ち、モータ制御用IC10は、速度設定信号n0とモータMの回転速度nとの偏差が減少するように駆動部15のトライアックに対してトリガパルスを出力し、前記トライアックをオンさせるタイミングを交流電圧の位相に応じて変化させる。これにより、モータMに電力が供給される時間が調整され、モータMの回転速度が制御される。なお、図2における符号MsはモータMの回転速度検知器である。
即ち、モータ制御用IC10、及び駆動部15が本発明の位相制御手段に相当する。
また、電動工具は、モータ制御用IC10に対する電力の供給、あるいは電力の遮断を行なうためのモータ制御用IC電源部5、モータ制御用IC電源駆動部4、制御部2、AC/DC電圧検出部3を備えている。
【0012】
<AC/DC電圧検出部3、制御部2について>
AC/DC電圧検出部3、制御部2は、図2に示すように、電動工具の電源コード(図示省略)先端のプラグPa,Pbが電源コンセントCa、Cbに差し込まれた状態で、そのコンセントCa,Cbの電源が交流電源か直流電源かを判定する部分である。AC/DC電圧検出部3は、制御部2の入力端子と電源ラインCb,Pbとを抵抗を介して接続する部材であり、制御部2の入力端子に電源の電圧波形を導けるように構成されている。
制御部2は、制御用電源6から電力の供給を受けて動作するマイコンであり、AC/DC電圧検出部3を介して入力された電圧波形から交流電源か直流電源かを判定する。即ち、電圧波形がパルス状に変化すれば交流であり、電圧波形がほぼ一定の場合には直流と判定される。
制御部2は、交流電源と判定した場合にはモータ制御用IC電源駆動部4に対してオン信号(0信号)を出力し、直流電源と判定した場合にはモータ制御用IC電源駆動部4に対してオフ信号(+V信号)を出力する。
即ち、AC/DC電圧検出部3、制御部2が本発明の電源判定手段に相当する。
【0013】
<モータ制御用IC電源部5、モータ制御用IC電源駆動部4について>
モータ制御用IC電源部5は、モータ制御用IC10に対して一定の直流電圧が加わるように構成された電源部であり、直列に接続されたコンデンサ5c、抵抗5r、及びダイオード5dとを備えている、そして、前記コンデンサ5cの端子にモータ制御用IC10の電源端子P,Nが並列接続されている。なお、モータ制御用IC10の電源端子のN側はアースEに接続されている。
モータ制御用IC電源駆動部4は、制御部2からの出力信号を受けて、モータ制御用IC電源部5をオン/オフする部分であり、モータ制御用IC電源部5のコンデンサ5cと並列に接続されたトランジスタ4tを備えている。そして、前記トランジスタ4tのベース端子(入力端子)に、制御部2からの出力信号が入力されるように構成されている。
即ち、制御部2が交流電源と判定してオン信号(0信号)を出力すると、モータ制御用IC電源駆動部4のトランジスタ4tが導通せず(オフ状態)、モータ制御用IC電源部5のコンデンサ5cの端子、及びモータ制御用IC10の電源端子には一定電圧が加わるようになる。即ち、モータ制御用IC10に対して電力の供給が継続される。
また、制御部2が直流電源と判定してオフ信号(+V信号)を出力すると、プラグのPa端子がプラス側(+)、Pb端子がマイナス側(−)に接続されている場合に、モータ制御用IC電源駆動部4のトランジスタ4tが導通する(オン状態)。これにより、モータ制御用IC電源部5のコンデンサ5cの端子間、及びモータ制御用IC10の電源端子P,N間に加わる電圧が0Vとなり、モータ制御用IC10に対して電力の供給が遮断される。
なお、プラグのPa端子がマイナス側(−)、Pb端子がプラス側(+)に接続された場合にも、モータ制御用IC10の電源端子P,Nに加わる電圧は0Vとなるため、モータ制御用IC10に対して電力の供給が遮断される。
即ち、前記モータ制御用IC電源部5、モータ制御用IC電源駆動部4が本発明の電力供給手段に相当する。
【0014】
<電動工具の動作について>
次に、図3に基づいて本実施形態に係る電動工具の動作について説明する。
電動工具の電源コードのプラグPa,Pbが電源コンセントCa,Cbに接続されると(ステップS101 YES)、AC/DC電圧検出部3、制御部2により、そのコンセントCa,Cbの電源が交流電源か、あるいは直流電源かが判定される。コンセントCa,Cbの電源が直流電源の場合には(ステップS102 NO)、制御部2がモータ制御用IC電源駆動部4に対してオフ信号(+V信号)を出力する。これにより、モータ制御用IC電源駆動部4のトランジスタ4tが導通して、モータ制御用IC10に対する電力の供給が遮断される(ステップS104)。この結果、モータ制御用IC10が動作せず、モータMは回転しない。
また、コンセントCa,Cbの電源が交流電源の場合には(ステップS102 YES)、制御部2がモータ制御用IC電源駆動部4に対してオン信号(0信号)を出力する。これにより、モータ制御用IC電源駆動部4のトランジスタ4tが導通しないため、モータ制御用IC10に対して電力の供給が継続される(ステップS103)。この結果、モータ制御用IC10及び駆動部15が動作可能となり、モータMに供給される交流電力が調整されて回転速度制御が行なわれる。
【0015】
<本実施形態に係る電動工具の長所について>
本実施形態に係る電動工具によると、プラグPa、Pbが接続されたコンセントCa,Cbの電源が交流電源か直流電源かを判定する電源判定手段(AC/DC電圧検出部3、制御部2)を有している。そして、電源判定手段は、コンセントCa,Cbの電源が直流電源と判定した場合に、電力供給手段(モータ制御用IC電源部5、モータ制御用IC電源駆動部4)がモータ制御用IC10に供給する電力を遮断するように、その電力供給手段に対してオフ信号を出力する。即ち、プラグPa、Pbが直流電源に接続された場合には、電力供給手段がモータ制御用IC10に電力を供給しないため、モータ制御用IC10は動作しなくなる。このため、モータMが回転することはなく、従来のように、モータMが起動した状態で回転制御不能になるような不具合が生じない。
なお、電源判定手段(AC/DC電圧検出部3、制御部2)は、コンセントCa,Cbの電源が交流電源と判定した場合には、電力供給手段(モータ制御用IC電源部5、モータ制御用IC電源駆動部4)がモータ制御用IC10に電力を供給するように、その電力供給手段に対してオン信号を出力する。このため、モータ制御用IC10が動作可能になり、通常どおりモータMに供給する交流電力を調整できるようになる。
【0016】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、モータ制御用IC10と制御部2、AC/DC電圧検出部3とを別々に設ける例を示したが、モータ制御用IC10に制御部2の機能を兼用させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る電動工具の信号ブロック図である。
【図2】電動工具の模式回路図である。
【図3】電動工具の動作を表すフローチャートである。
【図4】従来のモータの回転速度制御手段を使用した回路図である。
【符号の説明】
【0018】
M・・・・・・モータ
Pa,Pb・・プラグ
Ca,Cb・・コンセント
2・・・・・・制御部(電源判定手段)
3・・・・・・AC/DC電圧検出部(電源判定手段)
4・・・・・・モータ制御IC電源駆動部(電源供給手段)
5・・・・・・モータ制御IC電源部(電源供給手段)
10・・・・・モータ制御用IC(位相制御手段)
15・・・・・駆動部(位相制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源コードの先端のプラグをコンセントに接続することにより得られた交流電力を位相制御により調整してモータに供給し、前記モータの回転速度制御を行う構成の電動工具であって、
交流電力の位相制御を行う位相制御手段と、
前記位相制御手段を動作させるための電力を供給する電力供給手段と、
前記プラグが接続された前記コンセントの電源が交流電源か直流電源かを判定する電源判定手段とを有し、
前記電源判定手段は、前記コンセントの電源が直流電源と判定した場合に、前記電力供給手段が前記位相制御手段に供給する電力を遮断するように、その電力供給手段に対してオフ信号を出力し、前記コンセントの電源が交流電源と判定した場合に、電力供給手段が前記位相制御手段に電力を供給するように、その電力供給手段に対してオン信号を出力することを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載された電動工具であって、
前記電源判定手段は、電源の電圧波形に基づいて交流電源か直流電源かを判定することを特徴とする電動工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−12149(P2009−12149A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179253(P2007−179253)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】