説明

電子式物品監視システムにおける近隣送信機からの干渉を打ち消す方法

干渉を低減する方法及び電子式物品監視(「EAS」)システムである。EASシステムは検出区域を含む。干渉する1つのEASシステムにつき少なくとも1つ送信窓の参照パターンが提供される。参照パターンは、干渉するEASシステムが送信を行う一連のタイムスロットを示すものである。信号のサンプルパターンが受信される。信号は、各々1つの対応する振幅を有する。受信されたサンプルパターンは、少なくとも1つの参照パターンと比較される。受信されたサンプルパターンが少なくとも1つの参照パターンと一致すると判定されると、これに応答して、少なくとも1つの参照パターンを用いて、干渉するEASシステムが送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルがトリミングされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、米国仮特許出願第61/128,787号(2008年5月22日出願、発明の名称”METHOD TO NEGATE INTERFERENCE FROM ADJACENT TRANSMITTERS IN AN ELECTRONIC ARTICLE SURVEILLANCE SYSTEM”)に関係しており、且つその出願による優先権を主張するものであり、その仮出願の内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に、電子式物品監視(EAS)システムに用いられる電磁信号送信機に関し、更に詳しくは、EAS送信機の干渉を低減するための制御に関する。
【背景技術】
【0003】
電子式物品監視(EAS)システムは、管理区域からの商品の不正な持ち出しを防ぐよう設計されている。例えば、EASシステムは、盗難防止及び万引きが発生した際の係員への通報のために小売店などに設置されることが多い。典型的なEASシステムは、モニターシステムと、1つ以上のセキュリティータグとを備えている。モニターシステムでは、管理区域への出入り口、例えば商店の入口/出口扉に、検査領域が設けられることがある。セキュリティータグは、衣料品などの商品に取り付けることができる。その後、有効なタグが検査領域に入ると、警報が発せられ、タグが付けられた商品の管理領域からの不正な持ち出しを知らせる。
【0004】
多くの環境では、多数の異なるEASシステムが同時に実施されている。そのような環境例には、例えば、従来の商店街、小規模ショッピングモール、又はショッピングプラザに軒を並べる小売店が含まれる。図1に示すように、各EASシステムは、一般的に、送信期間と、受信期間と、無通信又は「スリープ」期間とを周期的に繰り返すことにより動作しており、スリープ期間では、EASシステムはセキュリティータグを検出しないが、様々な処理ないし演算機能を実行することができる。公知のシステムの1つでは、EASシステムは、送電周波数の1.5倍の周波数で、例えば、60Hzの送電周波数に対しては90Hzで、又は、50Hzの送電周波数に対しては75Hzで動作し、送信窓若しくは受信窓の開始のタイミングを、送電線のゼロ交差点に合わせている。「送信」窓の間、EASシステムは受信をおこなわず、「受信」窓の間は送信を行わない。しかし、EASシステムの検出能力は、「受信」窓の間動作している「位相不一致の」送信機を有する他の近隣のEASシステムによって発せられる干渉信号によって大きく低下することがある。
【0005】
従来、近隣のEAS送信機は、このような不都合な相互作用を避けるよう同期がとられてきた。この互換性は、いくつかの異なる同期レベルを用いて達成されてきた。例えば、搬送波発信器若しくは送信機の変調波形を同期させることができる。Sensormatic Electronics Corporation社から商品名ULTRA*MAX(登録商標)の下で販売されているように、より複雑なシステムでは、通信機の構成シーケンスを複数のシステム間で同期させることができる。
【0006】
例えば、米国特許第6,201,469号では、通信機の構成シーケンスの同期を、電力線のゼロ交差点を用いて行っており、そのために位相が手動調整される。なお、同米国特許の内容は、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。米国特許第7,212,117号は、送信搬送波の変調波形を同期させるためのワイヤレス位相ロックループ(「PLL」)システムを提供しており、同米国特許の内容も、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。米国特許出願第11/729372号は、GPS衛星から発せられる同期マスター信号を用いる同期化システムを提供しており、この米国特許出願の内容も、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。
【0007】
このような同期化をなさなければ、互いに或る程度近接して配置されたEASシステムは、互いの受信器と干渉して、感度が低下したり、誤警報を発したりするばかりか、システムが動作不能になることもある。また、このような干渉の結果、所轄の技術者に修理要請がなされることもある。その場合、技術者は、システムの設置場所を訪れて、システムのタイミングを手動調整しなければならない。このような問題が持続的に、若しくは繰り返し起こると、修理要請が数多く繰り替えされ、多大な経費と混乱をもたらすことになる。更に、干渉しているシステムに修理人がアクセスできない場合があるので、干渉しているシステムを同期化することさえできないことがある。
【0008】
更に問題を大きくしているのは、現在入手可能なEASシステムの全てが同期化を用いているわけではないことである。この問題は、同期化されていないEASシステムの中には、周期的でない様態でパルスをランダムに送信するものもあるので更に複雑になっている。そのようなシステムの1つが、米国特許第6,750,768号に記載されている。同期化されていないEASシステムを使用することは、そのようなシステムのうち互いに近接して作動するシステムの数が増える程、これらのシステムが互いに干渉したり同期化されたシステムと干渉したりする可能性を高めてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、近接するEAS送信機の間での干渉を、個々の送信機同士を同期化する必要なく低減するためのシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子式物品監視(EAS)システムにおける近隣送信機からの干渉を低減する方法及びシステムを有利に提供する。本発明の実施形態は、概要として、送信パターン及び/又は受信信号のエネルギーレベルを特定し、近隣のEASシステムが送信する期間には、EASシステムが、受信信号を用いたEASタグの検出、又は、ノイズ算定を行わないようにするものである。
【0011】
本発明の1つの態様によれば、EASシステムにおける干渉を低減するための方法が提供される。EASシステムは、検出区域を含む。干渉する1つのEASシステムにつき少なくとも1つ送信窓の参照パターンが提供される。前記参照パターンは、前記干渉するEASシステムが送信を行う一連のタイムスロットを示している。信号のサンプルパターンが受信される。信号は、各々1つの対応する振幅を有する。前記受信されたサンプルパターンは、前記少なくとも1つの参照パターンと比較される。前記受信されたサンプルパターンが前記少なくとも1つの参照パターンと一致すると判定されるとこれに応答して、前記少なくとも1つの参照パターンを用いて、前記干渉するEASシステムが送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルがトリミングされる。
【0012】
本発明の別の態様によれば、EASシステムにおける干渉を低減するための別の方法が提供される。EASシステムは、検出区域を含む。複数の信号が受信される。各信号は、対応する振幅を有する。少なくとも1つの受信信号の振幅が所定の閾値を超えていれば、その所定の閾値を超える振幅を有する受信信号は破棄され、EASタグが前記検出区域に存在するか否かは、破棄されていない信号のみ考慮して判定される。
【0013】
本発明の更に別の態様によれば、EASシステムは、送信機と受信機とメモリとコントローラとを備えている。前記送信機は、検出区域内にあるEASタグを励起させる検査問い合わせ信号を送信するよう操作できる。前記受信機は、信号のサンプルパターンを受信するよう操作できる。各信号は対応する振幅を有する。前記メモリは、干渉する1つのEASシステムにつき少なくとも1つ送信窓の参照パターンを記憶する。前記参照パターンは、前記干渉するEASシステムが送信を行う一連のタイムスロットを示している。前記コントローラは、前記送信機と受信機とメモリとに電気的に接続されている。前記コントローラは、前記受信されたサンプルパターンを前記参照パターンと比較するよう動作可能であり、前記受信されたサンプルパターンが前記参照パターンと一致すると判定されると、前記参照パターンを用いて、前記干渉するEASシステムが送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルをトリミングする。
【0014】
本発明の更に完璧な理解と、本発明により得られる利点と特長は、添付図面に照らして以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】交流電力線の電力サイクルに同期された先行技術による電子式物品監視(EAS)システムの送受信シーケンスを示すグラフである。
【図2】本発明の要旨により構成されたEASシステムの実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の要旨による互いに近接して作動中の複数のEASシステムを示す図である。
【図4】本発明の要旨による位相不一致送信シーケンスを検出してトリミングする方法の実施例のフローチャートである。
【図5】本発明の要旨によるフレームパターン検出処理の実施例のフローチャートである。
【図6】本発明の要旨による超過エネルギー検出処理の実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について詳細に説明する前に、それらの実施形態が、基本的に、近隣のEAS送信機間の干渉を個々の送信機を互いに同期させる必要なく低減させるシステム及び方法の実施に関連する装置構成部材と処理工程の組み合わせにおいて記述されていることを特記しておく。
【0017】
従って、システム及び方法の構成要素は、本明細書の記載から利益を受ける当業者であれば容易に分かるであろう詳細事項によって本開示が不明瞭にならないよう、本発明の実施形態の理解にとって必須の特定の詳細事項のみ示す形で、従来の記号で適宜に図示した。
【0018】
本明細書で使用される場合、「第1」及び「第2」、「上部」及び「底部」等の相対的関係を示す用語は、一方の実体若しくは要素をもう一方の実体若しくは要素と区別するために使用されているにすぎず、そのような実体若しくは要素間のなんらかの物理的又は論理的関係ないし順序を必ずしも要求したり暗示したりしているわけではない。
【0019】
本発明の一実施形態は、EASシステムに隣接ないし近接して配置された近隣のEAS送信機により発生する干渉を除去若しくは低減するための方法及びシステムを有利に提供する。その方法及びシステムでは、このような干渉を、干渉するシステムの送信パターンを認識して、その干渉するシステムが送信を行う期間に受信された信号は全て無視することにより低減させる。
【0020】
以下に図面を参照して説明するが、各図面で同様の符号は同様の要素を指しており、図2には、本発明の原理により提供されるEASシステムの実施例が、全体として符号「10」で示されている。EASシステム10は、電子的コントローラ回路12を備え、この回路には、受信機回路14と送信機回路16との両方に電気的に接続されたマイクロプロセッサが含まれうる。送信機回路16は、EASタグを励起してEASタグが応答信号を発するようにする検査信号を検査領域内に送信する。受信機回路14は、EASタグから応答信号を受信して、検査領域内にあるEASタグを検出する。受信機回路14と送信機回路16とは、アンテナアセンブリ18に電気的に接続されている。アンテナアセンブリ18は、2つの別個のアンテナコイル、すなわち上部コイル20と下部コイル22とを備え、これらの両方又はいずれか一方を信号の送受信に用いることができる。アンテナアセンブリ18は、受信アンテナとして使われる1つ以上のコイル20,22と、送信アンテナとして使われる1つ以上のコイル20,22とを有するものとすることができる。あるいは、アンテナアセンブリ18は、送受信アンテナとして使われる1つ以上のコイル20,22を備えるものとしてもよい。
【0021】
受信アンテナからの信号は、受信機回路14により増幅され、濾波され、検出され、受信機回路は、振幅情報と周波数情報をコントローラ12に供給する。ファームウエアにおけるプログラム命令を含みうる設計上の制約に基づいて、コントローラ12は多様な周波数の信号を、特定の時間に、特定の持続時間の間、送信アンテナ18に電気的に接続された送信機回路16を介してシステム10環境に送信することができる。
【0022】
コントローラ12は、シーケンス検出器26と、振幅閾値27と、一組の他の複数のEASシステムの参照パターン28と、受信機14で受信した信号の現パターン30とを記憶したメモリ24と通信する。シーケンス検出器26は、振幅閾値27を上回る信号のみ捕捉することにより干渉信号の現パターン30を特定し、これに従って、コントローラ12に対して、干渉的システムが送信中のときに受信した信号はいずれも無視するよう指示する。1つの実施形態において、参照パターン28と現パターン30を各々一連のビットとして表し、各ビットが1つの窓を表すようにしてもよい。各ビットは、対応する窓の期間に送信機が作動している場合「1」に設定され、対応する窓の期間に送信機が作動していない場合「0」に設定されるようにすることができる。前記一組の参照パターン28は、完全参照シーケンス、つまり支援構造と8字形構造の両方を用いたパターンと、支援シーケンス、つまり支援構造のみ用いたパターンの両方を含みうる。以下にシーケンス検出器26の動作を、より詳細に説明する。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態において用いることができる複数のEASシステム30の例を示す。図3は、いくつかの独立したEASシステム10,32,34,36,38の複数のアンテナアセンブリ18を示す。これらのシステムの中の3つ、すなわちシステム10,32,34は、互いの間隔が制限距離d1以内である。2つのシステム36と38も、互いの間隔が制限距離d1以内である。システム34と36は、制限距離d1より大きい距離d2だけ間隔が空けられている。これらの独立したシステムのそれぞれが、予め規定された同じパターンの送受信間隔に従っており、そのパターンには、送信周波数とアンテナ位相の様々に置き換えられた順列が含まれる。各受信アンテナは、最大500フィートの半径内にある他の送信アンテナからの信号を検出する可能性がある。
【0024】
多くのEASシステムは、一般的には、電源投入時に直ぐに送信を開始せず、別のシステムの別の受信機がEASマーカーからの応答信号を「聴取」しているときに送信を行わないことを確実にするための同期処理を行う。そのようなシステムでは、送信機が互いに「同相」となるように同期されることで、そのような干渉を回避する。この位相合わせは、当分野で公知のように、送信機同士の「位相ずれ」が起きた場合に、その都度調整を行う必要がある。
【0025】
このようなシステム同士の位相が合っていても、同期化されたEASシステムの近傍で他の同期化されていないシステムや非周期的送信パルスを用いるシステムが作動していれば、このような他のEASシステムのいくつかが、別のシステムの受信機が聴取しているときに送信を行い、不都合な干渉を引き起こし、誤警報の危険やその他の問題をシステムに招く可能性がある。しかし、大抵は、「異相の」送信機からの信号の振幅とエネルギーは、EASマーカーからの応答信号の振幅よりも高くなる。それゆえ、このような干渉的送信信号を無視するために振幅判別技術を用いることができる。EASマーカーからの応答信号の予想振幅よりも高い信号振幅(もしくはエネルギー)閾値を、電子的コントローラ回路12のハードウエア及び/又はソフトウエアで設定することができる。検出された信号の振幅が閾値より高ければ、検出器は、その特定の受信サンプルを無視し、これを検出統計に用いない。
【0026】
干渉する送信機が、支援送信パルス(「0字形」)と8字形送信パルスの組み合わせを用いる繰り返しパターンを送信している場合がある。このパターンでは、システムの送信アンテナ18を構成する2つのコイル20,22が、それらの位相関係を、0°動作(「同相」動作とも呼ばれる)と180°動作(「実質的異相」動作とも呼ばれる)の間で交互に反転させる。8字形振幅は、マーカーからの応答信号の振幅よりもかなり低い(それゆえ所定の振幅閾値よりも低い)場合があり、そのため、システムは、このような受信サンプルを無視することができず、性能が低下することがある。しかし、干渉的送信パターンが繰り返しパターンである場合、パターン認識技術を用いてこのような信号を識別することができる。
【0027】
1つの実施形態において、システム10が、閾値を超える信号振幅のみ評価するようにすることが考えられる。一度パターンが認識されれば、干渉的受信サンプルを(閾値より高くても低くても)全て無視することができる。つまり、0字形要素と8字形要素から構成された「異相」送信機の場合、距離によっては、支援信号のみ閾値を超えることがある。支援信号のパターンを認識しさえすれば、閾値による検査で8字形要素を別に認識できなくとも、8字形要素も自動的に無視することができる。更に、受信される信号に応じて閾値に対する制限を自動的に設定するような適応的設計を取り入れることもできる。
【0028】
ここで図4を参照すると、本発明の要旨により、シーケンス検出器26により実行され、いつシリアル接続からのデータ採取を終了して無線通信を開始するかを決定するためのステップを説明する例示的な操作フローチャートが与えれている。信号検出用の振幅閾値27、AMP_THR、は、初期状態では、EASタグから受信される信号の振幅がトリミングされることのない最低レベルに設定されている(ステップS102)。受信機14は、1つの受信窓の期間に信号を受信する(ステップS104)。シーケンス検出器26は、受信信号の振幅、RX_AMP、が振幅閾値27より大きいか否かを判定する(ステップS106)。受信した信号の振幅が振幅閾値より小さい場合、現受信窓の期間に干渉を受けておらず、シーケンス検出器26は、次の受信窓の期間に信号を受信する準備状態に戻る。しかし、受信信号が振幅閾値27より大きい場合、シーケンス検出器26は受信信号を用いて現受信パターン29を更新する(ステップS108)。シーケンス検出器26は、受信信号の現パターン29を、支援送信窓の少なくとも1つの参照パターン28と比較する(ステップS110)。現受信パターン29が1つの参照パターン28に一致する場合(ステップS112)、シーケンス検出器26は、その参照パターン28を用いて、干渉するシステムがいつ送信を行うかを予測し、そのような時間枠の間に得られるサンプルは処理からトリミングする(ステップS114)。それにより、効果的に、そのような誤信号が、EASタグから受信した信号又はノイズとみなされないようにする。参照パターン28は、支援パターンのみを含むものでもよく、支援パターンと8字形パターンの組み合わせであってもよい。シーケンス検出器26は、支援パターンのみ含む参照パターンを用いて、全ての干渉信号、即ち支援及び8字形の両方の干渉信号をトリミングすることができる。トリミングされないが、ノイズ窓間に存在する信号は、ノイズ算定に使用される。アルゴリズムによる性能向上の多くは、トリミングされる窓がノイズ算定に影響しないので、ノイズを誤って増大させることがないという事実に依存する。
【0029】
次に図5に示す操作フローチャートの一例を参照して、干渉するEASシステムから受信した送信パターンを認識するためにシーケンス検出器26が実行するステップを説明する。このプロセスは、振幅閾値27を、それ以上になるとEASタグから受信される信号がトリミングされるレベルに設定することから始まり(ステップS116)、それにより、本当のタグ信号が失われないことを確実にする。このレベルは、EASから受信する可能性のある最大振幅として実験により定めることができる。受信機14は、1つの受信窓の期間に信号を受信し(ステップS117)、受信信号の振幅、RX_AMP、を特定する。シーケンス検出器26は、受信信号の振幅が振幅閾値27より大きいか否かを判定する(ステップS118)。受信した信号の振幅が振幅閾値を下回る場合、シーケンス検出器26は、現パターン29において現在の受信窓、SAMPLED_SEQ、に対応するビットを消去し、受信された受信窓の数を左シフトする(ステップS120)。しかし、受信信号が振幅閾値27を上回る場合(ステップS118)、シーケンス検出器26は、現パターン29において現在の窓に対応するビットをセットし、受信窓の数を左シフトする(ステップS122)。
【0030】
次に、シーケンス検出器26は、処理された受信窓の数、つまりRX_WIN_COUNTが、サンプルされたシーケンスを作成するために用いられた受信窓の数の最大数と同じか否かを判定する(ステップS124)。同じでない場合、処理された受信窓の計数値を1つ上げる(ステップS126)。そしてシーケンス検出器26は、次の受信窓の期間に信号を受信する準備状態に戻る。他方、受信窓の最大数に達した場合(ステップS124)、シーケンス検出器26は、現受信パターン29全体を、完全パターン参照シーケンス、FULL_REF_SEQ、と比較する(ステップS128)。パターンが一致すれば、シーケンス検出器26は、完全参照パターンに一致する時間枠の期間に得られるサンプルを処理からトリミングする(ステップS130)。パターンが一致しない場合(ステップS128)、シーケンス検出器26は、現受信パターン29全体を、完全参照パターンに相関する支援パターン参照シーケンス、AID_REF_SEQ、と比較する(ステップS130)。これらのパターンが一致すれば、シーケンス検出器26は、支援的参照パターンに対応する完全参照パターンに一致する時間枠の期間に得られるサンプルを処理からトリミングする(ステップS130)。パターンが一致しない場合(ステップS132)、シーケンス検出器26は、完全参照パターンと、これに対応する支援的参照パターンの両方に対して論理的左シフトを行う(ステップS134)。
【0031】
シーケンス検出器26は、想定される全ての種類の参照シーケンス28と比較し終えたか否か、つまり、シーケンスの計数値が、SEQ_COUNT=MAX_SEQ_COUNTであるか否かを判定する(ステップS136)。このようになっていない場合、シーケンス計数値が1つ上げられ(ステップS138)、シーケンス検出器26は、決定ブロックS128に戻って、現受信パターンを参照パターン28と比較する。参照パターンが全種類出尽くした場合、シーケンス検出器26は、次の受信窓の期間で新たな一連の信号の受信を改めて開始する。
【0032】
ここで図6を参照すると、シーケンス検出器26により実行され、実際の送信パターンを特定することなく干渉的送信を識別するためのステップを説明する例示的な操作フローチャートが示されている。この処理は、干渉信号が、同期化されていないEASシステムにより生成されており、所定の送信パターンがない場合に有効である。送信パターンを特定する代わりに、この処理では、処理段階からトリミングすべきか否かを判定するために超過エネルギーの存在に着目する。即ち、EASタグから通常検出されるであろうエネルギーよりも高いエネルギーをもつ受信信号は、タグ検出にもバックグラウンドノイズ算定にも使用されない。あるいは、図6に示すプロセスを図4及び/又は図5のプロセスと連携させて用い、対応するパターンが検出されなかったときに超過エネルギーを有する信号をトリミングするようにしてもよい。
【0033】
この処理では、先ず振幅閾値27が、それ以下になるとEASタグから受信される信号がトリミングされるレベルに設定され(ステップS140)、本当のタグ信号が失われないようにされる。受信機14は、1つの受信窓の期間に信号を受信し(ステップS142)、受信信号の振幅、RX_AMP、を特定する。シーケンス検出器26は、受信信号の振幅が振幅閾値27より大きいか否かを判定する(ステップS144)。受信した信号の振幅が振幅閾値より小さい場合、EASシステムは現受信窓の期間に干渉を受けておらず、シーケンス検出器26は、次の受信窓の期間に信号を受信する準備状態に戻る。しかし、受信信号が振幅閾値27より大きい場合(ステップS144)、シーケンス検出器26は、受信したサンプルを処理からトリミングする(ステップS146)。このようにして、EASシステムは、EASタグによりタグを検知するように適切に作成されたサンプルのみを用いる。換言すれば、EASシステムは、EASタグが検出区域に存在するか否かを、破棄されなかった信号のみ考慮して判定する。また、トリミングされなかったが、ノイズ範囲である何らかの信号が存在すれば、ノイズ統計値の算定に用いられる。
【0034】
本発明は、ハードウエア、ソフトウエア、又はハードウエアとソフトウエアの組み合わせにおいて実現することができる。又は本明細書に記載の方法を実施するよう設計された任意の種類のコンピュータシステム又は他の装置も、本明細書に記載の機能を実行するのに適している。
【0035】
ハードウエアとソフトウエアの典型的組み合わせとしては、1つ以上の処理素子と、記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを備えたコンピュータシステムが挙げられ、そのプログラムは、ロードされ実行されると、コンピュータシステムが本明細書に記載の方法を実行するように制御する。本発明は、コンピュータプログラム製品に組み込むこともでき、そのような製品は、本明細書に記載の方法の実施を可能とする全ての特徴を備え、且つ、コンピュータシステムにロードされると、そのような製品は、これらの方法を実行することができる。記憶媒体は、任意の揮発性又は不揮発性記憶装置を指すものである。
【0036】
コンピュータプログラム又はアプリケーションとは、本明細書の文脈において、情報処理能力を有するシステムに、直接に、もしくは、a)他の言語、コード又は表記法への変換と、b)異なる物質的形態での再生のうちの一方又は両方を経た後に、特定の機能を実行させるための、任意の言語、コード又は表記法を用いて任意の形態で表現された一組の命令を意味する。
【0037】
更に、以上の記載で反対のことが述べられていない限り、全ての添付の図面は原寸に比例していないことに留意されたい。重要なのは、この発明が、その要旨又は本質的性格から逸脱することなく他の特定な形態で実施することができるということであり、従って、引用は、以上の明細に対してではなく、本発明の範囲を示す以下の請求項に対してなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出区域を含む電子式物品監視(EAS)システムにおける干渉を低減する方法であって、
干渉する1つのEASシステムにつき、前記干渉するEASシステムが送信を行う一連のタイムスロットを示す少なくとも1つの送信窓の参照パターンを与え、
各信号が1つの対応する振幅を有する信号のサンプルパターンを受信し、
前記受信されたサンプルパターンを、前記少なくとも1つの参照パタ1ーンとを比較し、
前記受信されたサンプルパターンが前記少なくとも1つの参照パターンと一致するという判定に応答して、前記少なくとも1つの参照パターンを用いて、前記干渉するEASシステムが送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルをトリミングすることを含む方法。
【請求項2】
EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、前記トリミングされたサンプルを考慮せずに判定することを更に含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記信号のサンプルパターンは、一連のビットを含み、各ビットが1つの受信窓を表すものにおいて、前記方法は、受信信号の振幅が所定の閾値を超えているか否かを判定することを更に含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記所定の閾値は、少なくともEASタグから受信される最大振幅に等しい請求項3の方法。
【請求項5】
前記受信信号の前記振幅が前記所定の閾値を超えているとの判定に応答して、前記一連のビットの中の対応するビットを設定することを更に含む請求項3の方法。
【請求項6】
前記受信信号の前記振幅が前記所定の閾値を超えていないとの判定に応答して、前記一連のビットの中の対応するビットを消去することを更に含む請求項3の方法。
【請求項7】
前記干渉するEASシステムが、支援構造及び8字形構造において送信する場合があり、前記参照パターンは支援サンプルと8字形サンプルとを含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記干渉するEASシステムが、支援構造及び8字形構造において送信を行う場合があり、前記参照パターンは、8字形サンプルを含まない場合に、
前記参照パターンを、支援サンプル及び8字形サンプルを含む完全参照パターンと相互に関係付け、
前記干渉するEASシステムが前記支援構造及び前記8字形構造で送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルをトリミングすることを更に含む、
請求項1の方法。
【請求項9】
EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、前記トリミングされたサンプルを考慮せずに判定することを更に含む請求項8の方法。
【請求項10】
前記受信されたサンプルパターンが前記少なくとも1つの参照パターンと一致しないとの判定に応答して、
少なくとも1つの受信信号の振幅が所定の閾値を超えていることを判定し、
前記所定の閾値を超える振幅を有すると判定された前記少なくとも1つの受信信号を破棄し、
EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、前記少なくとも1つの破棄された信号を考慮せずに判定することを更に含む請求項1の方法。
【請求項11】
検出区域を含む電子式物品監視(EAS)システムにおける干渉を低減するための方法であって、
各々対応する1つの振幅を有する複数の信号を受信し、
少なくとも1つの受信信号の振幅が所定の閾値を超えていることを判定し、
前記所定の閾値を超える振幅を有すると判定された前記少なくとも1つの受信信号を破棄し、
EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、前記破棄されていない信号のみを考慮して判定することを含む方法。
【請求項12】
検出区域内にあるEASタグを励起させる検査信号を送信するよう動作可能な送信機と、
各信号が対応する振幅を有する信号のサンプルパターンを受信するよう動作可能な受信機と、
干渉する1つのEASシステムにつき少なくとも1つの送信窓の参照パターンを記憶しており、前記少なくとも1つの参照パターンが、前記干渉するEASシステムが送信を行う一連のタイムスロットを示すメモリと、
前記送信機と前記受信機と前記メモリとに電気的に接続されたコントローラとを備える電子式物品監視(EAS)システムであって、前記コントローラは、
前記受信されたサンプルパターンを前記少なくとも1つの参照パターンと比較し、
前記受信されたサンプルパターンが前記少なくとも1つの参照パターンと一致するとの判定に応答して、前記少なくとも1つの参照パターンを用いて、前記干渉するEASシステムが送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルをトリミングするように動作可能である電子式物品監視システム。
【請求項13】
前記コントローラは、更に、EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、トリミングされたサンプルを考慮せずに判定するよう動作可能である請求項12の電子式商品監視システム。
【請求項14】
前記信号のサンプルパターンは、一連のビットを含み、各ビットが1つの受信窓を表すものにおいて、前記コントローラは、更に、受信信号の振幅が所定の閾値を超えているか否かを判定するよう動作可能である請求項12の電子式物品監視システム。
【請求項15】
前記所定の閾値は、EASタグから受信される最大振幅以上である請求項14の電子式物品監視システム。
【請求項16】
前記受信信号の振幅が前記所定の閾値を超えているとの判定に応答して、前記コントローラは更に、対応するビットを前記一連のビットにおいて設定するよう動作可能である請求項14の電子式物品監視システム。
【請求項17】
前記受信信号の振幅が前記所定の閾値を超えていないとの判定に応答して、前記コントローラは更に、前記一連のビットの中の対応するビットを消去するよう動作可能である請求項14の電子式物品監視システム。
【請求項18】
前記干渉するEASシステムが、支援構造と8字形構造において送信する場合があり、前記参照パターンは、支援サンプルと8字形サンプルとを含む請求項12の電子式物品監視システム。
【請求項19】
前記干渉するEASシステムが、支援構造と8字形構造において送信する場合があり、前記参照パターンは、8字形サンプルを含まないものにおいて、前記コントローラが更に、
前記参照パターンを、支援サンプルと8字形サンプルとを含む完全参照パターンに相互に関係付けて、
前記干渉するEASシステムが前記支援構造と前記8字形構造で送信を行うタイムスロットに対応する受信窓の期間に受信されたサンプルをトリミングするように動作可能である請求項12の電子式物品監視システム。
【請求項20】
前記受信されたサンプルパターンが前記少なくとも1つの参照パターンと一致しないという判定に応答して、前記コントローラが更に、
少なくとも1つの受信信号の振幅が所定の閾値を超えていることを判定し、
前記所定の閾値を超える振幅を有すると判定された前記少なくとも1つの受信信号を破棄し、
EASタグが前記検出区域に存在するか否かを、前記破棄されていない信号のみを考慮して判定するように動作可能である請求項12の電子式物品監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−521378(P2011−521378A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510488(P2011−510488)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002554
【国際公開番号】WO2009/142688
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510024514)センサーマティック・エレクトロニクス・エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】