説明

電子ビームディスプレイ装置

【課題】電子ビームディスプレイ装置において、実用的な輝度を確保しつつ、外光の反射を防止して明所コントラストを改善する。
【解決手段】電子ビームディスプレイ装置は、フェイスプレート基板27と、フェイスプレート基板の内面に設けられた、各画素領域に対応する開口部4R,4G,4Bを有する反射膜3と、開口部を覆うようにフェイスプレート基板の内面に設けられた、電子ビームが照射されて発光する蛍光体層6R,6G,6Bと、フェイスプレート基板の外面に設けられた円偏光フィルタ17と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ビームディスプレイ装置に関し、特に、外光反射を効果的に抑制することのできるフェイスプレートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームを蛍光体に照射して画像を表示する電子ビームディスプレイ装置は公知である。この種の装置では、フェイスプレートとなるガラス基板上に、蛍光体が形成された発光領域と、発光領域の周囲に設けられ発光に寄与しない領域(ブラックマトリックス)と、が設けられている。ブラックマトリックスは隣接する発光領域同士を区切り、コントラストを改善する機能を有している。また、特許文献1には、外光反射を考慮したPDPが記載されている。
【特許文献1】特開平11-242933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ディスプレイは一般に、室内に設置され、室内光等の外光が照射される環境で使用されることが多い。このような場合、外光がフェイスプレートで反射されるため、ディスプレイの表示画像のコントラストが低下する。このような環境下での表示画像のコントラストを明所コントラストと呼び、ディスプレイはこの明所コントラストの向上が望まれている。特に電子ビームディスプレイでは、フェイスプレートガラス上に蛍光体や、メタルバックを有するため、外光を反射しやすく、明所コントラストの低下が起こりやすい。
【0004】
本発明は、実用的な輝度を確保しつつ、外光の反射を防止して明所コントラストを改善することが可能な電子ビームディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子ビームディスプレイ装置は、フェイスプレート基板と、フェイスプレート基板の内面に設けられた、各画素領域に対応する開口部を有する反射膜と、開口部を覆うようにフェイスプレート基板の内面に設けられた、電子ビームが照射されて発光する蛍光体層と、フェイスプレート基板の外面に設けられた円偏光フィルタと、を有している。
【発明の効果】
【0006】
電子ビームディスプレイ装置のフェイスプレート基板に入射した外光が円偏光フィルタに入射するとまず直線偏光になり、次に円偏光となって円偏光フィルタを出射し、反射膜に入射する。外光はフェイスプレート上の反射膜によって逆周りの円偏光となって反射し、再び円偏光フィルタに入射する。円偏光フィルタではまず直線偏光になるが、偏光方向が入射時と直交しているのでほとんどの成分は遮断され、円偏光フィルタからの出射が阻止される。一方、蛍光体層からの発光光は円偏光フィルタで遮断されることがない。このように、フェイスプレート上に反射膜を有することによって、外光を正反射させることができるため、外光は円偏光フィルタで遮蔽される。一方、蛍光体からの自発光(表示発光)は円偏光フィルタを通過できるので、実用的な輝度を確保しつつ、外光の反射を防止して明所コントラストを改善することが可能な電子ビームディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の電子ビームディスプレイ装置は、電界放出型電子ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出ディスプレイ(SED)、陰極線管ディスプレイ(CRT)などを含んでいる。特に、SED及びFEDは、厚さが均一で平板状のプレートをフェイスプレートとして用いることができることから、本発明を好適に適用できる。FEDに用いられる電子放出源としては、スピント型、MIM(Metal Insulator Metal)型、カーボンナノチューブ型、弾道電子面放出(BSD)型などが挙げられる。以下では、表面伝導型電子放出素子と蛍光体層を用いた電子ビームディスプレイ装置を例に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子ビームディスプレイ装置の部分破断斜視図である。電子ビームディスプレイ装置1は、リアプレート22と、リアプレート22に固定された支持枠23と、フェイスプレート2と、を有している。支持枠23とフェイスプレート2とが互いに接合されることによって密閉された内部空間を有する外囲器25が形成されている。外囲器25の内部は真空に維持されている。リアプレート22及びフェイスプレート2は各々ガラス製のリアプレート基板26及びフェイスプレート基板27を備えている。フェイスプレート基板27は、蛍光体層で生じた発光を透過させる必要があるため、透明の絶縁性基板で製作される。フェイスプレート基板27としてはソーダライムガラスなどの板ガラスの他、PDPの分野で用いられる高ひずみ点ガラスなども好適に用いられる。
【0009】
リアプレート基板26には、画像信号に応じて電子を放出する多数の表面伝導型電子放出素子28が設けられ、画像信号に応じて各表面伝導型電子放出素子28を作動させる配線(X方向配線29,Y方向配線30)が形成されている。外囲器25には高圧端子Hvが設けられている。
【0010】
図2は、本発明の第1の実施形態におけるフェイスプレート及びリアプレートの模式的構造図である。図3は、フェイスプレートの部分平面図である。これらの図では、フェイスプレート2の面内方向をXY方向、フェイスプレート2と直交する方向をZ方向としている。
【0011】
フェイスプレート基板27の内面には反射膜3が設けられている。反射膜3には開口部4R,4G,4Bが設けられ、各開口部4R,4G,4Bを覆うように蛍光体層6R,6G,6Bが設けられている。各蛍光体層6R,6G,6Bは一つの画素領域(サブピクセル)5R,5G,5Bに対応しており、一組の画素領域5R,5G,5Bは一つの単位画素(ピクセル)15を形成している。符号中のR,G,Bは各々赤色、緑色、青色を意味する。蛍光体層6R,6G,6BはCRT分野で公知であるメタルバック(第2の反射膜)7で覆われている。メタルバック7は、高圧端子Hvと電気的に接続された高電位供給膜であり、表面伝導型電子放出素子28から放出された電子ビームを引き寄せる機能を有している。以下、各要素についてさらに詳しく説明する。
【0012】
蛍光体層6R,6G,6Bは、電子ビームの照射により各々赤色、緑色、青色に発光する蛍光体からなり、画像を形成する材料である。蛍光体層6R,6G,6Bは各々反射膜3の開口部4R,4G,4Bだけでなく、さらに反射膜3の非開口部9の一部または全部を覆うように設けられている。蛍光体層6R,6G,6Bとしては、CRTで用いられるP22蛍光体をはじめとする電子ビーム励起で発光する粉状の蛍光体が好適に用いられる。特にP22蛍光体はCRTに広く適用されており、発光色、発光効率、色バランスなどに優れ、好適に用いることができる。蛍光体層6R,6G,6Bはスクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法、インクジェット法などで形成される。特に、スクリーン印刷法が材料使用効率の点で好適である。
【0013】
反射膜3は、外光を正反射させ、後述する円偏光フィルタ17による外光遮断を効果的に行うために設けられている。反射膜3はまた、蛍光体層6R,6G,6Bからの発光を反射し開口部4R,4G,4Bから取り出しやすくするためにも設けられる。反射膜3としては正反射率が高い材料を用いることができ、金属薄膜、半導体薄膜などが好適に用いられる。反射膜3として金属膜を使用する場合には、反射率の高い金属を用いることができ、銀、アルミニウム、ニッケル、プラチナ、ロジウムなどが好適に使用できる。特に、アルミニウムは安価であり、反射率も高く、フォトリソグラフィーにも向いているので好ましい。金属の反射膜を作製する方法としては、真空蒸着法、転写法、めっき法などが挙げられる。パターニングの方法としては、フォトリソグラフィー、転写法などが挙げられる。特に、金属膜を真空蒸着法によって成膜し、その後フォトリソグラフィーで開口を設ける方法は、プロセスの容易性から好ましい。上述のように、蛍光体層6R,6G,6Bはメタルバック7(第2の反射膜)で覆われている。
【0014】
フェイスプレート基板27の外面には円偏光フィルタ17が設けられている。円偏光フィルタ17は、直線偏光子17aと1/4波長板17bとを組み合わせたもので、薄いシート状のものが好適に用いられる。円偏光フィルタ17は、ランダム偏光の入射光を円偏光の状態で出射させる特性を有している。図4を参照して、円偏光フィルタ17によって外光反射が遮断されるメカニズムについて説明する。なお、図4では説明のため直線偏光子17aと1/4波長板17bと反射膜3とが互いに分離しているが、実際には互いに密着して設けられている。外光は通常ランダム偏光である。ランダム偏光の光が直線偏光子17aを通過すると直線偏光となる。次に1/4波長板17bを通過すると直線偏光が円偏光に変換される。円偏光の光が鏡面状の反射膜3で反射すると位相がずれて反対周りの円偏光になる。この状態で反射光が1/4波長板17bを通過すると直線偏光となるが、その際の偏光方向は入射時の偏光方向と直交するため、直線偏光子17aで遮蔽される。この結果、反射膜3で反射した外光はほとんどが円偏光フィルタ17によって遮蔽されてしまう。ただし、蛍光体層6R,6G,6Bなどの拡散反射する面では入射した光の偏光状態が保たれずほとんどランダム偏光に戻ってしまうため、上記のような効果は小さい。したがって、反射膜3の非開口部9の占有面積が大きいほうが外光の反射率を低減することができ、明所コントラストを向上することができる。
【0015】
メタルバック7は複数の目的で設けられている。一つは、リアプレート22の表面伝導型電子放出素子28から放出された電子ビームを加速する高電位を印加するためである。他の目的は、蛍光体層6R,6G,6Bからの発光光のうちリアプレート22方向に出射した光をフェイスプレート2側に反射させるためである。メタルバック7は、加速された電子ビームのエネルギー損失を極力抑えつつ高い光反射率を実現するため、薄膜状の金属が好適に用いられる。アルミニウムは電子ビームのエネルギー損失が小さく、特に好適である。メタルバック7はCRT分野で公知のフィルミング法や転写法などを用いて形成される。特に樹脂中間膜を用いるフィルミング法は、メタルバックの反射率を向上できるため、好適に用いられる。
【0016】
表面伝導型電子放出ディスプレイなどの電界放出型電子ビームディスプレイ装置においては、電子ビームの照射領域は画素領域全体ではなく、限られた領域となることが多い。そのため、非発光領域にはできるだけ遮光性の部材を配置し拡散反射率を小さくすることが、コントラスト向上につながる。これは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、ELパネルなど、発光領域を広く取るほど明るくなるために、開口率を大きくしたいという要求が生じるディスプレイ装置とは逆である。特に、カラー電子ビームディスプレイ装置においては、隣に配置された異なる色の蛍光体層に電子ビームが照射されないように、ある程度電子ビームが絞られていることが求められる。従って、電子ビームの照射領域(図3に照射領域Sとして例示的に示した。)の面積は、対応する開口部4R,4G,4Bの面積よりも小さいことが望ましく、具体的には、電子ビームの照射領域Sの面積は対応する開口部4R,4G,4Bの面積の50%程度が好ましい。また、コントラストの向上の観点から、開口部4R,4G,4Bの面積は対応する画素領域5R,5G,Bの面積の50%以下が好ましい。
【0017】
このように、反射膜3の開口率を小さくすると、光の取り出し効率が低下して、発光効率及び輝度の低下を招く。そのため、開口率を下げても光取り出し効率が下がらないようにすることが、明所コントラストを向上させるために望ましい。本実施形態は、蛍光体層からの発光を効率よく取り出す構成を有している。
【0018】
図5は、図2中A部の部分断面図である。上述したように、蛍光体層6Rは開口部4Rを有する反射膜3の上に重なるように設けられており、メタルバック7は蛍光体層6Rの全域を覆っている。本実施形態では、メタルバック7は高電位を供給し外光を正反射させるだけでなく、非開口部9上に設けられた蛍光体層6Rからの発光光を反射させて光の取り出し効率をあげることを目的として設けられている。図示するように、蛍光体層6Rは、非開口部9の内側において、反射率の高い反射膜3と同じく反射率の高いメタルバック7との間に挟まれるように設けられている。そのため、非開口部9に配置された蛍光体層6Rから出射した光(図5中に矢印で示す。)は反射膜3とメタルバック7とで反射を繰り返し、開口部4Rから外部に取り出される。すなわち開口部4R付近に設けられた蛍光体層6R以外の領域の蛍光体層6Rで発光した光を開口部4Rから取り出すことができるため、開口率を小さくしても光取出し効率が向上し、発光効率、輝度が低下する割合が小さくなる。このように、輝度を低下させずに外光反射率を低減できるため、明所コントラストの向上が実現できる。このような構造においては、開口部を電子ビームのビームサイズ(電子ビーム照射領域)よりも小さくすることによって、さらに明所コントラストを向上させることができる。
【0019】
(第2の実施形態)本実施形態は、第1の実施形態と同様に非開口部にも蛍光体層を設けると同時に、反射膜の非開口部に、画素領域同士を区切るリブ構造を有していることを特徴としている。電子ビームディスプレイ装置の全体構成、リアプレートの構成、円偏光フィルタの構成等は第1の実施形態と同様である。図6は、第2の実施形態におけるフェイスプレートの模式的断面図である。図7は、第2の実施形態の作用を説明するための、図6中B部の部分断面図である。
【0020】
反射膜3aの非開口部9aにはリブ構造(立体構造と呼ばれる場合もある)10が設けられている。リブ構造10は反射膜3aからリアプレート22側に突き出すように設けられ、フェイスプレート基板22を格子状に分割している。分割された各区画は第1の実施形態と同様、各画素領域(図示せず)に割当てられ、各画素領域内には対応する蛍光体層6R,6G,6Bが設けられている。蛍光体層6R,6G,6Bはリブ構造10に接して設けられているが、必ずしも接している必要はない。リブ構造10は蛍光体層6R,6G,6Bと同等以上の膜厚を有しているので、蛍光体層6R,6G,6Bが隣接する画素領域の他色の蛍光体層6R,6G,6Bと混じり合うことが防止される。
【0021】
図7に示すように、非開口部9aで発光した光は反射膜3aとメタルバック7aで反射を繰り返し、開口部4Rから取り出されるが、リブ構造10でも反射するので一層開口部4Rから取り出しやすくなる。リブ構造10を白色で作製すれば、反射膜3a、メタルバック7aとともに蛍光体層6R,6G,6Bからの発光を開口部から取り出す効率が向上する。
【0022】
リブ構造10は、蛍光体層と同程度以上の膜厚を形成できる材料であればよい。たとえば低融点ガラスフリットや、低融点ガラスフリットに顔料を含有させたもの、低融点ガラスフリットに白色のセラミック(アルミナ、チタニア、ジルコニア)などを含有させたものを用いることができる。特に、光の取り出し効率を向上させるためには、白色すなわち拡散反射率が高い材料が好ましく、低融点ガラスフリットにアルミナ、ジルコニアなどを含有させた材料が好適に用いられる。リブ構造10は、スクリーン印刷、サンドブラスト法、転写法などで形成される。膜厚を厚くして高精細化を図るためには、サンドブラスト法が好ましい。
【0023】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
(実施例1)
図1〜3に示す電子ビームディスプレイ装置のフェイスプレート2を以下の工程で作製した。
【0025】
工程1(反射膜の形成)
ソーダライムガラスの基板をアニールし、洗浄し、次いで真空蒸着法により、反射膜となる厚さ200nmのアルミニウム薄膜を基板の全面に形成した。次にフォトレジストを基板の全面に塗布し、開口部のレジストが除去されるように露光を行った。次に、開口部のレジストを現像により除去し、アルミニウム膜をエッチングで除去し、その後残ったレジストを剥離し、開口部4R,4G,4Bを有する反射膜3を形成した。画素領域(サブピクセル)5R,5G,5BのサイズはX方向150μm、Y方向450μm、R,G,Bの画素要素1つずつからなる正方形の単位画素15のサイズは450μm四方とした。画素領域5R,5G,5B内の開口サイズはX方向75μm、Y方向200μmとした。
【0026】
工程2(蛍光体層の形成)
次に、RGBの蛍光体層6R,6G,6Bをスクリーン印刷法により形成した。使用した蛍光体は、化成オプトニクス株式会社製のP22蛍光体であり、赤:P22RE3(Y22S)、緑:P22GN4(ZnS:Cu,Al)、青:P22B2(ZnS:Ag,Cl)を用いた。蛍光体の平均粒径は各色とも7μmで、平均膜厚が15μmになるように形成した。1画素の蛍光体ドットの大きさを、X方向100μmとし、Y方向300μmとした。その後、450℃で焼成を行った。
【0027】
工程3(メタルバックの形成)
次に、CRTの分野で公知であるフィルミング法を用いて、メタルバック7を作製した。樹脂中間膜を形成した後、真空蒸着法によりアルミニウムを厚さ100nmで形成した。その後450℃で焼成を行い、樹脂中間膜を除去した。
【0028】
工程4(真空容器形成)
以上の工程を経てフェイスプレート2を作製し、リアプレート22と組み合わせて真空容器(外囲器25)を形成し、電子ビームディスプレイ装置1を形成した。リアプレート22及び表面伝導型電子放出素子28は従来技術に従って作製した。
【0029】
工程5(円偏光フィルタ形成)
形成した電子ビームディスプレイ装置のフェイスプレート2の外側に、厚さ100μmの1/4波長板7bと厚さ100μmの直線偏光子17aとを積層形成した円偏光フィルタ17を貼り付け、電子ビームディスプレイ装置としての動作を確認した。
【0030】
作製した電子ビームディスプレイ装置の輝度は350cd/m2、拡散反射率は2%、室内照度300lxの時の明所コントラストは350程度であった。
【0031】
(実施例2)
本実施例は、図6,7に示すリブ構造10を設けた電子ビームディスプレイ装置の例である。蛍光体層やメタルバックの製法やパネルの駆動条件などは実施例1と同様である。
【0032】
工程1(反射膜の形成)
実施例1と同様の方法で反射膜を製作した。画素領域(サブピクセル)内の開口サイズはX方向50μm、Y方向200μmとした。
【0033】
工程2(リブ構造の形成)
つぎに、サンドブラスト法でリブ構造10を形成した。リブ構造10の材料としては、低融点ガラスフリット粉末とアルミナ粉末を樹脂バインダーと有機溶剤に混合したペーストを用いた。作製したペーストをスリットコーターにて、厚さ50μmで基板全面に塗布し、150℃で乾燥した。その後、DFR(ドライフィルムレジスト)を貼り付け、幅50μmの格子状になるように露光し、現像した。その後、サンドブラストで格子以外のところを切削し、その後DFRを剥離した。その後、500℃で焼成した。
【0034】
工程3(蛍光体層の形成)
製法は実施例1と同様であるが、格子状に形成されたリブ構造10の開口部を埋めるように蛍光体層6R,6G,6Bを塗布した。
【0035】
その後、実施例1と同様にメタルバックの形成、真空容器の形成、円偏光フィルタの形成を行った。表面伝導型電子放出素子についても実施例1と同様に作成した。作製した電子ビームディスプレイ装置の輝度は300cd/m2、拡散反射率は1.5%、室内照度300lxの時の明所コントラストは400程度であった。
【0036】
(実施例3)
本実施例は、実施例2と同じ開口配置であるがリブ構造10のない形態での例である。ただし、製法やパネルの駆動条件は実施例2と同様である。作製した電子ビームディスプレイ装置の輝度は280cd/m2、拡散反射率は1.5%、室内照度300lxの時の明所コントラストは370程度であった。
【0037】
(比較例)
次に比較例として、図8に示す電子ビームディスプレイ装置の例を示す。比較例では反射膜及び円偏光フィルタを用いていない。反射膜の部分にはブラックマトリクス11を用いた。ソーダライムガラスの基板上に、ブラックマトリクス11となる黒色ペーストを厚さ5μmで基板全面に塗布した。本比較例では黒色ペーストとして感光剤を混合したカーボンブラックを用いた。黒色ペーストを塗布後、サブピクセル内の開口をX方向75μm、Y方向200μmとなるように露光を行い、現像し所望のパターンを得た。その後450℃で焼成した。その後、実施例1と同様に蛍光体層の形成、メタルバックの形成、真空容器の形成を行った。作製した電子ビームディスプレイ装置の輝度は700cd/m2であった。拡散反射率は8%であり、室内照度300lxの時の明所コントラストは150程度であった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子ビームディスプレイ装置の部分破断斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるフェイスプレート及びリアプレートの模式的構造図である。
【図3】フェイスプレートの部分平面図である。
【図4】円偏光フィルタによって外光反射が遮断されるメカニズムについて説明する図である。
【図5】図2中A部の部分断面図である。
【図6】第2の実施形態におけるフェイスプレートの模式的断面図である。
【図7】第2の実施形態の作用を説明するための、図6中B部の部分断面図である。
【図8】比較例のフェイスプレートの模式的断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 電子ビームディスプレイ装置
2 フェイスプレート
3,3a 反射膜
4R,4G,4B 開口部
5R,5G,5B 画素領域(サブピクセル)
6R,6G,6B 蛍光体層
17 円偏光フィルタ
27 フェイスプレート基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスプレート基板と、
前記フェイスプレート基板の内面に設けられた、各画素領域に対応する開口部を有する反射膜と、
前記開口部を覆うように前記フェイスプレート基板の内面に設けられた、電子ビームが照射されて発光する蛍光体層と、
前記フェイスプレート基板の外面に設けられた円偏光フィルタと、
を有する、電子ビームディスプレイ装置。
【請求項2】
前記蛍光体層は前記反射膜の非開口部を覆うように設けられ、該蛍光体層は第2の反射膜で覆われている、請求項1に記載の電子ビームディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第2の反射膜は電位供給膜である、請求項2に記載の電子ビームディスプレイ装置。
【請求項4】
前記開口部の面積は対応する前記画素領域の面積の50%以下である、請求項2または3に記載の電子ビームディスプレイ装置。
【請求項5】
前記開口部の面積は、電子ビーム照射領域の面積よりも小さい、請求項2または3に記載の電子ビームディスプレイ装置。
【請求項6】
前記反射膜の前記非開口部に、前記画素領域同士を区切るリブ構造を有する、請求項2から5のいずれか1項に記載の電子ビームディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−70607(P2009−70607A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235358(P2007−235358)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】