説明

電子写真機器用発泡ウレタンロール

【課題】低硬度で耐久性を向上させた電子写真機器用発泡ウレタンロールを提供すること。
【解決手段】軸体12の外周に、下記のa〜b成分を含有するウレタン組成物を用いて、成形型内で発泡・硬化させて発泡ウレタン層14を形成する。
(a)ポリオール成分
(b)下記のb1〜b3を満たすポリイソシアネート成分
(b1)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート変性体を主成分とするHDI混合物およびトリレンジイソシアネート(TDI)を含む
(b2)前記ウレタン組成物中の前記HDI混合物の含有量が2質量%以上
(b3)前記HDI混合物のNCO%が25%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用発泡ウレタンロールに関し、さらに詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロール等に用いて好適な電子写真機器用発泡ウレタンロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器には、一般に、像担持体である感光ドラムの周囲に、現像ロール、帯電ロール、転写ロール、トナー供給ロール、クリーニングロールなどの弾性ロールが組み込まれている。弾性ロールは、シャフトなどの軸体の外周に弾性体層が形成されたもので構成されている。弾性体層を形成する材料としては、ウレタンフォーム(発泡ウレタン)が用いられることがある。ウレタンフォームよりなる弾性体層は、成形金型内でウレタンを発泡硬化することにより形成することができる。
【0003】
この種の弾性ロールに関連するものとして、例えば特許文献1には、ポリウレタンフォームからなる画像形成装置用高分子部材が記載されている。この特許文献1には、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有することが記載されている。また、MDIに加えて従来公知のポリイソシアネートの中から適宜選択して他のポリイソシアネートを使用できることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリウレタンフォーム製ローラが記載されている。この特許文献2には、ポリイソシアネートとしてMDIやトリレンジイソシアネート(TDI)を用いることが記載されている。また、これらに加えて従来公知のポリイソシアネートの中から適宜選択して他のポリイソシアネートを使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−249040号公報
【特許文献2】特開2005−338254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、トナー供給ロールは、現像ロールにトナーを供給するとともにトナー像形成後の現像ロール表面に残ったトナーを掻き取って現像ロール表面を清浄化する。また、クリーニングロールは、トナー像転写後の感光ドラム表面に残ったトナーを掻き取って感光ドラム表面を清浄化する。これらの弾性ロールでは、ロール表面にトナーが接触することから、トナーストレスの低減を目的として、ロール表面が低硬度であることが求められている。
【0007】
しかしながら、ロール表面を低硬度にする場合には、弾性体層の強度低下を伴うおそれがある。そうすると、ロールの耐久性が低下するおそれがある。したがって、低硬度であっても弾性体層の強度低下のおそれがなく、耐久性に優れたものが求められる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低硬度で耐久性を向上させた電子写真機器用発泡ウレタンロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用発泡ウレタンロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された発泡ウレタン層とを備え、前記発泡ウレタン層は、下記のa〜b成分を含有するウレタン組成物が成形型内で発泡・硬化されて形成されたものであることを要旨とするものである。
(a)ポリオール成分
(b)下記のb1〜b3を満たすポリイソシアネート成分
(b1)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート変性体を主成分とするHDI混合物およびトリレンジイソシアネート(TDI)を含む
(b2)前記ウレタン組成物中の前記HDI混合物の含有量が2質量%以上
(b3)前記HDI混合物のNCO%が25%以下
【0010】
この際、前記TDIに対する前記HDI混合物の質量割合(HDI混合物/TDI)が0.3〜3の範囲内であることが好ましい。また、前記(a)ポリオール成分のポリオールの数平均分子量が3000〜10000の範囲内であることが好ましい。また、前記HDIのヌレート変性体はポリオールによりプレポリマー化されたものであり、その数平均分子量が400〜7000の範囲内であることが好ましい。そして、前記発泡ウレタン層のJIS K6400−5に準拠して測定される引張強度が40KPa以上であり、かつ、前記発泡ウレタン層のJIS K6400−5に準拠して測定される引張伸びが140%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子写真機器用発泡ウレタンロールによれば、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分にHDIのヌレート変性体を主成分とするHDI混合物とTDIとを含み、このときのHDI混合物の含有量とHDI混合物のNCO%とを特定範囲にしたため、低硬度で耐久性に優れる。ウレタン組成物のポリイソシアネート成分にTDIとともにHDI混合物が特定の割合で含まれるため、発泡硬化時に著しい硬度上昇が生じることなく、低硬度が維持される。また、HDI混合物に特定の割合でHDIのヌレート変性体が含まれ、ポリウレタンの分子構造中にヌレート構造が導入されるため、発泡ウレタン層の強度が向上し、破断が抑制される。
【0012】
この際、HDI混合物/TDIが特定範囲内にあると、低硬度が維持されやすい。また、(a)ポリオール成分のポリオールの数平均分子量が特定範囲内にあると、低硬度が維持されるとともにタック性の上昇が抑えられる。また、HDIヌレートはポリオールによりプレポリマー化されたものであり、その数平均分子量が特定範囲内にあると、発泡ウレタン層の表面に滲み出す成分が抑えられ、これがトナーに付着することに起因する画質の悪化を抑えることができる。そして、発泡ウレタンの引張強度および引張伸びが特定範囲内にあれば、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態に係る発泡ウレタンロールの周方向断面図である。
【図2】図1の発泡ウレタンロールの製造に好適なロール成形型を模式的に示した軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の構成について具体的に明らかにする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る発泡ウレタンロールの周方向断面図である。一実施形態に係る発泡ウレタンロール10は、図1に示す構造が軸方向に連続する構成を備えている。図1に示すように、発泡ウレタンロール10は、軸体12と、軸体12の外周にロール状に形成された発泡ウレタン層14とにより構成されている。
【0016】
発泡ウレタン層14は、例えば成形型内でウレタン組成物を発泡・硬化させることにより形成することができる。ここで、ウレタン組成物は、(a)ポリオール成分と、(b)特定のポリイソシアネート成分とを含有する。
【0017】
ウレタン組成物の(a)ポリオール成分は、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォームに用いられるポリオールを好適に用いることができる。(a)ポリオール成分としては、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
(a)ポリオール成分のポリオールの数平均分子量は、3000〜10000の範囲内であることが好ましい。より好ましくは3000〜6000の範囲内である。ポリオールの数平均分子量が3000以上であれば、発泡ウレタン層14を低硬度にしやすい。また、ポリオールの数平均分子量が10000以下であれば、タック性の上昇が抑えられやすい。
【0019】
(a)ポリオール成分のポリオールの水酸基価(Ohv)は、特に限定されるものではないが、ウレタン組成物の硬化速度に優れる、適度な粘度の範囲に設定しやすいなどの点から、10〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。より好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲内である。なお、水酸基価は、JIS K 0070の水酸基価である。
【0020】
ウレタン組成物の(b)特定のポリイソシアネート成分は、下記のb1〜b3を満たすものである。
(b1)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート変性体を主成分とするHDI混合物およびトリレンジイソシアネート(TDI)を含む
(b2)ウレタン組成物中のHDI混合物の含有量が2質量%以上
(b3)HDI混合物のNCO%が25%以下
【0021】
(b1)に示すように、ポリイソシアネート成分としてHDI混合物とTDIとを含むことにより、低硬度で引張強度・引張伸びに優れた材料にすることができる。ポリイソシアネート成分がHDI混合物だけの場合には、架橋が強くなるため、硬度が高くなりすぎるおそれがある。ポリイソシアネート成分がTDIだけの場合には、低硬度であるが、引張強度・引張伸びが不足する。ポリイソシアネート成分がMDI(クルードMDI)だけの場合には、粗製であるため、4官能以上のイソシアネートが多く含まれる。このため、硬度が高くなりすぎる。また、MDIには芳香族環があるため、これによっても硬度が高くなりやすい。ポリイソシアネート成分がTDIとMDI(クルードMDI)よりなる場合には、引張伸びが不足する。
【0022】
HDI混合物は、HDIおよびその誘導体の混合物である。HDIのヌレート変性体はHDI誘導体の一種であり、HDI誘導体としては、HDIヌレートの他にHDIビュレット、HDIアロハネートなどが挙げられる。
【0023】
HDIのヌレート変性体は、HDIの3量体を主に含むHDIの多量体の混合物である。したがって、HDIのヌレート変性体は、イソシアネート基を3つ以上有する多官能のイソシアネートを含む。ただし、HDIのヌレート変性体は、4官能以上のものの割合が少ない。このため、クルードMDI(粗製MDI)のような4官能以上のイソシアネートを多く含むものよりも硬度の上昇を抑えることができる。すなわち、HDIのヌレート変性体は、クルードMDIを用いた場合のように架橋できるが、クルードMDIを用いた場合よりも低硬度にすることができる。また、HDIのヌレート変性体のヌレート構造は架橋後にも維持されるため、発泡ウレタンの分子構造中にヌレート構造が導入される。これにより、発泡ウレタン層の強度が向上し、破断を抑制できる。
【0024】
そして、(b2)(b3)に示すように、ウレタン組成物中には、特定量のHDIのヌレート変性体が含まれる。
【0025】
ここで、HDI混合物におけるHDIのヌレート変性体の割合は、HDI混合物のNCO%により把握することができる。HDIが100%である場合のNCO%は50%であり、HDIのヌレート変性体の割合が増加するにつれてHDI混合物のNCO%は50%から減少する。本発明においては、(b3)に示すように、HDI混合物のNCO%が25%以下となる範囲でHDI混合物中にHDIのヌレート変性体が含まれるようにする。この際、(b2)に示すように、ウレタン組成物中のHDI混合物の含有量が特定量に規定されているので、ウレタン組成物中のHDIのヌレート変性体の量が定まる。なお、HDI混合物のNCO%は、滴定法により測定することができる。
【0026】
本発明においては、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分にHDIのヌレート変性体を主成分とするHDI混合物とTDIとを含み、このときのHDI混合物の含有量とHDI混合物のNCO%とを特定範囲にしたため、低硬度で耐久性に優れる。ウレタン組成物のポリイソシアネート成分にTDIとともにHDI混合物が特定の割合で含まれるため、発泡硬化時に著しい硬度上昇が生じることなく、低硬度が維持される。また、HDI混合物に特定の割合でHDIのヌレート変性体が含まれ、ポリウレタンの分子構造中にヌレート構造が導入されるため、発泡ウレタン層の強度が向上し、破断が抑制される。
【0027】
この際、低硬度で引張強度や引張伸びに優れる効果のバランスに優れるなどの観点から、TDIに対するHDI混合物の質量割合(HDI混合物/TDI)は、0.3〜3の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1の範囲内である。
【0028】
また、低硬度で引張強度や引張伸びに優れる効果のバランスに優れるなどの観点から、ウレタン組成物中のHDI混合物の含有量の下限としては、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。一方、硬度の観点から、ウレタン組成物中のHDI混合物の含有量の上限としては、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0029】
また、低硬度で引張強度や引張伸びに優れる効果のバランスに優れるなどの観点から、HDI混合物のNCO%の上限としては、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは23%以下である。一方、反応性の観点から、HDI混合物のNCO%の下限としては、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。
【0030】
ウレタン組成物のポリイソシアネート成分は、HDIのヌレート変性体が特定量含まれていれば、HDIやTDIの他のポリイソシアネートが含まれていても良い。このようなポリイソシアネートとしては、MDI、クルードMDIおよびこれらの誘導体、TDIの誘導体、HDI以外の脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0031】
HDIのヌレート変性体は、(a)成分のポリオールとは別のポリオールによりプレポリマー化されたものであっても良い。プレポリマー化されることによって、発泡ウレタン層の表面に滲み出す成分が抑えられ、これがトナーに付着することに起因する画質の悪化を抑えることができる。プレポリマーの数平均分子量は、400〜7000の範囲内であることが好ましい。
【0032】
プレポリマー化に用いるのに好適なポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ポリオールの数平均分子量は、200〜6500の範囲内であることが好ましい。
【0033】
ポリイソシアネートとポリオールとの配合割合は所定の範囲にすることが好ましい。ポリイソシアネートとポリオールとの配合割合は、下記の式で算出されるポリイソシアネート成分全体のNCO%の値を設定することにより設定することができる。ポリイソシアネート成分全体のNCO%の値としては、5〜50質量%の範囲内とすることが好ましい。NCO%の値が5質量%未満では、ウレタン組成物の粘度が十分低下せず、成形が困難になる傾向がある。一方、NCO%の値が50質量%を超えると、硬度が高くなりすぎる傾向や、硬化反応が不均一となり、ウレタンゴムの物性が低下する傾向などがある。
【数1】

【0034】
NCOインデックスは、圧縮永久歪みの観点から、50〜150の範囲内に設定することが好ましい。より好ましくは80〜130の範囲内である。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基と反応する水酸基を持つポリオール成分の合計当量100に対するイソシアネート基の当量を意味する。
【0035】
ウレタン組成物には、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分以外に、必要に応じて、発泡剤、触媒、添加剤を含めることができる。
【0036】
発泡剤には、ウレタン反応に通常使用される発泡剤を用いることができる。このような発泡剤としては、水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガスなどを挙げることができる。水素原子含有ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などを挙げることができる。低沸点炭化水素としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンなど、沸点が−5〜70℃程度のものを挙げることができる。これらの発泡剤の含有量は、適宜定めることができる。例えば、ポリオール成分100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲内とすることができる。
【0037】
触媒には、ポリウレタン反応に通常使用される触媒を用いることができる。このような触媒としては、アミン系触媒、金属触媒を挙げることができる。アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(カルボン酸塩)などを挙げることができる。金属触媒としては、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。触媒の含有量としては、特に限定されるものではないが、ポリオール成分100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0038】
ウレタン組成物に好適に配合される添加剤としては、整泡剤、架橋剤、架橋促進剤、導電剤、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などを挙げることができる。整泡剤としては、ジメチルシロキサン系整泡剤やポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤などのシリコーン整泡剤を挙げることができる。整泡剤の含有量としては、ポリオール成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0039】
発泡ウレタンロール10は、例えば、ロール成形型を用いて軸体12の外周に発泡ウレタン層14を形成することにより製造できる。ロール成形型20は、図2に示すように、発泡ウレタン層14の軸方向の長さに略等しい長さの円筒型22(パイプ)と、この円筒型22の両端に取り付けられてこの円筒型22の両端を閉塞するキャップ24とから構成されている。円筒型22内に軸体12を円筒型22と同軸に配置させた状態で、円筒型22の両端をキャップ24で閉塞し、型締すると、軸体12がキャップ24によって円筒型22と同軸に支持され、円筒型22内に目的とする発泡ウレタンロール10の最終ロール形状を与える成形キャビティ26が形成される。そして、このロール成形型20の成形キャビティ26内に、発泡ウレタン層14の形成材料であるウレタン組成物を注入し、発泡硬化させて発泡ウレタン層14を軸体12の周囲に一体成形した後、脱型する。
【0040】
この際、発泡ウレタン層14には、その内部に多数の発泡セル(気泡)が形成される。発泡セルと発泡セルとの間は、セル壁により区画されている。発泡ウレタン層14においては、多数の発泡セルが、セル壁に貫通孔が形成されて発泡セル同士が連通している連続気泡であっても良いし、セル壁によって区画され、互いに独立した独立気泡であっても良いし、これらが混在していても良い。好ましくは、トナー掻き取り性能の向上などの観点から、連続気泡である。各発泡セルに適度の連通性をもたせるには、ロール成形後に例えば高圧の気体(空気や窒素ガスなど)を発泡ウレタン層14に噴射してその圧力でセル壁を部分的に破壊するなどのクラッシング処理を行うと良い。
【0041】
発泡ウレタン層14の硬さは、低硬度の面から、220gf以下であることが好ましい。より好ましくは200gf以下である。一方、強度を確保するなどの観点から、硬さの下限は125gf以上であることが好ましい。より好ましくは130gf以上である。発泡ウレタン層14の硬さは、発泡ウレタン層14の表面に平板を所定の変位まで圧接したときの応力により測定することができる。
【0042】
発泡ウレタン層14を低硬度とするには、例えば発泡倍率をより高くしてみかけ密度を低くしたり、より柔軟な材料を用いたりすれば良い。みかけ密度の観点からいえば、好ましくは0.4g/cm以下、より好ましくは0.2g/cm以下、さらに好ましくは0.15g/cm以下の高発泡にすると良い。また、発泡倍率の観点からいえば、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは6.7倍以上の高発泡倍率にすると良い。
【0043】
発泡ウレタン層14は、発泡ウレタン層14を低硬度にした場合であっても、耐久性の面から、JIS K6400−5に準拠して測定される引張強度が40KPa以上であることが好ましい。より好ましくは45KPa以上、さらに好ましくは50KPa以上である。また、発泡ウレタン層14は、発泡ウレタン層14を低硬度にした場合であっても、耐久性の面から、JIS K6400−5に準拠して測定される引張伸びが140%以上であることが好ましい。より好ましくは145%以上、さらに好ましくは150%以上である。発泡ウレタン層14の引張強度・引張伸びは、発泡ウレタン層14から切り出した試験片を用いて測定することができる。
【0044】
また、発泡ウレタン層14においては、JIS K6400−4に準拠して測定される圧縮残留歪みは、弾性回復性の観点から、10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下である。発泡ウレタン層14の圧縮残留歪みは、所定の厚さの試験片で測定することができる。
【0045】
発泡ウレタン層14の表面には、トナー掻き取り性能の向上などの観点から、凹凸形状が付与されていても良い。このような凹凸形状は、例えばロール成形型の内周面に凹凸が形成されているものを用いて成形を行うことにより付与することができる。
【0046】
軸体12は、中空体であっても良いし、中実体であっても良い。軸体12の材料としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等の金属、またはポリアセタール(POM)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックが挙げられる。また、軸体12の外周面には、必要に応じて、接着剤やプライマー等が塗布されていても良い。
【0047】
このような構成の発泡ウレタンロール10は、例えば、電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロールなどに好適に用いられる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
<ウレタン組成物の調製>
ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを100質量部、ポリイソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)を11.0質量部、ポリイソシアネート成分としてHDIヌレート含有HDI混合物(HDIヌレート<1>)を32.9質量部、シリコーン系整泡剤を1.0質量部、発泡剤として水を2.0質量部、ゲル化触媒としてトリエチレンジアミンを0.2質量部、泡化触媒としてメチルモルホリンを0.3質量部混合することにより、ウレタン組成物を調製した。
【0050】
<発泡ウレタンロールの作製>
ロール成形型のパイプ型内に、直径5mmのSUM22製中実円柱状の軸体を同軸に配置し、パイプ型の両端をキャップにて閉塞するとともに軸体を支持した。この状態において、発泡体比重が0.13(g/cm)となるように、成形キャビティ内にウレタン組成物を注入し、90℃×30分間の条件にて発泡硬化させ、軸体の周りにポリウレタンの発泡ウレタン層(厚さ4.5mm)が一体的に形成されてなる発泡ウレタンロールを作製した。
【0051】
(実施例2〜4)
ポリエーテルポリオールとHDIヌレート<1>の配合割合を変更した以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0052】
(実施例5)
さらにジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を配合し、所定の配合割合とした以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0053】
(実施例6)
HDIヌレート<1>に代えてHDIヌレート<3>を配合し、所定の配合割合とした以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0054】
(実施例7)
HDIヌレート<1>に代えてHDIヌレート<2>を配合し、さらにHDIを配合し、所定の配合割合とした以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0055】
(比較例1)
ポリイソシアネート成分としてTDIのみを配合し、HDIヌレートを配合しなかった以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0056】
(比較例2)
ポリイソシアネート成分としてTDIとMDIを配合し、HDIヌレートを配合しなかった以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0057】
(比較例3)
ポリイソシアネート成分としてMDIのみを配合し、HDIヌレートを配合しなかった以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0058】
(比較例4)
ポリイソシアネート成分としてHDIヌレート<1>のみを配合し、TDIを配合しなかった以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0059】
(比較例5)
ポリイソシアネート成分の配合割合を変更した以外は実施例7と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0060】
(実施例8〜10)
HDIヌレート<1>に代えて表2に記載のプレポリマー化したHDIヌレートを配合し、所定の配合割合とした以外は実施例1と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0061】
(実施例11)
さらにMDIを配合し、所定の配合割合とした以外は実施例10と同様にして発泡ウレタンロールを作製した。
【0062】
なお、用いた各材料は以下の通りである。
・ポリエーテルポリオール:三井化学社製「アクトコールEP330N」、数平均分子量5000、水酸基価(Ohv)33mgKOH/g
・シリコーン系整泡剤:東レダウコーニング社製「SRX274DL」
・TDI:三井化学ポリウレタン社製「コスモネートT80」、NCO%=48%
・MDI(crude−MDI):日本ポリウレタン社製「ミリオネートMR200」、NCO%=31%
・HDIヌレート<1>(HDIヌレート含有HDI混合物、三井化学社製「タケネートD170N」、粘度2000mPa・s、NCO%=20%」
・HDIヌレート<2>(HDIヌレート含有HDI混合物、旭化成ケミカルズ社製「デュラネートTPA−100」、NCO%=23%
・HDIヌレート<3>(HDIヌレート含有HDI混合物、旭化成ケミカルズ社製「デュラネートTSE−100」、NCO%=12%
・HDIヌレートプレポリマー<1>〜<3>:下記の合成方法による合成品
【0063】
・HDIヌレートプレポリマー<1>の合成方法
上記HDIヌレート<1>95質量部に対し、ポリオキシプロピレンポリオール(三洋化成社製「サンニックスPP200」、水酸基価=560mgKOH/g)5質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃で4時間反応させることによりプレポリマーを合成した。プレポリマーのNCO%は16.9%、数平均分子量は500であった。
【0064】
・HDIヌレートプレポリマー<2>の合成方法
上記HDIヌレート<1>90質量部に対し、ポリオキシプロピレンポリオール(三洋化成社製「サンニックスPP1000」、水酸基価=112mgKOH/g)10質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃で4時間反応させることによりプレポリマーを合成した。プレポリマーのNCO%は17.2%、数平均分子量は1000であった。
【0065】
・HDIヌレートプレポリマー<3>の合成方法
上記HDIヌレート<1>86質量部に対し、ポリオキシプロピレンポリオール(三洋化成社製「サンニックスPP4000」、水酸基価=28mgKOH/g)14質量部を添加し、窒素雰囲気下で80℃で4時間反応させることによりプレポリマーを合成した。プレポリマーのNCO%は16.9%、数平均分子量は3000であった。
【0066】
各ウレタン組成物の硬化物よりなる試験片を用いて、圧縮残留歪みを測定した。また、作製した各発泡ウレタンロールを用いて、発泡ウレタン層の硬度、引張強度、引張伸びの各物性値を測定した。また、作製した各発泡ウレタンロールを用いて、初期画像評価および耐久画像評価を行い、さらに、耐久後の発泡ウレタンロールについて破壊の有無を調べた。測定方法および評価方法は以下の通りである。これらの結果を表1、2に示す。
【0067】
(圧縮残留歪み)
アルミ製の直方体状の金型に発泡比重0.13(g/cm)となるようにウレタン組成物を注入し、90℃で30分硬化発泡させた後、金型からブロック形状の発泡体(25cm×25cm×3cm)を取り出して、評価用の試験片とした。この試験片を70℃の恒温条件下で1週間放置させた後、JIS K6400−4に準拠して圧縮残留歪みを測定した。
【0068】
(平板硬度)
作製した発泡ウレタンロールの表面に50×50mmの板を変位1mmで圧接したときの応力(gf)を、発泡ウレタン層の硬度(平板硬度)とした。
【0069】
(引張強度、引張伸び)
作製した発泡ウレタンロールから発泡ウレタン層を切り出し、ダンベル6号の形状に打ち抜いた。これを評価用の試験片とし、この試験片を用い、JIS K6400−5に準拠して引張強度、引張伸びを測定した。
【0070】
(初期画像評価)
発泡ウレタンロールをトナー供給ロールとして市販のカートリッジに組み込み、カートリッジを市販のプリンター(キヤノン社製、商品名「LBP2510」)に装着し、ベタ画像を印刷し、印字の濃淡バラツキを調べた。濃淡にバラツキが見られなかったものを「○」とし、濃淡にバラツキが見られるものを「×」とした。
【0071】
(耐久画像評価)
発泡ウレタンロールをトナー供給ロールとして市販のカートリッジに組み込み、カートリッジを市販のプリンター(キヤノン社製、商品名「LBP2510」)に装着し、100,000枚印刷した。耐久後にベタ画像を印刷し、印字の濃淡バラツキを調べた。濃淡にバラツキが見られなかったものを「○」とし、濃淡にバラツキが見られるものを「×」とした。
【0072】
(耐久後の破壊の有無)
上記耐久後に発泡体の骨格に破断(ちぎれ)が発生しなかったものを「○」とし、破断(ちぎれ)が発生したものを「×」とした。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
比較例1では、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分としてTDIのみを配合している。このため、低硬度であるが、強度・伸びが不足し、耐久画像が悪く、耐久後に発泡ウレタンロールの破壊が確認された。比較例3では、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分としてcrude−MDIのみを配合している。このため、硬度上昇が著しく、硬すぎる。また、伸びが不足している。その結果、耐久画像が悪く、耐久後に発泡ウレタンロールの破壊が確認された。比較例2では、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分としてTDIとcrude−MDIを配合している。このため、比較例3と比べて低硬度となり、強度も十分であるが、伸びが不足している。その結果、耐久画像が悪く、耐久後に発泡ウレタンロールの破壊が確認された。
【0076】
比較例4では、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分としてHDIヌレート含有HDI混合物のみを配合している。比較例4では、HDIヌレートによる架橋の効果が強すぎるため、硬度が高めである。また、伸びが不足している。その結果、耐久画像が悪く、耐久後に発泡ウレタンロールの破壊が確認された。
【0077】
比較例5では、ウレタン組成物のポリイソシアネート成分としてHDIヌレート含有HDI混合物とTDIを配合しているが、HDI混合物のNCO%が25%を超えている。すなわち、HDIヌレートの量が少ない。このため、低硬度であるが、強度・伸びが不足し、耐久画像が悪く、耐久後に発泡ウレタンロールの破壊が確認された。
【0078】
これに対し、実施例によれば、低硬度であり、強度・伸びにも優れ、耐久画像も良好で、耐久後の発泡ウレタンロールの破壊は生じなかった。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、軸体12の外周に発泡ウレタン層14が形成された発泡ウレタンロール10を示したが、本発明の発泡ウレタンロールは、発泡ウレタン層の外周に、所定の機能を付与する目的で、必要に応じて樹脂組成物などの表面層を形成したものであっても良いし、発泡ウレタン層の表面に、所定の機能を付与する目的で、必要に応じて表面処理を施したものであっても良い。
【符号の説明】
【0081】
10 発泡ウレタンロール
12 軸体
14 発泡ウレタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成された発泡ウレタン層とを備え、
前記発泡ウレタン層は、下記のa〜b成分を含有するウレタン組成物が成形型内で発泡・硬化されて形成されたものであることを特徴とする電子写真機器用発泡ウレタンロール。
(a)ポリオール成分
(b)下記のb1〜b3を満たすポリイソシアネート成分
(b1)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート変性体を主成分とするHDI混合物およびトリレンジイソシアネート(TDI)を含む
(b2)前記ウレタン組成物中の前記HDI混合物の含有量が2質量%以上
(b3)前記HDI混合物のNCO%が25%以下
【請求項2】
前記TDIに対する前記HDI混合物の質量割合(HDI混合物/TDI)が0.3〜3の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用発泡ウレタンロール。
【請求項3】
前記(a)ポリオール成分のポリオールの数平均分子量が3000〜10000の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用発泡ウレタンロール。
【請求項4】
前記HDIのヌレート変性体はポリオールによりプレポリマー化されたものであり、その数平均分子量が400〜7000の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用発泡ウレタンロール。
【請求項5】
前記発泡ウレタン層のJIS K6400−5に準拠して測定される引張強度が40KPa以上であり、かつ、前記発泡ウレタン層のJIS K6400−5に準拠して測定される引張伸びが140%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真機器用発泡ウレタンロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73008(P2013−73008A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211833(P2011−211833)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】