説明

電動真空弁による排気速度制御方法、電動真空弁による排気速度制御システム、排気速度制御に用いられる電動真空弁の弁開度設定点決定方法、及び、排気速度制御に用いられる排気速度決定プログラム

【課題】チャンバ室の圧力を目標圧力降下勾配に近づけるように電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を簡単かつ安価に設定できる電動真空弁による排気速度制御方法を提供すること。
【解決手段】電動真空弁21の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、真空ポンプ13により粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサ15によりチャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を実測した後、圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらし、圧力降下カーブ同士の交点を電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点P11,P12,P13に決定し、その後、設定点P11,P12,P13に基づいて電動真空弁21の弁開度を切り換え、粘性流領域における排気速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ室と真空ポンプとの間に配置される電動真空弁の弁開度設定を変化させ、排気速度を制御する電動真空弁による排気速度制御方法、電動真空弁による排気速度制御システム、排気速度制御に用いられる電動真空弁の弁開度設定点決定方法、及び、排気速度制御に用いられる排気速度決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、真空技術は、多方面で使われている。例えば、半導体製造工程では、パーティクルや汚染物質の回避や副生成物の発生防止等を目的として、真空技術を使ってチャンバ室の真空圧力を管理している。すなわち、チャンバ室と真空ポンプとの間に配設される真空排気弁の弁開度を徐々に広げることによりチャンバ室からガスを排気する排気速度を制御し、チャンバ室内の堆積物を巻き上げないようにチャンバ室からの排気流量・排気圧力を制御している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される排気速度制御方法は、真空排気弁に、大流量を制御する親弁と、小流量を制御する小弁を備えるバルブを使用する。この方法では、図26に示すように、排気開始時から所定時間が経過するまでは、親弁を閉じ、小弁を開くことにより、排気速度を遅くしてゆっくり少量ずつ排気を行い、排気開始時から所定時間が経過した後に、親弁を全開状態にすることにより、排気速度を速くして大流量で排気を行う。このような方法によれば、親弁のみで排気速度を制御する場合と比較して、真空圧力をゆっくりリニアに近い状態で降下させることができる。
【0004】
また、例えば、特許文献2に記載される排気速度制御方法は、外部から与えられた又はコントローラに予め設定された目標真空圧力変化速度に基づいて算出される真空圧力値をコントローラで内部コマンドとして順次発生させていき、順次発生する内部コマンドをフィードバック制御の目標値として順次変更させることにより、圧力センサで測定した真空圧力実測値を目標値と比較してフィードバック制御を追従制御として実行する。この方法によれば、真空圧力変化速度(排気速度)R3を一定に制御して、大気圧からの粘性流領域V1〜V6において、真空圧力を所望の圧力降下勾配でリニアに変化させることができる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−166665号公報
【特許文献2】特開2000−163137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の排気速度制御方法は、小弁により調節されたコンダクタンスと、親弁を全開状態にしたコンダクタンスとの2つの状態しかないため、粘性流領域においてプロセスに影響が出ない真空圧力・排気速度条件を得ることと、排気時間を短縮することに、限界があった。
また、特許文献2記載の排気速度制御方法では、フィードバック制御を行うために、複雑な制御基板や制御プログラムなどを必要とし、装置コストがかかっていた。
【0007】
近年、半導体が色々な分野で使用され、チャンバ室内の排気速度制御に対する要求が多様化している。そのため、特許文献2に記載される排気速度制御方法より安価で、特許文献1に記載される排気速度制御方法と特許文献2に記載される排気速度制御方法の間くらいの制御精度を実現できる排気速度制御方法が、産業界から求められている。しかし、このニーズに応える上で問題となるのは、排気配管系によって制御成績(精度、応答性、安定性など)が異なること、及び、粘性流領域において排気速度によるプロセスへの悪影響(堆積物の巻き上げやワークに形成した膜への影響等)が発生する可能性があることである。排気配管系の制御成績は、現場で実測しなければ確認できない。また、プロセスへの悪影響を排除するように排気速度を現場で調整することは、専門知識を必要とし、誰でも簡単にできることではない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、チャンバ室の圧力を目標圧力降下勾配に近づけるように電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を簡単かつ安価に設定できる電動真空弁による排気速度制御方法、電動真空弁による排気速度制御システム、排気速度制御に用いられる電動真空弁の弁開度設定点決定方法、及び、排気速度制御に用いられる排気速度決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電動真空弁による排気速度制御方法の一態様は、チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより、排気速度を制御する電動真空弁による排気速度制御方法において、前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサにより前記チャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブを実測する圧力実測工程と、前記圧力実測工程で実測した弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定工程と、前記排気速度決定工程で決定した前記設定点に基づいて前記電動真空弁の弁開度を切り換え、前記粘性流領域における前記排気速度を制御する真空圧力制御工程とを有する。
【0010】
上記構成の発明は、前記等比倍数を設定する等比倍数設定工程を有することが好ましい。
【0011】
上記構成の発明は、前記目標圧力降下勾配を設定する目標圧力降下勾配設定工程を有することが好ましい。
【0012】
上記構成の発明は、前記真空圧力制御工程が、前記圧力センサに前記チャンバ室の圧力を測定させ、前記圧力センサが前記設定点に対応する真空圧力を測定した場合に、前記電動真空弁の弁開度を切り換えることが好ましい。
【0013】
上記構成の発明は、前記電動真空弁と並列に設けられて前記チャンバ室に接続されるものであって、前記電動真空弁より大流量を制御可能な大口径真空遮断弁を有し、前記真空圧力制御工程にて、前記粘性流領域においては前記大口径真空遮断弁を弁閉した状態で前記電動真空弁の弁開度を切り換えて前記排気速度を制御し、前記粘性流領域から脱した後、又は、前記粘性流領域の粘性が低くなった後に前記大口径真空遮断弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御することが好ましい。
【0014】
上記構成の発明は、前記真空圧力制御工程にて、前記粘性流領域から脱した後に前記電動真空弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御することが好ましい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る排気速度制御システムの一態様は、チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより、排気速度を制御する排気速度制御システムにおいて、チャンバ室の圧力を測定する圧力センサと、前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、前記圧力センサにより前記チャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブを実測する圧力実測手段と、前記圧力実測手段が実測した弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定手段と、前記排気速度決定手段が決定した前記設定点に基づいて前記電動真空弁の弁開度を切り換え、前記粘性流領域における前記排気速度を制御する真空圧力制御手段とを有する。
【0016】
上記構成の発明では、前記電動真空弁と並列に設けられて前記チャンバ室に接続されるものであって、前記電動真空弁より大流量を制御可能な大口径真空遮断弁を有し、前記真空圧力制御手段は、前記粘性流領域においては前記大口径真空遮断弁を弁閉した状態で前記電動真空弁の弁開度を切り換えて前記排気速度を制御し、前記粘性流領域から脱した後、又は、前記粘性流領域の粘性が低くなった後に前記大口径真空遮断弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御することが好ましい。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る弁開度設定点決定方法の一態様は、チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより排気速度を制御する場合における前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を決定する弁開度設定点決定方法であって、前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサが測定した前記チャンバ室の真空圧力から圧力降下カーブを求める圧力実測工程と、前記圧力実測工程で求められた弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定工程と、を有する。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る排気速度決定プログラムの一態様は、チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより排気速度を制御する場合における前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を設定する排気速度決定プログラムであって、コンピュータを、前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサが測定した前記チャンバ室の真空圧力から圧力降下カーブを求める圧力実測手段と、前記圧力実測手段が求めた弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定手段として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
上記発明は、真空ポンプやチャンバ室や排気配管系による制御成績を排気速度に直接反映させるために、電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサによりチャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブを実測する。つまり、電動真空弁の設置先の装置を使って弁開度別に圧力降下カーブを実測する。そして、実測した弁開度別の圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらすと、圧力降下カーブが直前の弁開度の圧力降下カーブと交差する。そこで、圧力降下カーブ同士の交点を電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する。このように、弁開度を等比倍数に従って変化させると、各弁開度に対応する圧力降下カーブの目標圧力降下勾配に近似する部分がオーバーラップしないため、設定点が無駄に設定されない。真空圧力制御時には、設定点に基づいて電動真空弁の弁開度を切り換えることにより、排気配管系のコンダクタンスを変更し、粘性流領域における排気速度を制御する。このとき、電動真空弁は、チャンバ室の圧力が目標圧力降下勾配に近似する部分から外れると同時に弁開度を等比倍数分だけ広げられ、チャンバ室の圧力を目標圧力降下勾配に再び近づけて降下させるため、チャンバ室の圧力は粘性流領域でも目標圧力降下勾配に近似した状態で降下する。
【0020】
このように、上記発明では、粘性流領域における圧力降下カーブを、電動真空弁の設置先であるチャンバ室、真空ポンプ及び排気配管系を使用して実測するので、電動真空弁の設置先の制御成績や粘性流領域におけるプロセスへの悪影響を、電動真空弁の弁開度を切り換える設定点の決定に反映させることが可能である。そして、弁開度の設定点を決定する者は、プロセスの悪影響を排除するための専門知識を持っていなくても、圧力降下カーブを実測して目標圧力降下勾配に近似させて圧力降下カーブを時間的にずらすだけで、チャンバ室の圧力を目標圧力降下勾配に近づけるように弁開度の設定点を決定することが可能である。その結果、上記発明は、粘性流領域において親弁と子弁により弁開度を2段制御して排気速度を制御する場合よりも、粘性流領域においてプロセスに影響しないように真空圧力・排気制御条件を得たり、排気速度を短縮することが可能になる。そして、上記発明は、排気速度をフィードバック制御する場合のようにチャンバ室の圧力を直線状に降下させることができないものの、複雑な制御基板や制御プログラム等を使用しなくても、子弁と親弁で排気速度を制御するものよりチャンバ室の圧力を直線的に降下させるように排気速度を制御することが可能になる。
よって、上記発明によれば、チャンバ室の圧力を目標圧力降下勾配に近づけるように電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を簡単かつ安価に設定できる。
【0021】
上記発明は、等比倍数を任意に設定できる。そのため、例えば、等比倍数を小さく設定すれば、電動真空弁の弁開度を切り換える設定点の数を増やして、設定点を目標圧力降下勾配に近い位置に決定し、チャンバ室の圧力を滑らかに変化させることが可能である。一方、例えば、等比倍数を大きく設定すれば、実測する圧力降下カーブの数が減り、弁開度の設定点を決定する時間を短縮することが可能である。よって、上記発明によれば、等比倍数の設定値によって、チャンバ室の圧力を滑らかに変化させる程度や、弁開度の設定点を取得するための確保できる時間を調整することが可能になり、ユーザの個々の要求を排気速度制御に反映させることができる。
【0022】
上記発明は、目標圧力降下勾配を任意に設定できる。そのため、例えば、排気時間を短くしたい場合には、傾斜角度を大きくするように目標圧力降下勾配を設定すれば良い。一方、ゆっくり排気したい場合には、傾斜角度を小さくするように目標圧力降下勾配を設定すれば良い。よって、上記発明によれば、目標圧力降下勾配の設定によって、排気時間やチャンバ室の圧力変化の程度を調整することが可能になり、ユーザの個々の要求を排気速度制御に反映させることができる。
【0023】
上記発明は、真空圧力制御を行う場合に、チャンバ室の圧力を圧力センサで測定して監視しており、チャンバ室の圧力が弁開度の設定点に対応する圧力を測定した場合に、電動真空弁の弁開度を切り換える。このため、上記発明は、外乱等により弁開度の設定点が時間的にずれた場合に、そのずれに合わせて当該弁開度の設定点以降の弁開度の設定点をずらす補正を行わなくても、チャンバ室の圧力をリニアな目標圧力降下勾配に近似させた状態で排気速度を制御することができる。
【0024】
上記発明は、電動真空弁と並列に大口径真空遮断弁を設けてチャンバ室に接続しており、粘性流領域では電動真空弁の弁開度を切り換えて排気速度を制御し、粘性流領域を超えた後、又は、前記粘性流領域の粘性が低くなった後に、電動真空弁より大流量を制御できる大口径真空遮断弁の弁開度を調整して排気速度を制御する。このように、堆積物を巻き上げやすい粘性流領域では電動真空弁によりゆっくり排気を行い、粘性流領域を超えて堆積物の巻き上げの虞が低くなると、大口径真空遮断弁により速い排気を行うので、チャンバ室の圧力を大気圧から目標真空圧力まで短時間で到達させることができる。
【0025】
上記構成の発明では、粘性流領域から脱した後も、電動真空弁の弁開度を調整して排気速度を制御するので、堆積物の巻き上げをより確実に防止して排気速度を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気速度制御システムの概略構成図である。
【図2】電動真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図3】大気圧近傍の粘性流領域において、弁開度を同じ割合で変化させた場合の圧力降下カーブを示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図4】図3に示す圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図5】大気圧近傍の粘性流領域において、弁開度を2倍等比倍数に従って変化させた場合の圧力降下カーブを示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図6】図5に示す圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図7】大気圧近傍の粘性流領域において、弁開度を√2倍等比倍数に従って変化させた場合の圧力降下カーブを示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図8】図7に示す圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
【図9】排気速度決定プログラムのダウンロード動作のフロー図である。
【図10】ダウンロード確認画面の一例を示す図である。
【図11】等比倍数設定画面の一例を示す図である。
【図12】目標圧力降下勾配設定画面の一例を示す図である。
【図13】設定内容確認画面の一例を示す図である。
【図14】USBメモリ挿入指示画面の一例を示す図である。
【図15】コピー進捗状況表示画面の一例を示す図である。
【図16】コピー完了通知画面の一例を示す図である。
【図17】排気速度決定プログラムのフロー図である。
【図18】真空圧力制御プログラムのフロー図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る排気速度制御システムの概略構成図である。
【図20】排気速度決定プログラムのフロー図である。
【図21】圧力実測データ入力画面の一例を示す図である。
【図22】排気速度制御データ確認画面の一例を示す図である。
【図23】記憶媒体セット指示画面の一例を示す図である。
【図24】排気速度決定完了画面の一例を示す図である。
【図25】減圧乾燥装置の概略構成を示す図である。
【図26】2段排気による排気速度制御方法を示す図である。
【図27】フィードバック制御による電動真空弁の排気速度制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図25は、減圧乾燥装置1の概略構成を示す図である。
本実施形態の排気速度制御方法は、例えば図25に示す減圧乾燥装置1に使用される。減圧乾燥装置1は、チャンバ室10内を減圧状態、すなわち、真空状態に保ちながら、基板の塗膜乾燥を行うものである。減圧乾燥装置1は、チャンバ室10と真空ポンプ13との間に排気配管系16が設けられている。排気配管系16は、電動真空弁21と大口径真空遮断弁12が並列に設けられている。減圧乾燥装置1は、排気配管系16と大口径真空遮断弁12と電動真空弁21の設置数が、チャンバ室10の大きさにより増減される。このような減圧乾燥装置1は、電動真空弁21と大口径真空遮断弁12によりチャンバ室10から真空ポンプ13へガスを排気する排気流量を制御する。
【0029】
チャンバ室10の真空圧力の管理は、主に、真空ポンプ13の能力に依存する。真空ポンプ13の能力は、真空ポンプ13の排気速度Sと到達真空圧力Pで決定される。一般に、大気圧(105Pa)以下100Pa以上の粘性流領域においては、真空ポンプ13の排気速度Sはほぼ一定で、チャンバ室10内の気体の流速は、チャンバ室10の形状と真空ポンプ13の排気速度Sと排気配管系16のコンダクタンスCで決定される。また、真空ポンプ13の呼び径を基準に排気配管系16を構成すると、実効排気速度は、ほぼ真空ポンプ13の排気速度Sに近くなる。言い換えると、排気配管系16のコンダクタンスCが大きくなる。
【0030】
そのため、本実施形態の減圧乾燥装置1では、排気配管系16が真空ポンプ13の呼び径を基準に構成されている。そして、電動真空弁21は、粘性流領域での排気速度Sをコントロールするために、チャンバ室10と真空ポンプ13とを接続する排気配管系16に設置されている。このような場合、電動真空弁21のコンダクタンスの大きさが、真空ポンプ13の排気速度Sの支配的要素となる。具体的には、排気配管系16のコンダクタンスCおよび真空ポンプ13の排気速度Sは電気回路で言う並列抵抗の合成の式で決定される。つまり、排気配管系16のコンダクタンスCより弁開度を十分絞った領域で電動真空弁21を使用した場合には、排気配管系16のコンダクタンスCは、ほぼ電動真空弁21のコンダクタンスで決まり、電動真空弁21を全開付近で使用して排気配管系16のコンダクタンスCに近い条件とした場合には、電動真空弁21のコンダクタンスより排気配管系16のコンダクタンスCが低下するという状態になる。
【0031】
ところで、チャンバ室10を大気圧(105Pa)から低真空(105Pa未満102Pa以上)、中真空(102Pa未満10-1Pa以上)、高真空(10-1Pa未満)へと真空引きすると、排気配管系16を流れるガスの流れは、粘性流、中間流、分子流へと変化する。大気圧から真空引きを開始した直後の粘性流領域(大気圧(105Pa)以下100Pa以上)では、電動真空弁21や大口径真空遮断弁12の弁開度をいきなり全開付近に制御すると、チャンバ室10内の堆積物を巻き上げ、基板に付着させたり、基板そのものを損傷させる虞がある。一方、チャンバ室10内の堆積物を巻き上げないように電動真空弁21や大口径真空遮断弁12の弁開度を十分小さくすると、排気速度が遅くなり、チャンバ室10内の真空圧力を目標真空圧力に到達させるのに長時間を要する。
【0032】
そのため、図25に示す減圧乾燥装置1は、大口径真空遮断弁12を開く前に、電動真空弁21の弁開度を多段的に変化させることにより、チャンバ室10内の真空圧力を大気圧状態から真空状態までリニアな目標圧力降下勾配に近い状態で降下させるように、チャンバ室10からガスを排気する排気速度を制御している。減圧乾燥装置1は、チャンバ室10の真空圧力を圧力センサ15により測定しており、圧力センサ15の圧力測定結果からチャンバ室10内の真空圧力が所定圧力に達したことを検出すると、大口径真空遮断弁12を開いて排気流量を増加させる。このような排気速度制御により、減圧乾燥装置1は、大気圧状態から真空状態にするときに、チャンバ室10内の堆積物を巻き上げ、基板に付着させたり、基板そのものを損傷させたりしないように、排気量の調節を行うと共に、排気時間の短縮を図っている。
【0033】
<排気速度制御システムの概略構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る排気速度制御システム66の概略構成図である。
図1に示す排気速度制御システム66は、サーバ61と、インターネット62と、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)63と、減圧乾燥装置1のコントローラ65と、圧力センサ15と、電動真空弁21と、真空ポンプ13とから構成されている。
【0034】
図1に示すサーバ61には、チャンバ室10からガスを排気する排気速度を制御する場合に電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点を決定するための排気速度決定プログラムが記憶されている。サーバ61は、インターネット62を介してパソコン63と通信可能に接続される。
パソコン63は、周知のコンピュータである。パソコン63は、サーバ61に接続して、排気速度決定プログラムをダウンロードする。また、パソコン63は、排気速度を制御する場合に電動真空弁21の弁開度を変化させる等比倍数と、チャンバ室10の圧力を降下させる目標圧力降下勾配を、設定するために用いられる。パソコン63は、ダウンロードした排気速度決定プログラムと、設定された等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配とをUSBメモリ64に記憶させる。
【0035】
図1に示すコントローラ65は、USBメモリ64が接続され、排気速度決定プログラムと、設定された等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配がUSBメモリ64からコピーされる。コントローラ65には、電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点を決定する準備モードと、準備モードで決定された設定点に基づいて排気速度を制御し、プロセスを行う実行モードを選択する選択手段65aが設けられている。
【0036】
コントローラ65は、選択手段65aにより準備モードが選択されると、排気速度決定プログラムを実行する。この場合、コントローラ65は、電動真空弁21の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御するように電動真空弁21に弁開度制御信号を出力する。コントローラ65は、弁開度毎に、真空ポンプ13を駆動して粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサ15が測定した圧力測定データを取得する。その後、コントローラ65は、取得した圧力測定データからチャンバ室10の圧力と時間との関係を示す圧力降下カーブ(例えば図5のY1,Y2,Y3,Y4参照)を弁開度別に求め、弁開度別の圧力降下カーブを目標圧力降下勾配(例えば図6のX参照)に近似させるように時間的にずらし、圧力降下カーブの交点を電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点(例えば図6のP11,P12,P13参照)に決定する。
【0037】
そして、コントローラ65は、選択手段65aにより実行モードが選択されると、決定された設定点P11,P12,P13(例えば図6参照)に基づいて電動真空弁21の弁開度を切り換える弁開度切換信号を電動真空弁21に出力し、粘性流領域における真空ポンプ13の排気速度を制御する。
このようなコントローラ65は、「圧力実測手段」と「排気速度決定手段」と「真空圧力制御手段」の一例に該当する。
【0038】
<電動真空弁の構成>
図2は、電動真空弁21の断面図であって、弁閉状態を示す。
電動真空弁21は、バルブボディ24とシリンダボディ25がボルト55で一体化され、シリンダボディ25とカバー26とステッピングモータ27がボルト28で一体化され、外観が構成されている。
弁部22は、バルブボディ24に開口する第1ポート51と第2ポート52が弁室53を介して連通している。弁室53は、第1ポート51が開口する開口部外周に、弁座54が平坦に設けられている。弁室53には、弁座54に当接又は離間する弁体42が収納されている。
【0039】
弁部22は、バルブボディ24に開口する第1ポート51と第2ポート52が弁室53を介して連通している。弁室53内の第1ポート51が開口する開口部外周に、弁座54が平坦に設けられている。弁室53には、弁座54に当接又は離間する弁体42が収納されている。
駆動部23は、ステッピングモータ27の回転運動を直線運動に変換して弁体42に伝達する。ステッピングモータ27の出力軸30は、カバー26とシリンダボディ25との間に形成される収納空間部31に突出している。カバー26とシリンダボディ25の間には、ベアリング32が挟持され、そのベアリング32にホルダー33が回転自在に保持されている。ホルダー33は、上端部に出力軸30がカップリング58に連結され、下端部に送りねじナット34が複数の固定ねじ35で固定されており、送りねじナット34の回転量をステッピングモータ27の回転量により制御できるようになっている。
【0040】
駆動シャフト37は、シリンダボディ25に固定ねじ39で固定された回転止めナット38に挿通されている。駆動シャフト37は、断面六角形状をなす回転止め軸部37aが、回転止めナット38に形成された六角形状の回転止め穴38aに挿通され、回転を制限された状態で軸方向へ往復直線運動する。送りねじシャフト36は、送りねじナット34に螺合されて駆動シャフト37の上端部に接合され、送りねじナット34の回転運動を軸方向への直線運動に変換して駆動シャフト37に伝達する。
【0041】
駆動シャフト37の下端部には、弁体42が、連結部材40を介して連結されている。弁体42は、ベローズディスク47とバルブディスク48とスカート49を備え、これらを重ね合わせて連結ナット43で連結部材40に一体的に固定することにより、構成されている。環状シール部材50は、弾性変形可能な材質からなり、ベローズディスク47とバルブディスク48との間に形成されるアリ溝に装着されている。復帰ばね44は、ばね受け45との間に縮設されて、弁体42を弁座54方向へ常時付勢している。連結部材40は、駆動シャフト37に対して軸方向へのガタを持って結合ピン41で連結されており、復帰ばね44のバネトルクによりシール荷重が付与されるようになっている。ベローズ46は、上端部がシリンダボディ25とバルブボディ24に挟持される挟持部46aに溶接され、下端部がベローズディスク47に溶接されており。弁体42の上下動に応じて弁室53内で伸縮して、駆動シャフト37の摺動部等で発生するパーティクルが流路内へ流出しないようにしている。
【0042】
ここで、ステッピングモータ27には、図示しないロータの機械的回転変位量を計測するためのエンコーダ29が固定されている。エンコーダ29は、減圧乾燥装置1のコントローラ65に通信可能に接続され、計測結果をコントローラ65に出力する。コントローラ65は、ステッピングモータ27の図示しないコイルに接続され、エンコーダ29の計測信号に基づいて図示しないコイルへ電力(弁開度制御信号)を供給し、電動真空弁21の弁開度を制御する。
【0043】
このような電動真空弁21は、通常、弁体42が弁座54に当接して第1ポート51と第2ポート52との間を遮断している。この状態から、ステッピングモータ27が正方向へ回転すると、送りねじナット34がホルダー33を介して出力軸30と一体的に回転し、その回転運動が図中上方向(弁開方向)への直線運動に変換されて送りねじシャフト36に伝達される。駆動シャフト37は、送りねじシャフト36と一体的に上昇し、連結部材40を介して弁体42を引き上げる。これにより、弁体42が弁座54から離間して第1及び第2ポート51,52を連通させる。電動真空弁21は、環状シール部材50の弾性変形量を変化させる領域では、流体漏れにより微小流量を制御でき、さらに、弁体42が弁座54から離間する領域では、離間量に応じて排気流量が制御される。この弁開度は、ステッピングモータ27の図示しないロータの回転量により制御される。
【0044】
一方、ステッピングモータ27が負方向に回転すると、送りねじナット34が出力軸30と一体的に負方向に回転し、送りねじシャフト36を下降させる。駆動シャフト37は、送りねじシャフト36と一体的に下降し、連結部材40を介して弁体42を弁座54に当接させる。このとき、弁体42が弁座54に当接した後、復帰ばね44が、連結部材40と結合ピン41のガタ分だけ弁体42を弁座54側へ押し下げて環状シール部材50を弁座54に密着させ、シールを行う。
【0045】
<圧力降下カーブについて>
図3は、大気圧近傍の粘性流領域(大気圧(105Pa)以下100Pa以上)において、弁開度を同じ割合で変化させた場合の圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8を示す図である。縦軸に真空圧力(Pa)を示し、横軸に時間(sec)を示す。図4は、図3に示す圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6,Y7,Y8を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
図3及び図4の縦軸に記載する真空圧力が無次元化してあり、1.0が大気圧で1.01325×105Paとしている。また、図3の横軸に記載する時間の数字は便宜的に付けており、必ずしも、この時間に限定されるものではない。図3及び図4に示すY1〜Y8は、電動真空弁21の弁開度を一定の大きさで広げた場合の弁開度別の圧力降下カーブを示す。圧力降下カーブY1〜Y8は、電動真空弁21の能力を無次元化して表しており、アルファベットYに添えた数字の大きさが流せる能力の大きさを示している。図4のXは、チャンバ室10の圧力の目標変化率を示す目標圧力降下勾配である。図3及び図4のX1〜X8は、圧力降下カーブY1〜Y8のうち目標圧力降下勾配Xに近似する部分を探した結果を示している。
【0046】
図3に示すように、圧力降下カーブY1から圧力降下カーブY8へ向かって電動真空弁21の弁開度を一定の大きさで(例えば1mmずつ)段階的に広げていくと、圧力降下カーブY1〜Y8のうち目標圧力降下勾配Xに近似する近似部分X1〜X8が、弁開度を広げるに従って減少している。これは、弁開度を広げるほど、真空圧力の圧力が大きなカーブを描きながら降下するからである。
【0047】
また、図3に示すように、圧力降下カーブY1〜Y8の近似部分X1〜X8は、弁開度を広げる程、オーバーラップする部分を増加させている。すなわち、圧力降下カーブY2,Y3,Y4の近似部分X2,X3,X4を比較すると、圧力降下カーブY3の近似部分X3は、圧力降下カーブY2の近似部分X2と部分的にオーバーラップすると共に、圧力降下カーブY4の近似部分X4と部分的にオーバーラップしている。また、圧力降下カーブY4〜Y8の近似部分X4〜X8は、互いにオーバーラップしている。
【0048】
このため、図4に示すように、圧力降下カーブY2〜Y8を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間軸に沿って移動させた場合、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY1に対応する弁開度から圧力降下カーブY2に対応する弁開度へ広げた後、圧力降下カーブY2の目標圧力降下勾配X2の途中で、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY2に対応する弁開度から圧力降下カーブY3に対応する弁開度に広げることになる。そしてその後、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY3に対応する弁開度から圧力降下カーブY4に対応する弁開度に広げた後直ぐに、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY5に対応する弁開度から圧力降下カーブY6に対応する弁開度に広げ、さらにその後直ぐに、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY6に対応する弁開度から、圧力降下カーブY7に対応する弁開度に広げる。そして更に、電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY7に対応する弁開度から圧力降下カーブY8に対応する弁開度に広げ、チャンバ室10を絶対真空に真空引きする。つまり、図4に示すように、電動真空弁21の弁開度を一定の大きさで広げていった場合、弁開度の設定点を変更した直後に次の弁開度に変更しなければならない設定点が何点か生じていた。そのような設定点は、排気制御に実質的に用いられず、無駄な設定点であった。
【0049】
<真空圧力特性について>
上記のように、電動真空弁21の弁開度を変更して圧力降下カーブを実測するうちに、発明者らは、弁開度を等比倍数で広げ、各弁開度で得られる圧力降下カーブを目標圧力降下勾配Xに近似させるように、電動真空弁21の弁開度を切り換えるタイミングを設定すれば、圧力降下カーブのうち目標圧力降下勾配Xに近似する部分をオーバーラップさせることなく、チャンバ室10内の圧力を目標圧力降下勾配Xに近似させた状態で降下させるように排気速度を制御できることを発見した。以下、具体的に説明する。
【0050】
図5は、大気圧近傍の粘性流領域において、弁開度を2倍等比倍数に従って変化させた場合の圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。図6は、図5に示す圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
図5のY1,Y2,Y4,Y8は、電動真空弁21の弁開度を2倍等比倍数に従って設定し、チャンバ室10の圧力を圧力センサ15で測定した結果を示す圧力降下カーブである。図6のXは、チャンバ室10の圧力の目標変化率を示す目標圧力降下勾配である。図5のX1,X2,X4,X8は、圧力降下カーブY1,Y2,Y4.Y8のうち目標圧力勾配Xに近似する部分を探した結果を示す。圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8は、電動真空弁21の能力を無次元化して表しており、アルファベットYに添えた数字の大きさが流せる能力の大きさとして表している。
【0051】
図6に示すように、圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらすと、図5に示す圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8の近似部分X1,X2,X4,X8をオーバーラップさせずに、弁開度の設定点P11,P12,P13が設定される。すなわち、図6の設定点P11に示すように、真空引きを開始してから時間t11が経過する間(又は真空圧力が大気圧から圧力Q11まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY1に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P12に示すように、時間t11から時間t12まで経過する間(又は真空圧力が圧力Q11から圧力Q12まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY2に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P13に示すように、時間t12から時間t13まで経過する間(又は真空圧力が圧力Q12から圧力Q13まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY4に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P14に示すように、時間t13以降(真空圧力が圧力Q13まで低下してから)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY8に対応する弁開度に設定すれば、電動真空弁21の弁開度を4段階で広げることにより真空圧力を大気圧から絶対真空まで目標圧力降下勾配Xに近い状態で真空引きを行うことが可能である。
【0052】
図7は、大気圧近傍の粘性流領域において、弁開度を√2倍等比で変化させた場合の圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。図8は、図7に示す圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8を目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらした状態を示す図である。縦軸に真空圧力を示し、横軸に時間を示す。
図7のY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8は、電動真空弁21の弁開度を√2倍等比倍数に従って設定し、チャンバ室10の圧力を圧力センサ15で測定した結果を示す圧力降下カーブである。図8のXは、チャンバ室10の圧力の目標変化率を示す目標圧力降下勾配である。図7のX1,X1.41,X2,X2.82,X4,X5.64,X8は、圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8のうち目標圧力勾配Xに近似する部分を探した結果を示す。図7及び図8の圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8は、電動真空弁21の能力を無次元化して表しており、アルファベットYに添えた数字の大きさが流せる能力の大きさとして表している。
【0053】
図8に示すように、圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらすと、図7に示す圧力降下カーブY1,Y1.41,Y2,Y2.82,Y4,Y5.64,Y8の近似部分X1,X1.41,X2,X2.82,X4,X5.64,X8をオーバーラップさせずに、弁開度の設定点P21,P22,P23,P24,P25,P26が設定される。すなわち、図8の弁開度の設定点P21に示すように、真空引きを開始してから時間t21が経過するまでの間(又は真空圧力が大気圧から圧力Q21まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY1に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P22に示すように、時間t21から時間t22までの間(又は真空圧力が圧力Q21から圧力Q22まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY1.41に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P23に示すように、時間t22から時間t23までの間(又は真空圧力が圧力Q22から圧力Q23まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY2に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P24に示すように、時間t23から時間t24までの間(又は真空圧力が圧力Q23から圧力Q24に低下するまでの間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブX2.82に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P25に示すように、時間t24から時間t25までの間(又は真空圧力が圧力Q24から圧力Q25まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY4に対応する弁開度に設定し、図中弁開度の設定点P26に示すように、時間t25から時間t26までの間(又は真空圧力が圧力Q25から圧力Q26まで低下する間)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY5.64に対応する弁開度に設定し、時間t26以降(又は真空圧力が圧力Q26まで低下してから)は電動真空弁21の弁開度を圧力降下カーブY8に対応する弁開度に設定すれば、電動真空弁21の弁開度を7段階で広げることにより真空圧力を大気圧から絶対真空まで目標圧力降下勾配Xに近い状態で真空引きを行うことが可能である。
【0054】
よって、図6及び図8に示すように、電動真空弁21の弁開度を等比倍数で設定し、設定された弁開度毎に得られる圧力降下カーブを目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間軸をずらせば、圧力降下カーブの目標圧力降下勾配Xに近似する部分をオーバーラップさせることなく、弁開度を切り換える設定点を決定できることがわかる。すなわち、直線の目標圧力降下勾配Xに近似させてチャンバ室10のガスを真空ポンプ13に排気させるには、電動真空弁21の弁開度を等比に設定すればよいことが分かった。そして、等比倍数(または弁開度を何点で切り換えるか)を決めれば、弁開度の設定ポイントは、設定された目標圧力降下勾配Xに従って必然的に決まることになり、敢えて設定する必要はないことが分かった。
【0055】
図6及び図8に示すグラフを比較すると、等比倍数の値を小さく設定すれば、図中弁開度の設定点P11〜P13及び弁開度の設定点P21〜P26に示すように、圧力降下カーブのつながる部分が目標圧力降下勾配Xに近づき、圧力降下カーブのつながりに無駄がなくなることがわかる。すなわち、等比倍数の値を小さく設定して、電動真空弁21の弁開度を切り換える回数を多くするほど、真空圧力の低下する直線性が良くなるように排気速度を制御できる。
【0056】
また、図6及び図8に示すように、等比倍数の値を大きく設定すれば、実測する圧力降下カーブの数が少なくて済む。具体的には、等比倍数を2倍に設定した場合の圧力降下カーブは4本必要であるのに対して、等比倍数を√2倍に設定した場合の圧力降下カーブは7本必要であり、等比倍数を2倍に設定する方が、等比倍数を√2倍に設定する場合より、圧力降下カーブの数が3本少なくて済む。圧力降下カーブは、電動真空弁21の弁開度を等比倍数に従った弁開度に設定し、大気圧から絶対真空まで真空引きを行うことにより取得されるため、圧力降下カーブの取得に時間がかかる。よって、等比倍数の値を大きく設定して取得すべく圧力降下カーブの数を減らせば、圧力降下カーブの取得時間が短くなり、目標圧力降下勾配Xに近似させるように電動真空弁21の弁開度を決定する時間を短縮できる。
【0057】
<電動真空弁による排気速度制御方法:排気速度制御データ生成動作>
上記真空圧力特性を利用した電動真空弁による排気速度制御方法について説明する。図9は、排気速度決定プログラムのダウンロード動作のフロー図である。図10〜図16は、ディスプレイ63aに表示される画面の一例を示す図である。図17は、排気速度決定プログラムのフロー図である。図18は、真空圧力制御プログラムのフロー図である。
パソコン63は、ユーザからの要求に従い、図9のステップ1(以下「S1」と略記する。)において、パソコン63のディスプレイ63aに、図10に示すダウンロード確認画面を表示させる。ダウンロード確認画面には、「排気速度決定プログラムをダウンロードしますが、よろしいですか?」と表示されているので、ダウンロードするならば、ユーザは「はい」のボタンB1をマウス等でクリックする。すると、パソコン63は、インターネット62を介してサーバ61に接続し、サーバ61から排気速度決定プログラムをダウンロードし始める。パソコン63は排気速度決定プログラムのダウンロードが完了するまで待機する(図9のS2:No)。
【0058】
排気速度決定プログラムのダウンロードが完了すると(S2:Yes)、パソコン63は、図9のS3において、図11に示す等比倍数設定画面をディスプレイ63aに表示する。等比倍数設定画面には、等比倍数入力欄B3が設けられている。ユーザは、パソコン63のキーボードから所望の等比倍数(ここでは2倍とする。)を等比倍数入力欄B3に入力し、OKボタンB4をマウス等でクリックする。
【0059】
パソコン63は、OKボタンB4がクリックされることにより、弁開度の等比倍数が設定されたと判断し(図9のS4)、S5において、図12に示す目標圧力降下勾配設定画面をディスプレイ63aに表示する。目標圧力降下勾配設定画面には、大気圧から絶対真空まで真空圧力をリニアに低下させる目標圧力降下勾配Xを入力するための目標圧力降下勾配入力欄B5と、排気時間を入力するための排気時間入力欄B6が設けられている。ユーザは、目標圧力降下勾配入力欄B5に所望の目標圧力降下勾配Xをマウスでドラッグするなどして手入力するか、排気時間入力欄B6に所望の排気時間を入力することにより、目標圧力降下勾配Xを決定する。例えば、排気時間を短くしたい場合には、図中Xaに示すように、目標圧力降下勾配入力欄B5に表示される目標圧力降下勾配Xの傾斜を大きし、一方、排気時間を長したい場合には、図中Xbに示すように、目標圧力降下勾配入力欄B5に表示される目標圧力降下勾配Xの傾斜を小さくする。また、例えば、排気時間入力欄B6に入力する時間によって、排気時間の長短を設定しても良い。排気時間が入力された場合には、大気圧からの目標圧力降下勾配Xが排気時間に応じて目標圧力降下勾配入力欄B5に自動表示されるようにすることが好ましい。目標圧力降下勾配X又は排気時間の設定が完了したら、ユーザはOKボタンB7をマウスでクリックする。
【0060】
パソコン63は、OKボタンB7がクリックされると、目標圧力降下勾配Xが設定されたと判断し(S6:Yes)、図9のS7において、図13に示す設定内容確認画面をディスプレイ63aに表示する。設定内容確認画面には、設定表示欄B8に、ユーザによって設定された弁開度の等比倍数とユーザによって設定された目標圧力降下勾配Xとが表示されている。ユーザは、設定表示欄B8の表示内容が正しいことを確認したら、「はい」のボタンB9をマウスでクリックする。尚、ユーザは、設定表示欄B8の表示内容を変更したい場合には、「変更」のボタンB10をマウスでクリックする。この場合(図9のS8:変更)、パソコン63は、図9のS3に戻り、図11に示す等比倍数設定画面が再表示される。
【0061】
設定内容確認画面の「はい」のボタンB9がクリックされると(図9のS8:OK)、パソコン63は、図14に示すUSBメモリ挿入指示画面をディスプレイ63aに表示する。USBメモリ挿入指示画面には、例えば、「排気速度決定プログラムと、設定された等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配をUSBメモリにコピーしますので、USBメモリをUSBポートに挿入して下さい。」との指示が表示される。ユーザは、指示に従ってUSBメモリ64をパソコン63のUSBポートに挿入した後、USBメモリ挿入指示画面のOKボタンB11をクリックする。パソコン63は、USBメモリ64を検出するまでは(図9のS11:No)、そのまま待機している。一方、パソコン63は、USBメモリ64を検出すると(S11:Yes)、図9のS12において、USBメモリ64に排気速度決定プログラムと、設定された弁開度の等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配Xとをコピーし始める。コピーの進捗状況は、図15に示すコピー進捗状況表示画面に表示される。パソコン63は、コピーが完了すると、図9のS13において、図16に示すコピー完了通知画面を表示する。コピー完了通知画面には、例えば、「コピーが完了しました。USBメモリをUSBポートから抜いて下さい。そして、抜いたUSBメモリをチャンバ室の圧力を制御するコントローラに接続し、排気速度決定プログラムと、設定された等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配をコントローラにコピーして下さい。その後、コントローラの選択手段により準備モードを選択して弁開度の設定点を決定した後、選択手段により実行モードを選択してプロセスを実行して下さい。」との指示が表示される。ユーザは、表示内容からその後の作業手順を理解したら、コピー完了通知画面のOKボタンB12をクリックする、すると、パソコン63は、図9の処理を終了し、ディスプレイ63aの表示画面を初期画面に戻す。
【0062】
ユーザは、USBメモリ64を持って、コントローラ65がある場所へ移動する。そして、USBメモリ64をコントローラ65のUSBポートに接続し、USBメモリ64からコントローラ65へ排気速度制御プログラムと、設定された等比倍数と、設定された目標圧力降下勾配Xをコピーする。コピーが終了したら、ユーザは、選択手段65aにより準備モードを選択する。すると、コントローラ65は、コピーされた排気速度決定プログラムを実行する。図17は、排気速度決定プログラムのフロー図である。
【0063】
図17のS15に示すように、コントローラ65は、排気速度を決定する処理を実行中であることを、表示ランプ等でユーザに報知する。この表示ランプ等による報知により、ユーザは、減圧乾燥装置1にプロセスを実行させることができないことを認識する。
【0064】
そして、S16において、コントローラ65は、設定された弁開度の等比倍数を読み出し、圧力降下カーブを順次取得して記憶する。すなわち、コントローラ65は、USBメモリ64からコピーした等比倍数に従い、電動真空弁21の弁開度を求める。具体的には、等比倍数が2倍に設定された場合、電動真空弁21の弁開度は、弁閉位置から全開位置までのストロークの12.5%、25%、50%、100%と求められる。そして、求めた弁開度毎に圧力降下カーブを求める。すなわち、コントローラ65は、例えば、電動真空弁21の弁開度を弁閉位置から全開位置までのストロークの12.5%に設定する弁開度制御指令を電動真空弁21に送信し、真空ポンプ13を駆動してチャンバ室10の圧力を大気圧から絶対真空まで低下させる。このとき、コントローラ65は、チャンバ室10内の圧力を測定するための圧力センサ15から圧力測定データを入力する。そして、コントローラ65は、例えば図5のY1に示すように、入力された圧力測定データから、チャンバ室10の真空圧力と時間の関係を示す圧力降下カーブを求め、求めた圧力降下カーブを設定された弁開度12.5%に関連付けて記憶領域に記憶する。これと同様に、コントローラ65は、電動真空弁21の弁開度を、弁閉位置から全開位置までのストロークの25%、50%、100%にそれぞれ設定して圧力測定データを取得し、取得した圧力測定データから求められた図5の圧力降下カーブY2,Y4,Y8を設定された弁開度25%、50%、100%に関連付けて記憶領域にそれぞれ記憶する。
【0065】
そして、S17において、設定された目標圧力降下勾配Xと取得した圧力降下カーブに基づいて排気速度制御データを生成し、記憶する。ここで、排気速度制御データとは、弁開度を切り換える設定点を決定した結果を示すデータをいう。弁開度の設定点は、真空圧力と時間の関係から求められる。排気速度制御データの生成方法をより具体的に説明する。取得した圧力降下カーブy1,Y2,Y4,Y8別に、目標圧力降下勾配Xに近似する部分を探すと、図5の近似部分X1,X2,X4,X8に示すようになる。図6に示すように、目標圧力降下勾配Xに近似するように圧力降下カーブY1,Y2,Y4,Y8を時間軸に沿ってずらすと、真空引き開始後から時間t11が経過し、且つ、真空圧力が大気圧から圧力Q11に低下した場合に、圧力降下カーブY1,Y2が交差する。また、真空引き開始後から時間t12が経過し、且つ、真空圧力が圧力Q12に低下した場合に、圧力降下カーブY2,Y3が交差する。また、真空引き開始後から時間t13が経過し、且つ、真空圧力が圧力Q13に低下した場合に、圧力降下カーブY4,Y8が交差する。そこで、圧力降下カーブY1,Y2の交点を、弁開度を12.5%から25%に切り換える設定点P11に設定し、圧力降下カーブY2,Y4の交点を、弁開度を25%から50%に切り換える設定点P12に設定し、圧力降下カーブY4,Y8の交点を、弁開度を50%から100%に切り換える設定点P13に設定する。そして、真空圧力と時間で特定される設定点P11,P12,P13を排気速度制御データとして作成する。
【0066】
排気速度制御データの生成・記憶が終了したら、S18において、表示ランプを消灯するなどして、排気速度決定動作が終了したことを報知し、処理を終了する。これにより、ユーザは、プロセスを実行できるようになったことを認識する。
【0067】
<電動真空弁による排気速度制御方法:真空圧力制御動作>
図18は、コントローラ65に記憶された真空圧力制御プログラムのフロー図である。
ユーザがコントローラ65の選択手段65aにより実行モードを選択すると、コントローラ65は、図18に示す真空圧力制御プログラムを起動する。そして、まずS20において、チャンバ室10にウエハを搬入する。そして、S21において、排気速度制御データにより設定される弁開度の設定点(図6のP11〜P13)に従って電動真空弁21の弁開度を切り換え、チャンバ室10の圧力を大気圧から絶対真空へ減圧させる。具体的には、図6に示すように、コントローラ65は、電動真空弁21の弁開度を12.5%に設定する弁開度制御信号を電動真空弁21に送信し、電動真空弁21を弁開させ、大気圧から真空引きを開始する。真空引きを開始してから弁開度切換時間t11が経過すると、コントローラ65は、電動真空弁21の弁開度を25%に設定する弁開度制御信号を電動真空弁21に送信し、電動真空弁21の弁開度を直前の弁開度の2倍に広げ、排気系のコンダクタンスを大きくする。そして、コントローラ65は、真空引きを開始してから弁開度切換時間t12が経過すると、電動真空弁21の弁開度を50%に設定する弁開度制御信号を電動真空弁21に送信し、電動真空弁21の弁開度を直前の弁開度の2倍に広げ、排気系のコンダクタンスを大きくする。そして、コントローラ65は、真空引きを開始してから弁開度切換時間t13が経過すると、電動真空弁21の弁開度を100%に設定する弁開度制御信号を電動真空弁21に送信し、電動真空弁21の弁開度を直前の弁開度の2倍に広げ、排気系のコンダクタンスを大きくする。この結果、チャンバ室10の圧力は、図6に示すように、ユーザが設定した目標圧力降下勾配Xに近似した状態で大気圧から絶対真空へ減圧される。
【0068】
そして、S22において、圧力センサ15が測定する圧力測定データに基づいて、チャンバ室10の圧力が粘性流領域を超えたか否かを判断する。粘性流領域を超えるまでは(S22:No)、S21において、電空真空弁21を使用して排気速度を制御する。一方、チャンバ室10の圧力が粘性流領域を超えた場合には(S22:Yes)、大口径真空遮断弁12の弁開度を調整して排気速度を制御する。大口径真空遮断弁12は、電動真空弁21より弁座口径が大きく、大流量を制御できるため、電動真空弁21のみで排気制御を行う場合より速く排気を行うことができる。
【0069】
コントローラ65は、チャンバ室10内のウエハに対するプロセスが終了すると(S24:Yes)、S25において、ウエハをチャンバ室10から搬出する。そして、コントローラ65は、S26において、プロセス終了ボタンの押下等により真空圧力制御を終了する指示が入力されたか否かにより真空圧力制御を終了するか否かを判断する。指示が入力されず、真空圧力制御を続行する場合には(S26:No)、S27において、チャンバ室10を大気圧にしてから、S24において次のウエハを搬入する。一方、指示が入力されて真空圧力制御を終了する場合には(S26:Yes)、処理を終了する。
【0070】
尚、コントローラ65は、上記真空圧力制御動作中、表示ランプ等によりプロセス中であることを報知するようにしても良い。
また、弁開度の設定点の最大段数(ここでは弁開度100%の場合)において、系のコンダクタンスの影響を受ける領域(例えば中間流領域)に入ることがある。しかしこの場合、図6の圧力降下カーブY4に示すように、少なくとも、排気速度が、設定された目標圧力降下勾配Xを超えて速くなることはなく、安全サイドへ速度がずれるのみである。
【0071】
上記説明では、ユーザが等比倍数を2倍に設定した場合を例に挙げたが、例えばユーザが弁開度の等比倍数を√2倍に設定した場合には、上記と同様の処理により、図8に示すように弁開度の設定点P21〜P26が決定され、排気速度がより直線的に制御される。
【0072】
<作用効果>
従って、上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法、排気速度制御システム66、弁開度決定方法、弁開度決定プログラムは、以下の作用効果を奏する。
真空ポンプ13やチャンバ室10や排気配管系16による制御成績を排気速度に直接反映させるために、電動真空弁21の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、真空ポンプ13により粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサ15がチャンバ室10の圧力を測定した圧力測定データを取得する。つまり、電動真空弁21の設置先の装置を使って弁開度別に圧力測定データを実測する。弁開度別に実測した圧力測定データから圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を求め、圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を目標圧力降下勾配Xに近似させるように時間的にずらすと、圧力降下カーブY2,Y3,Y4が直前の弁開度の圧力降下カーブY1,Y2,Y3とそれぞれ交差する。そこで、圧力降下カーブ同士の交点を電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点P11.P12,P13に決定する。このように、弁開度を等比倍数に従って変化させると、各弁開度に対応する圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4の目標圧力降下勾配Xに近似する部分がオーバーラップしないため、設定点P11,P12,P13が無駄に設定されない。真空圧力制御時には、設定点P11,P12,P13に基づいて電動真空弁21の弁開度を切り換えることにより、排気配管系16のコンダクタンスを変更し、粘性流領域における排気速度を制御する。このとき、電動真空弁21は、チャンバ室10の圧力が目標圧力降下勾配Xに近似する部分から外れると同時に弁開度を等比倍数分だけ広げられ、チャンバ室10の圧力を目標圧力降下勾配に再び近づけて降下させるため、チャンバ室10の圧力は粘性流領域でも目標圧力降下勾配Xに近似した状態で降下する。
【0073】
このように、上記実施形態では、粘性流領域における圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を、電動真空弁21の設置先であるチャンバ室10、真空ポンプ13及び排気配管系16を使用して実測するので、電動真空弁21の設置先の制御成績や粘性流領域におけるプロセスへの悪影響を、電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点P11,P12,P13の決定に反映させることが可能である。そして、弁開度の設定点P11,P12,P13を決定する者は、プロセスの悪影響を排除するための専門知識を持っていなくても、圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を実測して目標圧力降下勾配Xに近似させて圧力降下カーブY1,Y2,Y3,Y4を時間的にずらすだけで、チャンバ室10の圧力を目標圧力降下勾配Xに近づけるように弁開度の設定点P11,P12,P13を決定することが可能である。その結果、上記実施形態は、粘性流領域において親弁と子弁により弁開度を2段制御して排気速度を制御する場合(図26参照)よりも、粘性流領域においてプロセスに影響しないように真空圧力・排気制御条件を得たり、排気速度を短縮することが可能になる。そして、上記実施形態は、排気速度をフィードバック制御する場合(図27参照)のようにチャンバ室の圧力を直線状に降下させることができないものの、複雑な制御基板や制御プログラム等を使用しなくても、子弁と親弁で排気速度を制御するもの(図26参照)よりチャンバ室10の圧力を直線的に降下させるように排気速度を制御することが可能になる。
【0074】
よって、上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法、排気速度制御システム66、弁開度決定方法、弁開度決定プログラムによれば、チャンバ室10の圧力を目標圧力降下勾配Xに近づけるように電動真空弁21の弁開度を切り換える設定点P11.P12,P13を簡単かつ安価に設定できる。
【0075】
上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法は、等比倍数設定画面上で等比倍数を設定できる。そのため、例えば、等比倍数設定画面上で等比倍数を小さく設定すれば(例えば√2倍)、図8に示すように、電動真空弁の弁開度を切り換える設定点の数を増やして、設定点を目標圧力降下勾配に近い位置に決定し、チャンバ室の圧力を滑らかに変化させることが可能である。一方、例えば、等比倍数設定画面上で等比倍数を大きく設定すれば(例えば2倍)、図6に示すように、実測する圧力降下カーブの数が減り、弁開度の設定点を決定する時間を短縮することが可能である。よって、上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法によれば、等比倍数の設定値によって、チャンバ室10の圧力を滑らかに変化させる程度や、弁開度の設定点を取得するための確保できる時間を調整することが可能になり、ユーザの個々の要求を排気速度制御に反映させることができる。
【0076】
上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法は、目標圧力降下勾配設定画面上で目標圧力降下勾配Xを設定できる。そのため、例えば、排気時間を短くしたい場合には、目標圧力降下勾配設定画面において傾斜角度を大きくするように目標圧力降下勾配Xを設定すれば良い。一方、ゆっくり排気したい場合には、目標圧力降下勾配設定画面において傾斜角度を小さくするように目標圧力降下勾配Xを設定すれば良い。よって、上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法によれば、目標圧力降下勾配Xの設定によって、排気時間やチャンバ室10の圧力変化の程度を調整することが可能になり、ユーザの個々の要求を排気速度制御に反映させることができる。
【0077】
上記実施形態の電動真空弁による排気速度制御方法及び排気速度制御システム66は、電動真空弁21と並列に大口径真空遮断弁12を設けてチャンバ室10に接続しており、粘性流領域では電動真空弁21の弁開度を切り換えて排気速度を制御し、粘性流領域を超えた後に、電動真空弁21より大流量を制御できる大口径真空遮断弁12の弁開度を調整して排気速度を制御する。このように、堆積物を巻き上げやすい粘性流領域では電動真空弁21によりゆっくり排気を行い、粘性流領域を超えて堆積物の巻き上げの虞が低くなると、大口径真空遮断弁12により速い排気を行うので、チャンバ室10の圧力を大気圧から目標真空圧力まで短時間で到達させることができる。このような方法及びシステム66は、特に、チャンバ室10の容量が大きい場合に有効である。
【0078】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。図19は、本発明の第2実施形態に係る排気速度制御システム72の概略構成図である。
本実施形態の排気速度制御システム72は、コントローラ71が実測した圧力測定データを用いて圧力降下カーブを求め、その圧力降下カーブを用いてパソコン63が弁開度の設定点を決定し、決定した設定点に従いコントローラ71がチャンバ室10の真空圧力を制御する。この意味で、パソコン63とコントローラ71は「圧力実測手段」の一例となり、パソコン63は「排気速度決定手段」の一例となり、コントローラ71は「真空圧力制御手段」の一例となる。本実施形態の排気速度制御システム72は、弁開度の設定点を決定する方法が第1実施形態と相違している。ここでは第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点は図面及び説明に第1実施形態と同一符号を用いて説明を適宜省略する。
【0079】
図19に示すように、パソコン63は、インターネット62を介してサーバ61に接続し、サーバ61から排気速度決定プログラムをダウンロードする。ユーザがパソコン63上で排気速度制御プログラムを実行すると、パソコン63は、図20に示す処理を実行し、弁開度の設定点を決定する。図20は、排気速度決定プログラムのフロー図である。
【0080】
パソコン63は、S31において、図9のS3と同様に等比倍数設定画面(図11)を表示し、S32において、弁開度の等比倍数が設定されたか否かを判断する。等比倍数設定画面の等比倍数入力欄B3に等比倍数が入力され、OKボタンB4がクリックされると、パソコン63は、弁開度の等比倍数が設定されたと判断し(S32:Yes)、S33において、図21に示す圧力実測データ入力画面を表示する。圧力実測データ入力画面には、例えば、「チャンバ室の真空圧力を制御するコントローラに以下の弁開度を設定してチャンバ室の圧力変化を実測し、その実測結果を入力して下さい。」との指示が表示される。そして、圧力実測データ入力画面には、S31で設定された等比倍数(ここでは2倍)に基づいて求められた弁開度12.5%、25%、50%、100%が表示されている。そこで、ユーザは、USBメモリ64を持ってコントローラ71の設置場所へ行き、USBメモリ64をコントローラ71に接続する。そして、ユーザは、コントローラ71の弁開度設定手段71aに弁開度12.5%を設定する。すると、コントローラ71は、チャンバ室10の圧力を大気圧から絶対真空に減圧させ、圧力センサ15からコントローラ71に入力された圧力測定データをUSBメモリ64に記憶させる。ユーザは、弁開度25%、50%、100%についても、それぞれ同様に圧力測定データをUSBメモリ64に記憶させる。このようにして、弁開度12.5%,25%、50%、100%の圧力測定データがUSBメモリ64に記憶されたら、ユーザは、USBメモリ64をコントローラ71から抜いてパソコン63へ戻り、USBメモリ64をパソコン63へ接続してUSBメモリ64に記憶された圧力測定データをパソコン63にコピーする。コピーが完了したら、ユーザは、圧力実測データ入力画面の入力ボタンB21をマウス等でクリックする。
【0081】
パソコン63は、入力ボタンB21がクリックされると、弁開度の等比倍数に従って圧力降下カーブの実測値が入力されたと判断し(S34:Yes)、S35において、図9のS5と同様に目標圧力降下勾配設定画面(図12参照)をディスプレイ63aに表示する。ユーザが目標圧力降下勾配設定画面に目標圧力降下勾配Xを設定すると(S36:Yes)、パソコン63は、S37において、排気速度制御データを作成する。排気速度制御データの作成方法は、図17のS22と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
そして、パソコン63は、S38において、例えば図22に示す排気速度制御データ確認画面をディスプレイ63aに表示し、ユーザに排気速度制御データの内容を確認させる。排気速度制御データ確認画面には、弁開度の設定点がわかるグラフB22と、弁開度毎の弁開時間B23が表示されている。ユーザは、弁開度の設定点を変更したい場合には、変更ボタンB25をクリックする。この場合(S39:変更)、パソコン63は、S31に戻り、等比倍数と目標圧力降下勾配Xをユーザに再設定させる。
【0083】
一方、ユーザは、排気速度制御データに変更がない場合には、「はい」のボタンB24をクリックする(S39:OK)。すると、パソコン63は、S40において、例えば図23に示す記憶媒体セット指示画面をディスプレイ63aに表示する。記憶媒体セット指示画面には、例えば、「弁開度の設定点をコピーしますので、USBメモリをUSBポートに差し込んだら、「セット」をクリックして下さい。」との指示が表示されている。そこで、ユーザは、USBメモリ64をパソコン63のUSBポートに差し込み、記憶媒体セット指示画面のセットボタンB26をクリックする。パソコン63は、USBメモリ64を検出すると(S41:Yes)、S42において、排気速度制御データをUSBメモリ64にコピーする。パソコン63は、排気速度制御データをUSBメモリ64にコピーし終わると、S43において、例えば図24に示す排気速度決定完了画面をディスプレイ63aに表示し、処理を終了する。排気速度決定完了画面には、例えば、「弁開度の設定点をUSBメモリにコピーしました。USBメモリの弁開度の設定点を真空圧力制御システムのコントローラにコピーし、プロセス開始スイッチを操作して下さい。」との指示が表示される。そこで、ユーザは、USBメモリ64をパソコン63から抜き、排気速度決定完了画面のはいボタンB27をマウス等でクリックする。これにより、パソコン63は図17に示す処理を終了する。
【0084】
そして、ユーザは、排気速度制御データ(弁開度の設定点)が記憶されたUSBメモリ64を持ってコントローラ71の設置場所へ移動する。そして、コントローラ71にUSBメモリ64を接続して、排気速度制御データ(弁開度の設定点)をコントローラ71に記憶させる。その後、ユーザは、コントローラ71のプロセス開始スイッチ71bを操作し、排気速度制御データに基づくプロセスをコントローラ71に実行させる。
【0085】
<作用効果>
従って、本実施形態の排気速度制御方法は、第1実施形態で説明した作用効果に加え、パソコン63上で決定した弁開度の設定点をコントローラ71にコピーするので、コントローラ71が自動的に圧力測定データを取得して弁開度の設定点を決定する必要がなく、コントローラ71の回路構成を第1実施形態のコントローラ65より単純且つ安価にすることができる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の排気速度制御方法は、真空圧力制御工程を除き、第1実施形態の排気速度制御方法と同様である。よって、ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0087】
本実施形態の排気速度制御方法は、排気速度制御データ(例えば図6参照)に従って電動真空弁21の弁開度を切り換えるタイミングを、圧力センサ15の圧力測定データに基づいて行う点が第1実施形態と相違している。すなわち、コントローラ65は、例えば図6に示す排気速度制御データを用いて真空圧力制御を行う場合、電動真空弁21の弁開度を12.5%に設定して真空引きを開始すると同時に、圧力センサ15から圧力測定データを入力し、チャンバ室10の圧力を監視する。コントローラ65は、圧力センサ15の圧力測定データが圧力Q11になったことを検出すると、電動真空弁21の弁開度を12.5%から25%に切り換える。そして、コントローラ65は、圧力センサ15の圧力測定データが圧力Q12になったことを検出すると、電動真空弁21の弁開度を25%から50%に切り換える。更に、コントローラ65は、圧力センサ15の圧力測定データが圧力Q13になったことを検出すると、電動真空弁21の弁開度を50%から100%に切り換える。
【0088】
<作用効果>
上記排気速度制御方法は、圧力センサ15の圧力測定データを排気速度制御データに照合し、弁開度を切り換える。そのため、上記排気速度制御方法が、排気速度制御データに設定された弁開度の設定点P11が外乱(コンダクタンスの合成等)により時間的にずれた場合に、そのずれに合わせて当該設定点P11以降の弁開度の設定点P12,P13をずらす補正を行わなくても、チャンバ室10の圧力をリニアな目標圧力降下勾配Xに近似させた状態で排気速度を制御することができる。
【0089】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、電動真空弁による排気速度制御方法を減圧乾燥装置1に使用したが、半導体製造分野のCVD装置やプラズマ装置など他の作業工程に使用される装置や、半導体製造分野と異なる分野の装置(例えば、食用パンを袋に詰めて袋内を真空にする装置や乾燥食品用の乾燥装置)などに使用しても良い。
(2)例えば、上記実施形態では、電動真空弁21の駆動部23にステッピングモータ27を使用したが、駆動部23は、ソレノイド式やエアオペレイト式であっても良い。
(3)例えば、上記実施形態では、排気速度制御データをマッピングデータとして取得したが、テーブルや関数による排気速度制御データを取得しても良い。
(4)例えば、上記実施形態では、排気速度決定プログラムを用いて排気速度制御データをパソコン63やコントローラ65に作成させた。これに対して、ユーザが、カタログの説明などを見ながら排気速度制御データを作成しても良い。例えば、ユーザは、電動真空弁21の弁開度を所望の等比倍数に従って切り換えて圧力降下カーブを実測し、取得した圧力降下カーブを所望の目標圧力降下勾配Xに照らし合わせて近似する部分を探索し、探索した部分から弁開度の設定点を手作業で設定して排気速度制御データを作成しても良い。この場合、排気速度決定プログラムが不要となり、コストを安くできる。逆に、排気速度決定プログラムを予めコントローラ65に記憶させておき、コントローラ65の排気速度制御データ取得モードを設定すれば、自動的に等比倍数に従って電動真空弁21の弁開度が制御されて圧力降下カーブが取得され、排気速度制御データが作成されるようにしても良い。この場合、排気速度制御データの作成にユーザが携わる時間が短くなり、使い勝手が良い。
(5)例えば、上記実施形態では、粘性流領域における排気速度制御を電動真空弁21に行わせ、粘性流領域を超えたら、大口径真空遮断弁12により排気速度を制御することにより、排気時間の短縮を図っている。これに対して、例えば、チャンバ容量が小さい場合には、電動真空弁21だけをチャンバに接続し、電動真空弁21のみで排気速度を制御するようにしても良い。この場合、電動真空弁21が大気圧から粘性流領域を超える目標真空圧力までチャンバ室10の圧力を制御することにより、より確実に堆積物の巻き上げ等を防止して排気速度を制御できるようにしても良い。
(6)例えば、上記実施形態では、粘性流領域を脱した後に大口径真空遮断弁12の弁開度を調整して真空圧力を制御した。これに対して、粘性流領域の粘性が低下するのに従い、パーティクルが巻き上がりにくくなるので、粘性流領域の粘性が低くなった後に大口径真空遮断弁12の弁開度を調整して真空圧力を制御するようにしても良い。この場合、粘性流領域を脱した後に大口径真空遮断弁12により真空圧力を制御する場合と比べ、大口径真空遮断弁12を早く使用し、排気速度をより一層短縮させることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 チャンバ室
13 真空ポンプ
15 圧力センサ
21 電動真空弁
63 パソコン(圧力実測手段、排気速度決定手段の一例)
65 コントローラ(圧力実測手段、排気速度決定手段、真空圧力制御手段の一例)
66 排気速度制御システム
71 コントローラ(真空圧力制御手段の一例)
72 排気速度制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより、排気速度を制御する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサにより前記チャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブを実測する圧力実測工程と、
前記圧力実測工程で実測した弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定工程と、
前記排気速度決定工程で決定した前記設定点に基づいて前記電動真空弁の弁開度を切り換え、前記粘性流領域における前記排気速度を制御する真空圧力制御工程と
を有することを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記等比倍数を設定する等比倍数設定工程を有する
ことを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記目標圧力降下勾配を設定する目標圧力降下勾配設定工程を有する
ことを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記真空圧力制御工程は、前記圧力センサに前記チャンバ室の圧力を測定させ、前記圧力センサが前記設定点に対応する真空圧力を測定した場合に、前記電動真空弁の弁開度を切り換える
ことを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記電動真空弁と並列に設けられて前記チャンバ室に接続されるものであって、前記電動真空弁より大流量を制御可能な大口径真空遮断弁を有し、
前記真空圧力制御工程にて、前記粘性流領域においては前記大口径真空遮断弁を弁閉した状態で前記電動真空弁の弁開度を切り換えて前記排気速度を制御し、前記粘性流領域から脱した後、又は、前記粘性流領域の粘性が低くなった後に前記大口径真空遮断弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御する
ことを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載する電動真空弁による排気速度制御方法において、
前記真空圧力制御工程にて、前記粘性流領域から脱した後に前記電動真空弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御する
ことを特徴とする電動真空弁による排気速度制御方法。
【請求項7】
チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより、排気速度を制御する排気速度制御システムにおいて、
チャンバ室の圧力を測定する圧力センサと、
前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、前記圧力センサにより前記チャンバ室の真空圧力を測定して圧力降下カーブを実測する圧力実測手段と、
前記圧力実測手段が実測した弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定手段と、
前記排気速度決定手段が決定した前記設定点に基づいて前記電動真空弁の弁開度を切り換え、前記粘性流領域における前記排気速度を制御する真空圧力制御手段と
を有することを特徴とする排気速度制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載する排気速度制御システムにおいて、
前記電動真空弁と並列に設けられて前記チャンバ室に接続されるものであって、前記電動真空弁より大流量を制御可能な大口径真空遮断弁を有し、
前記真空圧力制御手段は、前記粘性流領域においては前記大口径真空遮断弁を弁閉した状態で前記電動真空弁の弁開度を切り換えて前記排気速度を制御し、前記粘性流領域から脱した後、又は、前記粘性流領域の粘性が低くなった後に前記大口径真空遮断弁の弁開度を調整して前記排気速度を制御する
ことを特徴とする排気速度制御システム。
【請求項9】
チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより排気速度を制御する場合における前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を決定する弁開度設定点決定方法であって、
前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサが測定した前記チャンバ室の真空圧力から圧力降下カーブを求める圧力実測工程と、
前記圧力実測工程で求められた弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定工程と、
を有することを特徴とする弁開度設定点決定方法。
【請求項10】
チャンバ室と真空ポンプを接続する排気配管系に配設された電動真空弁の弁開度を制御することにより排気速度を制御する場合における前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点を設定する排気速度決定プログラムであって、
コンピュータを、
前記電動真空弁の弁開度を等比倍数に従って段階的に制御し、弁開度毎に、前記真空ポンプにより粘性流領域から排気を行わせ、圧力センサが測定した前記チャンバ室の真空圧力から圧力降下カーブを求める圧力実測手段と、
前記圧力実測手段が求めた弁開度別の前記圧力降下カーブを目標圧力降下勾配に近似させるように時間的にずらし、前記圧力降下カーブ同士の交点を前記電動真空弁の弁開度を切り換える設定点に決定する排気速度決定手段として機能させる
ことを特徴とする排気速度決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−134164(P2011−134164A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293937(P2009−293937)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】