説明

電子写真感光体およびその製造方法、並びに該電子写真感光体を備える画像形成装置

【課題】印刷に対して実質的に影響を与えることなく、より適切な個体識別管理を行うことが可能な電子写真感光体およびその製造方法、並びに該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子写真感光体2は、筒状の基体20と、該基体20の外周面上に形成される感光層211とを有するものである。基体20は、その内周面におけるインロー部20aに該基体20の個体識別コード20bを有している。本発明に係る電子写真感光体2の製造方法は、筒状の基体20の内周面におけるインロー部20aに個体識別コード20bを形成するコード形成工程と、コード形成工程を経た基体20の外周面上に感光層211を形成する感光層形成工程と、を含む。本発明に係る画像形成装置は、上述の電子写真感光体2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状基体の外周面上に感光層を形成してなる電子写真感光体およびその製造方法、並びに該電子写真感光体を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置では、一般的に円筒状の基体の外周面上に感光層を含む成膜層が形成された電子写真感光体が採用されている。このような構成の電子写真感光体では、基体の状態および成膜時の条件によって成膜層の膜質に違いが生じるため、電子写真感光体ごとに感光層の特性が異なる場合がある。このような場合、これらの電子写真感光体を搭載する画像形成装置の画像特性に影響を与えてしまう。そこで、成膜層の膜質の違いに起因する画像特性への影響を抑制すべく、各電子写真感光体の感光層の特性を測定し、その測定結果に基づいて画像形成の条件を調整している。
【0003】
しかしながら、画像形成条件の調整を適切に行うには、各電子写真感光体を検査し、その検査結果を画像形成装置に反映すべく管理する必要がある。このような管理を行う方法としては、例えば電子写真感光体を構成する円筒状基体の外周部に管理用の固体識別コードを形成する方法がある。電子写真感光体の感光層がアモルファスシリコンを主成分とする場合には、エネルギーバンドに起因して光の反射が生じるため、該感光層の下に位置する個体識別コードを認識することが困難となってしまう。加えて、このような構成では、円筒状基体の外周面上に形成される感光層に対して実質的な影響を与えてしまう場合がある。
【0004】
そこで、感光層の特性を適切に管理すべく、感光層を成膜した電子写真感光体の内周面上に個体識別用バーコードが印刷されたラベルを貼り付ける技術が開発され、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−128365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、電子写真感光体における基体の内周面上に接着剤を介してラベルを貼り付けているため、例えばラベルを貼り付けた基体を洗浄液中あるいは真空中に入れると、接着剤の接着成分が溶出し、結果としてラベルが剥がれてしまう場合があった。つまり、特許文献1の技術では、感光層の形成前の基体に対してラベルを貼り付けると、基体を洗浄液で洗浄する場合あるいは感光層を形成すべく真空中に配置する場合に、接着剤の接着成分が溶出して感光層に混入あるいは付着し、ひいては印刷に影響を与えてしまう場合があった。また、特許文献1の技術では、接着剤の接着成分が溶出することによりラベルが剥がれてしまい、個体識別管理が実質的に困難となる場合もあった。
【0006】
本発明はこのような事情のもとで考え出されたものであって、印刷に対して実質的に影響を与えることなく、より適切な個体識別管理を行うことが可能な電子写真感光体およびその製造方法、並びに該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点によれば、電子写真感光体は、基体と感光層とを有する。基体は、筒状で且つその内周部に固体識別コードを有する。また、基体は、その軸方向の端部にインロー部を有している。固体識別コードは、インロー部に位置している。感光層は、基体の外周面上にある。
【0008】
本発明の他の観点によれば、電子写真感光体の製造方法は、コード形成工程と感光層形成工程とを含む。コード形成工程では、筒状基体の内周面におけるインロー部に個体識別コードを形成する。感光層形成工程では、コード形成工程を経た基体の外周面上に感光層を形成する。
【0009】
本発明の更に他の観点によれば、画像形成装置は、上記の電子写真感光体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子写真感光体の筒状基体の内周面におけるインロー部自体に個体識別コードが存在している。そのため、本発明では、例えば接着剤を介して基体の内周面上にラベルを貼り付けるもの、あるいは、基体の内周面上にインクを塗布して印字するもののように、基体とは別体の個体識別用部材を付加することなく電子写真感光体の固体識別を行うことができる。したがって、本発明では、接着剤の接着成分あるいはインクの構成成分が溶出し、感光層に混入あるいは付着することに起因して、印刷に影響を与えることが実質的にない。加えて、本発明では、接着剤の接着成分が溶出することに起因してラベルが剥がれたり、インクの構成成分が溶出したりすることに起因して固体識別が困難になることも実質的にない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真感光体2と、帯電装置3と、露光装置4と、現像装置5と、転写装置6と、定着装置7と、クリーニング装置8と、除電装置9とを備える。
【0012】
電子写真感光体2は、画像信号に基づいた静電潜像およびトナー像が形成されるものであり、図1に示す矢印A方向に回転可能とされている。
【0013】
帯電装置3は、電子写真感光体2の光導電層の種類に応じて、電子写真感光体2の表面を正極性または負極性に帯電させる機能を担うものである。電子写真感光体2の帯電電位は、通常、200V以上1000V以下とされる。
【0014】
露光装置4は、電子写真感光体2の表面に静電潜像を形成する機能を担うものであり、所定波長の光が出射可能な構成を有している。露光装置4は、画像信号に応じて電子写真感光体2に光を照射することにより、光照射部分の電位を減衰させて電子写真感光体2に静電潜像を形成する。
【0015】
現像装置5は、電子写真感光体2の静電潜像を現像材Tにより現像してトナー像を形成する機能を担うものである。現像装置5は、現像剤Tを収容するケース50と、現像スリーブ51とを備えている。
【0016】
現像剤Tは、電子写真感光体2の表面に形成されるトナー像を構成するものであり、現像装置5において摩擦帯電させられる。現像剤Tとしては、例えば磁性キャリアおよび絶縁性トナーを含んでなる二成分系現像剤と、磁性トナーを含んでなる一成分系現像剤とが挙げられる。
【0017】
現像スリーブ51は、電子写真感光体2と現像スリーブ51との間の現像領域に現像剤Tを搬送する機能を担うものである。
【0018】
本実施形態における現像装置5では、現像スリーブ51により摩擦帯電した現像剤Tが一定の穂長に調整された磁気ブラシの形で搬送され、搬送された現像剤Tによって静電潜像が現像されてトナー像が形成される。トナー像の帯電極性は、正規現像の場合において電子写真感光体2の帯電極性と逆極性とされ、反転現像の場合において電子写真感光体2の帯電極性と同極性とされる。
【0019】
転写装置6は、電子写真感光体2と転写装置6との間の転写領域に給紙された記録紙Pにトナー像を転写する機能を担うものであり、転写用チャージャ60および分離用チャージヤ61を備えている。転写装置6では、転写用チャージャ60において記録紙Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録紙P上にトナー像が転写される。転写装置6ではさらに、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャ61において記録紙Pの背面が交流帯電させられ、記録紙Pが電子写真感光体2の表面から速やかに分離させられる。
【0020】
転写装置6としては、電子写真感光体2の回転に従動し、且つ、電子写真感光体2とは微小間隙(例えば0.5mm以下)を介して配置された転写ローラを用いてもよい。転写ローラは、例えば電子写真感光体2上のトナー像を記録紙P上に引きつけるような転写電圧を直流電源によって印加するように構成される。このような転写ローラを用いる場合には、分離用チャージャ61のような転写材分離装置は省略される。
【0021】
定着装置7は、記録紙Pに転写されたトナー像を定着させる機能を担うものであり、一対の定着ローラ70,71を備えている。定着装置7では、一対の定着ローラ70,71の間に記録紙Pを通過させることにより、熱および圧力などを作用させて記録紙Pにトナー像を定着させる。
【0022】
クリーニング装置8は、電子写真感光体2の表面に残存する現像剤Tを除去する機能を担うものであり、クリーニングブレード80を備えている。クリーニング装置8では、クリーニングブレード80によって、電子写真感光体2の表面に残存する現像剤Tが掻き取られて回収される。クリーニング装置8において回収された現像剤Tは、現像装置5のケース50内にリサイクルして再使用してもよい。
【0023】
除電装置9は、電子写真感光体2に残留する電荷を除去する機能を担うものであり、所定波長の光が出射可能な構成を有している。
【0024】
ここで、画像形成装置1に採用される、本発明の実施形態に係る電子写真感光体2について詳細に説明する。
【0025】
電子写真感光体2は、基体20と、成膜層21とを有している。
【0026】
基体20は、電子写真感光体2の骨格をなすものであり、インロー部20aおよび固体識別コード20bを有している。ここで、個体識別とは、複数ある電子写真感光体の個々を識別することを意味する。本実施形態において基体20の形状は円筒状であるが、これには限られず、角筒状あるいは楕円筒状でもよい。
【0027】
インロー部20aは、基体20の軸方向における中央部の内径より大きい内径に設定される部位であり、図示しない回転駆動機構(例えばフランジ)が嵌合可能な構成とされている。そして、図示しない回転駆動機構に基体20のインロー部20aを嵌合させることにより、電子写真感光体2に対して矢印A方向への回転駆動力を適切に伝達させることができる。
【0028】
固体識別コード20bは、個々の基体20(ひいては電子写真感光体2)を識別するのに寄与するものであり、本実施形態ではインロー部20aにおける内周面20cに形成されている。
【0029】
本実施形態における固体識別コード20bは、センサ検知部20baおよび視覚識別部20bbを含んで構成されている。センサ検知部20baは、光センサにより検知可能なコードからなる部位である。光センサとしては、例えばCMOSセンサと、CCDセンサと、フォトダイオードとが挙げられる。光センサにより検知可能なコードとしては、1次元コード(バーコード)および2次元コードなどが挙げられ、中でも単位形成領域における情報量の多い2次元コードは相対的に狭い領域で必要情報の記録ができるため、該コードを読み取る際における基体20の形状の影響を受け難く、読み取り精度を高めるうえで好適である。視覚識別部20bbは、視覚により識別可能なコードからなる部位である。視覚により識別可能なコードとしては、例えば文字と、数字と、記号とが挙げられる。
【0030】
また、本実施形態における固体識別コード20bは、センサ検知部20baとしてのバーコード(図面上1つ)と、視覚識別部20bbとしての文字数字列(図面上2つ)とからなり、バーコードを構成する複数のバーは基体20の軸方向に沿って配列している。固体識別コード20bの形成方法としては、例えばレーザ加工と、切削加工と、押圧加工と、エッチング加工とが挙げられ、中でも基体20に作用する押圧力を低減する観点および狭小部位における加工性の観点からレーザ加工が好ましい。このようなレーザ加工としては、例えばYAGレーザによる加工と、COレーザによる加工と、YV04レーザによる加工とが挙げられる。
【0031】
基体20は、少なくとも表面に導電性を有するものとされ、その全体を導電性材料により形成したものでもよいし、絶縁性材料により形成した筒状体の表面に導電性材料からなる膜を形成したものでもよい。基体20を構成する導電性材料としては、例えば金属材料と、該金属材料を含む合金材料と、透明導電性材料とが挙げられる。金属材料としては、例えばアルミニウム(Al)と、ステンレススチール(SUS)と、亜鉛(Zn)と、銅(Cu)と、鉄(Fe)と、チタン(Ti)と、ニッケル(Ni)と、クロム(Cr)と、タンタル(Ta)と、スズ(Sn)と、金(Au)と、銀(Ag)とが挙げられる。透明導電性材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)と、SnOとが挙げられる。これらの基体20を構成する導電性材料の中でも、シリコン原子を母体とする非単結晶材料(a−Si系材料)により形成される成膜層21との密着性の観点からAl合金材料が好ましく、機械的強度を高めて基体20の変形を抑制する観点からFe合金材料が好ましい。また、基体20がAlおよびFeの少なくとも一方を主として含む金属材料または合金材料からなる場合、基体20の外周面20d上に後述する光導電層211を形成する際などに加わる熱に起因する該基体20(ひいては個体識別コード20b)の変形を充分に抑制することができるので、個体識別コード20bの識別精度の低減を抑制し、より適切な個体識別管理を行ううえで好適である。
【0032】
成膜層21は、光導電層211および表面層212を含んでなり、基体20の外周面20d上に形成されている。
【0033】
光導電層211は、露光装置4から照射される光によって電子が励起され、自由電子あるいは正孔などのキャリアを発生させる部位である。本実施形態における光導電層211は、基体20の外周面20d上に直接積層形成されているが、電荷注入阻止層あるいは長波長光吸収層などを介して基体20の外周面20d上に積層形成するようにしてもよい。光導電層211の構成材料としては、例えばa−Si系材料と、a−Se、Se−Te、およびAsSeなどのa−Se系材料と、ZnO、CdS、およびCdSeなどの周期律表第12族元素と周期律表第16族元素との化合物と、これらの材料からなる粒子物を樹脂中に分散させた材料と、OPC系などの感光体材料とが挙げられる。これら光導電層211の構成材料の中でも、電子写真特性(高光感度特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性、および耐久性など)の観点、および、表面層212をa−SiC:Hにより形成する場合における表面層212との整合性の観点から、a−Si系材料、あるいは、a−Si系材料にC、N、Oなどを加えたa−Si系の合金材料を用いるのが好ましい。なお、a−Si系材料としては、例えばa−Siと、a−SiCと、a−SiNと、a−SiOと、a−SiGeと、a−SiCNと、a−SiNOと、a−SiCOと、a−SiCNOとを挙げることができる。また、基体20の軸方向(矢印BC方向)における光導電層211の膜厚差は、中央の±3%以内に設定するのが好ましい。このような構成によると、電子写真感光体2の耐圧性(リーク性)および外径寸法の差を充分に低減することができるため、軸方向(矢印BC方向)における画像ムラを充分に抑制することができる。
【0034】
表面層212は、電子写真感光体2における電子写真特性(帯電能、光感度、電位特性、および画像特性など)、ならびに耐久性(耐磨耗性、耐刷性、耐環境性、および耐薬品性など)を向上させる機能を担うものであり、光導電層211上に積層形成されている。表面層22の構成材料としては、例えばa−Si系材料が挙げられ、中でも硬度および光透過度の観点から水素化アモルファスシリコンカーバイトが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る電子写真感光体2は、基体20の内周面20c自体に個体識別コード20bが存在している。そのため、電子写真感光体2では、例えば接着剤を介して基体20の内周面20c上にラベルを貼り付けるもの、あるいは、基体20の内周面20c上にインクを塗布して印字するもののように、基体20とは別体の個体識別用部材(ラベルまたはインクなど)を付加することなく電子写真感光体2の固体識別を行うことができる。したがって、電子写真感光体2では、接着剤の接着成分あるいはインクの構成成分が溶出し、成膜層21に混入あるいは付着することに起因して、印刷に影響を与えることが実質的にない。加えて、電子写真感光体2では、接着剤の接着成分が溶出することに起因してラベルが剥がれたり、インクの構成成分が溶出したりすることに起因して固体識別が困難になることも実質的にない。
【0036】
また、電子写真感光体2における個体識別コード20bは、基体20の外周面20dではなく、基体20の内周面20cに形成されている。したがって、電子写真感光体2では、固体識別コード20bの識別に対して成膜層21の影響を実質的に受けないのに加え、成膜層21が形成される基体20の外周面20dの表面状態に対しても実質的に影響を与えずに済む。
【0037】
以上のように、電子写真感光体2では、印刷に対して実質的に影響を与えることなく、より適切な個体識別管理を行うことができるのである。
【0038】
電子写真感光体2における個体識別コード20bはレーザ加工により形成されている。そのため、電子写真感光体2では、押圧加工などのように相対的に大きい押圧力を基体20に作用させる加工に比べて、基体20の形状に与える影響を低減することができる。したがって、電子写真感光体2では、個体識別コード20bを基体20の内周面20cに直接形成しても、印刷に対して与える影響をより小さいものとすることができる。加えて、レーザ加工は、光ファイバなどを利用することによって、例えば内径が60mm程度の円筒体内のように、比較的狭い空間であっても固体識別コードを適切に形成することができるため、加工性の面でも有利である。
【0039】
電子写真感光体2における基体20は、その軸方向の端部にインロー部20aを有している。また、固体識別コード20bは、インロー部20aに位置している。したがって、電子写真感光体2は、基体20の端部から行われる個体識別コード20bの識別可能範囲を広げ個体識別コード20bの識別性を高めるうえで好適である。なお、電子写真感光体2では、レーザ加工により基体20のインロー部20aに個体識別コード20bが形成されているので、基体20の軸方向中央部に比べて厚さの薄いインロー部20aにおいても基体20の変形が充分に抑制されている。
【0040】
電子写真感光体2における個体識別コード20bは、センサ検知部20ba(バーコード)および視覚識別部20bb(文字数字列)を有している。そのため、電子写真感光体2では、光センサ搭載装置の使用および目視の両方で識別することができる。したがって、電子写真感光体2では、光センサ搭載装置の使用または目視の一方により主として検査を行い、他方を該検査の補完として行うことにより、個体識別管理の確実性をより高めることができる。
【0041】
また、電子写真感光体2における個体識別コード20bは、複数のバーからなるバーコードを含むセンサ検知部20baを有しており、このバーコードを構成する複数のバーが基体20の軸方向に配列している。そのため電子写真感光体2では、円筒状の基体20の湾曲状態がバーコードの識別に影響を与えるのを充分に低減することができ、ひいては個体識別コード20bの識別精度を高めることができる。したがって、電子写真感光体2は、より適切な個体識別管理を行ううえで好適である。
【0042】
本実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真感光体2を備えている。つまり、画像形成装置1は、より適切に固体識別管理された電子写真感光体2を採用している。したがって、画像形成装置1では、より適切な画像形成条件の調整を図ることができるため、より適切な印刷を行うことができる。
【0043】
次に、電子写真感光体2の製造方法について、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0044】
まず、図4(a)に示すインロー部20aを有する基体20を準備する。
【0045】
次に、基体20に該基体20の固体識別情報を示す固体識別コード20bを形成する。具体的には、基体20のインロー部20aにおける内周面20cに対して、基体20の端部側からレーザ光Lを照射するレーザ加工により所望の固体識別コード20bを形成する。なお、レーザ加工は、図4(b)に示すように、レーザ発振器22を用いて基体20の端部側からレーザ光Lを照射する方法に代えて、光ファイバなどの導光部材を用いて加工対象箇所の近傍からレーザ光を照射するようにしてもよい。このような方法によると、例えば基体20の内径が小さい場合あるいは加工対象箇所が基体20の両端から遠い場合でも、適切にレーザ加工を施すことができる。
【0046】
次に、固体識別コード20bが形成された基体20の外周面20dに対して鏡面加工を施す。本実施形態における鏡面加工は、図4(c)に示すように、切削バイト23を有する超精密旋盤(図示せず)を用いて基体20の外周面20dを切削することによって行われる。具体的には、基体20の切削対象面に切削油を塗布した後、基体20をその周方向に回転させながら切削バイト23を矢印B方向に移動させることによって基体20の外周面20dの切削を行う。
【0047】
次に、鏡面加工に用いた切削油および切削により発生する切り屑などの汚れを除去すべく、鏡面加工が施された基体20を洗浄する。具体的には、洗浄液中に鏡面加工が施された基体20を浸漬した後、該洗浄液に超音波の印加することにより行う。洗浄液としては、例えば水系洗剤と、石油系洗剤と、アルコール系洗浄剤と、塩素系溶剤とが挙げられる。
【0048】
次に、洗浄された基体20の外周面20d上に成膜層21を形成する。具体的には、周知のプラズマCVD法により基体20の外周面20d上に光導電層211および表面層212を順次積層形成する。
【0049】
以上のようにして、図2に示す電子写真感光体2が形成される。
【0050】
本実施形態に係る電子写真感光体2の製造方法では、基体20の内周面20c自体に個体識別コード20bが形成される。したがって、本実施形態に係る方法により製造される電子写真感光体2は、上述の本実施形態に係る電子写真感光体2と同様の効果を奏する。
【0051】
本実施形態に係る電子写真感光体2の製造方法では、固体識別コード20bが形成された基体20の外周面20dに対して鏡面加工を施している。そのため、本製造方法では、基体20の外周面20d上に成膜層21を形成する際に、固体識別コード20bの形成時に生じる基体20の形状変化が影響するのをより抑制することができる。したがって、本実施形態に係る方法により製造される電子写真感光体2では、基体20の内周面20c自体に個体識別コード20bを形成しても、印刷に対して与える影響をより小さいものとすることができる。
【0052】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0053】
電子写真感光体2における固体識別コード20bは、基体20の内周面20cにおけるインロー部20aに形成されているが、これには限られず、基体20の内周面20cにおけるインロー部20a以外の部位(例えば軸方向中央部)に形成されてもよい。また、固体識別コード20bの形成箇所に対して、その形成前に表面加工(例えば切削加工および研磨加工)を行ってもよい。このように、固体識別コード20bの形成前にその形成箇所に対して表面加工を施すと、例えば光センサを用いてセンサ検知部20baとその周囲とを区別する際に、その表面形状に起因する識別の誤りが発生するのを抑制するうえで好適である。
【0054】
電子写真感光体2における固体識別コード20bは、センサ検知部20baと視覚検知部20bbとの両方を含んで構成されているが、これには限られず、センサ検知部20baおよび視覚検知部20bbのいずれか一方のみにより構成してもよい。
【0055】
電子写真感光体2における基体20は、その外周面20dにおける算術平均高さRa(JIS規格B0601:2001に準拠して測定)が0.05μm以下とするのが好ましい。このような構成によると、成膜層21を形成する際に異常成長が発生するのを抑制することができるため、平滑性を高めるうえで好適である。
【0056】
電子写真感光体2における基体20では、その内周面20cにおける固体識別コード20bの存在領域に、酸化クロムと、酸化鉄と、酸化マンガンとからなる群より選択される少なくとも一つの材料が存在するようにしてもよい。このような構成によると、固体識別コード20bの存在領域をそれ以外の領域と異なる色合い(例えば黒色)にすることができるため、個体識別コードの識別性を高めるうえで好適である。
【0057】
本実施形態に係る電子写真感光体2の製造方法では、固体識別コード20bが形成された後で基体20の外周面20dの鏡面加工が行われているが、これには限られず、予め外周面20dに鏡面加工が施された基体20に対して固体識別コード20bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の概略構成を表す図であり、(a)はその全体を表す斜視図、(b)は(a)におけるIIb−IIb線に沿った断面図である。
【図3】図2(a)に示す電子写真感光体を構成する基体の概略構成を表す図であり、(a)はその全体を表す斜視図、(b)は(a)におけるIIIb−IIIb線に沿った断面図である。
【図4】図2に示す電子写真感光体を製造する工程を表す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
2 電子写真感光体
20 基体
21 成膜層
211 光導電層(感光層)
212 表面層
22 レーザ発振器
23 切削バイト
3 帯電装置
4 露光装置
5 現像装置
50 現像スリーブ
6 転写装置
60 転写用チャージャ
61 分離用チャージヤ
7 定着装置
70,71 ローラ
8 クリーニング装置
80 クリーニングブレード
9 除電装置
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で且つその内周部に固体識別コードを有する基体と、前記基体の外周面上に形成される感光層と、を有し、
前記基体は、その軸方向の端部にインロー部を有しており、
前記固体識別コードは、前記インロー部に位置していることを特徴とする、電子写真感光体。
【請求項2】
前記個体識別コードは、光センサにより検知されるセンサ検知部と、視覚により識別される視覚識別部とを有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記個体識別コードは、バーコードを含むセンサ検知部を有する、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記バーコードを構成する複数のバーは、前記基体の軸方向に配列している、請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記基体は、アルミニウムおよび鉄の少なくとも一方を主として含む金属または合金からなる、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
筒状基体の内周面におけるインロー部に個体識別コードを形成するコード形成工程と、前記コード形成工程を経た前記基体の外周面上に感光層を形成する感光層形成工程と、を含むことを特徴とする、電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
前記コード形成工程を経た前記基体の前記外周面を鏡面化する鏡面加工工程を更に含む、請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−48206(P2009−48206A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262459(P2008−262459)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【分割の表示】特願2008−519558(P2008−519558)の分割
【原出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】