説明

電子デバイス

【課題】1枚のウエハーに対して製造できる半導体チップの数を増加させて、半導体チップの製造コスト削減を図ることができる電子デバイスを提供する。
【解決手段】半導体からなるウエハー上に、半導体チップと電気的に接続されるパッド10a、10bと、ダイシング時に半導体チップを保護するシールリング11a、11bと、スクライブライン12の回路特性評価部20が設けられている。シールリング11a、11bは、その一部の幅を細くして、スクライブライン12側にスペースができるように設計されている。回路特性評価部20内の配線部23a、23bは、シールリング11a、11bを細くすることで空いた領域を利用して配線を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハーに形成された半導体チップ部の近傍に設けられ、半導体チップ部の回路特性を評価する回路特性評価部を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体チップを製造する際には、図5に示すように、半導体からなる1枚のウエハー表面に複数の半導体チップ部61を形成した電子デバイスを製造する。半導体チップ部61には、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等の回路素子が設けられている。また、互いに隣接する半導体チップ部61の間には、ウエハーと共に各半導体チップ部61に切り分けるための領域、所謂スクライブライン62が形成されている。
【0003】
このスクライブライン62には、図6に示すように、半導体チップ部61に形成されたものと同様の回路素子63と、導体からなる複数のパッド部64〜66と、これら回路素子63とパッド部64〜66とを電気的に接続する配線部67〜69とを備えた回路特性評価部70が形成されており、この回路特性評価部70は、半導体チップ部61と同時に形成される。
【0004】
従来の回路特性評価部70においては、パッド部64,65に接続される配線部67,68が、他のパッド部65,66に接触しないように、パッド部64〜66の配置位置からスクライブライン62の幅方向にずらして設けられている。
【0005】
この回路特性評価部70は、半導体チップ部61に設けられた回路素子の回路特性を評価するためのものである。すなわち、パッド部64〜66に計測機器のプローブを当接させて、回路素子63の回路特性を測定し、この測定結果に基づいて、回路素子63に対応する半導体チップ部61の回路素子の特性評価が行われる。
【0006】
なお、半導体チップ部61に設けられたパッド部と回路素子とを電気的に接続する配線部としては、パッド部の下方側に設けられているものがある。なお、本出願に関する従来技術の参考文献として、特許文献1から特許文献3が知られている。
【特許文献1】特許第2716399号公報
【特許文献2】特開2002−093812号公報
【特許文献3】特開2004−119848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電子デバイスにおいては、配線部67,68が、パッド部64〜66の配置位置からスクライブライン62の幅方向にずらして設けられていたため、配線部67,68の設置領域分だけスクライブライン62の幅寸法を大きくする必要があった。したがって、1枚のウエハーの表面に形成できる半導体チップ部61の数が少なくなり、半導体チップの製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、1枚のウエハーに対して製造できる半導体チップの数を増加させて、半導体チップの製造コスト削減を図ることができる電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、半導体からなるウエハーに複数の半導体チップ部が形成されると共に、前記半導体チップ部の周囲を囲むように設けられるシールリングと、前記ウエハーのスクライブライン上に設けられた回路特性評価部とを具備する電子デバイスであって、前記シールリングは、前記スクライブライン側にスペースができるように一部の幅が狭くなっており、前記回路特性評価部の配線の一部は、前記スペース内に配置されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ウエハーは、複数の層から構成されており、前記複数の層の少なくとも一つ以上の層において、前記シールリングは、前記スクライブライン側にスペースができるように一部の幅が狭くなっており、前記回路特性評価部の配線の一部は、前記スペース内に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被測定部とパッド部とを接続する配線部が、シールリングの領域の一部を使用するため、スクライブラインの幅を狭くすることが可能であり、1枚のウエハーに対して製造できる半導体チップの数を増加させて、半導体チップの製造コスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる電子デバイスの回路特性評価部を示す概略平面図である。図1において、半導体チップ部パッド10a、10bは、シリコンやガリウム砒素等の半導体からなるウエハー上に形成される半導体チップ(図示せず)と電気的に接続されるパッドである。
【0013】
シールリング11a、11bは、1枚のウエハーから個々の半導体チップを切り取るダイシング工程において、半導体チップ内部への水等の浸入を防ぐためのものであり、半導体チップの周囲を囲むように設けられる。スクライブライン12は、前述のダイシング工程で半導体チップを切り取るときに使用するカッターが通る領域である。
【0014】
回路特性評価部20は、ウエハー上に形成される半導体チップの一部の回路を取り出して特性の評価を行うものであり、スクライブライン12に設けられる。スクライブTEG(Test Element Group)パッド21a、21b、21cは、アルミニウム、銅や金等の導体からなるパッドであり、計測器のプローブ(図示しない)でこのパッドに接触することで測定素子22の回路特性を測定することができる。
【0015】
測定素子22は、測定対象となる、ウエハー上に形成される半導体チップの一部の回路である。配線部23a、23bは、スクライブTEGパッド21a、21b、21cと測定素子22とを電気的に接続する配線である。
【0016】
図1に示したシールリング11a、11bは、回路特性評価部20が無いところの幅(例えば、約10μm)を、回路特性評価部20があるところでは細く(例えば、約5μm)して、スクライブライン側にスペースができるように設計している。配線部23a、23bは、シールリングを細くすることによってできた領域を利用して配線を行う。
【0017】
シールリング11a、11bの目的は、チップ内部への水等の浸入を防ぐことであり、強度も必要であるが、シールリング11a、11bの幅を一部分細くしたとしても、その目的は達成できる。
【0018】
このように、シールリング11a、11bの一部を細くし、その空いた領域に配線を通すことで、配線のためにスクライブライン12の幅を広く取る必要がなくなり、スクライブライン12の幅を狭くすることが可能である。したがって、1枚のウエハー上でスクライブラインが占める面積を減らすことができ、結果的に1枚のウエハー上に製造する半導体チップの数を増やすことが可能となる。
【0019】
図2は、図1のA−Bにおける配線層の断面図である。半導体のウエハーは、図2では下側が基板(図省略)であり3つの配線層が積層されており、積層された層間の接続はコンタクトホール13によってなされる。図2において、シールリングは各層に独立して設けられる。
【0020】
シールリング110は2層目のシールリングであり、シールリング111は3層目のシールリングである。3層目のスクライブTEGパッド21aは、コンタクトホールを介して1層目に設けられたスクライブライン23aと接続される。
【0021】
図2では、3層構造の1層目のシールリング11aを細く設計し、細くしたことにより空いた領域に配線を通しているが、図3に示したように、2層目のシールリング110を細くしても良い。また、図4に示したように、1層目のシールリング11aと2層目のシールリング110の双方を細くし、そのそれぞれの層で空いた領域に配線を通してもよい。
【0022】
このように、多層に積層されたウエハーにおいては、細くするシールリングはどの層のものでもよく、また、複数の層のシールリングを細くしてもよい。
【0023】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、ウエハーに形成された半導体チップ部の近傍に設けられ、半導体チップ部の回路特性を評価する回路特性評価部を備えた電子デバイスに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる電子デバイスの回路特性評価部を示す概略平面図である。
【図2】図1の回路特性評価部20のA−B断面図である。
【図3】図1に示した回路特性評価部を、3層構造のウエハーの2層目で実現したときのA−B断面図である。
【図4】図1に示した回路特性評価部を、3層構造のウエハーの1層目および2層目で実現したときのA−B断面図である。
【図5】ウエハー上に形成された複数の半導体チップを示す概略平面図である。
【図6】従来の電子デバイスの回路特性評価部の一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0026】
10a、10b…半導体チップ部パッド、11a、11b、110、111…シールリング、12…スクライブライン、13…コンタクトホール、20…回路特性評価部、21a、21b、21c…スクライブTEGパッド、22…測定素子、23a、23b…配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体からなるウエハーに複数の半導体チップ部が形成されると共に、前記半導体チップ部の周囲を囲むように設けられるシールリングと、前記ウエハーのスクライブライン上に設けられた回路特性評価部とを具備する電子デバイスにおいて、
前記シールリングは、前記スクライブライン側にスペースができるように一部の幅が狭くなっており、
前記回路特性評価部の配線の一部は、前記スペース内に配置されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記ウエハーは、複数の層から構成されており、前記複数の層の少なくとも一つ以上の層において、
前記シールリングは、前記スクライブライン側にスペースができるように一部の幅が狭くなっており、
前記回路特性評価部の配線の一部は、前記スペース内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−180112(P2007−180112A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374137(P2005−374137)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】