説明

電動機及びこれを用いた電気掃除機

【課題】大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供する。
【解決手段】電動機は、固定子と当該固定子の内側に配置され回転軸35周りに回転可能な電機子32とを備えている。電機子32は、電機子鉄心40と、電機子鉄心40に巻回される電機子巻線36と、電機子鉄心40の端面と電機子巻線36とを絶縁するためのインシュレータ50と、を有しており、電機子32において、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58を含む軸方向におけるインシュレータ50の厚さD領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心60が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及びこれを用いた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気掃除機に用いられる電動機は、一般に、電機子の回転軸(シャフト)の両端がそれぞれ軸受で支承され、電機子が固定子の内側で回転するように構成されている。この電機子は、回転軸に固定された電機子鉄心を備えており、電機子鉄心に電機子巻線が巻回されている。また、固定子は、電機子の周囲を取り囲むように配置される固定子鉄心を備えており、固定子鉄心に界磁巻線が巻回されている。
【0003】
このような電機子や固定子には、鉄心と巻線との絶縁を確保するために、絶縁部材が設けられている(例えば、特許文献1〜5参照)。絶縁部材として、例えば、巻線が巻装されるスロットの内面と巻線とを絶縁するためのシート状絶縁体や、鉄心の端面と巻線とを絶縁するための絶縁端板が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−56504号公報
【特許文献2】特開平6−153432号公報
【特許文献3】特開平10−248214号公報
【特許文献4】特開平10−257721号公報
【特許文献5】特開平1−283037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気掃除機に用いられる電動機は、大型化させることなく高出力化を達成することが要望されている。具体的には、トルク発生のための磁束量を増加させつつ、よりコンパクトにした電動機が求められている。
【0006】
しかしながら、磁束量を増加させるために巻線の巻数を増やしたり鉄心を大きくしたりすれば、電動機の軸方向寸法が増大する。一方、電動機の軸方向寸法の増大を抑えるために鉄心の端面に設けられる絶縁端板の厚さを薄くすれば、絶縁距離の確保が困難となる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、固定子と当該固定子の内側に配置され回転軸周りに回転可能な回転子とを備えた電動機であって、前記回転子及び前記固定子の少なくとも一方は、鉄心と、前記鉄心に巻回される巻線と、前記回転軸の軸心方向における前記鉄心の端面と前記巻線とを絶縁するためのインシュレータと、を有し、前記回転子及び前記固定子の少なくとも一方において、前記インシュレータの前記鉄心側の端面を含む前記軸心方向における前記インシュレータの厚さ領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心を配置したことを特徴とする。
【0009】
また、前記目的を達成するために、本発明は、前記電動機を備えることを特徴とする電気掃除機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の電気掃除機に搭載した電動送風機の断面図である。
【図3】電動機における電機子の斜視図である。
【図4】電機子鉄心を回転軸の軸心方向から見た図である。
【図5】電機子のインシュレータ及び補助鉄心の斜視図である。
【図6】(a)は電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図であり、(b)は(a)のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図7】固定子鉄心を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は軸方向から見た図である。
【図8】固定子のインシュレータを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は固定子鉄心と反対側の軸方向から見た図である。
【図9】電機子のインシュレータ及び補助鉄心周辺の回転軸に平行な平面で切断した断面図である。
【図10】(a)(b)は変形例に係る電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図である。
【図11】変形例に係る電機子のインシュレータ及び補助鉄心周辺の回転軸に平行な平面で切断した断面図である。
【図12】第2実施形態に係る電機子のインシュレータの斜視図である。
【図13】第2実施形態に係る固定子のインシュレータ及び補助鉄心の斜視図である。
【図14】(a)は第2実施形態に係る固定子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における固定子鉄心側から見た図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図15】(a)は電機子のインシュレータ及び補助鉄心のその他の斜視図である。(b)は(a)の電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図である。
【図16】(a)電機子のインシュレータ及び補助鉄心のその他の斜視図である。(b)は(a)の電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気掃除機を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明における前後の方向は、図1に示す前後の方向を基準とする。
【0013】
図1に示すように、電気掃除機10は、ケースC内の前側に集塵室12が区画されると共に、後側に電動送風機室15が区画されている。この集塵室12と電動送風機室15とは、フィルタ部14を介して連通している。
【0014】
集塵室12には、紙パック13が収納されている。この紙パック13の開口はホース継ぎ手11側に位置するように配置されている。なお、図示しないが、ホース継ぎ手11にはホースの一端が接続され、このホースの他端には、手元操作部、延長管及び吸口体がこの順番に接続される。
【0015】
電動送風機室15には、電動送風機20が収納されている。この電動送風機20は、その前側に形成された後記する送風機入口21aがフィルタ部14側に向くように、そして、その後側に形成された後記する送風機出口22aが電動送風機室15の後端側に向くように配置され、防振ゴム17を介して電動送風機室15内に懸架されている。
【0016】
電気掃除機10は、電動送風機20が送風機入口21aから吸い込んだ空気を昇圧した後に送風機出口22aから排出する。この際、送風機出口22aから排出された空気は、ケースCに形成された図示しない排気口からケースC外に排出される。
【0017】
その一方で、電気掃除機10は、電動送風機20が空気を送風機入口21aから吸い込むことによって、塵埃を同伴する空気を、前記した吸口体(図示せず)等を介してホース継ぎ手11側から集塵室12内に吸引する。吸引された塵埃を同伴する空気は、紙パック13内に導入される。そして、紙パック13でろ過された空気は、フィルタ部14を介して電動送風機20の送風機入口21aから吸い込まれることとなる。この際、集塵室12内に吸引された空気に同伴する塵埃の大部分は、紙パック13で取り除かれると共に、フィルタ部14を空気が通過することによって細かな塵埃も取り除かれる。
【0018】
なお、本実施形態の電気掃除機10では、紙パック13を使用する方式について説明しているが、本発明はサイクロン方式のものであってもよい。ちなみに、サイクロン方式の電気掃除機は、集塵室12に対応する部分にサイクロン室が形成されることとなる。
【0019】
次に、電動送風機20について説明する。
図2は、図1の電気掃除機に搭載した電動送風機の断面図である。図2に示すように、電動送風機20は、前方に配置されるファンケーシング21と後方に配置されるハウジング22とが一体となって略円筒形状の外郭を形成すると共に、この外郭内に送風機構23と後記する電動機30とを備えて構成されている。
【0020】
ファンケーシング21は、その前側に、ファンケーシング21内に空気を流入させる送風機入口21aを有しており、ハウジング22は、ファンケーシング21の送風機入口21aから吸入した空気を排出する送風機出口22a(図2中、仮想線で示す)を有している。
【0021】
送風機構23は、遠心ファン24とディフューザ25とを備え、ファンケーシング21内に格納されている。遠心ファン24は、後記する電動機30の回転軸35にナット等の締結具で固定され、起動した電動機30によって回転軸35周りに回転するようになっている。ディフューザ25は、遠心ファン24の遠心方向に配置されたディフューザベーン25aと、このディフューザベーン25aの後方に、仕切板25bを介して配置されたリターンガイドベーン25cとで構成されている。
【0022】
以上のような電動送風機20では、電動機30によって回転した遠心ファン24は、送風機入口21aから吸い込んだ空気を昇圧して吸込気流を発生させ、ディフューザ25は吸込気流をハウジング22内の風路に導く。その後、吸込気流は、前記したように、送風機出口22a(図1参照)を介して排出される。
【0023】
次に、電動機30について更に詳しく説明する。
図2に示すように、電動機30は、固定子31と、電機子(回転子)32と、ブラシ33とを備えて構成され、ハウジング22内に格納されている。
【0024】
固定子31は、電機子32の周囲を取り囲むように配置される固定子鉄心(鉄心)70と、この固定子鉄心70に巻回された界磁巻線(巻線)71とを備えて構成されている。
【0025】
電機子32は、固定子31の内側に前後方向に延びるように配置され、その両端を軸受34で支承される回転軸35と、この回転軸35に取り付けられる電機子鉄心(鉄心)40と、この電機子鉄心40に巻回された電機子巻線(巻線)36と、電機子巻線36と電気的に接続されると共に回転軸35の後部に取り付けられる整流子37とを備えている。
なお、固定子鉄心70の内周面と電機子鉄心40の外周面とは、所定のギャップを有するように配置されている。
【0026】
ブラシ33は、ここでは整流子37を挟むように一対設けられ、これらはハウジング22の後部に取り付けられたブラシホルダ38に保持されている。また、ブラシ33は、回転軸35と共に回転する整流子37に対して摺接可能となっていると共に、固定子31の界磁巻線71と電気的に接続されている。電動機30は、ここでは直巻式の整流子モータである。
【0027】
この電動機30においては、電動機30の図示しない端子間に商用交流電圧が印加されると、電動機電流は、界磁巻線71を介してブラシ33に流れる。また、ブラシ33と整流子37との摺接によって電機子32の電機子巻線36に電流が流れる。この際、整流子37の整流作用に基づいて固定子31及び電機子32にそれぞれ生起した磁束の相互作用によって、固定子31の内側で電機子32が電動機電流の大きさに応じた所定の回転速度及びトルクで回転する。
【0028】
次に、電動機30の電機子32について更に詳しく説明する。
図3は、電動機における電機子の斜視図であり、図4は、電機子鉄心を回転軸の軸心方向(以下、「軸方向」ともいう)から見た図である。なお、図3中、説明の都合上、電機子巻線36の記載は省略している。
【0029】
図3に示すように、電機子32は、略円柱状の外形を有する電機子鉄心40と、略円柱状の外形を有する整流子37とが、回転軸35と同心になるように取り付けられて構成されている。また、電機子32は、軸方向における電機子鉄心40の端面に当接して配置されるインシュレータ50を更に備えている。
【0030】
図4に示すように、電機子鉄心40は、平面形状が回転軸35(図3参照)と同心の円となる円柱形状のコアバック部41と、このコアバック部41の外周に沿って放射状に複数延出したティース部42とで構成されている。この電機子鉄心40は、例えば、図4に示すような平面形状の電磁鋼板(ケイ素鋼板)を複数枚積層することによって形成されている。
【0031】
コアバック部41の中心には、回転軸35(図3参照)の挿通孔41aが形成されている。この挿通孔41aの内径は、回転軸35の外径よりもやや小さめに形成されており、この挿通孔41aに回転軸35が圧入されることで、電機子鉄心40は回転軸35に固定される。
【0032】
また、ティース部42は、コアバック部41から延出する延出部42aと、延出部42aの先端で電機子鉄心40の外周面を形成する周面形成部42bとで形成されている。
【0033】
このような隣接するティース部42同士の間に、スロット43が形成されている。このスロット43の内面には、図3に示すように、シート状絶縁体44が配置され、電機子巻線36(図2参照)は、このシート状絶縁体44を介してティース部42に巻回され、スロット43内の前後方向に電機子巻線36の束が延在することとなる。
【0034】
なお、図3中、符号45は、スロットクサビを示しており、電機子巻線36(図2参照)がスロット43内から飛び出さないようにするものである。また、図3には示されていないが、スロット43内から延出する電機子巻線36は、電機子鉄心40の端面上にインシュレータ50を介して配置されて、この端面上で盛り上がることとなる(図2参照)。
【0035】
図3に示すように、整流子37は、複数の短冊状の整流子片37aが回転軸35の周りに等間隔に並ぶように配置されている。この整流子片37aには、電機子巻線36(図2参照、以下同じ)の端部が電気的に接続されている。
【0036】
インシュレータ50は、前記したように電機子鉄心40の端面上で盛り上がるように配置される電機子巻線36と、電機子鉄心40の端面とを絶縁するものである。
【0037】
図3に示すように、電機子32のインシュレータ50は、電機子鉄心40のコアバック部41(図4参照)に当接してコアバック部41と電機子巻線36とを絶縁するコアバック絶縁部51と、電機子鉄心40のティース部42(図4参照)に当接してティース部42と電機子巻線36とを絶縁するティース絶縁部52と、回転軸35の外周面に当接して回転軸35と電機子巻線36とを絶縁する回転軸絶縁部53とを備えている。これらの絶縁部51,52,53は、ここでは一体に成形されている。
【0038】
図5は、電機子のインシュレータ及び補助鉄心の斜視図である。図6(a)は電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図であり、図6(b)は図6(a)(後記の図15(b)及び図16(b)も同様)のA−A線に沿う拡大断面図である。
【0039】
図5に示すように、コアバック絶縁部51は、電機子鉄心40のコアバック部41(図4参照)と略同じ平面形状を有する板体で形成されると共に、ティース絶縁部52は、ティース部42の延出部42a(図4参照)と略同じ平面形状を有する板体で形成されており、コアバック絶縁部51とティース絶縁部52とは、一体となって歯車状に形成されている。また、回転軸絶縁部53は、円筒状に形成されている。ここでは、回転軸絶縁部53の内径は、コアバック部41の挿通孔41a(図4参照)の内径と同じに設定されている。
【0040】
このようなインシュレータ50の材質としては、剛性を有する絶縁材であれば特に制限はなく、例えば、絶縁性プラスチックが挙げられる。
【0041】
第1実施形態では、電機子32において、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58(図6(b)参照)を含む軸方向におけるインシュレータ50の厚さD領域(図6(b)参照)の内部に、電機子巻線36との絶縁距離を保持して磁性体を含む補助鉄心60が配置されている。なお、インシュレータ50の電機子鉄心40と反対側の端面は、軸方向におけるインシュレータ50の厚さD領域の内部には含まれない。つまり、補助鉄心60は、インシュレータ50の電機子鉄心40と反対側の端面に露呈することはない。
【0042】
補助鉄心60は、ここでは、電機子鉄心40とは異なる磁気特性を有する磁性体から構成されており、例えば冷間圧延鋼板(SPCC)や、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)等の一般的な鋼板が使用されている。電機子鉄心40の材料である電磁鋼板は鉄損が少なくエネルギ効率が良いが、一般に厚さが薄いため、補助鉄心60の厚さを例えば1mmにしたい場合には、複数枚の電磁鋼板を重ねて使用しなくてはならず、作業性(組立性)が悪くなる。そこで、SPCC等の鋼板一枚で補助鉄心60を構成することにより、作業性の向上を図っている。
【0043】
但し、補助鉄心60として、電機子鉄心40と同じ電磁鋼板が使用されてもよいことは言うまでもない。あるいは、補助鉄心60として、例えば電機子鉄心40よりも鉄損が少なく、飽和磁束密度・透磁率の大きい材料が使用されてもよい。このようにすれば、電動機30の性能をより向上させることができる。
【0044】
図6(a)に示すように、補助鉄心60は、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58(図6(b)参照)に形成された凹部54内に配置されている。ここでは、補助鉄心60は、インシュレータ50にインサート成形(一体成形)により設けられる。このような構成によれば、補助鉄心60付きのインシュレータ50を一部品として容易に取り扱うことが可能となるため、電動機30の組立性が向上する。
【0045】
但し、凹部54が形成されたインシュレータ50と補助鉄心60とを別体に構成して、電動機30の製造時に組み付けるようにしてもよい。このような構成によれば、インサート成形を実施しなくてもよいため、金型に対する投資を低減できる。
【0046】
インシュレータ50の凹部54は、コアバック絶縁部51に形成された環状凹部55と、ティース絶縁部52に形成された複数の帯状凹部56とから構成される。これに対応して、補助鉄心60は、環状凹部55内に配置される環状板部61と、複数の帯状凹部56内にそれぞれ配置され環状板部61の外周面から外方に延出した複数の帯状板部62とを備えている。このように構成すれば、帯状板部62と環状板部61とを介した連続した磁束流路を形成することができる。
【0047】
補助鉄心60の内面63は、ここでは、電機子鉄心40のコアバック部41の挿通孔41a(図4参照)の内径と同じ径に設定されている。また、補助鉄心60の外面64の径は、電機子鉄心40の外周面を形成する周面形成部42b(図4参照)の外径と等しい。なお、ここでの「等しい」とは、全く等しい場合のほか、ほぼ等しい場合を含む概念として使用する。
【0048】
図6(b)に示すように、補助鉄心60(62)の電機子鉄心40に対向する面は、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58と同一面上となるように設定されている。したがって、凹部54(56)内に補助鉄心60が配置されたインシュレータ50を電機子鉄心40の軸方向の端面に当接させるときには、インシュレータ50及び補助鉄心60の双方が電機子鉄心40の端面に接触する。
【0049】
ここで、インシュレータ50のスロット43(図3参照)側に臨む部分には、略U字形状の壁部57が形成される。この壁部57は、凹部54の内面と、コアバック絶縁部51の外周面及びティース絶縁部52の側面との間に規定される。このように、補助鉄心60の、スロット43(図3参照)側の側面と、電機子鉄心40と反対側の端面とが、インシュレータ50によって覆われる。これにより、補助鉄心60と電機子巻線36(図2参照)との間に、インシュレータ50の一部が少なくとも絶縁性を保持できる厚さ分だけ介在することになる。
【0050】
図7は、固定子鉄心を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は軸方向から見た図である。図8は、固定子のインシュレータを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は固定子鉄心と反対側の軸方向から見た図である。
【0051】
図7に示すように、固定子鉄心70は、ヨーク部72と、互いに対向する2つの磁極部73とで構成されている。ヨーク部72は、一部直線部分を含む円環状を呈しており、対向する2箇所の内側に磁極部73が突出形成されている。磁極部73は、電機子32の外周に沿った円弧を備え、この円弧の中心近傍でヨーク部72に結合されている。固定子鉄心70は、図7(b)に示すような平面形状の電磁鋼板(ケイ素鋼板)を複数枚積層することによって形成されている。
【0052】
そして、この固定子鉄心70の磁極部73に、シート状絶縁体(図示せず)を介して界磁巻線71(図2参照)が巻回される。磁極部73とヨーク部72との間にスロット74が形成されており、このスロット74内の前後方向に界磁巻線71の束が延在することになる。
【0053】
また、図2に示すように、固定子31は、軸方向における固定子鉄心70の端面に当接して配置されるインシュレータ80を更に備えている。インシュレータ80は、固定子鉄心70の端面上で盛り上がるように配置される界磁巻線71と、固定子鉄心70の端面とを絶縁するものである。
【0054】
図7及び図8に示すように、固定子31のインシュレータ80は、固定子鉄心70のヨーク部72に当接してヨーク部72と界磁巻線71とを絶縁するヨーク絶縁部81と、固定子鉄心70の磁極部73に当接して磁極部73と界磁巻線71とを絶縁する磁極絶縁部82と、界磁巻線71の回転軸35の軸心に臨む側と軸方向端部側とを位置決めする規制部83とを備えている。インシュレータ80の材質としては、剛性を有する絶縁材であれば特に制限はなく、例えば、絶縁性プラスチックが挙げられる。
【0055】
次に、図9を参照して、第1実施形態に係る電動機の作用効果について説明する。
図9は、電機子のインシュレータ及び補助鉄心周辺の回転軸に平行な平面で切断した断面図である。
【0056】
図9中、符号41bはコアバック部41の外縁角部、符号44はシート状絶縁体、符号51はコアバック絶縁部、符号52はティース絶縁部、符号53は回転軸絶縁部を示す。なお、図9中、電機子巻線36の数は、現実の数を示すものではなく、模式的に描かれている。
【0057】
図9に示すように、この電動機30(図2参照)の電機子32においては、電機子鉄心40のティース部42に巻回された電機子巻線36は、スロット43内に充填されると共に、スロット43から延出して電機子鉄心40の端面上で盛り上がる。この盛り上がった電機子巻線36は、軸受34寄りに所定の高さhでコイルエンドを規定する。
【0058】
このような電機子32においては、シート状絶縁体44がスロット43の内壁と電機子巻線36とを絶縁する。また、電機子鉄心40の端面に配置されたインシュレータ50が、スロット43から延出して電機子鉄心40の端面上で盛り上がった電機子巻線36と、回転軸35及び電機子鉄心40とを絶縁する。
【0059】
ここで、コアバック部41の外縁角部41bにおいて、コアバック部41と電機子巻線36との間に絶縁距離(沿面距離)L1が確保される。また、ティース部42の側縁角部42c(図6(b)参照)においても、ティース部42と電機子巻線36との間に絶縁距離(沿面距離)L1が確保される。なお、軸受34と電機子巻線36のコイルエンドとの間には絶縁距離(空間距離)L2が確保される。
【0060】
前記したように、第1実施形態では、電機子32において、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58を含む軸方向におけるインシュレータ50の厚さD領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心60が配置されている。
【0061】
このような第1実施形態によれば、電機子32のインシュレータ50に設けられた補助鉄心60の存在によって、より多くの磁束を集めることができる。これにより、電機子32においてトルク発生に寄与する磁束量を増加させることが可能となり、電動機30の回転トルクを向上させることができる。しかも、補助鉄心60をインシュレータ50の厚さD領域の内部に配置して回転トルクの向上を図っているため、電動機30の軸方向寸法の増大を抑えることができる。
【0062】
また、補助鉄心60をインシュレータ50の厚さD領域の内部に配置して絶縁性を担保しているため、コアバック部41の外縁角部41bやティース部42の側縁角部42c(図6(b)参照)においても、インシュレータ50の厚さDと同じ寸法の絶縁距離L1を維持することができる。
【0063】
すなわち、第1実施形態によれば、大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供することができる。
【0064】
更に、補助鉄心60にも磁束が通るため、全体として磁束密度の平準化(緩和)が図られる。これにより、鉄損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。また、相対的に電機子巻線36の巻数を減らして、より太い巻線にすることができる。これにより、銅損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。
【0065】
図10(a)(b)は、変形例に係る電機子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における電機子鉄心側から見た図である。すなわち、電機子の補助鉄心は、図6(a)に示す平面形状に限定されるものではなく、その一部から構成されていてもよい。
【0066】
図10(a)に示す変形例において、インシュレータ50aの電機子鉄心40(図3参照)側の端面には、主としてティース絶縁部52aに複数の帯状凹部56aが形成されており、これに対応して、補助鉄心60aは、複数の帯状凹部56a内にそれぞれ配置される複数の帯状板部62aを備えている。この帯状板部62aの長さは適宜変更でき、例えば、内径側の端面がコアバック部41の挿通孔41a(図4参照)の内径と同じ位置に設定されてもよい。なお、図10(a)中、符号51aはコアバック絶縁部を示す。
【0067】
また、図10(b)に示す変形例において、インシュレータ50bの電機子鉄心40(図3参照)側の端面には、コアバック絶縁部51bに環状凹部55bが形成されており、これに対応して、補助鉄心60bは、環状凹部55bに配置される環状板部61bを備えている。なお、図10(b)中、符号52bはティース絶縁部を示す。
このような図10(a)(b)に示す変形例によっても、前記したインシュレータ50及び補助鉄心60と同種の作用効果を奏することができる。
【0068】
図11は、変形例に係る電機子のインシュレータ及び補助鉄心周辺の回転軸に平行な平面で切断した断面図である。図11に示す変形例のインシュレータ50cは、図9に示すインシュレータ50とは、コアバック絶縁部51cとティース絶縁部52cとが一体に形成されている点では同様であるが、コアバック絶縁部51cと回転軸絶縁部53cとが別体で構成されて組み合わせられている点で相違している。そして、この変形例の補助鉄心60cの内面63aの径は、コアバック絶縁部51cの内径よりも大きく設定されている。これにより、コアバック部41の外縁角部41bにおいて、インシュレータ50cの厚さDと同じ寸法の絶縁距離L1を確保することができる。このような図11に示す変形例によっても、前記したインシュレータ50及び補助鉄心60と同種の作用効果を奏することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成及び作用は、この第2実施形態に取り込まれるものとして詳細な説明を省略し、相違する点について主に説明する。
【0070】
図12は、第2実施形態に係る電機子のインシュレータの斜視図である。図13は、第2実施形態に係る固定子のインシュレータ及び補助鉄心の斜視図である。図14(a)は第2実施形態に係る固定子のインシュレータ及び補助鉄心を軸方向における固定子鉄心側から見た図であり、図14(b)は図14(a)のB−B線に沿う拡大断面図である。
【0071】
図12に示すように、第2実施形態の電機子のインシュレータ50dは、第1実施形態と同様な、コアバック絶縁部51b、ティース絶縁部52b、及び回転軸絶縁部53bを備え、一体に成形されている。但し、第2実施形態の電機子には補助鉄心60が設けられておらず、したがって、インシュレータ50dには補助鉄心60を配置するための凹部54が形成されていない点で、第1実施形態と相違している。
【0072】
また、図13及び図14に示すように、第2実施形態の固定子のインシュレータ80aは、第1実施形態と同様な、ヨーク絶縁部81a、磁極絶縁部82a、及び規制部83aを備えている。但し、第2実施形態の固定子においては、インシュレータ80aの固定子鉄心70(図2参照)側の端面84(図14(b)参照)を含む軸方向におけるインシュレータ80aの厚さDa領域(図14(b)参照)の内部に、界磁巻線71との絶縁距離を保持して磁性体を含む補助鉄心90が配置されている点で、第1実施形態と相違している。補助鉄心90の材質は補助鉄心60と同様である。
【0073】
図14(a)に示すように、補助鉄心90は、インシュレータ80aの固定子鉄心70側の端面84(図14(b)参照)に形成された凹部85内に配置されている。ここでは、補助鉄心90は、インシュレータ80aにインサート成形(一体成形)により設けられる。但し、凹部85が形成されたインシュレータ80aと補助鉄心90とを別体に構成して、電動機の製造時に組み付けるようにしてもよい。
【0074】
凹部85は、ヨーク絶縁部81aの内側、及び磁極絶縁部82aのスロット74に臨む側に、壁部86を残して他の部分が除去されるようにして、インシュレータ80aの端面84に形成されている。そして、補助鉄心90の外形形状は、固定子鉄心70の平面形状(図7(b)参照)に対して、インシュレータ80aの壁部86に対応する部分が除去された形状に形成されている。つまり、固定子の補助鉄心90の磁極部内径は、固定子鉄心70の磁極部内径と等しい。なお、ここでの「等しい」とは、全く等しい場合のほか、ほぼ等しい場合を含む概念として使用する。
【0075】
なお、補助鉄心90は、図14(a)に示す平面形状に限定されるものではなく、その一部から構成されていてもよい。例えば、補助鉄心90は、ヨーク絶縁部81aのみに配置される環状の板部材若しくは磁極部73に対応する位置で分割された一対のアーチ状の板部材であってもよく、あるいは磁極絶縁部82aのみに配置される略矩形状の板部材であってもよい。
【0076】
図14(b)に示すように、補助鉄心90の固定子鉄心70に対向する面は、インシュレータ80aの固定子鉄心70側の端面84と同一面上となるように設定されている。したがって、凹部85内に補助鉄心90が配置されたインシュレータ80aを固定子鉄心70の軸方向の端面に当接させるときには、インシュレータ80a及び補助鉄心90の双方が固定子鉄心70の端面に接触する。
【0077】
ここで、インシュレータ80aの壁部86は、凹部85の内面と、ヨーク絶縁部81aの内側面及び磁極絶縁部82aのスロット74(図7参照)に臨む側面との間に規定される。このように、補助鉄心90のスロット74側の側面がインシュレータ50によって覆われる。これにより、補助鉄心90と界磁巻線71(図2参照)との間に、インシュレータ80aの一部が少なくとも絶縁性を保持できる厚さ分だけ介在することになる。
【0078】
このような固定子においては、シート状絶縁体75(図14(b)参照)がスロット74(図7参照)の内壁と界磁巻線71(図2参照)とを絶縁する。また、固定子鉄心70の端面に配置されたインシュレータ80aが、スロット74から延出して固定子鉄心70の端面上で盛り上がった界磁巻線71と固定子鉄心70とを絶縁する。
【0079】
ここで、磁極部73の側縁角部73a(図14(b)参照)において、磁極部73と界磁巻線71との間に絶縁距離(沿面距離)L1が確保される。なお、磁極絶縁部82aの中央部には切欠き部84aが形成されており、この切欠き部84aにおいて補助鉄心90が外部に露呈されている。しかし、補助鉄心90の露呈箇所は、電機子巻線36よりも比較的太い界磁巻線71が側縁角部73a付近の2箇所の屈曲点の中央に位置しているため、絶縁距離としての空間距離が十分確保されている。
【0080】
前記したように、第2実施形態では、固定子において、インシュレータ80aの固定子鉄心70側の端面84を含む軸方向におけるインシュレータ80aの厚さDa領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心90が配置されている。
【0081】
このような第2実施形態によれば、固定子のインシュレータ80aに設けられた補助鉄心90の存在によって、より多くの磁束を集めることができる。これにより、固定子においてトルク発生に寄与する磁束量を増加させることが可能となり、電動機30の回転トルクを向上させることができる。しかも、補助鉄心90をインシュレータ80aの厚さDa領域の内部に配置して回転トルクの向上を図っているため、電動機30の軸方向寸法の増大を抑えることができる。
【0082】
また、補助鉄心90をインシュレータ80aの厚さDa領域の内部に配置して絶縁性を担保しているため、磁極部73の側縁角部73a(図14(b)参照)においても、インシュレータ80aの厚さDaと同じ寸法の絶縁距離L1を維持することができる。
【0083】
すなわち、第2実施形態によれば、大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供することができる。
【0084】
更に、補助鉄心90にも磁束が通るため、全体として磁束密度の平準化(緩和)が図られる。これにより、鉄損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。また、相対的に界磁巻線71の巻数を減らして、より太い巻線にすることができる。これにより、銅損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成及び作用は、この第3実施形態に取り込まれるものとして詳細な説明を省略し、相違する点について主に説明する。
【0086】
第3実施形態に係る電動機は、第1実施形態に係る電機子と、第2実施形態に係る固定子とを備えて構成されている。すなわち、第3実施形態の電機子においては、図5及び図6に示すように、インシュレータ50の電機子鉄心40側の端面58を含む軸方向におけるインシュレータ50の厚さD領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心60が配置されている。また、第3実施形態の固定子においては、図13及び図14に示すように、インシュレータ80aの固定子鉄心70側の端面84を含む軸方向におけるインシュレータ80aの厚さDa領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心90が配置されている。
【0087】
このような第3実施形態によれば、電機子32のインシュレータ50に設けられた補助鉄心60の存在によって、より多くの磁束を集めることができ、電機子32においてトルク発生に寄与する磁束量を増加させることが可能となる。さらに、固定子のインシュレータ80aに設けられた補助鉄心90の存在によって、より多くの磁束を集めることができ、固定子においてトルク発生に寄与する磁束量を増加させることが可能となる。このように固定子及び電機子の双方において増加した磁束の相互作用によって、電動機30の回転トルクをより向上させることができる。しかも、補助鉄心60,90をインシュレータ50,80aの厚さD,Da領域の内部にそれぞれ配置して回転トルクの向上を図っているため、電動機30の軸方向寸法の増大を抑えることができる。
【0088】
また、補助鉄心60,90をインシュレータ50,80aの厚さD,Da領域の内部にそれぞれ配置して絶縁性を担保しているため、コアバック部41の外縁角部41b、ティース部42の側縁角部42c(図6(b)参照)、及び磁極部73の側縁角部73a(図14(b)参照)においても、インシュレータ50,80aの厚さD,Daと同じ寸法の絶縁距離L1をそれぞれ維持することができる。
【0089】
すなわち、第3実施形態によれば、大型化せずに高出力化を達成でき、しかも絶縁性能を保持できる電動機及びこれを用いた電気掃除機を提供することができる。
【0090】
更に、補助鉄心60,90にもそれぞれ磁束が通るため、全体として磁束密度の平準化(緩和)が図られる。これにより、鉄損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。また、相対的に電機子巻線36及び界磁巻線71の巻数を減らして、より太い巻線にすることができる。これにより、銅損を低減できるため、エネルギ効率を向上させることができる。
【0091】
なお、電動機30に商用交流電圧が印加されると、固定子は商用周波数で磁束が変化する一方、電機子は高周波で磁束が変化する。したがって、固定子は電機子と比較すれば鉄損が少なくて済むので、固定子の補助鉄心90にはSPCC等の一般的な鋼板を使用し、電機子の補助鉄心60には低鉄損の電磁鋼板を使用するように構成してもよい。
【0092】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0093】
例えば、前記実施形態では、電動機30が直巻式の整流子モータである場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、鉄心と、鉄心に巻回される巻線と、鉄心の端面と巻線とを絶縁するためのインシュレータとを有する各種の電動機に適用可能である。すなわち、本発明の補助鉄心は、固定子若しくは回転子のいずれか一方、あるいは固定子及び回転子の両方に適用可能である。なお、本発明の補助鉄心が固定子若しくは回転子のいずれか一方に適用される場合、補助鉄心が適用されない方は、鉄心と巻線に代えて永久磁石を備える構成であってもよい。
【0094】
また、前記実施形態では、補助鉄心60の電機子鉄心40に対向する面は、電機子鉄心40側に露呈しているが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、インシュレータ50によって覆われるように構成されてもよい。さらに、前記実施形態では、補助鉄心90の固定子鉄心70に対向する面は、固定子鉄心70側に露呈しているが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、インシュレータ80aによって覆われるように構成されてもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、電動機30の回転軸35が前後方向に延在するように配置されているが、回転軸35の延在方向はこれに限定されず、上下又は左右であってもよいし、前後方向に対して所定の角度で傾斜していてもよい。
また、図5などに示すように補助鉄心60はインシュレータ50と略同一面となるように設けられているがこの限りではない。
図15に示すように補助鉄心60がインシュレータ50内部に設けられていても良いし、図16に示すように補助鉄心60がインシュレータ50から飛び出すように設けられていても良い。補助鉄心60がインシュレータ50内部に設けられている場合は、前記した実施形態による効果に加え、補助鉄心60を保持し易いという効果を奏する。また、補助鉄心60がインシュレータ50から飛び出すように設けられている場合は、前記した実施形態による効果に加え、先端部(最外周)が巻線と距離が離れているため絶縁材で覆う必要がなく、材料が少なくすむという効果を奏する。
【0096】
また、前記実施形態では、電気掃除機10に使用する電動機30について説明したが、本発明は、洗濯乾燥機、エアコンディショナ、冷蔵庫、扇風機、電動工具等の他の家電製品に使用する電動機や、エレベータ、エスカレータ等の設備機器に使用する電動機、電気自動車、電車等の車両に使用する電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 電気掃除機
30 電動機
31 固定子
32 電機子
35 回転軸
36 電機子巻線
40 電機子鉄心
50,50a〜50d インシュレータ
54 凹部
58 端面
60,60a〜60c 補助鉄心
61 環状板部
62 帯状板部
70 固定子鉄心
71 界磁巻線
80,80a インシュレータ
84 端面
85 凹部
90 補助鉄心
L1 絶縁距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と当該固定子の内側に配置され回転軸周りに回転可能な回転子とを備えた電動機であって、
前記回転子及び前記固定子の少なくとも一方は、鉄心と、前記鉄心に巻回される巻線と、前記回転軸の軸心方向における前記鉄心の端面と前記巻線とを絶縁するためのインシュレータと、を有し、
前記回転子及び前記固定子の少なくとも一方において、前記インシュレータの前記鉄心側の端面を含む前記軸心方向における前記インシュレータの厚さ領域の内部に、磁性体を含む補助鉄心を配置したことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記補助鉄心は、前記インシュレータの前記鉄心との当接面に形成された凹部内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記補助鉄心は、前記インシュレータに一体成形により設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記補助鉄心は、前記鉄心とは異なる磁気特性を有する磁性体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項5】
前記回転子のインシュレータに配置される前記補助鉄心は、環状板部と、当該環状板部の外周面から外方に延出した複数の帯状板部とを有することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項6】
前記回転子の補助鉄心の外径は、回転子鉄心の外径と等しいことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項7】
前記固定子の補助鉄心の磁極部内径は、固定子鉄心の磁極部内径と等しいことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項8】
前記回転子の補助鉄心の外径は、回転子鉄心の外径と等しく、前記固定子の補助鉄心の磁極部内径は、固定子鉄心の磁極部内径と等しいことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の電動機を備えることを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−13259(P2013−13259A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144780(P2011−144780)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】