説明

電動式オイルポンプ制御システム

【課題】目標油圧に最適なモータ回転数に制御できる電動式オイルポンプ制御システムを提供する。
【解決手段】
電動式オイルポンプのモータの回転数を制御する制御部、複数のポートが形成されたバルブボディーと、バルブボディー内に挿入されるバルブスプールと、バルブスプールに弾性力を提供する弾性部材とを含むレギュレータバルブ、及びバルブボディーに対して移動可能な第1接点と、バルブボディーの一側に固定された第2接点とを含み、第1、2接点の接触の有無を制御部に伝達する接点スイッチ、を含み、レギュレータバルブは、供給された油圧を作動圧に変換して供給し、バルブスプールは、作動圧の一部を第1制御圧として供給され、第1制御圧による力と弾性力によって、バルブボディー内で移動可能で、第1、2接点は、第1制御圧による力が弾性力よりも設定値以上の場合、接触して、制御部がモータの回転数を維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式オイルポンプ制御システムに係り、より詳しくは、目標油圧のために最適の回転数にモータを制御することができる電動式オイルポンプ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用自動変速機は、トルクコンバータと、このトルクコンバータに連結されている多段変速ギヤメカニズムであるパワートレインを保有している。変速機などの作動油圧を提供するための電動式オイルポンプ(Electric Oil Pump)と、変速機を制御するためのTCU(Transmission Control Unit)が備えられる。TCUで電動式オイルポンプの駆動を制御する場合、変速機及びクラッチ内に必要なライン圧力を形成するためには、最適のモータ回転数でポンプを駆動しなければならない。
【0003】
従来は、通常、目標油圧に到達するようにするために必要なモータ回転数に対するデータのマップ(Map)を予め設定し、油圧センサを設けて、目標油圧に到達したか否かをセンシングし、これを再びフィードバックすることによって、モータ回転数を制御する方式を用いていた。ところが、最適な制御のためには、高精度で高耐久力を有する油圧センサを用いなければならないため、費用が増加する問題があった。そして油圧脈動や振動により、センシングにおいてエラーが発生する場合や、フィードバック制御に誤作動が発生する問題があった。また、既存のマップ(Map)設定方式の場合、オイルポンプやセンサの偏差を考慮して、下限品を基準に設定するため、駆動損失が大きくなる問題があった。さらに、ポンプ使用による耐久性が低下し、ポンプの性能が落ちる場合には、これを反映して制御することが不可能な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−258279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、駆動損失を減らすことができ、ポンプの性能低下を反映して、目標油圧のための最適のモータ回転数(RPM)に制御することができ、費用を節減できる電動式オイルポンプ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動式オイルポンプ制御システムは、モータにより駆動される電動式オイルポンプ制御システムであって、前記電動式オイルポンプのモータの回転数を制御する制御部、複数のポートが形成されたバルブボディーと、前記バルブボディー内に挿入されるバルブスプールと、前記バルブスプールに一側に向かって弾性力を提供する弾性部材とを含むレギュレータバルブ、及び前記バルブボディーの一側に設けられ、前記バルブボディーに対して移動可能な第1接点と、前記バルブボディーの一側に固定された第2接点とを含み、前記第1、2接点の接触の有無に対する情報を前記制御部に伝達する接点スイッチ、を含み、前記レギュレータバルブは、前記電動式オイルポンプから供給された油圧を作動圧に変換して供給し、前記バルブスプールは、前記作動圧の一部を第1制御圧として供給され、前記第1制御圧による力と弾性力によって、前記バルブボディー内で移動可能で、前記第1、2接点は、前記第1制御圧による力が前記弾性力よりも設定値以上の場合、接触して、前記制御部が前記モータの回転数を維持させることを特徴とする。
【0007】
前記第1、2接点は、前記第1制御圧による力が前記弾性力よりも設定値未満の場合、前記第1、2接点は互いに離れて、前記制御部が前記モータの回転数を上昇させることが好ましい。
【0008】
前記レギュレータバルブの他側に、前記第1制御圧に対抗する第2制御圧を提供する可変制御ソレノイドバルブをさらに備えることが好ましい。
【0009】
前記バルブボディーは、前記電動式オイルポンプから油圧が供給される第1ポート、前記第1ポートの油圧を変換して、作動圧として供給する第2ポート、前記第2ポートの作動圧の一部が第1制御圧として供給される第3ポート、前記可変制御ソレノイドバルブから第2制御圧が供給される第4ポート、及び前記第2ポートの作動圧を排出する第5ポート、を含むことが好ましい。
【0010】
前記バルブボディーにおいて前記スイッチが設けられた側面には貫通孔が形成され、前記バルブスプールは、前記スイッチ側に突出した加圧部が形成されて、前記スイッチ側に移動時、前記加圧部が前記貫通孔を通過して、前記第1接点を加圧することが好ましい。
【0011】
前記制御部は、変速機制御ユニット(Transmission Control Unit、TCU)であることが好ましい。
【0012】
前記弾性部材は、前記バルブボディーにおいて、前記可変制御ソレノイドバルブの第2制御圧が作用する空間に設けられるリターンスプリングであることが好ましい。
【0013】
前記第1接点と第2接点とを接触させる弾性力を提供するため、前記第1接点の一側に設けられる加圧スプリングをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高価センサのような別途の装備を備える必要がないため原価が節減し、オイルポンプやセンサの偏差に関係なく、目標とする油圧に到達するための最適のモータ回転数を見つけることができるため、正確性と信頼性が向上する効果がある。また、電動式オイルポンプの性能が低下される場合にも、これに伴う油圧の変化を反映して、モータの回転数を制御することができるため、オイルポンプの性能低下を即刻に補償できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による電動式オイルポンプ制御システムの構成図である。
【図2】本発明による接点スイッチが非通電状態である場合のレギュレータバルブを示す図である。
【図3】本発明による接点スイッチが通電状態である場合のレギュレータバルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明による電動式オイルポンプ制御システムの構成図である。電動式オイルポンプ制御システムは、図1に示すように、電動式オイルポンプ100のモータ回転数を制御する制御部200、複数のポートP1〜P5が形成されたバルブボディー310と、バルブボディー310内に挿入されるバルブスプール320と、バルブスプール320の一側に弾性力を提供する弾性部材330とを含むレギュレータバルブ300、及び、第1接点410と第2接点420との接触で通電するように構成された接点スイッチ400を含んで構成される。
【0018】
制御部200は、電動式オイルポンプ100を制御する。図1に示すように、接点スイッチ400の通電状態を検出し、これを用いて、電動式オイルポンプ100のモータMの回転数を制御する。制御部200は、モータMの回転数を制御することによってポンプPのオイル流量を制御して、レギュレータバルブ300に提供される油圧が目標油圧になるように制御する。制御部200は、変速機制御ユニット(Transmission Control Unit:TCU)や電動式オイルポンプの駆動を直接制御するOPU(Electric oil pump 100 Unit)またはMCU(Motor Control Unit)等であってもよい。この実施例では電動式オイルポンプ100は、車両の自動変速機に用いられるものとしたので、制御部200は、変速機制御ユニット(Transmission Control Unit:TCU)であってもよい。レギュレータバルブ300は、オイルポンプ100で発生した油圧を各変速段に相応するライン圧で制御供給する役割を果たす。
【0019】
レギュレータバルブ300は、図2に示すように、複数のポートP1〜P5が形成されたバルブボディー310と、バルブボディー310内に挿入されるバルブスプール320と、前記バルブスプール320に一側に向かって弾性力を提供する弾性部材330とを含んで構成される。レギュレータバルブ300は、電動式オイルポンプ100から供給された油圧を作動圧に変換して供給し、バルブスプール320は、作動圧の一部を第1制御圧として供給され、第1制御圧による力と弾性部材330の弾性力によって、バルブボディー310内で移動することができる。
【0020】
バルブボディー310には、図2に示すように、複数のポートP1〜P5が形成されている。バルブボディー310は、電動式オイルポンプ100から油圧が供給される第1ポートP1、第1ポートP1の油圧を変換して、作動圧として供給する第2ポートP2、第2ポートP2の作動圧の一部が第1制御圧として供給される第3ポートP3、可変制御ソレノイドバルブ(Variable force solenoid valve 500:VFS)500から第2制御圧が供給される第4ポートP4、及び第2ポートP2の作動圧をオイルタンク600側に排出する第5ポートP5を含む。
【0021】
バルブスプール320は、図2、図3に示すように、スプール軸S、スプール軸Sの外周面に一体に形成された第1ランドL1と第2ランドL2、及び第1ランドL1の前方に突出した加圧部321を含む。加圧部321は、バルブボディー310の一側に形成された貫通孔311を通過することができる。ここで、第1ランドL1は、第1ポートP1と第2ポートP2との間の連通量を制御するように配置され、第2ランドL2は、第4ポートP4と第5ポートP5の連通量を制御するように第1ランドL1から所定間隔だけ離隔して配置される。弾性部材330はバルブボディー310の内部に設けられるものであって、バルブスプール320に弾性力を提供する。弾性部材330は、図2に示すように、バルブスプール320の後面とバルブボディー310内周面との間に設けられるリターンスプリングである。これによって、リターンスプリングはバルブスプール320に復原力を提供する。
【0022】
接点スイッチ400は、図1に示すように、バルブボディー310の一側に設けられ、第1接点410と第2接点420との接触によって通電される。スイッチ400は、バルブボディー310に対して移動可能な第1接点410と、バルブボディー310の一側に固定された第2接点420とを含み、第1、2接点410,420の接触の有無に対する情報を制御部200に伝達することができる。第1接点410と第2接点420とが接触している場合は、スイッチ400がオン(ON)して電気が通電する状態になり、第1接点410と第2接点420が分離された場合は、スイッチ400がオフ(OFF)して電気が非通電する状態になる。
【0023】
図2に示すように、第1接点410の一側に設けられる加圧スプリング430によって第1接点410と第2接点420とが弾性接触することができる。本発明の場合、バルブスプール320がバルブボディー310の内部で移動して、スイッチ400の第1接点410を加圧スプリング430の弾性力と反対方向に加圧することによって、弾性接触が分離されるように作用させることができる。
【0024】
図2、図3に示すように、バルブボディー310の場合、スイッチ400が設けられた側面に所定の大きさの貫通孔311を形成し、バルブスプール320には貫通孔311を通過するように突出した加圧部321を一体に形成する。バルブスプール320がスイッチ400方向に移動する場合、加圧部321が貫通孔311を通過して、第1接点410を加圧スプリング430と反対方向に加圧する。バルブスプール320の加圧部321によって加圧する力が加圧スプリング430の力よりも大きい場合には、第1接点410と第2接点420との弾性接触が分離され、これによってスイッチ400はオフ(OFF)状態になる。第1、2接点410,420は、第1制御圧による力が弾性部材330の弾性力よりも設定値未満の場合、バルブスプール320の加圧部321がスイッチ400方向に移動して、第1接点410を加圧することによって、第1、2接点410,420は互いに離れる。第1、2接点410,420が離れると、スイッチ400がオフ(OFF)し、制御部200はこれを感知して、モータMの回転数を上昇させる。
【0025】
反対に、第1、2接点410,420は、第1制御圧による力が弾性部材330の弾性力よりも設定値以上になると、バルブスプール320の加圧部321がスイッチ400の反対方向に移動することによって第1、2接点410,420が接触する。この場合、スイッチ400がオン(ON)し、制御部200はこれを感知して、モータMの回転数を維持させる。
【0026】
一方、レギュレータバルブ300の他側に、第1制御圧に対抗する第2制御圧を提供する可変制御ソレノイドバルブ(VFS)500を備えてもよい。レギュレータバルブ300は、電動式オイルポンプ100から第1ポートP1を介して油圧の供給を受け、第2ポートP2で第1ポートP1の油圧を変換して、作動圧として供給する。バルブスプール320は、作動圧の一部を第3ポートP3を介して第1制御圧として供給され、可変制御ソレノイドバルブ500によって第2制御圧を第4ポートP4に供給され得る。
【0027】
一方、図2に示すように、システムに可変制御ソレノイドバルブ500が備えられる場合、バルブスプール320は、第1制御圧による力と可変制御ソレノイドバルブ500の第2制御圧による力、及び、弾性部材330の弾性力との間の合力によって、移動することができる。
【0028】
以下では、上記のように構成された本発明による電動式オイルポンプ制御システムの作動原理について説明する。図2に示す電動式オイルポンプ制御システムの場合、加圧部321がバルブボディー310の貫通孔311を通過してスイッチ400の第1接点410を加圧することによって、スイッチ400の第1接点410と第2接点420との弾性接触が分離され、スイッチ400がオフした状態を示している。オイルポンプ100の油圧の一部は第3ポートP3を介して第1制御圧として供給され、第1制御圧による力は、バルブスプール320を接点スイッチ400の反対方向に加圧する。
【0029】
一方、第4ポートP4を介して供給される可変制御ソレノイドバルブ(VFS)500の第2制御圧による力は、バルブスプール320を接点スイッチ400方向に加圧し、リターンスプリングの弾性力もバルブスプールに作用する。第1制御圧による力が、弾性力よりも第2制御圧の力によって設定された値未満になると、バルブスプール320が前方に移動し、スイッチの第1、2接点410,420を分離させる。
【0030】
制御部200は、スイッチ400がオフ(OFF)状態になると、これを把握して、モータMの回転数を上昇させるように制御する。これにより、モータMの回転数が増加するようになると、ポンプPでレギュレータバルブ300の第1ポートP1に供給される流量が増加して、オイルポンプ100の油圧が上昇する。油圧の上昇によって、第1制御圧による力が、弾性力よりも第2制御圧の力によって設定された値より大きくなると、バルブスプール320が後方に移動し、スイッチの第1、2接点410,420が加圧スプリング430によって接触される。この場合、図3に示すように、スイッチ400はオン(ON)状態になる。
【0031】
この状態は、電動式オイルポンプの油圧が、制御部200が目標とする油圧に到達した状態であって、制御部200では、接点の接触によってスイッチ400がオン(ON)状態になると、これを把握して、モータMの回転数をそのまま維持するように制御する。
【符号の説明】
【0032】
100 電動式オイルポンプ
200 制御部
300 レギュレータバルブ
310 バルブボディー
311 貫通孔
320 バルブスプール
321 加圧部
330 弾性部材
400 接点スイッチ
410 第1接点
420 第2接点
430 加圧スプリング
500 可変制御ソレノイドバルブ
600 オイルタンク




【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される電動式オイルポンプ制御システムであって、
前記電動式オイルポンプのモータの回転数を制御する制御部、
複数のポートが形成されたバルブボディーと、前記バルブボディー内に挿入されるバルブスプールと、前記バルブスプールに一側に向かって弾性力を提供する弾性部材とを含むレギュレータバルブ、及び
前記バルブボディーの一側に設けられ、前記バルブボディーに対して移動可能な第1接点と、前記バルブボディーの一側に固定された第2接点とを含み、前記第1、2接点の接触の有無に対する情報を前記制御部に伝達する接点スイッチ、を含み、
前記レギュレータバルブは、前記電動式オイルポンプから供給された油圧を作動圧に変換して供給し、前記バルブスプールは、前記作動圧の一部を第1制御圧として供給され、前記第1制御圧による力と弾性力によって、前記バルブボディー内で移動可能で、前記第1、2接点は、前記第1制御圧による力が前記弾性力よりも設定値以上の場合、接触して、前記制御部が前記モータの回転数を維持させることを特徴とする電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項2】
前記第1、2接点は、前記第1制御圧による力が前記弾性力よりも設定値未満の場合、前記第1、2接点は互いに離れて、前記制御部が前記モータの回転数を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項3】
前記レギュレータバルブの他側に、前記第1制御圧に対抗する第2制御圧を提供する可変制御ソレノイドバルブをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項4】
前記バルブボディーは、
前記電動式オイルポンプから油圧が供給される第1ポートと、
前記第1ポートの油圧を変換して、作動圧として供給する第2ポートと、
前記第2ポートの作動圧の一部が第1制御圧として供給される第3ポートと、
前記可変制御ソレノイドバルブから第2制御圧が供給される第4ポートと、
前記第2ポートの作動圧を排出する第5ポートと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項5】
前記バルブボディーにおいて、前記スイッチが設けられた側面には貫通孔が形成され、
前記バルブスプールは、前記スイッチ側に突出した加圧部が形成されて、前記スイッチ側に移動時、前記加圧部が前記貫通孔を通過して前記第1接点を加圧することを特徴とする請求項1に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項6】
前記制御部は、変速機制御ユニット(Transmission Control Unit、TCU)であることを特徴とする請求項1に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項7】
前記弾性部材は、前記バルブボディーにおいて、前記可変制御ソレノイドバルブの第2制御圧が作用する空間に設けられるリターンスプリングであることを特徴とする請求項3に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【請求項8】
前記第1接点と第2接点とを接触させる弾性力を提供するために、前記第1接点の一側に設けられる加圧スプリングをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電動式オイルポンプ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113437(P2013−113437A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140391(P2012−140391)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】