説明

電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体

【課題】初期画像の品質だけでなく、繰り返し耐久性に優れた可とう性を有する可逆性感熱記録媒体の提供。
【解決手段】媒体用基材シート15、貫通孔を有するコアシート14、電子情報記録素子13bを有する電子情報記録シート13及び可逆性感熱記録層11aを有する可逆性感熱記録シート11が順次接着されている可逆性感熱記録媒体であって、電子情報記録シート13は、アンテナ回路基板13aの一方の面上に電子情報記録素子13b、アンテナ回路13c、導通部材13dを有し、電子情報記録素子13bはコアシート14の貫通孔14bの中に突出しており、導通部材13dはアンテナ回路基板13aを貫通しないように設けられていると共に、可逆性感熱記録シート11の可逆性感熱記録層11aを有さない側の面が、電子情報記録シート13の電子情報記録素子13bなどを有さない側の面と対向するように接着されている可逆性感熱記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、鉄道・バス、ETC等の交通機関、デジタル放送、第三世代携帯電話の加入者カード、図書館の窓口サービス、学生証、社員証、住民基本台帳カードなど幅広い業界に導入され、生活者の身近な生活からビジネスまで様々な分野で利用が始まっているが、現在の経済社会活動の高度化に伴い、廃棄物の発生量は増大している。
従来の大量生産、大量消費、大量廃棄等の経済社会やライフスタイルを見直し、物資の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費を抑え環境への負荷が少ない循環型社会を形成することが急務になっている。
【0003】
一方、ICチップモジュールを組み込んだ可逆性感熱記録媒体は、ICチップの内部情報を書き換えると共に、記録されている情報を可視画像として可逆性感熱記録媒体に表示できるため、廃棄物の発生量を減らすことが可能である。
近年、このような可逆性感熱記録媒体は、製造業分野における作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書としても用いられるようになってきている。具体的には、指示書を丸棒状部品に巻き付けたり、カードケースに入れたりして使用したのち、指示書に付着した汚れを洗浄し、プリンタで指示書を書き換えることが繰り返し行われる。なお、指示書に画像を形成する場合及び指示書に形成された画像を消去する場合は、指示書をプリンタのサーマルヘッド、消去バー、消去ローラ、消去板等の加熱装置に押し当てる。このため、指示書を書き換える際に、ICチップモジュールが破損しないようにすると共に、ICチップモジュールと可逆性感熱記録媒体の接着部から接着剤が流出しないようにする必要がある。また、指示書を洗浄する際に、ICチップモジュールが可逆性感熱記録媒体から剥がれないようにする必要がある。更に、指示書は、可とう性を有すると共に、画像の品質が良好である必要がある。
【0004】
特許文献1〜5には、図1に示すように、一方のオーバーシートとして、通常は無色ないし淡色のロイコ染料と加熱により該ロイコ染料を発色させ且つ再加熱により消色させる可逆顕色剤を含有する可逆性感熱層114bを少なくとも1層備えた可逆性感熱記録シート114を使用し、ICチップモジュール112を組み込んだICカード、及び、該ICカードを組み込むべき他方のオーバーシート(フィルム基材111)と可逆性感熱記録シート114との間にコア材113を射出成形により設け、両シートをコア材113を介して熱接着させることによってICカードを形成することが開示されている。
しかし、このICカードでは、ICチップモジュール112が、可逆性感熱記録シート114側の面に設けられているため、ICチップモジュール112の存在により可逆性感熱記録媒体が不均一にプレスされてしまい凹凸部が形成されてしまう。その結果、可逆性感熱記録媒体を加熱装置によって均一に加熱することができなくなり、印字時には、可逆性件熱記録媒体における熱伝導を均一に保てず、可逆性感熱記録媒体に記録した画像にムラが生じてしまう。また、情報の消去時には可逆性感熱記録媒体における加熱装置の接する部分にムラが生じるため、消去不良が発生してしまう。また可逆性感熱記録媒体におけるICチップモジュール112が設けられた部分には凸部が生じるので、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体を介して加熱装置にプレスされて、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体から剥がれたり、傷が付いたりするという問題がある。
【0005】
この問題の解決法としては、例えば特許文献6〜11に開示された手法があるが、これらの手法の場合、ICチップモジュール付き可逆性感熱記録媒体が厚く硬いカードとなってしまい、剛性が高くなり可とう性を有さないという問題があった。
そこで、特許文献12〜13では、ICチップモジュールをICチップの基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けている。しかし、電子情報記録素子、アンテナ回路、導通部材を有する電子情報記録シート(一般にインレットと呼ばれる)の表面の凹凸は、ICチップを含む電子情報記録素子だけが原因ではなく、アンテナ回路の導通部材も表面の凹凸を発生させている。アンテナ回路は、アンテナ回路基板のアンテナ回路側と裏面側でジャンピング回路を形成して導通部材により接続している。この際、裏面側の導通部材や、アンテナ回路側と裏面側をレーザー等により貫通させて導通させる際にカシメ部と呼ばれる箇所が発生する。この裏面側の導通部材やカシメ部においても表面を凹凸にさせるため、ICチップだけをICチップの基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けても、可逆性感熱記録シート側の凹凸は解決されていなかった。特に、特許文献13では、「アンテナ回路基板2の裏面上に電気的に短絡するジャンパー線12を備えている」が、このようなものが可逆性感熱記録シート側に存在することによっても、可逆性感熱記録媒体の印字不良や消去不良が発生するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−154210号公報
【特許文献2】特開2000−94866号公報
【特許文献3】特開2000−251042号公報
【特許文献4】特開2001−63228号公報
【特許文献5】特開2002−103654号公報
【特許文献6】特開平11−91274号公報
【特許文献7】特開平11−59037号公報
【特許文献8】特開平11−85938号公報
【特許文献9】特開2002−117880号公報
【特許文献10】特開2003−141486号公報
【特許文献11】特開2003−141494号公報
【特許文献12】特開2005−250578号公報
【特許文献13】特開2006−344207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、初期画像の品質だけでなく、繰り返し耐久性に優れた可とう性を有する可逆性感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、次の1)〜5)の発明によって解決される。
1) 媒体用基材シート、貫通孔を有するコアシート、電子情報記録素子を有する電子情報記録シート及び可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シートが順次接着されている可逆性感熱記録媒体であって、前記電子情報記録シートは、アンテナ回路基板の一方の面上に電子情報記録素子、アンテナ回路、導通部材を有し、該電子情報記録素子は前記コアシートの貫通孔の中に突出しており、前記導通部材は前記アンテナ回路基板を貫通しないように設けられていると共に、前記可逆性感熱記録シートの可逆性感熱記録層を有さない側の面が、該電子情報記録シートの電子情報記録素子などを有さない側の面と対向するように接着されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
2) 媒体用基材シート、コアシート、電子情報記録シート及び可逆性感熱記録シートが、それぞれ粘着層を介して接着されていることを特徴とする1)に記載の可逆性感熱記録媒体。
3) 粘着層の厚みが、20〜150μmであることを特徴とする1)又は2)に記載の可逆性感熱記録媒体。
4) コアシートが、顔料及び、スチレン−ブタジエン系共重合体、又はスチレン−ブタジエン系共重合体とアクリル系共重合体を含有する層を両面に有する紙であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の可逆性感熱記録媒体。
5) 可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも一方と、ロイコ染料を含有することを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【化3】

(式中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。)
【化4】

(式中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。)
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図2に、本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の一例を示す。
この電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体は、媒体用基材シート15、コア14aに貫通孔14bを有するコアシート14、アンテナ回路基板13a上にICチップを含む電子情報記録素子13b、アンテナ回路13c、導通部材13dを有する電子情報記録シート(一般にインレットと呼ばれる)13、及び基材シート11b上に可逆性感熱記録層11aを有する可逆性感熱記録シート11が、粘着層12a、12b及び12cを介して順次接着されている。
なお、図2に示す電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体は、電子情報記録素子13bがコアシート14の貫通孔14b中に突出すると共に、可逆性感熱記録シート11の可逆性感熱記録層11aを有さない側の面が、電子情報記録シート13の、アンテナ回路基板13a、電子情報記録素子13b、アンテナ回路13c、導通部材13dを有さない側の面と対向するように接着されている。
これにより、プリンタの加熱装置に感熱記録媒体を押し当てる際に、電子情報記録シート13の凹凸部が全て媒体用基材シート15の側に向いているため、画像の形成及び消去の不具合を抑制することができる。このとき、電子情報記録素子13bはコアシート14の貫通孔14bの中を媒体用基材シート15の方に向かって、−5〜45μm、好ましくは0〜40μm、更に好ましくは0〜35μm突出するように接着されている。
【0010】
次に、インレットの形態について説明する。図3は一般的なインレットの一例を示し、図4は本発明で用いられるインレットの一例を示す。図3(a)、図4(a)は平面図、図3(b)、図4(b)は、左側面図である。
電子情報記録シート13は、プラスチックフィルム等のアンテナ回路基板13a上に、コイル状のアンテナ回路13cを形成し、当該コイルと容量素子とによりLC共振回路を形成して一定周波数の電波を受信すると共に、電子情報記録素子13bの情報を発信源に送信して返すことができる。交信周波数としては、一般的には125kHz、13.56MHz、2.45GHz、5.8GHz(マイクロ波)及びUHF帯などの周波数帯から適宜選択して使用される。図3の場合、アンテナ回路13cはアンテナ回路基板13aのアンテナ回路13c側と裏面側で、導通部材13dによりジャンピング回路を形成して接続している。この際、裏面側の導通部材13dや、アンテナ回路13c側と裏面側をレーザー等により貫通させ導通させる際に発生するカシメ部13e等により、アンテナ回路基板13aの、電子情報記録素子13bと反対側の部分に凸部が発生し、その部分で可逆性感熱記録媒体の書き換え時に印字や消去の不良が発生する。
そこで本発明では、図4のように、アンテナ回路基板13aに対しアンテナ回路13c側と裏面側で導通部材を形成させないこと、即ち、ジャンピング回路を形成する上でアンテナ回路基板13aを貫通させないことにより、可逆性感熱記録媒体の書き換え時に発生していた印字や消去の不良の解決に至った。このような電子情報記録シート13としては特に限定されないが、例えばUPM社製のインレットを用いることができる。
【0011】
アンテナ回路13cは、アンテナ回路基板13a上に積層された金属膜をエッチングすることにより形成可能であるが、これに限られるものではなく、例えば、皮覆された電線(エナメル線など)を同一面上に巻きなおしても良く、アンテナ回路基板13a上にいわゆる導電性ペーストを印刷したり、アンテナ回路基板に埋め込んだりして、アンテナ回路13cを形成しても良い。
アンテナ回路基板13aに使用する基材としては、一般的な紙フェノール、ガラスエポキシ、コンポジット等のリジッドタイプ、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、紙、合成紙等のフレキシブルタイプ及び両者の複合タイプを用いることができる。
基材の厚みは15〜360μmが使用できるが、強度、加工作業性、コスト等の点から20〜100μmがより好ましい。
ラミネートする金属箔としては銅箔、アルミ箔、鉄箔などを使用できるが、コスト、加工性からアルミ箔が好ましく、その厚みは6〜50μm程度が好ましい。形は、正方形、長方形、円形、楕円形の何れでも良く、特に限定されない。
電子情報記録素子13bの厚さは、200μm以下であることが好ましい。また、電子情報記録素子13bを保護するために、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、紙等の保護膜を接着させることもできる。保護膜の厚さは、10〜60μmが好ましい。
【0012】
粘着層12a、12b、12cは、粘着剤を用いて形成することができる。
粘着剤は、通常、常温で加圧接着できるものであり、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、合成ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、EVA系樹脂等が挙げられる。
粘着剤の主成分は、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、EVA系樹脂であることが好ましく、アクリル系樹脂が特に好ましい。これにより、可逆性感熱記録媒体の反りを抑制することができる。
粘着剤の種類や粘着層の厚さは、被着体の種類や使用される環境、接着強度等を考慮して適宜選択することができる。また、粘着剤は、各種添加剤、無機フィラー、有機フィラー、繊維材料を含有してもよい。
粘着層12a、12b、12cの厚さは、それぞれ独立に、20〜150μmであることが好ましい。更に、20〜130μmが好ましく、20〜100μmが特に好ましい。10μm未満では、十分な接着強度が得られないために容易に剥がれるし、150μmを超えると、加熱装置を用いて可逆性感熱記録媒体を印字や消去する際に、サーマルヘッドからの熱圧力によって粘着層が溶け、はみ出しが発生するという問題が起こる。
【0013】
コアシート14としては、紙、樹脂シート、ゴムシート、合成紙、金属シート、ガラスシート又はこれらの複合体を用いることができる。中でも、顔料及び合成ゴム系共重合体を含有する耐水層を両面に有する耐水紙が好ましい。これにより、可逆性感熱記録媒体を書き換える際に、電子情報記録シート13の破損を抑制すると共に、可とう性を有する可逆性感熱記録媒体が得られるため、画像の形成及び消去における不良を抑制することができ、作業者が容易に取り扱いやすくなる。
コアシート14の厚さは、50〜200μmであることが好ましい。
コアシート14として特に好ましい耐水紙は、顔料及び合成ゴム系共重合体を含有する塗布液を原紙の両面に塗布することにより得られる。なお、ディスパージョンを用いて、耐水性が高い塗膜を形成するためには、分散質の疎水性と分散剤が重要である。ソープフリーのディスパージョンが理想的であるが、界面張力を低下させる効果の大きい分散剤は、できるだけ使用しないことが好ましい。また、耐水性が高い塗膜を形成するためには、造膜性が良好であることが必要条件であり、造膜温度が低いことが好ましい。
【0014】
合成ゴム系共重合体は、スチレン−ブタジエン系共重合体が好ましく、スチレン由来の構成単位を30〜70重量%有するスチレン−ブタジエン系共重合体が更に好ましい。
スチレン−ブタジエン系共重合体は、スチレン及びブタジエンの他に、メタ(アクリル酸)アルキル、その他のビニル化合物、不飽和カルボン酸等を共重合することにより得られ、スチレン由来の構成単位を30〜70重量%、好ましくは、50〜60%重量%有することにより、高い耐水性が得られる。スチレン由来の構成単位が70重量%を超えると、造膜温度が上昇するので、造膜性が低下することがある。
なお、スチレン由来の構成単位を30〜70重量%有するスチレン−ブタジエン系共重合体に、スチレン由来の構成単位を70重量%より多く有するブタジエン−スチレン共重合物を併用してもよいし、アルキル基の炭素数が8以上であるスチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アルキル基の炭素数が8以上である(メタ)アクリル酸アルキルの共重合体等のアクリル系共重合体を併用してもよい。
【0015】
顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、無定型シリカ、サチン白、タルク、酸化亜鉛、硫酸バリウム、マイカ等が挙げられ、中でも、板状のアスペクト比が高いものが好ましい。
なお、顔料に対する合成ゴム系共重合体の重量比は、0.6〜2であることが好ましい。
また、耐水層は、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、高級脂肪酸誘導体等の撥水剤を含有することもできる。更に、耐水層は、ポリエチレン、金属石鹸等を含有してもよい。
耐水層には、必要に応じて、分散剤、増粘剤、流動性改善剤、消泡剤、着色材、防腐・防ばい剤、消臭剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、可塑剤、pH調整剤等を更に含有してもよい。
【0016】
原紙は、パルプに対して、1.0%以上の変性ロジンのエマルジョンと金属塩を用いて、コッブ吸水度を30g/m以下とした耐水性原紙が好ましく、コッブ吸水度を20g/m以下とした耐水性原紙が更に好ましい。変性ロジンとしては、α,β−不飽和多塩基酸で変性したロジンが好ましく、金属塩としては、アルミニウム塩が好ましい。特に、高温の水に接触する用途には、軟化点が110℃以上である変性ロジンを用いることが好ましく、カルボン酸の一部をエステル化することも効果的である。
耐水層は、エアナイフ塗工法、ダイ塗工法、ブレード塗工法、ナイフ塗工法、ロール塗工法、キス塗工法、ワイヤーバー塗工法、コンマ塗工法等の塗布方法を用いて形成することができる。このような耐水層を形成する過程では、塗布後の水分の蒸発が塗膜を破壊してピンホールを形成し、乾燥時の収縮がひび割れを形成することがある。このような欠陥の発生を抑制するためには、塗布回数(片面)を2回以上とするとよい。
耐水層(片面)の塗布量(固形分)は、8g/m以上が好ましく、12g/m以上が更に好ましい。塗布量が8g/m未満では、耐水性が不十分となることがある。
【0017】
図5に、本発明で用いられる可逆性感熱記録シート11の一例を示す。この可逆性感熱記録シートは、基材シート11bの一方の面に、可逆性感熱記録層11a、中間層11c及び保護層11dが積層されており、他方の面に、バック層11eが形成されている。
可逆性感熱記録層11aは、色調が可逆的に変化する感熱記録層であり、温度変化によって色の状態が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料を含有する。可逆性感熱記録材料は透過率、反射率、吸収波長、散乱度等の変化の組み合わせにより、色の状態が変化する。
可逆性感熱記録材料は、熱により透明度や色調が可逆的に変化する材料であれば、特に限定されないが、例えば、常温より高い第一の温度で第一の色の状態となり、第一の温度よりも高い第二の温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となる材料が挙げられる。特に、第一の温度と第二の温度で色の状態が変化する材料が好ましい。
具体的には、第一の温度で透明状態となり、第二の温度で白濁状態となる材料(特開昭55−154198号公報参照)、第二の温度で発色し、第一の温度で消色する材料(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報参照)、第一の温度で白濁状態となり、第二の温度で透明状態となる材料(特開平3−169590号公報参照)、第一の温度で黒色、赤色、青色等に発色し、第二の温度で消色する材料(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報参照)等が挙げられる。中でも、樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した系や、ロイコ染料と顕色剤を用いた系が好ましい。
【0018】
ロイコ染料としては、特に限定されないが、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、顕色剤としては、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報に開示されているもの等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
顕色剤は、分子内に、ロイコ染料を発色させる顕色能を持つ構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)と、分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)を一つ以上有する化合物である。これらの構造は、ヘテロ原子を有する2価以上の連結基を介して連結されていてもよい。また、長鎖炭化水素基は、同様の連結基及び/又は芳香族基を有していてもよい。
このような顕色剤としては、特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報に開示されているもの等が挙げられる。中でも、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも一方であることが好ましい。これらの顕色剤は、感度が非常に高いため、同じ画像濃度を出力する場合、従来の顕色剤と比べて、与える印加エネルギーを10〜30%程度削減することができる。与える印加エネルギーが少なければ、顕色剤の熱分解が緩和されると共に、媒体の表面及び媒体自身に与えるダメージも緩和され、これにより繰り返し耐久劣化も緩和されるので、画像の品質を向上させることができる。
【0019】
【化5】

(式中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1〜3の整数を表し、bは、1〜20の整数を表し、cは、0〜3の整数を表す。)
【化6】

(式中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1〜3の整数を表す。)
【0020】
可逆性感熱記録層11aには、必要に応じて、塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御したりするための添加剤を添加することができる。添加剤としては、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤等が挙げられる。
可逆性感熱記録層11aは、ロイコ染料、顕色剤及び添加剤をバインダー樹脂と共に含有することが好ましい。バインダー樹脂は、基材シート11b上に、これらの材料を結着できさえすれば特に限定されない。中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線(UV)、電子線(EB)等を用いて硬化させた樹脂が好ましく、硬化剤を用いて熱硬化させた樹脂が特に好ましい。これにより、ゲル分率を向上させることができる。
熱硬化させることが可能な樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
【0021】
硬化剤は特に限定されないが、イソシアネートが好ましい。イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);これらのイソシアネートのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、ブロック化イソシネート等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、そのアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましい。但し、硬化剤は、全量が硬化反応しなくてもよい。即ち、可逆性感熱記録層11aに未反応の硬化剤が存在していてもよい。このとき、硬化反応を促進させるために、硬化触媒を用いてもよい。
【0022】
可逆性感熱記録層11aは、ゲル分率が30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が特に好ましい。ゲル分率が30%未満では、繰り返し耐久性が低下することがある。なお、ゲル分率は、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことにより測定することができる。具体的には、基材シート11bから可逆性感熱記録層11aを剥離して、可逆性感熱記録層11aの初期重量を測定する。次に、可逆性感熱記録層11aを400メッシュの金網に挾んで、未硬化のバインダー樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸した後、真空乾燥して、乾燥後の重量を測定する。これにより、ゲル分率は次の式から求めることができる。
ゲル分率(%)=(乾燥後の重量)/(初期重量)×100
このとき、可逆性感熱記録層11a中の、バインダー樹脂以外の成分(有機低分子物質粒子等)の重量を除いて計算を行う。なお、予め有機低分子物質粒子の重量が分からないときは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の断面観察により、単位面積当たりに占める面積比と、バインダー樹脂と有機低分子物質粒子の比重から重量比を求めて、有機低分子物質粒子の重量を算出すればよい。
【0023】
可逆性感熱記録層11aは、発色成分に対するバインダー樹脂の重量比が0.1〜10であることが好ましい。この重量比が0.1より小さいと、可逆性感熱記録層11aの熱強度が不足することがあり、10より大きいと、発色濃度が低下することがある。
可逆性感熱記録層11aは、ロイコ染料、顕色剤、添加剤、バインダー樹脂及び溶媒を均一に分散させた塗布液を用いて形成することができる。
溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
塗布液は、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等の分散装置を用いて調製することができる。このとき、分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各材料を分散させたものを混合してもよい。更に、各材料を加熱溶解させて急冷又は徐冷することによって析出させてもよい。
塗布方法としては、ブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、スプレー塗工法、エアナイフ塗工法、ビード塗工法、カーテン塗工法、グラビア塗工法、キス塗工法、リバースロール塗工法、ディップ塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
【0024】
可逆性感熱記録層11aの厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、1〜20μmであることが好ましく、3〜15μmが更に好ましい。厚さが1μm未満の場合、発色濃度が低下して画像のコントラストが低下することがあり、20μmを超えると、可逆性感熱記録層11aの熱分布が大きくなって、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度が得られなくなることがある。
保護層11dは、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂を含有することができる。紫外線(電子線)を用いて硬化させることが可能なものとしては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系等のオリゴマー;各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。なお、紫外線を用いて架橋させる際には、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが好ましい。また、熱硬化させることが可能な樹脂としては、上記と同様の樹脂を用いることができ、上記と同様に硬化させることができる。
保護層11dの厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0025】
中間層11cは、可逆性感熱記録層11aに対する保護層11dの接着性向上、保護層11dの塗布液の塗布による可逆性感熱記録層11aの変質防止、保護層11d中の添加剤の可逆性感熱記録層11aへの移行防止のために設ける。これにより、画像の保存性を改善することができる。
中間層11cは、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させた樹脂、熱可塑性樹脂を含有することができる。熱硬化性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、上記と同様のものを用いることができ、上記と同様に硬化させることができる。なお、中間層11cの形成方法は、可逆性感熱記録層11aと同様である。
中間層11cは、必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤等を含有してもよい。中間層11c中のフィラーの含有量は、1〜95体積%が好ましく、5〜75体積%が更に好ましい。また、中間層11c中の紫外線吸収剤の含有量は、樹脂に対して、0.5〜10重量%であることが好ましい。
中間層11cの厚さは0.1〜20μmが好ましく、0.3〜3μmが更に好ましい。
【0026】
また、可逆性感熱記録層11a上に積層される中間層11c及び/又は保護層11dは、酸素透過性の低い樹脂を含有することが好ましい。これにより、可逆性感熱記録層11a中のロイコ染料及び顕色剤の酸化を抑制することが可能になる。
なお、可逆性感熱記録層11aと基材シート11bの間にアンダー層を設けてもよい。これにより、可逆性感熱記録層11aの発色感度及び可逆性感熱記録層11aと基材シート11bの接着性を向上させることができる。
また、レーザー光を用いて、可逆性感熱記録層11aを発色させるために、可逆性感熱記録シート11に、レーザー光を吸収して光を熱に変換する光熱変換層を設けてもよい。
更に、放熱を防止するために、可逆性感熱記録シート11に、空気層等の断熱層を設けてもよい。
【0027】
バック層11eは、可逆性感熱記録層11aが設けられている側の面の樹脂の収縮によるカールを防止するために、基材シート11bの可逆性感熱記録層11aが設けられていない側の面に設けられる。
バック層11eは、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂を含有することができる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、上記と同様のものを用いることができ、上記と同様に硬化させることができる。なお、バック層11eの形成方法は、可逆性感熱記録層11aと同様であるが、このとき、可逆性感熱記録層14aが設けられている側と、バック層11eが設けられている側の収縮のバランスが取れるように塗布することが好ましい。これにより、全ての層が塗布された後に、可逆性感熱記録シートを平らにすることができる。
【0028】
また、バック層11eは、樹脂の他に、有機フィラー、無機フィラー、滑剤、着色顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を含有することもできる。
無機フィラーとしては、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられ、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造等を有する化合物が挙げられる。
滑剤としては、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類等が挙げられる。
バック層11eの厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
可逆性感熱記録シート11の具体例としては、630BF、530BF、630BD、530BD、430BD、631FB、431FB(以上、リコー社製)、TRCG99CS、TRCG99SS、TRCG99SH、TRCGAACS、TRCGBBBS(以上、三菱製紙社製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
図6に、本発明の可逆的感熱記録媒体の製造方法の一例を示す。
まず粘着層12aを有する可逆性感熱記録シート11がローラ41aにより供給され、ローラ41bにより間欠的に供給される電子情報記録シート13のICチップを有さない側の面が粘着層12aに接着される。このとき、ローラ41a及び41bにより、ICチップが破損しない程度に加圧される。また、粘着層12bを有するコアシート14は、貫通孔形成手段42により、粘着層12aに接着された電子情報記録シート13のICチップが納まる間隔で貫通孔が形成される。更に、粘着層12cを有する媒体用基材シート15が供給され、ローラ43a及び43bにより、粘着層12aに電子情報記録シート13が接着された可逆性感熱記録シート11と、貫通孔が形成された粘着層12bを有するコアシート14と、粘着層12cを有する媒体用基材シート15が順次接着される。このとき、ローラ43a及び43bにより、ICチップが破損しない程度に加圧される。更に、電子情報記録シート13のICチップがコアシート14の貫通孔内に納まるように、前記3枚のシートが供給される。なお、3枚のシートが接着された後、最適なサイズに切断することにより、本発明の可逆的感熱記録媒体が得られる。
【0030】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて画像を形成するには、一旦発色温度以上に加熱した後、急冷すればよい。具体的には、例えばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると、可逆性感熱記録層11aが局部的に昇温するため、直ちに熱が拡散し、急激な冷却が起こり発色状態となる。一方、画像を消去するためには、熱源を用いて長時間加熱して冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると、可逆性感熱記録層11aの広い範囲で昇温するため、その後の冷却が遅くなり、消色状態となる。この場合、熱源としては、熱ローラ、熱スタンプ、熱風等を用いてもよい。また、サーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを画像形成時よりやや低下させてもよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで画像の形成及び消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。
【0031】
図7に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行なうプリンタの一例を示す。このプリンタでは、可逆性感熱記録媒体50が矢印の向きに搬送され、セラミックバー51、搬送ローラ52、サーマルヘッド53及びプラテンロール54を通って系外に排出される。この場合、セラミックバー51により画像の消去が行われ、サーマルヘッド53とプラテンロール54により画像の形成が行われる。
また、図8に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行うプリンタの他の例を示す。このプリンタでは、可逆性感熱記録媒体60が矢印の向きに搬送され、熱ロール61、サーマルヘッド62、プラテンロール63及び搬送ローラ64を通って系外に排出される。この場合、熱ロール61により画像の消去が行われ、サーマルヘッド62とプラテンロール63により画像の形成が行われる。
可逆性感熱記録媒体の搬送速度は、例えば10〜100mm/秒に設定されるが、可逆性感熱記録シートの厚さに応じて、電子情報記録シート13により、画像の形成時及び消去時における搬送速度が調節される。このため、加熱処理により画像の形成及び消去が正確に行われるように、可逆性感熱記録媒体及びプリンタが構成されている。また、プリンタが小型である場合には、画像の形成及び消去が連続して行われるため、加熱処理時の加熱エネルギーを調整することにより、画像の形成及び消去が正確に行われるように構成されている。
【0032】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、可逆性感熱記録層とICチップの両方を有するため、ICチップに書き込まれた情報を可逆性感熱記録層に表示することにより情報を確認することができ、利便性が向上する。なお、本発明の可逆性感熱記録媒体は、入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理、文書管理用途等の一般文書サイズに加工されたシートとして広く用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、初期画像の品質だけでなく、繰り返し耐久性に優れた可とう性を有する可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
図6に示す製造方法を用いて、ICチップが、コアシート14の貫通孔内を媒体用基材シート15の方向に突き出した可逆性感熱記録媒体(図2参照)を製造した。
媒体用基材シート15としては、厚さ75μmの白PETフィルム、電子情報記録シート13としては、UPM社製:Philips I−code family,ISO15 693ドライインレット(図4参照)、コアシート14としては、厚さ150μmのスチレン−ブタジエン系共重合体及びアクリル系共重合体を含有する耐水紙ポエム(紀州製紙社製)、粘着層12a、12b及び12cとしては、厚さ20μmの両面テープ(芯材:なし、粘着剤:アクリル系粘着剤)の黄セパノンサポート(東邦紙工社製)を用いた。
また、可逆性感熱記録シート11は、次のようにして作製したものを用いた。
【0036】
<可逆性感熱記録シート11>
下記組成物をボールミルを用いて平均粒径が0.1〜1.0μmになるように粉砕分散した。
・2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン…1重量部
・下記構造の電子受容性化合物(顕色剤)…4重量部
【化7】

・ジアルキル尿素(日本化成社製、ハクリーンSB)…1重量部
・アクリルポリオール樹脂40重量%溶液
(三菱レイヨン社製、LR340)…10重量部
・メチルエチルケトン…80重量部
得られた分散液に、イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)4重量部を加え、よく撹拌して、感熱記録層塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層塗布液を、厚み75μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン社製、テトロンフィルムU3L99W)上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥した後、60℃で24時間加熱して、厚み12〜13μmの感熱記録層を設けた。
【0037】
−保護層の作製−
下記組成物をボールミルを用いて平均粒径が2〜3μmになるように粉砕分散し、保護層塗布液を調製した。
・ジペンタエリスルトールアクリレート
(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)…12重量部
・ペンタエリスリトールアクリレート
(日本化薬社製、KAYARAD TPA−330)…13重量部
・タルク(富士タルク工業株式会社製、LMS−300)…3重量部
・光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)…1重量部
・イソプロピルアルコール…60重量部
・トルエン…10重量部
得られた保護層塗布液を前記感熱記録層上にワイヤーバーにより塗布し、90℃で1分間加熱乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下で架橋させて、厚み3μmの保護層を設けた。
以上により、可逆性感熱記録シート11を作製した。
【0038】
(実施例2)
粘着層12a、12b及び12cとして、厚さ104μmの両面テープ(芯材:不織布、粘着剤:アクリル系粘着剤のDF1800、東洋インキ社製)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体(図2参照)を製造した。
【0039】
(実施例3)
粘着層12a、12b及び12cとして、厚さ140μmの両面テープ(芯材:不織布、粘着剤:アクリル系粘着剤の#8810、大日本インキ化学工業社製)を用い、可逆性感熱記録シート11の電子受容性化合物(顕色剤)を下記材料にした点以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体(図2参照)を製造した。
【化8】

【0040】
(比較例1)
電子情報記録シート13を寿フォーム社製の13.56MHzインレット(図3参照)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体を製造した。
【0041】
(比較例2)
図9に示すように、粘着層12a、12b、12cを介して、媒体用基材シート15、電子情報記録シート13、貫通孔を有するコアシート14、可逆性感熱記録シート11を順次接着し、アンテナ回路基板13aを貫通するように導通部材13dを設けた点以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録媒体を製造した。
【0042】
(比較例3)
電子情報記録シート13を寿フォーム社製の13.56MHzインレット(図3参照)、粘着層12a、12b及び12cとして、厚さ140μmの両面テープ(芯材:不織布、粘着剤:アクリル系粘着剤の#8810、大日本インキ化学工業社製)に変更した点以外は、比較例2と同様にして、可逆性感熱記録媒体を製造した。
【0043】
上記実施例及び比較例の可逆性感熱記録媒体について、次のようにして印字を行い評価した。結果を表1に示す。
(印字品質)
可逆性感熱記録媒体に、エルシステム社製のLRP0502HTプリンターを用いて、千鳥パターンで印字し、可逆性感熱記録媒体のICチップ領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域での印字状態を、1回目の印字と100回目の印字について、目視で評価した。評価基準は次の通りである。
○ :印字できない領域や印字カスレが無く、良好な画像であった。
△ :微かに印字できない領域や印字カスレが観察された。
× :明瞭に印字できない領域や印字カスレが観察された。
××:全面に印字カスレが観察された。
【0044】
(柔軟性)
可逆性感熱記録媒体に、エルシステム社製のLRP0502HTプリンターを用いて、千鳥パターンで印字し、全体の消去状態を目視で評価した。評価基準は次の通りである。なお、媒体に柔軟性がないと、印字ヘッドや消去ヘッドとの当たりが不均一となり、均一な消去が不可能となる。
○:消し残りが無く、良好な消去であった。
△:微かに消し残りが観察された。
×:点々と消し残りが観察された。
【0045】
(接着性)
「ハガレ(剥がれ)」と「のりはみだし」について、次の基準で評価した。
・ハガレ
○:手で剥がれない。
×:手で容易に剥がれる。
・のりはみだし
○:100回繰り返し後でも貼り合わせ部から、粘着剤がはみ出ていない。
×:100回繰り返し後、貼り合わせ部から粘着剤がはみ出てプリンターの
搬送経路に付着する
【0046】
(耐水性)
常温環境下、24時間水に浸漬し、次の基準で評価した。
○:水中で自然には剥がれない。
×:水中で自然には剥がれる。
【0047】
【表1】

表1から分るように、実施例では全ての項目が「○」であり、初期だけでなく、繰り返し後の印字品質においても優れた媒体が得られたが、比較例では、全てが「○」のものは無かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来のICカードの一例を示す図である。
【図2】本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の一例を示す図である。
【図3】従来のインレットの一例を示す図である。(a)平面図、(b)左側面図。
【図4】本発明で用いられるインレットの一例を示す図である。(a)平面図、(b)左側面図。
【図5】本発明で用いられる可逆性感熱記録シートの一例を示す図である。
【図6】本発明の可逆性感熱記録媒体の製造方法の一例を示す図である。
【図7】本発明で用いられるプリンタの一例を示す図である。
【図8】本発明で用いられるプリンタの他の例を示す図である。
【図9】従来のICカードの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
11 可逆性感熱記録シート
12a 粘着層
12b 粘着層
12c 粘着層
13 電子情報記録シート(インレット)
14 コアシート
15 媒体用基材シート
41a ローラ
41b ローラ
42 貫通孔形成手段
43a ローラ
43b ローラ
50 可逆性感熱記録媒体
51 セラミックバー
52 搬送ローラ
53 サーマルヘッド
54 プラテンロール
60 可逆性感熱記録媒体
61 熱ロール
62 サーマルヘッド
63 プラテンロール
64 搬送ローラ
111 媒体用基材シート
112 電子情報記録素子(ICチップ)
113 接着層
114 可逆性感熱記録シート
114a 保護層
114b 可逆性感熱記録層
114c 基材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体用基材シート、貫通孔を有するコアシート、電子情報記録素子を有する電子情報記録シート及び可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シートが順次接着されている可逆性感熱記録媒体であって、前記電子情報記録シートは、アンテナ回路基板の一方の面上に電子情報記録素子、アンテナ回路、導通部材を有し、該電子情報記録素子は前記コアシートの貫通孔の中に突出しており、前記導通部材は前記アンテナ回路基板を貫通しないように設けられていると共に、前記可逆性感熱記録シートの可逆性感熱記録層を有さない側の面が、該電子情報記録シートの電子情報記録素子などを有さない側の面と対向するように接着されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
媒体用基材シート、コアシート、電子情報記録シート及び可逆性感熱記録シートが、それぞれ粘着層を介して接着されていることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
粘着層の厚みが、20〜150μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
コアシートが、顔料及び、スチレン−ブタジエン系共重合体、又はスチレン−ブタジエン系共重合体とアクリル系共重合体を含有する層を両面に有する紙であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも一方と、ロイコ染料を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【化1】

(式中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。)
【化2】

(式中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。)

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−229911(P2008−229911A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69502(P2007−69502)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】