説明

電動送風機およびそれを用いた電気掃除機

【課題】ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供するものである。
【解決手段】回転軸2を有するロータ3と、ロータ3の外周に配置されたステータ6aと、ステータ6aの前後面を覆うフレーム8とから成るブラシレスモータ9と、回転軸2に固定されたインペラ10と、インペラ10外周に配置した複数の第1の案内翼11と、第1の案内翼11と一体構成でステータ6a外周面との間に通気路12を設けて配置した熱伝導性樹脂製のモータケース13と、コア5a外周面より一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15とを備え、ステータ6aで発生した熱をコア5aと一体構成で通気路に延設された複数の第2の案内翼と、第1の案内翼11に伝熱させ、インペラで発生した気流で強制冷却すると共に、気流の動圧を静圧に変換することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機は家庭用の電気掃除機に多く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。電気掃除機の入力電力は限られており、より強い吸引力を得るためには電動送風機の送風性能を向上する必要がある。同時に、掃除のしやすさの視点から掃除機本体の小回りが良いことが望まれており、電動送風機を小型化する必要がある。
【0003】
図16は、特許文献1に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。斜流型ブレード28を有したインペラ29と、インペラの下流側に配置されたエアガイド30と、回転軸31の軸端にインペラを固着した電動機32と、回転軸の軸端に設けられたハブ33とを備え、インペラから流出した気流が電動機のフレーム外部34を通過する電気掃除機用電動送風機35が開示されている。
【0004】
図17は、特許文献2に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。回転軸36を有した回転子37と、巻線を有した固定子38と、固定子を内包し回転軸を支持する軸受39を保持したフレーム40とにより構成されたブラシレスモータを備えるとともに、複数枚のブレード41を有し回転軸に固定されたインペラ42と、インペラ42の外周に配置されたエアガイド43と、インペラ42およびエアガイド43を内包し、中央部に吸気口44を配置し、フレーム40に固定されたファンケース45とを備え、前記フレーム40の外側に設けた外筒46との間に、インペラ42によって発生させ、エアガイド43に導かれた空気をフレーム40外周に沿って流す通気路47を構成し、この外筒の外側に駆動用半導体素子48を設置し、外筒の内部には他端がフレーム40に当接し、気流と長手方向が一致するような冷却フィン49を設け、冷却フィン49と外筒46、フレーム40によって囲まれた独立通路の断面積が下流方向に徐々に拡大するようにフレーム40又は外筒46が傾斜した電動送風機50が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307985号公報
【特許文献2】特開平11−336696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の電動送風機の構成では、エアガイドと電動機とが別体で構成されているため、電動機内部で発生した熱を十分にエアガイドの静翼に伝導することができず、結果として電動機内部を十分に冷却できないという課題を有していた。
【0007】
また、特許文献2に記載の従来の電動送風機の構成では、冷却フィンによって駆動用半導体素子を冷却することは可能であるが、冷却フィンと電動機のフレームとが当設するのみであるため、熱的に接触抵抗が大きく、電動機内部で発生した熱は冷却フィンに伝導しにくいため、特許文献1と同様に電動機内部を十分に冷却できないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ブラシレスモータの冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータの前後面を覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラ外周に配置された複数の第1の案内翼と、前記第1の案内翼と一体で構成され前記ステータ外周面との間に通気路となる空間を設けて配置されたモータケースと、前記インペラを覆い前記モータケースに固定されたファンケースと、前記コア外周面より一体構成で前記通気路に延設された複数の第2の案内翼とを備え、前記第1の案内翼は、前記第2の案内翼と略同一面を有すると共に、前記第2の案内翼の外形面および前面と当接して通気路内に複数の風路を形成し、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成されている。
【0010】
これによって、ブラシレスモータを駆動した際に、コアで発生した熱はコアと一体構成で通気路に延設された複数の第2の案内翼に伝導し、インペラで発生した気流によって第2の案内翼を強制冷却することで、効率よくコアの熱をブラシレスモータ外部へ逃がすことができる。
【0011】
また、第2の案内翼と第1の案内翼とで形成される複数の風路はディフューザの作用も有しているため、ブラシレスモータの冷却と同時に、気流の動圧を静圧に変換して小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0012】
また、本発明の電気掃除機は、小型で高い送風性能を有する電動送風機を搭載しているので、強い吸引力を有しゴミ取れ性が良好であり、電動送風機が軽量なので、小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動送風機は、ステータで発生した熱をコアと一体構成で通気路に延設された複数の第2の案内翼に伝熱させて、インペラで発生した気流で強制冷却すると共に、同時に気流の動圧を静圧に変換することで、ブラシレスモータを効率よく冷却することが可能な小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現できる。
また、このような電動送風機を用いた電気掃除機は、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性が良好であり、電動送風機が軽量なので、小回りの利く使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図2】同電動送風機の一部断面斜視図
【図3】同電動送風機のインペラの一部断面斜視図
【図4】同電動送風機のブラシレスモータの斜視図
【図5】同電動送風機のブラシレスモータおよびモータケースの一部断面斜視図
【図6】同電動送風機のブラシレスモータおよびモータケースの背面図
【図7】同電動送風機のステータの斜視図
【図8】同電動送風機のコアを構成する電磁鋼板の正面図
【図9】同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す縦断面図
【図10】本発明の第2の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図11】同電動送風機のブラシレスモータの斜視図
【図12】同電動送風機のステータの斜視図
【図13】同電動送風機のコアの正面図
【図14】同電動送風機のステータの斜視図
【図15】同電動送風機のコアの正面図
【図16】従来の電動送風機の縦断面図
【図17】従来の電動送風機の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータの前後面を覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラ外周に配置された複数の第1の案内翼と、前記第1の案内翼と一体で構成され前記ステータ外周面との間に通気路となる空間を設けて配置されたモータケースと、前記インペラを覆い前記モータケースに固定されたファンケースと、前記コア外周面より一体構成で前記通気路に延設された複数の第2の案内翼とを備え、前記第1の案内翼は、前記第2の案内翼と略同一面を有すると共に、前記第2の案内翼の外形面および前面と当接して通気路内に複数の風路を形成し、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成した電動送風機としたものである。
【0016】
これによって、ブラシレスモータを駆動した際に、コアで発生した熱はコアと一体構成で通気路に延設された複数の第2の案内翼に伝導し、インペラで発生した気流によって第2の案内翼を連続的に強制冷却することで第2の案内翼とコアとの温度差が大きくなり、コア内部の熱伝導が促進されて効率よくステータの熱をブラシレスモータ外部へ逃がすことができる。また、第2の案内翼と第1の案内翼とで形成される複数の風路はディフューザの作用も有しているため、ブラシレスモータの冷却と同時に、気流の動圧を静圧に変換して小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明のインペラが、入口から流入した気流を軸方向と径方向との中間の角度で流出させる斜流型ブレードを有しているので、遠心型のインペラと比べて外径を小さくできると共に、風路の途中に曲率の大きな湾曲部を設ける必要がないため、圧損の少ない風路を構成することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の第2の案内翼が、コアの外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成され、かつ外形を徐々に大きくした第1の案内翼と当接させた構成をしているので、第2の案内翼と第1の案内翼とで形成される複数の風路の断面積を通気路上流からから下流にかけて徐々に大きくすることができ、コアを構成する電磁鋼板の形状がシンプルでかつ単一形状で、気流の動圧を静圧に変換するためのディフューザを容易に構成することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第3の発明の第2の案内翼が、コア外周と交わる部分で厚みを厚くしているため、コア外周面と第2の案内翼との面積変化が緩やかになり、熱抵抗が減ることでコアの熱が第2の案内翼に伝導しやすくなるため、ブラシレスモータの冷却効果を向上することができる。
【0020】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の第1の案内翼が、熱伝導性の高い材質を用い、かつ熱伝導性接着剤で第2の案内翼と固定した構成をしているので、第2の案内翼に伝導したステータからの熱が第1の案内翼にも伝導しやすくなり、第2の案内翼と第1の案内翼の両方を放熱フィンとして使用することができるため、放熱面積を拡げてブラシレスモータの冷却効果を向上することができる。
【0021】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のステータが、コアと巻線とを樹
脂でモールド成型することで構成しているので、巻線で発熱したジュール熱はモールド部を伝導してコアに伝わるようになり、コアだけでなく巻線で発生した熱についても第2の案内翼から放熱させることができるため、ブラシレスモータの冷却効果を向上することができる。
【0022】
第7の発明は、特に、第6の発明のモールド部の樹脂は、熱伝導性の高い樹脂を用いているので、巻線のジュール熱がモールド部を伝導しやすくなり、コアを通じて連続的に強制冷却されている第2の案内翼へ伝わるため、ブラシレスモータの冷却効果をさらに向上することができる。
【0023】
第8の発明は、特に、第7の発明のモールド部の樹脂が、フィラーを充填しているので、樹脂の内部に熱の通り道となる熱伝導路が形成されて、樹脂の熱伝導性を容易に高めることが可能である。
【0024】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの電動送風機を搭載した電気掃除機とすることにより、強い吸引力を有しゴミ取れ性がよく、本体サイズが小さいので小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1〜図8は、本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示すものである。図1は同電動送風機の一部断面図であり、図2は同電動送風機の一部断面斜視図であり、図3は同電動送風機に用いるインペラの一部断面斜視図であり、図4は同電動送風機に用いるブラシレスモータの斜視図であり、図5は同電動送風機に用いるブラシレスモータおよびモータケースの一部断面斜視図であり、図6は同電動送風機に用いるブラシレスモータおよびモータケースの背面図であり、図7は同電動送風機に用いるステータの斜視図であり、図8は同電動送風機に用いるコアの正面図を示している。図9は同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を示す断面図である。
【0027】
図1〜図7に示すように、電動送風機1aは、回転軸2を有するロータ3と、ロータ3の外周に配置され巻線4が巻かれたコア5aで構成されるステータ6aと、回転軸2の軸受7を保持しステータ6aの前後面を覆うフレーム8とから構成されるブラシレスモータ9と、回転軸2に固定された3次元曲面で形成された6枚の斜流型ブレード10aを有するインペラ10と、インペラ10外周に配置された複数の第1の案内翼11と、第1の案内翼11と一体で構成されステータ6a外周面との間に通気路12となる空間を設けて配置されたモータケース13と、インペラ10を覆いモータケースの通気路12上流側に固定されるファンケース14と、コア5aの外周面より一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15とを備えており、第2の案内翼15はコア5aの外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成され、第1の案内翼11は第2の案内翼15と略同一面を有すると共に、第2の案内翼15の外形面15aおよび前面15bと当接して通気路12内に複数の独立風路16を形成している。
【0028】
また第1の案内翼11にはポニフェニレンサルファイド(PPS)にフィラーを充填させて熱伝導性を向上させた樹脂を用い、一体成形してモータケース13を作製した。図6に示すように、第1の案内翼11には嵌合溝11aを設けて、第2の案内翼15に対して位置決めを行った後、高熱伝導性の接着剤を塗布して密着固定させた。またモータケース13は通気路12上流から下流にかけて所定の角度で拡がる円錐形状を有しており、第1の案内翼11の外形はモータケース13内壁に沿って大きくなり、それに伴い、複数の独
立風路16の断面積が連続的に大きくなるようにしている。
【0029】
またコア5aは、図8に示すような断面形状を有する電磁鋼板を積層させることで製作した。インペラ10入口先端部とファンケース14とは、インペラ10が回転駆動可能な状態でPTFE樹脂のリング17を介してシールされている。
【0030】
図9において、電気掃除機18は、本体吸気口19に連通した集塵室20と本体排気口21を備えた送風室22とを有する掃除機本体23と、集塵室20に本体吸気口19と気密に装着された集塵袋24と、送風室22に設置された電動送風機1aと、電動送風機1aを覆う難燃樹脂製の防音カバー25と、送風室22の上下に配置された吸音材26とから構成されている。なお、図示していないが、本体吸気口19には、ホース、延長管が順次接続され、延長管の先端には床面上の塵埃を吸引するノズルが取りつけられている。
【0031】
以上のように構成された電動送風機およびそれを用いた電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0032】
まず、電動送風機1aの動作について説明する。図1において、巻線4を励磁することで回転磁界が派生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ10が回転する。インペラ10の回転で生じる遠心力により、インペラ10内の空気がインペラ10内の外周へ且つ後方へと押しやられ、インペラ10内が負圧になり、前方からインペラ10内へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ10の入口から軸方向に流入し、6枚の斜流型ブレード10aに沿って流れた後、軸方向と径方向との中間の角度でインペラ10から流出する。インペラ10から流出した気流は、第1の案内翼11で形成された複数の独立風路16に流入し、第2の案内翼15と第1の案内翼11とで形成される独立風路16をブラシレスモータ9の外周面に沿って流れて電動送風機1a外部へと流出する。
【0033】
独立風路16の断面積は上流から下流にかけて大きくなるため、気流は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。電動送風機1aの送風性能は、電動送風機1aを駆動するために入力した電力と、電動送風機1aが行う仕事(インペラ10が回転することで発生する真空度と流量の積)との比であらわされる。そのため、実際に使用する流量において電動送風機1aが発生する真空度(静圧)を大きくすることが、電動送風機1aの送風性能をあげる上で大変重要となる。斜流型のインペラ10は、気流を軸方向と径方向との中間の角度でさせるため、インペラ10の外周にディフューザ用の風路が必要な遠心型のインペラ10と比べて外径を小さくできると共に、風路の途中に曲率の大きな湾曲部を設ける必要がないため、小型で圧損の少ない風路を構成することが可能である。
【0034】
また、ブラシレスモータ9の発熱は、銅損、鉄損、機械損によるものがある。銅損は巻線4を流れる電流によって生じるジュール熱であり、電流の二乗に比例して大きくなる。また、鉄損はヒステリシス損と渦電流損に分けられる。ヒステリシス損は、モータの磁路を形成する電磁鋼板の物性が原因で発生するもので、回転による磁界の変化で磁束密度が変化することに起因する。また渦電流損は、コア5aに通る磁束の変動により磁束線のまわりに渦状の電流が流れ、その際の電気抵抗で発生するものである。機械損は、軸受7部の摩擦やロータ3とステータ6a間の空気の攪拌抵抗に起因するものである。特に、鉄損については、ヒステリシス損及び渦電流損共に運転周波数に依存して大きくなるため、ブラシレスモータ9を高速回転で使用する際には、鉄損での発熱が大きくなり、これをいかに効率よく放熱させるかが重要となる。電気掃除機18では、電動送風機1aは高速回転領域での使用が大半であるため、小型で高い送風性能を得るためにはコア5aの冷却が大変需要である。
【0035】
コア5aで発生した熱は、まず一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15へと伝導し、次に高熱伝導性の接着剤で接着固定された第1の案内翼11へと伝導し、それぞれの案内翼の表面から独立風路16を流れるインペラ10からの気流に熱が伝達されてブラシレスモータ9外部へ出ていく。
【0036】
第1の案内翼11及び第2の案内翼15は、インペラ10からの気流によって連続的に強制冷却されているため、第2の案内翼15とコア5aとの温度差が大きくなり、コア5a内部の熱伝導が促進されて効率よくコア5aの熱をブラシレスモータ9外部へと逃がすことができる。第1の案内翼11には、ポニフェニレンサルファイド(PPS)にフィラーを充填させて熱伝導性を向上させた樹脂が用いられているため、第2の案内翼15から伝導された熱は第1の案内翼11内部を伝わりやすく、結果として第2の案内翼15と第1の案内翼11とを放熱体として扱うことができるようになり、効率よくブラシレスモータ9を冷却することが可能となる。
【0037】
また、第1の案内翼11には熱伝導性の高い材質を選定するのが好ましく、熱伝導性樹脂の他にも、熱伝導に優れたアルミ、銅などの金属材料を用いてもよく、コア5aの熱を第1の案内翼11へ伝えて放熱面積を大きくし、電動機の冷却効果を高めることが可能である。ここで熱伝導性樹脂は、樹脂中に熱伝導性の高い金属や炭素の粉末や繊維などの充填剤(フィラー)を含有させることで、熱伝導性を向上させたものであり、ポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)、ナイロンおよび液晶ポリマー(LCP)が知られている。
【0038】
導電性のフィラーとしては金属粉末、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられ、絶縁性のフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナなど焼結セラミックが用いられており、絶縁性の有無に応じて選択するフィラーを部位ごとに使い分ける必要がある。但し、放熱フィンとして機能する複数の案内翼には、導電性フィラーを配合した樹脂を用いる方が、絶縁性フィラーを配合した樹脂に比べて熱伝導性を大きくすることができるため、導電性フィラーを配合した樹脂を用いるのが望ましい。
【0039】
充填剤の配合比率を大きくすると、溶融時の粘度が大きくなって成形性が低下するため、注意が必要である。さらに、第2の案内翼15と第1の案内翼11との接触面に高熱伝導性の接着剤を塗布しておくことで、接触面間に微小な隙間ができるのを防いで接触面間の熱的な接触抵抗が低減することで、第2の案内翼15から第1の案内翼11への熱伝導性を向上することができる。
【0040】
また、第2の案内翼15の厚みと翼枚数は、通気路12に形成される複数の独立風路16に対して、ディフューザとして必要な断面積および断面積の変化率と、ステータ6aの冷却に必要な放熱面積とから決める必要があり、実験的に最適値を求める必要がある。放熱面積を大きくするには、外周方向に翼長を長くするのが望ましいが、コア5aを形成するための電磁鋼板の材質や厚み、そしてプレス加工の精度等の制約を考慮して最適値を求めて実施すればよい。
【0041】
次に、電気掃除機18の動作について図9を用いて説明する。図9において、電動送風機1aのインペラ10が回転すると、集塵室20が負圧状態になり、ノズル(図示せず)から吸引された塵埃を含む気流が本体吸気口19を通過して集塵袋24へ流入する。集塵袋24で塵埃を濾過分離した清潔な気流は、電動送風機1aのインペラ10へ流入し、独立風路16を通過した後、防音カバー25の排気口から流出して掃除機本体23外部へと放出される。
【0042】
電気掃除機18は、小型で送風性能の高い電動送風機1aを搭載しているため、強い吸
引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機1aの本体サイズが小さくて、重量が軽いので、小回りが利いて使い勝手がよい。また、掃除機本体23内に吸音材26を配置可能な空間の拡大を図り、掃除機本体23内に設ける吸音材26の設置面積を大きくすることで、吸音面積を拡げて運転音の小さな電気掃除機18にすることも可能である。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、コア5aの外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成される複数の第2の案内翼15をコア5aと一体構成で通気路12に延設させ、熱伝導性を向上させたモータケース13と一体構成で、かつ第2の案内翼15と略同一面を有する第1の案内翼11を高熱伝導性接着剤で固定して通気路12内に連続的に断面積が大きくなる複数の独立風路16を形成することで、インペラ10で発生した気流を独立風路16に導いて第2の案内翼15を強制冷却し、コア5aで発生した熱を第2の案内翼15へ伝導させて、第2の案内翼15および第1の案内翼11から効率よく放熱することができる。
【0044】
また複数の独立風路16はディフューザとしての機能も果たすため、ブラシレスモータ9の冷却とディフューザを両立させており、小型で高い送風性能を有する電動送風機1aを実現することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、第1の案内翼11とモータケース13が一体構成にした事例で説明したが、これに限られるものではなく、第1の案内翼11とモータケース13外郭とを別体として構成してもよく同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、ファンケース14をモータケース13に固定することで、電動送風機1aの外郭を形成した事例で説明したが、電動送風機1aの外周をファンケース14とモータケース13を一体にした外郭ケースで覆ってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0047】
(実施の形態2)
図10〜図15は、本発明の実施の形態2における電動送風機の構成を示すものである。図10は同電動送風機の一部断面図であり、図11は同電動送風機に用いるブラシレスモータ9の斜視図であり、図12は同電動送風機に用いるステータ6bの斜視図であり、図13は同電動送風機に用いるコア5bの正面図を示すものである。なお、実施の形態1と同一要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図10〜図13において、電動送風機1bは、コア5bと巻線4とを絶縁性フィラーを充填させたポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)でモールド成型することで構成したステータ6bと、コア5bと一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15とを備え、図13に示すように、第2の案内翼15はコア5b外周と交わる部分で厚みが厚くなる構成をしている。
【0049】
またコア5bは図13に示すような断面形状を有する電磁鋼板を積層させることで製作し、実施の形態1で説明した図7に示したステータ6bと同じように巻線4をコア5bに巻きつけた。なお、モールド部の外周面は、コア5bの外周面と略同一になるようにした。
【0050】
以上のように構成された電動送風機について、以下その動作、作用を説明する。
【0051】
まず、電動送風機1bの動作について説明する。図10〜図11において、巻線4を励磁することで回転磁界が派生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ10が回転する。インペラ10の回転で生じる遠心力により、インペラ1
0内の空気がインペラ10内の外周へ且つ後方へと押しやられ、インペラ10内が負圧になり、前方からインペラ10内へ流れ込む気流が発生する。気流はインペラ10の入口から軸方向に流入し、6枚の斜流型ブレード10aに沿って流れた後、軸方向と径方向との中間の角度でインペラ10から流出する。インペラ10から流出した気流は、第1の案内翼11で形成された複数の独立風路16に流入し、第2の案内翼15と第1の案内翼11とで形成される独立風路16をブラシレスモータ9の外周面に沿って流れて電動送風機1b外部へと流出する。独立風路16の断面積は上流から下流にかけて大きくなるため、気流は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0052】
ステータ6bの巻線4に流れる電流によってジュール熱が発生し、モールド部27を伝導してコア5bへと伝わる。また、コア5bでは鉄損に起因する熱が発生し、巻線4から伝導してきた熱とコア5b自身で発生した熱は、まず一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15へと伝導し、次に高熱伝導性の接着剤で接着固定された第1の案内翼11へと伝導し、それぞれの案内翼の表面から独立風路16を流れるインペラ10からの気流に熱が伝達されてブラシレスモータ9外部へと出ていく。
【0053】
第2の案内翼15はコア5b外周と交わる部分で厚みが厚くなっているため、コア5b外周面と第2の案内翼15との面積変化が緩やかになり、熱抵抗が減ることでコア5bの熱が第2の案内翼15に伝導しやすくなるため、ブラシレスモータ9の冷却効果を向上することができる。
【0054】
また第1の案内翼11及び第2の案内翼15は、インペラ10からの気流によって連続的に強制冷却されているため、第2の案内翼15とコア5bとの温度差が大きくなり、コア5b内部の熱伝導が促進されて効率よくコア5b及び巻線4で発生した熱が第2の案内翼15へと伝導する。
【0055】
第1の案内翼11には、ポニフェニレンサルファイド(PPS)にフィラーを充填させて熱伝導性を向上させた樹脂が用いられているため、第2の案内翼15から伝導された熱は第1の案内翼11内部を伝わりやすく、結果として第2の案内翼15と第1の案内翼11とを放熱体として扱うことができるようになり、効率よくブラシレスモータ9を冷却することが可能となる。これにより、コア5bだけでなく巻線4についても冷却することができ、ブラシレスモータ9の冷却効果を大幅に向上することができる。またインペラ10の気流は、独立風路16を通過する際には、ステータ6bのモールド部およびコア5bの外周面に沿って流れるため、気流と外周面とで熱のやり取りが行われることでステータ6bの外周面も冷却される。
【0056】
なお、絶縁性のフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナなど焼結セラミックが用いられており、フィラーの配合比率については、配合比率を大きくすると、溶融時の粘度が大きくなって成形性が低下するので、実験的に配合比率の最適値を求めて実施する必要がある。
【0057】
以上のように、本実施の形態においては、ステータ6bをコア5bと巻線4とを絶縁性フィラーを充填させたポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)でモールド成型することで構成し、コア5bと一体構成で通気路12に延設された複数の第2の案内翼15を備えたことで、インペラ10で発生した気流を独立風路16に導いて第2の案内翼15を強制冷却し、コア5bだけでなく巻線4で発生した熱についても熱伝導性樹脂を通して第2の案内翼15へ伝導させて、第2の案内翼15および第1の案内翼11から効率よく放熱することが可能になり、ブラシレスモータ9の冷却効果を大幅に向上することができる。
【0058】
また複数の独立風路16はディフューザとしての機能も果たすため、ブラシレスモータ
9の冷却とディフューザを両立させており、小型で高い送風性能を有する電動送風機1bを実現することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、第2の案内翼15とコア5bが交わる部分の厚みを大きくした事例で説明したが、図14、図15に示すように、第2の案内翼15の厚みをコア5c外周に向けて徐々に厚みを大きくするのでもよく、コア5cから第2の案内翼15へ熱が伝導する際の熱抵抗を小さくすることで、熱伝導を促進させてステータ6cのようにすれば、同様の冷却効果をさらに高めて得ることができる。
【0060】
なお、上述した各実施の形態1と2の構成は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかる電動送風機は、ステータで発生した熱をコアと一体構成で通気路に延設された複数の第2の案内翼に伝導させて、インペラで発生した気流で強制冷却すると共に、同時に気流の動圧を静圧に変換することで、ブラシレスモータを効率よく冷却しながら小型で高い送風性能を有するため、家庭用は勿論のこと、業務用の電気掃除機に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1a、1b 電動送風機
2 回転軸
3 ロータ
4 巻線
5a、5b、5c コア
6a、6b、6c ステータ
7 軸受
8 フレーム
9 ブラシレスモータ
10a 斜流型ブレード
10 インペラ
11 第1の案内翼
12 通気路
13 モータケース
14 ファンケース
15 第2の案内翼
16 独立風路
18 電気掃除機
27 モールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータの外周に配置され巻線が巻かれたコアで構成されるステータと、前記回転軸の軸受を保持し前記ステータの前後面を覆うフレームとから構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラ外周に配置された複数の第1の案内翼と、前記第1の案内翼と一体で構成され前記ステータ外周面との間に通気路となる空間を設けて配置されたモータケースと、前記インペラを覆い前記モータケースに固定されたファンケースと、前記コア外周面より一体構成で前記通気路に延設された複数の第2の案内翼とを備え、前記第1の案内翼は、前記第2の案内翼と略同一面を有すると共に、前記第2の案内翼の外形面および前面と当接して通気路内に複数の風路を形成し、前記インペラによって発生した気流に対してディフューザの作用を有するよう構成した電動送風機。
【請求項2】
インペラは、入口から流入した気流を軸方向と径方向との中間の角度で流出させる斜流型ブレードを有する請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
第2の案内翼は、コアの外周面との交点を通過する接線と所定の角度で交わる平面で形成され、かつ外形を徐々に大きくした第1の案内翼と当接する構成とした請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
第2の案内翼は、コアの外周面と交わる部分の周辺の厚みを大きくした請求項3に記載の電動送風機。
【請求項5】
第1の案内翼は、熱伝導性の高い材質を用い、かつ熱伝導性接着剤で第2の案内翼と固定する構成とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項6】
ステータは、コアと巻線とを樹脂でモールド成型する構成とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項7】
モールド部の樹脂は、熱伝導性の高い樹脂とした請求項6に記載の電動送風機。
【請求項8】
モールド部の樹脂には、フィラーが充填された請求項7に記載の電動送風機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電動送風機を搭載した電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−255352(P2012−255352A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127893(P2011−127893)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】