説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することにある。
【解決手段】電子キー10が車両2に接近した旨判断されたときにのみ、車載装置20からリクエスト信号が送信される。従って、ユーザに所持される電子キー10が車両2から遠く離れているにも関わらず、リクエスト信号が送信されることが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムにおいては、電子キー及び車両間での無線通信を通じて、車両ドアの施解錠、エンジン始動等が許可される(例えば、特許文献1参照)。
車両は、停車中において車両周辺にリクエスト信号を無線送信する。電子キーは、リクエスト信号を受信すると、自身のIDコードを含むレスポンス信号を無線送信する。車両は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立した旨判断したとき、車両ドアの施解錠を許可した状態となる。この状態において、車両は、例えば、ドアハンドルに設けられるスイッチの操作を検出すると、車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−194799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電子キーシステムにおいては、電子キーが車両から遠く離れた位置にあっても、車両は電子キーの接近を監視するべく、一定周期毎にリクエスト信号を送信する必要がある。リクエスト信号の送信は、車載バッテリの電力が使用される。従って、リクエスト信号の送信に要するバッテリの電力消耗を抑制することが望まれている。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両の周辺にリクエスト信号を無線送信する車載装置と、前記リクエスト信号を受信したとき、レスポンス信号を無線送信する携帯機と、を備え、前記車載装置は、受信したレスポンス信号の妥当性を確認したとき、車載機器の制御を許可する電子キーシステムにおいて、前記携帯機の現在位置を検出する位置検出手段を備え、前記車載装置は、車両が駐車された旨認識したとき、その旨を示す通知信号を無線送信し、前記携帯機は、前記通知信号を受信したとき、前記位置検出手段を通じて認識された現在位置を車両位置として記憶し、その後に、再び前記位置検出手段を通じて認識される現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断し、この現在位置が前記車両位置に接近した位置である旨判断したときリクエスト要求信号を送信し、前記車載装置は、前記リクエスト要求信号を受信したとき、前記リクエスト信号を無線送信することをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、携帯機が車両に接近した旨判断されたときにのみ、車載装置からリクエスト信号が送信される。従って、携帯機を所持するユーザが車両から遠く離れているにも関わらず、リクエスト信号が送信されることが抑制される。これにより、車載装置におけるリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記位置検出手段は、全地球測位システムを利用して前記携帯機の現在位置を検出することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、全地球測位システム(GPS)を利用して携帯機の現在位置が検出される。よって、現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断がより正確となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記携帯機と同一のユーザに所持される、若しくは前記携帯機を所持するユーザと同時に乗降車する他のユーザに所持されるとともに、前記位置検出手段を有し、前記携帯機又は前記車載装置からの情報要求信号を受信すると、前記位置検出手段を通じて検出された現在位置を含む情報信号を送信する携帯端末を備え、前記携帯機は、前記通知信号を受信した後に前記情報信号を受信すると、同情報信号に含まれる現在位置を認識し、この現在位置を車両位置として記憶し、その後に再び、受信した前記情報信号に含まれる現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、携帯機は、携帯端末に搭載される位置検出手段を利用して、現在位置を認識することができる。よって、位置検出手段が搭載されない携帯機であっても、上記請求項1の発明と同様に、車載装置におけるリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を無線送信する電子キーと、前記電子キーと同一のユーザに所持される、若しくは前記電子キーを所持するユーザと同時に乗降車するユーザに所持されるとともに、前記位置検出手段を有し、前記リクエスト要求信号を送信する携帯端末と、からなり、前記携帯端末は、前記通知信号を受信すると、前記位置検出手段を通じて認識した現在位置を車両位置として記憶し、その後に再び、前記位置検出手段を通じて認識された現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断し、この現在位置が前記車両位置に接近した位置である旨判断したとき前記リクエスト要求信号を送信し、前記車載装置は、前記リクエスト要求信号を受信したとき、前記リクエスト信号を送信することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、電子キーは、リクエスト信号を受信したときレスポンス信号を送信する処理のみを実行すればよい。すなわち、既存の電子キーに新たな制御処理を追加する必要がない。従って、既存の電子キーを利用して、上記請求項1の発明と同様に、車載装置におけるリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1及び第2の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1及び第2の実施形態における車載制御部及び電子キー制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図3】第3の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図4】第3の実施形態における車載制御部、電子キー制御部及び携帯制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図5】第4の実施形態における車載制御部、電子キー制御部及び携帯制御部の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムの第1の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0017】
図1に示されるように、電子キーシステム1は、ユーザによって所持される電子キー10と、車両2に搭載される車載装置20とを備えている。電子キー10及び車載装置20間での相互通信を通じて車両ドアの施解錠が許可される。以下、電子キー10及び車載装置20の構成について説明する。
【0018】
<電子キー>
電子キー10は、電子キー制御部11と、LF受信部12と、UHF送信部13と、GPS(全地球測位システム:Global Positioning System)受信部15とを備える。
【0019】
電子キー制御部11は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ11aを備える。このメモリ11aには電子キー10に固有のIDコードが記憶されている。
【0020】
GPS受信部15は、複数の人工衛星から発信されるGPS情報を取得し、同GPS情報を電子キー制御部11に出力する。電子キー制御部11は、GPS情報に基づき現在位置を判断する。
【0021】
LF受信部12は、その受信アンテナ12aを通じて車載装置20から送信されるLF(Low Frequency)帯の無線信号である通知信号を受信すると、同通知信号を復調し、その復調した信号を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、復調された通知信号を認識すると、GPS受信部15を通じて現在位置を判断する。電子キー制御部11は、この現在位置を車両位置としてメモリ11aに記憶する。
【0022】
電子キー制御部11は、車両位置を記憶した後、一定時間T1の経過を待って、再び、GPS受信部15を通じて現在位置を判断する。この一定時間T1は、ユーザが車両から離れたと予想される時間に設定される。電子キー制御部11は、この現在位置が、メモリ11aに記憶される車両位置に接近した位置であるか否かを判断する。電子キー10が、車両2の周辺に送信されるリクエスト信号を受信可能な位置に存在するとき、そのときの現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断される。
【0023】
電子キー制御部11は、現在位置が車両位置に接近した位置ではない旨判断したとき、一定時間T2経過後に、再び現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かを判断する。すなわち、電子キー10が車両2から離れている状態においては、一定時間T2経過毎に電子キー10が車両2に接近しているか否かが監視される。この一定時間T2は、上記一定時間T1と同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
電子キー制御部11は、現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断したとき、リクエスト要求信号を生成し、その生成した信号をUHF送信部13に出力する。UHF送信部13は、リクエスト要求信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波に変調し、その変調した信号を自身の送信アンテナ13aを介して送信する。
【0025】
LF受信部12は、その受信アンテナ12aを通じて車載装置20から送信されるLF帯の無線信号であるリクエスト信号を受信すると、同リクエスト信号を復調し、その復調した信号を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、復調されたリクエスト信号を認識すると、メモリ11aに記憶されるIDコードを含むレスポンス信号を生成し、その生成した信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号をUHF帯の電波に変調し、その変調した信号を自身の送信アンテナ13aを介して送信する。
【0026】
<車載装置>
図1に示すように、車載装置20は、車載制御部21と、車外送信部22と、車載受信部24とを備えている。また、車載制御部21には、ロックスイッチ36と、タッチセンサ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35とが電気的に接続されている。
【0027】
ロックスイッチ36は車外のドアハンドルに設けられるとともに、ユーザに押し操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
タッチセンサ33は、車外のドアハンドルの内面に設けられるとともに、当該ドアハンドルにユーザが接触したことを検出し、その検出結果を車載制御部21に出力する。
【0028】
車外送信部22は、車外のドアハンドルに内蔵されるとともに、車両2の周辺にリクエスト信号を無線送信する。
車載制御部21はコンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ21aを備える。このメモリ21aには、電子キー10に記憶されるIDコードと同一のIDコードが記憶されている。車載制御部21は、エンジン装置35を通じてエンジンのオン、オフ状態を認識する。
【0029】
車載制御部21は、エンジンがオン状態からオフ状態に切り替えられた旨認識したとき通知信号を生成し、その生成した通知信号を車外送信部22に出力する。車外送信部22は、入力された通知信号をLF帯の電波に変調して、その変調した信号を自身の送信アンテナ22aを介して無線送信する。
【0030】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したリクエスト要求信号を復調し、その復調した信号を車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、リクエスト要求信号を認識すると、リクエスト信号を生成し、その生成したリクエスト信号を車外送信部22に出力する。車外送信部22は、入力されたリクエスト信号をLF帯の電波に変調し、その変調した信号を自身の送信アンテナ22aを介して無線送信する。
【0031】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したレスポンス信号を復調し、それを車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、レスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、IDコードの照合が成立した旨判断したとき、車両ドアの施解錠許可状態となる。
【0032】
解錠許可状態において、車載制御部21は、タッチセンサ33を通じてユーザがドアハンドルに触れた旨認識したとき、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。また、施錠許可状態において、車載制御部21は、ロックスイッチ36が押し操作された旨認識したとき、車両ドアを施錠する。
【0033】
つぎに、車載制御部21及び電子キー制御部11間での無線通信時の処理手順を図2のフローチャートに従って説明する。ここでは、次のようなユーザの動作を想定する。すなわち、ユーザはエンジンをオフ状態とした後に車両ドアを施錠して車両を離れる。そして、ユーザは再び車両に接近し、車両ドアを解錠する。
【0034】
車載制御部21は、エンジンがオフ状態とされた旨認識したとき(S101)、通知信号を送信する(S102)。電子キー制御部11は、通知信号を受けると、GPS受信部15を通じて現在位置を認識する(S103)。そして、電子キー制御部11は、この現在位置を車両位置としてメモリ11aに記憶する(S104)。エンジンをオフ状態に切り替えたときには、ユーザは運転席にいるため、現在位置が車両位置となる。
【0035】
また、車載制御部21は、上記ステップS102において通知信号を送信した後、車両ドアの開閉を認識したとき、車両2の周辺にリクエスト信号を送信する(S105)。電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S106)。車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S107)、電子キー10が車外に位置するとして車両ドアの施錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、ロックスイッチ36の操作を認識したとき、車両ドアを施錠する(S108)。電子キー10を所持するユーザは、車両ドアの施錠後に車両から離れる。
【0036】
電子キー制御部11は、ステップS104の処理から一定時間T1の経過を待って(S109)、再び、GPS受信部15を通じて現在位置を認識する(S110)。電子キー制御部11は、この現在位置が、メモリ11aに記憶される車両位置に接近した位置である旨判断すると(S111)、リクエスト要求信号を送信する(S112)。車載制御部21は、リクエスト要求信号を受信すると、リクエスト信号を送信する(S113)。これにより、車両ドアが施錠状態にあるときには、ユーザが車両2に接近したときにのみリクエスト信号が送信される。
【0037】
電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S114)。車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S115)、車両ドアの解錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、タッチセンサ33を通じてユーザがドアハンドルに触れた旨認識したとき車両ドアを解錠する(S116)。以上で、処理が終了する。
【0038】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電子キー10が車両2に接近した旨判断されたときにのみ、車載装置20からリクエスト信号が送信される。従って、ユーザに所持される電子キー10が車両2から遠く離れているにも関わらず、リクエスト信号が送信されることが抑制される。これにより、車載装置20におけるリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0039】
(2)GPS受信部15を利用して電子キー10の現在位置が判断される。よって、現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断がより正確となる。
(3)ユーザが車両から離れたと予想される一定時間T1の経過後に、GPS受信部15を通じて認識された現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断が行われる。よって、ユーザが車両を離れる前に、現在位置が車両位置に接近した位置である旨の判断が行われて、リクエスト信号が送信されることが抑制される。これにより、いっそうリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0040】
(4)電子キー10がリクエスト信号を受信可能な位置にいるとき現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断される。これにより、電子キー10が受信できない状況でリクエスト信号が送信されることが抑制され、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態においては、電子キー10に代えて携帯電話30が利用される。近年、携帯電話には、予めGPS受信部、及び近距離通信機能部(LF受信部12及びUHF送信部13等)が搭載されているものがある。従って、携帯電話30に新たな構成を追加することなく、携帯電話30は、上記図2のフローチャートと同様の処理を通じて、車載装置20との間で無線通信を行うことができる。よって、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0042】
以上、説明した実施形態によれば、特に、以下の効果を奏することができる。
(5)携帯電話30は、第1の実施形態と同様に、車載装置20との間での無線通信を通じて車両ドアの施解錠を可能とする。この携帯電話30としては、予めGPS受信部及び近距離通信機能部が搭載されているものが利用される。従って、既存の携帯電話30に新たな構成を追加することなく、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図3及び図4を参照しつつ説明する。この実施形態においては、電子キーにGPS受信部が搭載されていない点、及び携帯電話との無線通信を通じて現在位置が認識される点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
図3に示すように、電子キー10にはGPS受信部15が搭載されていない。また、携帯電話40は、携帯制御部41と、近距離通信部46と、GPS受信部45と、を備える。近距離通信部46は、携帯受信部42と、受信アンテナ42aと、携帯送信部43と、送信アンテナ43aとを備える。携帯電話40は、近距離通信部46とは別に遠距離通信部(図示略)を備え、この遠距離通信部を通じて通話やメールを行う。携帯制御部41は、不揮発性のメモリ41aを備える。
【0045】
電子キー制御部11は、通知信号を受信すると、UHF送信部13を介して情報要求信号を無線送信する。携帯受信部42は、その受信アンテナ42aを通じて情報要求信号を受信すると、同情報要求信号を復調し、その復調した信号を携帯制御部41へ出力する。携帯制御部41は、復調された情報要求信号を認識すると、GPS受信部45を通じて現在位置を認識する。そして、携帯制御部41は、認識した現在位置に関する情報を含む情報信号を生成し、その生成した信号を携帯送信部43に出力する。携帯送信部43は、情報信号をLF帯の電波に変調して、その変調した信号を自身の送信アンテナ43aを介して無線送信する。電子キー制御部11は、LF受信部12等を通じて受信した情報信号に基づき現在位置を認識する。携帯制御部41は、電子キー10からリクエスト要求信号を受信するまで、定期的にGPS受信部45を通じて現在位置を認識して、その現在位置に関する情報を含む情報信号を無線送信する。
【0046】
つぎに、車載制御部21、電子キー制御部11及び携帯制御部41間での無線通信時の処理手順を図4のフローチャートに従って説明する。
車載制御部21は、エンジンがオフ状態とされた旨認識したとき(S201)、通知信号を送信する(S202)。電子キー制御部11は、通知信号を受信すると、情報要求信号を携帯電話40に送信する(S203)。携帯制御部41は、情報要求信号を受けると、GPS受信部45を通じて現在位置を認識する(S204)。そして、携帯制御部41は、認識した現在位置に関する情報を含む情報信号を、電子キー10に送信する(S205)。電子キー制御部11は、情報信号を受信すると、この現在位置を車両位置としてメモリ11aに記憶する(S206)。
【0047】
また、車載制御部21は、上記ステップS202において通知信号を送信した後、車両ドアの開閉を認識したとき、車両2の周辺にリクエスト信号を送信する(S207)。電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S208)。車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S209)、車両ドアの施錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、ロックスイッチ36の操作を認識したとき、車両ドアを施錠する(S210)。電子キー10を所持するユーザは、車両ドアの施錠後に車両から離れる。
【0048】
携帯制御部41は、ステップS205の処理以降、定期的にGPS受信部45を通じて現在位置を認識して、その現在位置に関する情報を含む情報信号を無線送信する(S211)。
【0049】
電子キー制御部11は、情報信号の受信毎に、同情報信号に含まれる現在位置が、メモリ11aに記憶される車両位置に接近した位置であるか否かを判断する。電子キー制御部11は、現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断すると(S212)、リクエスト要求信号を送信する(S213)。携帯制御部41は、リクエスト要求信号を受信すると、定期的な情報信号の送信を停止する(S214)。以上で携帯制御部41の処理が終了する。
【0050】
車載制御部21は、リクエスト要求信号を受信すると、リクエスト信号を送信する(S215)。電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S216)。以上で電子キー制御部11の処理が終了する。
【0051】
車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S217)、車両ドアの解錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、タッチセンサ33を通じてユーザがドアハンドルに触れた旨認識したとき車両ドアを解錠する(S218)。以上で、車載制御部21の処理が終了する。
【0052】
なお、電子キー10及び携帯電話40は、同一のユーザによって所持されていてもよいし、同時に乗降車する別々のユーザによって所持されていてもよい。
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
【0053】
(6)電子キー10は、携帯電話40との通信を通じて現在位置を認識する。よって、GPS受信部が搭載されない既存の電子キーの構成であっても、第1の実施形態と同様に、リクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図5を参照しつつ説明する。この実施形態においては、現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断が携帯電話にて行われる点が上記第3の実施形態と異なっている。この実施形態の電子キーシステムは、図3に示す第3の実施形態の電子キーシステムとほぼ同様の構成を備えている。以下、第3の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態においては、携帯電話40は、車載装置20との間で無線通信を行う。すなわち、携帯受信部42は、その受信アンテナ42aを通じてLF帯の通知信号を受信すると、同通知信号を復調し、その復調した信号を携帯制御部41へ出力する。これにより、携帯制御部41は通知信号を認識する。
【0056】
また、携帯制御部41は、現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断すると、リクエスト要求信号を生成し、その生成した信号を携帯送信部43に出力する。携帯送信部43は、リクエスト要求信号をUHF帯の電波に変調して、その変調した信号を自身の送信アンテナ43aを介して無線送信する。
【0057】
つぎに、車載制御部21、電子キー制御部11及び携帯制御部41間での無線通信時の処理手順を図5のフローチャートに従って説明する。
車載制御部21は、エンジンがオフ状態とされた旨認識したとき(S301)、通知信号を送信する(S302)。携帯制御部41は、通知信号を受けると、GPS受信部45を通じて現在位置を認識する(S303)。そして、携帯制御部41は、この現在位置を車両位置としてメモリ41aに記憶する(S304)。
【0058】
また、車載制御部21は、上記ステップS302において通知信号を送信した後、車両ドアの開閉を認識したとき、車両2の周辺にリクエスト信号を送信する(S305)。電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S306)。車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S307)、車両ドアの施錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、ロックスイッチ36の操作を認識したとき、車両ドアを施錠する(S308)。電子キー10を所持するユーザは、車両ドアの施錠後に車両から離れる。
【0059】
携帯制御部41は、ステップS304の処理から一定時間T1の経過を待って(S309)、再び、GPS受信部45を通じて現在位置を認識する(S310)。携帯制御部41は、この現在位置が、メモリ41aに記憶される車両位置に接近した位置である旨判断すると(S311)、リクエスト要求信号を車載装置20に送信する(S312)。以上で携帯制御部41の処理が終了する。車載制御部21は、リクエスト要求信号を受信すると、リクエスト信号を送信する(S313)。
【0060】
電子キー制御部11は、リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を送信する(S314)。以上で電子キー制御部11の処理が終了する。車載制御部21は、受信したレスポンス信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立した旨判断したとき(S315)、車両ドアの解錠許可状態となる。車載制御部21は、この状態で、タッチセンサ33を通じてユーザがドアハンドルに触れた旨認識したとき車両ドアを解錠する(S316)。以上で車載制御部21の処理が終了する。
【0061】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(7)電子キー制御部11は、既存の電子キーと同様に、リクエスト信号を受信したときレスポンス信号を送信する処理のみを実行すればよい。すなわち、電子キー制御部11は、新たな信号処理を行う必要がない。従って、携帯電話40及び車載装置20間で無線通信可能とすれば、既存の電子キーを利用して、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、一定時間T1の経過後に(S109)、現在位置の認識(S110)及び現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断(S111)が行われていた。しかし、一定時間T1の経過を待たなくてもよい。この場合、例えば、車載装置20は、ステップS116の後に車両ドアの解錠が完了した旨の解錠完了信号を送信する。電子キー制御部11は、レスポンス信号を送信した後(S114)、解錠完了信号を受信しない場合には再びステップS110の処理に以降する。一方、電子キー制御部11は、レスポンス信号を送信した後(S114)、解錠完了信号を受信した場合には処理を終了する。
【0063】
上記構成によれば、エンジンをオフ状態とした直後は、現在位置が車両位置に接近した位置である旨判断されて(S111)、リクエスト要求信号が送信される(S112)。従って、車載装置20からリクエスト信号が送信される(S113)。この場合であっても、ユーザは車両ドアを解錠することなく車両を離れるため、再び現在位置の認識(S110)及び現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断(S111)が行われる。これにより、電子キー10が車両2から離れているにも関わらず、リクエスト信号が送信されることが抑制される。
【0064】
なお、一定時間T1の経過が待たれる構成であっても、上述した解錠完了信号を受信しない場合にはステップS110の処理に以降する構成を採用してもよい。また、上記各構成は、第2〜第4の実施形態においても適用可能である。
【0065】
・上記各実施形態においては、GPS受信部15,45が取得するGPS情報に基づき、現在位置が車両位置に接近した位置であるか否か判断されていた。しかし、この判断ができれば、GPS情報を利用しなくてもよい。例えば、第1の実施形態において、電子キー10に電子コンパスと、3軸方向の加速度を検出する加速度センサとを設ける。電子キー制御部11は、加速度センサの検出結果に基づき、電子キー10が何れの方向に、どの程度移動したかを判断する。そして、電子キー制御部11は、電子コンパスに基づき、当該判断された移動方向が、何れの方角であるかを判断する。すなわち、電子キー制御部11は、通知信号を受信したとき、そのときの位置を原点(車両位置)として、電子キー10が何れの方角に何メートル移動したかを監視する。そして、電子キー制御部11は、電子キー10が原点の周辺、詳しくは電子キー10がリクエスト信号を受信可能な位置に戻ったとき、そのときの現在位置を車両位置に接近した位置である旨判断する。第2〜第4の実施形態においても同様に、GPS受信部に代えて電子コンパス及び加速度センサを設けることで、上記判断が可能である。本構成によれば、GPS受信部15,45を省略することができる。また、GPS情報の取得が困難な位置、例えば、屋内駐車場にあっても、上記判断を行うことができる。さらに、通常はGPS受信部15,45を通じて上記判断を行って、GPS情報の取得が困難な場合にのみ、電子コンパス及び加速度センサの検出結果に基づき上記判断を行ってもよい。
【0066】
・上記各実施形態においては、車載装置20から送信されるリクエスト信号等は、LF帯の電波であって、電子キー10から送信されるレスポンス信号等は、UHF帯の電波であったが、車載装置20及び電子キー10間で無線通信可能であれば、周波数帯はこれに限定されない。携帯電話40と、車載装置20又は電子キー10との通信も同様である。
【0067】
・第2の実施形態においては、通知信号は電子キー10に送信されていたが(S202)、この通知信号は携帯電話30に送信されてもよい。この場合、通知信号は、携帯電話30において情報信号と同様に処理される。すなわち、携帯制御部41は、通知信号を受信すると、現在位置を認識し(S204)、情報信号を電子キー10に送信する(S205)。これにより、電子キー制御部11において通知信号を受信して、情報要求信号を送信する処理を省略することができる。
【0068】
・上記各実施形態において、車載装置20は、リクエスト要求信号を受信したとき、複数回に亘って、若しくは一定時間に亘ってリクエスト信号を連続的に送信してもよい。
・上記各実施形態においては、車載装置20は、エンジンがオフ状態とされた旨認識したとき通知信号を送信していた。しかし、この通知信号は、車両が駐車された後で、かつユーザが車両を離れる前に送信されればよく、エンジンがオフ状態とされたときに限らない。例えば、車載装置20による通知信号の送信タイミングは、シフトレバーがパーキング位置に操作されたときであってもよいし、パーキングブレーキがオン操作されたときであってもよい。さらに、車両ドアが開閉されたときであってもよいし、車両ドアが施錠されたときであってもよい。
【0069】
・上記各実施形態においては、ロックスイッチ36等の操作を通じて車両ドアの施解錠が可能な電子キーシステムであった。しかし、ロックスイッチ36及びタッチセンサ33が省略された電子キーシステムであってもよい。この場合、車載制御部21は、車両ドアが施錠状態にあるとき、IDコードの照合が成立すると、車両ドアを解錠する。そして、車載制御部21は、車両ドアが解錠状態にあるとき、電子キー10が車両2から離れることに伴って、IDコードの照合が成立した状態からIDコードの照合が成立しない状態になった旨判断したとき、車両ドアを施錠する。
【0070】
・上記各実施形態における携帯電話は、GPS受信部と、近距離通信部とを備える携帯端末であれば、通話機能がない例えばタブレットパソコンであってもよい。
・上記各実施形態における電子キー10は車載機器である車載装置20との無線通信を通じて車両ドアの施解錠が可能であったが、例えばスライドドアやトランクの開閉が可能であってもよい。
【0071】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、携帯機は、前記位置検出手段を備える携帯端末であって、前記位置検出手段は、GPS情報を取得するGPS受信部である電子キーシステム。
【0072】
近年、携帯電話等の携帯端末にGPS受信部が内蔵されているものが一般的になりつつある。この種の携帯端末を利用することで、既存の携帯端末に新たな構成を追加することなく、車載装置におけるリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【0073】
(ロ)請求項1〜4、(イ)の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記携帯機は、前記現在位置が前記車両位置に接近した位置ではない旨判断したとき、一定時間経過後に、再び前記位置検出手段を通じて現在位置を認識し、この現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断する電子キーシステム。
【0074】
(ハ)請求項1〜4、(イ)、(ロ)の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記携帯機は、現在位置を車両位置として記憶し、ユーザが車両から離れたと予想される時間の経過後に再び前記位置検出手段を通じて認識された現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断する電子キーシステム。
【0075】
同構成によれば、ユーザが車両から離れたと予想される時間の経過後に再び位置検出手段を通じて認識された現在位置が車両位置に接近した位置であるか否かの判断が行われる。よって、ユーザが車両を離れる前に、現在位置が前記車両位置に接近した位置である旨の判断が行われて、リクエスト信号が送信されることが抑制される。これにより、よりリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【0076】
(ニ)請求項1〜4、(イ)、(ロ)、(ハ)の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かの判断は、前記携帯機が前記車載装置からのリクエスト信号を受信可能な位置となったか否かに基づき行われる電子キーシステム。
【0077】
同構成によれば、携帯機がリクエスト信号を受信可能な位置に達したときにのみリクエスト信号が送信される。これにより、よりリクエスト信号の送信に係る消費電力を低減できる。
【符号の説明】
【0078】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー(携帯機)、15,45…GPS受信部(位置検出手段)、20…車載装置、34…ドアロック装置(車載機器)、40…携帯電話(携帯機、携帯端末)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺にリクエスト信号を無線送信する車載装置と、前記リクエスト信号を受信したとき、レスポンス信号を無線送信する携帯機と、を備え、前記車載装置は、受信したレスポンス信号の妥当性を確認したとき、車載機器の制御を許可する電子キーシステムにおいて、
前記携帯機の現在位置を検出する位置検出手段を備え、
前記車載装置は、車両が駐車された旨認識したとき、その旨を示す通知信号を無線送信し、
前記携帯機は、前記通知信号を受信したとき、前記位置検出手段を通じて認識された現在位置を車両位置として記憶し、その後に、再び前記位置検出手段を通じて認識される現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断し、この現在位置が前記車両位置に接近した位置である旨判断したときリクエスト要求信号を送信し、
前記車載装置は、前記リクエスト要求信号を受信したとき、前記リクエスト信号を無線送信する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記位置検出手段は、全地球測位システムを利用して前記携帯機の現在位置を検出する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記携帯機と同一のユーザに所持される、若しくは前記携帯機を所持するユーザと同時に乗降車する他のユーザに所持されるとともに、前記位置検出手段を有し、前記携帯機又は前記車載装置からの情報要求信号を受信すると、前記位置検出手段を通じて検出された現在位置を含む情報信号を送信する携帯端末を備え、
前記携帯機は、前記通知信号を受信した後に前記情報信号を受信すると、同情報信号に含まれる現在位置を認識し、この現在位置を車両位置として記憶し、その後に再び、受信した前記情報信号に含まれる現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断する電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記携帯機は、
前記リクエスト信号を受信すると、レスポンス信号を無線送信する電子キーと、
前記電子キーと同一のユーザに所持される、若しくは前記電子キーを所持するユーザと同時に乗降車するユーザに所持されるとともに、前記位置検出手段を有し、前記リクエスト要求信号を送信する携帯端末と、からなり、
前記携帯端末は、前記通知信号を受信すると、前記位置検出手段を通じて認識した現在位置を車両位置として記憶し、その後に再び、前記位置検出手段を通じて認識された現在位置が前記車両位置に接近した位置であるか否かを判断し、この現在位置が前記車両位置に接近した位置である旨判断したとき前記リクエスト要求信号を送信し、
前記車載装置は、前記リクエスト要求信号を受信したとき、前記リクエスト信号を送信する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2111(P2013−2111A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133470(P2011−133470)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】