説明

電動機

【課題】電動機の回路基板上の発熱部品の放熱のために、発熱部品とブラケットの間に熱伝導性の良い伝熱部材を設け、伝熱部材を発熱部品に押圧する。そのため、発熱部品と回路基板に過剰な負荷がかかり破損するおそれがあったが、過剰な負荷がかからない電動機の回路基板を提供する。
【解決手段】巻線を巻回すインスレータ7に回路基板4の裏面側を支持する基板支持部8と、端子12を保持する端子保持部14とを設け、基板支持部8と回路基板4の裏面との間には、回路基板4をブラケット側に向かって押し上げる弾性部材13が設けられると共に、端子保持部14は、端子12を軸方向に移動可能に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機内部にある発熱部品で発生する熱を、伝熱部材を介してブラケットまで伝熱し、外気に放熱する電動機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、回転する軸部と、同軸部の回転駆動を制御する制御回路部とを備えている。近年、この制御回路部は、駆動制御IC(電動機駆動用のトランジスタ等を搭載したIC)を搭載している。この駆動制御ICは、電動機の駆動時に熱が発生する発熱部品である。この発生した熱を放熱するために、図7に示すように、発熱部品3とブラケット5の間に、伝熱部材である放熱シート9とアルミブロック10とシリコーン11を軸方向に沿って順次に積み重ねている。この伝熱部材により、発熱部品3で発生した熱はブラケット5を介して、外気に放熱される。(特許文献1)
【0003】
しかし、電動機内にある各構成部品の寸法にはバラツキがあるので、構成部品の寸法公差によって、部品間の密着度が低くなった場合には、伝熱性が悪くなるおそれがある。そこで、部品間の密着度を高めて、伝熱性を良くするために、図8に示すような方法がある。発熱部品3と放熱板金の間には放熱シート9が設けられている。この放熱板金が回路基板4に所定の距離まで近接することで、放熱板金の突出部21が放熱シート9を押圧している。この押圧で、発熱部品3と放熱シート9の密着度を高め、伝熱性を良くしている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011―15519号公報
【特許文献2】特開2010―129954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術である特許文献2の方法では、発熱部品3と放熱シート9の密着度を高めるために、放熱板金で放熱シート9を押さえつける必要があった。そのため、回路基板4に過剰な負荷がかかり、回路基板4が破損するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、発熱部品と放熱シートの密着度を高めつつ、回路基板にかかる過剰な負荷を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に、本発明の電動機は、固定子鉄心と合成樹脂で形成されたインシュレータと、同インシュレータに巻回される巻線とを備えた固定子と、中心に回転軸を備えた回転子と、前記固定子の軸方向一端側に配置される回路基板と、前記回路基板の表面側に実装される発熱部品と、前記回路基板の裏面側に配置されて、前記巻線と前記回路基板上の回路とを電気的に接続する端子と、前記回転子の前記回転軸を軸支する軸受を収容する軸受収容部を備え、前記固定子と前記回転子と前記回路基板を覆うように軸方向両側に設けられた一対のブラケットと、同ブラケットの一方の端部の内壁面と前記電子部品の間に配置された伝熱部材と、を備えた電動機において、前記インシュレータには、前記回路基板の裏面側を支持する基板支持部と、前記端子を保持する端子保持部とが設けられ、前記基板支持部と前記回路基板の裏面との間には、前記回路基板を前記ブラケット側に向かって押し上げる弾性部材が設けられると共に、前記端子保持部は、前記端子を軸方向に移動可能に保持している。また、前記端子は、下部に突出部を備え、前記端子保持部は、前記端子を挿入する孔があり、同孔の内壁の上部に凸部を備え、前記端子は、前記端子の末端が前記端子保持部の底面に接触する位置から、前記突出部と前記凸部が接触する位置まで、軸方向に移動可能となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路基板に過度な負荷をかけることなく、発熱部品と伝熱部材の密着度を高めつつ、発熱する発熱部品を効率よく放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電動機の断面図である。
【図2】本発明の電動機にあるインシュレータの側面図である。
【図3】本発明のタブ端子に巻線を溶着している図である。
【図4】本発明のタブ端子の係止部の正面および断面図である。
【図5】本発明の制御基板の上面図である。
【図6】本発明の別実施例である電動機の断面図である。
【図7】従来の電動機の断面図である。
【図8】従来の発熱部品と放熱シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の電動機の断面を示す図である。図1に示すように、本発明の電動機は、巻線6が巻回された固定子1と、回転軸を有して固定子1の内側に配置される回転子2と、通電時に発熱する電子部品(以下、発熱部品3と記載)を表面側に実装した回路基板4と、固定子1と回転子2と回路基板4などを覆うように設けられている一対のブラケット5とから構成されている。このブラケット5は、回転子2の回転軸を軸支する軸受を収容する軸受収容部を備えている。
【0011】
固定子1は、固定子鉄心1Aと、固定子鉄心1Aをインサート成型してなる合成樹脂で形成されたインシュレータ7と、このインシュレータ7に巻回される巻線6とを備えている。このインシュレータ7の回路基板4と対向する一端側には、回路基板4を支持する基板支持部8が備えられている。
【0012】
回転子2は、固定子1の内径側に配置され、中心に回転軸を備えている。この回転子2は回転子鉄心2Aの外周に永久磁石をはりつけた構成となっている。この永久磁石が固定子1内の巻線6で発生した回転磁界から力を受けることで回転子2が回転する。なお、本発明は回転子鉄心2Aの外周に永久磁石を配置した、いわゆる表面磁石型同期モータに限定したものではなく、回転子鉄心2Aの内側に永久磁石を埋設した埋込磁石型同期モータなどの電動機であっても良い。
【0013】
回路基板4上には、巻線6に流す電流を制御するための回路が構成され、この回路には通電時に発熱する発熱部品3が配置されている。発熱部品3としては、MOSFETやIGBTなどのスイッチング素子、またはスイッチング素子を含むパワーモジュールなどが回路基板4に実装されている。この発熱部品3で発生した熱を放熱するために、発熱部品3とブラケット5との間に、伝熱部材である放熱シート9とアルミブロック10とシリコーン11が順次配置されている。放熱シート9が発熱部品3の表面に接し、シリコーン11がブラケット5の一方の端部の内壁面に接することで、発熱部品3で発生した熱はブラケット5まで伝熱され、ブラケット5から外気に放熱される。
【0014】
図2は、インシュレータ7の側面を示した図である。図2に示すように、回路基板4はインシュレータ7の一端側にある基板支持部8で支持されている。また、回路基板4と巻線6とを電気的に接続する端子12は、端子保持部14で保持される。後述するように、端子12には、巻線6が溶着されることで、端子12と巻線6が電気的に接続されている。基板支持部8には、弾性部材13である波ワッシャーが配置されている。この波ワッシャーが回路基板4の裏面側からブラケット5側に向かって、回路基板4を押し上げることで、回路基板4上にある発熱部品3と放熱シート9の密着度を高めることができる。なお、本実施例では、波ワッシャーを用いているが、本発明はこれに限定したものではなく、バネや樹脂などの弾性を有する部材であれば良い。
【0015】
端子12と巻線6が電気的に接続される構造を図3に基づいて説明する。端子12の中心に切り込みを入れて、切り込み部分を折り返すことで折返部15を形成している。この折返部15に、巻線6の先端を挟みこむ。そして、折返部15を含む端子12に高電圧を加えることで、巻線6の被覆と導線を溶かす。溶かすことで巻線6を端子12に溶着させている。この溶着により、端子12と巻線6が電気的に接続される。
【0016】
図4は、端子12と端子保持部14との関係を示した正面図と側面図である。図4に示すように、端子12の上部には回路基板4上の接続部(後述する、端子用穴18)に挿入された後、回路基板4と半田付けされる凸部12Aが設けられている。一方、端子12の下部には端子保持部14に挿入されて保持される基部12Bが設けられている。この端子保持部14には、端子12の基部12Bが挿入される孔20が設けられている。また、端子12は端子保持部14で軸方向に可動可能な状態で保持されており、端子12と端子保持部14には、端子12の可動範囲を制限する為の係止構造が備わっている。この係止構造は、端子12の下部にある三角形状の突出部16と、端子保持部14の上部にあるストッパー17とから構成されている。この端子12にある三角形状の突出部16は、細い先端部16Aを端子保持部14側に、底辺部16Bを回路基板4側に向けて設置されている。また、端子保持部14には、外周方向の側面を切り欠くことで、切欠部22が形成されている。この切欠部22の上部の両側部には、周方向に突出するように形成されたストッパー17が配置されている。端子12にある三角形状の突出部16の底辺部16Bが端子保持部14にあるストッパー17に突き当たることで、端子12が端子保持部14から抜けないようになっている。また、端子12の基部12B側端面が端子保持部14の底面に接触することで端子12が巻線6側に抜け落ちないようにしている。なお、端子12を端子保持部14に挿入する際は、三角形状の突出部16の先端部16Aが細いので、三角形状の突出部16がストッパー17に引っかからずに挿入できる。さらに、端子12が回転軸の軸方向に対して移動可能となるように、端子12の基部12B側端面が端子保持部14の底面に接触した状態で、三角形状の突出部16の上側とストッパー17の下側の間に隙間ができるだけの深さを内部の孔20に持たせている。
【0017】
図5は、回路基板4を上方から示した上面図である。回路基板4の外周上には、端子12の凸部12Aが接続される端子用穴18や、基板支持部8の先端が接続される基板支持部用穴19が配置されている。端子12の凸部12Aは端子用穴18に挿入され、半田付けで固定される。これにより、端子12は回路基板4と電気的に接続される。また、基板支持部8の先端が基板支持部用穴19に挿入され、固定されることで、基板支持部8は回路基板4を保持および、固定することができる。
【0018】
上記の構成からなる本発明の電動機では、組み立ての際にブラケット5をステータコアに被せると、ブラケット5の内壁がシリコーン11を介してアルミブロック10を押圧する。押圧されたアルミブロック10が放熱シート9を押圧して圧縮することで、放熱シート9を挟んで配置されたアルミブロック10と発熱部品3との密着度が高まる。この時、発熱部品3を搭載した回路基板4には、弾性部材13によってブラケット5に向かう付勢力が加えられる。この付勢力の強さをアルミブロック10と発熱部品3との密着度を高めつつ、回路基板4の破損を防ぐように調整することで、発熱部品3の放熱性を確保しつつ、回路基板4を保持することができる。つまり、ブラケット5による発熱部品3への押圧が回路基板4にとって過剰であった場合、弾性部材13が変形することで押圧の負荷を吸収し、さらに、端子12がインシュレータ7側に移動することで、回路基板4もインシュレータ7側に移動する。これにより、回路基板4に過剰な負荷がかからないようになっている。
【0019】
なお、図6は本発明の別実施例を示した図である。図6に示すように、伝熱部材として、放熱シート9、アルミブロック10、放熱シート9と順次接続して、発熱部品3で発生した熱をブラケット5まで伝熱し、ブラケット5から外気に放熱している。本発明の伝熱部材は上記実施例に限定したものではなく、発熱部品3で発生した熱をブラケット5まで伝熱できる熱伝導性の良い部材を使用していれば良く、他の部材を使用しても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 固定子
1A 固定子鉄心
2 回転子
2A 回転子鉄心
3 発熱部品
4 回路基板
5 ブラケット
6 巻線
7 インシュレータ
8 基板支持部
9 放熱シート
10 アルミブロック
11 シリコーン
12 端子
12A 凸部
12B 基部
13 弾性部材
14 端子保持部
15 折返部
16 三角形状の突出部
16A 先端部
16B 底辺部
17 ストッパー
18 端子用穴
19 基板支持部用穴
20 孔
21 突出部
22 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と合成樹脂で形成されたインシュレータと、同インシュレータに巻回される巻線とを備えた固定子と、
中心に回転軸を備えた回転子と、
前記固定子の軸方向一端側に配置される回路基板と、
前記回路基板の表面側に実装される発熱部品と、
前記回路基板の裏面側に配置されて、前記巻線と前記回路基板上の回路とを電気的に接続する端子と、
前記回転子の前記回転軸を軸支する軸受を収容する軸受収容部を備え、前記固定子と前記回転子と前記回路基板を覆うように軸方向両側に設けられた一対のブラケットと、
同ブラケットの一方の端部の内壁面と前記電子部品の間に配置された伝熱部材と、
を備えた電動機において、
前記インシュレータには、前記回路基板の裏面側を支持する基板支持部と、前記端子を保持する端子保持部とが設けられ、
前記基板支持部と前記回路基板の裏面との間には、前記回路基板を前記ブラケット側に向かって押し上げる弾性部材が設けられると共に、
前記端子保持部は、前記端子を軸方向に移動可能に保持することを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記端子は、下部に突出部を備え、
前記端子保持部は、前記端子を挿入する孔があり、同孔の内壁の上部に凸部を備え、
前記端子は、前記端子の末端が前記端子保持部の底面に接触する位置から、前記突出部と前記凸部が接触する位置まで、軸方向に移動可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200055(P2012−200055A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61213(P2011−61213)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】