説明

電子制御ユニットおよび車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】ハウジング内に収容されたセンサに伝わる振動を低減することができ、センサの検出精度を高めることができる電子制御ユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】電子制御ユニット10であって、センサが取り付けられたセンサ基板と、電気部品の作動を制御する制御基板と、センサ基板および制御基板が収容されるハウジング40と、を備え、ハウジング40の内部空間には、電気部品が収容される第一収容室41と、センサ基板および制御基板が階層状態で収容される第二収容室と、第一収容室と第二収容室とを仕切る仕切部44と、が形成されており、センサ基板および制御基板は仕切部44に支持され、仕切部44にはリブ44gが突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットおよびこの電子制御ユニットを用いた車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液路が形成された基体と、基体の内部に形成されたリザーバからブレーキ液を吸引するポンプを作動させるためのモータと、車体の挙動を検出するセンサと、基体に取り付けられた電磁弁およびモータの作動を制御する電子制御ユニットと、を備えている。
【0003】
車両用ブレーキ液圧制御装置の電子制御ユニットは、センサで検出された車体の挙動に基づいて、電磁弁およびモータの作動を制御する制御基板と、制御基板が収容されるハウジングと、を備えている。
従来の電子制御ユニットのハウジングとしては、基体から突出した電磁弁などの電気部品が収容される第一収容室と、制御基板が収容される第二収容室とが内部空間に形成され、第一収容室と第二収容室とを仕切る仕切部が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の電子制御ユニットとしては、センサが取り付けられたセンサ基板をハウジングの第二収容室に収容し、センサ基板を仕切部に支持させているものがある。この構成では、センサと電子制御ユニットとを別々に車内に収める必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−105535号公報(段落0022、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、センサ基板を仕切部に支持させた従来の電子制御ユニットでは、ハウジング外部や電気部品などで生じた低周波の振動が、ハウジングの仕切部を介してセンサに伝わると、センサの検出精度が低下する可能性がある。
また、ハウジングにカバーを振動溶着させる場合には、溶着時に生じる振動がハウジングの仕切部を介してセンサに伝わると、センサの検出精度に影響を与える可能性がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、ハウジング内に収容されたセンサに伝わる振動を低減することができ、センサの検出精度を高めることができる電子制御ユニットおよびこの電子制御ユニットを用いた車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、電子制御ユニットであって、センサが取り付けられたセンサ基板と、前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、前記センサ基板および前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、前記ハウジングの内部空間には、前記電気部品が収容される第一収容室と、前記センサ基板および前記制御基板が階層状態で収容される第二収容室と、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部と、が形成されており、前記センサ基板および前記制御基板は前記仕切部に支持され、前記仕切部にはリブが突設されていることを特徴としている。
【0009】
この構成では、仕切部にリブを設けることで、仕切部の剛性が大きくなり、仕切部の固有振動数が高くなる。これにより、仕切部に支持されたセンサに低周波数の振動が伝わり難くなるため、センサの検出精度を高めることができる。
【0010】
前記した電子制御ユニットでは、前記仕切部において、前記第一収容室側の面は、前記リブによって複数の領域に区画されており、複数の前記電気部品は、前記各領域内で前記仕切部に支持されているように構成することができる。
この構成では、第一収容室に収容される各電気部品と、仕切部に突設されたリブとの干渉を防ぐことができる。
【0011】
前記した電子制御ユニットにおいて、前記仕切部には、前記第二収容室に開口した凹部が形成されており、前記凹部を利用して、前記センサの収容空間であるセンサ収容部が形成されているように構成することができる。
【0012】
この構成では、第一収容室の空間を有効に利用してセンサ収容部が設けられているため、ハウジングを小型化することができる。
また、電気部品から発生した熱が凹部によって遮断されるため、熱がセンサに与える影響を防ぐことができ、センサの検出精度を高めることができる。
【0013】
前記した電子制御ユニットにおいて、前記凹部の内面および外面の少なくとも一方にリブを突設させた構成では、凹部の肉厚が大きくなり、仕切部を射出成形するときに、金型のキャビティ内において凹部への湯回りが良くなるため、センサ収容部の成形精度を高めることができる。
【0014】
前記した電子制御ユニットにおいて、前記センサに角速度センサおよび加速度センサを用いた構成では、車体の挙動を検出する場合などに用いられる角速度センサや加速度センサの検出精度を高めることができる。
【0015】
前記した電子制御ユニットでは、前記ハウジングの開口部に、前記開口部を密閉するカバーを振動溶着させてもよい。本発明では、仕切部にリブを設けることで、仕切部の剛性が大きくなり、仕切部の固有振動数が高くなっている。したがって、振動溶着時に生じる振動が、センサ収容部に収容されたセンサに伝わり難いため、センサ収容部にセンサが収容された状態でハウジングにカバーを振動溶着した場合であっても、センサの検出精度を高めることができる。
【0016】
前記した電子制御ユニットを用いた車両用ブレーキ液圧制御装置は、ブレーキ液路が形成された基体と、前記電子制御ユニットと、を備え、前記制御基板は、前記センサによって検出された車体の挙動に基づいて、前記電気部品の作動を制御することで、前記ブレーキ液路内のブレーキ液圧を変動させるように構成されている。
この構成では、車体の挙動を検出する角速度センサおよび加速度センサの検出精度を高めることができ、ブレーキ制御の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子制御ユニットでは、仕切部の剛性が大きくなり、仕切部の固有振動数が高くなるため、仕切部に支持されたセンサに低周波数の振動が伝わり難くなり、センサの検出精度を高めることができる。
また、前記した電子制御ユニットを用いた車両用ブレーキ液圧制御装置では、車体の挙動を検出する角速度センサおよび加速度センサの検出精度を高めることができ、ブレーキ制御の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の電子制御ユニットを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置を示した分解斜視図である。
【図2】本実施形態の電子制御ユニットを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置を示した側断面図である。
【図3】本実施形態のハウジングにセンサ基板および制御基板を取り付ける前の状態を示した図で、ハウジングを表側から見た斜視図である。
【図4】本実施形態のハウジングを上下方向に反転させて裏側から見た斜視図である。
【図5】本実施形態のハウジングを上下方向に反転させて裏側から見た図である。
【図6】本実施形態の仕切部とセンサ基板との取付部位を示した側断面図である。
【図7】本実施形態の仕切部に埋設された導電部材を示した図である。
【図8】本実施形態のセンサ基板を示した斜視図である。
【図9】本実施形態のハウジングにセンサ基板を取り付けた状態を示した図で、ハウジングを表側から見た斜視図である。
【図10】本実施形態の電子制御ユニットの組付方法を示した図で、(a)は各接続端子を抵抗溶接している態様を示した側断面図、(b)はセンサ基板を仕切部に取り付ける態様を示した側断面図である。
【図11】本実施形態の電子制御ユニットにおいて、溶接用工具の可動領域を示した図である。
【図12】本実施形態のハウジングに制御基板を取り付けた状態を示した図で、ハウジングを表側から見た斜視図である。
【図13】他の実施形態の電子制御ユニットを示した図で、ハウジングを裏側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、車両用ブレーキ液圧制御装置に適用される電子制御ユニットについて説明する。
【0020】
車両用ブレーキ液圧制御装置Uは、図1に示すように、電磁弁Vや圧力センサSなどの電気部品、モータ200などの電動部品、往復動ポンプPなどが組み付けられる基体100と、車体の挙動を検出して、電磁弁Vの開閉やモータ200の作動を制御する電子制御ユニット10と、を主に備えている。
基体100内にはブレーキ液路が形成されており、電子制御ユニット10が車体の挙動に基づいて、電磁弁Vやモータ200を作動させることで、ブレーキ液路内のブレーキ液圧が変動するように構成されている。
【0021】
基体100は、図1に示すように、略直方体に形成された金属部品であり、その内部にはブレーキ液路が形成されている。
基体100の各面のうち、表側の面101には、電磁弁Vや圧力センサSといった電気部品が装着される有底の取付穴151・・・などが複数形成されている。
基体100の上面103には、車輪ブレーキ(図示せず)に至る配管が接続される出口ポート152・・・などが複数形成されている。
基体100の下面には、リザーバを構成するリザーバ構成部品Rが組付けられるリザーバ穴153などが形成されている。
基体100の側面105には、往復動ポンプPが装着されるポンプ孔155などが形成されている。
基体100に設けられた穴は、直接に、或いは基体100の内部に形成された図示せぬブレーキ液路を介して互いに連通している。
【0022】
モータ200は、往復動ポンプPの動力源となる電動部品であり、図2に示すように、基体100の裏側の面102に一体的に固着されている。
モータ200の出力軸210は、基体100の裏側の面102に形成されたモータ装着穴154に挿入されている。また、出力軸210の上方には、図示せぬロータに電力を供給するためのモータバスバー220が接続されている。
【0023】
図1に示す電子制御ユニット10は、基体100の表側の面101から突出した電気部品やセンサ基板30および制御基板20が収容されるハウジング40と、ハウジング40の開口部を塞ぐカバー50と、を備えている。
【0024】
ハウジング40は、図2に示すように、基体100の表側の面101から突出する電磁弁Vや圧力センサSなどの電気部品を覆った状態で、基体100の表側の面101に一体的に固着される合成樹脂製の箱体である。
このハウジング40は、表側の面(図2の右側の面)および裏側の面(図2の左側の面)が開口している。ハウジング40の内部空間の裏側には 電磁弁V、電磁コイルV1、圧力センサSなどの電気部品が収容される第一収容室41が形成され、内部空間の表側には、センサ基板30および制御基板20が収容される第二収容室42が形成されている。
【0025】
ハウジング40は、第一収容室41を形成する第一周壁部41aと、この第一周壁部41aの側方に配置されたコネクタ接続部43(図3参照)と、第二収容室42を形成する第二周壁部42aと、第一収容室41と第二収容室42とを仕切る仕切部44と、を備えている。
【0026】
第一周壁部41aは、電気部品を取り囲む部位であり、基体100の表側の面101の外周縁に当接するフランジ41bを備えている。このフランジ41bの適所には取付孔41cが形成されている(図4参照)。
【0027】
第二周壁部42aは、センサ基板30および制御基板20を取り囲む部位であり、第一周壁部41aおよびコネクタ接続部43(図3参照)の表側に配置されている。
図3に示すように、第二周壁部42aの外周形状は略長方形となっており、長手方向の二辺(図3の上下二辺)には外側に膨らんだ部位が形成されている。この第二周壁部42aの膨らんだ部位の内側にはターミナル集約部45,45がそれぞれ形成されている(図7参照)。
ターミナル集約部45では、金属部品である複数のターミナル45a・・・が第二収容室42側の面に露出している。図2に示すように、ターミナル45aから延びる導電部材45bは仕切部44に埋設されており、仕切部44の表側(第二収容室42側)で電磁コイルV1の端子に対して電気的に接続されるとともに、仕切部44の裏側(第一収容室41側)で圧力センサSの端子やモータ200のモータバスバー220に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0028】
図3に示すコネクタ接続部43は、図示しない外部配線ケーブルの端部に設けられたコネクタが接続される部位である。コネクタ接続部43は、第二収容室42からコネクタ接続部43の底壁を通って外面(外部に露出している面)に導出される複数の接続端子43a・・・(図4参照)と、この接続端子43a・・・を取り囲む側壁43bと、を備えている。
【0029】
仕切部44は、図2に示すように、基体100の表側の面101に間隔を空けて対向する板状の部位である。この仕切部44は、図3に示すように、略長方形に形成されており、表側の面44a(第二収容室42側の面)の四隅には基板保持部44c・・・がそれぞれ突設されている。
基板保持部44cは、後記する制御基板20(図12参照)を支持する部位であり、各基板保持部44c・・・の突端面が制御基板20の裏側の面に当接する。基板保持部44cの突端面には雌ねじ穴が形成されている。
また、仕切部44の裏側の面44b(第一収容室41側の面)には、図2に示すように、モータバスバー220に接続されるターミナルTが貫通するターミナル取付部44dが形成されている。
【0030】
仕切部44の表側の面44aの中央付近において、ターミナル取付部44dに隣接した位置には、第二収容室42に開口した平面視で矩形状の凹部71が形成されている。
凹部71は、第一収容室41に突出しており、凹部71の内部空間は、後記するセンサ基板30に取り付けられた角速度センサ33および加速度センサ34が収容されるセンサ収容部70となっている。すなわち、第一収容室41と第二収容室42とを仕切る仕切部44に設けられた凹部71を利用して、センサ収容部70が形成されている。
【0031】
また、図3に示すように、仕切部44の表側の面44aには、凹部71を長手方向に挟むようにして、二体の基準ピン46,46が突設されるとともに、凹部71を長手方向に挟むようにして、取付用ねじ穴44e・・・が二つずつ形成されている。
【0032】
図4に示すように、仕切部44の裏側の面44bには、電磁コイルV1や圧力センサS(図2参照)などの電気部品の振れ止めを構成する支持片44fが複数突設されている。支持片44fは、二つまたは四つ一組で一体の電気部品に対応している。
【0033】
また、仕切部44の裏側の面44bには、矩形断面の第一リブ44gが突設されている。第一リブ44gは、仕切部44の裏側の面44bの全域に亘って延ばされており、図5に示すように、仕切部44の裏側の面44bは、第一リブ44gによって複数の領域A・・・に区画されている。なお、図5では第一リブ44gの配置を分かり易くするために、第一リブ44gにハッチングを付している。
本実施形態では、仕切部44の裏側の面44bに配置される電磁コイルV1が、第一リブ44gによって区画された領域A内で仕切部44に支持される。すなわち、第一リブ44gは、電磁コイルV1などの電気部品の取り付け箇所を取り囲むように、仕切部44の裏側の面44bを複数の領域A・・・に区画しており、第一リブ44gは電気部品に干渉しないように配置および高さが設定されている。
【0034】
また、仕切部44に形成された凹部71の外面71b(第一収容室41側の面)には、矩形断面の第二リブ44hが突設されている。なお、図5では第二リブ44hは第一リブ44gと同様にハッチングが付されている。
仕切部44には、凹部71を挟んで対向するようにターミナル集約部45,45が配置されており、第二リブ44hは、一方のターミナル集約部45(図2参照)から、他方のターミナル集約部45(図2参照)に向かう方向に沿って直線状に延ばされている。本実施形態では、複数の第二リブ44h・・・が平行して配置されている。
このように、各第二リブ44h・・・は図5の上下方向に延ばされており、各第二リブ44h・・・の延長方向の両端側にターミナル集約部45,45(図2参照)が配置されている。すなわち、各第二リブ44h・・・は、ターミナル集約部45およびコネクタ接続部43が配置されていない仕切部44の一辺(図5の左側の一辺)に対して平行に配置されている。
【0035】
図6に示すように、仕切部44に埋設された導電部材45bの端部に設けられた複数の第二接続端子82は、第二収容室42側に突出している(図3参照)。そして、仕切部44の裏側の面44bに取り付けられた電磁コイルV1などの電気部品から延ばされた第一接続端子81は、仕切部44に形成された開口部を通じて、仕切部44の表側の面44a上で第二接続端子82に重ね合わされており、第一接続端子81と第二接続端子82とは抵抗溶接されることで電気的に接続されている。
【0036】
図7に示すように、仕切部44には、一方のターミナル集約部45に至る各導電部材45b・・・が配置された第一領域Bと、他方のターミナル集約部45に至る各導電部材45b・・・が配置された第二領域Cと、第一領域Bと第二領域Cとの間に介在する第三領域Dと、が設けられており、第三領域Dに凹部71が形成されている。すなわち、各導電部材45b・・・は、凹部71よりも仕切部44の縁部側(図7の上下二辺側)に配置されている。なお、図7では各導電部材45bを分かり易く示すためにハッチングを付している。このように、凹部71を跨がないように各導電部材45b・・・を配置することで、仕切部44の中央付近にセンサ収容部70を設けることができる。
【0037】
カバー50は、図2に示すように、ハウジング40の基体100側の反対側の開口部を密閉する合成樹脂製の蓋体であり(図1参照)、振動溶着によってハウジング40の表側の端面42bに固着されている。なお、カバー50は、接着などの手段によってハウジング40の表側の端面42bに固着することもできる。
【0038】
センサ基板30は、図8に示すように、電子回路(導電部材)がプリントされた長方形の基板本体31と、基板本体31に載置された角速度センサ33や加速度センサ34などの電子部品と、を備えており、角速度センサ33および加速度センサ34によって、車体の挙動(所定の物理量)を検出する。
【0039】
センサ基板30は、図9に示すように、角速度センサ33および加速度センサ34が載置された面を仕切部44側に向けた状態で配置され、基板本体31は仕切部44の表側の面44aに載置される。センサ基板30を仕切部44に取り付けたときには、図2に示すように、角速度センサ33および加速度センサ34は、第二収容室42側からセンサ収容部70内に収容される。
【0040】
図8に示すように、センサ基板30の長手方向の両端部には、仕切部44に形成された取付用ねじ穴44e・・・(図3参照)に連通する挿通孔32・・・が二つずつ形成されている。そして、図9に示すように、センサ基板30の表側から挿通孔32に挿通させた固定ボルト36を取付用ねじ穴44e(図3参照)に螺着させることで、センサ基板30が仕切部44の表側の面44aに取り付けられる。
なお、センサ基板30は、その安定性を高めるため、仕切部44に形成された凹部71の縁部の全周に基板本体31が載置されることが望ましい。
【0041】
図6に示すように、仕切部44の表側の面44a上に位置決めされた基板本体31の周囲には、第一接続端子81と第二接続端子82との溶接部位が複数配置されている(図9参照)。
各接続端子81,82の溶接部位は、基板本体31の外周縁部に近接している。本実施形態では、基板本体31の外周縁部と各接続端子81,82の溶接部位との間隔は、各接続端子81,82を抵抗溶接するための溶接用工具90の先端部の幅xよりも小さく設定されている。
なお、溶接用工具90は、二つの電極部で各接続端子81,82を挟み込むように構成されており、前記した溶接用工具90の先端部の幅xとは、一方の電極部の横幅である。すなわち、基板本体31の外周縁部と各接続端子81,82の溶接部位との間隔は、溶接用工具90の一方の電極部が入り込めない間隔に設定されている。
【0042】
本実施形態の電子制御ユニット10の組付方法では、電気部品の第一接続端子81とハウジング40の仕切部44に設けられた第二接続端子82とを抵抗溶接した後に、センサ基板30を仕切部44の表側の面44a上に取り付けている。
具体的には、まず、図10(a)に示すように、電磁コイルV1などの電気部品の第一接続端子81と、仕切部44から突設された第二接続端子82とを、第二収容室42側で溶接用工具90の各電極部によって挟み込み、溶接用工具90から各接続端子81,82に通電することで、各接続端子81,82を抵抗溶接する。
その後、図10(b)に示すように、センサ基板30の基板本体31を仕切部44の表側の面44a上に取り付ける。このとき、図9に示すように、基板本体31の各位置決め孔35,35(図8参照)に、仕切部44に突設された基準ピン46,46を挿通させることで、角速度センサ33の検出軸が車両の上下方向に一致し、加速度センサ34の検出軸が車両の前後方向および左右方向に一致するように、センサ基板30を仕切部44の表側の面44a上に位置決めすることができる。
【0043】
なお、図11においてハッチングを付した領域91は、仕切部44に取り付けられたセンサ基板30の一部と、各接続端子81,82を抵抗溶接するときに、溶接用工具90(図10(a)参照)の先端部が移動する可動領域とが重なっている領域を示している。このように、仕切部44に取り付けられたセンサ基板30(基板本体31)の一部が、各可動領域内に配置されている。
【0044】
制御基板20は、図12に示すように、電子回路(導電部材)がプリントされた長方形の基板本体21に、半導体チップなどの電子部品26を取り付けたものである。制御基板20は、電子部品26が取り付けられている面を表側にして、第二収容室42内に収容されている。
制御基板20は、図2に示すセンサ基板30や圧力センサSといった各種センサから得られた情報や、予め記憶させておいたプログラム等に基づいて、電磁弁Vの開閉やモータ200の作動を制御するように構成されている。
【0045】
制御基板20には、図12に示すように、基板本体21の四隅近傍に挿通孔22がそれぞれ形成されている。基板本体21は、仕切部44(図3参照)の各基板保持部44c・・・の突端面に載置されており、挿通孔22が基板保持部44c(図3参照)のねじ穴に連通している。そして、制御基板20の表側から挿通孔22に挿通させた固定ボルト23を基板保持部44c(図3参照)のねじ穴に螺着させることで、制御基板20が仕切部44の第二収容室42側に取り付けられている。
これにより、図2に示すように、センサ基板30と制御基板20とは、仕切部44に支持された状態で、第二収容室42内に階層状態で収容されている。制御基板20の基板本体21は、センサ基板30の基板本体31よりも大きいため、制御基板20はセンサ基板30を覆い隠した状態で、仕切部44に取り付けられる。
【0046】
仕切部44(図3参照)の第二収容室42側に取り付けられた制御基板20では、制御基板20の電子回路と、ターミナル集約部45のターミナル45aとが、ボンディングワイヤ45cによって電気的に接続されている。これにより、制御基板20に取り付けられた各種の電子部品と、基体100に取り付けられた電気部品とが電気的に接続されている。
【0047】
また、図2に示す仕切部44に取り付けられたセンサ基板30には、仕切部44に埋設された導電部材(図示せず)が電気的に接続されており、この導電部材がターミナル集約部45のターミナル45aに対して電気的に接続されることで、センサ基板30の電子回路と、制御基板20の電子回路とが電気的に接続される。これにより、センサ基板30に取り付けられた角速度センサ33および加速度センサ34で検出された車両の挙動情報を制御基板20に出力することができる。
【0048】
以上のような本実施形態の電子制御ユニット10は、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の電子制御ユニット10では、図4に示すように、仕切部44の裏側の面44bおよび凹部71の外面71bにリブ44g,44hを設けることで、仕切部44および凹部71の剛性が大きくなり、仕切部44および凹部71の固有振動数が高くなる。これにより、仕切部44に支持され、センサ収容部70内に収容された角速度センサ33および加速度センサ34に低周波数の振動が伝わり難くなるため、角速度センサ33および加速度センサ34の検出精度を高めることができる。
また、センサ収容部70に角速度センサ33および加速度センサ34が収容された状態で、図2に示すハウジング40の端面42bにカバー50を振動溶着した場合であっても、センサ収容部70内に収容された角速度センサ33および加速度センサ34に低周波数の振動が伝わり難くなるため、角速度センサ33および加速度センサ34の検出精度を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、図4に示すように、仕切部44に形成された凹部71の外面71bに複数の第二リブ44h・・・が突設されることで、凹部71の肉厚が大きくなっている。したがって、仕切部44を射出成形するときに、金型のキャビティ内において凹部71への湯回りが良くなるため、センサ収容部70の成形精度を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、図5に示すように、仕切部44の裏側の面44bに設けられた第一リブ44gが、電気部品の取り付け箇所を取り囲むように、仕切部44の裏側の面44bを複数の領域A・・・に区画しており、電気部品に干渉しないように配置および高さが設定されている。
【0051】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、図2に示すように、仕切部44に形成された凹部71を利用してセンサ収容部70が形成されており、第一収容室41の空間を有効に利用してセンサ収容部70が設けられているため、ハウジング40を小型化することができる。
【0052】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、電気部品から発生した熱が凹部71によって遮断されるため、熱が角速度センサ33および加速度センサ34に与える影響を防ぐことができ、各センサ33,34の検出精度を高めることができる。
【0053】
そして、図1に示すように、本実施形態の電子制御ユニット10を用いた車両用ブレーキ液圧制御装置Uでは、車体の挙動を検出する角速度センサ33および加速度センサ34(図2参照)の検出精度を高めることができるため、ブレーキ制御の精度を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、図6に示すように、仕切部44の表側の面44a上に取り付けられたセンサ基板30の基板本体31と、各接続端子81,82の溶接部位との間隔が、各接続端子81,82を抵抗溶接するための溶接用工具90の先端部の幅xよりも小さく設定されている。したがって、センサ基板30と、センサ基板30の周囲に配置された各接続端子81,82との間隔を小さくすることができるため、ハウジング40を小型化することができる。
なお、本実施形態の電子制御ユニット10の組付方法では、図10(a)および(b)に示すように、各接続端子81,82を抵抗溶接した後に、センサ基板30の基板本体31を仕切部44の表側の面44aに取り付けている。
【0055】
また、本実施形態の電子制御ユニット10では、図11に示すように、仕切部44に取り付けられたセンサ基板30の一部が、溶接用工具90(図10(a)参照)の可動領域内に配置されている。このように、ハウジング40内のスペースを有効に利用することで、センサ基板30を大きくすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、図4に示すように、仕切部44の裏側の面44bに第一リブ44gを設けているが、仕切部44の表側の面44aに設けてもよく、さらには、表側の面44aおよび裏側の面44bの両方に設けてもよい。同様に、前記実施形態では、凹部71の外面71bに第二リブ44hを設けているが、凹部71の内面や凹部71の両面に第二リブ44hを設けてもよい。
【0057】
また、図13に示すように、仕切部44の凹部71の外面71bに設けられた複数の第二リブ44i・・・を、一方のターミナル集約部45(図2参照)と、他方のターミナル集約部45(図2参照)との間を通過する方向に延ばしてもよい。すなわち、各第二リブ44i・・・の延長方向の両側に配置された二辺(図13の上下二辺)にターミナル集約部45,45(図3参照)を配置し、各第二リブ44i・・・は、仕切部44においてターミナル集約部45,45(図3参照)およびコネクタ接続部43が配置されていない一辺(図13の左側の一辺)に対して垂直に配置してもよい。
この構成では、仕切部44を射出成形するときに、ターミナル集約部45,45およびコネクタ接続部43が存在しない図13の左側の一辺に湯口を設けることで、この湯口から図13の右側の一辺に向けて、各第二リブ44i・・・のキャビティが直線状に配置されるため、仕切部44を射出成形するときに各第二リブ44i・・・に対する湯回りを良くすることができ、センサ収容部70の成形精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 電子制御ユニット
20 制御基板
30 センサ基板
31 基板本体
33 角速度センサ
34 加速度センサ
40 ハウジング
41 第一収容室
42 第二収容室
43 コネクタ接続部
44 仕切部
44a 仕切部の表側の面
44b 仕切部の裏側の面
44f 支持片
44g 第一リブ
44h 第二リブ
45 ターミナル集約部
45b 導電部材
46 基準ピン
50 カバー
70 センサ収容部
71 凹部
71b 凹部の外面
81 第一接続端子
82 第二接続端子
90 溶接用工具
100 基体
200 モータ
210 出力軸
U 車両用ブレーキ液圧制御装置
V 電磁弁
V1 電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサが取り付けられたセンサ基板と、
前記センサで検出された物理量に基づいて、電気部品の作動を制御する制御基板と、
前記センサ基板および前記制御基板が収容されるハウジングと、を備え、
前記ハウジングの内部空間には、前記電気部品が収容される第一収容室と、前記センサ基板および前記制御基板が階層状態で収容される第二収容室と、前記第一収容室と前記第二収容室とを仕切る仕切部と、が形成されており、
前記センサ基板および前記制御基板は前記仕切部に支持され、前記仕切部にはリブが突設されていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項2】
前記仕切部において、前記第一収容室側の面は、前記リブによって複数の領域に区画されており、
複数の前記電気部品は、前記各領域内で前記仕切部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記仕切部には、前記第二収容室に開口した凹部が形成されており、前記凹部を利用して、前記センサの収容空間であるセンサ収容部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記凹部の内面および外面の少なくとも一方には、リブが突設されていることを特徴とする請求項3に記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記センサは、角速度センサおよび加速度センサであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
前記ハウジングの開口部には、前記開口部を密閉するカバーが振動溶着されていること特徴とする請求項5に記載の電子制御ユニット。
【請求項7】
ブレーキ液路が形成された基体と、請求項5または請求項6に記載の電子制御ユニットと、を備えている車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記制御基板は、前記センサによって検出された車体の挙動に基づいて、前記電気部品の作動を制御することで、前記ブレーキ液路内のブレーキ液圧を変動させることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−63059(P2011−63059A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213270(P2009−213270)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】