説明

電子カセッテ及び放射線撮影システム

【課題】放射線検出パネルの位置ずれを検知して、電子カセッテの故障を未然に防ぐ。
【解決手段】電子カセッテ13は、放射線検出パネル31、筐体32、マーカー35を備える。放射線検出パネル31は、放射線画像を検出する。筐体32は、放射線検出パネル31を収容し、内面に、放射線検出パネル31が固定される。マーカー35は、放射線検出パネル35の検出面に結像して、放射線画像に写し込まれる一に配置され、放射線検出パネル31と筐体32の位置ずれを監視するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出パネルを用いて放射線画像を取得する電子カセッテ及び放射線撮影システム及び電子カセッテに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影の分野において、放射線検出パネルとして、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上にX線感応層を配置し、X線をデジタルデータに変換できるFPD(FPD:Flat Panel Detector)が実用化されている。また、FPDを用いて被検者を透過して照射された放射線により表される放射線画像を生成し、生成した放射線画像を記憶する可搬型の放射線画像検出装置(以下、「電子カセッテ」という)が実用化されている。
【0003】
電子カセッテは、放射線検出器が臥位撮影台や立位スタンドに固定された固定式の撮影装置と比較して、撮影の際のポジショニングの自由度が高いため、固定式の撮影装置では撮影困難な部位の撮影に使用される。近年ではポジショニングの自由度や可搬性をより向上するために、電子カセッテをさらに小型化,薄型化,軽量化することが求められている。こうした要求に応えるためには、放射線検出パネル等の電子部品間のスペースをできる限り削減する必要があり、これを実現する最も簡便な方法は電子部品等を密着させて実装することである。例えば、シンチレータにより放射線を可視光に変換した後、可視光を光電変換してデジタルデータ化する間接変換方式の電子カセッテでは、放射線検出パネル上にシンチレータを接着剤で貼り付けて実装する例が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、電子カセッテは可搬型であり、取り扱いの際に衝突させたり、落下させたりする危険性が高いため放射線検出パネル等の高価な電子部品を衝突や落下の衝撃から保護する必要性が高い。特許文献1に記載の電子カセッテでは、筐体の周囲を取り囲むように緩衝部材を設けることで、耐衝撃性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−341038号公報
【特許文献2】特開2006−6424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、電子カセッテには小型化,薄型化,軽量化と同時に衝撃対策が求められるが、これらは概ねトレードオフの関係にあり、両立は容易ではない。また、電子カセッテは、落下や衝突による1回の大きな衝撃で故障するよりも、軽度の衝撃が繰り返されたり、放射線照射で接着剤が劣化したりして、放射線検出パネルやこれに接続された電子部品等が筐体内で徐々に位置ずれを起こすことによって破損し、故障に至ることが多い。したがって、電子カセッテは、小型化,薄型化,軽量化した上で、上述のような経時的な劣化をモニタリングし、放射線検出パネル等の電子部品が破損する前に補修することが望ましい。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、放射線検出パネルの位置ずれを監視して、電子カセッテの故障を未然に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子カセッテは、放射線画像を検出する放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを収容し、前記放射線検出パネルが固定される筐体と、
前記放射線検出パネルの検出面に結像して前記放射線画像に写し込まれる位置に配置されたマーカーであり、前記放射線検出パネルと前記筐体の位置ずれを監視するためのマーカーとを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記マーカーは、前記筐体の放射線が入射する前面部に設けられている第1のマーカーを含むことが好ましい。
【0010】
前記放射線検出パネルは、前記筐体の放射線が入射する前面部の内面に固定されていることが好ましい。
【0011】
前記マーカーは、その像が前記検出面の周縁部に結像する位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
前記筐体は、ISO4090:2001に準拠したサイズであることが好ましい。
【0013】
前記放射線検出パネルは、前記筐体に接着剤で接着されていることが好ましい。
【0014】
前記放射線画像に写し込まれたマーカーの位置及び形状の少なくとも1つを調べて、前記筐体と前記放射線検出パネルの位置ずれを監視する位置ずれ監視手段を備えていることが好ましい。
【0015】
前記位置ずれ監視手段は、前記マーカーの位置及び形状の少なくとも1つを調べることにより、前記放射線検出パネルと前記筐体との位置ずれ量を検出し、検出した位置ずれ量が閾値を超えたか否かを判定することが好ましい。
【0016】
前記位置ずれ量は、製造時の初期位置と現在位置の差を表す差分であることが好ましい。
【0017】
前記位置ずれ量は、前回の位置と今回の位置の差を表す変位量であることが好ましい。
【0018】
前記位置ずれ量は、前回の位置と今回の位置の差を表す変位量を、検出する毎に累積した累積変位量であることが好ましい。
【0019】
さらに、前記位置ずれ監視手段が、前記位置ずれ量が前記閾値を超えたと判定した場合に報知する報知手段を備えていることが好ましい。
【0020】
さらに、前記筐体に加えられる衝撃を検知する衝撃検知手段を備えていることが好ましい。
【0021】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、前記マーカーは、前記シンチレータに設けられている第2のマーカーを含むことが好ましい。
【0022】
本発明の放射線撮影システムは、放射線画像を検出する放射線検出パネルを収容し、前記放射線検出パネルが接着剤で固定される筐体を備えた電子カセッテと、前記電子カセッテから取得した前記放射線画像を解析して、前記筐体と前記放射線検出パネルの位置ずれを監視する位置ずれ監視手段とを備えていることを特徴とする。
【0023】
前記電子カセッテは、前記放射線検出パネルの検出面に結像して前記放射線画像に写し込まれる位置に配置されたマーカーであり、前記位置ずれ監視手段が前記位置ずれを監視するためのマーカーを有することが好ましい。
【0024】
前記マーカーは、前記筐体の放射線が入射する前面部に設けられている第1のマーカーを含むことが好ましい。
【0025】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、前記マーカーは、前記シンチレータに設けられている第2のマーカーを含むことが好ましい。
【0026】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、前記位置ずれ監視手段は、前記放射線画像に写し込まれる、前記シンチレータの感度むらに応じた濃度変化又は前記シンチレータの欠陥部分に対応する像に基づいて前記位置ずれを監視することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、放射線検出パネルの位置ずれを監視して、電子カセッテの故障を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】放射線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】臥位撮影台の斜視図である。
【図3】電子カセッテの分解斜視図である。
【図4】電子カセッテの断面図である。
【図5】電子カセッテの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】放射線検出パネルの位置ずれを検知する様態を示すフローチャートである。
【図7】放射線検出パネルの位置ずれを検出することによってメンテナンスが指示される時期を示すグラフである。
【図8】放射線検出パネルの位置ずれを検知する他の様態を示すフローチャートである。
【図9】放射線検出パネルの位置ずれを検出することによってメンテナンスが支持される時期を示すグラフである。
【図10】放射線検出パネルの位置ずれを検知する他の様態を示すフローチャートである。
【図11】放射線検出パネルの位置ずれを検出することによってメンテナンスが支持される時期を示すグラフである。
【図12】加速度センサを備えた他の様態の電子カセッテの電気的構成を示すブロック図である。
【図13】加速度センサを備える場合に、放射線検出パネルの位置ずれを検出する様態を示すフローチャートである。
【図14】シンチレータにマーカーを設ける例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示すように、放射線撮影システム10は、放射線発生器11と、臥位撮影台12と、電子カセッテ13と、コンソール14と、モニタ15とを備えている。電子カセッテ13は、コンソール14の制御に基づいて、放射線発生器11から被検者Hに照射されて透過した放射線(例えばX線)を検出し、放射線画像を生成する。コンソール14は、電子カセッテ13から送信された放射線画像に各種画像処理を施し、モニタ15に表示させる。
【0030】
放射線撮影システム10による撮影は、臥位撮影台12に載せられている被検者Hに向けて放射線発生器11により上方から放射線を照射し、その放射線が被検者を透過して得られる放射線像を電子カセッテ13で検出する。また、四肢や肘等の撮影では、臥位撮影台12の上に電子カセッテ13を載置して撮影することもある。
【0031】
図2に示すように、放射線発生器11は、放射線を発する放射線管11aと、放射線の照射範囲を限定するコリメータ11bと、これらを操作する操作部11cとからなる。放射線発生器11は、例えば放射線撮影室の天井に移動かつ伸縮自在に設置された支柱に保持され、臥位撮影台12の上方に配置されている。
【0032】
臥位撮影台12は、天板16と、天板16の下に設けられた撮影台本体17とからなる。天板16は、被検者が横たわることができる長さ及び幅を有する長方形状であり、照射面が水平になるように撮影台本体17の上に配置されている。天板16は、放射線の透過率が高いカーボン等で形成されている。
【0033】
撮影台本体17は、天板支持部20と、トレイ21と、昇降部22とを備えている。天板支持部20は、天板16をXY方向において移動できるように支持するフローティング機構(図示せず)を備えている。フローティング機構には、操作者が手動で天板を移動させる手動式と、電動機構などで自動的に移動させる自動式とがあるが、本実施形態では電動機構による自動式としている。また、操作者が臥位撮影台12で撮影操作を行う際に位置する、臥位撮影台12の前面側には、天板支持部20を操作する操作パネル23が設けられている。
【0034】
トレイ21は、天板16の下方、かつ天板支持部20の間に設けられている。トレイ21は、前面に設けられた把手21aを前面側に引くことにより、天板16の下から引き出せるようになっている。また、トレイ21は、図示しないスライド機構によりX方向に移動する。スライド機構にも上述したフローティング機構と同様に手動式と自動式とがあるが、本実施形態では自動式としている。スライド機構の操作にも操作パネル23が用いられる。
【0035】
昇降部22は、天板16と、天板支持部20及びトレイ21を昇降させる電動式の昇降機構(図示せず)と、昇降機構の周囲を覆う伸縮自在なベローズ型カバー22aとを備えている。この昇降機構も操作パネル23によって操作される。
【0036】
トレイ21は、電子カセッテ13が着脱自在に取り付けられる取り付け部である。電子カセッテ13は、放射線が照射される照射面とは反対側の背面をトレイ21に向けた状態で取り付けられる。トレイ21の上面には、電子カセッテ13が不用意に動かないようにその外形サイズに合わせて切り欠かれた開口部21bが形成されている。開口部21bは、臥位撮影台12の前面方向から電子カセッテ13を挿入できるように、トレイ21の前面も切り欠かれている。
【0037】
電子カセッテ13は、ほぼ直方体形状をしており、例えば、半切サイズ(383.5mm×459.5mm)のフイルム用またはIP用のカセッテと同様の国際規格ISO4090:2001に準拠した外形サイズを有している。電子カセッテ13の外形サイズは、前述した半切サイズの他、四切サイズ、六切サイズ等があり、撮影部位に応じて適宜選択される。
【0038】
トレイ21は、上面から見ると長方形状の電子カセッテ13を縦姿勢と横姿勢の2つの取り付け姿勢で収容することができる。縦姿勢は、電子カセッテ13の長辺方向が天板16の長辺方向と平行な姿勢であり、横姿勢は、電子カセッテ13の長辺方向が天板16の長辺方向と直交する姿勢である。
【0039】
図3及び図4に示すように、電子カセッテ13は、放射線検出パネル31と、放射線検出パネル31を収容する筐体32とからなる。筐体32は、放射線が入射する入射面側から放射線検出パネル31を覆う前面部32aと、背面から覆う背面部32bとからなる。前面部32a及び背面部32bは、例えば、ステンレス等の放射線の透過率が低い金属で形成される。前面部32aには、カーボン板によって形成される放射線透過窓33が設けられている。
【0040】
放射線透過窓33の内面には、複数箇所にマーカー35(第1のマーカー)が設けられている。マーカー35は、例えば数画素(2×2画素程度)の大きさであり、照射された放射線の少なくとも一部を吸収する材料等、放射線透過窓33よりも放射線の透過率が低い材料からなる。したがって、電子カセッテ13を用いて撮影した放射線画像にはマーカー35の像が写り込む。マーカー35の像は、後述するように、放射線検出パネル31の位置ずれの検出に用いられる。また、放射線画像は、マーカー35の像はコンソール14において画像処理によって補正された後に、モニタ15に表示される。
【0041】
放射線検出パネル31は、アクティブマトリクス基板とシンチレータ39とからなる。アクティブマトリクス基板は、ガラス基板36等の絶縁基板上にTFT(薄膜トランジスタ)とフォトダイオードからなる複数の検出素子がマトリクス状に配列された検出素子アレイ38が形成された基板である。フォトダイオードは、例えば、a‐Si(アモルファスシリコン)からなる光導電層を有し、可視光に感応して光電変換する。シンチレータ39は、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)などの蛍光体からなり、入射する放射線の量に応じた可視光を発光する。シンチレータ39は、支持体上に蛍光体を蒸着(または塗布)したり、ガラス基板36上に蛍光体を直接蒸着するなどの方法によって作製されるが、本例ではガラス基板36とは別体の支持体上に作製されたシート状のシンチレータを例に説明する。
【0042】
ガラス基板36の裏面(前面部32a側の表面)は、前面部32aの内面に接着剤によって接着され、固定されている。シンチレータ39は、ガラス基板36の検出素子アレイ38が設けられた検出面38aと、後述するベース板45とに表裏を接着される。このため、放射線検出パネル31は、前面部32aとベース板45によって筐体32内に固定される。なお、電子カセッテ13は、小型化のために、ガラス基板36と筐体32の内側面(前面及び背面とほぼ直交し、それぞれの周囲に沿って配置される側面の内面)との距離が例えば数mm程度となっている。
【0043】
放射線検出パネル31は、ガラス基板36の裏面から放射線を入射させる裏面入射型のパネルであり、ガラス基板36の表面に形成された検出素子アレイ38の光検出面と、シンチレータ39に対して放射線が入射する入射面とが対向して配置されている。裏面入射型では、ガラス基板36に入射した放射線が検出素子アレイ38を透過してシンチレータ39に入射し、シンチレータ39が発光する可視光を検出素子アレイ38が受光する。シンチレータ39の発光量は、放射線が入射する入射面において最も多くなるので、シンチレータ39の放射線の入射面と検出素子アレイ38の光検出面とを対向させることで、高い検出効率が得られる。
【0044】
放射線検出パネル31の背面側(シンチレータ39側)には、放射線検出パネル31や、各種の回路基板41〜44が取り付けられるベース板45が配置される。ベース板45は、例えば、ステンレス製であり、筐体32に取り付けられて固定される。ベース板45の上端と下端には、それぞれの中央部分にほぼコ字状の切り欠き45aが形成されている。放射線検出パネル31はベース板45に対して前面側の空間に配置され、回路基板41〜44はベース板45に対して背面側の空間に配置される。放射線検出パネル31と回路基板41〜44は、切り欠き45aを通じて接続される。
【0045】
回路基板41は、検出素子アレイ38のTFTを駆動する駆動回路52(図5参照)が形成された駆動用回路基板である。回路基板42は、A/D変換回路が形成されたA/D変換回路基板である。A/D変換回路は、後述するICチップ48が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0046】
回路基板43は、制御回路53(図5参照)が形成された制御基板である。制御回路53は、放射線検出パネル31の各部を制御するとともに、コンソール14との通信を制御する。回路基板44は、電源回路54(図5参照)が形成された電源回路基板である。電源回路54は、交流を直流に変換するAC/DCコンバータや、直流電圧を各回路の動作に必要な電圧に変換するDC/DCコンバータなどの回路素子からなり、各部に電力を供給する。
【0047】
駆動用回路基板41とA/D変換回路基板42は、それぞれフレキシブルケーブル46,47によって、放射線検出パネル31と接続される。フレキシブルケーブル46,47には、TCP(テープキャリアパッケージ)型のICチップ48,49(図4も参照)がそれぞれ実装されている。
【0048】
ICチップ48は、回路基板41に形成された回路素子とともに駆動回路52を構成するシフトレジスタであり、ICチップ49は、放射線検出パネル31から読み出した信号電荷を電圧信号に変換するチャージアンプと、検出素子アレイ38の列を順次切り替えて1列ずつ電圧信号を順次出力するためのマルチプレクサとからなる読み出し回路55(図5参照)を構成するASICである。読み出し回路55とA/D変換回路56は、放射線検出パネル31が出力する信号を処理する信号処理回路である。各回路基板41〜44に実装される回路素子51や、フレキシブルケーブル46,47に実装されるICチップ48,49は、放射線検出パネル31を機能させるための電気部品である。
【0049】
図5に示すように、電子カセッテ13は、制御回路53に位置ずれ監視部58を備えるととともに、報知部59を有する。なお、図5において、実線の矢印は、各回路間で送受信される信号の流れを示し、点線は、電源回路54が、駆動回路52、読み出し回路55、A/D変換回路56等の各部に給電する経路を示す。電源回路54は、駆動回路52と、読み出し回路55及びA/D変換回路56への給電経路と、制御回路53や報知部59への給電経路とを独立にオンオフ制御できるようになっている。
【0050】
位置ずれ監視部58は、放射線画像に写り込んだマーカー35の位置や形状を検出することにより、放射線検出パネル31の位置ずれを監視する。位置ずれとは、製造時に適切な位置に調節された放射線検出パネル31の初期位置と、現在の位置の乖離を言う。こうした放射線パネル31の位置ずれは、例えば、電子カセッテ13の取り扱い中に他のものに衝突したり、落下されたりして、大きな衝撃が加わった場合や、放射線撮影時に被検者Hの下敷きになる等して、小さな衝撃や振動,表面の撓み等が繰り返されたり、長時間同じ姿勢で使用(保管)されたり、放射線が繰り返し照射されたりすることによって、放射線検出パネル31を筐体32やベース板45に固定する接着剤が経時的に劣化した場合に生じる。
【0051】
位置ずれ監視部58は、検出したマーカー35の位置と、位置ずれのない初期のマーカー35の位置とを比較することにより、放射線画像に写り込んだマーカー35の変位量(位置ずれ量)を検出する。
【0052】
そして、位置ずれ監視部58は、検出した放射線パネル31の位置ずれ量を所定の閾値と比較し、位置ずれ量が閾値を超えた場合には、放射線検出パネル31の動作を強制的に停止させることにより電子カセッテ13による撮影を禁止し、その旨の警告やメンテナンスを促す警告を報知部59やコンソール14を通じて報知する。また、これと同時に電子カセッテ13を識別するIDがコンソール14に通知される。報知部59は、例えば、LED等の発光装置やスピーカ等によって構成され、この場合、光の点灯,点滅や音声によって警告する。位置ずれ監視部58による位置ずれ量の検出やその定量的評価は、例えば、電子カセッテ13の起動後最初の撮影前に行うキャリブレーション時等に定期的に行われる。また、検出した位置ずれ量と比較する閾値や経時的な変化は、図示しないメモリに記憶されている。
【0053】
以下、上述のように構成される電子カセッテ13及び放射線撮影システム10の作用を説明する。
【0054】
図6に示すように、電子カセッテ13を起動したときには、定期診断が行われる。まず、被検者Hがいない状態で電子カセッテ13に対して所定の線量の放射線が照射され、放射線画像が撮影される(ステップS11)。この時撮影される放射線画像には、マーカー35が写し出されているので、位置ずれ監視部58は、各々のマーカー35の像の位置を検出することにより、筐体32に対する放射線検出パネル31の位置ずれ量を検出する(ステップS12)。
【0055】
具体的には、位置ずれ監視部58は、検出したマーカー35の位置座標(例えば中心座標)X1と初期の位置座標X0との差分δ(=X1−X0)を算出し、この差分δを閾値C1と比較する(ステップS13)。差分δは、放射線検出パネル31の位置ずれ量の入射面と平行な方向の移動成分を表し、差分δが大きくなるほど放射線検出パネル31と筐体32の内側面の距離が縮まる。したがって、位置ずれ監視部58は、差分δが閾値C1で定められる所定の範囲内にある場合(|δ|≦C1)、電子カセッテ13を用いた放射線撮影を許可する(ステップS14)。その後、電子カセッテ13は放射線撮影に用いられる。
【0056】
一方、差分δが所定範囲を超える場合(|δ|>C1)、位置ずれ監視部58は、電子カセッテ13を放射線撮影に用いることを禁止し、報知部59やコンソール14を通じてメンテナンスを促す指示を報知する(ステップS15)。技師等は、メンテナンスを促す指示を受けた場合、例えばサービスセンターに電子カセッテ13の補修を依頼する。
【0057】
上述のように放射線検出パネル31の位置ずれを監視すると、図7に示す通り、ある時点A1以前のように、差分δが小さく、放射線パネル31の位置ずれが小さい場合には電子カセッテ13を通常通り使用することが可能である。一方、ある時点A1のように、差分δが閾値C1よりも大きくなると、放射線検出パネル31が筐体32の内側面に一定以上に近づいた状態にあって、例えば、次に電子カセッテ13に衝撃や振動が加えられ、放射線検出パネル31がさらに位置ずれを起こしたときに、放射線検出パネル31が筐体32の内側面に接触して破損する恐れがある。位置ずれ監視部58は、差分δが閾値C1を超えたときには、電子カセッテ13の使用を禁止し、実際に放射線検出パネル31が筐体32に接触して破損してしまう前にメンテナンスを促す。
【0058】
このように、放射線検出パネル31と筐体32の内側面の距離に十分な余裕があり、電子カセッテ13の通常使用に支障のない程度の適切な値に閾値C1を設定しておくことで、電子カセッテ13の故障を未然に防ぐことができる。
【0059】
また、電子カセッテ13からの指示にしたがって、電子カセッテ13をメンテナンスすることによって、経時的な要因によって高価な放射線検出パネル31が破損してしまうことが殆どなくなる。
【0060】
さらに、上述のような放射線検出パネル31の位置ずれ監視は、電子カセッテ13の取り扱い中に衝撃を与えてしまった場合に、その衝撃によって、電子カセッテ13が使用可能な状態にあるか否か、あるいは、どの程度故障しやすい状態になったのかの定量的な目安にもなる。
【0061】
上述の第1実施形態では、位置ずれ監視部58が、放射線検出パネル31の初期位置からの位置ずれ量が閾値を超えたか否かを判定することにより、放射線検出パネル31の位置ずれを監視する例で説明したが、位置ずれの監視方法は、これに限らない。例えば、放射線検出パネル31がずれる1つの方向を正としたときに、放射線検出パネル31がいったん正方向に位置ずれした後、正方向とは逆方向にずれて初期位置に戻ってしまう場合もあり得る。この場合は、第1実施形態の位置ずれ監視処理では、位置ずれが無いものと判定されてしまうが、現実には、接着剤の劣化が進んでおり、しかも、接着剤の劣化が進むほど位置ずれ量も増大していくと考えられる。故障を未然に防ぐためには、このような位置ずれも監視できるようにした方がよい。
【0062】
具体的には、図8及び図9に示す第2実施形態のように、位置ずれ監視部58は、今回のマーカー35の像の位置座標X1と、前回のマーカー35の像の位置座標X2との変位量Δ(=X1−X2)に基づいて、放射線検出パネル31の位置ずれを監視する。位置ずれ監視部58は、前回のマーカー35の像の位置座標X2を次回の定期診断までメモリに記憶しておく。位置ずれ監視部58は、定期診断において以下のような処理を行う。
【0063】
図8に示すように、前述と同様に放射線画像を撮影し(ステップS21)、マーカー35の像の位置を検出することにより、放射線検出パネル31の位置を検出する(ステップS22)。そして、位置ずれ監視部58は、検出したマーカー35の位置座標X1と、前回の診断時に検出したマーカー35の位置座標X2を基準としたマーカー35の位置座標X1の変位量Δを算出し、その値を閾値±C2と比較する(ステップS23)。ここで算出する変位量Δは、前回の診断時から今回の診断時までに受けた衝撃等を反映して増大する。
【0064】
変位量Δが閾値±C2以下の場合、位置ずれ監視部58は、電子カセッテ13を用いた放射線撮影を許可し、その後、電子カセッテ13は放射線撮影に用いられる(ステップS24)。一方、変位量Δが閾値±C2よりも大きい場合には、位置ずれ監視部58は、電子カセッテ13を放射線撮影に用いることを禁止し、報知部59やコンソール14を通じてメンテナンスを促す指示を報知する(ステップS25)。
【0065】
図9に示す通り、ある時点A2以前のように、変位量Δが小さく、放射線検出パネル31の位置に変化が小さい場合には、電子カセッテ13を継続して使用可能である。一方、ある時点A2のように、変位量Δが閾値±C2よりも大きくなったときには、電子カセッテ13に大きな衝撃が加えられたか、あるいは放射線検出パネル31を固定する接着剤の劣化が著しい状態であって、電子カセッテ13をそのまま継続して使用してさらに放射線検出パネル31が位置ずれしたときに、放射線検出パネル31が筐体32の内側面に接触して破損する可能性が高い。このため、位置ずれ監視部58は、変位量Δが閾値±C2を超えたときには、電子カセッテ13の使用を禁止して、実際に放射線検出パネル31が筐体32に接触して破損してしまう前にメンテナンスを促し、電子カセッテ13の故障を未然に防ぐ。
【0066】
上記第2実施形態では、前回と今回の変位量Δを閾値と比較して、変位量Δが閾値を超えたか否かを判定することにより、放射線検出パネル31の位置ずれを監視する例で説明したが、図10及び図11に示す第3実施形態のように、変位量Δの累積値(累積変位量Σ|Δ|)が閾値を超えたか否かを判定することにより、位置ずれ監視を行ってもよい。累積変位量Σ|Δ|が多ければ、それだけ接着剤の劣化は進んでおり、故障につながる危険性が高いと考えられるからである。
【0067】
具体的には、図10及び図11において、位置ずれ監視部58は、まず、前述と同様に放射線画像を撮影し(ステップS31)、マーカー35の像の位置を検出することにより、放射線検出パネル31の位置を検出する(ステップS32)。そして、位置ずれ監視部58は、変位量Δを算出するとともに、過去に算出した変位量Δの絶対値の総和Σ|Δ|を算出する。ここで算出した総和Σ|Δ|は、累積変位量Σ|Δ|である。放射線検出パネル31を筐体32に接着する接着剤の劣化が激しいほど、僅かな衝撃や振動に対して放射線検出パネル31が位置ずれを起こす量が大きくなるため、累積変位量Σ|Δ|は接着剤の劣化具合を反映して加速度的に大きくなる。
【0068】
したがって、位置ずれ監視部58は、累積変位量Σ|Δ|を閾値C3と比較し(ステップS33)、ある時点A3以前のように累積変位量Σ|Δ|が閾値C3よりも小さい場合には、接着剤が劣化していないものと判断し、電子カセッテ13を放射線撮影に使用することを許可する(ステップS34)。一方、ある時点A3のように、累積変位量Σ|Δ|が閾値C3を超えた時点で、接着剤の劣化が激しく、電子カセッテ13を継続して使用したときに放射線検出パネル31がわずかな衝撃等でも大きな位置ずれを起こし、筐体32に接触して破損する可能性が高いと判断して、電子カセッテ13の使用を禁止する。このため、累積変位量Σ|Δ|によって放射線検出パネル31の位置ずれを監視すると、放射線検出パネル31の位置が適正な位置から大きく変化していない場合に僅かな衝撃等で突然起こりうる電子カセッテ13の致命的な故障を未然に防ぐことができる。
【0069】
なお、上記第1から第3実施形態では、差分δ、変位量Δ、累積変位量Σ|Δ|の3種類のパラメータの各々にしたがって放射線検出パネル31の位置ずれを監視する例を説明したが、故障を未然に防ぐという目的をより確実に達成するためには、これらの2つ以上を組み合わせて、放射線検出パネル21の位置ずれを監視することが好ましい。
【0070】
なお、上述の各実施形態では、電子カセッテ13を起動したときに、定期診断として放射線検出パネル31の位置ずれを評価するための放射線画像を撮影する例を説明したが、電子カセッテ13を起動する毎に定期診断を行うことは煩わしい作業でもある。したがって、放射線検出パネル31の位置ずれについての定期診断は、電子カセッテの起動毎には行わず、複数回毎に、あるいは1週間に1回というにように、より長い所定の期間をあけて行うようにしても良い。
【0071】
また、定期診断とは別に、電子カセッテに衝撃が加えられたときには、放射線検出パネル31の位置ずれについての臨時診断を促すことが好ましい。この場合、図12に示す電子カセッテ61のように、加速度センサ62を設ける。加速度センサ62は、電子カセッテ61に加わった衝撃を検知し、検知した衝撃の大きさに応じた信号を位置ずれ監視部63に入力する。電子カセッテ61の位置ずれ監視部63は、前述の実施形態と同様に放射線検出パネル31の位置ずれを監視する機能を有するとともに、加速度センサ62から入力される信号に基づいて、放射線検出パネル31の位置ずれを診断する臨時診断を行うか否かを判断する。また、電子カセッテ61は不使用状態の場合でも、バッテリから電源回路54に給電されている間は、加速度センサ62、位置ずれ監視部63、報知部59が作動するようになっており、電子カセッテ61を保管中に加わった衝撃を検知することができるようになっている。
【0072】
図13に示すように、加速度センサ62は、電源回路54から給電を受けている間、衝撃を監視する(ステップS41)。
【0073】
位置ずれ監視部63は、加速度センサ62から常時入力される信号に基づいて放射線検出パネル31の位置ずれについての臨時診断を行うか否かを判断しており、例えば電子カセッテ61に大きな衝撃が加わって、加速度センサ62から入力される信号が一定のレベルに達した場合に、位置ずれ監視部63は、衝撃を検知し、臨時診断が必要であることを報知部59を通じて報知する(ステップS42)。技師等は、この報知に応じて、電子カセッテ61の臨時診断を行う。臨時診断の内容は、前述の実施形態の定期診断と同様である(ステップS43〜S47)。
【0074】
臨時診断が必要なほどの大きな衝撃が検知されないまま、電子カセッテ61が起動された場合、位置ずれ検出部63は予め定められた定期診断を行うか否かを判断し(ステップS48)、定期診断を行う場合には、報知部59からその旨を報知して、定期診断を行わせる(ステップS43〜S47)。一方、大きな衝撃が検知されないまま電子カセッテ61が起動され、かつ、定期診断が必要ない場合には、電子カセッテ61はそのまま放射線撮影に用いられる(ステップS46)。
【0075】
このように、電子カセッテに加速度センサ62を備え、衝撃を検知したときに放射線検出パネル31の位置ずれに関する臨時診断を促すようにすると、放射線検出パネル31の位置ずれを監視して、電子カセッテ61の故障を未然に防ぎながらも、定期診断の煩わしさを低減することができる。
【0076】
なお、前述の通り、放射線検出パネル31は、ガラス基板36と筐体32の間(ガラス基板36と前面部32aの間及びシンチレータ39とベース板45の間)が接着剤で接合されているだけでなく、ガラス基板36とシンチレータ39の間も接着剤で接合されている。このため、ガラス基板36とシンチレータ39を接着している接着剤が劣化すれば、電子カセッテ13への衝撃等によって、放射線検出パネル31が全体として位置ずれするだけでなく、ガラス基板36とシンチレータ39が各々に位置ずれを起こす。筐体32に対するガラス基板36の位置ずれに加えて、ガラス基板36に対するシンチレータ39の位置ずれを監視しても良い。
【0077】
この場合、筐体36に対するガラス基板35の位置ずれは、上述の実施形態で説明した方法で監視することができる。一方、ガラス基板36に対するシンチレータ39の位置ずれを監視するためには、例えば、図14に示すように、ガラス基板36(検出面38a)に接合されるシンチレータ39の表面に放射線撮影可能なマーカー71(第2のマーカー)を設けておくことで、その像の位置や形状等を検出することにより、上述の実施形態と同様に監視することができる。また、例えば、ガラス基板36に対するシンチレータ39の位置ずれを監視する場合、上述のようにマーカー71を設けるかわりに、放射線画像(例えば被写体Hがいない状態で撮影した放射線画像)に写し込まれるシンチレータ39の感度むらに応じた濃度変化や、欠陥部分に対応する像を用いても良い。さらに、ガラス基板36に対するシンチレータ39の位置ずれだけを監視しても良い。ガラス基板36の位置が筐体32に対してずれていない場合に、ガラス基板36に対してシンチレータ39が位置ずれした場合には、シンチレータ39の位置ずれ量は、放射線検出パネル31の筐体32に対する位置ずれ量を表す。
【0078】
なお、上述の各実施形態では、放射線検出パネル31の入射面と平行な面内の直線的な位置ずれを監視したが、マーカー35の形状や面積の変化を検出することにより、放射線検出パネル31の筐体32からの剥離や筐体32に対する回転移動による位置ずれを監視することが好ましい。例えば、マーカー35の像の形状変形を検出することで、前面部32aの一部に被検者Hからの加重が集中して、放射線検出パネル31の一部分が筐体32から剥離した場合には、放射線検出パネル31の一部が筐体32の厚み方向に位置ずれする。マーカー35の形状変形を検出すれば、厚み方向の位置ずれも監視できる。また、マーカー35の像の回転移動を検出することで、放射線検出パネル31の入射面と平行な面内での回転による位置ずれも監視できる。これにより、ガラス基板36の角が筐体32に接触して破損することを防止することができる。
【0079】
なお、上述の各実施形態では、基準となる位置から一定の範囲内にマーカー35の像があるか否かを監視し、放射線検出パネル31の位置ずれの方向にかかわらない例を説明したが、例えば電子カセッテ13の長手方向と短手方向の少なくとも2方向についてマーカー35の像のシフトを監視することが好ましい。例えば、電子カセッテ13が長時間同じ姿勢で使用(保管)されると、重力の影響で放射線検出パネル31の位置ずれに方向性が現れることがあるが、複数の方向についてマーカー35の像のシフトを監視することで、こうした一定方向への位置ずれによる放射線検出パネル31の破損を、より確実に未然に防ぐことができる。
【0080】
なお、上述の各実施形態では、4個の四角形のマーカー35(図3参照)を例に挙げたが、マーカー35の形状は任意である。また、マーカー35は少なくとも1つあれば良く、複数のマーカー35について上述のように監視を行うことで、放射線検出パネル31の破損をより確実に未然に防ぐことができる。特に、2以上のマーカー35の位置や形状を監視することでより高精度に放射線検出パネル31の位置ずれを監視することができる。また、マーカー35の位置は任意であるが、上記実施形態のように、検出面38aの四隅近傍等の被検体Hを写した放射線画像の診断の妨げになりにくい検出面38aの周縁部に結像する位置に設けることが好ましい。
【0081】
なお、上述の実施形態では、電子カセッテ13で放射線検出パネル31の位置ずれを検出する例を説明したが、これに限らない。例えば、駆動用回路基板41に位置ずれ監視部58を設けて、電子カセッテ13で被検者Hがいない状態で放射線画像を取得した後、これをコンソール14に送信し、コンソール14における画像処理でマーカー35の位置を検出して放射線検出パネル31の位置ずれを監視するようにしても良い。また、例えば、位置ずれ監視用の放射線画像を、ネットワークを介して接続されたサービスセンター等に送信し、こうした遠隔地でマーカー35の位置を検出して、放射線検出パネル31の位置ずれを監視するようにしても良い。
【0082】
なお、上述の各実施形態では、放射線検出パネル31が筐体32の前面部32aとベース板45にともに接着されている例を説明したが、放射線検出パネル31が前面部32aにだけ接着されている場合や、ベース板45にだけ接着されている場合にも上述の実施形態と同様にして放射線検出パネル31の位置ずれを監視することができる。
【0083】
上述の各実施形態では、筐体32の放射線が入射する前面部32aに接着剤で放射線検出パネル31を固定した電子カセッテ13を例に説明したが、放射線検出パネル31がベース板45など背面部32b側でのみ固定されている電子カセッテ13に本発明を適用してもよい。ただし、上述の各実施形態のように、前面部32aに放射線検出パネル31に固定した場合には、放射線を吸収する放射線検出パネル31よりも前に、固定用の接着剤に対して放射線が入射することになるため、背面部32b側でのみ固定される場合と比べて、接着剤に対する放射線の入射量が多くなり、接着剤の劣化も大きいと考えられる。そのため、本発明は、前面部32bに接着剤で放射線検出パネル31が固定されている電子カセッテに用いる場合に好適である。
【0084】
なお、上述の各実施形態では、電子カセッテ13に間接変換型放射線検出パネル31を用いる例を説明したが、放射線検出パネル31は放射線を直接的に電荷に変換する直接変換型のパネルでも良い。また、上述の実施形態における放射線検出パネル31は裏面入射型であるが、放射線がシンチレータ39、ガラス基板36の順で入射する表面入射型パネルを用いても良い。
【符号の説明】
【0085】
10 放射線撮影システム
11 放射線発生器
12 臥位撮影台
13,61 電子カセッテ
14 コンソール
15 モニタ
11a 放射線管
11b コリメータ
11c 操作部
16 天板(臥位撮影台)
17 本体(臥位撮影台)
20 天板支持部
21 トレイ
22 昇降部
23 操作パネル
21a 把手
22a ベローズ型カバー
21b 開口部
31 放射線検出パネル
32 筐体
32a 前面部
32b 背面部
33 放射線透過窓
35 マーカー
36 ガラス基板
38 検出素子アレイ
38a 検出面
39,71 シンチレータ
41〜44 回路基板
45 ベース板
45a 切り欠き
46,47 フレキシブルケーブル
48,49 ICチップ
51 回路素子
52 駆動回路
53 制御回路
54 電源回路
55 読み出し回路
56 A/D変換回路
58,63 位置ずれ監視部
59 報知部
62 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を検出する放射線検出パネルと、
前記放射線検出パネルを収容し、前記放射線検出パネルが固定される筐体と、
前記放射線検出パネルの検出面に結像して前記放射線画像に写し込まれる位置に配置されたマーカーであり、前記放射線検出パネルと前記筐体の位置ずれを監視するためのマーカーとを備えていることを特徴とする電子カセッテ。
【請求項2】
前記マーカーは、前記筐体の放射線が入射する前面部に設けられている第1のマーカーを含むことを特徴とする請求項1記載の電子カセッテ。
【請求項3】
前記放射線検出パネルは、前記筐体の放射線が入射する前面部の内面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子カセッテ。
【請求項4】
前記マーカーは、その像が前記検出面の周縁部に結像する位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項5】
前記筐体は、ISO4090:2001に準拠したサイズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項6】
前記放射線検出パネルは、前記筐体に接着剤で接着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項7】
前記放射線画像に写し込まれたマーカーの位置及び形状の少なくとも1つを調べて、前記筐体と前記放射線検出パネルの位置ずれを監視する位置ずれ監視手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項8】
前記位置ずれ監視手段は、前記マーカーの位置及び形状の少なくとも1つを調べることにより、前記放射線検出パネルと前記筐体との位置ずれ量を検出し、検出した位置ずれ量が閾値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項7記載の電子カセッテ。
【請求項9】
前記位置ずれ量は、製造時の初期位置と現在位置の差を表す差分であることを特徴とする請求項8記載の電子カセッテ。
【請求項10】
前記位置ずれ量は、前回の位置と今回の位置の差を表す変位量であることを特徴とする請求項8又は9記載の電子カセッテ。
【請求項11】
前記位置ずれ量は、前回の位置と今回の位置の差を表す変位量を、検出する毎に累積した累積変位量であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項12】
前記位置ずれ監視手段が、前記位置ずれ量が前記閾値を超えたと判定した場合に報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項13】
前記筐体に加えられる衝撃を検知する衝撃検知手段を備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項14】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、
前記マーカーは、前記シンチレータに設けられている第2のマーカーを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の電子カセッテ。
【請求項15】
放射線画像を検出する放射線検出パネルを収容し、前記放射線検出パネルが接着剤で固定される筐体を備えた電子カセッテと、
前記電子カセッテから取得した前記放射線画像を解析して、前記筐体と前記放射線検出パネルの位置ずれを監視する位置ずれ監視手段とを備えていることを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項16】
前記電子カセッテは、前記放射線検出パネルの検出面に結像して前記放射線画像に写し込まれる位置に配置されたマーカーであり、前記位置ずれ監視手段が前記位置ずれを監視するためのマーカーを有することを特徴とする請求項15記載の放射線撮影システム。
【請求項17】
前記マーカーは、前記筐体の放射線が入射する前面部に設けられている第1のマーカーを含むことを特徴とする請求項16記載の放射線撮影システム。
【請求項18】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、
前記マーカーは、前記シンチレータに設けられている第2のマーカーを含むことを特徴とする請求項16又は17に記載の放射線撮影システム。
【請求項19】
前記放射線検出パネルは、TFTマトリクスが形成された基板上に接着剤によってシンチレータが貼り付けられた間接変換型であり、
前記位置ずれ監視手段は、前記放射線画像に写し込まれる、前記シンチレータの感度むらに応じた濃度変化又は前記シンチレータの欠陥部分に対応する像に基づいて前記位置ずれを監視することを特徴とする16又は17に記載の放射線撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−11026(P2012−11026A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150921(P2010−150921)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】