説明

電動式射出成形機のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法

【課題】 スクリュが挿入されたままの加熱バレルを射出ユニットから取外し、別のスクリュが挿入された加熱バレルと交換するスクリユと加熱バレルを一組とするカートリッジ方式にするスクリュが挿入されたままの加熱バレル交換方法を提供する。
【解決手段】 射出時のスクリュの進行をスクリュの後方に設けたボールねじの回転により行う電動式射出成形機のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法において、加熱バレルを片持ち支持する固定プレートに表面からバレル軸方向に加熱バレルが通過可能な幅のU字溝を設け、このU字溝に嵌合し、U字溝の底面に加熱バレルを押付けるブロックを設け、スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換に際し、前記U字溝に嵌合しているブロックを取外した後、加熱バレルをU字溝に沿って取り出すことを特徴とするスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動式射出成形機のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法に関する

【背景技術】
【0002】
従来の電動式射出成形機の射出成形機の射出ユニットについて図6および図7により説明すると、射出ユニット1はホッパ2から投入された材料樹脂3を加熱バレル4に設けた加熱装置による熱と、計量モータ5による加熱バレル4内に装着されたスクリュ6の回転によるせん断熱により加熱溶融し、溶融樹脂としてスクリュ6の先端部に計量した後、射出ユニット1を搭載した摺動ベース7をノズルタッチ用モータ8により回転するボールねじ9により前進(図中左進)させ、加熱バレル4先端のノズルを型締装置にある金型10にノズルタッチさせ、射出用モータ11によりボールねじ12を回転させ、これに螺合するスクリュ6を前進させ、前述の計量した溶融樹脂を射出し、冷却硬化させた後、成形品として取り出すようにしている。
【0003】
そしてこの加熱バレル4内に回転および進退自在に挿入されたスクリュ6は成形品に対応して色替え、材料替えを行う際、加熱バレル4内に残留している前の成形で使用した材料樹脂を効果的に取り除くため、加熱バレル4からスクリュ6を引き出し、掃除することが行われている。
この加熱バレル4からのスクリュ6の引き出しは、スクリュ6の引き出し側に型締装置があり、引き出しスペースが確保できないため、図6に示すように射出ユニット1を鎖線1aのように旋回させて型締装置を避けることが行われている。
【特許文献1】特開2003‐340867号公報
【特許文献2】特開2003‐39482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスクリュ引き出し方法は射出ユニットを搭載した摺動ベースを旋回する必要があり、その旋回装置も複雑な構成で、製作費用もかかった。また射出ユニットは重量があり、旋回作業およびそれに続くスクリュ引き出し作業は面倒で、時間もかかるという欠点があった。
【0005】
そのためには、スクリュが挿入されたままの加熱バレルを射出ユニットから取外し、別のスクリュが挿入された加熱バレルと交換するスクリユと加熱バレルを一組とするカートリッジ方式にすれば面倒な射出ユニットの旋回作業およびそれに続くスクリュ引き出し作業は必要が無く、作業は簡単で短時間に済み、従来の欠点は解消されるという結論に達し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するため本発明は射出時のスクリュの進行をスクリュの後方に設けたボールねじの回転により行う電動式射出成形機のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法において、加熱バレルを片持ち支持する固定プレートに表面からバレル軸方向に加熱バレルが通過可能な幅のU字溝を設け、このU字溝に嵌合し、U字溝の底面に加熱バレルを押付けるブロックを設け、スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換に際し、前記U字溝に嵌合しているブロックを取外した後、加熱バレルをU字溝に沿って取り出すことを特徴とするスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法とした。
【0007】
また固定プレートに表面は固定プレートの上面であることを特徴とするスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法とすれば最適である。
【0008】
さらに固定プレートに表面は固定プレートの側面であることを特徴とするスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法とすれば好適である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば重い射出ユニットを旋回させる必要もなく、スクリュを引き出し作業もする必要が無いので、従来からあるスクリュ引き出し作業の欠点が取り除かれた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の1実施形態を2本のボールねじを回転させて射出を行う電動式射出成形機を例に採り図1ないし図4により説明する。
射出ユニット20は内部にスクリュ21が回転可能にかつ、所定距離だけ移動可能に挿入され、先端部にノズル23を取り付けた加熱バレル22を片持ち状態で固着した固定プレート24と、射出ユニット20の後部に設けた後部プレート25の間をタイバー26により連結し、この両プレート24と25の間に可動プレート27を設け、同可動プレート27がスクリュ21後端部を片持ち状態に回転可能に固着し、射出および計量時にタイバー26にガイドされて前後に所定距離だけ移動するようにしてある。
【0011】
この可動プレート27には回転自在であるが軸方向に移動しない伝達軸28を取り付け、伝達軸28の貫通孔にスクリュ21の後端部を挿入し、キー29により計量用モータ30の回転をタイミングベルト31およびプーリ32を介してスクリュ21に伝達するようにしている。
伝達軸28の前端面および後端面には夫々図3、図4で示すように割りカラー33と押え板34をねじ35、36により取り付け、スクリュ21の抜け防止としている。
【0012】
可動プレート27の後部プレート25に対向した面Aのスクリュ後端の延長線上から外れた対称位置に2本のボールねじ37が固着してあり、夫々後部プレート25に図示してない射出用モータからタイミングベルト(図示せず)およびプーリ38により回転のみ行い、軸方向に固定されたナット39に螺合していて射出および計量時に前記ナット39が回転すると可動プレート27が前後(図中左右)に移動し、可動プレート27にナット39を介して固定されたスクリュ21が加熱バレル22内を所定距離だけ進退する。
【0013】
前記固定プレート24の上面からは図2に示すように加熱バレル22の径より僅かに広幅で、底面が加熱バレル22の径より僅かに大径のU字溝が設けてあり、加熱バレル22の固定プレート24への取り付け時にはブロック40がこのU字溝内に嵌着され、加熱バレル22を上から押え、ボルト41により固定するとともに、固定プレート24の前面Bで割カラー42およびねじ43により加熱バレル22の軸方向の動きを停止している。
【0014】
以上のように構成されているので、スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換に際しスクリュ21が前進限状態のまま図示してないノズルタッチ装置により加熱バレル22先端のノズル23をノズルタッチ状態から後退させ、図5に示すように鎖線で示す割りカラー33および押え板34を取外し、キー29を抜き、可動プレート27を前進限から後退限まで後退移動させると、スクリュ21は加熱バレル22に挿入されたままの状態で、可動プレート27から解放される。
【0015】
次いで可動プレート27の前面Bで加熱バレル22の軸方向の動きを停止している割カラー42およびねじ43を取り外すとともに、ボルト41を外し、ブロック40をU字溝内から外すと、加熱バレル22は可動プレート27から解放され、上方向(矢印a)にクレーン等により鎖線22aで示すよう吊り上げることができ、別のスクリュが挿入された加熱バレルと交換することができる。
【0016】
前述の説明のように、可動プレート27のU字溝を可動プレート27の上面から設けた例を説明したが、これに限らず同様に可動プレート27の側面からU字溝を設けることも可能である。
【0017】
また前述の説明は2本のボールねじの回転により射出を行った電動式射出成形機であったが、勿論これに限ることなく、図6に示すように1本のボールねじの回転により射出を行う電動式射出成形機であってもかまわない。
【0018】
図6に示す1本のボールねじの電動式射出成形機に付いて説明すると、射出ユニット50は内部にスクリュ51が回転可能にかつ、所定距離だけ移動可能に挿入され、先端部にノズル53を取り付けた加熱バレル52を片持ち状態で固着した固定プレート54と、射出ユニット50の後部に設けた後部プレート55の間をタイバー56により連結し、この両プレート54と55の間に可動プレート57を設け、同可動プレート57がスクリュ51後端部を片持ち状態に回転可能に固着し、射出および計量時にタイバー56にガイドされて前後に所定距離だけ移動するようにしてある。
【0019】
この可動プレート57には回転自在であるが軸方向に移動しない伝達軸58を取り付け、この伝達軸58にスクリュ51の後端部を挿入し、キー59により計量用モータ60の回転をタイミングベルト61およびプーリ62を介してスクリュ51に伝達するようにしている。
伝達軸58の前端面にはスクリュ51の溝に挿入された割りカラー63を前述の実施例で説明したようにねじ(図示してない)により取り付け、抜け防止としている。
【0020】
伝達軸58の後端面のスクリュ軸延長線上にはボールねじ64が設けてあり、後部プレート55に設けた射出用モータ65からタイミングベルト66およびプーリ67により回転のみ行い、軸方向に固定されたナット68に螺合していて射出および計量時に前記ナット68が回転すると可動プレート57が前後(図中左右)に移動し、可動プレート57に伝達軸58を介して固定されたスクリュ51が加熱バレル52内を所定距離だけ進退する。
【0021】
前記固定プレート54の上面からは図7に示すように加熱バレル52の径より僅かに広幅で、底面が加熱バレル52の径より僅かに大径のU字溝が設けてあり、加熱バレル52の固定プレート54への取り付け時にはブロック69がこのU字溝内に嵌着され、加熱バレル52を上から押え、ボルト70により固定するとともに、固定プレート54の前面で加熱バレル52の外周面に設けた溝に割カラー71を挿入し、ねじ72で固定プレート54前面に取り付け加熱バレル52の軸方向の動きを停止している。
【0022】
以上のように構成されているので、スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換に際し、スクリュ51が前進限状態のまま図示してないノズルタッチ装置により加熱バレル52先端のノズル53をノズルタッチ状態から後退させ、スクリュ51を伝達軸58の前端面に固定している割りカラー63を取外し、キー59を抜き、可動プレート57を前進限から後退限まで後退移動させると、スクリュ51は加熱バレル52に挿入されたままの状態で、可動プレート57から解放される。
【0023】
次いで加熱バレル52の軸方向の動きを停止している固定プレート54前面の割カラー72を取外すとともに、ボルト70を外し、ブロック69をU字溝内から外すと、加熱バレル52は可動プレート57から解放され、前述のように上方向にクレーン等により吊り上げることができ、別のスクリュが挿入された加熱バレルと交換することができる。
【0024】
このように構成され、スクリユと加熱バレルを一組とするカートリッジ方式にとしたので、面倒で時間もかかるスクリュ引き出し作業も行うことなくスクリュが挿入された加熱バレルと交換することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明が適用される2本のボールねじを用いた電動式射出成形機の1実施形態を示し、スクリュの前進限を示す説明図である。
【図2】この発明が適用される2本のボールねじを用いた電動式射出成形機の1実施形態を示し、図1のC−C断面図である。
【図3】この発明が適用される2本のボールねじを用いた電動式射出成形機の1実施形態を示し、図1の拡大したD−D断面図である。
【図4】この発明が適用される1実施形態を示し図1の拡大したZ矢視図である。
【図5】可動プレートが後退し、スクリュが挿入された加熱バレルを機体(射出ユニット)外に取り出し可能状態とした説明図である。
【図6】この発明が適用される他の実施形態を示し、1本のボールねじを用いた電動式射出成形機のスクリュの前進限を示す説明図である。
【図7】この発明が適用される他の実施形態を示し、1本のボールねじを用いた電動式射出成形機の説明図で、図6のE−E断面図の一部である。
【図8】従来の電動式射出成形機の概要を説明した正面図である。
【図9】従来の電動式射出成形機の概要を説明した平面図の一部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
20、50 射出ユニット
21、51 スクリュ
22、52 加熱バレル
23、53 ノズル
24、54 固定プレート
25、55 後部プレート
26、56 タイバー
27、57 可動プレート
28、58 伝達軸
29、59 キー
30、60 計量モータ
31、61、66 タイミングベルト
32、38、62、67 プーリ
33、42、63、71 割りカラー
34 押え板
35、36、43、72 ねじ
37、64 ボールねじ
39、68 ナット
40、69 ブロック
41、70 ボルト
65 射出用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出時のスクリュの進行をスクリュの後方に設けたボールねじの回転により行う電動式射出成形機のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法において、加熱バレルを片持ち支持する固定プレートに表面からバレル軸方向に加熱バレルが通過可能な幅のU字溝を設け、このU字溝に嵌合し、U字溝の底面に加熱バレルを押付けるブロックを設け、スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換に際し、前記U字溝に嵌合しているブロックを取外した後、加熱バレルをU字溝に沿って取り出すことを特徴とするスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法。
【請求項2】
前記固定プレートに表面は固定プレートの上面であることを特徴とする請求項1記載のスクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法。
【請求項3】
前記固定プレートに表面は固定プレートの側面であることを特徴とする請求項1記載の
スクリュを挿入したままの加熱バレルの交換方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−36552(P2010−36552A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205288(P2008−205288)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】