説明

電子写真の形成方法

【課題】PSが高速化されても、a−Si電子写真感光体の帯電電位の向上及びフォトメモリの改善の両方を同時に実現する。
【解決手段】電子写真感光体の表面を帯電させる主帯電工程と、その後、電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をトナー像として現像する現像工程と、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、その後、静電潜像を除電する第1除電工程と、その後、電子写真感光体の表面を帯電させる副帯電工程と、電子写真感光体の表面の除電を行う第2除電工程と、を順次繰り返すことで電子写真を形成する電子写真の形成方法であって、第2除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位が、第1除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位より高いことを特徴とする電子写真の形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等の電子写真装置を用いた電子写真の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に非晶質材料の感光層を有する電子写真感光体が広く知られている。その一例として、金属等の基板上にCVD等の成膜技術により形成されたシリコン原子を母体とする非晶質材料を感光層としたアモルファスシリコン電子写真感光体が挙げられる。このアモルファスシリコン電子写真感光体は、表面硬度が高いことから耐摩耗性に優れているという特徴を持っている。そのため、アモルファスシリコン電子写真感光体を用いた高速な電子写真装置が製品化され、また、アモルファスシリコン電子写真感光体を高速回転させた高速電子写真装置による電子写真の形成方法についても数多くの提案がなされている。
【0003】
図7はアモルファスシリコン電子写真感光体(以下、単に電子写真感光体とも表記する)を用いた従来の電子写真装置の模式的な概略図である。図7を用いて従来の電子写真の形成方法を説明する。まず、電子写真感光体701を回転させ、電子写真感光体表面を帯電器702により均一に帯電させる。その後、静電潜像手段708により電子写真感光体表面に光を露光し、電子写真感光体表面に静電潜像形成した後、現像器714より供給されるトナーを用いて現像を行う。この結果、電子写真感光体表面にトナー像が形成される。そして、このトナー像を転写帯電器706により転写材712に転写し、電子写真感光体701から転写材712を分離して、トナー像を転写材に定着させる。
【0004】
一方、トナー像が転写された電子写真感光体表面に残留するトナーをクリーナー711により除去し、その後、電子写真感光体表面を露光することにより電子写真感光体中の静電潜像時の残キャリアを除電する。この一連のプロセスを繰り返すことで連続して画像形成が行われる。
【0005】
しかしながら、電子写真装置の高速化が進み、上述した従来の電子写真の形成方法では、
1.除電が不十分となり、静電潜像形成工程の露光時に発生した残キャリアが次のプロセス時に画像上に出現するフォトメモリが発生したり、また、
2.帯電時間が不十分なために、帯電工程で十分な帯電電位を印加することができなくなったり、
3.画像濃度が薄い画像が出力されたりする場合があった。
【0006】
そのため、除電器を複数設けることによりフォトメモリを従来よりも緩和する技術や、帯電器を複数設けることにより、電子写真装置の高速化による画像濃度の低下が生じないように帯電電位を十分確保する技術等が多数開示されている。
【0007】
例えば、セレン感光体の場合、特許文献1に静電潜像を形成する露光源から感光体の回転方向下流に向かって、第1除電器、補助帯電器、第2除電器、主帯電器を有する電子写真装置の電子写真の形成方法が開示されている。開示されている内容は、第1除電器で短波長の除電光を、また、第2除電器で長波長の除電光を用いることによりフォトメモリの発生を防止し、高解像度を実現可能な電子写真の形成方法である。
【0008】
また、第1帯電器、第2帯電器(転写帯電器)、第1全面露光器、第2全面露光器及び制御装置を有し、第1全面露光器が主帯電器よりも、また、第2全面露光器が第2帯電器よりも有機感光体移動方向下流側に配置され、制御装置により画像形成に先立って、第1、第2帯電器及び第1、第2全面露光器を作動させ、2回の帯電及び全面露光を行う前処理が行われる。その後、第2帯電器の帯電極性を反対にし、また、第1全面露光器を転写同時露光器として、画像形成が行われる。このような画像形成前に前処理を行うことにより、帯電電位の低下を抑え、帯電電位の安定性向上を可能とした電子写真の形成方法に関する技術が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平05−297785号公報
【特許文献2】特開2003−295535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、電子写真装置が軽印刷領域へと市場を広げる一方で、エコロジーへの意識の高まりから、アモルファスシリコン(a−Siとも表記)電子写真感光体を用い、プロセススピード(PSとも表記)を従来よりも高速化し、且つ、高画質化することが求められている。
【0010】
特許文献1に開示された技術は、除電光の波長を変えることにより、第1除電器及び第2除電器の除電光で発生するキャリアの発生位置を変化させている。これにより、静電潜像形成時に露光部と非露光部での膜中のキャリア密度の差を小さくすることに可能となるため、フォトメモリ(画像濃度ムラ)の改善が可能となる。
【0011】
一方、特許文献2に開示された技術は、1枚目の画像出力前に前処理として複数回の帯電及び全面露光を行うことにより、有機感光体の感光層内に存在する分子レベルの欠陥にトラップされたキャリアの除去を行っている。これにより、通常の1回の帯電及び全面露光にて前処理をするよりも1枚目の画像出力までの時間が短宿でき、且つ、1枚目の帯電電荷の低下を抑えることが可能となるため、帯電電位の向上が可能となる。
【0012】
しかしながら、フォトメモリの改善と、帯電電位の向上と、を同時に解決することは困難であった。そのため、プロセススピードが高速化されるにつれ画像濃度ムラや、画像濃度低下がより顕著に表れてしまうという問題が発生する場合があった。
【0013】
特許文献1及び2に開示されている技術を用いても同様に、a−Si電子写真感光体を用いた電子写真装置では、PSが高速化された場合、画像濃度の低下と画像濃度ムラとを同時に改善することは困難であった。
【0014】
即ち、耐摩耗性の良いa−Si電子写真感光体を用い、PSが高速で、且つ、画像濃度ムラや、画像濃度低下の改善が行われた電子写真装置が望まれている。PSを高速化すると言うことは、実際は、a−Si電子写真感光体の回転速度を上げることである。
【0015】
この結果、a−Si電子写真感光体を用いた電子写真装置のPSを高速化すると、次のような課題が挙げられる。
【0016】
第1に、a−Si電子写真感光体は、有機感光体に比べ比誘電率が大きいため、感光体の表面電位を所定の電位にするためには、有機感光体よりも多量な電荷を感光体表面に供給する必要がある。しかし、高速な電子写真プロセスにおいては、PSが速くなると、感光体の帯電器を通過する時間、即ち、帯電工程の時間が短くなり、帯電器から感光体表面に供給される電荷量が減少してしまう。その結果、帯電電位の低下により画像濃度低下を生じる場合があった。
【0017】
第2に、a−Si電子写真感光体では、静電潜像形成時の露光で発生させたキャリアが、膜中の欠陥準位にトラップされてしまう。このトラップされたキャリアにより、帯電工程で、帯電された感光体表面の表面電荷を打ち消される場合がある。そのため、静電潜像形成部の電位が低下することにより、フォトメモリが発生する場合があった。フォトメモリが発生すると、画像の濃度のムラが発生するという問題があった。
【0018】
フォトメモリを改善するためには、静電潜像形成時の露光部でトラップされるキャリア密度と静電潜像形成時の非露光部でトラップされるキャリア密度の差が小さくなるように感光体全体に除電光を照射し、多量のキャリアを膜中で発生させる必要があった。しかし、高速な電子写真プロセスにおいては、除電光照射から帯電までの時間が短くなるため、帯電による感光体表面に供給される電荷と除電光で発生したキャリアとの結合確率が従来よりも高くなってしまう。その結果、静電潜像形成時の露光部と非露光部でのトラップされたキャリア密度の差がフォトメモリを改善する程まで小さくならず、画像濃度ムラが生じる場合があった。
【0019】
そのため、除電光により膜中で発生するキャリア密度を上げる必要があるが、欠陥準位にトラップされるキャリア数は増加するものの、同時に、膜中には欠陥準位にトラップされるキャリア数よりも過剰なキャリアが残存してしまう。
【0020】
高速な電子写真プロセスにおいては、これら過剰キャリアが再結合するための時間が短くなるため、帯電工程直前での膜中のキャリア数が従来の電子写真プロセスよりも過剰となってしまう。そのため、これらキャリアが帯電中及び帯電後に感光体の表面電荷と結合してしまい、現像器位置では、従来よりも電位が低下し、その結果、画像濃度の低下が生じる場合があった。
【0021】
上述の現象は、PSが高速化されると顕著になり、特に、PSが500mm/sec以上になるとより顕著になることがわかった。
【0022】
上述したように、a−Si電子写真感光体を用いた高速な電子写真装置では、
1.フォトメモリによる画像濃度ムラの向上と、
2.除電光により発生したキャリアによる帯電電位の減衰及び帯電時間の短縮に伴う帯電電位の低下による画像濃度低下の向上と、
を両立することが非常に困難であった。
【0023】
本発明の目的は、a−Si電子写真感光体を用いた高速な電子写真装置の、フォトメモリや表面電位の低下を改善することにより、画像濃度ムラや画像濃度低下を低減し、高画質化、環境性に対して良好な電子写真方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、導電性基体上にシリコン原子を母体とする非晶質材料で構成された光導電層及び表面層を有する電子写真感光体の表面を帯電させる主帯電工程と、その後、電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をトナー像として現像する現像工程と、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、その後、静電潜像を除電する第1除電工程と、その後、
電子写真感光体の表面を帯電させる副帯電工程と、
電子写真感光体の表面の除電を行う第2除電工程と、を順次繰り返すことで電子写真を形成する電子写真の形成方法であって、
第2除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位が、第1除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位より高いことを特徴とする電子写真の形成方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子写真方法により、PSが高速化されても、a−Si電子写真感光体の帯電電位の向上及びフォトメモリの両方を同時に解決することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明者は、帯電電位の向上及びフォトメモリ両方を同時に解決することが困難である原因が、
1.静電潜像形成工程での露光部と非露光部とのキャリア密度の差を除電工程で均一にすることと、そして、
2.除電光で発生した過剰なキャリアを低減させ、帯電電荷との再結合を減少させることとの両立が難しいためであると考えた。
【0027】
そのため、超高速な電子写真プロセスにおいても良好な画像を連続して出力するためには、静電潜像形成工程や除電工程で感光体内に残留するキャリアを制御することが必要であると考えた。
【0028】
そこで、除電器と帯電器(以下、第1除電器、主帯電器と表記する)との間に、副帯電器と第2除電器とを設けた。この構成にすることで、第1除電器の除電光の露光量を強くすることにより、静電潜像形成時に、露光部と非露光部とのキャリア密度の差の制御を行うことができる。その後、副帯電器により感光体表面に電荷を供給し、第1除電器による第1除電工程で発生した過剰なキャリアと表面電荷との結合により、電子写真感光体内の過剰なキャリア数の制御を行うことができる。更に、第2除電器による第2除電工程終了後の感光体の表面の電位を、第1除電器による第1除電工程終了後の電子写真感光体の表面の電位よりも高くなるように除電する。この結果、再度、静電潜像形成工程での露光部と非露光部とのキャリア密度の差の制御と、第2除電工程での過剰キャリアの制御を行うことができる。
【0029】
このような感光体内に残留キャリアを制御する、つまり、電子写真感光体の表面電位を制御することにより、高速、且つ、連続して、電子写真装置により画像形成を行っても帯電電位の向上及びフォトメモリの改善が可能となることを見いだした。
【0030】
本発明は、導電性基体上にシリコン原子を母体とする非晶質材料で構成された光導電層及び表面層を有する電子写真感光体の表面を帯電させる主帯電工程と、その後、電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をトナー像として現像する現像工程と、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、その後、静電潜像を除電する第1除電工程と、その後、
電子写真感光体の表面を帯電させる副帯電工程と、電子写真感光体の表面の除電を行う第2除電工程と、を順次繰り返すことで電子写真を形成する電子写真の形成方法であって、
第2除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位が、第1除電工程で除電された電子写真感光体の表面の電位より高いことを特徴とする電子写真の形成方法である。
【0031】
ここで、主帯電工程後の電子写真感光体の表面電位をV1(V)とし、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位をV2(V)とした時、V2/V1が、0.2以上、0.8以下であることが好ましい。
【0032】
更に、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2(V)と第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL2(V)との電位差V2−VL2、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2(V)と第1除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL1(V)との電位差V2−VL1について、
V2−VL2が、70V以上、270V以下で、且つ、V2−VL1が、100V以上、300V以下であることが好ましい。
【0033】
更に、第1除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL1(V)、第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL2(V)については、VL2−VL1が、10V以上、60V以下であることが好ましい。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
(電子写真装置)
a−Si電子写真感光体を用いた高速出力可能な電子写真装置の構成を、図1に示す模式的な概略図を用いて説明する。
【0036】
電子写真装置は、a−Si電子写真感光体101の周囲に、
電子写真感光体101に静電潜像形成のための帯電を行う主帯電器102と、
静電潜像形成手段108により静電潜像の形成された電子写真感光体101に現像用トナーを供給するための現像器114と、
電子写真感光体表面のトナーを紙などの記録媒体となる転写材112に移行させるための転写帯電器106と、
転写材112へとトナーが移行した後、転写材112と電子写真感光体101を分離するための分離帯電器107と、
静電潜像を消去するために電子写真感光体表面を除電するための第1除電器104と、
第1除電器104で発生した過剰なキャリアを除去する副帯電器103と、
第1除電器104で消しきれなかったフォトメモリを消去するために再度除電を行う第2除電器105と、
電子写真感光体表面をクリーニングするためのクリーナー111と、が配設されている。また、分離後の転写材112は搬送手段113により送られる。
【0037】
更に、電子写真感光体101の内部には、不図示の感光体ヒーターが配設されていてもよく、この感光体ヒーターを用いることにより電子写真感光体101を加熱することが可能となる。図1は、電子写真感光体表面を均一にクリーニングするために、マグネットローラー109とクリーニングブレード110を用いて電子写真感光体表面のクリーニング工程を行っているが、いずれか一方のみでも差し支えない。
【0038】
このような電子写真装置を用いた画像形成は、例えば以下のように行われる。まず、電子写真感光体101を所定の速度で矢印の方向へ回転させ、主帯電器102を用いて電子写真感光体101の表面を一様に帯電させる主帯電工程。次に、帯電された電子写真感光体101の表面に静電潜像形成手段108により電子写真感光体101の表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成工程。
【0039】
静電潜像形成手段108は、主帯電装置102により帯電された電子写真感光体101の表面を露光し、電子写真感光体101の表面に電荷分布を生成させ静電潜像を形成するための光学系からなっている。
【0040】
そして、電子写真感光体101表面に形成された静電潜像部が現像器114の設置部を通過する際に、現像器114によってトナーが電子写真感光体101の表面に供給される現像工程、静電潜像がトナー像として顕像化(現像)される現像工程。更に、このトナー像が電子写真感光体101の回転とともに転写帯電器106の設置部に到達し、ここで搬送ローラー113によって送られてくる転写材112に転写される。
【0041】
転写終了後、分離帯電器107により転写材112を電子写真感光体101から分離させる。分離方法はベルト、爪などを用いた機械的方法により分離しても良い。転写材112を電子写真感光体101から分離した後、電子写真感光体101には残留電位が残っているため、その表面電位をゼロ若しくは殆どゼロとなるように第1除電器104により除電される第1除電工程。そして、クリーナー111により電子写真感光体101の表面の転写残トナーが除去される。その後、副帯電器103により電子写真感光体101の表面が帯電され副帯電工程、再度、第2除電器105により、表面電位が第1除電器104での除電時よりも高くなるように除電される第2除電工程を経て、1回の複写工程が終了される。
【0042】
本発明の電子写真装置では、主帯電器102及び副帯電器103と、第1除電器104及び第2除電器105の配置は、静電潜像形成工程から電子写真感光体回転方向に対して下流側に、主帯電器102、第1除電器104、副帯電器103、第2除電器105の順に配置されている。
【0043】
この理由としては、例えば、副帯電器103と、第2除電器105の配置を入れ替えてしまうと、副帯電器103で電子写真感光体101を帯電させる前に第1除電器104及び第2除電器105により感光体を除電する際に電子写真感光体内部に多量のキャリアが発生することになる。このような状態で副帯電器103により電子写真感光体101を帯電させても、電子写真感光体が高速で回転しているため、副帯電工程間で、第1及び第2除電工程で発生した過剰キャリアを消去しきれない場合がある。そのため、主帯電工程で、副帯電工程で消去しきれなかった残存キャリアにより帯電時及び帯電後に電子写真感光体の表面電位の低下が生じ、現像器位置での表面電位が低下してしまう場合があった。また、副帯電工程後でも上記残存キャリアの影響により激しく表面電位の低下してしまうことがあるため、主帯電工程での帯電電位を制御することが困難となり、現像器位置での表面電位の安定性が低下する場合がある。
【0044】
そのため、電子写真感光体回転方向に対して下流側に、主帯電器102、第1除電器104、副帯電器103、第2除電器105の順に配置することにより、
1.高速に電子写真感光体が回転していても、第1除電工程での発生キャリアを副帯電工程で電子写真感光体表面に供給される電荷によりほぼ消去することが可能であり、更に、
2.第2除電工程にて再度電子写真感光体表面を全面露光して所定の表面電位に制御するため、主帯電工程では安定して所定の表面電位に制御することが可能となる。
【0045】
主帯電工程及び副帯電工程で用いられる帯電方式は、コロナ帯電、接触帯電等、どのような帯電方式であっても問題は無い。コロナ帯電方式を用いる場合、コロトロン又はスコロトロンのどちらでも構わないが、主帯電工程では所定の電位にあわせる必要があるためスコロトロンを用いることが好ましい。副帯電工程では、第1除電工程の影響により急激に表面電位を上げる場合にはコロトロンを、低電位でも良い場合には表面電位の安定性の点からスコロトロンを用いることが好ましい。
【0046】
また、副帯電器103の配置位置は、第1除電器104と第2除電器105との間、且つ、転写帯電器106よりも電子写真感光体回転方向に対して下流側に配置されていれば良い。第1除電器104及び第2除電器105は、光により感光体表面の電荷の除電を行っている。光としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー、ハロゲンランプ等により出力される光が一般的に使用される。
【0047】
第1除電器104と第2除電器105の配置は、上記順序になっていればよいが、電子写真感光体回転方向に対して下流側に配置されている主帯電器102から離して設置することが好ましい。理由は、除電から帯電までの時間が長くなるため、除電光で発生したキャリアの再結合数が増加し、膜中の残存キャリアが減少するため、帯電工程時に帯電電位への影響が低減されるからである。同時に、除電から帯電までの時間が長くなることにより、キャリアが欠陥準位にトラップされる確率が増加するため、フォトメモリを低減させることが可能となる。
【0048】
また、第1除電器104及び第2除電器105で用いる除電光の波長は、静電潜像形成工程で用いる光の波長と同等程度の波長を用いれば良い。しかしながら、静電潜像形成工程で用いる光の波長よりも第1除電工程で用いる除電光の波長を、また第1除電工程で用いる除電光の波長よりも第2除電工程で用いる除電光の波長を長波長にすることがより好ましい。この理由として、同程度の波長の除電光を用いるよりも長波長を用いる方が膜中への侵入距離が長くなるため、露光量を下げて膜中の発生キャリア数が少なくてもフォトメモリの向上が可能であるからである。同時に、第2除電工程での発生キャリア数が少なくなるため、再結合しきれなかった残存キャリアによる帯電電位への影響を低減させることが可能となる。
【0049】
次に、電子写真感光体の電位制御について、図2を用いて説明する。図2は、横軸が時間、縦軸が電子写真感光体の表面電位を示している。第1除電器104による第1除電工程が終了直後の電位をVL1、副帯電器103による副帯電工程終了直後の電位をV2、第2除電器105による第2除電工程直後の電位をVL2、主帯電器102による主帯電工程直後の電位をV1とする。
【0050】
V1、V2、VL1及びVL2の測定方法は、電位プローブ等で電子写真感光体表面の表面電位を測定することで得ることができる。主及び副帯電工程後の電位は、電子写真感光体回転方向に対して下流側で、且つ帯電器の影響を受けない位置で測定することが好ましい。また、第1及び第2除電工程後の電位は、電子写真感光体回転方向に対して下流側で、且つ除電光の照射直後の表面電位を測定できる位置で測定することが好ましい。
【0051】
図2は、第1除電工程から次の第1除電工程までの1サイクルの電子写真感光体の表面電位の状態を示している。電子写真感光体の表面電位は、第1除電工程終了後、VL1となり、副帯電工程終了後、V2となる。その後、電子写真感光体の表面電位は減少し、第2除電工程終了後、VL2となる。その後、主帯電工程終了後、電子写真感光体表面は帯電され、表面の電位がV1となる。その後、電子写真感光体の表面電位は徐々に下がっていき、次の第1除電工程により電子写真感光体の表面電位がVL1になる。
【0052】
本発明では、第2除電工程による除電後の電子写真感光体表面の電位VL2を第1除電工程による除電後の電子写真感光体表面の電位VL1よりも高くすることを特徴としている。この理由を以下に示す。
【0053】
第1除電工程による除電の1つの目的は、静電潜像形成工程で形成された静電潜像の消去である。そのため、第1除電工程で用いる除電光と静電潜像形成工程時に使用される光が同じ波長の場合、第1除電工程では、静電潜像形成工程よりも強い光量で電子写真感光体全面を露光して多量のキャリアを膜中に発生させ、静電潜像形成工程での照射部と非照射部とのキャリア密度の差を小さくすることがフォトメモリの改善には必要である。よって、第1除電工程直後の電子写真感光体表面電位は、ゼロ若しくはほぼゼロ、又は、除電光量が増加しても表面電位が変化しない電位となる。けれども、このような強い露光を第1除電工程で行ったとしても、第1除電工程での発生キャリアによる再結合でのキャリア数の減少と、副帯電工程で電子写真感光体表面に供給される電荷との結合により、ほぼ第1除電工程で発生したキャリアを消去することが可能である。
【0054】
しかし、第2除電工程は主帯電工程の直前に行われるため、主帯電工程後の電子写真感光体表面電位が第2除電工程での発生キャリアに大きく影響を受ける。つまり、第2除電工程での発生キャリア数が多すぎると、現像器位置での感光体表面電位が低下してしまう。一方で、第2除電工程では、第1除電工程で消去しきれなかったフォトメモリを更に消去する必要があるため、ある程度の強い強度で露光することが求められる。
【0055】
よって、主帯電工程後の電子写真感光体表面電位への影響の低減及びフォトメモリの消去が両立させるために、第1除電工程直後の電子写真感光体表面電位VL1よりも第2除電工程直後の電位VL2を高くすることが必要となる。
【0056】
このような観点から、第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL2と第1除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL1との差VL2−VL1が、10V以上、60V以下になるように表面電位を制御することがより好ましい。
【0057】
また、主帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V1と副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2との比、V2/V1が、0.20以上、0.80以下となるように表面電位制を御することが好ましい。この理由を以下に示す。
【0058】
V2/V1が、0.80より大きい場合、副帯電工程時及び副帯電工程後に電子写真感光体には高電界がかかる。そのため、第1除電工程で生成されたキャリアの中で再結合せずに残存したキャリアは、副帯電工程で電子写真感光体表面に供給される電荷と結合し、消去することが可能である。その結果、主帯電工程後の表面電位は、第1除電工程での残存キャリアの影響で低下することが無いため、PSが速くなっても主帯電工程後の電子写真感光体表面電位を所望の電位にすることが可能となる。
【0059】
しかし、V2/V1が、0.80より大きい場合には、副帯電工程後の電子写真感光体表面に多くの電荷が存在している。そのため、第2除電工程にてフォトメモリを消去するためには、電子写真感光体表面の電荷を打ち消し、更に、静電潜像形成工程での露光部と非露光部とのキャリア密度の差を小さくする必要があるので、第2除電工程にて強露光を電子写真感光体に照射する必要がある。その結果、フォトメモリを消去できたとしても、第2除電工程で発生したキャリアが主帯電工程後の表面電位に影響し、現像器位置での電子写真感光体表面電位が低下するために所望の電位への制御が困難な場合がある。
【0060】
V2/V1が、0.20より小さい場合、副帯電工程後の電子写真感光体表面に存在する電荷が少ないため、静電潜像形成工程での露光部と非露光部とのキャリア密度の差を小さくするのに必要な第2除電工程での露光量を小さくすることができる。そのため、PSが速くなっても、第2除電工程での発生キャリアの影響による主帯電工程後の表面電位の低下を抑えつつ、フォトメモリを消去することが可能となる。
【0061】
しかし、V2/V1が、0.20より小さい場合には、副帯電工程時及び副帯電工程後に第1除電工程で生成されたキャリアの中で、再結合せずに残存したキャリアや膜中の欠陥準位にトラップされたキャリアにかかる電界が低くなってしまう。これにより、これらキャリアの移動速度が低下するため、副帯電工程で供給されたキャリアとの結合確率が低下してしまう。そのため、第1除電工程で発生したキャリアが主帯電工程時及び主帯電工程後に高電界がかかった際に、主帯電工程で供給された電荷と結合してしまうため、主帯電工程後の表面電位が低下する場合がある。その結果、フォトメモリを消去できたとしても、第1除電工程で発生したキャリアが主帯電工程後の表面電位に影響し、現像器位置での電子写真感光体表面電位が低下するために所望の電位への制御が困難な場合がある。
【0062】
更に、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2と第1除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL1との差V2−VL1が、100V以上、300V以下となるように表面電位を制御することが好ましい。この理由を以下に示す。
【0063】
V2−VL1が、100Vよりも小さい場合、上述したように、副帯電工程時及び副帯電工程後に第1除電工程で生成されたキャリアの中で、再結合せずに残存したキャリアや膜中の欠陥準位にトラップされたキャリアにかかる電界が低くなってしまう。これにより、これらキャリアの移動速度が低下するため、副帯電工程で供給されたキャリアとの結合確率が低下してしまう。その結果、第1除電工程で発生したキャリアが主帯電工程時及び主帯電工程後に高電界がかかった際に、主帯電工程で供給された電荷を消去してしまうため、主帯電工程後の表面電位が低下する場合がある。逆に、V2−VL1が300Vよりも大きい場合、上述したように、副帯電工程後の電子写真感光体表面に多くの電荷が存在するため、フォトメモリ向上のためには第2除電工程時の除電光の光量を強くする必要がある。その結果、フォトメモリを消去できたとしても、第2除電工程で発生したキャリアが主帯電工程後の表面電位に影響し、現像器位置での電子写真感光体表面電位が低下するために所望の電位への制御が困難な場合がある。
【0064】
また、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2と第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL2との差V2−VL2が、70V以上、270V以下となるように表面電位を制御することが好ましい。この理由を以下に示す。
【0065】
V2が低いためにV2−VL2が、70Vよりも小さくなる場合、また、VL2が高いためにV2−VL2が、70Vよりも小さくなる場合であっても、第2除電工程にて発生するキャリア数が少ないため、主帯電工程後の表面電位に対する影響を少なくすることが可能となり、現像器位置での電子写真感光体表面電位を更に容易に所望の電位に制御することが可能となる。しかし、第2除電工程にて発生するキャリア数が少ないため、第2除電工程後に静電潜像形成工程の露光部と非露光部とのキャリア密度の差を更に小さくできない場合がある。そのため、第1除電工程後のフォトメモリが第2除電工程により除電しても更に良化しない場合がある。
【0066】
逆に、V2が高いためにV2−VL2が、270Vよりも大きくなる場合、また、VL2が低いためにV2−VL2が、270Vよりも大きくなる場合であっても、第2除電工程にて発生するキャリア数が多いため、第2除電工程後に静電潜像形成工程の露光部と非露光部とのキャリア密度の差を更に小さくすることが可能となり、フォトメモリは更に良くなる。しかし、第2除電工程で発生したキャリアが主帯電工程後の表面電位に影響し、現像器位置での電子写真感光体表面電位が低下するために所望の電位への制御が困難な場合がある。
【0067】
これらのため、副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位V2と第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位VL2との差V2−VL2が、70V以上、270V以下となるように表面電位を制御することが好ましい。
【0068】
(本発明に関るアモルファスシリコン電子写真感光体)
本発明では、基体上に少なくともシリコン原子を母体とした非晶質材料で構成された光導電層を有する電子写真感光体を用いることを特徴としている。図3に本発明に好適なa−Si電子写真感光体の模式的な概略断面図を示す。
【0069】
図3(a)に示す電子写真感光体は、円筒状基体301の上に、水素原子またはハロゲン原子を構成要素として含むアモルファスシリコン(以下、a−Si:H,Xとも表記する。)からなる光導電層302が設けられている。
【0070】
図3(b)に示す電子写真感光体は、円筒状基体301の上に、a−Si:H,Xからなる光導電性を有する光導電層302と、アモルファス炭化シリコン又はアモルファス炭素の表面層303が設けられて構成されている。
【0071】
図3(c)に示す電子写真感光体は、円筒状基体301の上に、窒素原子、酸素原子、およびホウ素原子を含むアモルファスシリコン電荷注入阻止層304と、a−Si:H,Xからなる光導電性を有する光導電層302と、アモルファス炭化シリコン又はアモルファス炭素の表面層303が設けられて構成されている。光導電層302と表面層303の界面に関しては、連続的に変化させ界面反射を抑制する界面制御を施しても良い。
【0072】
図3(d)に示す電子写真用感光体は、円筒状基体301の上に、光導電層302が設けられている。この光導電層はa−Si:H,Xからなる電荷発生層305及び電荷輸送層306とからなり、その上にアモルファス炭化シリコン又はアモルファス炭素の表面層303が設けられている。電荷発生層305と表面層303の界面に関しては、連続的に変化させ界面反射を抑制する界面制御を施しても良い。
【0073】
(実施例)
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0074】
(電子写真感光体作製)
アルミニウム製の円筒状基体(直径108mm、長さ358mm)をダイヤモンドミラクルバイトにより鏡面加工し、円筒状基体の表面を洗浄した。次に、図4に示すプラズマ処理装置を用いて、表1に示す条件で洗浄後の円筒状基体上に電荷注入阻止層、光導電層、表面層の順に成膜を行い、正帯電用a−Si電子写真感光体を作製した。このとき、13.56MHzの高周波電力を出力可能な高周波電源を用いた。
【0075】
【表1】

【0076】
(電子写真装置を用いた評価装置)
評価装置として、キヤノン製デジタル電子写真装置iR−8500をベースとし、電子写真感光体の回転数変更時に通常の画像出力が可能に改造されたiR−8500改造機を用いた。
【0077】
iR−8500改造機の構成を、図5の模式的概略図に示す様に、a−Si電子写真感光体501の周囲に、電子写真感光体501の回転方向に対し、副帯電器503、第2除電器505、主帯電器502、静電潜像手段508、現像器514、転写帯電器506、分離帯電器507、第1除電器504、クリーナー511がこの順に配置されている。更に、電子写真感光体501の表面電位を測定するために、主帯電器502の下流に第1電位センサー515が、第1除電器504の下流に、第3電位センサー517が、副帯電器503の下流に第2電位センサー516が、第2除電器505の下流に第4電位センサー518が設けられている。
【0078】
クリーナー511は、マグネットローラー509とクリーニングブレード510で構成されている。また、電子写真感光体表面のトナーを紙等の記録媒体となる転写材112に移行させるための転写帯電器106と、転写材112へとトナーが移行した後、転写材112と電子写真感光体101を分離するための分離帯電器107と、が現像器514と第1除電器504との間に設けられている。
【0079】
転写材512は、搬送手段513により搬送される。
【0080】
ここで、主帯電工程で用いる主帯電器502及び副帯電器503は、ワイヤー1本のスコロトロンを用い、主帯電器502及び副帯電器503のワイヤー及びグリットに、それぞれ高圧電源を接続した。主帯電器502及び副帯電器503は、グリット電位を850Vとし、帯電器のワイヤーへ供給する電流を制御して感光体の表面電位を制御した。副帯電器503の配置は、副帯電器503のワイヤー位置が主帯電器502のワイヤー位置から電子写真感光体回転方向上流側に60°の位置に設置した。
【0081】
また、第1除電器504で用いる除電光源には、波長660nmのLEDを用い、第1除電器504の配置は、電子写真感光体回転方向上流側で主帯電器502のワイヤーから125°の位置に設置した。また、第2除電器505で用いる除電光源も、波長660nmのLEDを用い、第2除電器505の配置は、電子写真感光体回転方向上流側で主帯電器502のワイヤーから30°の位置に設置した。第1除電器503及び第2除電器504は、各々DC電源に接続され、LEDへの印加電圧を変更して除電光の光量を変化させた。
【0082】
更に、主帯電器502による主帯電工程後の電子写真感光体表面電位を測定する第1電位センサー515は、主帯電器502の電子写真感光体の回転方向下流側で主帯電器502のワイヤーから20°の位置に設置した。また、副帯電器503による副帯電工程後の電子写真感光体の表面電位を測定する第2電位センサー516は、電子写真感光体の回転方向上流側で主帯電器502のワイヤーから40°の位置に設置した。更に、第1除電器504による第1除電工程後の電子写真感光体の表面電位を測定する第3電位センサー517は、電子写真感光体の回転方向上流側で主帯電器502のワイヤーから110°の位置に設置されている。また、第2除電器505による第2除電工程後の電子写真感光体の表面電位を測定する第4電位センサー518は、電子写真感光体回転の方向上流側で主帯電器502のワイヤーから20°の位置に設置した。各電位センサーは、表面電位計(TREK社製、Model344)に接続され、電子写真感光体の表面電位が測定される。
【0083】
(実施例1)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体作製例で作製した電子写真感光体を設置し、PSを700mm/secとして画像を出力した。得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを後述の帯電性の評価方法1及びフォトメモリの評価方法1により評価した。このとき、評価結果を表2に示す。
【0084】
実施例1の画像出力条件を以下に示す。主帯電工程は、主帯電工程のワイヤー電流を1300μAで一定とした。副帯電工程は、副帯電工程のワイヤーへ供給する電流を制御して、副帯電工程後の電子写真感光体表面電位を200Vとした。
【0085】
第1除電工程で用いる除電光は、iR−8500でPSが450mm/sec時に2.5μJのエネルギーを基準とした。そして、PSに応じて電子写真感光体表面への照射エネルギーが一定となるように調整した。
【0086】
また、潜像形成工程で用いる半導体レーザーは、iR−8500でPSが450mm/sec時に主帯電工程後の感光体表面電位を400Vに設定し、半導体レーザー照射後に400Vから50Vにするために必要なエネルギーを基準とした。そして、PSに応じて電子写真感光体表面への照射エネルギーが一定となるように調整した。
【0087】
更に、第2除電工程で用いる除電光は、評価装置でPSが450mm/sec時に、主帯電工程後の電子写真感光体表面電位を400Vに設定し、第1除電工程で用いる除電光のエネルギーを2.5μJで除電した後、副帯電工程後の電子写真感光体表面電位を200Vに設定し、第1除電工程で用いる除電光照射後に200Vから30Vにするために必要なエネルギーを基準とした。そして、PSに応じて電子写真感光体表面への照射エネルギーが一定となるように調整した。
【0088】
(比較例1)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体製造例で作製した電子写真感光体を設置し、副帯電工程での帯電をoff及び第2除電工程の除電光の光量をoffにして、実施例1の条件で画像を出力した。得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを実施例1と同様に評価した。このとき、評価結果を表2に示す。
【0089】
(比較例2)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体製造例で作製した電子写真感光体を設置し、第2除電工程の除電光の光量をoffにして、実施例1の条件で画像を出力し、得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを実施例1と同様に評価した。このとき、評価結果は表2に示す。
【0090】
(比較例3)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体製造例で作製した電子写真感光体を設置し、副帯電工程での帯電をoffとし、第2除電工程の除電光の光量は実施例1で用いたLEDへの印加電圧に揃えて、実施例1の条件で画像を出力した。得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを実施例1と同様に評価した。このときの、評価結果を表2に示す。
【0091】
(帯電性の評価方法1)
評価する画像は、評価装置を23℃、45%の環境下に設置し、感光体ヒーターをoffにして出力した画像を用いて行った。
【0092】
帯電性の評価に用いたテストチャートは、全面が反射濃度1.1のA3黒色チャートを用い、以下に示す方法で実施した。
【0093】
テストチャートを原稿台におき、コピーをした時に得られたコピー画像の画像濃度を測定した。測定位置はA3のコピー画像中心付近で、反射濃度を5回測定し平均値を求めた。各条件で出力した画像から求めた反射濃度の平均値から、条件1に対する比率を求め比較した。画像濃度の測定は、画像濃度計(MacbethRD914)を用いて測定した。評価基準は次の通りであり、評価対象は、比較例1の電子写真装置を用いた評価装置条件でPSを450mm/secとした時の画像から求めた反射濃度の平均値とした。
◎‥比較例1の電子写真装置を用いた評価装置の条件でPS450mm/secで出力した画像より求めた反射濃度に対する比率が1.0以上で非常に良好。
○‥比較例1の電子写真装置を用いた評価装置の条件でPS450mm/secで出力した画像より求めた反射濃度に対する比率が0.9以上1.0未満で良好。
△‥比較例1の電子写真装置を用いた評価装置の条件でPS450mm/secで出力した画像より求めた反射濃度に対する比率が0.8以上0.9未満で実用上問題無し。
×‥比較例1の電子写真装置を用いた評価装置の条件でPS450mm/secで出力した画像より求めた反射濃度に対する比率が0.8未満で目視により濃度差が確認できる。
【0094】
(フォトメモリの評価方法1)
評価する画像は、評価装置を23℃、45%の環境下に設置し、感光体ヒーターをoffにして出力した画像を用いて行った。
【0095】
フォトメモリの評価に用いたテストチャートは、図6に示すような反射濃度0.8のハーフトーンで長辺の右端から20mmの位置の1ヶ所に、幅20mm×短辺の反射濃度1.1の黒線を有するA3のテストチャートで、以下に示す方法で評価を行った。
【0096】
テストチャートを、黒線側を原稿先端として原稿台におき、コピーをした時に得られたコピー画像の画像濃度を測定した。測定位置は、A3のコピー画像における電子写真感光体の長手方向に対応するコピー画像の中心位置aで、上記黒線部の中央部から電子写真感光体回転方向に300mm離れた位置b及び340mm離れた位置cを測定した。測定された、340mm位置の反射濃度に対する300mm位置の反射濃度の比率を求めて比較した。画像濃度の測定は、画像濃度計(MacbethRD914)を用いて測定した。評価基準は次の通りである。
【0097】
◎ : 340mm位置の反射濃度に対する300mm位置の反射濃度の比率が1.0以上1.05未満で非常に良好。
【0098】
○ : 340mm位置の反射濃度に対する300mm位置の反射濃度の比率が1.05以上1.10未満で良好。
【0099】
△ : 340mm位置の反射濃度に対する300mm位置の反射濃度の比率が1.10以上1.15未満で実用上問題無し。
【0100】
× : 340mm位置の反射濃度に対する300mm位置の反射濃度の比率が1.1 5以上、目視で濃度差が確認できる。
【0101】
【表2】

【0102】
表2の結果より、従来の電子写真プロセスである比較例1の構成でPSを速くすると、帯電電位の低下により画像濃度が低下し、フォトメモリによる画像濃度ムラの評価では反射濃度の比率が大きくなった。また、比較例2のように帯電工程を2ヶ所とした場合、PSが速くなっても帯電電位を十分確保できるために帯電性は良好であったが、フォトメモリによる画像濃度ムラの評価では反射濃度の比率が大きくなった。逆に、比較例3のように除電工程を2ヶ所とした場合は、PSが速くなっても十分な除電が行われるためフォトメモリによる画像濃度ムラが良好であったが、帯電電位の低下により画像濃度が低下してしまった。しかし、本発明の電子写真プロセスを用いて場合、PSを速くしても帯電電位が十分確保できるため帯電性は良好で、且つ、十分な除電が行われるためフォトメモリによる画像濃度ムラも良好であった。
【0103】
(実施例2)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体製造例で作製した電子写真感光体を設置し、表3の条件となるように副帯電工程の帯電器ワイヤーへ供給する電流を制御して画像を出力した。得られた画像について、帯電性は後述の帯電性の評価方法2により、またフォトメモリは実施例1と同様に評価した。このとき、評価結果は表5に示す。また、第1から第4電位センサーで測定した表面電位(V1、V2、VL1、VL2)及び、V2/V1、V2−VL2、V2−VL1、VL2−VL1の測定結果及び主帯電工程で帯電ワイヤーに供給される電流量I1(μA)を表4に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
実施例2の画像出力条件を以下に示す。全ての画像出力条件は、PSを700mm/secで一定とした。第1除電工程は、実施例1の基準に基づき調整を行った。第2除電工程は、表3の各条件において第2除電工程後の電位が30Vとなるように、LEDへの印加電圧を調整した。
【0106】
(帯電性の評価方法2)
主帯電工程での帯電時に必要な帯電ワイヤーに供給される電流量により、電子写真プロセスでの帯電性を評価した。評価基準は次の通りである。
○ ‥ 主帯電工程での帯電時に必要な帯電電流が1400μA以下で非常に良好。
△ ‥ 主帯電工程での帯電時に必要な帯電電流が1400μA〜1600μA以下で実用上問題無し。
× ‥ 主帯電工程で1600μAより大きい帯電電流が必要であり、帯電での消費電力が大きすぎる。
【0107】
【表4】

【0108】
表4より、副帯電工程での帯電電位V2を変化させたところ、PSが速い条件であっても主帯電工程での消費電力及びフォトメモリによる画像濃度ムラは良好であった。しかしながら、V2/V1を、0.2以上、0.8以下とすることによりフォトメモリによる画像濃度ムラが良くなった。更に、V2−VL2が、70V以上270V以下で、且つ、V2−VL1が、100V以上300V以下にすることにより、主帯電工程での消費電力及びフォトメモリによる画像濃度ムラともに最も良好となった。
【0109】
(実施例3)
電子写真装置を用いた評価装置に電子写真感光体製造例で作製した電子写真感光体を設置し、表5の条件となるように第2除電工程のLEDへの印加電圧を調整して画像を出力し、得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを実施例2と同様に評価した。このとき、評価結果は表7に示す。また、第1から第4電位センサーで測定した表面電位(V1、V2、VL1、VL2)及び、V2/V1、V2−VL2、V2−VL1、VL2−VL1の測定結果及び主帯電工程で帯電ワイヤーに供給される電流量I1(μA)を表7に示す。
【0110】
【表5】

【0111】
実施例3の画像出力条件を以下に示す。全ての画像出力条件は、PSを700mm/secで一定とする。また、副帯電工程は、副帯電工程後の電位が150Vとなるように副帯電工程の帯電器ワイヤーへ供給する電流を制御し、第1除電工程は、実施例1の基準に基づき調整を行った。
【0112】
(比較例4)
表6に示す条件以外は、実施例3と同様に画像を出力して得られた画像について、帯電性及びフォトメモリを実施例2と同様に評価した。このとき、評価結果は表7に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
【表7】

【0115】
表7より、第2除電工程後での表面電位VL2を変化させたところ、PSが速い条件であってもVL1<VL2であれば、主帯電工程での消費電力及びフォトメモリによる画像濃度ムラは良好であった。更に、V2−VL2が70V以上とすることによりフォトメモリによる画像濃度ムラが良くなり、VL2−VL1が10V以上60V以下とすることで主帯電工程での消費電力及びフォトメモリによる画像濃度ムラが最も良好となった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係わるa−Si電子写真感光体を用いた電子写真プロセスの模式的な概略説明図である。
【図2】本発明に係わるa−Si電子写真感光体を用いた電子写真プロセスで行われる電位制御の説明図である。
【図3】本発明に係わるa−Si電子写真感光体の層構成を模式的に示す概略断面図である。
【図4】RF帯を用いた高周波プラズマCVD法によるa−Si電子写真感光体製造装置の一例を示す模式的な概略構成図である。
【図5】実施例で用いたa−Si電子写真感光体を用いた電子写真プロセスの模式的な概略説明図である。
【図6】実施例で用いた画像濃度ムラの評価チャートである。
【図7】従来の電子写真感光体を用いた電子写真プロセスの模式的な概略説明図である。
【符号の説明】
【0117】
101、501、701 a−Si電子写真感光体
102、502、702 主帯電器
103、503 副帯電器
104、504、704 第1除電器
105、505 第2除電器
106、506、706 転写帯電器
107、507、707 分離帯電器
108、508、708 静電潜像手段
109、509、709 マグネットローラー
110、510、710 クリーニングブレード
111、511、711 クリーナー
112、512、712 転写材
113、513、713 搬送手段
114、514、714 現像器
300 電子写真感光体
301 円筒状基体
302 光導電層
303 表面層
304 電荷注入阻止層
305 電荷発生層
306 電荷輸送層
401 円筒状基体
402 反応容器
403 原料ガス導入管
404 ヒーター
405 基体保持部材
406 キャップ
407 マッチングボックス
408 高周波電源
515 第1電位センサー
516 第2電位センサー
517 第3電位センサー
518 第4電位センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上にシリコン原子を母体とする非晶質材料で構成された光導電層及び表面層を有する電子写真感光体の表面を帯電させる主帯電工程と、その後、前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、その後、前記静電潜像を除電する第1除電工程と、その後、前記電子写真感光体の表面を帯電させる副帯電工程と、
前記電子写真感光体の表面の除電を行う第2除電工程と、を順次繰り返すことで電子写真を形成する電子写真の形成方法であって、
前記第2除電工程で除電された前記電子写真感光体の表面の電位が、前記第1除電工程で除電された前記電子写真感光体の表面の電位より高いことを特徴とする電子写真の形成方法。
【請求項2】
前記第2除電工程後の前記電子写真感光体の表面電位をVL2(V)とし、前記第1除電工程後の前記電子写真感光体の表面電位をVL1(V)とした時、
V2−VL2が、70V以上、270V以下で、且つ、V2−VL1が、100V以上、300V以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真の形成方法。
【請求項3】
VL2−VL1が、10V以上、60V以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真の形成方法。
【請求項4】
前記主帯電工程後の前記電子写真感光体の表面電位をV1(V)とし、前記副帯電工程後の前記電子写真感光体の表面電位をV2(V)とした時、V2/V1が、0.2以上、0.8以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−192697(P2009−192697A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31721(P2008−31721)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】