説明

電子写真用トナー、その製造方法および該トナーを用いた画像形成装置

【課題】微小ドット再現性に優れ、長期にわたって画質を維持することができる磁性トナーとその製造方法を提供すること、また、トナー補給機構及びトナー濃度センサを必要としない、小型で安価な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と、磁性体とを有するトナーであって、該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤又は伸長剤の少なくとも1つの剤と反応させ、得られた分散物から溶媒を除去したトナー母体粒子と該磁性体粒子とを攪拌混合し、該トナー母体粒子表面に該磁性体粒子を固定させて得られる2成分現像剤用トナーを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真法、静電印刷法などに用いるトナー、その製造方法および該トナーを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場からの高画質化、小型化、高安定化の要求から、それに適した電子写真装置、それに使用するトナー現像剤の開発に拍車がかかっている。これら電子写真用のトナーとしては、まず高画質化に対応するために粒径の揃ったトナーであることが必須である。それに加えてトナーには、繰返し使用においてもトナーの粒径の変動が少ない事も重要な因子である。
このようなトナーにおける従来から知られるトナーの製造方法としては、所謂粉砕トナーが挙げられる。しかしながら該トナーは製造方法に由来して、現像装置内でのトナーの微粉化が進む。この微粉化が進むトナーの影響により、機内でのトナー飛散が発生したり、画質が悪化する等の不具合が生じやすいという問題点がある。
一方、トナーを用いて静電潜像を現像する発明として、磁気ブラシ現像法(たとえば特許文献1参照)に代表される二成分現像方法や一成分現像法などが知られている。このうち、二成分現像法に用いられる乾式二成分現像剤は、安定した画像濃度を得るためにキャリア粒子とトナーの混合比を一定にする必要がある。そのため、現像装置が大型になり、その動作機構も複雑になるという欠点がある。
他方、一成分現像法では、トナーと現像スリーブの摩擦により発生する電気力あるいはトナー中に磁性体を含有するトナーと、磁石を内蔵した現像スリーブ間との磁力により、現像スリーブ上にトナーが保持されて搬送され、搬送されたトナーは静電潜像上に吸引付着されて静電潜像が可視化されるものである。
従って、一成分現像法ではトナー濃度を制御する必要が無いために、現像装置が小型化できるという利点がある。しかしながら、現像領域でのトナーの粒子数が二成分現像法に比べて少ないために、感光体上へのトナーの現像量が十分ではなく、高速で画像形成が可能な複写機への対応が困難である。
【0003】
これらの欠点を改良する方法として特許文献2に開示されているトナー濃度制御を必要としない二成分現像法が提案されている。この提案は現像スリーブ周辺の現像剤がトナー供給部分でトナーを現像剤中に取り込み、現像剤を層厚規制部材で規制を加えてトナーの帯電を行なうために、トナーを補給する補給機構やトナー濃度を検知するセンサが必要ない点で優れているが、この装置に用いるトナーは適度の磁化率を有する事が必要である。
【0004】
一方、現今の高速かつ高画質化の画像形成装置では、トナーの粒径分布が高度に制御されている必要がある。トナーの粒径分布を極めて精度よく制御する方法として、結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させて得られた分散液から溶媒を除去する方法が挙げられる。この方法では、トナーを粉砕する必要が無いため、トナーの経時使用においてもトナーが粉砕され難く、結果として繰返し使用においても現像機中のトナーの粒径分布の変化が小さく、経時の使用においても安定して優れた画質が提供可能となる(たとえば特許文献3など)。
しかしながら、この前記した結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させ、得られた分散液から溶媒を除去する方法では、磁性体の比重が大きいために結着樹脂溶解液中に安定して分散することができず、沈降/凝集等によりトナー粒子中に均一に存在させる事が困難であるという問題点が依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術が有する課題、ならびに以下に示す課題を解決するためになされたものである。
本発明の第1の課題は、微小ドット再現性に優れ、長期にわたって画質を維持することができる磁性トナーとその製造方法を提供することにある。また本発明の第2の課題は、トナー補給機構及びトナー濃度センサを必要としない、小型で安価な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下に示すトナー、その製造方法および該トナーを用いたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
(1)少なくとも結着樹脂、磁性体とを有する2成分現像剤用トナーであって、該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させ、得られた分散物から溶媒を除去した後、トナー母体粒子と該磁性体粒子とを攪拌混合し、トナー母体粒子表面に磁性体粒子を固定させて得られることを特徴とする。
(2)前記(1)に記載の2成分現像剤用トナーにおいて、該磁性体が酸化鉄粒子の表面にカーボンブラックを結着した複合酸化鉄粒子であることを特徴とする。
(3) 2成分現像剤であって、前記(1)または(2)に記載の電子写真用トナーと、キャリアとからなることを特徴とする。
(4)少なくとも結着樹脂、磁性体からなる2成分現像剤用トナーの製造方法であって、該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させ、得られた分散物から溶媒を除去した後、トナー母体粒子と前記磁性体の粒子とを、攪拌羽根を有する回転体を具備し、冷却用ジャケットを有する処理槽で、前記回転体がその上に攪拌羽根を放射状に配置した羽根車である流動攪拌型混合装置を用い、攪拌混合し、縦型円筒撹拌装置または球状ミキサーを用い、30〜40m/sの周速で前記トナー母体粒子の表面に前記磁性体の粒子を固定させることを特徴とする。
(5)内部に磁界発生手段を有し、トナーとキャリアとを少なくとも含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、該第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設され、第1の規制部材により掻き落とされた現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収納部に対して現像剤の搬送方向の上流側から隣接し、かつ現像剤担持体に対向する位置にトナー補給用開口部を有するトナー収容部と、自由端を現像剤担持体の中心に向けて基端を現像剤収容部に一体的に取り付けられている第2の規制部材と該第2の規制部材と対向する位置に設けられ、トナー収容部から現像担持体へ向けて下向きに傾斜するよう形成された対面部と、を少なくとも有する画像形成装置であって、前記2成分現像剤が前記(3)に記載の現像剤である画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、トナー補給機構及びトナー濃度センサを必要としない、小型で安価な現像装置においても、トナー粒子に十分な帯電を付与することができ、しかも磁性体自身の色調が黒くなるため、少量の使用でも画像濃度の高い良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の画像形成装置に用いられる現像装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成装置における現像剤の挙動を説明する現像装置の部分断面図である。
【図3】本発明のトナーの製造方法に用いる撹拌機の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】帯電制御剤などを固定化するための流動撹拌型混合装置に用いられる撹拌羽の形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明について以下に詳しく説明する。
本発明の2成分現像用トナーは、少なくとも結着樹脂、磁性体からなる。なお本明細書中、本発明の2成分現像用トナーを磁性トナーと言うことがある。
(結着樹脂)
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、従来の一般的な材料を使用することができる。従来、トナー製造に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等があるが、通常のトナーにおいては、これらの中でもスチレンとアクリル酸エステルの共重合体からなる樹脂が最も一般的に使われている。これに対して、低温定着トナーにおいては、上述したような熱特性を満たしやすい樹脂が用いられる。ポリエステル樹脂は結着樹脂の軟化温度が低くガラス転移点が高いため、低温定着性と保存安定性に優れている。更にポリエステル樹脂のエステル結合と紙との親和性が良好であるため、耐オフセット性にも優れたトナーになる。本発明の電子写真用トナーの結着剤樹脂の主成分としてはポリエステル樹脂が好ましく用いられる。このポリエステル樹脂は、酸成分とアルコール成分の縮合反応、或いは環状エステルの開環反応により合成されるか、或いは、ハロゲン化合物とアルコール成分及び一酸化炭素により合成される。本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、上記した高分子化合物溶液中で、ポリエステル樹脂の合成材料となる上記したモノマーを組み合わせて重合させることによって、先に述べた優れた物性を有する本発明の静電荷像現像用トナーが容易に得られる。以下、ポリエステル樹脂の合成材料として用いられる各種モノマーについて説明する。
【0010】
先ず、アルコール成分及び酸成分としては、2価以上のものが好適に用いられる。例えば、2価のアルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0011】
又、3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタンジトリオール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0012】
2価の酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、及びその他の2価の有機酸が挙げられる。又、3価の酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−カルボキシメチルプロパン、テトラ(カルボキシメチル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等が挙げられる。これら有機酸の酸無水物及び酸ハロゲン化物も合成上好ましい酸成分である。
【0013】
これ以外の酸成分に相当する化合物としては、ハロゲン化合物を用いることができる。ハロゲン化物としては多ハロゲン化合物を使用するが、例えば、cis−1,2−ジクロロエテン、trans−1,2−ジクロロエテン、1,2−ジクロロプロペン、2,3−ジクロロプロペン、1,3−ジクロロプロペン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−クロロブロモベンゼン、ジクロロシクロヘキサン、ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、1,8−ジクロロオクタン、1,7−ジクロロオクタン、ジクロロメタン、4,4’−ジブロモビニルフェノール、1,2,4−トリブロモベンゼン等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、ポリエステル樹脂の合成成分として、上記に挙げた酸成分とアルコール成分のどちらか一方に、少なくとも芳香環を有するものを使用することが好ましい。又、本発明においては、ポリエステル樹脂の合成成分である、酸成分とアルコール成分の合計量が、先に述べた高分子化合物1部に対して1部〜30部、好ましくは1.5部〜10部の範囲となる様にして用いることが好ましい。
【0015】
又、酸成分とアルコール成分の使用比は、カルボキシル基1モル当量に対して、アルコール基0.9〜1.5モル当量、好ましくは1.0〜1.3モル当量の範囲であることが好ましい。尚、ここでいうカルボキシル基としては、上記に挙げた酸成分に相当する化合物であるハロゲン化物も含まれる。その他の添加剤としては、アミン成分を用いてもよい。具体的には例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。又、他の縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を用いて反応を行ってもよい。
【0016】
本発明のトナーとして好ましい態様は、活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂、着色剤及び離型剤を水系媒体中に分散剤の存在下で分散せしめた分散液を架橋剤及び伸長剤と反応させ得られた反応分散液から溶媒を除去することにより得られたトナーである。以下、このトナーについて詳述する。
【0017】
(活性水素と反応可能な変性ポリエステル RMPE:Reactive Modified Polyester)
活性水素と反応可能な反応性変性ポリエステル系樹脂RMPE(以下、ポリエステル系樹脂は単にポリエステルとも言う)には、例えば、イソシアネート基等の活性水素と反応する官能基を有するポリエステルプレポリマー等が包含される。本発明で好ましく使用されるポリエステルプレポリマーは、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)である。このイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)は、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルにポリイソシアネート(PIC)と反応させることによって製造される。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアミノ基である。前記反応性変性ポリエステルは、水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させる。架橋剤、伸張剤としては前述したアミノ基を有するアミン類が好適に用いられる。ポリオール(PO)としては、ジオール(DIO)および3価以上のポリオール(TO)が挙げられ、DIO単独、またはDIOと少量のTOとの混合物が好ましい。ジオール(DIO)としては、アルキレングリコール、たとえばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど;アルキレンエーテルグリコール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど;脂環式ジオール、たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど;ビスフェノール類、たとえばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど;上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、たとえばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール、たとえばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど;3価以上のフェノール類、たとえばトリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど;上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0018】
ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)および3価以上のポリカルボン酸(TC)が挙げられ、DIC単独、およびDICと少量のTCとの混合物が好ましい。ジカルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸、たとえばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸など;アルケニレンジカルボン酸、たとえばマレイン酸、フマール酸など;芳香族ジカルボン酸、たとえばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸、たとえばトリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル、たとえばメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどを用いてポリオールと反応させてもよい。ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比を[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0019】
ポリイソシアネート(PIC)としては、脂肪族ポリイソシアネート、たとえばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど;脂環式ポリイソシアネート、たとえばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど;芳香族ジイソシアネート、たとえばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど;芳香脂肪族ジイソシアネート、たとえばα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど;イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネートの比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0020】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0021】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)と、これにアミン類(B)とを反応させることにより、ウレア変性ポリエステル系樹脂(UMPE:Urea Modified Polyesters)を得ることができる。このものは、トナーバインダーとしてすぐれた効果を示す。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0022】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン、たとえばジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物など)などが挙げられる。
【0023】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。前記アミン類(B)は、活性水素と反応可能な変性ポリエステルに対する架橋剤や伸長剤として作用する。
【0024】
本発明で用いるウレア変性ポリエステル(UMPE)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステル単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0025】
(未変性ポリエステル)
本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(UMPE)等の変性ポリエステル(MPE)単独使用だけでなく、このものと共に、変性されていないポリエステル(PE)をトナーバインダー成分として含有させることもできる。PEを併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。PEとしては、前記MPEのポリエステル成分と同様なポリオールとポリカルボン酸との重縮合物などが挙げられ、好ましいものもMPEと同様である。また、UMPEに対しては、無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているもの、例えばウレタン結合で変性されているものも併用することができる。MPEとPEは少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、MPEのポリエステル成分とPEは類似の組成が好ましい。
PEを含有させる場合のMPEとPEの重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。MPEの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0026】
PEのピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。PEの水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。PEの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0027】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄の表面にシランカップリング剤等の結着剤によりカーボンブラックをコーティングした物が使用される。
このマグネタイトは公知の製造方法で作られる。例えば、硫酸鉄水溶液をアルカリ性水溶液で中和し、水酸化鉄を得る。その後pHを10以上に調整した水酸化鉄懸濁液を酸素を含有するガスで酸化しマグネタイトスラリーを得る。次いで、該スラリーを水洗し、濾過し、乾燥し、解砕して、マグネタイト粒子が得られる。
これらの強磁性体の好ましい態様としては、実質的にケイ素又はアルミニウムを含有しない球状磁性体で、平均粒径が0.2〜0.4μm、好ましくは0.2〜0.3μmのものがよい。トナー中の磁性体が実質的にケイ素又はアルミニウム元素を含有しない球状磁性体であることにより、湿度環境の変動によるトナーの帯電量の変化を小さくすることができる。磁性トナー中に含有させる磁性体の量としてはトナーに対し好ましくは5〜80wt%、特に好ましくはトナーに対し10〜30wt%が良い。
【0028】
また、本発明に用いられる磁性トナーは、1000Oeの磁場中での磁化が10〜30[emu/g]、好ましくは15〜25[emu/g]が良い。10[emu/g]より小さいと、トナーの磁気バイアス効果が小さくなるため、トナー飛散や地肌汚れが発生し、また、30[emu/g]より大きいと、トナーの磁気バイアス効果が大きくなるため、画像濃度が低くなる。前記磁性トナーの1000Oeの磁場中での飽和磁化σtが10〜30[emu/g]であることにより、トナー取り込み時に現像剤がトナーを効率よく取り込むことができる。このため、トナー消費量の多い画像を繰り返し複写しても画像濃度の低下を防止できる。また、トナー自体の磁化による現像剤担持体方向への磁気束縛力により現像剤担持体の回転に伴うトナー飛散や地肌部分へのトナー現像を有効に防止できる。また、現像剤が現像スリーブから離脱し感光体上に付着することを防止することが可能である。さらに現像に寄与する現像剤を構成するキャリアの粒子径を小さくすることによりトナーの保有率を高くできる。このため、高速複写機においても十分な画像濃度及び細線再現性を達成できる。
【0029】
さらに、本発明の磁性トナーに用いられる磁性体が、1000Oeの磁場中での磁化:σmが、30〜90emu/g、好ましくは30〜70emu/gにより、前記トナーの磁気特性を満足することが可能となる。また本発明の磁性トナーに用いられる磁性体はFeO含有量が10〜30wt%、好ましくは15〜25wt%で、比表面積が1〜60m/g、好ましくは3〜20m/gであることが好ましい。この範囲のFeO含有量及び比表面積とする事により、トナーの抵抗と帯電性を両立することができるため、画像濃度の高く地肌汚れのない画像を得ることができる。
また本発明の磁性トナーの体積平均粒子径は5〜15μmであることが好ましい。
【0030】
(磁性体の混合付着:磁性体の固定化)
電子写真用トナーとして磁性体をトナー母体粒子に固定化させる必要がある。磁性体を固定化させるための混合付着には、一般的に使用されるヘンシェルミキサー等の縦型円筒攪拌装置、前出の球状ミキサーを用い、30〜40m/sの周速で混合付着させることができる。
【0031】
(流動撹拌型混合装置の容器形状1)
本発明においては、樹脂粉体Aに帯電制御剤を固定化するために、流動撹拌型混合装置を用いる。流動攪拌型混合装置としては、容器内壁より突出した固定部材が存在しない容器が好ましく、回転体の周囲に配置された容器内壁より突出する部分や凹凸が内壁に存在せず、回転体と突出部材とのギャップを形成していない球形の容器が好ましい。容器壁面に凹凸がある装置、例えば、特開平5−34971号公報の図1に示されているハイブリダイザーの場合、高速回転によってトナーが容器壁面と衝突して、摩擦、発熱するため、トナーの一部が融着したり、凝集したり離型剤が露出してしまい、トナー物性が変化してしまう惧れがある。突出部分がある場合には、その部材の容器内壁面からの突出高さは好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。この滑らかな内壁を高速で粉体が流動することにより、粒子のさらなる粉砕も進行せずに均一に粉体の表面を処理することができる。内壁に突起があり滑らかでないと、高速気流に乱流が生じ易く、粒子の余分な粉砕や粒子表面の局所的融解、粉体への処理の均一性の欠如(粒子間へ与えられるエネルギーのばらつき)が生じやすい。容器内壁面からの突出部材には、例えば内部温度を測定するためのセンサーや、粉体が内壁に付着したりすることを防止する回転体の軸の方向に突出した部材は含まれない。
【0032】
(流動撹拌型混合装置の容器形状2)
さらに流動撹拌型混合装置の容器形状2としては、円筒形のものや内壁が平面のものではなく、内壁に平坦な部分を有しない略球体が好ましく、かつ、連続した曲面を形成したものが好ましい。この連続した曲面以外に、粉体排出装置や気体排出口等は含まれない。このような連続した曲面は安定した乱れのない高速気流を生み出し、処理する樹脂粉体を含む粒子間に与えるエネルギーの均一性を生み出す。例えば処理容器として、Q型ミキサー(三井鉱山社製)が適当な例として挙げられる。
【0033】
(羽根と固定化)
樹脂粉体に表面処理剤を固定化するためには、羽根と粉体又は粉体同士の衝突回数を増し、さらには大きな遠心力で内壁面方向に打ち出すことが重要なため、攪拌羽根を高速で回転させ十分な衝撃力を粉体に与えなくてはならない。回転している羽根と衝突した際に羽根から受ける衝撃力は回転方向成分が最大となるため、なるべく多くの回転方向成分の力を粉体に伝達でき得る羽根の形状、例えば図4に示したような羽根が望ましい。
【0034】
(羽根形状)
球状容器内を高速気流によって流動する粉体は容器頂部から羽根上に直下してくるため、回転方向に対して垂直な平面を有する羽根車は衝撃力をすべて回転方向成分として粉体に転嫁できる。したがって、図4に示したような羽根車を用いれば回転によるエネルギーを最大限活用することができる。また、羽根の枚数は粉体との衝突確率、つまり使用する回転数と容器容量で決まるが、容器容量が20〜150リットルでは4〜12枚が好ましい。
【0035】
(処理量と攪拌効率)
球状容器内では粉体は常に循環しているが、仕込み量が少ないと樹脂粉体のほとんどは容器壁面に付着してしまい、攪拌効率が上がらないばかりか収量が少なくなってしまう。また、付着したままの樹脂粉体は未処理の状態となるため、でき上がりの混合物に未処理物が混入する惧れがある。そのため、仕込み量を容器容量の0.2倍以上にすると循環する樹脂粉体のセルフクリーニング機構が働き、樹脂粉体自身で付着を掻き落とすため、付着したままで処理されない樹脂粉体を無くし、均一な処理物が製造可能となる。粉体を均一に循環させ最適な攪拌効率を得るためには、仕込み量は容器容量の0.2〜0.6倍、好ましくは0.3倍である。さらに効率を上げる方法としては、羽根の面積を大きくしたり、処理時間を長くする等が挙げられる。
【0036】
(品温(発熱)と処理方法)
トナー組成物を高速で攪拌混合すると、粉体には衝撃力を始めとする様々な力がかかり、余剰となったエネルギーは熱エネルギーとして放出されるため、容器内部の温度が上昇する。内部温度が上昇し過ぎると樹脂粉体の一部が融解したり、離型剤が露出してしまい、品質に悪影響を及ぼすことになる。球状容器はそのような発熱を抑えるために、容器外側にジャケットを有する二重構造をとり熱媒体が流してある。さらに、羽根車を用いれば、羽根によって打ち出された樹脂粉体は高速気流によって一度頂部まで運ばれるため、その間にも冷却される。したがって効率良く表面処理ができるので内部温度が上昇する前に処理を終えることができる。
【0037】
(樹脂粉体のガラス転移温度の影響)
近年の電子写真用トナーは低融点化が進んでおり、樹脂粉体のガラス転移温度Tg’は通常40〜70℃である。攪拌混合により品質を落とさず、樹脂粉体に効率良く帯電制御剤を固定化するためには、Tg’を基準に(Tg’−35)〜(Tg’−10)℃の温度範囲で処理するのが望ましい。T<Tg’−35℃では、攪拌羽根と粉体又は粉体同士の衝突による発熱が全く無い状態、つまり十分な固定化がなされていないことになる。逆に、T>Tg’−10℃では発熱量が冷却能力を上回っている状態であり、例えば電子写真用トナーでは樹脂粉粒子に含まれる離型剤が粒子表面に露出してしまう。なおガラス転移温度は、DSCにより求めることができる。
このようなトナーは保存性が低下し、複写機内を汚すといった不具合が起こる。また、低融点物質が溶け出し、融着によりトナーの凝集物を形成するため、電子写真用トナーとして用いるには新たに分級、除去の工程が必要になり、効率的でない。トナーは、一般に流動性が悪いほど発熱しやすく、特に低温定着化(低融点化)させるとトナー流動性は悪化し、発熱しやすい。本発明においては、後述するように、流動性を良くするために流動性補助剤として無機微粒子を添加している。これにより流動性を良くすることができ、発熱量の上昇の防止に効果的である。
【0038】
(攪拌速度)
攪拌速度(周速度)は65〜120m/s、好ましくは70〜100m/sである。この範囲の速度で攪拌することで、個々の粒子に大きな衝撃力を与え、さらにその衝撃力によって打ち出された粒子は大きな速度を持つため、攪拌容器内を高速で運動できる。
【0039】
上述した処理温度及び撹拌速度の条件を組み合わせれば、表面処理剤のトナー表面への固定(打ち込み)に効果が高い。以下に、撹拌槽内の流動の様子を、図面を用いて具体的に説明する。
【0040】
(撹拌槽内の流動)
球状容器を用いて攪拌羽根による2種以上の粉体の混合を行った場合、図3に示すように、容器内における粉体の挙動は、先ず容器底部の攪拌羽根と衝突することで大きな遠心力を受け容器内壁面方向に打ち出される。次に、攪拌羽根の高速回転によって生み出された高速気流によって内壁面に沿って頂部まで達し、さらに頂部から回転軸へ向かって下降する高速気流に乗って攪拌羽根上まで運ばれ、再び打ち出されることになる。このため粉体は常に安定して循環することとなり、従来の竪型円筒状混合機の欠点であった容器底部での滞留はなく、均一な処理が行われることになる。
【0041】
(離型剤)
本発明のトナーは、トナーバインダーである結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。ワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス、たとえばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど;長鎖炭化水素、たとえばパラフィンワックス、サゾールワックスなど;カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル、たとえばカルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど;ポリアルカノールエステル、たとえばトリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど;ポリアルカン酸アミド、たとえばエチレンジアミンジベヘニルアミドなど;ポリアルキルアミド、たとえばトリメリット酸トリステアリルアミドなど;およびジアルキルケトン、たとえばジステアリルケトンなどなどが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。本発明のワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0042】
(帯電制御剤)
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0043】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。好ましくは荷電制御剤の使用量はバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0044】
(外添剤)
本発明で得られた着色樹脂粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5μm〜2μmであることが好ましく、特に5μm〜500μmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。この他高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。このような外添剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0045】
本発明において荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0046】
(現像剤用キャリア)
本発明において現像剤を構成するキャリアとしては、1000[Oe]の磁場中における飽和磁化を30〜120[emu/g]、好ましくは40〜100[emu/g]とすることにより、現像領域における現像剤の現像スリーブへの磁気束縛力が大きくなるために、感光体上へのキャリアの現像が有効に防止され、良好な画像が得られる。
本発明において現像剤を構成するキャリアとしては、重量平均粒子径が20〜100μm、好ましくは20〜80μmとすることにより、現像領域における現像剤層のトナー濃度を高くすることができるため、高速機での現像条件においても画像濃度の高い良好な画像が得られる。
本発明において現像剤を構成するキャリアの核体粒子としては、公知のものでよく例えば鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの合金や化合物;前記強磁性体微粒子と樹脂との複合体等が挙げられる。
これら本発明で用いられるキャリアはより耐久性を長くする目的で、表面を樹脂で被覆することが好ましい。
被覆層を形成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもトナースペントを防止する点で好ましいのはシリコーン樹脂又はその変成品、弗素樹脂、特にシリコーン樹脂又はその変成品である。
【0047】
シリコーン樹脂としては、従来から知られているいずれのシリコーン樹脂であってもよく、下記式(1)で示されるオルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン及びアルキド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変成したシリコーン樹脂が挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
上式中Rは水素原子、炭素原子1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、k、l、m、n、o、pは1以上の整数を示す。R及びRは水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数2〜4のアリケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エチレンオキシド基、グリシジル基又は下記式(2)で示される基である。
【0050】
【化2】

【0051】
上記式中Rは、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基である。
上記各置換基は未置換のもののほか、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルキル基、フェニル基、エチレンオキサイド基、グリシジル基、ハロゲン原子のような置換基を有してもよい。
【0052】
また本発明で用いられるキャリアは、その体積固有抵抗を制御するために被覆層中に導電性付与材料を分散しても良い。分散される導電性材付与は従来より公知の物でよく、例えば鉄、金、銅等の金属;フェライト、マグネタイト等の酸化鉄;カーボンブラック等の顔料が挙げられる。
この中でも特にカーボンブラックの一つであるファーネスブラックとアセチレンブラックの混合物を用いることにより、少量の導電性微粉末の添加で効果的に導電性の調整が可能で、更に被覆層の耐摩耗性に優れたキャリアを得ることが可能となった。これらの導電性微粉末は、粒径0.01〜10μm程度のものが好ましく、被覆樹脂100重量部に対して2〜30重量部添加されることが好ましく、さらには5〜20重量部が好ましい。
また、キャリア被覆層中には核体粒子との接着性を向上させたり導電性付与剤の分散性を向上させる目的でシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加しても良い。
本発明用いるシランカップリング剤としては下記一般式(3)で示される化合物である。
【0053】
YRSiX ・・・(3)
前記式(3)中、Xはケイ素原子に結合している加水分解基で、例えばクロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、アルキルアミノ基、プロペノキシ基、Yは有機マトリックスと反応する有機官能基で、例えばビニル基、メタクリル基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。Rは炭素数1〜20のアルキル基又はアルキレン基である。
前記シランカップリング剤の中でも、特に負帯電性を有する現像剤を得るにはYにアミノ基を有するアミノシランカップリング剤が好ましく、正帯電性を有する現像剤を得るにはYにエポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤が好ましい。
被覆層の形成法としては、従来と同様、キャリア核体粒子の表面に被覆層形成液を噴霧法、浸漬法等の手段で塗布すればよい。被覆層の厚さは0.1〜20μmが好ましい。
【0054】
本発明の現像剤に用いられるキャリアの重量平均粒子径が20〜100μmで、磁性トナーの体積平均粒子径が5〜15μmであることが好ましい。
また本発明の現像剤は磁性トナーと磁性キャリアとからなり、その重量比は10:90〜50:50であることが好ましい。
現像剤を磁性トナーと磁性キャリアの重量比が10:90〜50:50であると構成することにより、現像領域において現像に寄与するトナーの量が多く、トナーの保有率を高くできるために、高速複写機においても十分な画像濃度及び細線再現性を達成できる。
【0055】
次に本発明の画像形成装置について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置で用いられる現像装置部分の概略図である。潜像担持体である感光体ドラム1の側方に配設される現像装置13は、支持ケース14、現像剤担持体としての現像スリーブ15、現像剤収容部材16、現像剤規制部材としての第1ドクターブレード17等を有して構成される。
感光体ドラム1側に開口を有する支持ケース14は、内部にトナー18を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー19を形成している。トナーホッパー19の感光体ドラム1側寄りには、トナー18と磁性粒子であるキャリアとからなる現像剤22を収容する現像剤収容部16aを形成する現像剤収容部材16が、支持ケース14と一体的に設けられている。また、現像剤収容部材16の下方に位置する支持ケース14には、対向面14bを有する突出部14aが形成されており、現像剤収容部材16の下部と対向面14bとの間の空間によって、トナー18を供給するためのトナー供給開口部20が形成されている。
【0056】
トナーホッパー19の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ21が配設されている。トナーアジテータ21は、トナーホッパー19内のトナー18をトナー供給開口部20に向けて撹拌しながら送り出す。また、トナーホッパー19の、感光体ドラム1と対向する側には、トナーホッパー19内のトナー18の量が少なくなったときにこれを検知するトナーエンド検知手段14cが配設されている。
感光体ドラム1とトナーホッパー19との間の空間には、現像スリーブ15が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ15は、その内部に、現像装置13に対して相対位置が不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有している。現像剤収容部材16の、支持ケース14に取り付けられた側と対向する側には、第1ドクターブレード17が一体的に取り付けられている。第1ドクターブレード17は、その先端と現像スリーブ15の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0057】
現像剤収容部材16の、トナー供給開口部20の近傍に位置する部位には、規制部材としての第2ドクターブレード23が配設されている。第2ドクターブレード23は、その自由端が現像スリーブ15の外周面に対して一定の隙間を保つべく、現像スリーブ15の表面に形成される現像剤22の層の流れを妨げる方向、すなわち、自由端を現像スリーブ15の中心に向けて、基端を現像剤収容部材16に一体的に取り付けられている。
現像剤収容部16aは、現像スリーブ15の磁力が及ぶ範囲で、現像剤22を循環移動させるに十分な空間を有するように構成されている。なお、対向面14bは、トナーホッパー19側から現像スリーブ15側に向けて下向きに傾斜するよう、所定の長さにわたって形成されている。これにより、振動、現像スリーブ15の内部に設けられた図示しない磁石の磁力分布のむら、現像剤22中の部分的なトナー濃度の上昇等が発生した際に、第2ドクターブレード23と現像スリーブ15の周面との間から現像剤収容部16a内のキャリアが落下しても、落下したキャリアは対向面14bで受けられて現像スリーブ15側に移動し、磁力で現像スリーブ15に磁着されて再び現像剤収容部16a内に供給される。これにより現像剤収容部16a内のキャリア量の減少を防止することができ、画像形成時における、現像スリーブ15の軸方向での画像濃度むらの発生を防止することができる。対向面14bの傾斜角度αとしては5゜程度が望ましく、また、所定の長さl2としては、好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜10mm程度が望ましい。
【0058】
上記構成により、トナーホッパー19の内部からトナーアジテータ21によって送り出されたトナー18は、トナー供給開口部20を通って現像スリーブ15に担持された現像剤22に供給され、現像剤収容部16aへ運ばれる。そして、現像剤収容部16a内の現像剤22は、現像スリーブ15に担持されて感光体ドラム1の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー18のみが感光体ドラム1上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体ドラム1上にトナー像が形成される。
ここで、上記トナー像形成時における現像剤22の挙動を説明する。現像装置13に磁性キャリアのみからなるスタート剤をセットすると、磁性キャリアは現像スリーブ15の表面に磁力により担持されるものと現像剤収容部16a内に収容されるものとに分かれる。現像剤収容部16a内に収容された磁性キャリアは、現像スリーブ15の矢印方向への回転に伴い、現像スリーブ15内からの磁力によって1mm/s以上の移動速度で循環移動する。そして、現像スリーブ15の表面に磁力により担持された磁性キャリアの表面と現像剤収容部16a内で移動する磁性キャリアの表面との境界部において界面Xが形成される。次に、トナーホッパー19にトナー18がセットされると、トナー供給開口部20より現像スリーブ15に担持された磁性キャリア22aにトナー18が供給される。従って、現像スリーブ15は、トナー18と磁性キャリアとの混合物である現像剤22を担持することとなる。
【0059】
現像剤収容部16a内では、収容されている現像剤22の存在により、現像スリーブ15によって搬送される現像剤22に対して、その搬送を停止させようとする力が働いている。そして、現像スリーブ15に担持された現像剤22の表面に存在するトナー18が図2における点線で示す界面Xへ搬送されると、界面X近傍における現像剤22間の摩擦力が低下して界面X近傍の現像剤22の搬送力が低下する。これにより界面X近傍での現像剤22の搬送量が減少する。一方、磁性キャリアの表面と現像剤収容部16a内で移動する磁性キャリアの表面とが合流する合流点Yより現像スリーブ15の回転方向上流側の現像剤22には、上述の現像剤収容部16a内のような、現像スリーブ15によって搬送される現像剤22に対して、その搬送を停止させるような力は作用しないので、合流点Yへ搬送されてきた現像剤22と界面Xを搬送される現像剤22との搬送量のバランスが崩れて現像剤22の玉突状態が発生し、合流点Yの位置が上昇して界面Xを含む現像剤22の層厚が増加する。また、第1ドクターブレード17を通過した現像剤22の層厚も徐々に増加し、この増加した現像剤22が第2ドクターブレード23によって掻き落とされる。そして、第1ドクターブレード17を通過した現像剤22が所定のトナー濃度に達すると、第2ドクターブレード23に掻き落とされて層状となった増加分の現像剤22がトナー供給開口部20を塞ぎ、この状態でトナー18の取り込みが終了する。このとき、現像剤収容部16a内ではトナー濃度が高くなることにより現像剤22の嵩が大きくなり、これにより現像剤収容部16a内の空間が狭くなることによって、現像剤22が循環移動する移動速度も低下する。このトナー供給開口部20を塞ぐように形成された現像剤22の層において、第2ドクターブレード23に掻き落とされた現像剤22は、対向面14bで受けられるが、対向面14bが現像スリーブ15側に向けて角度αで下方に傾斜し、かつ、所定長さl2を有しているため、現像剤22の層の移動による、トナーホッパー19への現像剤22の落下を防止することができ、現像剤22の量を常に一定に保つことができるので、トナー供給を常時一定に自己制御することが可能となる。
【0060】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお以下に記載する部および%は、それぞれ、重量部、重量%を意味する。またトナーなどの平均粒径及び粒度分布はカーコールターカウンター法により測定することができる。トナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。本発明においてはコールターマルチサイザーII型を用い個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科技研)及びパーソナルコンピューターに接続し、測定することができる。
【0061】
(有機微粒子エマルションの合成)
(製造例1)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]を堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920により測定した体積平均粒径は、0.10μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは57℃であった。
【0062】
(水相の調製)
(製造例2)
水990部、[微粒子分散液1]80部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)40部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0063】
(低分子ポリエステルの合成)
(製造例3)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物561部、テレフタル酸218部、アジピン酸48部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸45部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25であった。
【0064】
(プレポリマーの合成)
(製造例4)
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応して[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。
【0065】
(ケチミンの合成)
(製造例5)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
【0066】
(油相の作成)
(製造例6)
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナウバWAX100部、CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填1パスし、[WAX分散液1]を得た。
【0067】
(乳化・脱溶剤)
[実施例1]
[WAX分散液1]648部、[プレポリマー1]を154部、[ケチミン化合物1]6.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)により5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。[分散スラリー1]は、体積平均粒径5.95μm、個数平均粒径5.45μm(マルチサイザーIIで測定)であった。
【0068】
(洗浄・乾燥)
[乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、下記の(1)〜(4)の操作を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。この超音波アルカリ洗浄を再度行った(超音波アルカリ洗浄2回)。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い母体粒子を得た。この母体粒子100部にカーボン複合マグネタイト微粒子 20重量部 (平均粒径:0.20μm、FeO含有量:20wt%、比表面積:8.3m/g、磁化:61emu/g)を添加し、Qミキサー(三井鉱山製)にて打ち込み処理である固定処理を施し、体積平均粒径Dv6.15μm、個数平均粒径Dn5.61μm、Dv/Dn1.10(マルチサイザーIIで測定)の[トナー母体粒子1]を得た。
得られた[トナー母体粒子1]100部に対し、外添剤としての疎水性シリカ1.0部と、疎水化酸化チタン0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、(トナー1)を製造した。
【0069】
[実施例2]
実施例1でカーボン複合マグネタイトの量を40重量部にした以外は実施例1と同様にして体積平均粒径Dv6.04μm、個数平均粒径Dn5.41μm、Dv/Dn1.12の(トナー2)を得た。
【0070】
(マスターバッチの合成)
(製造例7)
カーボン複合マグネタイト微粒子(平均粒径:0.20μm、FeO含有量:20wt%、比表面積:8.3m/g、磁化:61emu/g):40部、結着樹脂:低分子ポリエステルI:60部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロール表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行ない、パルペライザーで1mmφの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0071】
(油相の作成)
(製造例8)
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナウバワックス(ワックスをWAXと記載することがある)110部、CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]1200部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液2]を得た。
[原料溶解液2]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[WAX分散液2]を得た。
【0072】
[比較例1]
実施例1での[WAX分散液1]の代わりに[WAX分散液2]を使用し、Q−ミキサーにいる磁性体打ち込みをしなかった以外は実施例1と同様にして[トナー母体粒子3]を得た。得られた[トナー母体粒子3]に対し、実施例1と同様にして外添剤を混合処理し、(トナー3)を製造した。
【0073】
[比較例2]
ポリエステル樹脂 100重量部
含クロムアゾ染料 2重量部
カルナウバワックス 5重量部
カーボン複合マグネタイト微粒子(平均粒径:0.20μm、FeO含有量:20wt%、比表面積:8.3m2/g、磁化:61emu/g) 25重量部
上記処方の混合物をヘンシェルミキサーにて混合後、140℃に設定した混練押し出し機によって混練した後、冷却固化せしめ、これをカッターミルにて粗粉砕後、機械式粉砕機を使用して微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級機を使用して重量平均径μmの母体粒子を得た。この母体粒子100重量部に対して、外添剤としての疎水性シリカ1.0部と、疎水化酸化チタン0.5部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し体積平均粒径Dv6.84μm、個数平均粒径Dn4.58μm、Dv/Dn1.49の(トナー4)を得た。
【0074】
キャリアの製造例を以下に示す。
(キャリア製造例1)
湿式法により作成したマグネタイト100重量部に対してポリビニルアルコール2重量部、水60重量部をボールミルに入れ12時間混合してマグネタイトのスラリーを調整した。このスラリーをスプレードライヤーにて噴霧造粒し、平均粒径54μmの球形粒子とした。
この粒子を窒素雰囲気中で1000℃の温度で3時間焼成後冷却し、キャリアの核となる[核体粒子1]を得た。
【0075】
被覆層形成液
シリコーン樹脂溶液 100重量部
トルエン 100重量部
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 6重量部
カーボンブラック 10重量部
上記混合物をホモミキサーで20分間分散し、被覆層形成液1を調整した。
この被覆層形成液1を、流動床型コーティング装置を用いて[核体粒子1]を1000重量部の表面にコーティングして、シリコーン樹脂被覆した[キャリアA]を得た。
この[キャリア粒子A]の特性は以下の通りであった。
平均粒子径 :58μm
飽和磁化 :65emu/g
【0076】
製造例で作成された[キャリアA]100重量部に対して実施例1で作製したトナー1:25重量部をそれぞれ加え、ターブラーミキサーで混合し現像剤を得た。
次に図1に示される現像装置を(株)リコー製のimagioMF200に組み込み、画像出し試験を行い、下記評価試験法により、画像濃度、地肌汚れ、中間調再現性、画像濃度制御性について、初期、1万枚および5万枚通紙後にて評価した。
【0077】
実施例2、比較例1〜2に示す(トナー2)〜(トナー4)を用い同様に現像剤を作成して、同様の評価を行なった。
【0078】
評価試験法
(画像濃度)
画像の上部、中部、下部からそれぞれ3カ所、計9カ所の位置の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0079】
(地肌汚れ)
非画像部の地肌汚れを5段階のランク評価を行い、ランク3以上を許容レベルとした。
【0080】
(中間調再現性)
コダック社グレースケール(No.Q−13)を複写して階調可能な数を評価した。
評価基準は次の通りとした。
◎ :13以上
○ :10〜12
△ : 7〜 9
× : 5〜 7
××: 5以下
【0081】
(画像濃度制御性)
原稿濃度が1.6の100%ソリッド画像を20枚連続複写し、画像濃度の変化を評価した。
評価基準は次の通りとした。
◎:画像濃度差が0.1未満
○:0.1以上0.2未満
△:0.2以上0.5未満
×:0.5以上
上記した評価試験による結果を、下記表1に示す。
【0082】
【表1】

【符号の説明】
【0083】
1 潜像担持体(感光体ドラム)
13 現像装置
14 支持ケース
14a 14の突出部
14b 14aの対向面
14c トナーエンド検知手段
15 現像剤担持体(現像スリーブ)
16a 現像剤収容部
17 第1の規制部材(第1ドクターブレード)
18 トナー
19 トナー収容部(トナーホッパー)
20 トナー供給開口部
21 トナー供給手段(トナーアジテータ)
22 現像剤
23 第2の規制部材(第2ドクターブレード)
α 対向面14bの傾斜角度
lα 対向面14bの長さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】米国特許第2874063号明細書
【特許文献2】特許第3884918号公報
【特許文献3】特開2003−140381号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と、磁性体とを有するトナーであって、該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤又は伸長剤の少なくとも1つの剤と反応させ、得られた分散物から溶媒を除去したトナー母体粒子と該磁性体粒子とを攪拌混合し、該トナー母体粒子表面に該磁性体粒子を固定させて得られることを特徴とする2成分現像剤用トナー。
【請求項2】
前記磁性体が酸化鉄粒子の表面にカーボンブラックを結着した複合酸化鉄粒子であることを特徴とする請求項1に記載の2成分現像剤用トナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の2成分現像剤用トナーとキャリアとからなる現像剤。
【請求項4】
少なくとも結着樹脂と、磁性体とを含むトナーの製造方法であって、該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤又は伸長剤の少なくとも1つの剤と反応させて得られた分散物から溶媒を除去したトナー母体粒子と、前記磁性体の粒子とを、縦型円筒撹拌装置または球状ミキサーを用い、30〜40m/sの周速で前記トナー母体粒子の表面に前記磁性体の粒子を固定させることを特徴とする2成分現像剤用トナーの製造方法。
【請求項5】
内部に磁界発生手段を有し、トナーとキャリアとを少なくとも含む2成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体に担持されて搬送される前記現像剤の量を規制する第1の規制部材と、該第1の規制部材よりも前記現像剤担持体上の現像剤の搬送方向上流側に配設され、第1の規制部材により掻き落とされた現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収納部に対して現像剤の搬送方向の上流側から隣接し、かつ現像剤担持体に対向する位置にトナー補給用開口部を有するトナー収容部と、自由端を現像剤担持体の中心に向けて基端を現像剤収容部に一体的に取り付けられている第2の規制部材と該第2の規制部材と対向する位置に設けられ、トナー収容部から現像担持体へ向けて下向きに傾斜するよう形成された対面部と、を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記2成分現像剤が請求項3に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−118157(P2011−118157A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275503(P2009−275503)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】