説明

電子・機械部品洗浄方法及び電子・機械部品洗浄装置

【課題】 電子・機械部品に悪影響を与えることのない電子・機械部品洗浄方法を提供する。
【解決手段】 気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する電子・機械部品洗浄方法において、当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであることを特徴とする。オゾン気泡の粒径が上記範囲にあるためオゾン水から浮力を受けづらい。この結果、オゾン気泡の上昇が抑制され、その結果、容易に脱気しない。容易に脱気しないことにより充分な洗浄効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オゾン水を用いて、電子・機械部品を洗浄するための電子・機械部品洗浄方法及び電子・機械部品洗浄装置に関するものである。電子部品としては、半導体ウエハーのような半導体基板、ガラス基板、電子回路モジュール、液晶ディスプレイ等が典型例として挙げられる。また、機械部品としては、半導体製造装置や各種医療機器を構成する金属製又はセラミック製の部品等が典型例として挙げられる。
【背景技術】
【0002】
オゾン水を用いる電子・機械部品洗浄方法として、特許文献1に記載された方法(以下、適宜「第1の先行技術」という)がある。第1の先行技術は、60ppm或いは80ppmの濃度のオゾン水を用いて電子部品である半導体基板を洗浄しようとする技術である。特許文献1は、60ppm或いは80ppmのオゾン水を生成する方法について何ら開示していない。特許文献2は、半導体基板の洗浄に用いるオゾン水を、オゾン発生器で発生させたオゾン(オゾンガス)をエゼクタを介して被処理水に混入することによって生成する技術(以下、適宜「第2の先行技術」という)を開示する。さらに特許文献3は、エタノールやイソプロピルアルコールのような有機溶剤を添加したオゾン水を用いた半導体基板の洗浄方法(以下、適宜「第3の先行技術」という)を開示する。有機溶剤を添加するのは、洗浄槽のような開口部の大きな容器に貯留した場合は2〜5分と言われているオゾン水中のオゾン半減期を延長させるためである。他方において第3の先行技術は、必要以上の有機溶剤の添加は残留する炭素成分による基板品質の劣化を招くのでそれを防ぐために添加量の調整を求めている。他方、特許文献4には、直径が10〜50μmのオゾン気泡を含む水溶液に、鉄、マンガン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムイオン、その他ミネラル類のイオン等の電解質を混入し、混入した水溶液に水中放電を行うことによって50〜500nmのナノバブルを得ることができる旨が記載されている。上記ナノバブルを含む水溶液のことを、以下において「従来のオゾン水」という。
【特許文献1】特開2006−287171公報(段落0019〜0020参照)
【特許文献2】特開2006−49453号公報(段落0034参照)
【特許文献3】特開2004−79649号公報(段落0011、0018参照)
【特許文献4】特開2005−246293号公報(段落0016〜0025、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、本願発明者が行った実験によれば、単にエゼクタを用いただけでは、生成したオゾン水のオゾン溶解度を充分に高めることができない。このため、オゾン水から大量のオゾンが脱気してしまい、求める洗浄効果を得られない。オゾン溶解度を高めることができない理由は、溶解させたオゾン気泡の粒径が概ね1μm(マイクロメートル)以上であるため、オゾン気泡がオゾン水から浮力を受けて水面まで浮上してしまう点にある。オゾン気泡を水面まで浮上させづらくするためには、溶解させたオゾン気泡の粒径を概ね1000nm(ナノメートル)以下、好ましくは、500nm以下に抑えるとよい。しかしながら、前述した第1〜第4の先行技術は、いずれも粒径1000nm以下のオゾン気泡のみを含むオゾン水を実現したものではない。前述した第5の技術は、粒径50〜500のオゾン気泡を含むオゾン水を提供するもののようであるが、これは、電解質混入を必須とする。鉄、マンガン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムイオン、その他ミネラル類のイオン等の電解質(添加物)を混入したオゾン水は、これらの電解質が半導体基板に悪影響を与える恐れがあるから半導体基板の洗浄には適さない。第3の従来技術が提供するオゾン水にも有機溶剤を混入させる必要があり、そのような有機溶剤も半導体基板の洗浄に適さないことは言うまでもない。この点、第3の先行技術は有機溶剤の添加量調節に、その解決を求めているが、有機溶剤も添加物であるかぎり含まれないほうがよいことは当然である。この点は、半導体基板その他の電子部品だけでなく、各種の機械部品についても同じである。本発明が解決しようとする課題は、電子・機械部品に悪影響を与えることのない、かつ、容易に脱気しないことにより充分な洗浄効果を得ることのできる電子・機械部品洗浄方法及び電子・機械部品洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた発明者は、水にオゾンを混合させてオゾン水を生成するに当たり、1000nm以下の直径のオゾン気泡のみを含むオゾン水を得ることができた。このオゾン水には、電解質や有機溶剤のような添加物を、混入又は添加していない。添加物を含まない点で上記オゾン水は、背景技術の欄で説明した従来のオゾン水と大きく異なっている。本発明は、上記オゾン水を用いてオゾン水洗浄を行おうとするものである。発明の詳しい構成については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、発明のカテゴリーの違いや記載の前後等に関わりなく、その性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0005】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項1の洗浄方法」という)は、気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する洗浄方法である。電解質や有機溶剤のような添加物は添加していない。ここで、当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであることが最大の特徴である。オゾン水を用いた電子・機械部品の洗浄方法には、たとえば、電子・機械部品をオゾン水に浸漬させたり、電子・機械部品にオゾン水を散布したり、浴びせたり、する方法が挙げられる。
【0006】
請求項1の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を1000nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。
【0007】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項2の洗浄方法」という)は、気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する洗浄方法である。電解質や有機溶剤のような添加物は添加していない。ここで、当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmであることが最大の特徴である。オゾン水を用いた電子・機械部品の洗浄方法には、たとえば、電子・機械部品をオゾン水に浸漬させたり、電子・機械部品にオゾン水を散布したり、浴びせたり、する方法が挙げられる。
【0008】
請求項2の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を500nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないということは、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。以上述べた請求項2の洗浄方法に係る作用効果は請求項1の洗浄方法に係る作用効果と同じである一方、請求項2の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径が請求項1の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径に比べてさらに小さいことから、小さい分だけ請求項2の洗浄方法による作用効果のほうがより顕著なものとなる。
【0009】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項3の洗浄方法」という)は、気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する洗浄方法である。電解質や有機溶剤のような添加物は添加していない。ここで、当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであることが最大の特徴である。オゾン水を用いた電子・機械部品の洗浄方法には、たとえば、電子・機械部品をオゾン水に浸漬させたり、電子・機械部品にオゾン水を散布したり、浴びせたり、する方法が挙げられる。
【0010】
請求項3の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を50nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないということは、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。以上述べた請求項3の洗浄方法に係る作用効果は請求項2の洗浄方法に係る作用効果と同じである一方、請求項3の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径が請求項2の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径に比べてさらに小さいことから、小さい分だけ請求項3の洗浄方法による作用効果のほうがより顕著なものとなる。
【0011】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項4の洗浄方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水洗浄工程と、を含めてなるものである。
【0012】
請求項4の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を1000nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないということは、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。
【0013】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項5の洗浄方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水洗浄工程と、を含めてなるものである。
【0014】
請求項5の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を500nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないということは、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。以上述べた請求項5の洗浄方法に係る作用効果は請求項4の洗浄方法に係る作用効果と同じである一方、請求項5の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径が請求項4の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径に比べてさらに小さいことから、小さい分だけ請求項5の洗浄方法による作用効果のほうがより顕著なものとなる。
【0015】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項6の洗浄方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水洗浄工程と、を含めてなるものである。
【0016】
請求項6の洗浄方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を50nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。これが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないということは、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。以上述べた請求項6の洗浄方法に係る作用効果は請求項5の洗浄方法に係る作用効果と同じである一方、請求項6の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径が請求項5の洗浄方法に係るオゾン気泡の粒径に比べてさらに小さいことから、小さい分だけ請求項6の洗浄方法による作用効果のほうがより顕著なものとなる。
【0017】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項7の洗浄方法」という)では、請求項4乃至6いずれかの洗浄方法における好ましい態様として、前記気液混合方法に使用する原水に、純水又は超純水を使用してある。
【0018】
請求項7の洗浄方法によれば、請求項4乃至7いずれかの洗浄方法の作用効果を前提として、純水又は超純水を使用することによって、オゾン水の純度が高まるため電子部品や機械部品に対する悪影響の恐れをさらになくすことができる。すなわち、純水や超純水以外の水(たとえば、井戸水や水道水)をオゾン水生成のための原水として用いた場合には、その原水の中にもともと異物が存在している可能性があるが、純水又は超純水を使用すればその純水又は超純水の純度の限りにおいてそのような異物さえも混入していない。これが、電子部品や機械部品に対する悪影響の恐れをさらになくすことのできる理由である。
【0019】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項8の洗浄方法」という)では、請求項4乃至7いずれかの洗浄方法における好ましい態様として、前記オゾン水生成工程では、小径路を有するベンチュリ管に原水を通過させ、かつ、ベンチュリ管にオゾンを供給するとともに、当該ベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させるようにしてある。ベンチュリ管はエジェクタ(エゼクタ)と呼ばれることもある。
【0020】
請求項8の処理方法によれば、請求項4乃至7いずれかの洗浄方法の作用効果を前提として、オゾンを供給するベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させることが、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nm(500nm,50nm)であるオゾン水生成を極めて容易にする。ベンチュリ管を通過する原水の圧力は、小径路に近づくにつれて一気に増加し、小径路通過後に一気に減少する。圧力減少する際のベンチュリ管内部は真空又は真空に近い負圧状態となり、この負圧状態によって供給されたオゾンが原水内に吸引される。吸引されたオゾンは、上記圧力変化と、小径路通過に伴う原水(オゾン水)の流れの変化等が複雑に絡み合い、一気に攪拌混合される。この一連の作用が、磁力の作用と相まってオゾン水生成を容易にする要因の一つと考えられる。小径路に磁力を作用させることによってオゾン気泡の粒径を1000nm(500nm,50nm)以下にすることができることについての因果関係は発明者において現在解明中であるが、この点は、後述する実験結果において明らかになる。オゾン水生成のために必要な構造は、極めて単純であるから小型化も容易である。
【0021】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る電子・機械部品洗浄方法(以下、適宜「請求項9の洗浄方法」という)では、請求項8の洗浄方法における好ましい態様として、前記ベンチュリ管を通過したオゾン水(原水を含む場合もある)を循環させ、オゾンを供給しながら前記ベンチュリ管を少なくとも1回再通過させるようにしてある。
【0022】
請求項9の洗浄方法によれば、請求項8の洗浄方法の作用効果を前提として、オゾン水の循環によってオゾン水に対するオゾン注入を繰り返して行うことができる。繰り返してオゾン注入を行えば、オゾン注入を一旦終えたオゾン水に再度オゾン注入することによって、前者よりも後者のほうがオゾン溶解度並びにオゾン濃度を高めることが可能になる。循環させる回数は、求めるオゾン溶解度やオゾン濃度に応じて装置使用者が決定するとよい。
【0023】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係るオゾン水洗浄方法(以下、適宜「請求項10の洗浄方法」という)では、請求項9の洗浄方法における好ましい態様として、前記循環させたオゾン水を貯留タンクに一旦貯留することを行う。オゾン水が貯留されている貯留タンク内に原水を注入するようにしてもよい。使用等により減少したオゾン水の量を増加させるためである。原水注入によりオゾン濃度が低下することになるが、循環させることによって濃度を高めることができる。
【0024】
請求項10の洗浄方法によれば、請求項9の洗浄方法の作用効果を前提として、オゾン水を一旦、貯留タンクに貯留することができ、この貯留によってオゾン水を安定状態に置き、これによって、オゾン水に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させることができる。貯留タンク内に原水を注入しながらオゾン水の循環を行うと、使用により減少した分を補いながら所定量のオゾン水を貯留タンク内に貯留することができる。オゾン濃度の維持は、オゾン水循環によって行う。
【0025】
(請求項11記載の発明の特徴)
請求項11記載の発明に係るオゾン水洗浄方法(以下、適宜「請求項11の洗浄方法」という)では、請求項10の洗浄方法における好ましい態様として、前記貯留タンクに貯留したオゾン水を、0〜15℃の範囲に保持することを行う。上記温度範囲に保持するための温度調整には、たとえば、貯留タンク内にあるオゾン水に対して直接行う方法や、一旦取り出したオゾン水を温度調整後に貯留タンクに戻す方法がある。
【0026】
請求項11の洗浄方法によれば、請求項10の洗浄方法の作用効果を前提として、温度保持を行うことによって、オゾン水(新たに注入された原水が含まれることもある)の温度を上記範囲に保持することができる。オゾン水生成に使用する原水は長い配管内を搬送される場合が多く、そのような場合に搬送される原水は天候の影響を受けやすい。特に、夏季における水温上昇が著しい。また、オゾン水を循環させるためには循環のためのエネルギーが必要であり、そのようなエネルギー源として、たとえば、ポンプがある。上記したエネルギー源は、一般に発熱を伴いその熱がオゾン水(原水)の温度を高める場合がある。オゾン溶解は水温の影響を受け、水温が高くなると溶解度の低下が見られる。そこで、原水(オゾン水)の温度を所定範囲に保つことによって、オゾン溶解を促進させる。他方、たとえば、寒冷地においてオゾン水(原水)が凍結する恐れがある場合は、ヒーター装置を設けてオゾン水(原水)被洗浄水を加温するように構成してもよい。オゾン水(原水)の冷却又は加温を不要とするのであれば、温度保持構造自体を省略してもよいし、設けてある温度保持構造の運転を停止してもよい。
【0027】
(請求項12記載の発明の特徴)
請求項12記載の発明に係るオゾン水洗浄方法(以下、適宜「請求項12の洗浄方法」という)では、請求項8乃至11いずれかの洗浄方法における好ましい態様として、オゾン水を溶解促進槽に一旦貯留してオゾン溶解を促進することを行う。
【0028】
請求項12の生成装置によれば、請求項8乃至11いずれかの洗浄方法の作用効果を前提として、溶解促進槽の働きによってオゾン水に対するオゾン溶解が促進される。溶解促進槽に貯留されたオゾン水は、その貯留によって安定状態に置かれる。安定状態に置かれたオゾン水は、それに対するオゾン溶解が熟成類似の作用によって促進される。すなわち、原水に供給されたオゾンや、オゾン水にさらに供給されたオゾンの、原水又はオゾン水に対する溶解度を高めることができる。
【0029】
(請求項13記載の発明の特徴)
請求項13記載の発明に係るオゾン水洗浄方法(以下、適宜「請求項13の洗浄方法」という)では、請求項12の洗浄方法における好ましい態様として、前記溶解促進槽の頂部には、貯留してあるオゾン水から脱気したオゾンを排出する。
【0030】
請求項13の洗浄方法によれば、請求項12の洗浄方法の作用効果を前提として、オゾン水を循環する過程においてオゾン水に溶解しなかったオゾンを外部へ排出することができる。未溶解のオゾンを完全になくすことは必ずしも容易でないため、未溶解オゾンが存在する場合もありうる。この場合に未溶解のオゾンを排出することによって、オゾン水が含むオゾンは溶解度の高いものとすることができる。この結果、、真にオゾン溶解度の高いオゾン水が生成される。
【0031】
(請求項14記載の発明の特徴)
請求項14記載の発明に係るオゾン水洗浄方法(以下、適宜「請求項14の洗浄方法」という)は、請求項4乃至7いずれかの洗浄方法におけるオゾン水生成工程の好ましい態様として、磁界中において、原水の水圧を圧力頂点に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った原水にオゾンを供給する工程を含めてなるものである。
【0032】
請求項14の洗浄方法によれば、請求項4乃至7いずれかの洗浄方法の作用効果を前提として、磁石の磁力を原水とオゾンとを混合させる過程において作用させることになる。すなわち、原水(被処理水)だけでなく、原水に溶解したオゾン及び原水に溶解していないオゾンにも磁力作用が及ぶ。オゾン混合するときの原水は、大小さまざまな大きさのオゾン気泡を含み、その流れはきわめて不規則な乱流である。したがって、原水やオゾンに作用する磁力の方向はきわめて不規則であり、かつ、不安定である。不規則かつ不安定な磁力作用が、高溶解度をもった高濃度オゾン水の生成に効果的であることは後述する実験結果により明らかである。ただ、高溶解度・高濃度オゾン水と磁力との間の因果関係は現在解明中である。
【0033】
(請求項15記載の発明の特徴)
請求項15記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項15の洗浄装置」という)は、電子・機械部品を洗浄するための洗浄槽と、当該洗浄槽にオゾン水を供給するためのオゾン水生成装置と、を含めて構成してある。ここで、当該オゾン水生成装置が、小径路を有するベンチュリ管と、当該ベンチュリ管の小径路を通過する被処理水にオゾンを供給するためのオゾン供給装置と、を含めて構成してあり、当該ベンチュリ管には、少なくともオゾン供給を受けた被処理水に磁力を作用させる磁石を設けてある。
【0034】
請求項15の洗浄装置によれば、電子・機械部品の洗浄が洗浄槽の中で行われる。洗浄のためのオゾン水は、オゾン水生成装置が供給する。オゾン水生成装置の主要部品であるベンチュリ管は、その小径路を通過する被処理水(原水又はオゾン水)にオゾンを供給する。オゾン供給は、オゾン供給装置が行う。ベンチュリ管を通過する被処理水の圧力は、小径路に近づくにつれて一気に増加し、小径路通過後に一気に減少する。圧力減少する際のベンチュリ管内部は真空又は真空に近い負圧状態となり、この負圧状態によって供給されたオゾンが原水内に吸引される。吸引されたオゾンは、上記圧力変化と、小径路通過に伴う被処理水の流れの変化等が複雑に絡み合い、一気に攪拌混合される。この一連の作用が、磁力の作用と相まってオゾン水生成を容易にする要因の一つと考えられる。小径路に磁力を作用させることによってオゾン気泡の粒径を、1000nm(500nm,50nm)以下にすることができることについての因果関係は発明者において現在解明中であるが、この点は、後述する実験結果において明らかになる。洗浄に使用するオゾン水は無添加であるから、添加物混入による悪影響を電子・機械部品に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、洗浄後のオゾン水がその添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。請求項14の製造装置によれば、請求項1乃至13の洗浄方法を実施することができる。
【0035】
(請求項16記載の発明の特徴)
請求項16記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項16の洗浄装置」という)では、請求項15の洗浄装置の好ましい態様として、当該磁石が、一方の磁石片と他方の磁石片とを含む磁気回路によって構成してあり、当該一方の磁石片と当該他方の磁石片とを、前記ベンチュリ管を挟んで対向させてある。
【0036】
請求項16の洗浄装置によれば、請求項15の洗浄装置の作用効果を前提として、磁気回路を構成することによってベンチュリ管内部の必要な箇所に集中的に磁力を作用させることができる。集中的な磁力作用が、オゾン溶解の効率をより高める。
【0037】
(請求項17記載の発明の特徴)
請求項17記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項17の洗浄装置」という)では、請求項15又は16の洗浄装置の好ましい態様として、前記磁石の磁力が、1000〜30000ガウスに設定してある。
【0038】
請求項17の洗浄装置によれば、請求項15又は16の洗浄装置の作用効果を前提として、磁石の構成を簡単に、かつ、経済的に行うことができる。すなわち、上記磁力を持った磁石であれば、市場調達が容易であるから特別な磁石を用意する必要がない。特別な磁石ではないから安価である。上記範囲を超える磁力を持った磁石の採用を妨げる趣旨でないことはいうまでもない。
【0039】
(請求項18記載の発明の特徴)
請求項18記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項18の洗浄装置」という)では、請求項15又は17の洗浄装置の好ましい態様として前記気液混合方法に使用する原水に、純水又は超純水を使用してある。
【0040】
請求項18の洗浄方法によれば、請求項15乃至17いずれかの洗浄装置の作用効果を前提として、純水又は超純水を使用することによって、オゾン水の純度が高まるため電子部品や機械部品に対する悪影響の恐れをさらになくすことができる。すなわち、純水や超純水以外の水(たとえば、井戸水や水道水)をオゾン水生成のための原水として用いた場合には、その原水の中にもともと異物が存在している可能性があるが、純水又は超純水を使用すればその純水又は超純水の純度の限りにおいてそのような異物さえも混入していない。これが、電子部品や機械部品に対する悪影響の恐れをさらになくすことのできる理由である。
【0041】
(請求項19記載の発明の特徴)
請求項19記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項19の洗浄装置」という)では、請求項15乃至18いずれかの洗浄装置の好ましい態様として、前記ベンチュリ管を通過したオゾン水を循環させて当該ベンチュリ管を再度通過させるための循環構造を、さらに含めて構成してある。
【0042】
請求項19の洗浄装置によれば、請求項15乃至18いずれかの洗浄装置の作用効果を前提として、循環構造を有することによって、オゾン水を循環させることができ、この循環によってオゾン水に対するオゾン注入を繰り返して行うことができる。繰り返してオゾン注入を行えば、オゾン注入を一旦終えたオゾン水に再度オゾン注入することによって、前者よりも後者のほうがオゾン溶解度並びにオゾン濃度を高めることが可能になる。循環させる回数は、求めるオゾン溶解度やオゾン濃度に応じて装置使用者が決定するとよい。
【0043】
(請求項20記載の発明の特徴)
請求項20記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項20の洗浄装置」という)では、請求項19の洗浄装置の好ましい態様として、前記循環構造の途中には、循環させる被処理水を一旦貯留させるための貯留タンクを設けてある。オゾン水が貯留されている貯留タンク内に原水を注入するようにしてもよい。使用等により減少したオゾン水の量を増加させるためである。原水注入によりオゾン濃度が低下することになるが、循環させることによって濃度を高めることができる。
【0044】
請求項20の洗浄装置によれば、請求項19の洗浄装置の作用効果を前提として、オゾン水を一旦、貯留タンクに貯留することができ、この貯留によってオゾン水を安定状態に置き、これによって、オゾン水に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させることができる。貯留タンク内に原水を注入しながらオゾン水の循環を行うと、使用により減少した分を補いながら所定量のオゾン水を貯留タンク内に貯留することができる。オゾン濃度の維持は、オゾン水循環によって行う。
【0045】
(請求項21記載の発明の特徴)
請求項21記載の発明に係る電子・機械部品洗浄装置(以下、適宜「請求項21の洗浄装置」という)では、請求項20の洗浄装置の好ましい態様として、前記貯留タンク内の被処理液を0〜15℃の範囲に保持するための温度保持構造を設けてある。上記温度範囲に保持するための温度調整には、たとえば、貯留タンク内にあるオゾン水に対して直接行う方法や、一旦取り出したオゾン水を温度調整後に貯留タンクに戻す方法がある。
【0046】
請求項21の生成装置によれば、請求項20の洗浄装置の作用効果を前提として、温度保持構造を有することによって、オゾン水(新たに注入された原水が含まれることもある)の温度を上記範囲に保持することができる。オゾン水生成に使用する被処理水は長い配管内を搬送される場合が多く、そのような場合に搬送される原水は天候の影響を受けやすい。特に、夏季における水温上昇が著しい。また、被処理水を循環させるためには循環のためのエネルギーが必要であり、そのようなエネルギー源として、たとえば、ポンプがある。上記したエネルギー源は、一般に発熱を伴いその熱が被処理水の温度を高める場合がある。オゾン溶解は水温の影響を受け、水温が高くなると溶解度の低下が見られる。そこで、被処理水の温度を所定範囲に保つことによって、オゾン溶解を促進させる。他方、たとえば、寒冷地において被処理水が凍結する恐れがある場合は、ヒーター装置を設けて被処理水を加温するように構成してもよい。被処理水の冷却又は加温を不要とするのであれば、温度保持構造自体を省略してもよいし、設けてある温度保持構造の運転を停止してもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、電子・機械部品に悪影響を与えることのない、かつ、容易に脱気しないことにより充分な洗浄効果を得ることのできる電子・機械部品洗浄方法及び電子・機械部品洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
各図を参照しながら、発明を実施するための最良の形態(以下、適宜「本実施形態」という)について説明する。本実施形態は、電子部品の典型である半導体基板の洗浄に係るものとした。図1は半導体基板洗浄装置のブロック図である。図2は、半導体基板洗浄装置が備えるオゾン水生成装置のブロック図である。図3は、気液混合構造の正面図である。図4は、気液混合構造の左側面図である。図5は、図4に示す気液混合構造のX−X断面図である。図6は、図3に示す気液混合構造の概略平面図である。図7は、溶解促進構造の縦断面図である。
【0049】
(半導体基板戦場装置の概略構造)
図1を参照しながら、本実施形態における半導体基板洗浄方法を実施するための半導体基板洗浄装置装置(以下、適宜「洗浄装置」という)について説明する。洗浄装置1は、洗浄槽3と、オゾン水生成装置201と、から概ね構成してある。洗浄槽3は、その中で半導体基板を洗浄するための槽である。洗浄槽3の内部には、半導体基板の洗浄を補助するための洗浄機構7を配してある。オゾン水生成装置201は洗浄槽3へオゾン水を供給するための装置である。
【0050】
(洗浄槽及び洗浄機構の概略)
図1を参照しながら、洗浄槽及び洗浄機構の概略について説明する。図1に2点差線で示す洗浄槽3は、略機密密閉可能に構成してあり、半導体基板Aを入れたり出したりすると、ための開閉機構(図示を省略)を設けてある。洗浄槽3内に設置した洗浄機構7は、駆動源となるモータ7mと、モータ7mによって回転する回転テーブル7tと、から概ね構成してある。回転テーブル7tは、その上に半導体基板Aを載置可能に構成してあり、半導体基板Aを下方から保持して一体回転可能となるように構成してある。半導体基板Wを回転させるのは、オゾン水Wを満遍なく行き渡らせることによって洗浄効率を高めるためである。モータ7mの回転は、洗浄槽3の外部にある回転速度制御装置7cによって制御可能に構成してある。符号11は、オゾン水供給装置201から供給されたオゾン水Wを、半導体基板Aの表面に吐出するためのノズルを示している。ノズル11は、洗浄槽3内に設置したノズル駆動装置13によって移動可能に保持され、その移動によって、半導体基板Aに対するオゾン水Wの吐出位置を変化させられるように構成してある。吐出位置を変化させるのは、位置変化によりオゾン水Wをより満遍なく行き渡らせるためである。ノズル駆動装置13の制御は、洗浄槽3の外部にある位置制御装置13cによって行う。なお、上記した洗浄槽3及び洗浄機構7は、半導体基板の洗浄用に構成してあるが、半導体基板以外の電子部品や機械部品を洗浄する場合は、その洗浄部品の形態や個数等に合わせた洗浄槽及び洗浄機構等を構成すべきであることは言うまでもない。なお、洗浄機構7には、オゾン水Wを加熱するための加熱手段(図示を省略)を設け、オゾン水Wを、たとえば、15℃以上、100℃(沸点)以下の温度まで加熱してから洗浄(処理)を行うこともできる。加熱によって洗浄効果を高めるためである。
【0051】
(オゾン水生成装置の概略)
図2を参照しながら、オゾン水生成装置について説明する。オゾン水生成装置201は、貯留タンク202と、オゾンを生成して供給するためのオゾン供給装置203と、貯留タンク202から取り出した被処理水を貯留タンク202に戻すための循環構造204と、循環構造204の途中に設けた気液混合構造205及び溶解促進槽206と、貯留タンク202に付設した温度保持構造207と、から概ね構成してある。以下の説明は、説明の都合上、貯留タンク202、温度保持構造207、オゾン供給装置203、気液混合構造205、溶解促進槽206を行った後、最後に循環構造204について行う。
【0052】
(貯留タンク周辺の構造)
図2に示すように、貯留タンク202には取水バルブ202vを介して被処理水としての原水を注入可能に構成してある。貯留タンク202は取水した原水、及び、後述する循環構造204を介して循環させた被処理水(オゾン水)を貯留するためのものである。貯留タンク202に貯留された被処理水は、温度保持構造207によって、たとえば、0〜15℃の範囲に保持されるようになっている。上記範囲に温度設定したのは、オゾン溶解を効率よく行い、かつ、溶解させたオゾンを容易に脱気させないために適当であるからである。0℃未満が上記範囲に含まれないのは、0℃未満ではオゾン水が凍結してしまうからである。温度保持構造207は、貯留タンク202から被処理水を取り出すためのポンプ211と、取り出した被処理水を冷却するための冷却機212と、から概ね構成してあり、貯留タンク202とポンプ211、ポンプ211と冷却機212、冷却機212と貯留タンク202の間は被処理水を通過させる配管213によって連結してある。上記構成によって、貯留タンク202に貯留された被処理水(原水及び/又はオゾン水)は、ポンプ211の働きによって貯留タンク202から取り出され、冷却機212に送られる。冷却機212は送られてきた被処理水を所定範囲の温度に冷却して貯留タンク202に戻す。ポンプ211は、図外にある温度計によって計測された貯留タンク202内の被処理水の温度が所定範囲を超え冷却の必要があるときにのみ作動するようになっている。貯留タンク202を設けた理由は、被処理水を一旦貯留することによって上記冷却を可能にするとともに、被処理水を安定状態に置き、これによって、被処理水に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させるためである。なお、たとえば、寒冷地等において被処理水が凍結する恐れがある場合は、上記冷却機の代わりに、又は、上記冷却機とともにヒーター装置を用いて被処理水を加温するように構成することもできる。なお、配管213から分岐させた配管213aを介して洗浄装置1にオゾン水を供給するように構成してある。すなわち、冷却機212で所定温度に冷却されたオゾン水は、ポンプ211の働きにより配管213aを介して洗浄装置1に供給される。符号213vは、配管213aに設けたオゾン水の流量を調整するための調整バルブを示す。
【0053】
(オゾン供給装置)
図2に示すオゾン供給装置203は、オゾンを生成供給するための装置である。必要なオゾン量を供給可能なものであれば、オゾン供給装置203が作用するオゾン発生原理等に何ら制限はない。たとえば、酸素ガス中で放電を起こしてオゾンを発生させる放電方式や、超純水中の水分子を電気分解してオゾンを発生させる電解方式が、オゾン発生方式として知られている。オゾン供給装置203によって生成されたオゾンは、オゾン供給管217の途中に設けた電磁バルブ218と逆止弁219を介して気液混合構造205に供給されるようになっている。
【0054】
(気液混合構造)
図2乃至6を参照しながら気液混合構造205の詳細について説明する。気液混合構造205は、ベンチュリ管231と、オゾン供給パイプ239と、磁気回路243と、により概ね構成してある。ベンチュリ管231は、上流側(図3の向かって右側)から送られた被処理水を下流側(図3の向かって左側)へ通過させるためのパイプ状の外観を有している(図6参照)。ベンチュリ管231を長手方向に貫く中空部は、上流側から下流側に向かって上流側大経路232、絞り傾斜路233、小径路234、開放傾斜路235及び下流側大経路236の順に連通している。上流側大経路232は、軸線方向に対して50度前後の急角度をもって絞り方向に傾斜する絞り傾斜路233を介して小径路234に繋げられ、その後、開放傾斜路235によって同じく軸線方向に対して30度前後の緩やかな角度を持って開放される。開放傾斜路235は、上流側大経路232と同じ外径の下流側大経路236に繋がっている。他方、小径路234には、そこにオゾン供給パイプ239の開口端を臨ませてある。オゾン供給パイプ239の供給端にはオゾン供給装置203と連通するオゾン供給管217が接続してある。小径路234の中、又は、その近傍は、被処理水の圧力変化によって真空又は真空に近い状態になるため、開口端に及んだオゾンは吸引され乱流化した被処理水内に散気される。なお、符号240は、ベンチュリ管231とオゾン供給パイプ239との間を補強するためのリブを示している。
【0055】
ベンチュリ管231には、磁気回路243をネジ(図示を省略)固定してある。磁気回路243は、ベンチュリ管231を挟んで対向する一方の磁石片245及び他方の磁石片246と、一方の磁石片245と他方の磁石片246とを連結するとともに、ベンチュリ管231への磁石片取り付けの機能を有する断面U字状(図4参照)の連結部材248と、により構成してある。磁石片245と磁石片246とは、小径路234(図4では破線で示す。図5を併せて参照)及び/又はその近傍(特に、下流側)をその磁力線(磁界)が最も多く通過するように配するとよい。ただ、実際には、小径路234のみに磁力線を集中させることは技術的困難を伴うことから、小径路234及び小径路234の近傍の双方に磁力線を通過させることになろう。被処理水とオゾンの双方に磁力を作用させることによって、被処理水に対して最も効率よくオゾンを溶解させることができると考えられるからである。磁石片245及び磁石片246は、7,000ガウス前後の磁力を持つネオジュウム磁石によって構成してある。磁力は強いほうがオゾン溶解効果が高いと思われるが、少なくとも1,000ガウス以上のものが望まれる。ここで、7,000ガウスの磁石を採用したのは、その調達容易性と経済性にある。7,000ガウス以上の磁力を持つ磁石(天然磁石、電磁石等)の採用を妨げる趣旨ではない。また、磁石片245と磁石片246との間の距離は、可能な限り短くするとよい。磁力は距離の二乗に反比例するので短くすればするほど強い磁力を得ることができるからである。連結部材248は、磁束漏れを抑制して磁力作用が被処理水等にできるだけ集中するように、磁力透磁率(μ)の大きい部材(たとえば、鉄)によって構成してある。
【0056】
(気液混合構造の作用効果)
以上の構成により、上流側大経路232を通過した被処理水は、絞り傾斜路233を通過するときに圧縮されて水圧が急激に高まり、同時に通過速度も急激に上昇する。高圧・高速のピークは、小径路234に達したときである。小径路234を通過した被処理水は、開放傾斜路235の中で急激に減圧・減速し、後続する被処理水との衝突の衝撃等を受け乱流化する。その後、被処理水は下流側大経路236を抜け、気液混合構造205の外へ出る。散気されたオゾンは、被処理水の乱流に巻き込まれ大小様々な大きさの気泡となり攪拌作用を受ける。小径路234及び少なくともその下流を流れる被処理水(オゾン)には、上記攪拌作用とともに磁気回路243の働きによる磁力作用を受ける。すなわち、被処理水の水圧を圧力頂点(ピーク)に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った被処理水にオゾンを供給する、ことを磁界の中で行うことになる。攪拌作用と磁界の磁力作用が相乗効果を生み、その結果、被処理水にオゾンが溶解し高溶解度を持った高濃度オゾン水が生成される。
【0057】
(溶解促進槽)
図2及び7を参照しながら、溶解促進槽206について説明する。溶解促進槽206は、天板253と底板254とによって上下端を密閉した円筒状の外壁255によって、その外観を構成してある。天板253の下面には、その下面から垂下する円筒状の内壁256を設けてある。内壁256に囲まれた空間が、被処理水を貯留するための貯留室258となる。内壁256の外径は外壁255の外径よりも小さく設定してあり、これによって、内壁256と外壁255との間に所定幅の壁間通路259が形成される。他方、内壁256の下端は、底板254まで届かず、底板254との間に所定幅の間隙を形成する。この間隙は、下端連通路257として機能する。すなわち、内壁256が囲む貯留室258は、下端連通路257を介して壁間通路259と連通している。他方、内壁256の天板253の近傍には複数の連通孔256h,256h,・・を貫通させてあり、貯留室258と壁間通路259とは各連通孔256hを介しても連通している。底板254の上面略中央には、細長の揚水管261を起立させてある。揚水管261の中空部下端は、底板254を貫通する入水孔254hと連通し、中空部上端は、揚水管261上端に形成した多数の小孔261h,・・を介して貯留室258と連通している。揚水管261の上端は、内壁256が有する連通孔256hの位置よりも僅か下に位置させてある。外壁255の高さ方向上から略4分の1付近には、排水孔255hを貫通させてある。つまり、壁間通路259は、排水孔255hを介して外部と連通している。
【0058】
天板253の略中央には、揚水孔253hを貫通させてある。揚水孔253hは、天板253の外部に配した気液分離装置265の内部に連通している。気液分離装置265は、揚水孔253hを介して貯留室258から押し上げられる被処理水と、この被処理水から脱気するオゾンとを分離排出するための脱気構造として機能する。気液分離装置265によって分離されたオゾンは、オゾン分解装置267によって分解して無害化した後に装置外部に放出するようになっている。被処理水に対するオゾン溶解度はきわめて高く、したがって、脱気するオゾンは極めて少ないが、より安全性を高めるためにオゾン分解装置267等を設けてある。揚水管261によって貯留室258内に送り込まれた被処理水は、後続する被処理水に押されて下降する。下端に達した被処理水は下端連通路257を折り返して壁間通路259内を上昇し、排水孔255hを介して外部に排水される。また、一部の被処理水は気液分離装置265内に押し上げられる。この間、熟成類似の作用によってオゾンが被処理水に溶解して高溶解度のオゾン水を生成する。他方、溶解し切れなかったり、一旦は溶解したが脱気したオゾンがある場合に、そのオゾンは気液分離装置265内に上昇しそこで分離される。したがって、被処理水から溶解しきれないオゾンは、そのほとんどを排除することができる。この結果、溶解促進槽206を通過した被処理水のオゾン溶解度は、飛躍的に高くなっている。
【0059】
(循環構造)
図2を参照しながら、循環構造について説明する。循環構造204は、気液混合構造205を通過した被処理水(既に原水からオゾン水になっている)を循環させて再度、気液混合構造205を通過させる機能を有している。再度、気液混合構造205を通過させるのは、既にオゾンを溶解させた被処理水に再度オゾンを注入することによって、オゾンの溶解度と濃度をさらに高めるためである。循環構造204は、ポンプ271を駆動源とし、貯留タンク202と溶解促進槽206を主要な構成要素とする。すなわち、ポンプ271は、貯留タンク202から配管270を介して取り出した被処理水を逆止弁272及び配管273を介して気液混合構造205に圧送する。圧送によって気液混合構造205を通過した被処理水は、配管274及び溶解促進槽206を抜け配管275を介して貯留タンク202に戻される。循環構造204は、上記した工程を必要に応じて繰り返して実施可能に構成してある。循環させる回数は、生成しようとするオゾン水のオゾン溶解度やオゾン濃度等を得るために自由に設定することができる。なお、符号276は、配管275の途中に設けたバルブを示している。バルブ276は、その開閉によって気液混合構造205の小径路234(図2参照)を通過させる被処理水の水圧を制御することを主目的として設けてある。
【0060】
(実験例)
図2及び8を参照しながら、実験例について説明する。ここで、示す実験例は、背景技術の欄において説明した磁石の使用方法と本発明に係る磁石の使用方法の違いによって、オゾンの溶解度や濃度に著しい差が生じることを主として示すためのものである。本実験例では、本件発明に係る装置として図2に示すオゾン水生成装置(以下、「本件装置」という)を使用し、比較対象となる装置として図8に示すオゾン水生成装置(以下、「比較装置」という)を使用した。比較装置には、本件装置の構造と基本的に同じ構造を備えさせてあるが、磁気回路243の取付位置のみを異ならせてある。このため、図8では磁気回路を除き図2で使用する符号と同じ符号を使用し、図8に示す磁気回路には気液混合構造205の上流側にあるものに符号243aを、下流側にあるものに符号243bを、それぞれ付してある。整理すると、図2に示す本件装置は、磁気回路243と一体となった気液混合構造205を備え、図8に示す比較装置は、気液混合構造205の上流側配管に磁気回路243aを、同じく下流側配管に磁気回路243bを、それぞれ同時に又は選択的に取り付け取り外しできるように構成してある。なお、気液混合構造205として、米国マジェーインジェクター社(MAZZEI INJECTOR CORPORATION)製のモデル384を、磁気回路には7000ガウスのものを、それぞれ使用した。
【0061】
(濃度比較実験)
表1及び2を参照しながら、濃度比較実験について説明する。表1は、オゾン水のオゾン濃度と濃度上昇時間との関係を示している。表2は、表1に示すオゾン水のオゾン濃度が生成装置の運転停止後にゼロになるまでに要する時間を示している。ゼロになるまでの時間が長ければ長いほどオゾン溶解度が高いことを示す。表1及び2において、記号「□」は本件装置を用いて生成したオゾン水(以下、「本件オゾン水」という)を、記号「×」は比較装置から磁気回路のみを取り外した気液混合構造を用いて生成したオゾン水(以下、「磁気なしオゾン水」という)を、記号「△」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243aとにより生成したオゾン水(以下、「上流側磁気オゾン水」という)を、記号「○」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243bとにより生成したオゾン水(以下、「下流側磁気オゾン水」という)を、そして、記号「◇」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243a及び磁気回路243bの双方とにより生成したオゾン水(以下、「両側磁気オゾン水」という)を、それぞれ示している。被処理水の温度は5℃、周囲湿度は36〜43%、周囲温度は17℃であった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1が示すように、生成装置運転開始後の生成時間35分で本件オゾン水はオゾン濃度20ppmに到達したが、同条件下において、磁気なしオゾン水はオゾン濃度8ppm前後、下流側磁気オゾン水はオゾン濃度11ppm前後、上流側磁気オゾン水はオゾン濃度12ppm前後、両側磁気オゾン水はオゾン濃度13ppm前後までしか上昇しなかった。このことから、まず、磁気回路を設けることにより設けない場合に比べてオゾン濃度を高められること、次に、同じ磁気回路を設けるとしても気液混合構造と一体化させた場合と気液混合構造以外の箇所に設けた場合とでは前者の方が後者よりも少なくとも7ppm高いオゾン水を生成可能であること、が分かった。つまり、オゾン濃度について本件オゾン水は、両側磁気オゾン水に比べて略54%((20−13)/13×100)高い、という結果を得た。
【0065】
表2が示すように、オゾン濃度20ppmに達した本件オゾン水のオゾン濃度がゼロになるまでに32時間以上要したのに対し、比較対象となるオゾン水のうち最も長くかかった両側磁気オゾン水のオゾン濃度は13ppmからゼロになるまでの時間は略3.5時間しか要しなかった。したがって、本件オゾン水は両側磁気オゾン水に比べて10倍近い時間オゾンを含有していたことになる。換言すると、両側磁気オゾン水に比べて本件オゾン水は、同じ時間をかけて同量のオゾンを注入し溶解させたオゾンを10倍近い時間保持していたことになる。本件オゾン水のオゾン溶解度の高さを端的に示している。
【0066】
(オゾン気泡の粒径測定実験)
表3及び4を参照しながら、本件オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径測定実験について説明する。表3及び4は、本件オゾン水に含まれるオゾン気泡の粒径分布を示す(左側縦軸参照)。本測定実験では、オゾン濃度とオゾン濃度保持時間との関係から4種類の本件オゾン水を測定対象とした。まず、オゾン濃度を3ppmと14ppmの2種類とし、次に、各濃度それぞれ当該濃度に達した直後のオゾン水(以下、各々「3ppm直後オゾン水」「14ppm直後オゾン水」という)と、当該濃度に達した後その濃度を15分間維持させたオゾン水(以下、各々「3ppm維持オゾン水」「14ppm維持オゾン水」という)と、に分けた。つまり、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」「14ppm維持オゾン水」の4種類が、本測定実験に係る測定対象である。ここで、本測定実験に使用した本件オゾン水の原水には、水道水を0.05μm(50nm)の微粒子絶対濾過の逆浸透膜で濾過して得た純水を用いた。本実験で純水を得るために使用した装置は、セナー株式会社製超純水装置(型名:Model・UHP)である。水道水には50nm以上の不純物(たとえば、鉄分やマグネシウム)が含まれているため、濾過してない原水から生成したオゾン水を測定対象としても、そこに含まれる不純物を測定してしまい測定誤差が生じかねないので、濾過によって予め不純物を取り除いておくことによってオゾンの気泡粒径の正しい測定ができるようにするためである。水道水以外の原水、たとえば、井戸水や河川水についても同じことがいえる。オゾン気泡の粒径測定に使用した測定器は、動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd):型式LB500))である。原水から不純物を濾過せずともオゾン気泡の粒径を正しく測定できる手段があれば、その手段を用いて測定可能であることはいうまでもない。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
まず、表3に基づいて、3ppm直後オゾン水と3ppm維持オゾン水について考察する。表5右端のグラフが3ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが3ppm維持オゾン水を示している。3ppm直後オゾン水は、1.3μm(1300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、3ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0050μm(5.00nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0070】
次に、表4に基づいて14ppm直後オゾン水と14ppm維持オゾン水について考察する。表6右端のグラフが14ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが14ppm維持オゾン水を示している。14ppm直後オゾン水は、2.3μm(2300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、14ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0058μm(5.80nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0071】
上記実験から明らかになった第1の点は、同じ濃度を持ったオゾン水であっても、当該濃度に達した直後のオゾン水(直後オゾン水)と当該濃度を所定時間維持したオゾン水(維持オゾン水)とでは含有されるオゾン気泡の粒径(以下、「気泡粒径」という)が異なるということである。3ppmオゾン水の場合、直後オゾン水の気泡粒径最小値は、維持オゾン水の気泡粒径最大値の、260倍(1300/5.0)の大きさを持っている。同様に14ppmオゾン水の場合は、約400倍(2300/5.8)の大きさを持っている。つまり、当該濃度を所定時間維持すること、すなわち、被処理水であるオゾン水を循環させることによって気泡粒径を小さくすることができるということである。気泡粒径が1000nm以下であること、好ましくは500nm以下であること、さらに好ましくは気泡粒径50nm未満のオゾン気泡であればより安定して水溶液中に浮遊させることができる。本願発明に係るオゾン水処理方法によれば、生成されるオゾン気泡の粒径Rが、50nm未満(0<R<50nm)のオゾン気泡を含有するオゾン水、すなわち、溶解度の高いオゾン水を得られることが分かった。含有するオゾン気泡が50nm〜1000nmのオゾン水は、上記した含有するオゾン気泡の粒径50nm未満のオゾン水を生成する過程で得ることができる。すなわち、循環させることなく生成したオゾン水や循環させる時間を短くしたオゾン水は、循環させて生成したオゾン水や循環時間の長いオゾン水に比べて、より粒径が大きいから、必要な粒径に併せて循環の有無や循環時間を調整するとよい。また、これら以外にも、循環系の水圧やベンチュリ管に作用させる磁石の強弱、供給オゾンの濃度や供給量、その他、生成する際の雰囲気等により変動することが考えられる。これが、実験から明らかになった第2の点である。なお、本実験によれば、オゾン気泡の粒径Rの実測最低値は3.4nmであり、それ以下の値は計測されていない。計測されないのは測定装置の測定能力の限界に起因すると思われる。他方、オゾン気泡の粒径Rは、濃度達成直後に比べ濃度維持後の方が小さくなっていることから、粒径小型化の延長線上には限りなくゼロに近い粒径Rを持ったオゾン気泡が存在しうることが容易に想像できる。
【0072】
(pH測定実験)
なお、上記4種類のオゾン水、すなわち、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」及び「14ppm維持オゾン水」についてpH測定実験を行った。その結果は、表5及び6に線グラフで示してある(右側縦軸参照)。いずれのオゾン水についても、オゾン溶解の前後においてpH7.3前後を示した。すなわち、オゾン溶解は原水のpHにほとんど変化を与えないことがわかった。井戸水や水道水は概ね中性(pH6.5〜7.5)を示すことから、気液混合方式によって生成した本件オゾン水は、pHを調整するための添加物を添加しなくても中性を示すことがわかった。もっとも、原水がアルカリ性である場合は、オゾン溶解がオゾン水のpHを変化させないことからアルカリ性のオゾン水が生成される場合もあり得よう。
【0073】
上記実験結果を総括する。上記実験対象となった本件オゾン水は、何ら添加物を加えることなく原水にオゾンを混合させるという気液混合によって生成されたものである。さらに、オゾン溶解度が高いため常圧下においても容易にオゾンが脱気しない。したがって、本件オゾン水を使用すれば、半導体基板に悪影響を与えることなく、かつ、効率のより洗浄効果を得ることができる。また、半導体基板(半導体ウェハー)に限らず、液晶基板(LCD基板)、LD、LED、ハードディスク等の電子部品の洗浄、さらには、機械部品の洗浄等にも上記オゾン水は好適である。これらに加え、上記オゾン水によれば、半導体基板のレジストの剥離や溶解、半導体基板の表面に薄膜を形成したり半導体基板の表面を親水化したりすることもできる。上述したように上記オゾン水は、電子部品や機械部品の洗浄等の処理(オゾン水処理)に極めて適している。
【0074】
特に半導体基板の処理(洗浄、レジストの剥離・溶解)は、複数枚を一括に行うバッチ式と一枚ずつ処理を行う枚葉式であってもよい。バッチ式処理を行う場合には、オゾン水を還流させたり、必要に応じて新たにオゾン水を加えたりすることもできる。オゾン水の再利用を図ったり効率よく処理したりするために好適と考えられるからである。枚葉式の場合は、たとえば、オゾン水処理とともに蒸気、やエキシマ光(エキシマレーザー)、紫外線を適用することを妨げない。
【0075】
なお、一般的には、オゾンが溶解することによってオゾン水が生成されると認識されており、本明細書もそのような表現を排除するものではないが、前記したオゾン気泡の粒径測定実験から得た知見によれば、オゾンは水に溶解しているのではなく気泡としてオゾン水の中に浮遊している(含有されている)と認識されるべきであろう。とするなら、溶解度という概念を用いるよりもオゾン気泡の密度という概念を用いるほうが、オゾン水の性状をより的確に示すことができるといえる。この点、本件発明に係るオゾン水は、オゾン気泡が今までになく超微細化していてその数が極めて多数であることから、「超微細高密度オゾン水」と呼ばれるべきものであり、従来のオゾン水は「低密度オゾン水」あるいはせいぜい「高密度オゾン水」とよばれるべきものである。すなわち、両オゾン水は、密度の点で大きく異なっている。次はオゾン濃度の問題である。オゾン濃度とは、一般に単位量当たりに含まれるオゾン量(溶解量ではない)を示すものである。オゾン濃度を計測するためには紫外線吸収式のオゾン濃度計が用いられることが多いが、この紫外線吸収式のオゾン濃度計は紫外線の光路長の間に存在するオゾンに吸収される光量(入射光量と透過光量の差)に基づいて濃度が定められるものだからである。このことからオゾン濃度は、オゾン気泡の大小には全く影響を受けない、もしくは、受けたとしても極僅かなのである。そもそもオゾン水が前項に掲げたような処理効果を得ることができるのは、オゾン水に含有されるオゾンが電子部品や機械部品等の被処理物に接触するからである。水とオゾン気泡とを含むオゾン水の水部分は処理には原則として直接の寄与はない(間接的には寄与するかもしれない)。オゾン気泡は原則として球形であるから、オゾン気泡と被処理物との接触は略点接触であるといえる。点接触であるから、粒径が大きなオゾン気泡と微細なオゾン気泡との間において、球形を保っている限り被処理物との接触について両者間に違いは生じない。同濃度・同量のオゾン水であっても、オゾン気泡の密度が高い(オゾン気泡の数が多い)オゾン水の方が、密度が低い(オゾン気泡の数が少ない)オゾン水よりも処理効果を得づらいということが理解されよう。換言すれば、濃度は低いとしても、その分を密度で補うことができれば、高濃度低密度オゾン水と低濃度(超)高密度オゾン水とで同程度の処理効果を得られることができるのである。これに加え、たとえば、半導体基板のオゾン水処理を行う場合に、半導体基板表面に形成される溝幅は、基板の高密度化に伴い狭くなっている。そのような溝に入り込むことのできないオゾン気泡は、その溝の中(内壁)と接触できないから処理もできない。他方、超微細のオゾン気泡であれば、そのような問題は生じない。この点も、超微細高密度オゾン水が効率のよい処理に寄与しうる理由として挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】半導体基板洗浄装置のブロック図である。
【図2】半導体基板洗浄装置が備えるオゾン水生成装置のブロック図である。
【図3】気液混合構造の正面図である。
【図4】気液混合構造の左側面図である。
【図5】図4に示す気液混合構造のX−X断面図である。
【図6】図3に示す気液混合構造の概略平面図である。
【図7】溶解促進構造の縦断面図である。
【図8】比較実験を行うためのオゾン水生成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体基板洗浄装置
3 洗浄槽
7 洗浄機構
201 オゾン水生成装置
202 貯留タンク
203 オゾン供給装置
204 循環構造
205 気液混合構造
206 溶解促進槽
207 温度保持構造
231 ベンチュリ管
232 上流側大径路
233 絞り傾斜路
234 小径路
235 開放傾斜路
236 下流側大径路
239 オゾン供給パイプ
243 磁気回路
245 一方の磁石片
246 他方の磁石片
265 気液分離装置
267 オゾン分解装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する電子・機械部品洗浄方法において、
当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmである
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項2】
気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する電子・機械部品洗浄方法において、
当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmである
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項3】
気液混合方法によって無添加生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄する電子・機械部品洗浄方法において、
当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmである
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項4】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水洗浄工程と、を含めてなる
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項5】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水洗浄工程と、を含めてなる
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項6】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて電子・機械部品を洗浄するオゾン水処理工程と、を含めてなる
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄方法。
【請求項7】
前記気液混合方法に使用する原水が、純水又は超純水である
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項8】
前記オゾン水生成工程では、小径路を有するベンチュリ管に原水を通過させ、かつ、ベンチュリ管にオゾンを供給するとともに、当該ベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させる
ことを特徴とする請求項4乃至7いずれか記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項9】
前記ベンチュリ管を通過したオゾン水を循環させ、オゾンを供給しながら前記ベンチュリ管を少なくとも1回再通過させる
ことを特徴とする請求項8記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項10】
前記循環させたオゾン水を貯留タンクに一旦貯留する
ことを特徴とする請求項9記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項11】
前記貯留タンクに貯留したオゾン水を、0〜15℃の範囲に保持する
ことを特徴とする請求項10記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項12】
オゾン水を溶解促進槽に一旦貯留してオゾン溶解を促進する
ことを特徴とする請求項8乃至10いずれか記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項13】
前記溶解促進槽に貯留したオゾン水から脱気したオゾンを、当該溶解促進槽外部へ排出する
ことを特徴とする請求項12記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項14】
前記オゾン水生成工程では、磁界中において、原水の水圧を圧力頂点に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った原水にオゾンを供給する工程を含めてなる
ことを特徴とする請求項4乃至7いずれか記載の電子・機械部品洗浄方法。
【請求項15】
電子・機械部品を洗浄するための洗浄槽と、
当該洗浄槽にオゾン水を供給するためのオゾン水生成装置と、を含めて構成してあり、
当該オゾン水生成装置が、小径路を有するベンチュリ管と、当該ベンチュリ管の小径路を通過する被処理水にオゾンを供給するためのオゾン供給装置と、を含めて構成してあり、
当該ベンチュリ管には、少なくともオゾン供給を受けた被処理水に磁力を作用させる磁石を設けてある
ことを特徴とする電子・機械部品洗浄装置。
【請求項16】
前記磁石が、一方の磁石片と他方の磁石片とを含む磁気回路によって構成してあり、
当該一方の磁石片と当該他方の磁石片とを、前記ベンチュリ管を挟んで対向させてある
ことを特徴とする請求項15記載の電子・機械部品洗浄装置。
【請求項17】
前記磁石の磁力が、1000〜30000ガウスに設定してある
ことを特徴とする請求項15又は16記載の電子・機械部品洗浄装置。
【請求項18】
前記気液混合方法に使用する原水が、純水又は超純水である
ことを特徴とする請求項15乃至17いずれか記載の電子・機械部品洗浄装置。
【請求項19】
前記ベンチュリ管を通過したオゾン水を循環させて当該ベンチュリ管を再度通過させるための循環構造を、さらに含めて構成してある
ことを特徴とする請求項15乃至18いずれか記載の電子・機械部品洗浄装置。
【請求項20】
前記循環構造の途中には、循環させるオゾン水を一旦貯留させるための貯留タンクを設けてある
ことを特徴とする請求項19記載の電子・機械部品洗浄装置。
【請求項21】
前記貯留タンク内のオゾン水を0〜15℃の範囲に保持するための温度保持構造を設けてある
ことを特徴とする請求項20記載の電子・機械部品洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−192630(P2008−192630A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11841(P2007−11841)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(503428747)
【出願人】(503428471)
【Fターム(参考)】