説明

電動弁駆動システム

【課題】無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成で電動弁を駆動することができる電動ボール弁駆動システムを提供する。
【解決手段】電動ボール弁駆動システム10は、目標開度Ndを設定する目標開度設定部11と、目標開度Ndとボール弁32の現在開度Naとを入力して両者間の開度差分ΔNを求める加算部13と、開度差分ΔNに基づいて単相誘導電動機31を駆動する駆動パルス幅を演算するパルス幅演算部14、ボール弁32のヒステリシス相当駆動時間を求めて駆動パルス幅を補正するヒステリシス補正部16と、求めた駆動パルス幅を有する駆動パルスをSSR20に出力する駆動パルス出力部19と、駆動パルスを単相誘導電動機31に出力し、単相誘導電動機31を駆動するSSR20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁を駆動する電動弁駆動システムに係り、特に、単相誘導電動機を使用した電動弁駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量を調節する流量調節弁には、グローブ弁、サンダース弁、バタフライ弁、ボール弁等、基本構造の違いにより多種多様なものがある。これらの弁を電気的に開閉する電動弁を駆動する駆動装置としては、例えば、特許文献1および2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1記載のものは、電動弁を開閉駆動する電動モータと、電動モータの回転規制を行う電磁ブレーキとを備えている。この構成により、特許文献1記載のものは、電磁ブレーキが電動モータを所定の位置に停止させることにより、電動弁の開閉制御を行うことができるようになっている。
【0004】
特許文献2記載のものは、電動弁を開閉駆動する交流モータと、交流モータを駆動するインバータと、電動弁の開度を検出する開度検出器と、開度検出器が出力する電動弁の開度信号をフィードバックして電動弁の開度区間ごとに交流モータのトルクを制御する制御部とを備えている。この構成により、特許文献2記載のものは、電動弁の開度区間ごとに必要とされる交流モータのトルクに対し、交流モータが必要以上のトルクを出さないよう制御することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−292877号公報
【特許文献2】特開2009−81935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものは、電磁ブレーキにより電動モータを所定の位置に停止させる構成となっているので、装置の構造が複雑化するとともに、無駄なエネルギーを消費するという課題があった。
【0007】
また、特許文献2記載のものは、インバータをフィードバック制御することにより交流モータを駆動して電動弁を開閉制御する構成となっているので、装置の構造が複雑化するという課題があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成で電動弁を駆動することができる電動弁駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動弁駆動システムは、フィードバックループを高速応答が可能なデジタルコントローラに置き、流量制御プロセスの制定時間の影響を無くすことで電動弁の動作回数を減らすことができる。一般に、長い配管中の流量制御の応答は、バルブ開度の変化に対して、ステップ応答で数十秒、制定時間で数分かかることがある。本電動弁駆動システムは、制定後の流量を見越して電動弁を駆動することができる。
【0010】
本発明の電動弁駆動システムは、電動弁を開閉する誘導電動機を駆動する電動弁駆動システムであって、前記電動弁の開度を設定するための目標開度と前記電動弁の現在の開度である現在開度との差を示す開度差分を算出する開度差分算出手段と、前記誘導電動機を駆動する交流電力を駆動パルスによって供給する交流電力供給手段と、前記誘導電動機が前記電動弁を全閉状態から全開状態まで変化させるのに要する時間を示す全開駆動時間と、前記電動弁の全開状態での開度に対する前記開度差分の比率と、前記誘導電動機に交流電力を所定時間供給した後に慣性により前記誘導電動機が作動する時間を示す惰性走行時間とに基づいて前記駆動パルスのパルス幅を演算するパルス幅演算手段と、を備えた構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の電動弁駆動システムは、パルス幅演算手段が演算したパルス幅を有する駆動パルスを誘導電動機に供給することにより、誘導電動機をパルスモータのように駆動することができるので、待機電力を消費せず、パルスモータが必要とするような駆動回路も不要となる。したがって、本発明の電動弁駆動システムは、無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成で電動弁を駆動することができる。
【0012】
本発明の電動弁駆動システムは、前記電動弁は、開弁作動と閉弁作動とにヒステリシスを有するものであって、前記電動弁を駆動して前記ヒステリシスを補正する時間を示すヒステリシス相当駆動時間を算出し、算出した前記ヒステリシス補正値により前記駆動パルスのパルス幅を補正するヒステリシス補正手段をさらに備えた構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の電動弁駆動システムは、ヒステリシス補正手段により電動弁のヒステリシスを補正することができる。
【0014】
本発明の電動弁駆動システムは、前記交流電力供給手段は、前記電動弁に印加する電圧がゼロ点と交差する時刻から、前記電圧の位相が前記時刻より90度遅れた時刻であって前記電動弁に供給する電流がゼロ点と交差する時刻までの期間の電圧パルスおよび電流パルスを前記駆動パルスによって前記誘導電動機に供給するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の電動弁駆動システムは、誘導電動機をパルスモータのように駆動することができる。
【0016】
本発明の電動弁駆動システムは、前記誘導電動機が、単相籠形誘導電動機からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成で電動弁を駆動することができるという効果を有する電動弁駆動システムを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電動ボール弁駆動システムの一実施形態におけるブロック構成図である。
【図2】本発明に係る電動ボール弁駆動システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおいて、第1SSRの機能についての説明図である。
【図4】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおいて、単相誘導電動機を駆動する駆動パルスについての説明図である。
【図5】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおいて、駆動パルスによる電動機の動作を示す模式図である。
【図6】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおける惰性走行時間の求め方の説明図である。
【図7】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおけるメインルーチンのフローチャートである。
【図8】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおける弁の全開処理のフローチャートである。
【図9】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおける弁の全閉処理のフローチャートである。
【図10】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおける弁の開処理のフローチャートである。
【図11】本発明に係る電動ボール弁駆動システムにおける弁の閉処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、本発明に係る電動弁駆動システムを、ボール弁を電気的に開閉する電動ボール弁駆動システムに適用した例を挙げる。この電動ボール弁駆動システムは、流体の流量を調節する流量調節弁としてのボール弁と、このボール弁を駆動する駆動手段としての単相誘導電動機とを備えている。以下、本発明の実施形態を説明する前に、ボール弁および単相誘導電動機を採用した背景について説明する。
【0020】
例えば、温水と冷水とを混合して希望する温度と流量の温水を得る冷温水混合設備において、これらの流量調節弁を電子計算機で制御するシステムを構成するとき、従来使用されている流量調節弁は、アナログ信号またはデジタル信号のインターフェイスを持つポジショナーを取り付けた空気式調節弁、または、同様のインターフェイスを持つ制御装置付きの電動調節弁が使用される。これらの従来型調節弁は、フィードバック制御を前提として設計されているため、インターフェイスつまり、補助制御装置は常に動作状態で運用される。このことは、個々の調節弁は相応の待機電力を消費し、調節弁の数が多いシステムでは相当の待機電力を消費する。
【0021】
しかしながら、近年において叫ばれている低炭素社会、グリーン対応、省エネルギー等のキーワードで代表されるように、不要な待機電力を低減する方向にあるため、従来型調節弁の構成は好ましいものではない。
【0022】
そこで、本発明者は、無駄なエネルギー消費を抑制するという観点から、流量調節弁の駆動手段および流量調節弁について検討した。
【0023】
(流量調節弁の駆動手段)
無駄なエネルギーを消費しない電子計算機制御システムを構築するための流量調節弁の駆動手段には次のような性能が要求される。
(1)待機電力を極力消費しない制御方式であること。
(2)操作量をデジタル方式で設定できる(計算機から直接操作できる)。
(3)大型弁を操作する大きな駆動力を発生できる。
(4)補助制御装置、コントローラ、変換器等(インターフェース)を簡略化できる。
【0024】
まず、上記(1)について検討する。例えば、互いに90°の位相角で取り付けられた2組の励磁巻線に対して進相コンデンサーの位置を切り替えることで回転方向を切り替えることが可能な単相誘導電動機を適用することを考える。以後、このような単相誘導電動機を可逆型の単相誘導電動機と呼ぶことにする。可逆型の単相誘導電動機は、停止中に待機電力を消費しない。一方、参考のためにパルスモータを用いて弁を制御する場合の待機電力を考える。パルスモータ自体は、駆動電圧を取り除いても現在位置を保持する性質を持つのでそれ自体は待機電力を消費しない。しかし、パルスモータの複雑な駆動回路は多くの待機電力を消費する。したがって、上記(1)についてはパルスモータより、むしろ可逆型の単相誘導電動機の方が優れている。
【0025】
次に、上記(2)について検討する。可逆型の単相誘導電動機それ自体は、本来、デジタル操作とは無縁である。参考のためにパルスモータと比較してみる。パルスモータは歩進型であるため、操作信号は本来デジタル方式である。したがって、上記(2)については、本来、パルスモータが優れているが、本発明では、後述するように可逆型の単相誘導電動機をパルスモータのように駆動することで、駆動力が大きい、補助制御装置が不要、等の可逆型の単相誘導電動機の特徴を生かした制御システムを構築できる。
【0026】
次に、上記(3)について、可逆型の単相誘導電動機とパルスモータとを比較してみる。可逆型の単相誘導電動機に比べてパルスモータは構造上の理由により大きな駆動力は期待できない。また、駆動力の限界を超えると脱調と呼ばれる現象を生じ駆動できなくなる。また、パルスモータは複雑な駆動回路を必要とするが、これらの駆動回路は大電力には向かない。したがって、上記(3)については可逆型の単相誘導電動機が優れている。
【0027】
次に、上記(4)について、可逆型の単相誘導電動機とパルスモータとを比較してみる。本発明による可逆型の単相誘導電動機は、特別な補助制御装置を必要としない。一方、パルスモータは複雑な駆動回路を必要とする。したがって、(4)の補助制御装置の要否については、可逆型の単相誘導電動機が優れている。
【0028】
(流量調節弁)
無駄なエネルギーを消費しない電子計算機制御システムを構築するための流量調節弁には次のような性能が要求される。
(1)全開時の圧力損失が小さい。
(2)設定された開度を維持するためにエネルギーを消費しない。
(3)操作信号に対する流量係数を正確に算出できる。
(4)操作信号に対する流量の再現性に優れている。
(5)操作信号を一度上げて元に戻した時に流量が正確に元の値に戻る。
【0029】
上記の要求に対して、ボール弁の場合を検討する。全開時のボール弁の流体通過面積は同一口径の配管の断面積に等しく、弁の挿入による圧損は限りなくゼロに等しい。したがって、ボール弁は、上記(1)の要求を満足する。
【0030】
次に、ボール弁は、それ自体で、流体の反力に対して一定の開度を維持できる構造を持つ。サンダース弁その他の多くの流量制御弁は、流体の圧力を押し戻すために、空気圧等の何らかの方法で常に弁を抑える方向の力を必要とする。この点、ボール弁は、一定の開度を維持するためにエネルギーを必要としない。以上のことから、ボール弁は、上記(2)の要求を満足する。
【0031】
また、ボール弁は、構造が簡単であるために操作軸の回転角と流体通過断面積との関係を明解な数式で表現できる。このことは、目標流量に対応した操作量(弁の操作回転角)を算出できる可能性を示す。目標流量に対する操作量を演算により求めて設定することでフィードバック方式に比べて早く収斂させるこができる。したがって、ボール弁は、上記(3)の要求を満足する。
【0032】
次に、上記(4)について検討する。ボール弁の有効な操作領域は、閉側20%の締め切り域と開側20%の飽和域を除いた、概ね60%と狭くなる。したがって、ボール弁は、急峻な立ち上がり特性を持つことから、一般に制御用途に向かないと言われている。この点、ボール弁は、上記(4)の要求を満足しない。
【0033】
更に、ボール弁は、駆動部減速機のバックラッシュ、駆動軸と弁体との遊びに起因するヒステリシスを生じる。ヒステリシスが存在すると上昇方向に操作した量だけ下方に戻したとき、元の流量に戻らない。つまり、ボール弁は、上記(5)の要求を満足しない。
【0034】
そこで、本発明者は、ボール弁に関して、ソフトウエアによる補正により、上記(4)および(5)の要求を満足させ、待機電力が比較的少ない制御システムを実現した。
【0035】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0036】
まず、本発明に係る電動ボール弁駆動システムの実施形態における構成について説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態における電動ボール弁駆動システム10は、電動ボール弁30を駆動するものである。この電動ボール弁駆動システム10は、本発明に係る電動弁駆動システムを構成する。
【0038】
電動ボール弁駆動システム10は、目標開度設定部11、目標開度判定部12、加算部13、パルス幅演算部14、回転方向判定部15、ヒステリシス補正部16、現在開度取得部17、全開全閉処理部18、駆動パルス出力部19、半導体リレー(SSR)20、を備える。
【0039】
電動ボール弁30は、可逆型の単相誘導電動機31、ボール弁32を備える。この電動ボール弁30は、本発明に係る電動弁を構成する。単相誘導電動機31は、例えば、60ヘルツの商用電源(100ボルト)で駆動される単相籠形誘導電動機からなる。ボール弁32は、例えば、樹脂製の弁体および樹脂製の弁軸を有する。なお、単相誘導電動機31に代えて、例えば三相誘導電動機を用いてもよい。この場合は、三相交流用の半導体リレーを用いる。また、ボール弁32は、樹脂製に限定されず、例えば金属製であってもよい。
【0040】
目標開度設定部11は、ボール弁32を所定の開度に設定するための目標開度Ndを設定するようになっている。この目標開度Ndは、ボール弁32の全閉状態を示す0から、全開状態を示す100までの値で表される。
【0041】
具体的には、目標開度設定部11は、例えば、ボール弁32に接続された流量計が取得する現在流量値と、作業者が設定した流量設定値とを入力し、電動ボール弁30による流量操作量を求めるようになっている。また、目標開度設定部11は、流量操作量と目標開度Ndとの関係を示す流量開度変換データを予め記憶しており、求めた流量操作量を流量開度変換データに基づいて目標開度Ndに変換するようになっている。また、流量操作量と目標開度Ndとの関係が数式で表現できる場合は、演算により流量操作量を目標開度Ndに変換する。
【0042】
目標開度判定部12は、目標開度設定部11によって設定された目標開度Ndの範囲を判定するとともに、0<Nd<100のときは目標開度Ndのデータを加算部13に出力し、Nd=0またはNd=100のときは目標開度Ndのデータを全開全閉処理部18に出力するようになっている。
【0043】
加算部13は、目標開度Ndと、ボール弁32の現在の開度を示す現在開度Naとを入力し、両者間の開度差分ΔN(=Nd−Na)を求めるようになっている。ここで、現在開度Naは、ボール弁32の全閉状態を示す0から、全開状態を示す100までの値で表される。したがって、開度差分ΔNは、0〜100で表される。
【0044】
パルス幅演算部14は、[数1]および[数2]により、SSR20を介して単相誘導電動機31を駆動する駆動パルス幅を演算するようになっている。このパルス幅演算部14は、本発明に係るパルス幅演算手段を構成する。
【0045】
[数1]
駆動パルス幅(秒) = 駆動時間(秒) − 惰性走行時間(秒)
【0046】
[数2]
駆動時間(秒) = 全開駆動時間(秒) × 開度差分ΔN/100
【0047】
ここで、全開駆動時間とは、単相誘導電動機31が、ボール弁32の全閉状態(開度0%)から全開状態(開度100%)にするまでに要する駆動時間をいう。なお、全開状態および全閉状態は、ぞれぞれ、後述する開リミットスイッチ37および閉リミットスイッチ38によって検出される構成となっている。また、惰性走行時間についても後述する。
【0048】
回転方向判定部15は、開度差分ΔNをゼロにする方向にボール弁32を回転させる回転方向を判定するようになっている。例えば、回転方向判定部15は、開度差分ΔNの符号が正の場合はボール弁32を開く方向(以下「正転方向」という。)に単相誘導電動機31を動作させる必要があると判定する。一方、回転方向判定部15は、開度差分ΔNの符号が負の場合はボール弁32を閉じる方向(以下「逆転方向」という。)に単相誘導電動機31を動作させる必要があると判定する。そして、回転方向判定部15は、正転または逆転を示す情報をヒステリシス補正部16に出力する。
【0049】
ヒステリシス補正部16は、単相誘導電動機31の回転方向を前回とは逆の回転方向に変えてボール弁32を動かし始めるときに、単相誘導電動機31の回転とともにボール弁32の弁体が一時的に動かないヒステリシスを補正するためのヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)を算出するようになっている。このヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)の算出については後述する。
【0050】
また、ヒステリシス補正部16は、ヒステリシスを補正する場合は、算出したヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)に基づき、パルス幅演算部14が演算した駆動パルス幅を補正するようになっている。ヒステリシス補正部16からの駆動パルス幅のデータは駆動パルス出力部19に出力される。
【0051】
また、ヒステリシス補正部16は、駆動パルス出力部19に出力した駆動パルス幅のデータによりボール弁32の弁体の位置情報を取得して、この位置情報を現在開度取得部17に出力するようになっている。なお、ヒステリシス補正部16は、本発明に係るヒステリシス補正手段を構成する。
【0052】
現在開度取得部17は、ヒステリシス補正部16からの弁体の位置情報、後述する開リミットスイッチ37および閉リミットスイッチ38からの開リミット信号および閉リミット信号に基づき、ボール弁32の現在開度Naを取得するようになっている。
【0053】
全開全閉処理部18は、ボール弁32を全開する処理、または全閉する処理を行うようSSR20を駆動するようになっている。
【0054】
駆動パルス出力部19は、ヒステリシス補正部16および全開全閉処理部18から、単相誘導電動機31を駆動する駆動パルス幅のデータを入力し、入力した駆動パルス幅を有する駆動パルスをSSR20に出力するようになっている。この駆動パルス出力部19は、本発明に係る交流電力供給手段を構成する。
【0055】
SSR20は、駆動パルス出力部19からの駆動パルスを単相誘導電動機31に出力し、単相誘導電動機31を駆動するようになっている。
【0056】
図2は、本実施形態における電動ボール弁駆動システム10のハードウエア構成を示すブロック図である。電動ボール弁駆動システム10は、作業者が操作するパーソナルコンピュータ(以下「PC」と記す。)41にLANを介して接続され、SSR20を制御するデジタルコントローラ42を備え、電動ボール弁30を駆動するようになっている。SSR20は、第1SSR21、第2SSR22、第3SSR23、第4SSR24を備える。
【0057】
デジタルコントローラ42は、プログラムを記憶する記憶部(図示省略)を有し、この記憶部にインストールされたプログラムを実行することにより、図1に示した目標開度設定部11、目標開度判定部12、加算部13、パルス幅演算部14、回転方向判定部15、ヒステリシス補正部16、現在開度取得部17、全開全閉処理部18、駆動パルス出力部19として機能するものである。
【0058】
電動ボール弁30は、ボール弁32を正転方向に単相誘導電動機31を駆動する正転方向駆動コイル34、ボール弁32を逆転方向に単相誘導電動機31を駆動する逆転方向駆動コイル35、正転方向駆動コイル34と逆転方向駆動コイル35との間に設けられたセンタータップ36を有する。
【0059】
また、電動ボール弁30には、ボール弁32の全開状態に相当する機械的位置に開リミットスイッチ37が設けられ、ボール弁32の全閉状態に相当する機械的位置に閉リミットスイッチ38が設けられている。開リミットスイッチ37および閉リミットスイッチ38は、単相誘導電動機31の回転軸に取り付けられたカムにより、それぞれ、開上限および閉下限の位置で動作するようになっている。
【0060】
開リミットスイッチ37は、第3SSR23に接続された第1出力端子37a、正転方向駆動コイル34に接続された第2出力端子37b、第1SSR21に接続された入力端子37cを有する。開リミットスイッチ37において、ボール弁32が全開状態以外の状態にあるときは入力端子37cと第2出力端子37bとが接続され、ボール弁32が全開状態にあるときは入力端子37cと第1出力端子37aとが接続される。以下、入力端子37cと第2出力端子37bとが接続された状態を開リミットスイッチ37のオフ状態といい、入力端子37cと第1出力端子37aとが接続された状態を開リミットスイッチ37のオン状態という。
【0061】
閉リミットスイッチ38は、第4SSR24に接続された第1出力端子38a、逆転方向駆動コイル35に接続された第2出力端子38b、第2SSR22に接続された入力端子38cを有する。閉リミットスイッチ38において、ボール弁32が全閉状態以外の状態にあるときは入力端子38cと第2出力端子38bとが接続され、ボール弁32が全閉状態にあるときは入力端子38cと第1出力端子38aとが接続される。以下、入力端子38cと第2出力端子38bとが接続された状態を閉リミットスイッチ38のオフ状態といい、入力端子38cと第1出力端子38aとが接続された状態を閉リミットスイッチ38のオン状態という。
【0062】
第1SSR21は、ボール弁32の開制御を行うための開信号をデジタルコントローラ42から入力したとき、例えば60ヘルツ、100ボルトの交流電圧を正転方向駆動コイル34に印加するようになっている。その結果、単相誘導電動機31は、ボール弁32を正転方向に回転するよう駆動される。
【0063】
第2SSR22は、ボール弁32の閉制御を行うための閉信号をデジタルコントローラ42から入力したとき、100ボルトの交流電圧を逆転方向駆動コイル35に印加するようになっている。その結果、単相誘導電動機31は、ボール弁32を逆転方向に回転するよう駆動される。
【0064】
第3SSR23は、開リミットスイッチ37がオフ状態からオン状態に変化したとき、ボール弁32の全開状態を示す開リミット信号をデジタルコントローラ42に出力するようになっている。
【0065】
第4SSR24は、閉リミットスイッチ38がオフ状態からオン状態に変化したとき、ボール弁32の全閉状態を示す閉リミット信号をデジタルコントローラ42に出力するようになっている。
【0066】
次に、第1SSR21の機能について図3に基づき説明する。
【0067】
図3の上段は単相誘導電動機31に印加される電源電圧、図3の中段は単相誘導電動機31に流れる誘導負荷電流、図3の下段はデジタルコントローラ42から第1SSR21に出力されるボール弁32を開くための駆動パルス(図2では開信号と記載)の一例を示す。図示のように、誘導負荷電流は、その位相が電源電圧よりも90度遅れている。
【0068】
図3の下段に示すように、時刻T1からT3までの期間でオン状態にある開信号を第1SSR21が入力した場合、単相誘導電動機31は、第1SSR21のゼロクロス特性により、時刻T2からT4までの期間の電圧および電流で駆動される。
【0069】
具体的には、第1SSR21は、時刻T1では単相誘導電動機31に電圧を印加せず、電源電圧がゼロクロスする時刻T2まで待って単相誘導電動機31に電圧を印加する。また、第1SSR21は、時刻T3では単相誘導電動機31への電圧印加を停止せず、誘導負荷電流がゼロクロスする時刻T4まで待って単相誘導電動機31への電圧印加を停止する。その結果、単相誘導電動機31は、図3に示した斜線領域の電圧および電流による電力が供給されて駆動されることとなる。
【0070】
斜線領域の電圧および電流の信号は、60ヘルツの商用電源を使用する場合、60ヘルツの1/4サイクル時間である4.16ミリ秒の時間幅を有する。したがって、第1SSR21が駆動できる最小時間幅は、4.16ミリ秒である。第1SSR21は、この60ヘルツの1/4サイクル時間の信号(以下「1/4サイクル波形」という。)に60ヘルツの1/2サイクル時間の整数倍の時間(以下「1/2サイクル波形」という。)で単相誘導電動機31を駆動するものである。その様子を図4に示す。
【0071】
なお、単相誘導電動機31に供給される電圧および電流は、図3に示した斜線領域に限定されない。例えば、電源電圧の立ち下がり時にゼロクロスする時刻から1/4サイクル経過するまでの時間の電力で単相誘導電動機31を駆動する構成でもよい。具体的には、接点摩耗、応答遅れ、又はスイッチングノイズ発生等が許されるシステムにおいては有接点リレーを用いることが可能であり、その際は図3に示した波形と異なるが、同等の電力であれば単相誘導電動機31を駆動できる。
【0072】
次に、図4を用いて、単相誘導電動機31を駆動する駆動パルスと実際に単相誘導電動機31に供給される電圧と電流の波形について説明する。ここでは、電源周波数を60ヘルツとする。
【0073】
図4において、nは、電源投入後に発生する1つ目の1/4サイクル波形の終端を起点として、半サイクル単位ごとのタイミングを表す整数である。例えば、全開駆動時間が12.5秒であるとき、n=1500である。このnは、全閉から全開までを1500パルスで駆動するパルスモータの駆動パルス数に似ている。
【0074】
図4に示すように、n番目の駆動時間は(2n+1)/240秒である。例えば、時刻T0で第1SSR21を介して起動した単相誘導電動機31が停止できるタイミングは、第1SSR21がゼロクロス特性を有するので、n=1、2、3、4に対応する12.49、20.83、29.16、37.50ミリ秒の駆動時間となる。従って、T0からT3までのパルス幅を有する駆動パルスで第1SSR21を駆動すれば、第1SSR21はT0からT3までのn=4に対応した37.5ミリ秒間だけ単相誘導電動機31を駆動することになる。図1に示したパルス幅演算部14により算出されたパルス幅にまるめ誤差などの演算誤差を含む場合においても、例えば、パルス幅T0からT2の演算誤差がT1とT3との間であれば、駆動結果はT3となる。ここで、nは演算誤差を含む駆動パルスを正規化する作用を持つ。
【0075】
また、前述のように、接点摩耗、応答遅れ、又はスイッチングノイズ発生等が許されるシステムにおいては、nに対応した(2n+1)/240秒の駆動時間を有接点リレーを用いて単相誘導電動機31を駆動することもできる。
【0076】
前述した駆動パルスのパルス幅をパルス幅演算部14(図1参照)が求め、第1SSR21を動作させることにより単相誘導電動機31を駆動することができる。
【0077】
なお、以上の説明では第1SSR21を例に挙げて説明したが、第2SSR22も第1SSR21と同様に動作(但し閉方向に動作)するものであるので、説明を省略する。
【0078】
次に、駆動パルスによる電動機の動作について図5に示した模式図を用いて説明する。一般に電動機を起動して停止させるとき、電動機は、図示のように、加速域を経て、定速域で一定速度に達し、慣性による減速域を経て停止する。電動ボール弁30の制御に際し、制御可能な変数は、駆動時間Tonである。減速期間中の作動量は惰性走行時間Torである。図示のように、駆動時間Tonと惰性走行時間Torとを合わせた時間が実走行時間TrunActとなる。
【0079】
図6を用いて惰性走行時間の求め方を説明する。全閉リミット位置から全開リミット位置までを1回の動作で駆動する場合は、N=1とする。このとき、単相誘導電動機31が実際に有効に走行した時間を実開閉時間Taoとする。実開閉時間Taoは、駆動信号により定速走行した駆動時間Ton(1)と惰性走行時間Torとの和である。
【0080】
同様に2回の動作、すなわち、50%の走行を2回繰り返し100%となるように駆動する場合は、N=2である。この時、実開閉時間Taoは、駆動信号により定速走行した駆動時間Ton(2)と惰性走行時間Torとの総和である。
【0081】
更に、1%刻みで100回駆動することで全閉から全開まで駆動する場合は、N=100である。この場合も、実開閉時間Taoは、駆動信号により定速走行した駆動時間Ton(100)と惰性走行時間Torとの総和である。
【0082】
例えば、以下のように行う。まず、惰性走行時間Torをゼロとし、開度差分ΔNを全開度の1%として1%刻みで閉状態から開状態まで単相誘導電動機31を駆動する。このとき、惰性走行時間Torが発生するので、100回より以前に100%(全開)に達する。閉状態から開状態までの駆動時間が12.5秒であるとき、1%に相当する駆動時間は、125ミリ秒である。惰性走行時間Torがゼロであれば、1%×100回で閉から開に達する。ここで、1%×70回(70%に相当)で閉状態から開状態に達した場合の惰性走行時間Torを算出する。駆動時間Ton=125×70=8750ミリ秒に対して12500ミリ秒間駆動したことになる。70回に相当する惰性走行時間Tor=12500−8750=3750ミリ秒となり、1回(1%駆動)に相当する惰性走行時間Tor=3750÷70=53.57ミリ秒となる。
【0083】
次に、本実施形態における電動ボール弁駆動システム10の動作について図7〜図11に基づき説明する。最初に、図7に基づきメインルーチンについて説明する。
【0084】
まず、デジタルコントローラ42は、目標開度Ndが入力されたか否かを判断する(ステップS11)。例えば、デジタルコントローラ42は、ボール弁32に接続された流量計が取得する現在流量値と、作業者がPC41を操作して入力した流量設定値から、目標とする流量操作量を計算し、流量開度変換データを用いて目標開度Ndを求める。
【0085】
次に、デジタルコントローラ42は、Nd=100であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0086】
ステップS12において、Nd=100である場合は、デジタルコントローラ42は、後述する弁の全開処理(ステップS20)を行う。一方、Nd=100でない場合は、デジタルコントローラ42は、Nd=0であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0087】
ステップS13において、Nd=0である場合は、デジタルコントローラ42は、後述する弁の全閉処理(ステップS30)を行う。一方、Nd=0でない場合は、デジタルコントローラ42は、開度差分ΔNを算出する(ステップS14)。
【0088】
次に、デジタルコントローラ42は、ΔN=0であるか否かを判断する(ステップS15)。
【0089】
ステップS15において、ΔN=0である場合は、デジタルコントローラ42は、ステップS11に戻る。一方、ΔN=0でない場合は、デジタルコントローラ42は、[数1]および[数2]により、駆動パルス幅を演算する(ステップS16)。
【0090】
次に、デジタルコントローラ42は、ΔN>0であるか否かを判断する(ステップS17)。
【0091】
ステップS17において、ΔN>0である場合は、デジタルコントローラ42は、後述する弁の開処理(ステップS40)を行う。一方、ΔN>0でない場合、すなわちΔN<0の場合は、デジタルコントローラ42は、後述する弁の閉処理(ステップS50)を行う。
【0092】
そして、デジタルコントローラ42は、ステップS40およびステップS50の処理を実行した後、現在開度Naを更新し(ステップS18)、更新した現在開度Naを記憶し、ステップS11に戻る。
【0093】
次に、図8に基づき、弁の全開処理(ステップS20)について説明する。
【0094】
まず、デジタルコントローラ42は、閉駆動用のSSRである第2SSR22の出力をオフ(ステップS21)にした後、所定時間(例えば10ミリ秒)待機し(ステップS22)、開駆動用のSSRである第1SSR21の出力をオン(ステップS23)にする。ここで、上記所定時間は、60ヘルツの半サイクル時間である8.3ミリ秒以上であればよい。このステップS21〜S23の処理は、第1SSR21と第2SSR22とが同時にオンして誤動作の原因となることを回避するために行う。
【0095】
次に、デジタルコントローラ42は、開駆動用のSSRである第1SSR21に駆動パルスを出力する(ステップS24)。
【0096】
次に、デジタルコントローラ42は、開リミットスイッチ37がオン状態(全開状態)になったか否かを判断する(ステップS25)。
【0097】
ステップS25において、開リミットスイッチ37がオン状態でない場合は、ステップS24に戻る。一方、ステップS25において、開リミットスイッチ37がオン状態である場合は、デジタルコントローラ42は、現在開度Naに"100"を代入する(ステップS26)。
【0098】
そして、デジタルコントローラ42は、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)に"1"を、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)に"0"をそれぞれ代入して(ステップS27)、メインルーチンに戻る。
【0099】
ここで、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)および開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)は、ボール弁32の回転方向が変わるときに生じるヒステリシスを補正するためのフラッグであって、ともに"0"または"1"の値をとる。単相誘導電動機31がボール弁32を正転方向に作動した場合は、デジタルコントローラ42は、ステップS25に示した処理を行う。一方、単相誘導電動機31がボール弁32を逆転方向に作動したときは、デジタルコントローラ42は、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)に"0"を、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)に"1"をそれぞれ代入する処理を行う。
【0100】
次に、図9に基づき、弁の全閉処理(ステップS30)について説明する。
【0101】
まず、デジタルコントローラ42は、開駆動用のSSRである第1SSR21の出力をオフ(ステップS31)にした後、所定時間(例えば10ミリ秒)待機し(ステップS32)、閉駆動用のSSRである第2SSR22の出力をオン(ステップS33)にする。
【0102】
次に、デジタルコントローラ42は、開駆動用のSSRである第1SSR21に駆動パルスを出力する(ステップS34)。
【0103】
次に、デジタルコントローラ42は、閉リミットスイッチ38がオン状態(全閉状態)になったか否かを判断する(ステップS35)。
【0104】
ステップS35において、閉リミットスイッチ38がオン状態でない場合は、ステップS34に戻る。一方、ステップS35において、閉リミットスイッチ38がオン状態である場合は、デジタルコントローラ42は、現在開度Naに"0"を代入する(ステップS36)。
【0105】
そして、デジタルコントローラ42は、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)に"0"を、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)に"1"をそれぞれ代入して(ステップS37)、メインルーチンに戻る。
【0106】
次に、図10に基づき、弁の開処理(ステップS40)について説明する。
【0107】
まず、デジタルコントローラ42は、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)=0か否かを判断する(ステップS41)。すなわち、デジタルコントローラ42は、ボール弁32の前回の回転方向が正転方向であったか否かを判断する。
【0108】
ステップS41において、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)=0(前回は正転方向)の場合は、デジタルコントローラ42は、ヒステリシスの補正を行わず、後述のステップS44に進む。
【0109】
一方、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)=1(前回は逆転方向)の場合は、デジタルコントローラ42は、[数3]に示したヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)を算出する(ステップS42)。
【0110】
[数3]
DRIVE_HIS(秒) = OP_HIS_FLG ×HIS_VALUE(秒)
【0111】
ここで、ヒステリシス補正設定値(HIS_VALUE)は、ヒステリシスを補正するための補正値であって、予め実験により求めておく値である。このヒステリシス補正設定値(HIS_VALUE)は、例えば、ボール弁32の全開駆動時間の5%〜7%程度に相当する駆動時間で表される。
【0112】
次に、デジタルコントローラ42は、[数4]に基づき、算出したヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)により駆動パルス幅を補正する(ステップS43)。
【0113】
[数4]
駆動パルス幅(秒) = 駆動パルス幅(秒) + DRIVE_HIS(秒)
【0114】
次に、デジタルコントローラ42は、閉駆動用のSSRである第2SSR22の出力をオフ(ステップS44)した後、所定時間(例えば10ミリ秒)待機する(ステップS45)。その後、デジタルコントローラ42は、開駆動用のSSRである第1SSR21の出力をオンし(ステップS46)、第1SSR21から駆動パルスを出力する(ステップS47)。
【0115】
次に、デジタルコントローラ42は、ボール弁32の弁体の位置情報を取得し(ステップS48)、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)に"1"を、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)に"0"をそれぞれ代入して(ステップS49)、メインルーチンに戻る。
【0116】
次に、図11に基づき、弁の開処理(ステップS50)について説明する。
【0117】
まず、デジタルコントローラ42は、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)=0か否かを判断する(ステップS51)。すなわち、デジタルコントローラ42は、ボール弁32の前回の回転方向が逆転方向であったか否かを判断する。
【0118】
ステップS51において、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)=0(前回は逆転方向)の場合は、デジタルコントローラ42は、ヒステリシスの補正を行わず、後述のステップS54に進む。
【0119】
一方、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)=1(前回は正転方向)の場合は、デジタルコントローラ42は、[数5]に示したヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)を算出する(ステップS52)。
【0120】
[数5]
DRIVE_HIS(秒) = CL_HIS_FLG ×HIS_VALUE(秒)
【0121】
次に、デジタルコントローラ42は、前述の[数4]に基づき、算出したヒステリシス相当駆動時間(DRIVE_HIS)により駆動パルス幅を補正する(ステップS53)。
【0122】
次に、デジタルコントローラ42は、開駆動用のSSRである第1SSR21の出力をオフ(ステップS54)した後、所定時間(例えば10ミリ秒)待機する(ステップS55)。その後、デジタルコントローラ42は、閉駆動用のSSRである第2SSR22の出力をオンし(ステップS56)、第2SSR22から駆動パルスを出力する(ステップS57)。
【0123】
次に、デジタルコントローラ42は、ボール弁32の弁体の位置情報を取得し(ステップS58)、閉ヒステリシスフラッグ(CL_HIS_FLG)に"0"を、開ヒステリシスフラッグ(OP_HIS_FLG)に"1"をそれぞれ代入して(ステップS59)、メインルーチンに戻る。
【0124】
以上のように、本実施形態における電動ボール弁駆動システム10は、パルス幅演算部14が演算したパルス幅を有する駆動パルスを単相誘導電動機31に供給することにより、単相誘導電動機31をパルスモータのように駆動することができる。
【0125】
その結果、電動ボール弁駆動システム10は、パルスモータでは実現不可能であった大電力駆動系のデジタル制御が実現でき、更にPC41およびデジタルコントローラ42により単相誘導電動機31を直接駆動することで、補助制御装置を排除し、待機電力を発生しない駆動系が実現できる。
【0126】
したがって、電動ボール弁駆動システム10は、無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成でボール弁32を駆動することができる。
【0127】
また、電動ボール弁駆動システム10は、ボール弁32のヒステリシスを補正するためのヒステリシス相当駆動時間を算出し、ヒステリシス相当駆動時間により駆動パルスのパルス幅を補正するヒステリシス補正部16を備えるので、ボール弁32のヒステリシスを考慮してより正確な制御をソフトウエアにより実現することができる。したがって、電動ボール弁駆動システム10は、ボール弁32の操作量の変化を流量の変化に正確に反映することができる。
【0128】
また、電動ボール弁駆動システム10は、操作量を示す操作信号に対する流量係数を正確に算出できるボール弁32の特徴を利用して、目標流量に対する操作量を前もって演算により求めて設定することでフィードバック方式に比べて早く収斂させることができる。
【0129】
さらに、電動ボール弁駆動システム10は、全開時の圧損が小さいボール弁32を使うことで給水ポンプの容量を小さくでき、全体として待機電力が少ない省エネルギーシステムを構築できる。
【0130】
なお、前述の実施形態において、本発明に係る電動弁駆動システムを電動ボール弁駆動システムに適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の電動弁にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上のように、本発明に係る電動弁駆動システムは、無駄なエネルギー消費を抑制し、簡単な構成で電動弁を駆動することができるという効果を有し、流体の流量を調節する電動弁を駆動する電動弁駆動システムとして有用である。
【符号の説明】
【0132】
10 電動ボール弁駆動システム(電動弁駆動システム)
11 目標開度設定部
12 目標開度判定部
13 加算部(開度差分算出手段)
14 パルス幅演算部(パルス幅演算手段)
15 回転方向判定部
16 ヒステリシス補正部(ヒステリシス補正手段)
17 現在開度取得部
18 全開全閉処理部
19 駆動パルス出力部(交流電力供給手段)
20 SSR
21 第1SSR
22 第2SSR
23 第3SSR
24 第4SSR
30 電動ボール弁(電動弁)
31 単相誘導電動機
32 ボール弁
34 正転方向駆動コイル
35 逆転方向駆動コイル
36 センタータップ
37 開リミットスイッチ
37a 第1出力端子
37b 第2出力端子
37c 入力端子
38 閉リミットスイッチ
38a 第1出力端子
38b 第2出力端子
38c 入力端子
41 PC
42 デジタルコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁を開閉する誘導電動機を駆動する電動弁駆動システムであって、
前記電動弁の開度を設定するための目標開度と前記電動弁の現在の開度である現在開度との差を示す開度差分を算出する開度差分算出手段と、
前記誘導電動機を駆動する交流電力を駆動パルスによって供給する交流電力供給手段と、
前記誘導電動機が前記電動弁を全閉状態から全開状態まで変化させるのに要する時間を示す全開駆動時間と、前記電動弁の全開状態での開度に対する前記開度差分の比率と、前記誘導電動機に交流電力を所定時間供給した後に慣性により前記誘導電動機が作動する時間を示す惰性走行時間とに基づいて前記駆動パルスのパルス幅を演算するパルス幅演算手段と、を備えた電動弁駆動システム。
【請求項2】
前記電動弁は、開弁作動と閉弁作動とにヒステリシスを有するものであって、
前記電動弁を駆動して前記ヒステリシスを補正する時間を示すヒステリシス相当駆動時間を算出し、算出した前記ヒステリシス補正値により前記駆動パルスのパルス幅を補正するヒステリシス補正手段をさらに備えた請求項1に記載の電動弁駆動システム。
【請求項3】
前記交流電力供給手段は、前記電動弁に印加する電圧がゼロ点と交差する時刻から、前記電圧の位相が前記時刻より90度遅れた時刻であって前記電動弁に供給する電流がゼロ点と交差する時刻までの期間の電圧パルスおよび電流パルスを前記駆動パルスによって前記誘導電動機に供給するものである請求項1または請求項2に記載の電動弁駆動システム。
【請求項4】
前記誘導電動機が、単相籠形誘導電動機からなる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電動弁駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−2460(P2013−2460A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131029(P2011−131029)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(509148865)旭国際テクネイオン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】