説明

電動機

【課題】
電動機性能を維持しながら、電動機の固定子の位置決めが容易で確実に取り付けることができる樹脂絶縁を備えた電動機。
【解決手段】
固定子10は円周方向に伸びた環状ヨーク部11と、前記環状ヨーク部11から径方向に伸びる複数のティース部12を備え、前記ティース部12に施された樹脂絶縁20に直接巻線30を巻き付けた電動機において、前記固定子10のスロット底部の形状は、少なくとも1ケ所の角度を有する角部16を設けたスロット形状であり、前記樹脂絶縁20には、前記固定子と面対向した樹脂絶縁端面側に前記固定子10に位置決めするための位置決め用突起29が設けられており、
前記位置決め用突起29は、前記固定子のスロット底部の少なくとも1ケ所の角度を有する角部16に挿入固定した電動機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子の両端面を樹脂絶縁で絶縁しスロット内をフィルム状のスロット絶縁で絶縁した電動機において、固定子のティースの絶縁に直接巻線を巻き付けた集中巻き方式の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電動機は特許文献1(特開2003−319593号公報)及び特許文献2(特開2004−194413号公報)に示すような電動機の固定子がある。特許文献1及び特許文献2には、固定子の円周方向に伸びた環状ヨーク部と、環状ヨーク部から固定子内径方向に向かい複数のティース部を備えた電動機において、固定子の環状ヨーク部とティース部と面対向した樹脂絶縁が施され、固定子のスロット内はフィルム状のスロット絶縁が施された固定子が示されている。
【0003】
樹脂絶縁は環状ヨーク部に円周方向に伸びる環状ヨーク部樹脂絶縁と、複数のティース部に環状ヨーク部樹脂絶縁から径方向に伸びるティース部樹脂絶縁で構成され、ティース部樹脂絶縁は、直接巻線を巻き付けるための巻線胴部と、巻線胴部の固定子内径側から固定子軸方向端面側とは逆の軸方向に伸びる内径樹脂壁を有し、環状ヨーク部樹脂絶縁は、固定子外径側から固定子軸方向端面側とは逆の軸方向に伸びる外径樹脂壁を有している。また、固定子軸方向端面と面対向する樹脂絶縁端面には、固定子と樹脂絶縁がずれない様にするための凸部が設けられ、固定子軸方向端面には樹脂絶縁の凸部に対応する凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−319593号公報
【特許文献2】特開2004−194413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように固定子軸方向両端面に樹脂絶縁を施し、スロット内にフィルム状の絶縁を施し固定子のティースに直接巻線を巻き付けた集中巻き方式の電動機であって、固定子軸方向両端面と面対向した樹脂絶縁端面には、固定子と樹脂絶縁がずれない様に固定子軸方向両端面と面対向した樹脂絶縁端面側に凸部の突起を設け、固定子軸方向端面にこの凸部の突起と対応する凹部の溝を設けた電動機においては、固定子の環状ヨーク部のヨーク幅が広い場合においては、この凹部の溝があることによる電動機性能の低下は僅かであるが、電動機が小型化され環状ヨーク部のヨーク幅が狭い場合、固定子軸方向端面の凹部の溝を設けることにより磁束通路が狭まり電動機性能を悪化させてしまう。
【0006】
本願発明は、このように小型化された電動機において固定子の軸方向端面に樹脂絶縁を確実に固定するために固定子の軸方向端面に磁束通路を狭めるような位置決め用の凹部溝を設けることなく確実に樹脂絶縁が固定でき、電動機性能が悪化することのない電動機の提供を目的としています。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固定子は円周方向に伸びた環状ヨーク部と、環状ヨーク部から径方向に伸びる複数のティース部を備え、固定子の軸方向端面に面対向する樹脂絶縁が施され、固定子のスロット内は、フィルム状のスロット絶縁が施され、ティース部に施された樹脂絶縁に直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機において、
前記固定子のスロット底部の形状が、少なくとも1ケ所の角度を有したスロット形状であり、
樹脂絶縁には、固定子と面対向した樹脂絶縁端面側に固定子に位置決めするための位置決め用突起が設けられており、
前記位置決め用突起が、固定子のスロット底部の少なくとも1ケ所の角度を有した角部に挿入固定して固定した電動機とする。
【0008】
また、樹脂絶縁の位置決め用突起は、固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部と、固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁との間に挿入固定した電動機とする。
【0009】
或いは、位置決め用突起は、前記固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部に、固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁を装着した後に、スロット絶縁を押さえ込むように挿入固定した電動機とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動機を用いることにより、固定子の絶縁構造が固定子の軸方向端面に面対向する樹脂絶縁と、固定子のスロット内にフィルム状のスロット絶縁を装着した電動機であって、固定子のスロット底部の形状が、少なくとも1ケ所の角度を有したスロット形状の電動機において、固定子と面対向した樹脂絶縁端面側に固定子に位置決めするための位置決め用突起を設け、この位置決め用突起を固定子のスロット底部の少なくとも1ケ所の角度を有した角部に挿入固定することにより、
固定子の軸方向両端面に樹脂絶縁の凸部の位置決め用突起を固定するための凹部の溝を設ける必要がなくなり、固定子内の磁束の通路を狭めることなく電動機性能の悪化を防止することができる。特に、電動機が小型化されティースに直接巻線を巻き付ける集中巻き方式の電動機において顕著な効果を有する。
【0011】
また、樹脂絶縁の位置決め用突起を、固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部と、前記固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁との間の角部に沿うように挿入固定することにより、
スロット底部の角部に巻線が挿入されないスペースに樹脂絶縁の位置決め用突起を挿入することにより実質的にスロットに巻き込む巻線の巻き付け量に影響することなく固定子軸方向両端部に樹脂絶縁を確実に固定することができる。
【0012】
また、樹脂絶縁の位置決め用突起を固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部に、固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁を装着した後に、スロット絶縁の上から樹脂絶縁の位置決め用突起により押さえ込むよう挿入固定することにより、ティース部の樹脂絶縁の上から直接巻き付けた巻線によりスロット絶縁のズレを防止することができ絶縁不良を低減することができる。
尚、本発明の電動機は、小型化された車両用の電動機に用いることもでき、また空調機や冷蔵庫等の圧縮機内の電動機に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の電動機の固定子を上から見た図。
【図2】図1における巻線を巻き付ける前の固定子の図。
【図3】図1における電動機の固定子鉄心の図。
【図4】図3の固定子スロット内に巻線を装着しているスロット詳細図。
【図5】図2で説明した樹脂絶縁の裏側から見た図。
【図6】図5に示した樹脂絶縁の裏側の位置決め用突起のスロット部分詳細図。
【図7】図2に示した固定子のA−A’断面図。
【図8】別の実施形態の電動機の固定子スロット内に巻線を装着しているスロット詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本実施形態の電動機の固定子10を上から見た図である。図1(及び図3)には固定子10の円周方向に伸びた環状ヨーク部12と、この環状ヨーク部12から径方向に伸びた複数のティース部13を備えた固定子10である。この固定子10の軸方向両端面11には樹脂絶縁20が装着されている。この樹脂絶縁20は固定子10の環状ヨーク部12と、この環状ヨーク部12から径方向に伸びた複数のティース部13に面対向して配置されている。
【0015】
このティース部13に配置された樹脂絶縁20には直接巻線30が集中巻き方式により巻き付けられている。また、このティース部13の樹脂絶縁20に巻き付けられた巻線30の一方の端部から引き出された引出線は中性点を形成し、他方の端部から引き出された引出線は外部電源と接続するリード線60と接続されている。この固定子10のスロット数は9スロットであり、3Y結線した3相6極の固定子である。尚、実施形態の固定子10には温度センサー70が取り付けられ外部の回路に接続されている。
【0016】
また、図2には、図1で説明した固定子10の軸方向端部11に樹脂絶縁20を装着し、固定子10のスロット50にはフィルム状のスロット絶縁40が装着され、樹脂絶縁20の巻線胴部23に巻線30を巻き付ける前の状態を示している。
【0017】
図2に示した樹脂絶縁20は、環状ヨーク部12に円周方向に伸びる環状ヨーク部樹脂絶縁28bと、複数のティース部13に環状ヨーク部樹脂絶縁28bから径方向に伸びるティース部樹脂絶縁28aで構成され、ティース部樹脂絶縁28aには直接巻線30を巻き付けるための巻線胴部23と、巻線胴部23の固定子内径側から固定子10の軸方向端面側11とは逆の軸方向に伸びる内径樹脂壁21で構成され、環状ヨーク部樹脂絶縁28bには固定子外径側から固定子10の軸方向端面側11とは逆の軸方向に伸びる外径樹脂壁22で構成されている。
【0018】
また、固定子10のティース部13の固定子内径側の周方向に伸びるティース先端部17a、17bには、樹脂絶縁20の内側樹脂壁21の周方向にティース先端部樹脂絶縁27a、27bが設けられている。このティース先端部樹脂絶縁27a、27bは、巻線30を巻線胴部23に巻き付けるのに支障がない程度に、固定子10のティース先端部17a、17bより若干スロット50の内側へ飛び出している。この飛び出しによりスロット50に装着したフィルム状のスロット絶縁40が係り止され固定子10の軸方向に飛び出すのを防止することができ、スロット絶縁40が脱落するのを防いでいる。(図6及び図7参考)
【0019】
図3は図1で示した固定子10の固定子鉄心の形状を説明する図である。
図3の固定子10は、前記したようにスロット数が9スロットであり環状ヨーク部12から固定子10の内径方向に向かいティース部13が伸びている。この固定子10のスロット形状は、この環状ヨーク部12から固定子10の内径側に伸びたティース部13のスロット側に面したスロット内側壁14aの根元から略直角(θ)に、環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aが設けられている。同様に前記ティース部13の隣のティース部13のスロット側に面したスロット内側壁14bの根元から略直角(θ)に、環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15bが設けられている。従って、スロット底部の形状は前記環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、スロット内底壁15bとが交差することにより角度を有した角部16が少なくとも1ケ所設けられている。尚、この場合のティース部13のスロット側に面したスロット内側壁14a及び14bと、環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、スロット内底壁15bとが成す角度(θ)が90度である。と、θが略90度である。とする意味を含んでいる。
【0020】
図4は、図3で説明した固定子10のスロット50に、フィルム状のスロット絶縁40を装着し、巻線30を巻き付ける前のスロット詳細図である。図4は図3で説明したように環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、スロット内底壁15bとの交差により角度を有した少なくとも1ケ所の角部16が設けられたスロット50である。このスロット50にフィルム状のスロット絶縁40により固定子10のティース部13の固定子内径側から周方向に伸びたティース部先端部17aのスロット開口部から、スロット内側壁14a、スロット内底壁15a、15b、スロット内側壁14bを覆い、隣のティース部13の固定子内径側から周方向に伸びたティース部先端部17bのスロット開口部までを絶縁している。
【0021】
尚、このフィルム状のスロット絶縁40のスロット底部形状は円弧状に形成され、前記した固定子10のスロット底部形状の環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、スロット内底壁15bとが交差し角度を有した角部16とは、完全に密着することなく固定子10の径方向に若干の隙間が生じている。
【0022】
また、スロット底部が円弧状に形成されたスロット絶縁40と、角部16を有するスロット50との間に生じる前記隙間の固定子周方向の幅Bは、巻線機のノズル80がスロット50の奥深くまで挿入して巻線30を巻き付けるための挿入通路となっており、ティース部13に直接巻線30を巻き付ける集中巻き方式において巻線30を巻き付けるために必ず必要な隙間となっている。実質的に巻線30を巻き付けることができないスペースである。尚、図中の点線は巻線30をティース部13に巻き付けた場合の巻き付け範囲を示している。
【0023】
図5は図2に示した樹脂絶縁20の裏側から見た図である。また図6は図5に示した樹脂絶縁20の裏側から見たスロット部分の詳細図である。また、図7は図2に示した固定子10のA−A’断面図である。図5、図6、図7を用いて樹脂絶縁20の形状を説明する。
【0024】
図5及び図6に示した樹脂絶縁20の裏側の環状ヨーク部樹脂絶縁28bから固定子10の内径側に伸びたティース部樹脂絶縁28aのスロット側に面したスロット内側壁樹脂絶縁24aの根元から略直角(θ)に、環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25aが設けられている。同様に前記ティース部樹脂絶縁28aの隣のティース部樹脂絶縁28aのスロット側に面したスロット内側壁樹脂絶縁24bの根元から略直角(θ)に、環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25bが設けられている。これによりスロット内底部の形状は、前記環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25aと、環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25bとが交差することにより角度を有した角部26が少なくとも1ケ所設けられた構造となっている。尚、この場合のティース部樹脂絶縁28aのスロット側に面したスロット内側壁樹脂絶縁24a及び24bと、環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25a及び25bとが成す角度(θ)が90度である。と、θが略90度である。とする意味を含んでいる。
【0025】
この樹脂絶縁20の環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25aと、スロット内底壁樹脂絶縁25bとが交差することにより角度を有した角部26に、固定子10に樹脂絶縁20を組み付けた状態において樹脂絶縁20の裏側から固定子軸方向端面側に伸びた位置決め用突起29が設けられている。
【0026】
この樹脂絶縁20の裏側から伸びた位置決め用突起29は、図7(及び図4)に示したように固定子10のティース部13のスロット側に面したスロット内側壁14aの根元から、略直角(θ)に位置する環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、隣のティース部13のスロット側に面したスロット内側壁14bの根元から、略直角(θ)に位置する環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15bが交差して角度を有した角部16と、スロット底部が円弧状になったフィルム状のスロット絶縁40との隙間に、若干の締め代を有して位置決め用突起29を嵌め込んでいる。
これにより樹脂絶縁20は固定子10の軸方向端面11に確実に固定することができる。
【0027】
本実施形態の位置決め用突起29は環状ヨーク部樹脂絶縁28bのスロット側に面したスロット内底壁樹脂絶縁25aと、スロット内底壁樹脂絶縁25bとが交差する箇所に1ケ所設けられているが、固定子10のスロット底部の形状が多角形状であれば複数設けてもよい。また、固定子10の各スロット50の全ての角部にそれぞれ位置決め用突起29を設ける必要もなく樹脂絶縁20が固定子10の軸方向端面11で確実に固定することができればよい。
【0028】
また、別の実施形態を図8に示す。
固定子10の固定子鉄心及び、樹脂絶縁20の主要部分は、図1〜図7で説明した構造と同じ構造であるため説明を省略する。また、固定子10の固定子鉄心の形状及び、樹脂絶縁20の形状を説明する記号は図1〜図7で説明した用途と同じであるため同じ記号を付して説明する。
【0029】
図8は固定子10のスロット50に、フィルム状のスロット絶縁40を装着し、巻線30を巻き付ける前のスロット詳細図である。固定子10の環状ヨーク部12のスロット側に面したスロット内底壁15aと、スロット内底壁15bとの交差により角度を有した少なくとも1ケ所の角部16が設けられたスロット50に、フィルム状のスロット絶縁40により固定子10のティース部13の固定子内径側から周方向に伸びたティース部先端部17aのスロット開口部から、スロット内側壁14a、スロット内底壁15a、15b、スロット内側壁14bを覆い、隣のティース部13の固定子内径側から周方向に伸びたティース部先端部17bのスロット開口部まで絶縁されている。
【0030】
また、スロット底部が円弧状に形成されたスロット絶縁40と、角部16を有するスロット50との間に生じる前記隙間の固定子周方向の幅Bは、巻線機のノズル80がスロット50の奥深くまで挿入して巻線30を巻き付けるための挿入通路となっており、ティース部13に直接巻線30を巻き付ける集中巻き方式において巻線30を巻き付けるために必ず必要な隙間となっている。実質的に巻線30を巻き付けることができないスペースである。尚、図中の点線は巻線30をティース部13に巻き付けた場合の巻き付け範囲を示している。
【0031】
本実施形態では、固定子10のスロット50にフィルム状のスロット絶縁40を装着した後、図1〜図7で説明した樹脂絶縁20の位置決め用突起29を、このフィルム状のスロット絶縁40の上から、スロット50の角部16側に押さえ込むように樹脂絶縁20を固定子10に若干の締め代を有して嵌め込んでいる。これにより、ティース部の樹脂絶縁の上から直接巻き付けた巻線によりスロット絶縁がずれるのを防止することができ絶縁不良を低減することができる。尚、この場合の樹脂絶縁20の位置決め用突起29の固定子外周側にはフィルム状のスロット絶縁40の軸方向の先端部が挿入固定出来るような溝を設けることが好ましい。
【0032】
また、本発明の電動機は、小型化された車両用の電動機に用いることもでき、また空調機や冷蔵庫等の圧縮機内の電動機に用いることができる。
【0033】
従って、樹脂絶縁20の位置決め用突起29を固定するための固定子10の軸方向両端面11に凹部の溝を設ける必要がないので固定子内の磁束の流れを妨げることがなくなる。また、樹脂絶縁20の位置決め用突起29をティース部13に巻線30を巻き付けるための巻線機のノズル80が通過するための余剰スペースとなるスロット底部のスロット内底壁15a、15bが交差する角度の角部16に固定することにより、実質的にスロット50に巻き込む巻線30の巻き付け量を低減させることなく巻線30をスロット50に巻き付けることができ電動機性能が悪化することもない。
【0034】
この樹脂絶縁20、スロット絶縁40の材質としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等がある。
【0035】
また、この樹脂絶縁20の裏側から伸びたこの位置決め用突起29は、固定子10のスロット底部の形状が多角形状であれば、複数設けてもよい。また、固定子10の各スロット50の全ての角部にそれぞれ位置決め用突起29を設ける必要もなく樹脂絶縁20が固定子10の軸方向端面11で確実に固定することができればよい。この位置決め用突起29の高さは、約1mm〜5mm程度となっている。
【符号の説明】
【0036】
10・・・固定子
11・・・固定子の軸方向端面
12・・・環状ヨーク部
13・・・ティース部
14a、14b・・・スロット内側壁
15a、15b・・・スロット内底壁
16・・・角部
17a、17b・・・ティース部先端部
20・・・樹脂絶縁
21・・・内径樹脂壁
22・・・外径樹脂壁
23・・・巻線胴部
24a、24b・・・スロット内側壁樹脂絶縁
25a、25b・・・スロット内底壁樹脂絶縁
26・・・角部
27a、27b・・・ティース部先端部樹脂絶縁
28a・・・ティース部樹脂絶縁
28b・・・環状ヨーク部樹脂絶縁
29・・・位置決め用突起
30・・・巻線
40・・・スロット絶縁
50・・・スロット
60・・・リード線
70・・・温度センサー
80・・・ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子は円周方向に伸びた環状ヨーク部と、環状ヨーク部から径方向に伸びる複数のティース部を備え、前記固定子の軸方向端面に面対向する樹脂絶縁が施され、固定子のスロット内は、フィルム状のスロット絶縁が施され、前記ティース部に施された樹脂絶縁に直接巻線を巻き付けた電動機において、
前記固定子のスロット底部の形状は、少なくとも1ケ所の角度を有したスロット形状であり、
前記樹脂絶縁には、前記固定子と面対向した樹脂絶縁端面側に前記固定子に位置決めするための位置決め用突起が設けられており、
前記位置決め用突起は、前記固定子のスロット底部の少なくとも1ケ所の角度を有する角部に挿入固定したことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記樹脂絶縁の位置決め用突起は、前記固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部と、前記固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁との間に挿入固定したことを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記位置決め用突起は、前記固定子のスロット底部の形状の少なくとも1ケ所の角度を有する角部に、前記固定子のスロット内に装着されたフィルム状のスロット絶縁を装着した後に前記スロット絶縁を押さえ込むように挿入固定したことを特徴とする請求項1項記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−226810(P2010−226810A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69199(P2009−69199)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】