説明

電子回路ユニット

【課題】マザーボード上に常に安定した姿勢で搭載できると共に、金属製カバーの脚部が半田付けされている基板隅部をマザーボードに確実に固定させることができて、信頼性の高い面実装が行える電子回路ユニットを提供すること。
【解決手段】電子回路ユニット11は、基板2の上面に設けられた回路部3が金属製カバー4に覆われており、カバー4の脚部4aは基板2の隅部2aにおいて、貫通孔5の上端周縁に隣接する半田ランド6と貫通孔5内のスルーホール導体12とに半田付けされているが、基板1の下面側では半田付けされていない。基板1の下面の隅部2aには、貫通孔5を略包囲するC字形状の第1補強ランド8が設けられているが、両者5,8は離隔している。また、基板1の下面には、回路部3と電気接続された接続ランド7群と、隅部2a近傍に位置する第2補強ランド9とが設けられており、ランド7〜9はマザーボード20の対応するランド部に半田付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機のマザーボードに面実装されて送受信ユニットなどとして好適な電子回路ユニットに係り、特に、基板の回路部を覆う金属製カバーの脚部が該基板の隅部に半田付けされている電子回路ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子回路ユニットとして、方形状の基板の上面に配線パターンや電子部品を配設して高周波回路部となし、この高周波回路部を覆う金属製カバー(シールドカバー)の脚部を基板の隅部に設けられたスルーホール導体に半田付けするという構成のものが広く知られている。基板の下面には、高周波回路部の配線パターンに電気接続された多数の接続ランドが例えばLGA(ランドグリッドアレイ)などとして配設されており、これら接続ランドをマザーボードの対応するランド部上に搭載して半田付けすることによって、電子回路ユニットはマザーボード上に面実装される。
【0003】
このような電子回路ユニットにおいては、通常、図6の要部断面図やその下面図である図7に示すように、基板21の隅部21aに開設された貫通孔22の内壁部が円筒状のスルーホール導体23となっている。このスルーホール導体23は、その上下両端が円環状の半田ランド24,25と連続するように形成されている。金属製カバー26の脚部26aは貫通孔22に挿入されており、この脚部26aとスルーホール導体23および半田ランド24,25とが半田27によって接合されている。基板21の上面には、図示せぬ配線パターンや電子部品を配設してなる高周波回路部28が設けられており、この高周波回路部28を金属製カバー26で覆うことによって電磁的にシールドしている。また、基板21の下面には、高周波回路部28の配線パターンと電気接続された多数の接続ランド29や、図示せぬマザーボードに対する取付強度を高めるための補強ランド30が設けられている。図7においては、接続ランド29が基板21の周縁部に配設されているが、周縁部以外の領域(中央部など)に配設してもよい。補強ランド30は、マザーボードのランド部に強固に半田付けできるように比較的大きく形成されている。それゆえ、図7に示すように、基板21の隅部21a近傍に補強ランド30を配設しておけば、携帯電話機等に製品化された後の落下時などに、応力が集中しやすい隅部21aがマザーボードから剥離しにくくなる。また、図6に示すように、金属製カバー26の脚部26aが半田ランド24だけでなくスルーホール導体23や半田ランド25とも半田付けされているため、基板21の上面側に大きな半田ランド24を設けなくても脚部26aに対して十分な半田付け強度が確保できるようになっている。その結果、基板21の上面における半田ランド24の占有面積が抑制できるため、高周波回路部28用のスペースを基板21の隅部21a近傍まで広げることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、基板の隅部を半円筒状のスルーホール導体が露出する面取り形状にしておき、このスルーホール導体に金属製カバーの脚部を半田付けしている電子回路ユニットも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4249772号公報
【特許文献2】特開2008−53442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来例のように、電子回路ユニットの基板隅部に設けたスルーホール導体に金属製カバーの脚部が半田付けされていると、該基板の上面に高周波回路部用の広いスペースを確保しやすくなるため、電子回路ユニットの小型化や高機能化が図りやすくなる。しかしながら、図6に示すように、スルーホール導体23と連続する基板21下面側の半田ランド25に付着した半田27は自重によって下方へ大きく突出しやすいため、従来のこの種の電子回路ユニットでは、マザーボード上に搭載したときに該突出半田によって姿勢が傾いてしまうことがあり、その改善が望まれていた。つまり、該突出半田が不所望に大きいと、電子回路ユニットをマザーボード上に安定した姿勢で搭載することができないため、実装不良を起こしやすくなる。
【0007】
また、従来のこの種の電子回路ユニットでは、図7に示すように、スルーホール導体23の存する基板21の隅部21aから若干離れた位置に補強ランド30が設けてあるため、この隅部21aが落下時などの衝撃で反り返ることがあり、その場合、この隅部21aの近傍の補強ランド30に過大な応力が作用してマザーボードから剥離してしまう危険性があった。なお、特許文献1にはスルーホール導体に包囲される貫通孔を補強ランド内に露出させている電子回路ユニットが例示されているが、このような構造を採用すると、スルーホール導体に付着すべき半田が補強ランドへ回り込んで下方へ大きく突出してしまったり、実装時に補強ランドに付着すべき半田が貫通孔内へ逃げて該補強ランドの半田付け強度が極端に弱くなってしまう等の不具合がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、マザーボード上に常に安定した姿勢で搭載できると共に、金属製カバーの脚部が半田付けされている基板隅部をマザーボードに確実に固定させることができて、信頼性の高い面実装が行える電子回路ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、上面に設けた回路部と下面に設けた接続ラント群とが電気接続されている基板と、この基板の隅部に存する貫通孔に挿入されて該隅部に半田付けされる脚部を有し、前記回路部を覆った状態で前記基板に取り付けられた金属製カバーとを備え、前記接続ラント群をマザーボードに半田付けすることによって面実装される電子回路ユニットにおいて、前記基板の隅部には、前記脚部を半田付けするための半田ランドが基板上面のみに設けられており、この基板の下面に、前記貫通孔の下端周縁から離隔しつつ、少なくとも該貫通孔に最も近い前記隅部のコーナーエッジ側では該下端周縁を包囲する補強ランドを設け、この補強ランドを前記マザーボードに半田付けされる部位となし、かつ、前記補強ランドと前記半田ランドの少なくとも一方が空気抜き用の切欠き部を有するという構成にした。
【0010】
このように構成された電子回路ユニットでは、金属製カバーの脚部を基板隅部に接合している半田が基板下面からマザーボード側へ大きく突出する虞がないため、マザーボード上に常に安定した姿勢で搭載することができる。また、金属製カバーの脚部が挿入されている貫通孔は、基板下面において少なくとも該貫通孔に最も近い基板隅部のコーナーエッジ側が補強ランドに包囲されているため、この補強ランドをマザーボードに半田付けすることによって基板隅部をマザーボードに強固に固定することができる。また、この補強ランドは貫通孔の下端周縁から離隔しているため、金属製カバーの脚部と補強ランドとが半田付けされてしまうことはなく、実装時に補強ランドに付着すべき半田が貫通孔内へ逃げてしまうこともない。
【0011】
例えば、前記補強ランドが前記貫通孔の下端周縁を包囲するC字形状に形成され、その切欠き部と基板隅部のコーナーエッジとの間に前記貫通孔が位置していれば、基板隅部に補強ランドおよび貫通孔をスペース効率よく配設することができる。
【0012】
上記の構成において、基板下面の隅部の近傍に前記補強ランドとは別に第2補強ランドが設けられていると、マザーボードに対する電子回路ユニットの取付強度を大幅に高めることができるため好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、金属製カバーの脚部が、基板上面に設けられた半田ランドと貫通孔内に設けられたスルーホール導体とに半田付けされていると、半田ランドを大きく形成しなくても金属製カバーの脚部に十分な半田付け強度を確保することができる。その結果、基板上面における半田ランドの占有面積を抑制して回路部用のスペースを基板隅部の近傍まで広げることが可能となるため好ましい。ただし、貫通孔内にスルーホール導体が存せず、金属製カバーの脚部を基板上面の半田ランドのみに半田付けする構成であっても、マザーボード上に搭載した電子回路ユニットの姿勢は安定し、かつ、基板下面において貫通孔の周囲に補強ランドを設けることによってマザーボードに対する電子回路ユニットの取付強度を高めることはできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子回路ユニットによれば、金属製カバーの脚部を基板隅部に接合している半田が基板の下面からマザーボード側へ大きく突出する虞がないため、この電子回路ユニットはマザーボード上に常に安定した姿勢で搭載することができて実装不良を起こしにくい。また、金属製カバーの脚部が挿入されている貫通孔は、基板下面において少なくとも該貫通孔に最も近い基板隅部のコーナーエッジ側が補強ランドに包囲されているため、この補強ランドをマザーボードに半田付けすることによって基板隅部をマザーボードに強固に固定することができる。それゆえ、この基板隅部が落下時などの衝撃で反り返る虞がなくなる。また、この補強ランドは貫通孔の下端周縁から離隔しているため、金属製カバーの脚部と補強ランドとが半田付けされてしまうことはなく、実装時に補強ランドに付着すべき半田が貫通孔内へ逃げてしまうこともない。したがって、マザーボードに対する取付強度が高く、落下時などに衝撃が加わってもマザーボードから剥離しにくい高信頼性の電子回路ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る電子回路ユニットの外観図である。
【図2】第1実施形態例に係る電子回路ユニットの要部断面図である。
【図3】図2に示す電子回路ユニットの要部の下面図である。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る電子回路ユニットの要部断面図である。
【図5】図4に示す電子回路ユニットの要部の下面図である。
【図6】従来例に係る電子回路ユニットの要部断面図である。
【図7】図6に示す電子回路ユニットの要部の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照しつつ説明する。まず、本発明の第1実施形態例に係る電子回路ユニットについて、図1〜図3を参照しつつ説明する。これらの図に示す電子回路ユニット1は、携帯電話機のマザーボード20(図2参照)に面実装されて送受信ユニットとして使用されるものである。
【0017】
この電子回路ユニット1は、方形状の基板2の上面に図示せぬ配線パターンや電子部品を配設してなる高周波回路部3を設けており、高周波回路部3を覆う金属製カバー4の脚部4aが基板2の隅部2aに半田付けされている。この金属製カバー4は平板状の金属板を折り曲げて形成されたシールドカバーであり、高周波回路部3を電磁的にシールドしている。基板2の隅部2aには、金属製カバー4の脚部4aが挿入される貫通孔5が開設されており、この貫通孔5の上端周縁に隣接する円環状の半田ランド6が基板2の上面に形成されている。ただし、本実施形態例において、貫通孔5の内壁部にスルーホール導体は設けられていない。したがって、金属製カバー4の脚部4aは半田ランド6のみに半田10によって接合されており、この半田ランド6が高周波回路部3の配線パターンの一部であるグランドパターンに電気接続されている。
【0018】
基板2の下面には、高周波回路部3の配線パターンに電気接続された多数の接続ランド7が配設されている。本実施形態例では、これら接続ランド7を基板2の周縁部に配設しているが、基板2の周縁部以外の領域(中央部など)に接続ランド7を配設してもよい。これらの接続ランド7をマザーボード20の対応するランド部上に搭載して半田付けすることによって、電子回路ユニット1はマザーボード20上に面実装される。
【0019】
また、基板2の下面には、隅部2aにC字形状の第1補強ランド8が設けられていると共に、隅部2aの近傍に円形状の第2補強ランド9が複数配設されている。第1補強ランド8は、貫通孔5の下端周縁から離隔しつつ該下端周縁を略包囲しており、その切欠き部8aと隅部2aのコーナーエッジ2bとの間に貫通孔5が露出している。なお、切欠き部8aは、実装時のリフロー工程で貫通孔5内の膨張した空気を逃がすための空気抜きとして形成されている。第2補強ランド9は第1補強ランド8に並設されている。これらの補強ランド8,9は接続ランド7よりも大きく形成されており、接続ランド7と同様にマザーボード20の対応するランド部上に搭載して半田付けされる。こうすることによって基板2の隅部2aをマザーボード20に強固に固定することができる。
【0020】
このように本実施形態例に係る電子回路ユニット1では、金属製カバー4の脚部4aを基板2の上面の半田ランド6のみに半田付けしており、貫通孔5内にスルーホール導体が設けられていないため、脚部4aを隅部2aに接合している半田10が基板2の下面からマザーボード20側へ大きく突出する虞がない。それゆえ、この電子回路ユニット1は、マザーボード20上に常に安定した姿勢で搭載することができ実装不良を起こしにくい。また、金属製カバー4の脚部4aが挿入されている貫通孔5は、基板2の下面において隅部2aのコーナーエッジ2b側が第1補強ランド8に包囲されているため、この第1補強ランド8をマザーボード20に半田付けすることによって隅部2aをマザーボード20に強固に固定することができる。しかも、第1補強ランド8の近傍には第2補強ランド9が並設されているので、これら第1および第2補強ランド8,9をマザーボード20に半田付けすることによって隅部2aとその近傍をマザーボード20に強固に固定することができる。それゆえ、この電子回路ユニット1は、落下時などの衝撃で基板2の隅部2aが反り返る虞が少ない。また、第1補強ランド8は貫通孔5の下端周縁から離隔しているため、金属製カバー4の脚部4aと第1補強ランド8とが半田付けされてしまうことはなく、実装時に第1補強ランド8に付着すべき半田が貫通孔5内へ逃げてしまうこともない。したがって、マザーボード20に対する取付強度が高く、落下時などに衝撃が加わってもマザーボード20から剥離しにくい高信頼性の電子回路ユニットとなっている。
【0021】
なお、第1補強ランド8は、貫通孔5を所定間隔存して略包囲する適宜形状に形成することができるが、本実施形態例のように第1補強ランド8が略C字形状であると、基板2の隅部2aに第1補強ランド8および貫通孔5をスペース効率よく配設することができる。また、半田ランド6に空気抜き用の切欠き部を設けておけば第1補強ランド8の切欠き部8aを省略することも可能なので、その場合は第1補強ランド8を例えば円環状に形成することができる。
【0022】
次に、図4と図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態例に係る電子回路ユニットについて説明する。ただし、これらの図4,5において、前述した第1実施形態例と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は省略する。
【0023】
第2実施形態例に係る電子回路ユニット11は、基板2の貫通孔5の内壁部にスルーホール導体12が設けてあり、それに伴って半田ランド6が小径化されている点が第1実施形態例と大きく異なっている。すなわち、この電子回路ユニット11では、金属製カバー4の脚部4aが基板2の上面の半田ランド6だけでなく貫通孔5内のスルーホール導体12にも半田付けされているため、半田ランド6を大きく形成しなくても脚部4aに十分な半田付け強度を確保することができる。その結果、基板2の上面における半田ランド6の占有面積を抑制できるため、高周波回路部3用のスペースを隅部2aの近傍まで広げることができ、電子回路ユニット11の小型化や高機能化が促進しやすくなっている。なお、この第2実施形態例においても、基板2の下面には脚部4aと半田付けされるランドが設けられていないので、半田10が基板2の下面からマザーボード20側へ大きく突出する虞はない。
【符号の説明】
【0024】
1,11 電子回路ユニット
2 基板
2a 隅部
2b コーナーエッジ
3 高周波回路部
4 金属製カバー
4a 脚部
5 貫通孔
6 半田ランド
7 接続ランド
8 第1補強ランド
8a 切欠き部
9 第2補強ランド
10 半田
12 スルーホール導体
20 マザーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に設けた回路部と下面に設けた接続ラント群とが電気接続されている基板と、この基板の隅部に存する貫通孔に挿入されて該隅部に半田付けされる脚部を有し、前記回路部を覆った状態で前記基板に取り付けられた金属製カバーとを備え、前記接続ラント群をマザーボードに半田付けすることによって面実装される電子回路ユニットであって、
前記基板の隅部には、前記脚部を半田付けするための半田ランドが基板上面のみに設けられており、この基板の下面に、前記貫通孔の下端周縁から離隔しつつ、少なくとも該貫通孔に最も近い前記隅部のコーナーエッジ側では該下端周縁を包囲する補強ランドを設け、この補強ランドを前記マザーボードに半田付けされる部位となし、かつ、前記補強ランドと前記半田ランドの少なくとも一方が空気抜き用の切欠き部を有するという構成にしたことを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記補強ランドが前記貫通孔の下端周縁を包囲するC字形状に形成され、その切欠き部と前記基板隅部のコーナーエッジとの間に前記貫通孔が位置していることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記基板下面の前記隅部の近傍に前記補強ランドとは別に第2補強ランドが設けられていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記脚部が、前記基板上面に設けられた前記半田ランドと前記貫通孔内に設けられたスルーホール導体とに半田付けされていることを特徴とする電子回路ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−192668(P2011−192668A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54879(P2010−54879)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】