説明

電子ビーム走査アンテナ制御回路及び該制御回路を備えた電子ビーム走査アンテナ装置

【課題】高速走査性等を実現する電子ビーム走査アンテナ装置等を提供する。
【解決手段】複数のアンテナ素子と移相器とを備えた電子ビーム走査アンテナを制御するための制御回路であって、前記各々の移相器うちの一部の移相量を制御電圧として演算制御する移相量演算制御回路と、複数の抵抗を有する双線形性の抵抗網回路とを備え、前記各々の移相器は、フロントエンドプロセッサを介して前記抵抗網回路のうちの対応点にそれぞれ接続され、前記抵抗網回路は、前記各々の移相器のうちの一部に対する前記対応点に印加された移相量としての制御電圧によって、他の移相器に対応する前記対応点に各々の移相器に対する移相量としての制御電圧を生成し、前記フロントエンドプロセッサは、前記抵抗網回路の各々に接続された対応点から前記生成された各々の制御電圧を抽出し、A−D変換したうえで前記各々の移相器に対する制御値として設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電子ビーム走査アンテナ装置に関し、より詳細には、電子ビーム走査アンテナ装置における電子ビーム走査アンテナの制御技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム走査アンテナ装置は、例えばアレー状に配列されたアンテナ素子の各々から放出される電磁波の位相を移相器等の使用により調節し、電磁波が任意の特定方向へのアンテナビームとして放出されるよう放出電磁波の指向性を高めることができる。従って、その用途としては、移動する目標物(人工衛星、飛行機等)の方向へ放出電磁波を指向させる自動追尾方式の電子ビーム走査アンテナ装置(例えば、船舶、自動車に搭載される)や、地上に対して照射する電子ビームの方向を制御する衛星搭載用の電子ビーム走査アンテナ装置などがある。これら電子ビーム走査アンテナ装置には、アンテナ素子ごとに移相器が設けられており、電子ビーム感度が最大となる方向(又は、電子ビームの指向性が高くなる方向)を制御回路によって動的に調節できるという特徴を有している。
【0003】
図8に、従来の電子ビーム走査アンテナ装置を示す。従来の典型的な電子ビーム走査アンテナ装置800は、アンテナ素子801と、移相器802と、電力分配器803と、送信器804と、制御回路805とで構成される。装置800の動作を概説すると、まず、送信器804から高周波信号が出力されて電力分配器803に入力される。電力分配器803では高周波信号が複数に分配され、分配された高周波信号は移相器802の各々に入力される。各移相器802は、指向性の高い電子ビーム(以下、「主ビーム」という。)を放射するために調節された高周波信号の位相を設定する。移相器802によって設定された位相に基づく高周波信号は、アンテナ素子801に入力されて主ビームとなりアンテナ素子801から空間に放射される。なお、図8に関連して受信アンテナを構成する場合には、受信器804b(不図示)が送信器804に代わり、電力合成器803b(不図示)が電力分配器803に代わって同様の構成をとる。
【0004】
ここで、この主ビームは、制御回路805において必要な移相量が計算されて、その計算結果が移相器802の各々に設定されることにより生じる。すなわち、従来の方式においては、主ビームの向きを変える場合には計算機によって全ての移相器に必要な移相量を個別に計算し、制御回路によって全ての移相器を個別に制御するという処理が行われていた。この処理は、電子ビームの動きを更に滑らか制御しようとすると、更に短い時間ごとに全移相器に対する計算が要求されることとなり、電子ビームの指向性の高速制御が極めて困難になると同時に、電子ビーム走査アンテナ装置全体としての消費電力も増大してしまうという課題を有していた。
【0005】
そこで、先行技術においては、上記課題を解決すべく低消費電力でビームを高速に切換制御でき、かつ、信頼性も高めることができる電子ビーム走査アンテナを実現する試みもなされている(例えば、特許文献1を参照)。かかる先行技術は、空間に放射される主ビームを所定の方向へ指向するために、複数の移相器の設定移相量を制御回路において演算し、その演算結果をもとに上記複数の移相器の中から制御すべき移相器を選択し、上記選択された移相器のみに電力を供給して主ビームを所定の方向へ指向させるよう制御する構成とすることにより、全ての移相器を制御することなしに必要最小限の移相器のみに電力を供給して制御する。
【0006】
【特許文献1】特開2003−152420
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術及び上記の先行技術においても、対象となる複数の移相器の設定移相量を制御回路において全て演算する必要があり、計算機内の演算量の増加と、移相器及び制御回路間の設定値等の伝送時間とが更なる高速化に対する課題となっていた。また、従来技術及び上記の先行技術のように移相器ごとに制御を行う構成では、機能の増加と共に移相器及び制御回路間の配線数が増加してしまい、消費電力の増大のみならず装置全体に占める配線ケーブルの重量・空間占有率の増大が課題となる。つまり、構成される複数のアンテナ素子に対する移相量を計算して移相器の各々に伝送する従来の方式では、計算機負荷の増大と制御回路の複雑化と消費電力の増大とを招来し、ひいては装置全体に占める配線ケーブルによる重量増大と空間占有率増大とを引き起こすこととなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、電子ビーム走査アンテナの小型化に対応して制御回路の消費電力及び発熱を低減すると共に制御回路及び装置全体の重量を低減し、併せて低コストでありながら高速なビーム走査性能を発揮する電子ビーム走査アンテナ制御回路及び該制御回路を備えた電子ビーム走査アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路は、少なくとも、複数のアンテナ素子と該アンテナ素子の各々に接続された移相器とを備えた電子ビーム走査アンテナを制御するための電子ビームアンテナ制御回路であって、前記各々の移相器うちの一部の移相量を制御電圧として演算制御する移相量演算制御回路と、複数の抵抗を有する双線形性の抵抗網回路とを備え、前記各々の移相器は、フロントエンドプロセッサを介して前記抵抗網回路のうちの対応点にそれぞれ接続され、前記抵抗網回路は、前記各々の移相器のうちの一部に対する前記対応点に印加された移相量としての制御電圧によって、他の移相器に対応する前記対応点に各々の移相器に対する移相量としての制御電圧を生成し、前記フロントエンドプロセッサは、前記抵抗網回路の各々に接続された対応点から前記生成された各々の制御電圧を抽出し、前記各々の移相器に対する制御値として設定することを特徴とする。
また、本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ装置は、少なくとも、上記電子ビーム走査アンテナ制御回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、主ビーム方向を表わす方向余弦から数少ない制御量を計算するだけで残りの制御量は後述する抵抗網回路(双線形抵抗ネットワーク)等により自動生成されるので、計算機の負荷が大幅に軽減され、かつ、高速な電子ビーム走査が可能となる。また、アレーを構成するアンテナ素子の数が増加しても、計算機インタフェースから直接制御回路に伝送すべき信号の数は増加しないため、電子ビーム走査アンテナ装置全体の配線構成を簡略に保つことができ、装置全体の重量も低減することができる。併せて、回路構成の簡素化に伴い装置の信頼性が向上し、低消費電力を実現できる。さらに、後述する通り、制御回路を微小かつ安価な部品で構成することもできるため、電子ビーム走査アンテナ装置の製造コスト及び保守コストをも低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の基本原理)
電子ビーム走査アンテナは、典型的には、アンテナ素子をアレー状に配列することにより、指向性に優れた電磁波の送受信を可能とするものである。さらに、各アンテナ素子に移相器を設けることにより、電子ビーム走査アンテナ装置として電磁波の感度が最大となる方向を動的に調整することができるという特徴を有している。一般的な電子ビーム走査アンテナ装置の構成については、図8を用いて説明した通りである。
【0012】
次に、図9に、電子ビーム走査アンテナと主ビーム方向との一般的関係を示す。図9においては、電子ビーム走査アンテナはx-y平面に配置されているものとする。このとき、図9ように主ビームの方向余弦が(α,β,γ)で与えられたとすると、所望のビーム方向は(θ,φ)である。このとき、θは、方向余弦に対するz-軸からの角度(仰角)であり、φは、主ビームをx-y平面に射影した線分に対するx-軸からの反時計回りの角度(方位角)である。これらの定義に基づき、ビーム方向余弦(α,β,γ)は、次式で表わすことができる。







【0013】
次に、例えば、各アンテナ素子の中心間の距離をdとするN×Nのアレーが、直行するx-座標とy-座標とによって構成される二次元平面上に展開されているとすると、各アンテナ素子の中心座標は、

と表わされる。ここで、i及びjは、1からNまでの自然数である。そうすると、アンテナの四隅に置かれたアンテナ素子の中心座標は、それぞれ、







と表わすことができる。
【0014】
ここで、上記のような電子ビーム走査アンテナの指向する方向を、x-y平面に垂直の方向(図9におけるz-軸)を天頂とする極座標表示で、(θ,φ)とするためには、(xi,yj)に配置されたアンテナ素子の位相を一斉に、

だけずらす(移相する)必要がある。以下、Φijを「移相量」ということとする。なお、kはマイクロ波の波長λによって決まる定数であって、

と表わすことができる。πは円周率である。また、α及びβは、所謂方向余弦であるから、



と表わすことができる。ここで、c1及びc2は、x-y平面における座標の平行移動によって発生する係数であるが、すべてのアンテナ素子に共通に発生するものであるから指向性に影響を与えることはない。また、c3もすべてのアンテナ素子に共通であり、かつ、αにもβにも依存しないので指向性に影響を与えることはない。
【0015】
なお、アンテナ素子の配列に関し、より一般的な場合(例えば、アンテナ素子がジグザグ配列に配列されているような場合)においても表現可能とするためには、



とすればよいが、具体的に例示すると煩雑となる一方で発明の本質に異なる所はないので、本明細書においては上述した簡素な構成に基づいて説明を進めることとする。
【0016】
(本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路及び該制御回路を備えた電子ビーム走査アンテナ装置の具体的構成例)
図1に、本発明の実施形態における電子ビーム走査アンテナ装置100の構成を示す。電子ビーム走査アンテナ装置100は、複数のアンテナ素子101と、各々のアンテナ素子に接続された移相器102と、電力分配器103と、送信器104と、制御回路105と、位相制御信号発生回路106と、フロントエンドプロセッサ108とで構成される。装置100の動作を概説すると、まず、送信器104から高周波信号が出力されて電力分配器103に入力される。電力分配器103では高周波信号が複数に分配され、分配された高周波信号は移相器102の各々に入力される。各移相器102は、主ビームを放射するために調節された高周波信号の位相を調節する。移相器102によって設定された位相に基づく高周波信号は、アンテナ素子101に入力されて主ビームとなりアンテナ素子101から空間に放射される。
【0017】
ここで、上記主ビームの指向方向は、フロントエンドプロセッサ108を介して位相制御信号発生回路106から受信した移相量(制御量)情報に基づく移相器102の各々の設定値によって決定される。フロントエンドプロセッサ108は、移相器ごとに設置され、後述するように位相制御信号発生回路106からアナログ信号を受信して各移相器102への設定値をディジタル信号として生成する。各フロントエンドプロセッサ108は、例えば、それぞれアレーアンテナ上の格子点(アンテナ素子の位置に略一致)に配置され、位相制御信号発生回路106内における対応点に接続される。例えば、アレーアンテナが8×8の格子点(それぞれ格子点P(i,j)とする。但し、i及びjは1〜8の整数)からなる正方形アレー状に構成された場合には、各格子上のフロントエンドプロセッサ108も、移相制御信号発生回路内に構成された8×8の対応点(それぞれ対応点Q(i,j)とする。但し、i及びjは1〜8の整数)を有する回路においてそれぞれ対応する位置に接続される。つまり、P(i,j)に位置するアレーアンテナ上のフロントエンドプロセッサが、位相制御信号発生回路の対応点Q(i,j)に接続される。
制御回路105は、必要に応じて制御電圧を計算し、アナログ/ディジタル信号の送受信を制御し、装置内における各モジュールの制御を行う。したがって、制御回路105及び位相制御信号発生回路106は、主ビームを走査するための電子ビーム走査アンテナ制御回路107として機能する。なお、制御回路105からは、直接フロントエンドプロセッサ108を制御するためのシリアル信号線路(不図示)を配線接続する。
【0018】
次に、本発明における位相制御信号発生回路の基本概念を図2に示す。上述の通り、本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ装置は制御回路105と位相制御信号発生回路106とからなる電子ビーム走査アンテナ制御回路107を備えるが、この位相制御信号発生回路106は、図2に示すような抵抗網回路(又は、双線形抵抗ネットワーク)で構成することができる。そうして、図示するように第1〜第N点までのN個(Nは自然数)の印加電圧点を有する抵抗網回路内の複数の電位点(通常、N個よりも遥かに多い)に自動生成された制御電圧をそれぞれ読み出すというのが本発明の基本概念である。つまり、自動生成された制御電圧については、従来なされていたような計算機による演算の手間を要しないということを意味する。
【0019】
また、N=4とした場合の位相制御信号発生回路の基本概念を図3に示す。位相制御信号発生回路は、図3に示す通り、正方形(又は矩形)の抵抗網回路300で構成されており、四隅の第1〜第4の電位点301〜304にそれぞれ第1〜第4の印加電圧が印加される。ここで、抵抗網回路の四隅に印加される電圧とアンテナの四隅に発生する位相との間には一定の比例関係が成立するが、詳細は後述する。ここで、第1の印加電圧はV1であり、第2の印加電圧はV2であり、第3の印加電圧はV3であり、第4の印加電圧はV4である。そうして、抵抗網回路300における所定の電位点に制御電圧が自動生成され、この制御電圧を読み取ることにより移相器に必要な移相量を取得することができる。制御電圧を読み出すことのできる電位点は複数設けることができる(後述)。
【0020】
次に、図4に、本発明の実施形態の電子ビーム走査アンテナ装置における位相制御信号発生回路の構成概念を例示する。図4に示す位相制御信号発生回路は抵抗網回路400で構成され、四隅の第1〜第4の電位点401〜404のうち、第1の電位点401には第1の印加電圧V1が印加され、第2の電位点402には第2の印加電圧V2が印加され、第3の電位点403には第3の印加電圧V3が印加される。そして、第4の電位点404には電圧V4(=V1+V3−V2)を自動生成するための電圧自動発生手段405が接続されており、上記の印加電圧V1〜V3が第1の電位点401〜第3の電位点403にそれぞれ印加されると、第4の電位点404に電圧V4が自動生成されるように作動する。電圧自動発生手段405は、演算増幅器で構成されており、各入力端子には電圧V1,V2,V3がそれぞれ印加される。次に、第4の電位点404に自動生成される電圧V4が、V1+V3−V2で表わされることの導出を行う。
【0021】
(本発明にかかる位相制御信号発生回路の基本原理)
本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路においては、電子ビーム走査アンテナの四隅、すなわち、







の位置に置かれたアンテナ素子に必要な移相量ΦN1,ΦNN,Φ1N,Φ11を指定することによってその他のアンテナ素子の移相量を自動的に決定することが基本的な動作原理である。
【0022】
ここで、この電子ビーム走査アンテナの四隅の移相量は、式(10)を用いて次式で表わされる。







具体的に移相量を決めるためには、c1,c2,c3をあらかじめ決めておかねばならないようにも思える。しかし、移相量は、相対的なものであるから共通項αc1+βc2+c3における係数c1,c2,c3は、具体的適用において取り扱いが容易になるように設定すればよい。
【0023】
例えば、仮に、

における移相量を定数Φ0とおけば、

が、可能なあらゆるα,βに対して成立しなければならない。そうすると、





を導くことができる。これらの係数を用いて式(10)を書き改めると、

となる。
【0024】
なお、上記式中のNが奇数の場合には、当該座標にアンテナ素子が存在することとなるが、Nが偶数の場合には、当該座標にアンテナ素子は存在しない。このように、具体的適用においては、位相を固定すべきアンテナ素子が必ずしも中心部の素子であるとは限らない。
【0025】
一方、移相器に印加する電圧Vijと移相量との間の比例係数をk´とすると(このような位相器をアナログ移相器という)、

である。したがって、以下のように、四隅の電圧を設定したときに、その他のVijがi,jに対して線形に変化するよう構成された、例えば抵抗網回路(又は、双線形抵抗ネットワーク)を用いると所要の目的を達成することができる。







【0026】
なお、上記アナログ移相器に対して、ディジタル信号を印加することにより制御が可能な移相器をディジタル移相器という。本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ装置においてディジタル移相器を制御する場合には、A−D変換器等を用いてVijをディジタル値に変換して当該ディジタル信号を移相器に印加するよう制御することができる。
【0027】
次に、議論を簡略化するために、









とおく。そうすると、式(20)〜式(23)を式(31)〜式(34)を経由して、式(35)〜式(38)に代入すると明らかなように、V1,V2,V3,V4の間には、

の関係が成り立つ。従って、計算機を使用してV1,V2,V3,V4の電圧を計算し、これらを抵抗網等に印加する代わりに、例えば、V1,V2,V3の電圧は計算機により計算して抵抗網に印加する一方で、V4については、

の関係を用いて、ハードウェアを用いて自動生成することができる。この自動生成の手段としては演算増幅器等を用いることができるが、その詳細構成については後述する。
【0028】
さらに、式(25)及び式(39)の関係式より



が成り立つことにも着目すれば、V1,V2の電圧は計算機によって計算して抵抗網等に印加する一方で、V3及びV4については、適切なハードウェアを用いて



の関係より自動生成することができる。この自動生成の手段としては演算増幅器等を用いることができるが、その詳細構成については後述する。
【0029】
図5に、図4に示す位相制御信号発生回路の具体的回路構成を示す。図5における位相制御信号発生回路は、抵抗網回路500として具体的に構成され、四隅の電位点V11,V15,V51,V55を有する。そして、電位点V11と電位点V15との間には、抵抗R2,R3,R4,R5が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V12,V13,V14が設けられている。また、電位点V11と電位点V51との間には、抵抗R7,R13,R19が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V21,V31,V41が設けられている。同様に、電位点V51と電位点V55との間には、抵抗R25,R26,R27,R28が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V52,V53,V54が設けられている。また、電位点V55と電位点V15との間には、抵抗R12,R18,R24が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V25,V35,V45が設けられている。以上の通り、直列に接続された抵抗を挟んだ各電位点間は、その両端の印加電圧を同等な比率で分配する電圧分配回路(ラダー抵抗回路)を構成している(以下、図7においても同様である)。
【0030】
また、図5の電位点V21と電位点V25との間には、ユニティゲイン・バッファU1、抵抗R8,R9,R10,R11、ユニティゲイン・バッファU2が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU1及びU2は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V21はユニティゲイン・バッファU1の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V25はユニティゲイン・バッファU2の入力側(P:正入力端子)と接続されている。このように、電位点V21と電位点V25との間は、電圧分割特性に影響を与えずにその両端の印加電圧を同等な比率で分配する電圧分配回路を構成している(以下、図5の他の電位点間、及び、図7においても同様である)。
【0031】
同様に、図5の電位点V31と電位点V35との間には、ユニティゲイン・バッファU3、抵抗R14,R15,R16,R17、ユニティゲイン・バッファU4が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU3及びU4は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V31はユニティゲイン・バッファU3の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V35はユニティゲイン・バッファU4の入力側(P:正入力端子)と接続されている。
【0032】
また、図5の電位点V41と電位点V45との間には、ユニティゲイン・バッファU5、抵抗R20,R21,R22,R23、ユニティゲイン・バッファU6が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU5及びU6は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V41はユニティゲイン・バッファU5の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V45はユニティゲイン・バッファU6の入力側(P:正入力端子)と接続されている。
【0033】
なお、図5におけるユニティゲイン・バッファU1〜U6は、演算増幅器によるユニティゲイン・バッファ構成としたがこれに限定されるものではなく、適宜の回路構成を採用することができる。
【0034】
また、図5においては、表記の便宜上、例えば、電位点V12における電圧値もV12と置くこととする(図5下段拡大図を参照)。すなわち「電位点V12」というときのV12は位置又は接点端子を表わし、「電圧V12」又は「制御電圧V12」というときのV12は電圧値を表わすものとする。図5において他の電位点及びその電圧値についても同様とする。また、抵抗R1〜R28については、本発明の性質上、特定の範囲の抵抗値を取ることを要求するものではないことは明らかであるが、消費電力、時定数による時間遅延等を考慮し、現実的な範囲として100Ω〜1KΩ程度のものを使用することができる。また、各抵抗値についても原則として同一のものを使用するが、適宜個別の素子の微調整(チューニング)を行って性能の向上を図ることもできる。なお、抵抗値の誤差は一般的な安価な抵抗素子を使用した場合でも0.5%程度(略1対200)以内に収まるものであり、7ビット分の情報を取り扱うには充分な精度である。誤差が0.3%程度のものを使用すれば8ビット分の情報を取り扱うのに充分な精度と言える。従って、本発明の実施に要するコストは極めて低く抑えることができる。
【0035】
また、図5における抵抗網回路500を構成する際に上述の通りユニティゲイン・バッファU1乃至U6を使用する理由は、抵抗網回路としての双線形性を高めて電圧分割特性に影響を与えないようにするためである。すなわち、抵抗網回路500を抵抗のみで格子状に構成した場合には、電圧分布の線形性が悪くなり、所謂「球面収差」のような偏りのある分布が発生してしまうからである。さらに、ユニティゲイン・バッファを使用しない場合には、上記のような偏りのある分布を計算機で個別に補正する必要が生じてしまう。或は、電圧分布が正方メッシュに近づくように各抵抗の抵抗値を微妙に調整する必要が生じる。
【0036】
そして、図5の電位点V51は、電圧自動発生手段505としての演算増幅器の出力側に接続されている。図5に示す通り、電圧自動発生手段505の入力側には、電圧V1及びV3が各々抵抗を介して並列に印加され(正入力端子側)、電圧V2が抵抗を介して他方に印加されている(負入力端子側)。そして、その出力は抵抗を介して入力(負入力端子側)に帰還されている。
【0037】
以上の通りの構成及び印加電圧により、電位点V51にはV4=V1+V3−V2の制御電圧が自動生成される。さらに、抵抗網回路500の双線形性により、電位点V12には制御電圧V12が、電位点V13には制御電圧V13が、電位点V14には制御電圧V14が、電位点V21には制御電圧V21が、電位点V22には制御電圧V22が、電位点V23には制御電圧V23が、電位点V24には制御電圧V24が、電位点V25には制御電圧V25が、電位点V31には制御電圧V31が、電位点V32には制御電圧V32が、電位点V33には制御電圧V33が、電位点V34には制御電圧V34が、電位点V35には制御電圧V35が、電位点V41には制御電圧V41が、電位点V42には制御電圧V42が、電位点V43には制御電圧V43が、電位点V44には制御電圧V44が、電位点V45には制御電圧V45が、電位点V52には制御電圧V52が、電位点V53には制御電圧V53が、電位点V54には制御電圧V54が、それぞれ双線形的に自動生成される。
【0038】
次に、図6に本発明の実施形態の電子ビーム走査アンテナ装置における他の位相制御信号発生回路の構成概念を例示する。図6に示す位相制御信号発生回路は抵抗網回路600として具体的に構成され、四隅の第1〜第4の電位点601〜604のうち、第1の電位点601には第1の印加電圧V1が印加され、第2の電位点602には第2の印加電圧V2が印加される。そして、第3の電位点603には電圧V3を自動生成するための電圧自動発生手段605が接続されており、第4の電位点604には電圧V4を自動生成するための電圧自動発生手段606が接続されている。そして、上記印加電圧V1及びV2が第1の電位点601及び第2の電位点602にそれぞれ印加されると、第3の電位点603に電圧V3が、第4の電位点604に電圧V4がそれぞれ自動生成されるように作動する。電圧自動発生手段605及び606は、それぞれ2入力の演算増幅器で構成されており、電圧自動発生手段605の入力には電圧V1,V0がそれぞれ印加され、電圧自動発生手段606の入力には電圧V2,V0がそれぞれ印加される。ここで、第3の電位点603に自動生成される電圧V3は、V0−V1であり、第4の電位点604に自動生成される電圧V4は、V0−V2となることは、すでに述べた通りである。
【0039】
図7に、図6に示す位相制御信号発生回路の具体的回路構成を示す。図7における位相制御信号発生回路は、具体的に抵抗網回路700で構成され、四隅の電位点V11,V15,V51,V55を有する。そして、電位点V11と電位点V15との間には、抵抗R2,R3,R4,R5が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V12,V13,V14が設けられている。また、電位点V11と電位点V51との間には、抵抗R7,R13,R19が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V21,V31,V41が設けられている。同様に、電位点V51と電位点V55との間には、抵抗R25,R26,R27,R28が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V52,V53,V54が設けられている。また、電位点V55と電位点V15との間には、抵抗R12,R18,R24が直列に接続され、それぞれの抵抗間には電位点V25,V35,V45が設けられている。
【0040】
また、図7の電位点V21と電位点V25との間には、ユニティゲイン・バッファU1、抵抗R8,R9,R10,R11、ユニティゲイン・バッファU2が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU1及びU2は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V21はユニティゲイン・バッファU1の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V25はユニティゲイン・バッファU2の入力側(P:正入力端子)と接続されている。
【0041】
同様に、図7の電位点V31と電位点V35との間には、ユニティゲイン・バッファU3、抵抗R14,R15,R16,R17、ユニティゲイン・バッファU4が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU3及びU4は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V31はユニティゲイン・バッファU3の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V35はユニティゲイン・バッファU4の入力側(P:正入力端子)と接続されている。
【0042】
また、図7の電位点V41と電位点V45との間には、ユニティゲイン・バッファU5、抵抗R20,R21,R22,R23、ユニティゲイン・バッファU6が直列に接続されて、ユニティゲイン・バッファU5及びU6は互いに出力側を対向させるように配置されている。従って、電位点V41はユニティゲイン・バッファU5の入力側(P:正入力端子)と接続され、電位点V45はユニティゲイン・バッファU6の入力側(P:正入力端子)と接続されている。
【0043】
なお、図5におけるユニティゲイン・バッファU1〜U6は、演算増幅器によるユニティゲイン・バッファ構成としたがこれに限定されるものではなく、適宜の回路構成を採用することができる。
【0044】
また、図7においては、表記の便宜上、例えば、電位点V12における電圧値もV12と置くこととする(図7下段拡大図を参照)。すなわち「電位点V12」というときのV12は位置又は接点端子を表わし、「電圧V12」又は「制御電圧V12」というときのV12は電圧値を表わすものとする。図7において他の電位点及びその電圧値についても同様とする。また、使用する抵抗R1〜R28についても図5に示した抵抗と同様であり、例えば、一般的な安価な抵抗素子を使用した場合でも、その誤差は0.5%程度(略1対200)以内に収まるものであり、7ビット分の情報を取り扱うには充分な精度を担保できる。従って、本発明の実施に要するコストは極めて低く抑えることができる。
【0045】
また、図7における抵抗網回路700を構成する際に上述の通りユニティゲイン・バッファU1乃至U6を使用する理由は、抵抗網回路としての双線形性を高めて電圧分割特性に影響を与えないようにするためである。すなわち、抵抗網回路700を抵抗のみで格子状に構成した場合には、電圧分布の線形性が悪くなり、所謂「球面収差」のような偏りのある分布が発生してしまうので、ユニティゲイン・バッファU1乃至U6を図示したように使用して、抵抗網回路としての双線形性を高めている。
【0046】
そして、図7の電位点V11は、電圧自動発生手段705としての演算増幅器の出力側に接続されている。図7に示す通り、電圧自動発生手段705の入力側には、電圧V0が抵抗を介して印加され(正入力端子側)、該抵抗と正入力端子との間から別の抵抗を介して接地されている。また、電圧V1が抵抗を介して他方に印加されている(負入力端子側)。そして、その出力は抵抗を介して入力(負入力端子側)に帰還されている。
【0047】
また、図7の電位点V51も、電圧自動発生手段706としての演算増幅器の出力側に接続されている。図7に示す通り、電圧自動発生手段706の入力側には、電圧V0が抵抗を介して印加され(正入力端子側)、該抵抗と正入力端子との間から別の抵抗を介して接地されている。また、電圧V1が抵抗を介して他方に印加されている(負入力端子側)。そして、その出力は抵抗を介して入力(負入力端子側)に帰還されている。
【0048】
以上の通りの構成及び印加電圧により、電位点V11にはV3=V0−V1の制御電圧が自動生成され、電位点V51にはV4=V0−V2の制御電圧が自動生成される。さらに、抵抗網回路700の双線形性により、電位点V12には制御電圧V12が、電位点V13には制御電圧V13が、電位点V14には制御電圧V14が、電位点V21には制御電圧V21が、電位点V22には制御電圧V22が、電位点V23には制御電圧V23が、電位点V24には制御電圧V24が、電位点V25には制御電圧V25が、電位点V31には制御電圧V31が、電位点V32には制御電圧V32が、電位点V33には制御電圧V33が、電位点V34には制御電圧V34が、電位点V35には制御電圧V35が、電位点V41には制御電圧V41が、電位点V42には制御電圧V42が、電位点V43には制御電圧V43が、電位点V44には制御電圧V44が、電位点V45には制御電圧V45が、電位点V52には制御電圧V52が、電位点V53には制御電圧V53が、電位点V54には制御電圧V54が、それぞれ双線形的に自動生成される。
【0049】
(本発明の適用範囲)
一般に、電子ビーム走査アンテナは、例えば概略円形の周辺形状を有するものが多用されている。一方、本発明の実施形態においては、正方形(四角形)の周辺形状を有する場合を中心に説明したが、より複雑な周辺形状を有するフェースドアレーアンテナにも適用することができる。すなわち、当該複雑な周辺形状を有する電子ビーム走査アンテナであっても、仮想的により大きな正方形の電子ビーム走査アンテナの部分を構成しているものとして取り扱うことができる。そうすると、正方形(四角形)の四隅の位置の仮想的なアンテナ素子の移相量を制御するようにして、その内部のVijをi,jに対して線形に変化するように抵抗網を構成することができる。したがって、本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路及び装置は、そのアンテナ形状が、より複雑な周辺形状を有する電子ビーム走査アンテナであっても本発明の技術思想を適用して制御することができる。
【0050】
また、船舶等で用いられる電子ビーム走査アンテナにおいては、水平線際から天頂部にいたる広範囲の立体角に渡って指向性を制御することができることが望ましい。そこで、電子ビーム走査アンテナを半球面に展開することができれば便宜である。一方、本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路については平面上に展開された電子ビーム走査アンテナに対する制御を中心に説明したが、球面等の立体形状を有する表面上に展開された電子ビーム走査アンテナにも同様に適用できる。すなわち、立体形状であっても、必要な精度で三角形、四角形、五角形等の平面多角形を組み合わせることにより被覆することができ、そうすると、上述した四角形の場合の手法と同一の手法を用いて上記平面多角形内に展開された電子ビーム走査アンテナを制御することが可能である。したがって、立体表面に設けられた電子ビーム走査アンテナであっても、表面を適切な形状に区分することにより、本発明にかかる電子ビーム走査アンテナ制御回路及び装置によって制御することができる。
【0051】
以上の通り、本発明によれば、計算機負荷の増大化と制御回路の複雑化と消費電力の増大化とに起因する装置重量の増大及びコスト増加の問題を解消し、電子ビーム走査アンテナの小型化に対応して制御回路の消費電力及び発熱を低減すると共に制御回路及び装置全体の重量を低減し、併せて低コストでありながら高速なビーム走査性能を発揮する電子ビーム走査アンテナ制御回路及び該制御回路を備えた電子ビーム走査アンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態における電子ビーム走査アンテナ装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態の電子ビーム走査アンテナ装置におけるフロントエンドプロセッサ及び位相制御信号発生回路の信号入出力等のインタフェースを説明する説明図である。
【図3】本発明の位相制御信号発生回路の基本概念を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施形態の電子ビーム走査アンテナ装置における位相制御信号発生回路の構成概念を説明する説明図である。
【図5】図4に示す位相制御信号発生回路の具体的回路構成を説明する回路説明図である。
【図6】本発明の実施形態の電子ビーム走査アンテナ装置における他の位相制御信号発生回路の構成概念を説明する説明図である。
【図7】図6に示す位相制御信号発生回路の具体的回路構成を説明する回路説明図である。
【図8】従来の電子ビーム走査アンテナ装置の典型的構成を示す構成図である。
【図9】電子ビーム走査アンテナと主ビーム方向との一般的関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
100 電子ビーム走査アンテナ装置
101 アンテナ素子
102 移相器
103 分配器
105 制御回路
106 位相制御信号発生回路(抵抗網回路、双線形抵抗ネットワーク)
107 電子ビーム走査アンテナ制御回路
108 フロントエンドプロセッサ(FEP)
300 抵抗網回路(双線形抵抗ネットワーク)
405、505、605、606、705、706 電圧自動発生手段
801 アンテナ素子
802 移相器
803 分配器
804 送信器
805 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と該アンテナ素子の各々に接続された移相器とを備えた電子ビーム走査アンテナを制御するための電子ビームアンテナ制御回路であって、
前記各々の移相器うちの一部の移相量を制御電圧として演算制御する移相量演算制御回路と、
複数の抵抗を有する双線形性の抵抗網回路と
を備え、
前記各々の移相器は、フロントエンドプロセッサを介して前記抵抗網回路のうちの対応点にそれぞれ接続され、
前記抵抗網回路は、前記各々の移相器のうちの一部に対する前記対応点に印加された移相量としての制御電圧によって、他の移相器に対応する前記対応点に各々の移相器に対する移相量としての制御電圧を生成し、
前記フロントエンドプロセッサは、前記抵抗網回路の各々に接続された対応点から前記生成された各々の制御電圧を抽出し、前記各々の移相器に対する制御値として設定する
ことを特徴とする電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項2】
前記複数のアンテナ素子と前記抵抗網回路とは、それぞれ矩形状に構成され、
前記移相量演算制御回路は、前記矩形状に構成された複数のアンテナ素子のうちの四隅の移相量を制御電圧として演算制御し、該制御電圧を前記抵抗網回路上の対応する四隅に対する制御電圧として印加するよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項3】
前記複数のアンテナ素子と前記抵抗網回路とは、それぞれ矩形状に構成され、
前記移相量演算制御回路は、前記矩形状に構成された複数のアンテナ素子のうちの三隅の移相量を制御電圧として演算制御し、該制御電圧を前記抵抗網回路上の対応する三隅に対する制御電圧として印加するよう制御し、
前記抵抗網回路は、該抵抗回路網のうちの前記対応する三隅に印加された制御電圧から残りの1つの隅の制御電圧を自動生成するよう構成すると共に、他の移相器に対応する前記対応点に各々の移相器に対する移相量としての制御電圧を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項4】
前記複数のアンテナ素子と前記抵抗網回路とは、それぞれ矩形状に構成され、
前記移相量演算制御回路は、前記矩形状に構成された複数のアンテナ素子のうちの二隅の移相量を制御電圧として演算制御し、該制御電圧を前記抵抗網回路上の対応する二隅に対する制御電圧として印加するよう制御し、
前記抵抗網回路は、該抵抗回路網のうちの前記対応する二隅に印加された制御電圧から残りの2つの隅の制御電圧を自動生成するよう構成すると共に、他の移相器に対応する前記対応点に各々の移相器に対する移相量としての制御電圧を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項5】
前記複数のアンテナ素子は、概略円形の周辺形状のアンテナアレーを構成し、
前記抵抗網回路は、複数の多角形の組み合わせで前記アンテナアレーの周辺形状に対応するよう構成され、前記複数の多角形の各々の頂点を前記複数のアンテナ素子に対応する制御電圧印加点として対応付けたことを特徴等する請求項1に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項6】
前記抵抗網回路における残りの1つの隅は、前記三隅に印加された制御電圧を入力端子に印加された演算増幅器で構成されたことを特徴とする、請求項3に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項7】
前記抵抗回路網は、演算増幅器で構成された少なくとも1組のユニティゲイン・バッファを有する電圧分配回路を備えることを特徴とする、請求項3又は6の何れか1項に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項8】
前記抵抗網回路における残りの2つの隅は、第1の演算増幅器と第2の演算増幅器とで構成され、
第1の演算増幅器の入力端子には前記抵抗網回路上の二隅のうちの1つの印加電圧が少なくとも印加され、
第2の演算増幅器の入力端子には前記抵抗網回路上の二隅のうちの他方の印加電圧が少なくとも印加された
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項9】
前記抵抗回路網は、演算増幅器で構成された少なくとも1組のユニティゲイン・バッファを有する電圧分配回路を備えることを特徴とする、請求項4又は8の何れか1項に記載の電子ビームアンテナ制御回路。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の電子ビームアンテナ制御回路を備えた電子ビーム走査アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−288796(P2008−288796A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130703(P2007−130703)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」委託研究のうちの「高マイクロ波帯用アンテナ技術の高度化技術の研究開発」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】