説明

電子レンジ調理用容器

【課題】調理後の時間経過により容器内部が減圧した場合、容器が潰れることがないように、減圧時の空気導入手段を具えた電子レンジ調理用容器を提供すること。
【解決手段】電子レンジ調理用容器10は、収納部11を有する底容器1、蓋体2、及びフランジ31を有するキャップ3からなる。調理時の容器内部の圧力が高まった時には、従来どおり、蒸気を逃がしつつ圧力をかけた調理をすることができ、調理後の時間経過による減圧時には、減圧時の空気導入手段として設けられた舌状部25の切欠効果により、この部分から容器内部へと空気が流込むことで、容器内の圧力を大気圧と同じに回復させて潰れを防止し、その後は、密閉状態を保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品や麺類や惣菜等の各種食材を電子レンジにより加熱調理するための電子レンジ調理用容器、特に、その減圧時潰れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子レンジ調理用容器は、既に調理済みの食材を温め直す用途のものが多かったが、特許文献1に開示されている電子レンジ調理用システム容器は、容器本体、蓋体のほかに、蓋体に嵌合されるキャップを具えることにより、容器内の圧力を大気圧以上に維持し、圧力が高くなりすぎると、蒸気を排出することにより、蒸し効果を発揮する調理が可能であるので、生の食材であっても、適切に調理することができる特徴を有している。
【特許文献1】特許第3962377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1のシステム容器は、加熱調理後には、容器内部の温度が下がるにつれて次第に減圧状態になるために、容器が潰れるように変形することがあり、その結果、汁物が飛び出して、電子レンジ内部を汚して取り扱いに困るという問題が生じていた。
【0004】
そこで、本発明は、調理後の容器内部の圧力低下に対応することができる、電子レンジ調理用容器の潰れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食材を収納する底容器と、該底容器と嵌合する蓋体と、該蓋体中央に設けられた凹部に嵌合するフランジ付きキャップとからなる電子レンジ調理用容器において、
前記蓋体の凹部の外周に環状凹みを設けて前記キャップのフランジを嵌合させ、
前記環状凹み、又は前記キャップのフランジに、減圧時潰れ防止のための空気導入手段を設けたことを特徴とする電子レンジ調理用容器によって、前記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蓋体の凹部の外周に環状凹みを設けて、そこにキャップのフランジを嵌合させるようにしたので、従来より、容器の密閉性が高められ、その結果、蒸気による蒸し効果が高められる。
しかし、本発明によれば、キャップのフランジの下部にある蓋体の環状凹み、又はキャップのフランジに、減圧時潰れ防止のために空気導入手段を設けたので、調理終了後における容器内部の圧力の低下に対処することができる。
この空気導入手段としては、舌状部、スリット、又はリブ、及びそれらの組合わせを用いることができる。
調理後には、容器内の圧力が大気圧よりも下がるため、容器が変形し始めるが、空気導入手段から容器内部へ空気が流込むことで、容器内の圧力を回復させることができる。
【0007】
また、容器内の圧力が大気圧とほぼ同じになったときには、変形が戻るため、その後は、密閉状態が保たれる。これにより、調理後に容器内の食品が容器外部の空気にさらされることがなくなることで、埃や乾燥等の影響を最小限に抑えることができ、調理後の食品の品質を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施形態1】
【0009】
本発明の第1実施形態について、図1及び図2により説明する。
図1は第1実施形態の分解斜視図、図2の(A)は第1実施形態の蓋体の上面図、(B)は調理後の減圧時における空気導入手段の作用状態を示した、図2(A)の3−3線方向から見た縦断面図である。
【0010】
図1及び図2(B)に示すように、この電子レンジ調理用容器(以下、単に「容器」ということがある。)10は、食材の収納部11を有する底容器1、蓋体2、及び蓋体2の中央に設けられた凹部23に嵌合される、フランジ31付きのキャップ3からなる。
蓋体2の上面には、キャップ3のフランジ31で覆われる環状の凹み21の外径側端部から、内側に向けて延びる、片持ち状に切離された舌状部25が形成されている。
【0011】
この電子レンジ調理用容器10の作動原理は、前記特許文献1に詳細に説明されており、本発明の要旨ではないので、説明は省略する。
前記特許文献1のものとの相違は、キャップ3のフランジ31がぴったりと嵌め合わされる、前記中央の凹部23の外周に設けられた環状の凹み21の存在であり、これにより、環状凹み21の高さは、外側の蓋体上面22よりも低くなり、これにより、キャップ3の密閉性が従来より高められ、結果として、蒸気による蒸し効果も良好となる。フランジ31の外周に設けられたつまみ32は、端部が、常に、若干上方に持上げられているので、調理が終わったとき、キャップ3の取外しが容易になっている。
【0012】
電子レンジ調理用容器10に食材が入れられて、電子レンジにかけられると、食材中の水分が加熱されて蒸気となり、容器内に充満し、内圧が高まる。
この蒸気は、蓋体2の凹部23の底に開けられた蒸気排出口24から階段状の蒸気抜き溝29(最下部は常時開いている。)を経て上昇し、キャップ3のフランジ31を、弾性変形により押上げて外部に抜ける。
容器内の圧力がさらに上昇すると、キャップ3自体が一定限度まで持上げられ、蒸気排出が促進される。
しかし、舌状部25は、キャップ3のフランジ31の下側にあるので、舌状部25には、格別の開く力は作用せず、容器10の内部圧力調整に影響することはない。
【0013】
一定時間経過して調理が終了すると、調理が終わった食材は、取出されて食されるが、場合によっては、そのまま放置されることがある。
その場合、容器内部の温度が低下して、内部圧力も下がる。そうすると、容器全体を内部へ凹ませようとする力が外部から作用する。
舌状部25は、切欠であるから、切欠効果によって、この部分に応力集中の現象が発生し、内側への凹み変形が生じ易くなっている。
このとき、舌状部25には、収納部11の方へ引込まれる力が他の部分より大きく作用するので、図2(B)に示すように、舌状部25近辺が内側に全体的に変形する結果、舌状部25の根元が内側へ開いてできる隙間28を通って、外部から、容器内に空気が入って、容器内の圧力を回復させる。容器内の圧力が大気圧とほぼ同等に回復すると、舌状部25は元の形に戻り、空気の流入は止まる。
【0014】
なお、舌状部25は複数あっても構わず、大きさも、特に限定はない。しかし、設ける位置は、切欠効果を高めるという見地から、蒸気抜き溝29の近くであることが好ましい。
【実施形態2】
【0015】
次に、図3により、第2実施形態を第1実施形態と異なる部分のみ示す。図3は、第2実施形態を適用した蓋体2aの上面図である。
【0016】
第1実施形態では、舌状部25を用いたが、本実施形態では、刃物の先端で開けたようなスリット26を用いている。
スリット26では、第1実施形態の舌状部ほど空気流入のための隙間ができないが、キャップを持ち上げる心配が全くない。
【0017】
このスリット26は、前述の舌状部25と同じような位置に設けられる。減圧時には、このスリット26の部分は、切欠効果によって、他の部分より変形が生じやすいため、容器がこの部分で内側に変形した際に生じるフランジ31との間の隙間から、スリット26を経て、及び階段状の蒸気抜き溝29→蒸気排出口24の経路で、第1実施形態と同様、空気が容器内部に流入する。
スリット26は1本でも構わないが、複数本ある方が隙間ができ易いため、望ましい。スリット26を設ける位置も、切欠効果を高めるという見地から、蒸気抜き溝29aの近くであることが好ましい。
【実施形態3】
【0018】
図4から図6に、第3実施形態を、第1実施形態と異なる部分のみ示す。
図4は第3実施形態を適用した本発明の容器の分解斜視図、図5(A)は第3実施形態を適用した本発明の容器の縦断面図、(B)は第3実施形態を適用した本発明の容器の、減圧時における作動状況を示す縦断面図である。なお、図5も、図2(A)の3−3線方向から見た場合の縦断面図である。図6は、図5のR部分に関して、第3実施形態を適用した本発明の容器の応用例を示した拡大図である。
第3実施形態では、蓋体2bの環状凹み21bの上面に、リブ27が、一周するように設けられている。
【0019】
本実施形態では、蓋体2bとキャップ3bは蓋体2bの凹部23bで嵌合してはいるが、図5(A)が示すように、環状凹み21bとキャップフランジ31bは完全に密着してはいない。そのため、キャップフランジ31bは内部圧力が高まると、第1、第2実施形態よりは、持上げられ易い。周知のとおり、リブ27は、蓋体2bの強度を高める効果があるが、一方で、断面形状の変化をもたらしているので、減圧時には、内側へ向けて均一に力が働くのではなく、どこか一箇所に局部的に高い応力が加わり、他の箇所より大きく変形するという現象が起きる。その結果、図5(B)のように、容器が変形してキャップ3bのフランジ31bとの間に隙間ができ、そこから、空気が容器内に入り、容器内圧は回復する。瞬間的でも、外部との間に隙間ができれば、そこから、空気が流入する。
【0020】
なお、環状凹みとキャップフランジを完全に密着させた方が好ましいときには、図6のように、蓋体の上面のリブ27の替わりに下面のリブ27’を設けても、同様の機能を奏する。この場合には、常に蒸気が漏れないため、リブを断続的に設けてもよい。
【実施形態4】
【0021】
次に、図7及び図8に、第4実施形態を、第3実施形態と異なる部分のみ示す。
図7の(A)は第4実施形態を適用した本発明のキャップの斜視図、(B)は第4実施形態を適用した本発明の容器の図5(A)で示したR部分の拡大図、図8は第4実施形態を適用した本発明の容器の他の応用例を示したR部分の拡大図である。
【0022】
空気導入手段は、第3実施形態のように環状凹みにリブを設ける替わりに、ここでは、キャップフランジの下面に下向きにリブを設けることによって構成している。図7では、キャップ3cのフランジ31cの下面に、上から見て溝33’が一周するように、下向きに突出するリブ33が設けられている。
この実施形態では、キャップ3cが強度的に補強されていることになるので、蓋体2cの環状凹み21cとキャップ3cのリブ33の接触部分のどこかが、より大きく内側に変形したときにできる隙間から、空気が内部に導入される。
【0023】
なお、環状凹みとキャップフランジを完全に密着させた方が好ましいときには、図8のように、キャップのフランジの下面のリブ33の替わりに上面のリブ33’を設けてもよい。この場合にも、第3実施形態の応用例と同様、常に蒸気が排出されることがないから、リブは断続的に設けてもよい。
【実施形態5】
【0024】
最後に、図9に、第5実施形態を、第3及び第4実施形態と異なる部分のみ示す。
図9は、第5実施形態を適用した本発明の容器の上面図である。
【0025】
第3及び第4実施形態では、リブが環状又はほぼ環状に設けられていたが、この第5実施形態では、リブ27’’が、キャップのフランジ又は蓋体の環状凹部に、径方向に形成されている。
径方向のリブは、蒸気が常時排出されることがないように、キャップのフランジには上面に、蓋体の環状凹部には、下面に形成する。
その部分の切欠効果により、第3及び第4実施形態と同様の効果がある。
【0026】
なお、以上の実施形態は、共に使用することもできるし、それぞれ別に用いることもできる。
本発明の減圧時の空気導入手段の数及び形状等の詳細な点、及び容器の形状は、上記の説明や実施形態及び図面に限られないことは言うまでもない。例えば、環状凹みが、蓋体上面を一周するリブによってのみ形成されていて、その内外面の高さが同じであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の分解斜視図。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態の蓋体の上面図、(B)は本発明の第1実施形態の減圧時の作動状況を示す、図2の3−3線での縦断面図。
【図3】本発明の第2実施形態の蓋体の上面図。
【図4】本発明の第3実施形態の分解斜視図。
【図5】(A)は本発明の第3実施形態の縦断面図、(B)は本発明の第3実施形態の減圧時の作動状況を示す縦断面図。
【図6】本発明の第3実施形態の他の応用例を示した拡大縦断面図。
【図7】(A)は本発明の第4実施形態を適用したキャップの斜視図、(B)は本発明の第4実施形態の要部拡大縦断面図。
【図8】本発明の第4実施形態の他の応用例を示した拡大縦断面図。
【図9】本発明の第5実施形態の蓋体の上面図。
【符号の説明】
【0028】
1: 底容器
11: 収納部
2: 蓋体
21: 環状凹み
22: 上面
23: 凹部
24: 蒸気排出口
25: 舌状部(空気導入手段)
26: スリット(空気導入手段)
27: リブ(空気導入手段)
29: 蒸気抜き溝
3: フランジ付きキャップ
31: フランジ
33: リブ(空気導入手段)
10: 電子レンジ調理用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納する底容器と、該底容器と嵌合する蓋体と、該蓋体中央に設けられた凹部に嵌合するフランジ付きキャップとからなる電子レンジ調理用容器において、
前記蓋体の凹部の外周に環状凹みを設けて前記キャップのフランジを嵌合させ、
前記環状凹み、又は前記キャップのフランジに、減圧時潰れ防止のための空気導入手段を設けたことを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記空気導入手段が、前記環状凹みの外径側端部から内側に延びる舌状部によって形成された、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記空気導入手段が、前記環状凹みの外径側端部から内側に延びるスリットによって形成された、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
前記空気導入手段が、前記環状凹みの上面若しくは下面、又は前記キャップのフランジ下面若しくは上面に、リブによって設けられた、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項5】
前記環状凹みの下面、又は前記キャップのフランジ上面のリブが断続する形状である、請求項4の電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−179395(P2009−179395A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22595(P2008−22595)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】