説明

電動弁及びそれが用いられた冷凍サイクル

【課題】正流れ時には流量を高精度に制御し得、逆流れ時には可及的に圧力損失が生じないように流体を流すことのできる電動弁及びそれを用いた冷凍サイクルを提供する。
【解決手段】正流れ時には、流量制御を行なうべく、流体を主弁体24とオリフィス22との間からのみ流し、逆流れ時には、圧力損失を可及的に低減すべく、流体の全部ないし大半を前記オリフィス22aを介することなくバイパス流路70に流すように構成される。より具体的には、弁本体20における前記オリフィス22aから偏心した位置に、バイパス流路22aを正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体60が配備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置等に組み込まれて使用される電動弁に係り、特に、流体(冷媒)が正流れ時は弁体のリフト量を調整して流量を高精度に制御し得、逆流れ時には圧力損失を可及的に低減できるようにした電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、空調装置に採用されている冷凍サイクルの一例を示す。この冷凍サイクル100は、圧縮機101、流路切換器102、室外熱交換器(凝縮器)103、室内熱交換器(蒸発器)104の他、省エネ効率等を向上させるため、通常は1つでよい膨張弁を二つ備えている(ディストリビュータ等は図示省略)。すなわち、室外熱交換器103の近くに第1膨張弁105が配置され、室内熱交換器104の近くに第2膨張弁106が配置されている。膨張弁105、106としては感温式(機械式)のものが用いられている。また、圧力損失を可及的に低減するため、これらの第1及び第2膨張弁105、106に並列に第1及び第2逆止弁108、109が配置されている。
【0003】
この冷凍サイクル100においては、冷房時には、圧縮機101で圧縮された冷媒ガスは、図の実線矢印で示される如くに、例えば四方弁等からなる流路切換器102から室外熱交換器103に導入され、ここで外気と熱交換して凝縮し、この凝縮した冷媒が第1逆止弁108を通って(第1膨張弁105をバイパスして)、第2膨張弁106に流入し、ここで断熱膨張した後、交換器104に流入し、交換器104にて室内空気と熱交換して蒸発し、室内を冷房する。
【0004】
それに対し、暖房時には、圧縮機101で圧縮された冷媒ガスは、図の破線矢印で示される如くに、流路切換器102から室内熱交換器104に導入され、ここで室内空気と熱交換して凝縮し、室内を暖房した後、第2逆止弁109を通って(第2膨張弁106をバイパスして)、第1膨張弁105に流入し、ここで減圧された後、ディストリビュータを介して室外熱交換器103に導入され、ここで蒸発して圧縮機101に戻る。
【0005】
このように、冷凍サイクル100では、正流れ時(冷房時)は、冷媒を第1膨張弁105を通さずに第1逆止弁108を通じて第2膨張弁106に導き、この第2膨張弁106で流量を調整し、逆流れ時(暖房時)は、冷媒を第2膨張弁106を通さずに第2逆止弁109を通じて第1膨張弁105に導き、この第1膨張弁105で流量を調整するようにされており、逆止弁108、109を膨張弁105、106に並列に組み込むことにより、圧力損失を可及的に低減するようにしている。
【0006】
ところで、近年、上記した如くの冷凍サイクル100においては、省エネ効率等を一層向上させるべく、上記感温式(機械式)の膨張弁105、106に代えて、リフト量、すなわち、オリフィス(弁口)の実効開口面積を任意に制御可能な電子制御式電動弁を用いることが検討されている。
【0007】
以下、電子制御式電動弁の一例を図5を参照しながら説明する。図示例の電動弁10’は、下部大径部25aと上部小径部25bを有し、前記下部大径部25aの下端部に弁体24が一体に設けられた弁軸25と、前記弁体24が接離するオリフィス22aが形成された弁座22が設けられるとともに、導管16、17が接続された弁室21を有する弁本体20と、この弁本体20にその下端部が密封接合されたキャン40と、このキャン40の内周に所定の間隙αをあけて配在されたロータ30と、このロータ30を回転駆動すべく前記キャン40に外嵌されたステータ50と、前記ロータ30と前記弁体24との間に配在され、前記ロータ30の回転を利用して前記弁体24を前記オリフィス22aに接離させるねじ送り機構とを備え、前記オリフィス22aに対する弁体24のリフト量を変化させることにより冷媒の通過流量を制御するようになっている。
【0008】
前記ステータ50は、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53,53、及び樹脂モールドカバー56等で構成され、前記ロータ30やステータ50等でステッピングモータが構成され、該ステッピングモータやねじ送り機構等で前記オリフィス22aに対する前記弁体24のリフト量を調整するための昇降駆動機構が構成される。
【0009】
前記ロータ30には、支持リング36が一体的に結合されるとともに、この支持リング36に、前記弁軸25及びガイドブッシュ26の外周に配在された下方開口で筒状の弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ30、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0010】
前記ねじ送り機構は、弁本体20にその下端部26aが圧入固定されるとともに、弁軸25(の下部大径部25a)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)28と、前記弁軸ホルダ32の内周に形成されて前記固定ねじ部28に螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)38とから構成されている。
【0011】
また、前記ガイドブッシュ26の上部小径部26bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部32aの中央(に形成された通し穴)に弁軸25の上部小径部25bが挿通せしめられている。弁軸25の上部小径部25bの上端部にはプッシュナット33が圧入固定されている。
【0012】
また、前記弁軸25は、該弁軸25の上部小径部25bに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部32aと弁軸25における下部大径部25aの上端段丘面との間に縮装された圧縮コイルばねからなる閉弁ばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。弁軸ホルダ32の天井部32a上でプッシュナット33の外周には、コイルばねからなる復帰ばね35が設けられている。
【0013】
前記ガイドブッシュ26には、前記ロータ30が所定の閉弁位置まで回転下降せしめられた際、それ以上の回転下降を阻止するための回転下降ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32には前記ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
【0014】
なお、前記閉弁ばね34は、弁体24がオリフィス22aに着座する閉弁状態において所要のシール圧を得るため(漏れ防止)、及び、弁体24がオリフィス22aに衝接した際の衝撃を緩和するために配備されている。
【0015】
このような構成とされた電動弁10’にあっては、ステータコイル53,53に第1態様で通電励磁パルスを供給することにより、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が一方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、例えば弁軸ホルダ32が下方に移動して弁体24がオリフィス22aに押し付けられてオリフィス22aが閉じられる(全閉状態)。
【0016】
オリフィス22aが閉じられた時点では、上ストッパ体37は未だ下ストッパ体27に衝接しておらず、弁体24がオリフィス22aを閉じたままロータ30及び弁軸ホルダ32はさらに回転下降する。この場合、弁軸25(弁体24)は下降しないが、弁軸ホルダ32は下降するため、閉弁ばね34が所定量圧縮せしめられ、その結果、弁体34がオリフィス22に強く押し付けられるとともに、弁軸ホルダ32の回転下降により、上ストッパ体37が下ストッパ体27に衝接し、その後ステータコイル53,53に対するパルス供給が続行されても弁軸ホルダ32の回転下降は強制的に停止される。
【0017】
一方、ステータコイル53,53に第2態様で通電励磁パルスを供給すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が前記と逆方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、今度は弁軸ホルダ32が上方に移動する。この場合、弁軸ホルダ32の回転上昇開始時点(パルス供給開始時点)では、閉弁ばね34が前記のように所定量圧縮せしめられているので、閉弁ばね34が前記所定量分伸長するまでは、前記弁体24がオリフィス22aからは離れず閉弁状態(リフト量=0)のままである。そして、閉弁ばね34が前記所定量分伸長した後、弁軸ホルダ32がさらに回転上昇せしめられると、前記弁体24がオリフィス22aから離れてオリフィス22aが開かれ、冷媒がオリフィス22aを通過する。この場合、ロータ30の回転量により弁体24のリフト量、言い換えれば、オリフィス22aの実効開口面積を任意に細かく調整することができ、ロータ30の回転量は供給パルス数により制御されるため、冷媒流量を高精度に制御することができる(詳細は、下記特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−50415号公報
【特許文献2】特開2009−14056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記冷凍サイクル100に上記した如くの電動弁10’を採用した場合においても、次のような改善すべき課題がある。すなわち、前記冷凍サイクル100では、正流れ時(冷房時)は、冷媒を第1膨張弁105を通さずに第1逆止弁108を通じて第2膨張弁106に導き、この第2膨張弁106で流量を調整し、逆流れ時(暖房時)は、冷媒を第2膨張弁106を通さずに第2逆止弁109を通じて第1膨張弁105に導き、この第1膨張弁105で流量を調整するようにされている関係上、逆止弁108、109を膨張弁105、106に並列に組み込むことが不可欠であるが、逆止弁二つを冷媒回路に組み込むことは、その分、継手類などの部品の点数が増大するとともに、配管接続作業にも余計に手間と時間がかかる。
【0020】
そこで、上記特許文献2には、前記した膨張弁と逆止弁の両機能を併せ持つ電動弁、すなわち、冷媒が一方向に流されるときは、圧力損失を可及的に低減すべくリフト量(実効開口面積)を最大にし、冷媒が他方向に流されるとき、流量制御を行なうべくリフト量(実効開口面積)を所定値以下の特定範囲で細かく制御するようにしたものが提案されている。
【0021】
しかしながら、かかる提案の電動弁においては、圧力損失を低減すべく、オリフィスの口径を大きくすると、流量制御を高精度に行なえなくなってしまうという問題がある。
【0022】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、正流れ時には流量を高精度に制御し得、逆流れ時には可及的に圧力損失が生じないように流体を流すことのできる電動弁及びそれを用いた冷凍サイクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る電動弁は、基本的には、主弁体と、該主弁体により開閉されるオリフィスが設けられた弁本体と、前記オリフィスに対する前記弁体のリフト量を調整するためのロータ及びステータ等からなる昇降駆動機構とを備え、正流れ時には、流量制御を行ない、逆流れ時には、圧力損失を可及的に低減すべく、前記弁本体に前記オリフィスから偏心した位置に、前記オリフィスをバイパスする流路が形成されるとともに、該バイパス流路を正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体が配備されていることを特徴としている。
【0024】
好ましい態様では、前記逆止弁体を常時前記バイパス流路を閉じる方向に付勢するばね部材を備える。
【0025】
他の好ましい態様では、正流れ時に流体を流す正流れ用流路が前記オリフィスと同軸上に形成され、該正流れ用流路に隣接して前記逆止弁体が摺動自在に嵌挿される弁体収容部が形成される。
【0026】
より好ましい態様では、前記逆止弁体は、断面形状が非円形の中実部を有し、該中実部の外周面と前記弁体収容部の内周面との間が前記バイパス流路とされる。
【0027】
一方、本発明に係る冷凍サイクルは、圧縮機、流路切換器、室外熱交換器、及び室内熱交換器を備え、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間の、前記室外熱交換器の近くに第1膨張弁が、また、前記室内熱交換器の近くに第2膨張弁がそれぞれ配置されていて、前記第1膨張弁及び第2膨張弁として、上記電動弁が用いられており、冷媒が前記室外熱交換器から前記室内熱交換器へと流されるときには、前記第1膨張弁では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィスを介することなく流すようにされるとともに、前記第2膨張弁では、流量制御を行なうべく、前記主弁体と前記オリフィスとの間からのみ流すようにされ、冷媒が前記室内熱交換器から前記室外熱交換器へと流されるときには、前記第2膨張弁では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィスを介することなく流すようにされるとともに、前記第1膨張弁では、流量制御を行なうべく、前記主弁体と前記オリフィスとの間からのみ流すようにされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る電動弁の好ましい態様では、主弁体により開閉されるオリフィスをバイパスする流路が形成されるとともに、このバイパス流路を正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体がオリフィスから偏心した位置に配備され、正流れ時には、流体を主弁体とオリフィスとの間からのみ流し、逆流れ時には、流体の全部ないし大半を前記オリフィスを介することなく前記バイパス流路に流すようにされるので、正流れ時には流量制御を高精度に行なうことができるとともに、逆流れ時には、圧力損失を、導管を流れるときと同程度にまで低減することが可能となる。
【0029】
したがって、本発明に係る電動弁を膨張弁として冷凍サイクルに用いることにより、冷凍サイクルにおける制御精度を大幅に向上できるとともに、圧力損失を可及的に低減でき、その結果、省エネ効率等を格段に向上できる。しかも、従来例のように別途に逆止弁を配管接続する必要がないので、配管に要する工数やコスト等も低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る電動弁の第1実施例の構成並びに動作説明に供される主要部縦断面図。
【図2】本発明に係る電動弁の第1実施例の構成並びに動作説明に供される主要部縦断面図。
【図3】本発明に係る電動弁が用いられた冷凍サイクルの一例を示す図。
【図4】従来の冷凍サイクルの一例を示す図。
【図5】従来の電動弁の一例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1(A)、(B)、図2(C)、(D)は、本発明に係る電動弁の一実施形態(第1実施例)の主要部縦断面図である。図示実施例の電動弁10Cの基本構成は、前述した図5に示される従来例の電動弁10’と略同じであるので、ここでは、図5に示される従来例の電動弁10’の各部に対応する部分には同一の符号を付して重複説明を省略し、以下は、主要部(特徴部分)である弁本体20部分を重点的に説明する。
【0033】
図示第1実施例の電動弁10Cは、図1(B)に示される如くの正流れ時には、流量制御を行なうべく、冷媒を主弁体24とオリフィス22aとの間からのみ流し、図2(C)、(D)に示される如くの逆流れ時には、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィス22aを介することなく流すように構成されている。
【0034】
すなわち、弁本体20の下部には、蓋状底部材45が螺合せしめられて気密的に封止されており、この蓋状底部材45に導管17が接合され、蓋状底部材45と弁座22との間に、前記オリフィス22aに連なる、それと同軸の正流れ用流路75が形成されるとともに、該正流れ用流路75と隔壁69を挟んで並列に前記オリフィス22aをバイパスする流路70を画成する弁体収容部68が形成されている。この弁体収容部68と前記正流れ用流路75及び導管17とは、蓋状底部材45と弁本体20の下端との間に形成された空所48で連通している。
【0035】
前記弁体収容部68には、前記バイパス流路70を正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体60が配備されている。逆止弁体60は、前記オリフィス22a(回転軸線O)から所定の距離だけ側方に偏心した位置に配在されている。
【0036】
詳細には、前記逆止弁体60は、断面形状が正六角形の中実部62を有し、該中実部62の上面に、前記弁座22に設けられたバイパス流路70の一部を構成する開口部72を開閉する円錐状面部64が設けられるとともに、その下側に小径の柱状ストッパ66設けられ、前記弁体収容部68に摺動自在に嵌挿されており、該逆止弁体60の外周面と前記弁体収容部68の内周面との間が前記バイパス流路70となっている。
【0037】
また、前記蓋状底部材45と前記中実部62との間には、前記逆止弁体60を常時前記バイパス流路70(開口72)を閉じる方向に付勢するコイルばね65が縮装されている。
【0038】
このような構成とされた本実施例の電動弁10Cにおいては、非稼働時には図1(A)に示される如くに、主弁体24によりオリフィス22aが閉じられる(リフト量が0)とともに、バイパス流路70も逆止弁体60により閉じられる。
【0039】
正流れ時には、図1(B)に示される如くに、バイパス流路70(開口72)が逆止弁体60により閉じられるとともに、主弁体24がオリフィス22aからリフトせしめられ、冷媒が下側の導管17から弁本体20内に導入され、主弁体24とオリフィス22aとの間を通って(絞られて)導管16へ流される。
【0040】
それに対し、逆流れ時には、図2(C)に示される如くに、オリフィス22aが主弁体24により閉じられるとともに、逆止弁体60が下方に押し下げられて、バイパス流路70が開通し、冷媒が導管16からバイパス流路70を通って導管17へ流される。この逆流れ時には、図2(D)に示される如くに、主弁体24を最大限リフトさせて、冷媒の一部をオリフィス22aを通じて流すようにしてもよい。
【0041】
このように本実施形態の電動弁10Cでは、主弁体24により開閉されるオリフィス22aをバイパスする流路70が形成されるとともに、このバイパス流路70を正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体60がオリフィス22aから偏心した位置に配備され、正流れ時には、冷媒を主弁体24とオリフィス22aとの間からのみ流し、逆流れ時には、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィス22aを介することなく前記バイパス流路70に流すようにされるので、正流れ時には流量制御を高精度に行なうことができるとともに、逆流れ時には、圧力損失を、導管を流れるときと同程度にまで低減することが可能となる。
【0042】
図3は、図4に示される冷凍サイクル100における第1膨張弁105及び第2膨張弁106に代えて上記第1実施例の電動弁10Cを第1電動弁11、第2電動弁12として所定の態様で組み込んだ冷凍サイクル100を示している。
【0043】
この冷凍サイクル100では、冷媒が室外熱交換器103から室内熱交換器104へと流される冷房時には、第1電動弁11では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィス22aを介することなく流すようにされるとともに、前記第2電動弁12では、流量制御を行なうべく、主弁体24とオリフィス22aとの間からのみ流すようにされ、冷媒が室内熱交換器104から室外熱交換器103へと流される暖房時には、前記第2電動弁12では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半をオリフィス22aを介することなく流すようにされるとともに、前記第1電動弁12では、流量制御を行なうべく、主弁体24とオリフィス22aとの間からのみ流すようにされる。
【0044】
このように、本発明に係る電動弁10Cを従来の膨張弁105、106に代えて冷凍サイクルに用いることにより、冷凍サイクルにおける制御精度を大幅に向上できるとともに、圧力損失を可及的に低減でき、その結果、省エネ効率等を格段に向上できる。しかも、従来例のように別途に逆止弁を配管接続する必要がないので、配管に要する工数やコスト等も低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10C 電動弁
20 弁本体
22 弁座
22a オリフィス
24 主弁体
25 弁軸
30 ロータ
40 キャン
50 ステータ
60 逆止弁体
70 バイパス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁体と、該主弁体により開閉されるオリフィスが設けられた弁本体と、前記オリフィスに対する前記弁体のリフト量を調整するためのロータ及びステータ等からなる昇降駆動機構とを備えた電動弁であって、
流体が正流れ時には、流量制御を行ない、逆流れ時には、圧力損失を可及的に低減すべく、前記弁本体における前記オリフィスから偏心した位置に、前記オリフィスをバイパスする流路が形成されるとともに、該バイパス流路を正流れ時には閉じ、逆流れ時には開く逆止弁体が配備されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記逆止弁体を常時前記バイパス流路を閉じる方向に付勢するばね部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
正流れ時に流体を流す正流れ用流路が前記オリフィスと同軸上に形成され、該正流れ用流路に隣接して前記逆止弁体が摺動自在に嵌挿される弁体収容部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記逆止弁体は、断面形状が非円形の中実部を有し、該中実部の外周面と前記弁体収容部の内周面との間が前記バイパス流路となっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機、流路切換器、室外熱交換器、及び室内熱交換器を備え、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間の、前記室外熱交換器の近くに第1膨張弁が、また、前記室内熱交換器の近くに第2膨張弁がそれぞれ配置されている冷凍サイクルであって、
前記第1膨張弁及び第2膨張弁として、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動弁が用いられており、冷媒が前記室外熱交換器から前記室内熱交換器へと流されるときには、前記第1膨張弁では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィスを介することなく流すようにされるとともに、前記第2膨張弁では、流量制御を行なうべく、前記主弁体と前記オリフィスとの間からのみ流すようにされ、冷媒が前記室内熱交換器から前記室外熱交換器へと流されるときには、前記第2膨張弁では、圧力損失を可及的に低減すべく、冷媒の全部ないし大半を前記オリフィスを介することなく流すようにされるとともに、前記第1膨張弁では、流量制御を行なうべく、前記主弁体と前記オリフィスとの間からのみ流すようにされていることを特徴とする冷凍サイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249247(P2010−249247A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100103(P2009−100103)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】