説明

電子写真感光体、それを用いた電子写真方法、電子写真装置及びプロセスカートリッジ

【課題】高耐久性を有し、かつ残留電位上昇或いは帯電低下による残像などの画像劣化を抑制し、長期間の繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる感光体の提供。
【解決手段】導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(a)で表される化合物の少なくとも一種を含有する。


(式中、R、Rは、アルキル基、芳香族炭化水素基を表し、何れかは芳香族炭化水素基である。また、R、Rは互いに結合して窒素を含む複素環基を形成してもよい。Arは芳香族炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久性を有し、かつ高画質化を実現した電子写真感光体に関する。また、該感光体を使用した電子写真方法、電子写真装置及び電子写真装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。更に、それらは高速化技術との融合によりフルカラー印刷が可能なレーザープリンター或いはデジタル複写機へと応用されてきている。そのような背景から、要求される感光体の機能としては、高画質化と高耐久化を両立させることが特に重要な課題となっている。
これらの電子写真方式のレーザープリンターやデジタル複写機等に使用される感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から広く応用されている。有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダ−に代表される顔料分散型、そして電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られている。
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され電荷を生成する。それによって発生した電荷が電荷発生層及び電荷輸送層の界面で電荷輸送層に注入され、更に電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。
しかし、有機系の感光体は、繰り返し使用によって膜削れが発生し易く、感光層の膜削れが進むと、感光体の帯電電位の低下や光感度の劣化、感光体表面のキズなどによる地汚れ、画像濃度低下或いは画質劣化が促進される傾向が強く、従来から感光体の耐摩耗性が大きな課題として挙げられていた。更に、近年では電子写真装置の高速化或いは装置の小型化に伴う感光体の小径化によって、感光体の高耐久化がより一層重要な課題となっている。
【0003】
一方、近年、市場の高画質化要求に伴い、小径で球形のトナーが注目されている。しかしながら、このような小径で且つ球形のトナーにおいては、感光体上での転性が大きいため、クリーニング不良などを引き起こし易く、トナーフィルミングや融着などに起因した画像劣化の要因となっており、重要な課題となっている。
このような課題を解決するため、例えば特許文献1〜2等に開示されているように潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を感光体の表面層に含有させる表面離型効果を狙った感光体表面摩擦係数の低減による手法は初期的に効果的である。しかしながら、これらにおいては、クリーニングシステムやトナーなどの条件設定が必要で、感光体長寿命化に伴うこれらの周辺部材の劣化やバラツキなどに対しては、繰返使用による表面離型効果の維持の点で不十分なものであった。
また、特許文献3に開示された発明では、感光層の表面層に潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン粉体を含有し、かつ、特定構造式の電荷輸送物質を含有することで摺擦による表面の摩耗やひっかき傷の発生等に対して耐久性を有し、かつ、画像ボケのない高品位の画像が得られる高耐久性を有する電子写真感光体を提供でき、クリ−ニング性が良好で感光体表面層へのトナ−付着のない高耐久性を有する電子写真感光体を提供できるとしている。しかし、フッ素樹脂微粒子を大量添加しているため、この文献に示された化合物では十分な効果が期待できない。またそれ自体の酸化還元電位が低くて変質し易いし、電荷トラップを作り易く残留電位の上昇を引き起こし易い。
【0004】
【特許文献1】特開平5−45920号公報
【特許文献2】特開2000−19918号公報
【特許文献3】特開平8−160648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高耐久性を有し、かつ残留電位上昇或いは帯電低下による残像などの画像劣化を抑制し、長期間の繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる感光体を提供することにある。また、それらの感光体を用いることにより、感光体の交換が不要で、かつ高速印刷或いは感光体の小径化に伴う装置の小型化を実現し、更に繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる電子写真方法、電子写真装置、並びに電子写真用プロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、次の1)〜12)の発明によって解決される。
1) 導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(a)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化4】

(式中、R、Rは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R、Rの何れかは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む置換若しくは無置換の複素環基を形成してもよい。Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
2) 導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(b)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化5】

(式中、R、Rは、芳香族炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む複素環基を形成してもよい。Ar、Arは置換若しくは無置換の芳香環基を表す。l、mはそれぞれ0〜3の整数を表す。但し、l、mが同時に0となることはない。nは1又は2の整数を表す。)
3) 導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(c)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化6】

(式中、R、Rは、芳香族炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む複素環基を形成してもよい。Ar、Arは置換若しくは無置換の芳香環基を表す。l、mはそれぞれ0〜3の整数を表す。但し、l、mが同時に0となることはない。nは1又は2の整数を表す。)
4) 1)〜3)の何れかに記載の電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことを特徴とする電子写真方法。
5) 1)〜3)の何れかに記載の電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行い、かつ画像露光の際にはLD或いはLEDによって感光体上に静電潜像の書き込みを行うことを特徴とするデジタル方式の電子写真方法。
6) 画像形成に使用されるトナーの形状が球状であることを特徴とする4)又は5)記載の電子写真方法。
7) 電子写真感光体表面に接触する当接部材が、帯電ローラー、クリーニングブレード、クリーニングブラシ、中間転写ベルト、及び感光体表面のフッ素樹脂微粒子を変形及び伸張させることのみを目的とする部材から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする4)〜6)の何れかに記載の電子写真方法。
8) 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び1)〜3)の何れかに記載の電子写真感光体を具備することを特徴とする電子写真装置。
9) 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び1)〜3)の何れかに記載の電子写真感光体を具備し、画像露光手段としてLD或いはLEDを使用することにより感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とするデジタル方式の電子写真装置。
10) 複数の電子写真感光体、帯電手段、現像手段、転写手段を有するタンデム型であることを特徴とする8)又は9)記載の電子写真装置。
11) 電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有し、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする8)又は9)記載の電子写真装置。
12) 帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、転写手段の少なくとも一つと1)〜3)の何れかに記載の電子写真感光体とを具備する電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
電子写真感光体の高耐久化及び低表面摩擦係数を実現するために、感光体の最表面層にフッ素樹脂微粒子を含有させることが有効であることは知られているが、高安定な低表面摩擦係数の持続性を維持するためには、体積分率で20%以上のフッ素樹脂微粒子が必要である。通常、このような構成の層を形成しようとした場合、該フッ素樹脂微粒子の粒子間の相互作用が大きくなるため、分散液中でのフッ素樹脂微粒子の微細分散化が困難となり、得られる塗膜中の二次凝集粒子(二次粒子)が増加してしまう。このような二次粒子は、あまり巨大なものが塗膜中に存在すると、塗膜表面が荒れる原因となり、クリーニング不良やトナー画像の乱れを引き起こす。また、レーザー光が凝集体上で散乱されて、露光潜像の乱れ、電位コントラスト不足を引き起こし、異常画像の原因となる。
一方、一次粒子にまで均一に分散されると、上記のような不具合は解消されるが、その反面、フッ素樹脂微粒子が塗膜表面に露出している部分が小さくなり、結果としてトナーとフッ素樹脂微粒子との接触面積が減少してしまい、感光体の低表面摩擦係数化に対する効果が不十分となってしまう。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、トナーのクリーニング性を考慮すると、フッ素微粒子がある範囲において局在化して存在し、且つ塗膜表面のある程度の面積を被覆している必要があることを見出した。即ち、フッ素微粒子の二次粒子径の大きさが0.3〜4μmのものが、感光体表面を面積比で10〜60%被覆している状態が最も好ましいことを見出した。
しかしながら、このような高濃度でフッ素樹脂微粒子の二次粒子を有する構成の感光体においては、使用条件により帯電性が低下してメモリー効果(残像)等の問題を引き起こす可能性があり、またオゾンやNOxなどの酸化性ガスが吸着し易く、場合によっては、最表面の低抵抗化を招き、画像流れ等の問題を引き起こす可能性があった。
そこで、更に検討を進めた結果、前記一般式(a)〜(c)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種を含有させることで、メモリー効果及び酸化性ガスに対する課題を解決できることを見出した。その理由については現時点では明らかになっていないが、不均一な粒子構造内部に蓄積され易いラジカル物質の効果的な生成抑制を行っているものと推測される。一方、酸化性ガスに対しては、構造内に含まれる置換アミノ基が有効なラジカル物質生成抑制を行っているものと推測される。また、上記化合物は電荷輸送能力も有していることから、フッ素樹脂粒子による二次凝集粒子内部での電荷トラップを抑制しているのではないかと考えられる。
【0009】
前記一般式(a)〜(c)で表される化合物の添加量は、結着樹脂に対して0.01〜150重量%が好ましい。少なすぎると酸化性ガスに対する耐性が不足し、多すぎると膜強度が低下し耐摩耗性が劣化する。
前記一般式(a)〜(c)中のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びウンデシル基などを挙げることができる。また芳香環基としてはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びピレンなど芳香族炭化水素環からなる1価〜6価の芳香族炭化水素基、並びにピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール、カルバゾールなどの芳香族複素環からなる1価〜6価の芳香族複素環基が挙げられる。また、これらの環の置換基としては、上記アルキル基の具体例で挙げたもの、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子、及び芳香環基などが挙げられる。更に、R,Rが互いに結合して窒素原子を含む複素環基を形成した場合の具体例としては、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピロリニル基等が挙げられる。その他の窒素原子を含む複素環基としては、N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、インドール、キノリンなどが挙げられる。
以下、表1〜表3に、一般式(a)〜(c)で表される化合物の好ましい例を挙げる。但し、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0010】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【0011】
【表2−1】

【表2−2】

【0012】
【表3−1】

【表3−2】

【0013】
以下、本発明の電子写真感光体の層構成例について図面を参照しつつ説明する。
図1の電子写真感光体は、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33、及び保護層39がこの順に積層された構成を有する。保護層39はフッ素樹脂微粒子を含有する。
図2の電子写真感光体は、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37、及び保護層39がこの順に積層された構成を有する。保護層39はフッ素樹脂微粒子を含有する。
図3の電子写真感光体は、導電性支持体31上に、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35、及び保護層39がこの順に積層された構成を有する。保護層39はフッ素樹脂微粒子を含有する。
【0014】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、或いは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化した後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉;導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
【0015】
また、結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けたものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0016】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合(図2、図3の場合)から述べる。
電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層35には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられる。これら電荷発生物質は単独で用いても2種以上混合して用いても構わない。
電荷発生層35は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂と共に適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0017】
必要に応じて用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前、分散後のどちらでも構わない。
溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロルメタン、ジクロルエタン、モノクロルベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層35は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の種々の添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0018】
電荷輸送層37は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要に応じて単独或いは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。
これらの電荷輸送物質は単独で、又は2種以上混合して用いられる。
【0019】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は、解像度・応答性の点から25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロルメタン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0020】
電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能と結着樹脂としての機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これらの高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、次の一般式(I)〜(X)で表される高分子電荷輸送物質が好ましい。
一般式(I)
【化7】

〔式中、R,R,Rはそれぞれ独立して置換若しくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、Rは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基、R,Rは置換若しくは無置換のアリール基、o,p,qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k,jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、又は下記一般式(I−1)、(I−2)で表される2価基を表す。〕
一般式(I−1)
【化8】

〔式中、R101,R102は各々独立して置換若しくは無置換のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表す。l,mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(Zは脂肪族の2価基)を表す。〕
一般式(I−2)
【化9】

(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103,R104は置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)を表す。ここで、R101とR102,R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
【0021】
一般式(II)
【化10】

〔式中、R,Rは置換若しくは無置換のアリール基、Ar,Ar,Arは同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0022】
一般式(III)
【化11】

〔式中、R,R10は置換若しくは無置換のアリール基、Ar,Ar,Arは同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0023】
一般式(IV)
【化12】

〔式中、R11,R12は置換若しくは無置換のアリール基、Ar,Ar,Arは同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0024】
一般式(V)
【化13】

〔式中、R13,R14は置換若しくは無置換のアリール基、Ar10,Ar11,Ar12は同一或いは異なるアリレン基、X,Xは置換若しくは無置換のエチレン基、又は置換若しくは無置換のビニレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0025】
一般式(VI)
【化14】

〔式中、R15,R16,R17,R18は置換若しくは無置換のアリール基、Ar13,Ar14,Ar15,Ar16は同一或いは異なるアリレン基、Y,Y,Yは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し、同一でも異なっていてもよい。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0026】
一般式(VII)
【化15】

〔式中、R19,R20は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基を表し,R19とR20は互いに結合して環を形成していてもよい。Ar17,Ar18,Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0027】
一般式(VIII)
【化16】

〔式中、R21は置換若しくは無置換のアリール基、Ar20,Ar21,Ar22,Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0028】
一般式(IX)
【化17】

〔式中、R22,R23,R24,R25は置換若しくは無置換のアリール基、Ar24,Ar25,Ar26,Ar27,Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
【0029】
一般式(X)
【化18】

〔式中、R26,R27は置換若しくは無置換のアリール基、Ar29,Ar30,Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,j,nは、一般式(I)の場合と同じである。〕
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等、従来の塗工方法を用いることができる。
【0030】
次に感光層が単層構成の場合(図1の場合)について述べる。
この場合、上述した電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。感光層33は、電荷発生物質、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。勿論、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、更に好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロルエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0031】
本発明の感光体においては、導電性支持体31と感光層の間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。また本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできるし、Alを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法により設けたものも良好に使用できる。更に、この他に公知のものを用いることもできる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0032】
本発明の感光体においては、感光層保護及び低表面摩擦係数維持の目的で、感光層の上に保護層39を設ける。保護層39に使用される結着樹脂としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等が挙げられる。フッ素樹脂微粒子の分散性、残留電位、塗膜欠陥の点から、特にポリカーボネート或いはポリアリレートが有効かつ有用である。
また、保護層には耐摩耗性を向上する目的でフィラーを添加してもよい。フィラーとしては有機性フィラーと無機性フィラーがあるが、フィラーの硬度の点から無機性フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。このような無機性フィラ−材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをド−プした酸化錫、錫をド−プした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。
【0033】
これらのフィラーは少なくとも1種の表面処理剤で表面処理することがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化或いは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を適宜使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、或いはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、或いはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことにより、その影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30重量%が適しており、5〜20重量%がより好ましい。表面処理量が3重量%よりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また30重量%よりも多いと残留電位の著しい上昇を引き起こす。
【0034】
本発明に用いることができるフッ素樹脂微粒子としては、例えば四フッ化エチレン樹脂微粒子、パーフロロアルコキシ樹脂微粒子、三フッ化塩化エチレン樹脂微粒子、六フッ化エチレンプロピレン樹脂微粒子、フッ化ビニル樹脂微粒子、フッ化ビニリデン樹脂微粒子、フッ化二塩化エチレン樹脂微粒子及びこれ等の共重合体等が挙げられ、これ等の中から一種或いはそれ以上が適宜選択されるが、特に四フッ化エチレン樹脂微粒子、パーフロロアルコキシ樹脂微粒子が好ましい。粒径は0.1〜10μm、好ましくは0.05〜2.0μmが使用可能であり、必要に応じて後述の分散処理によって粒径調整も可能である。
フッ素樹脂微粒子は、二次粒子径0.3〜4μmのものが感光体表面を面積比で10〜60%被覆している必要があり、好ましくは二次粒子径0.3〜1.5μmである。被覆率が10%未満では、ミクロに見たときの低表面摩擦係数が不十分となり、被覆率が60%を超えると、レーザー光の透過率が著しく低下して、静電潜像が形成困難になってしまう。また、二次粒子の大きさが4μmを超えると、前述のトナー接触面不足が生じたり、レーザー光の散乱による異常画像の原因となる。
【0035】
更に、繰り返し使用においても低表面摩擦係数を持続するために、フッ素樹脂微粒子を体積分率で20〜60%含有させる。好ましくは、30〜50%である。フッ素樹脂微粒子は表面に分散して露出していることが好ましい。これにより、低μのために摩耗量が著しく低減した感光体においても、フッ素樹脂微粒子の必要十分な量が延展され続けるため、低表面摩擦係数、且つ高耐久が発現される。体積分率で20%未満では、表面近傍は前述の被覆率を確保できていても、摩耗によって保護層内部が表面に露出した場合に、低表面摩擦係数を発現しなくなってしまう。また、体積分率で60%を超えると、結着樹脂の量が減少するので、塗膜の機械的強度が著しく低下してしまい、感光体寿命が減少してしまう。更に、含有量が多いとフッ素樹脂微粒子同士の接触が多くなり、凝集した2次粒子も増加し、粒径も増大し易くなるため好ましくない。
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロルメタン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなど、電荷輸送層37で使用される全ての溶剤を用いることができる。但し、分散時には粘度が高い溶剤が好ましいが、塗工時には揮発性が高い溶剤が好ましい。これらの条件を満たす溶剤がない場合には、各々の物性を有する溶剤を2種以上混合させて使用することが可能であり、フッ素樹脂微粒子の分散性に対して大きな効果を有する場合がある。
また、保護層に電荷輸送層37で挙げた低分子電荷輸送物質或いは高分子電荷輸送物質を添加することは、残留電位の低減及び画質向上に対して有効かつ有用である。
【0036】
フッ素樹脂微粒子は、少なくとも有機溶剤と共に、アトライター、サンドミル、振動ミル、超音波などの従来方法を用いて分散することができる。中でも外界からの不純物の混入が少ないボールミル又は振動ミルによる方法が分散性の点からより好ましい。分散メディアとしては、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等の種々のメディアを使用することができるが、フッ素樹脂微粒子の分散性への効果の点から特にジルコニアが好ましい。場合によっては、これらの分散方法を組み合わせることで更に分散性が高まることがある。また、フッ素樹脂微粒子の分散性を制御する目的で分散剤を樹脂に添加してもよい。このような分散剤としては、フッ素系の界面活性剤、グラフトポリマー、ブロックポリマー及びカップリング剤等が使用できる。
保護層の形成法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の従来方法を用いることができるが、特に塗膜の均一性の面からスプレーコートがより好ましい。更に、保護層の必要膜厚を一度で塗工して保護層を形成することも可能であるが、2回以上重ねて塗工し、保護層を多層にする方が膜中におけるフッ素樹脂微粒子の均一性の面からより好ましい。保護層の厚さは自由に設定可能であるが、保護層膜厚が著しく増加すると、画質が若干劣化する傾向が認められるため、必要最小限度の膜厚に設定することが好ましい。0.1〜10μm程度が適当である。
本発明の感光体においては、感光層と保護層の間に中間層を設けることも可能である。中間層には、一般に結着樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0037】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法及び電子写真装置について説明する。
図4は、本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図4において、感光体1には少なくとも感光層が設けられ、最表面層にフィラーを含有する。感光体1はドラム状の形状をしているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャー3、転写前チャージャー7、転写チャージャー10、分離チャージャー11、クリーニング前チャージャー13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等は、図4に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、或いは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0038】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14及びクリーニングブラシ15により感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0039】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体に接触して摺擦する当接部材を具備させることができる。加圧された接触部材としては、フッ素樹脂微粒子の露出部分の摺擦を目的とした接触部材を設けても良いし、帯電ローラーなどの接触帯電部材、クリーニングブレード、クリーニングブラシなどのクリーニング部材、転写ベルト、中間転写ベルトなどの転写部材など一般的に画像形成装置に用いられる部材に加圧する機構を設けたようなものでもよい。ここでは、クリーニングブラシ15によって感光体表面を摺擦する場合を例に挙げて説明する。クリーニングブレードは、感光体表面を略均等な圧力で感光体表面を押しながらほぼ全面を摺擦し、フッ素樹脂微粒子を均等に表面に付着させるという効果が大きく好ましい。
クリーニングブレードによってフッ素樹脂を被覆させる場合、クリーニングブレードの各種条件として、ブレード当接角10〜30度、当接圧力0.3〜4g/mm、ブレードとして用いるウレタンゴムのゴム硬度60〜70度、反発弾性30〜70%、ヤング率30〜60kgf/cm、厚さ1.5〜3.0mm、自由長7〜12mm、ブレードエッジの感光体への食い込み量0.2〜2mmの範囲が好適である。
【0040】

図5には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は少なくとも感光層を有し、更に最表面層にフィラーを含有しており、駆動ローラ22a,22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、転写チャージャ25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、クリーニングブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図5においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、他の実施形態も可能であることは言うまでもない。例えば、図5において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に、転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込んでもよいが、プロセスカートリッジの形でそれらの装置内に組み込んでもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多種多様であるが、一般的な例として、図6に示すものが挙げられる。感光体16は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、かつ最表面層にフィラーを含有する。
【0041】
更に、本発明を適用したフルカラー画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。図において、潜像担持体である感光体56は、図中反時計回りに回転駆動されながら、その表面がコロトロンやスコロトロンなどを用いる帯電チャージャ53によって一様帯電させられた後、図示しないレーザ光学装置から発せられるレーザ光Lの走査を受けて静電潜像を担持する。この走査はフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報に基づいてなされるため、感光体ドラム56上にはイエロー、マゼンタ、シアン又はブラックという単色用の静電潜像が形成される。感光体ドラム56の図中左側には、リボルバ現像ユニット50が配設されている。これは、回転するドラム状の筺体の中にイエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器を有しており、回転によって各現像器を感光体ドラム56に対向する現像位置に順次移動させる。なお、イエロー現像器、マゼンタ現像器、シアン現像器、ブラック現像器は、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを付着せしめて静電潜像を現像するものである。感光体ドラム56上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の静電潜像が順次形成され、これらはリボルバ現像ユニット50の各現像器によって順次現像されてイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像となる。
【0042】
上記現像位置よりも感光体ドラム56の回転下流側には中間転写ユニットが配設されている。これは、張架ローラ59a、転写手段たる中間転写バイアスローラ57、2次転写バックアップローラ59b、ベルト駆動ローラ59cによって張架している中間転写ベルト58を、ベルト駆動ローラ59cの回転駆動によって図中時計回りに無端移動させる。感光体ドラム56上で現像されたイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像は、感光体ドラム56と中間転写ベルト58とが接触する中間転写ニップに進入する。そして中間転写バイアスローラ57からのバイアスの影響を受けながら、中間転写ベルト58上に重ね合わせて中間転写されて4色重ね合わせトナー像となる。
回転に伴って中間転写ニップを通過した感光体ドラム56表面は、ドラムクリーニングユニット55によって転写残トナーがクリーニングされる。ドラムクリーニングユニット55は、クリーニングバイアスが印加されるクリーニングローラによって転写残トナーをクリーニングするものであるが、ファーブラシ、マグファーブラシ等からなるクリーニングブラシや、クリーニングブレードなどを用いるものであってもよい。
転写残トナーがクリーニングされた感光体ドラム56表面は、除電ランプ54によって除電される。除電ランプ54には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などが用いられている。また、上記レーザ光学装置の光源には半導体レーザが用いられている。これら発せられる光については、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターにより、所望の波長域だけを用いるようにしてもよい。
【0043】
一方、図示しない給紙カセットから送られてきた転写紙60を2つのローラ間に挟み込んでいるレジストローラ対61は、転写紙60を中間転写ベルト58上の4色重ね合わせトナー像に重ね合わせ得るタイミングで上記2次転写ニップに向けて送り込む。中間転写ベルト58上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写ニップ内で紙転写バイアスローラー63からの2次転写バイアスの影響を受けて転写紙60上に一括して2次転写される。この2次転写により転写紙60上にはフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙60は、転写ベルト62によって搬送ベルト64に送られる。搬送ベルト64は、転写ユニットから受け取った転写紙60を定着ユニット65内に送り込む。定着ユニット65は、送り込まれた転写紙60を加熱ローラとバックアップローラとの当接によって形成された定着ニップに挟み込みながら搬送する。転写紙60上のフルカラー画像は、加熱ローラからの加熱や、定着ニップ内での加圧力の影響を受けて転写紙60上に定着せしめられる。
なお、図示を省略しているが、転写ベルト62や搬送ベルト64には、転写紙60を吸着させるためのバイアスが印加されている。また、転写紙60を除電する紙除電チャージャや、各ベルト(中間転写ベルト58、転写ベルト62、搬送ベルト64)を除電する3つのベルト除電チャージャが配設されている。また、中間転写ユニットは、ドラムクリーニングユニット55と同様の構成のベルトクリーニングユニットも備えており、これによって中間転写ベルト58上の転写残トナーをクリーニングする。
【0044】
図8は、本実施形態に係る画像形成装置の変形例である。この装置は、中間転写ベルト87を有するタンデム方式の画像形成装置であり、感光体ドラム80を各色で共有させるのではなく、各色用の感光体ドラム80Y、80M、80C、80Bkを備えている。また、ドラムクリーニングユニット85、除電ランプ83、ドラムを一様帯電せしめる帯電ローラ84も、各色用のものを備えている。なお、図7に示したプリンタではドラム一様帯電手段として帯電チャージャ53を設けていたが、この装置では帯電ローラ84を設けている。
タンデム方式では、各色の潜像形成や現像を並行して行うことができるため、リボルバ式よりも画像形成速度を遙かに高速化させることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、高耐久性を有し、かつ残留電位上昇或いは帯電低下による残像などの画像劣化を抑制し、長期間の繰り返し使用に対しても高画質画像が安定に得られる感光体を提供できる。また、それらの感光体を用いることにより、感光体の交換が不要で、かつ高速印刷或いは感光体の小径化に伴う装置の小型化を実現し、更に繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる電子写真方法、電子写真装置、並びに電子写真用プロセスカートリッジを提供できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。なお、「部」はすべて重量部である。
【0047】
実施例1
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布したのち乾燥し、膜厚3.5μmの下引き層、膜厚0.2μmの電荷発生層、膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。
◎下引き層塗工液
・二酸化チタン粉末(タイベールCR−EL、石原産業製):400部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業製)
:65部
・アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50、大日本インキ化学工業製)
:120部
・2−ブタノン:400部
◎電荷発生層塗工液
・下記〔化19〕のビスアゾ顔料:12部
・ポリビニルブチラール:5部
・2−ブタノン:200部
・シクロヘキサノン:400部
【化19】

◎電荷輸送層塗工液
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):8部
・下記〔化20〕の電荷輸送物質:10部
・テトラヒドロフラン:100部
【化20】

更に、電荷輸送層上に、下記組成の保護層塗工液を高速液衝突分散装置(装置名:アルティマイザーHJP−25005、スギノマシン社製)において、100MPa圧力下、30分間循環し、その後、超音波を10分間照射して調整し、スプレー塗工[スプレーガン:ピースコンPC308、オリンポス社製、エア圧:2kgf/cm]を行い、130℃60分間乾燥して約5μmの保護層を形成し、電子写真感光体1を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:5.5部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製):1.0部
・例示化合物4:0.4部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):4部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0048】

保護層塗工液を下記組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体2を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:3.3部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製)1.0部
・例示化合物4:0.4部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):6.4部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0049】
実施例3
保護層塗工液を下記組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体3を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:7.4部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製)1.0部
・例示化合物4:0.4部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):2.3部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0050】
比較例1
保護層塗工液を下記組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして比較用電子写真感光体1を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:3.0部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製)1.0部
・例示化合物4:0.4部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):6.7部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0051】
比較例2
保護層塗工液を下記組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして比較用電子写真感光体2を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:7.8部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製)1.0部
・例示化合物4:0.4部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):1.9部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0052】
比較例3
保護層塗工液を下記組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして比較用電子写真感光体3を作製した。
◎保護層塗工液
・パーフロロアルコキシ樹脂粒子(MPE−056、三井フロロケミカル製)
:5.5部
・分散助剤(モディパーF210、日本油脂製)1.0部
・ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製):4.2部
・テトラヒドロフラン:200部
・シクロヘキサノン:60部
【0053】
実施例4
保護層塗工液中のパーフロロアルコキシ樹脂粒子をテトラフロロエチレン樹脂粒子(ルブロンL−2、ダイキン製)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体4を作製した。
【0054】
実施例5〜10
保護層塗工液中の例示化合物4を表4に示した化合物に変更した点以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体5〜10を作製した。
【0055】
比較例4
保護層塗工液中の例示化合物4を下記〔化21〕の化合物に変更した点以外は、実施例1と同様にして、比較用電子写真感光体4を作製した。
【化21】

【0056】
比較例5
保護層塗工液中の例示化合物4を下記〔化22〕の化合物に変更した点以外は、実施例1と同様にして、比較用電子写真感光体5を作製した。
【化22】

【0057】
実施例11
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体11を作製した。
【0058】
実施例12
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体12を作製した。
【0059】
実施例13
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体13を作製した。
【0060】
比較例6
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、比較例1と同様にして比較用電子写真感光体6を作製した。
【0061】
比較例7
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、比較例2と同様にして比較用電子写真感光体7を作製した。
【0062】
実施例14
保護層塗工液中の例示化合物4を例示化合物1−1に変えた点以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体14を作製した。
【0063】
実施例15〜24
保護層塗工液中の例示化合物4を表5に示した化合物に変更した点以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体15〜24を作製した。
【0064】
<トナー製造例1>
(1)単量体組成物の作製
・スチレンモノマー 70部
・n−ブチルメタクリレート 30部
・ポリスチレン 5部
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩 2部
・カーボンブラック 6部
上記の重合性単量体混合物をボールミルで24時間分散混合して単量体組成物を調製した。
(2)造粒、重合
攪拌機、温度計、不活性ガス導入管、及び細孔径110,000Å、細孔容積0.42cc/g、10φ×50mmの多孔質ガラス管を備えたフラスコに、2%ポリビニルアルコール水溶液400mlをとり、窒素ガスを送りながら室温で攪拌を行い、反応容器中の酸素を窒素置換した。
次いで、(1)の単量体組成物113gにアゾビスイソブチルニトリル1.56gを加えて攪拌溶解した後、ポンプを用いて多孔質ガラス管を通過させてポリビニルアルコール水溶液中に加え、次いで、このポリビニルアルコールと単量体組成物の混合物を、前記ポンプと多孔質ガラス管を用いて約120ml/minの割合で2時間循環させた後、内温を70℃とし8時間重合させた。
その後、室温まで冷却し、一晩静置した後、上澄液を除き水を加えて1時間攪拌し、次いで濾過、乾燥してトナーを得た。このトナーの粒子径をコールターカウンターで測定したところ、平均粒子径8.5μmで5〜0μm径の範囲にある粒子は全体の95%であり極めて狭い粒度分布であった。
【0065】
<評価例1>
トナー製造例1で得られたトナー粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、得られる投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である平均円形度を評価した。この値はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000により平均円形度として計測することができ、具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加え、試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlとして前記装置によりトナーの形状及び分布を測定することによって得られる。これまでの検討の結果、0.960以上のトナーが適正な濃度の再現性のある高精細な画像を形成するのに有効であることが分っており、より好ましくは平均円形度が0.980〜1.000である。トナー製造例1で作製したトナーの円形度は0.98であった。
【0066】
<評価例2>(二次粒子径、被覆面積比)
得られた電子写真感光体1〜24及び比較用電子写真感光体1〜7の表面の任意の観察点10点について、FE−SEM(S−4200形走査型電子顕微鏡、日立製作所社製)を用い、加速電圧2kVにおいて4000倍の表面を撮影し、得られたSEM写真を画像処理ソフト(Image−Pro Plus)を用いて、フッ素微粒子(一次粒子及び凝集した二次粒子)の個数、各粒子の平均直径、面積、面積比を解析し、平均直径0.15〜3μmの粒子の面積比の合計をS1、0.2〜1.5μmの粒子の面積比の合計をS2として算出した。
【0067】
<評価例3>(表面摩擦係数)
得られた電子写真感光体1〜24及び比較用電子写真感光体1〜7について、特開平9−166919号公報等に開示されているオイラー・ベルト方式を用い表面摩擦係数を評価した。ここでいうベルトとは、中厚の上質紙で、紙すきが長手方向になるようにして、図9に示すように、感光体の円周1/4に張架し、ベルトの一方にW=100gの荷重を掛け、他方にフォースゲージ(バネ秤)を設置し、フォースゲージを徐々に引っ張りながらベルトの移動を観察し、移動を開始した時点での荷重を読み取って下記の式により計算する。なお、図9では、荷重:100g分銅と、ベルト:Type6200/T目/A4用紙/30mm幅(すき目方向にカット)と、ダブルクリップ2個が使用される。また、式におけるμは摩擦係数を、Fは引っ張り力を、Wは荷重を表す。
μ=2/π×ln(F/W) W=100g
【0068】
<評価例4>(耐久寿命A)
得られた電子写真感光体1〜24及び比較用電子写真感光体1〜7を、リコー製imagio Color 5100改造機(imagio ColorカラートナーS[円形度0.91]、画像露光光源を655nmの半導体レーザーに交換し潤滑剤塗布手段を除去したもの)に搭載し、連続してトータル10万枚の印刷を行い、その際、初期画像及び10万枚印刷後の画像について評価を行った。また、初期及び10万枚印刷後の明部電位を測定した。更に、初期及び10万枚印刷後での膜厚差より摩耗量の評価を行った。
【0069】
<評価例5>(耐久寿命B)
得られた電子写真感光体1〜24及び比較用電子写真感光体1〜7を、リコー製imagio Color 5100改造機(トナーを製造例1で作成したものに変更し画像露光光源を655nmの半導体レーザーに交換、更に潤滑剤塗布手段を除去したもの)に搭載し、連続してトータル10万枚の印刷を行い、その際、初期画像及び10万枚印刷後の画像について評価を行った。また、初期及び10万枚印刷後の明部電位を測定した。更に、初期及び10万枚印刷後での膜厚差より摩耗量の評価を行った。
【0070】
<評価例6>(耐久寿命C)
得られた電子写真感光体1〜24及び比較用電子写真感光体1〜7を、リコー製imagio Color 8100改造機(トナーを製造例1で作成したものに変更)に搭載し、連続してトータル5万枚の印刷を行い、その際、初期画像及び5万枚印刷後の画像について評価を行った。また、初期及び5万枚印刷後の明部電位を測定した。更に、初期及び5万枚印刷後での膜厚差より摩耗量の評価を行った。
【0071】
上記耐久寿命A〜Cの評価結果を表4〜表9に示す。
表4、表5の評価結果から分るように、感光体の最表面層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子を含有させることにより、高安定な低表面摩擦係数の持続性を維持することが可能となった。また、摩耗量についても抑制されており、耐摩耗性が大幅に向上していることが確認された。更に、10万枚印刷後においても明部電位上昇は少なく、特定の酸化防止剤を添加した感光体では残像の発生も見られず高画質画像が安定に得られることが確認された。一方、体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子を含有させていない感光体(比較例1、2、6、7)、例示化合物が無添加である感光体(比較例3)、本発明で指定する化合物以外の化合物を用いた感光体(比較例4、5)は、クリーニング不良や残像の発生を引き起こしていた。
表6〜表9の評価結果から分るように、球形トナーを用いた場合においても、表4、表5の場合と同様の傾向であった。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成例を示す図。
【図2】本発明の電子写真感光体の他の層構成例を示す図。
【図3】本発明の電子写真感光体の更に他の層構成例を示す図。
【図4】本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図。
【図5】本発明による電子写真プロセスの別の例を示す図。
【図6】プロセスカートリッジの一般的な例を示す図。
【図7】本発明を適用したフルカラー画像形成装置の概略構成図。
【図8】本発明を適用したフルカラー画像形成装置の変形例の概略構成図。
【図9】評価例3の表面摩擦係数の測定手段を説明するための図。
【符号の説明】
【0079】
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(a)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式中、R、Rは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、同一でも異なっていてもよい。但し、R、Rの何れかは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む置換若しくは無置換の複素環基を形成してもよい。Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(b)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化2】

(式中、R、Rは、芳香族炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む複素環基を形成してもよい。Ar、Arは置換若しくは無置換の芳香環基を表す。l、mはそれぞれ0〜3の整数を表す。但し、l、mが同時に0となることはない。nは1又は2の整数を表す。)
【請求項3】
導電性支持体上に形成された感光層の最表面層が、固体潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層である電子写真感光体において、該保護層に体積分率で20〜60%のフッ素樹脂微粒子、及び下記一般式(c)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化3】

(式中、R、Rは、芳香族炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R、Rは互いに結合して窒素原子を含む複素環基を形成してもよい。Ar、Arは置換若しくは無置換の芳香環基を表す。l、mはそれぞれ0〜3の整数を表す。但し、l、mが同時に0となることはない。nは1又は2の整数を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことを特徴とする電子写真方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体を用い、該電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行い、かつ画像露光の際にはLD或いはLEDによって感光体上に静電潜像の書き込みを行うことを特徴とするデジタル方式の電子写真方法。
【請求項6】
画像形成に使用されるトナーの形状が球状であることを特徴とする請求項4又は5記載の電子写真方法。
【請求項7】
電子写真感光体表面に接触する当接部材が、帯電ローラー、クリーニングブレード、クリーニングブラシ、中間転写ベルト、及び感光体表面のフッ素樹脂微粒子を変形及び伸張させることのみを目的とする部材から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の電子写真方法。
【請求項8】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体を具備することを特徴とする電子写真装置。
【請求項9】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体を具備し、画像露光手段としてLD或いはLEDを使用することにより感光体上に静電潜像の書き込みが行われることを特徴とするデジタル方式の電子写真装置。
【請求項10】
複数の電子写真感光体、帯電手段、現像手段、転写手段を有するタンデム型であることを特徴とする請求項8又は9記載の電子写真装置。
【請求項11】
電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有し、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする請求項8又は9記載の電子写真装置。
【請求項12】
帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、転写手段の少なくとも一つと請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体とを具備する電子写真装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−30784(P2006−30784A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211846(P2004−211846)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】