説明

電子投票システムおよびそのプログラム

【課題】
従来の電子投票システムは、ビジネス性が低く、選挙の公平性・無効投票の撲滅・システムトラブルなどにも十分に対応することができなかった。
【解決手段】
本発明に係る電子投票システムは、投票時に本人確認済みの選挙人に配布する電子投票媒体と、前記電子投票媒体を装着して投票を行う電子投票機とからなる電子投票システムにおいて、前記電子投票媒体は、予め記憶された全候補者リストを保持し、前記電子投票媒体とは別に前記全候補者リストを一見できる全候補者一覧表と、前記全候補者一覧表から選んだ候補者情報を入力する候補者情報入力手段と、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を投票用紙に書き込む記録手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子投票システムおよびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の選挙の多くは、選挙人(投票する人)が予め郵送されてくる確認用の葉書(投票所入場券)を所定の投票所に持参し、受付で選挙人であるか否かの確認を行って投票用紙を受け取り、その投票用紙に候補者名や政党名などを記入して投票箱に投函する投票方式になっている。一部の市町村等の選挙では、電子投票システムが導入されている所もあるが、様々な問題があり、電子投票システムの普及は進んでいない。
【0003】
その理由の一つとして、選挙が数年に一度程度にしか行われず、電子投票システムに用いる装置類の利用頻度が低く、レンタルでの利用が主流となっていることが挙げられる。このため、電子投票システムの装置類を提供する企業(ベンダー)は、装置を大量生産する必要がなく、開発コストのかかる複雑な専用装置のレンタルだけでは大きな利益を出しにくい。
【0004】
また、電子投票システムを導入した場合、選挙を執行する選挙管理委員会やベンダーは、多くのリスクを背負うことになる。例えば、選挙の際に電子投票システムの不具合が発生して大量の無効票が出た場合には再選挙を行う必要が生じたり、さらにその再選挙によって当選と落選が逆転するような結果が出た場合は候補者から訴訟されるなどのリスクがある。このようなリスクがあるため、選挙を執行する側も電子投票システムを導入するための条例制定を積極的に行えない状況にある。
【0005】
一方で、電子投票システムは、開票作業の迅速化や、解読不能文字などによる無効投票の解消に効果的であるため、将来的には普及していくものと考えられている。例えば、投票方法と開票作業を改善するために、非接触で情報を読み書きできる無線タグ(RFIDタグ)技術を用いて、投票用紙に無線タグ用のICチップを内蔵させ、投票者が選択した候補者を特定する情報を暗号化して、無線タグ用のICチップに書き込むようにした電子投票システムが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−141569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な電子投票システムの目的は、開票の迅速化による開票費用の削減,無効投票の撲滅,遠隔投票の実現および成りすまし投票の防止などの課題を解決することであるが、上記以外にも電子投票システム導入の障害となっている下記の課題を解決しなければならない。
(1)電子投票システムで用いられる装置類の利用頻度が低く、レンタル主体で市場規模が小さく、装置自体ではビジネスが成立しない。しかも、これらの専用の装置類は、選挙の種類毎にメンテナンスする必要があり、多大なコストがかかる。
(2)一般的な電子投票システムでは、候補者一覧を電子投票機のモニタ画面に表示するようになっている。この場合、モニタの画面サイズや解像度などの制約から、1画面に表示できる候補者数や政党数に限界がある。このため、国政選挙の比例代表制や多数の候補者が立候補する選挙の場合、「次画面表示」や「スクロール表示(多ページ画面で非表示部分へ移動する表示)」で対応しなければならない。この結果、選挙の公平性を欠き、最初の画面に表示される候補者が有利になり、最初の画面に表示されない候補者が不利になるという問題が生じる。或いは、1画面に表示するために大型の表示装置やタッチパネルが必要になり、電子投票システムの価格が高くなってしまう。
(3)電子投票システムは、様々な国で導入が試みられているが、多くのトラブルを起こしている。機械が行う電子投票システムは、故障や操作ミス等を完全に防ぐことが難しく、電子投票システムのトラブルが選挙結果に影響を与えた場合は,選挙を執行する選挙管理委員会やベンダーは、多くのリスクを背負わなければならない。例えば、再選挙の費用負担だけでなく、選挙の際に電子投票システムの不具合が発生して大量の無効票が出た場合には再選挙を行う必要が生じたり、さらにその再選挙によって当選と落選が逆転するような結果が出た場合は候補者から訴訟されるなどのリスクがある。特にベンダーは社会的信用力(ブランドイメージ)を失ってしまうのではないかという不安もある。
【0007】
このように、電子投票システムの導入には様々な課題を解決しなければならない。
【0008】
本発明の目的は、開票の迅速化だけでなく、選挙の種別に依らず汎用性の高い装置を実現し、低コストでビジネス性が高く、選挙の公平性・無効投票の撲滅・システムトラブルなどにも対応でき、将来の遠隔投票も視野に入れた電子投票システムおよびそのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子投票システムは、投票時に本人確認済みの選挙人に配布する電子投票媒体と、前記電子投票媒体を装着して投票を行う電子投票機とからなる電子投票システムにおいて、前記電子投票媒体は、予め記憶された全候補者リストを保持し、前記電子投票媒体とは別に前記全候補者リストを一見できる全候補者一覧表と、前記全候補者一覧表から選んだ候補者情報を入力する候補者情報入力手段と、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を投票用紙に書き込む記録手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、候補者名を表示する表示手段を更に設け、前記電子投票機は、前記候補者情報入力手段により入力された候補者情報に対応する候補者名を前記電子投票媒体から読み出して前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0011】
また、好ましくは、前記投票用紙には情報を読み書きできる記憶媒体が一体化され、前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を前記投票用紙の記憶媒体に記憶することを特徴とする。
【0012】
また、好ましくは、前記投票用紙に文字や図形を印刷する印刷手段を更に設け、前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者名を前記印刷手段によって前記投票用紙に印刷することを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者名と、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を示すデジタルコードとを、前記印刷手段によって前記投票用紙に印刷することを特徴とする。
【0014】
また、好ましくは、前記印刷手段が印刷するデジタルコードは、二値階調で印字された一次元コードまたは二次元コードであることを特徴とする。
【0015】
また、好ましくは、前記電子投票機は、前記電子投票媒体が装着された時点で起動し、投票終了後に前記電子投票媒体を排出して動作を終了することを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記投票用紙の情報を読み取る読み取り装置を有する投票箱と、前記投票箱の読み取り装置が前記投票用紙から読み取った情報をネットワークを介して所定のサーバに送信する通信手段とを更に設けたことを特徴とする。
【0017】
また、好ましくは、前記読み取り装置は、前記投票用紙に一体化された記憶媒体から候補者情報を読み取ることを特徴とする。
【0018】
また、好ましくは、前記読み取り装置は、前記投票用紙に印刷されたデジタルコードを読み取ることを特徴とする。
【0019】
また、好ましくは、前記読み取り装置が読み取るデジタルコードは、二値階調で印字された一次元コードまたは二次元コードであることを特徴とする。
【0020】
また、好ましくは、前記読み取り装置は、前記投票用紙に印刷された候補者名を読み取って電子データに変換するOCR(光学式文字読取装置)であることを特徴とする。
【0021】
また、好ましくは、通報手段を更に設け、前記電子投票機は、動作エラーが生じた場合に、前記通報手段で動作エラーの発生を知らせることを特徴とする。
【0022】
また、好ましくは、前記電子投票機にネットワークを介して運用状況を所定の管理センターに送信する運用状況通信手段を更に設けたことを特徴とする。
【0023】
また、好ましくは、前記電子投票機は、装着された電子投票媒体に記憶されている所定コードが一致しない場合は、前記電子投票媒体を利用不可とすることを特徴とする。
【0024】
また、好ましくは、予め選挙人に送付された投票所入場券を元にネットワークを介して本人確認を行うネットワーク認証装置と、前記ネットワーク認証装置が接続する選挙人名簿データが格納されたサーバーとを更に設け、投票時に前記電子投票媒体を配布する際の本人確認を前記ネットワーク認証装置で行うことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る電子投票システムのプログラムは、投票時に本人確認済みの選挙人に配布する電子投票媒体と、前記電子投票媒体を装着して投票を行う電子投票機とからなる電子投票システムで、前記電子投票機を構成するコンピュータが実行する電子投票システムのプログラムにおいて、予め記憶された全候補者リストを保持する前記電子投票媒体が前記電子投票機に装着された場合に動作を起動する起動手順と、前記電子投票媒体とは別の全候補者一覧表を見て選挙人が選択した候補者情報を入力する候補者情報入力手順と、前記候補者情報入力手順により入力された特定の候補者情報を投票用紙に書き込む投票記録手順とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、選挙毎に全候補者リストを電子投票機側に記憶する必要がなく、投票時に選挙人毎に配布する電子投票媒体に予め全候補者リストを保持しておくことにより、選挙の種別に依らない電子投票機を実現できる。これにより、ベンダーは電子投票システムのビジネスが成立し、選挙を実施する側(国や地方自治体など)にとっても電子投票システムを安価で運用することが可能となり、電子投票システムを導入し易くなる。
【0027】
また、全候補者リストを電子投票機のモニタに表示しないので、選挙の公平性を維持することができる。
【0028】
さらに、投票時に、選挙人が入力した候補者を特定する情報から電子投票媒体に予め保持された全候補者リストから選択して投票用紙に電子的に記録するので、開票の迅速化が可能になる。
【0029】
また、投票用紙に文字情報として印字するので、システムトラブルが生じた場合でも開票者が文字情報を確認できるので無効票にならず、安全性や信頼性を確保することができる。
【0030】
このように、選挙人や候補者だけでなく、選挙管理委員会やベンダーにとっても安心できる電子投票システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
本発明に係る電子投票システムおよびそのプログラムの第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る電子投票システムは、予め選挙人に郵送された投票所入場券を指定の投票所に持参して投票を行う方式で、この部分は従来の投票システムと同じである。また、本実施形態では、選挙人が投票する候補者情報を電子データとして投票用紙に記録するようになっている。ここで電子データとは、ICチップ(無線タグ)へ記録する情報や投票用紙に印刷されるデジタルコードなどを含む。電子データが記録された投票用紙は、従来の投票方法と同様に、選挙人が投票所の投票箱に投函する。そして、開票時には、投票用紙に記録された電子データを読取装置で読み取ることにより、開票を迅速に行うことができる。さらに、選挙人が投票する候補者名や政党名などの投票内容は、人間が認識できる文字情報で投票用紙に印刷される。これにより、開票時に何らかの理由で電子データが読めない場合に、人間がその投票用紙の投票内容を確認することができる。
【0032】
本実施形態に係る電子投票システム100は、図1に示すように、電子投票機101と、電子投票カード151と、投票用紙153とで投票側のシステムを構成する。また、開票側のシステムは、読取装置401、集計用PC(パーソナルコンピュータ)402などで構成される。尚、投票箱301は、投票側のシステムおよび開票側のシステムのいずれにも含まれる。
【0033】
次に、本実施形態に係る電子投票システム100による一連の投票手順について説明する。
[投票手順]
図2は、本実施形態に係る電子投票システム100による一連の投票手順を示すフローチャートである。図2のフローチャートにおいて、点線枠で示したステップは人間が行う処理を示し、実線枠で示したステップは電子投票機101が行う処理を示す。
【0034】
(ステップS101)選挙人は、投票所入場券を持参して、記載されている指定の投票所に行く。
【0035】
(ステップS102)投票所の受付者は、投票所入場券と選挙人名簿とを照合して、来場した人物が選挙人本人であることを確認する。尚、選挙人名簿は、紙に印刷されたファイルであっても構わないし、コンピュータなど電子機器に予め記憶された選挙人情報や、ネットワークを介して得られる選挙人情報を用いても構わない。
【0036】
(ステップS103)来場した人物が選挙人本人であることを確認後、投票所の受付者は、選挙人に図3に示すような電子投票カード151を手渡す。尚、投票所入場券と選挙人名簿とが合致しない場合や性別が異なるなどの問題がある場合は、来場した人物にその旨を指摘するなど、選挙実施者側で予め決められた対応を行う。
【0037】
本実施形態に係る電子投票システム100は、投票所内において、図3に示すような電子投票カード151を利用する。この電子投票カード151は、内部に非接触で情報を読み書きできるICチップ152が搭載されたICカードである。電子投票カード151のICチップ152には、予め全候補者名や届出順の番号などの情報が記憶されている。尚、電子投票カード151のICチップ152の情報は、セキュリティを保つために、所定の暗号キーやパスワードがないと書き込めないようになっている。これは、第三者による候補者データの改ざん防止のためである。また、電子投票カード151の表面には、選挙名称の印刷や選挙管理委員会の名称の印刷も可能で、各自治体向けに合わせて書き換えが可能になっているので、ベンダーは小ロット生産する必要がなく、同じ電子投票カード151を大量生産した後、表面の印刷や情報の書き込みを行えばよい。さらに、本実施形態では、電子投票カード151をカード形状としたが、カード形状である必要はなく、情報を保持できる電子媒体で構成されたものであれば他の形状でも構わない。
【0038】
このように、選挙人は、投票所内において、この電子投票カード151用いて投票を行い、投票終了後に電子投票カードは受付に回収される。
【0039】
(ステップS104)受付で電子投票カード151を受け取った選挙人は、図4に示すような電子投票機101が複数台設置されている投票ブースに行き、電子投票機101のカード挿入口102に電子投票カード151を挿入する。
【0040】
ここで、電子投票機101の構成について図5を用いて説明する。図5において、電子投票機101は、表示部103と、制御部104と、操作部105と、プリンタ106と、ICカードI/F107と、アラーム報知部108と、電子記録部109とで構成される。制御部104はCPU,メモリおよびインターフェース回路などで構成され、メモリに予め記憶されたプログラムに従って動作し、インターフェース回路を介して、表示部103,操作部105,プリンタ106,ICカードI/F107,アラーム報知部108,電子記録部109などを制御する。従って、本フローチャートにおいて、実線枠で示したステップは、電子投票機101の制御部104のメモリに予め記憶されたプログラムに従って行われる処理を示す。
【0041】
次に、図4に電子投票機101の外観図を示す。尚、図4において、図5と同符号のものは同じものを示す。例えば、操作部105は、0から9までの「数字ボタン」105aと、「投票ボタン」105bと、「変更ボタン」105cと、「白票ボタン」105dとで構成される。また、電子投票機101の表面には、操作方法が記載されたラベル154が貼付されている。例えば、ラベル154には、以下のように記載されている。
【0042】
(操作方法)
・候補者の選択:「数字ボタン」で候補者情報を入力する。
・候補者の変更:「変更ボタン」を押して、「数字ボタン」で候補者情報を再入力する。
【0043】
・投票:投票ボタンを押す。
・白票:白票ボタンを押す。
【0044】
このように、操作方法が分からない選挙人は、このラベル154を見て操作方法を確認することができるようになっている。
【0045】
(ステップS105)ステップS104で、選挙人が電子投票機101のカード挿入口102に電子投票カード151を挿入すると、電子投票機101の制御部104は、ICカードI/F107を介して電子投票カード151の情報(所定のコード)を読み取り、所定のコードが予め決められ電子投票機101内部に記憶されたコードと一致するか否かによって、正しいカードであるか否かを認証する。そして、挿入された電子投票カード151が正規のカードである場合は、次のステップS106に進む。挿入された電子投票カード151が正規のカードでない場合は、電子投票機101の制御部104は、カード挿入口102に挿入された電子投票カード151を自動的に排出し、表示部103に「受付に電子投票カード151を持って行って下さい。」というメッセージを表示して、投票処理を停止する。尚、所定のコードは、マスターキーのような暗号キーで構成し、電子投票機101には、使用される全ての電子投票カード151のコードを記憶しておく必要はない。
【0046】
(ステップS106)電子投票機101の制御部104は、投票処理を起動し(システム起動)、表示部103の画面に「投票を開始して下さい。」というメッセージを表示する。
【0047】
このように、電子投票機101は、電子投票カード151が挿入されていない状態では、カード認識処理以外の投票処理が停止され、カード挿入口102に正規の電子投票カード151が挿入されると、投票処理が自動的に起動される仕組みになっている。これにより、成り済まし投票や電子投票機101への悪戯などの投票の不正を防止する。
【0048】
(ステップS107)選挙人は、図6に示すような候補者一覧表を見て、投票したい候補者や政党或いは白票を投じるなど投票内容を決める。尚、この候補者一覧表は、全ての候補者名や政党名などを一度に公平に見ることができるように、紙などに一面で印刷され、投票ブース毎に選挙人が見える位置に予め貼付されている。
【0049】
投票したい候補者や政党がある場合はステップS108に進み、白票を投じたい場合はステップS110に進む。
【0050】
(ステップS108)選挙人は、図6に示す候補者一覧表を見て、投票したい候補者名に付与されている番号を確認し、電子投票機101の操作部105にある0から9までの「数字ボタン」105aを用いて、その候補者番号(候補者情報)を入力する。尚、各候補者名に付与されている番号は、例えば、立候補の届け出順に付与される。ここで、候補者情報は、候補者番号である必要はなく、アルファベットなどの記号を用いても構わない。
【0051】
(ステップS109)候補者情報の入力が完了すると、電子投票機101の表示部103には、入力された候補者情報に対応する候補者名や政党名などが表示される。この時、電子投票機101の制御部104は、候補者情報の入力が完了したか否かを入力された数字の桁数で判断する。例えば、図6の候補者一覧表は2桁の番号が付与されているので、制御部104は、「数字ボタン」105aが2回押下された場合に、候補者情報の入力が完了したと判断する。また、さらに候補者数が多い場合は、3桁の番号(100から999)に桁数を揃えて付与しておくことにより、同様に「数字ボタン」105aが押下された回数で候補者情報の入力完了を判断することができる。或いは、1から順番に番号を付与する場合は、操作部105に「入力確定ボタン」を設けて、「入力確定ボタン」が押下された時に、候補者情報の入力が完了したと判断するようにしても構わない。
【0052】
(ステップS110)選挙人は、図6に示す候補者一覧表を見て、投票したい候補者がいない場合は、候補者情報を入力せずに、操作部105にある「白票ボタン」105dを押す。
【0053】
(ステップS111)操作部105にある「白票ボタン」105dが押されると、電子投票機101の表示部103には、例えば[白票です]など、白票であることを示す表示がなされる。
【0054】
(ステップS112)選挙人は、表示部103に表示された投票内容(候補者名,政党名或いは白票など)を確認する。表示部103に表示された投票内容を変更する場合は、ステップS113に進む。表示部103に表示された投票内容でOKの場合は、ステップS114に進む。
【0055】
(ステップS113)選挙人は、表示部103に表示された投票内容を変更したい場合は、「変更ボタン」105cを押す。「変更ボタン」105cが押されると、表示部103に表示された投票内容が消去され、「投票を開始して下さい。」というメッセージを表示し、ステップS107に戻る。そして、再びステップS107からステップS112までの処理を繰り返す。
【0056】
(ステップS114)選挙人は、表示部103に表示された投票内容でよい場合は、「投票ボタン」105bを押す。
【0057】
(ステップS115)電子投票機101の制御部104は、電子記録部109に指令して投票用紙153のICチップ201に投票内容のデータを書き込む。
【0058】
ここで、投票用紙153は、図7(a)に示すように、内部または表面に非接触で情報を読み書きできるICチップ201が搭載された専用の用紙である。尚、本実施形態では短冊形状の投票用紙153の上部にICチップ201を搭載したが、短冊形状である必要はなく、ICチップ201の搭載場所も取り外しできないように装着されていればどこでも構わない。電子投票機101の電子記録部109は、プリンタ106から投票用紙153を出力する際に、選択された候補者名(または候補者情報などの候補者を示す情報)或いは白票を示す情報をICチップ201に記録する。尚、投票用紙153のICチップ201に記録された情報は、セキュリティを保つために、所定の暗号キーがないと読み出したり書き込めないようになっている。
【0059】
(ステップS116)電子投票機101の制御部104は、プリンタ106の投票用紙排出口155から投票用紙153を出力する。ここで、投票用紙153は、文字を記入できる印字部分202を有している。電子投票機101のプリンタ106は、選挙人が投票した内容を投票用紙153の印字部分202に人間が認識できる文字情報として印刷する。例えば、選挙人が投票した候補者名「○×太郎」や、白票を投じた場合は「白票です」などの文字情報画が印字部分202に印刷される。
【0060】
尚、プリンタ106から出力される投票用紙153には、予めICチップ201が搭載されており、電子投票機101内に例えばロール状に準備されている投票用紙153が無くなった場合には、制御部104はアラーム報知部108から光や音でエラーを報知する。これにより、投票所内に待機している選挙実施側の担当者は、電子投票機101がエラーになっていることを容易に知ることができ、投票用紙を交換するなどの対応を図ることができる。
【0061】
(ステップS117)プリンタ106から投票用紙153が出力されると、電子投票機101の制御部104は、表示部103に「投票が終了しました。投票用紙153を投票箱に投函してください。」などのメッセージを表示する。
【0062】
(ステップS118)電子投票機101の制御部104は、カード挿入口102から電子投票カード151を排出し、電子投票機101の投票処理を停止する(システム停止)。
【0063】
(ステップS119)選挙人は、電子投票機101から排出された電子投票カード151と、投票用紙153とを受け取って図8に示すような投票箱301の所に行き、投票用紙153を投票箱301に投函する。ここで、投票箱301に投票用紙153を投入する投入口のサイズを電子投票カード151が入らないサイズにしておくことにより、誤って電子投票カード151を投票箱301に投函することを防止できる。
【0064】
(ステップS120)投票用紙153を投票箱301に投函し終えた選挙人は、投票所を出る際に、受付に電子投票カード151を返却する。
【0065】
以上で、一連の投票手順が終了する。
【0066】
尚、本実施形態では、図7(a)に示したように、投票用紙153にICチップ201を搭載し、ICチップ201に投票内容を記録するようにしたが、ICチップ201でなくても構わない。例えば、図7(b)に示すように、投票内容を一次元コード203に符号化して、投票用紙153aに印刷するようにしても構わない。この場合、ICチップ201は用いないので、図5の電子投票機101において、電子記録部109はなくても構わない。その代わり、制御部104は、候補者情報や白票などの投票内容を符号化する処理を行い、一次元コード203を生成してプリンタ106で投票用紙153aに印刷する処理を行う。
【0067】
或いは、図7(b)に示した一次元コード203の代わりに、図7(c)に示すような二次元コード204を用いても構わない。この場合は、制御部104は、候補者情報や白票などの投票内容を符号化する処理を行って二次元コード204を生成し、プリンタ106で投票用紙153bに印刷する処理を行う。また、電子投票機101のアラーム報知部108は、投票用紙切れだけでなく、電子投票カード151を排出できなくなったり、投票用紙153の紙詰まりが生じた場合などのエラーも報知する。これにより、選挙実施側の担当者は、代用装置を設置するなど、迅速な対応を図ることができる。
【0068】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る電子投票システム100の投票側のシステムを構成する電子投票機101,電子投票カード151,投票用紙153を用いた一連の投票手順が終了する。尚、選挙人は、電子投票機101から出力された投票用紙153の印字部分202を見て、選択した候補者と異なることに気がついた場合や、別の候補者に投票したくなった場合は、当該投票用紙153を受付に持参すれば、一度だけ投票をやり直すことができるようにしても構わない。この場合は、当該投票用紙153を受付で確実に破棄する必要があるので、投票立会人の立会の元で、当該投票用紙153の裁断処理(無効処理)を行った上で、再度(1回に限るなどの制限が必要)の投票を行う。
【0069】
次に、開票手順について説明する。
[開票手順]
図9は、本実施形態に係る電子投票システム100を用いた場合の一連の開票手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、点線枠で示したステップは人間が行う処理を示し、実線枠で示したステップは図1の開票側のシステムを構成する集計用PC402に予めインストールされたプログラムに従って行われる処理を示す。集計用PC402は、開票側のシステムを構成する読取装置401を用いて、投票所から輸送されてきた投票箱301に投函されている投票用紙153に記憶されている電子データを読み取り、候補者毎や政党毎などの集計を行う。
【0070】
(ステップS201)所定の投票時間が終了すると、各投票所では、投票用紙153が投函された投票箱301を所定の開票所に車で輸送する。開票所には、例えば、図10(a)に示すような読取装置401と、読取装置401で読み取った情報を集計する集計用PC402が配備されている。
【0071】
(ステップS202)図10(a)に示すように、輸送されてきた投票箱301を読取装置401に載せて、投票箱301に投函されている複数枚の投票用紙153のICチップ201に記録されている投票内容を読み取る。
【0072】
尚、複数のICチップ201に記憶されている投票内容を非接触方式で読み取る方法は、無線タグ(RFIDタグ)或いは非接触型ICカードなどで用いられている周知の技術を利用することにより実現できる。
【0073】
また、図10(b)に示すような読取装置401aを用いても構わない。読取装置401aは、ベルトコンベア403に各投票所から輸送されてくる複数の投票箱301を順番に載せて、読取装置401aのゲートを通すことができる。この結果、読取装置401aに接続された集計用PC402は、効率よく迅速にICチップ201に記録されている投票内容を読み取ることができる。
【0074】
或いは、図10(c)に示すような読取装置401bを用いても構わない。読取装置401bは、ゲート状に配置された支柱に複数のアンテナ405a,405b,405cおよび405dが設置されている。そして、複数の投票箱301が搭載された台車404を支柱の間に通すことによって、読取装置401bに接続された集計用PC402は、効率よく迅速にICチップ201に記録されている投票内容を読み取ることができる。
【0075】
このようにして、各所の開票所において、投票箱301に投函された投票用紙153のICチップ201に記録された投票内容を読取装置401で読み取って集計用PC402に入力することができる。
【0076】
ここで、投票用紙として、図7(a)で説明したような投票用紙153を用いる場合は、投票用紙153に搭載されたICチップ201の記録された投票内容を非接触で読み取ればよいが、図7(b)に示した投票用紙153aや図7(c)に示した投票用紙153bを用いる場合は、投票箱301から投票用紙153aや投票用紙153bを取り出して、印刷されたデジタルコードが上になるように1枚ずつベルトコンベヤなどに載せて、レーザースキャナやイメージセンサで読み取る必要がある。この場合でも、従来のように人手で手書きの投票内容を識別する場合に比べて大幅に開票速度を速くすることができる。
【0077】
或いは、投票用紙153,153a,153bの印字部分202に印字された文字情報を読み取るOCR(光学式文字読取装置)で読み取るようにしても構わない。この場合でも、手書き文字ではなく、電子投票機101が印刷した文字なので、OCRの認識精度は良く、実用レベルの高い文字認識率を実現することができる。
【0078】
(ステップS204)集計用PC402は、複数枚の投票用紙153のICチップ201から読み取った投票内容を集計する。この時、集計した総数(読み取った投票用紙153の枚数に相当)と、投票箱301に投函された投票用紙の枚数とを照合する。尚、投票箱301に投函された投票用紙の枚数は、投票所において、受付でチェックした選挙人の数に一致する。受付でチェックした選挙人の数は、投票箱と共に開票所に連絡するものとする。そして、この選挙人の数は、集計用PC402に読み取り時に入力されるものとする。
【0079】
そして、集計用PC402は、読取装置401で読み取って集計した総数と投票した選挙人の数とを照合し、集計した総数と投票した選挙人の数とが一致する場合はステップS206に進み、集計した総数と投票した選挙人の数とが一致しない場合はステップS205に進む。
【0080】
(ステップS205)ステップS202からステップS204までの処理を所定回数だけ繰り返したか否かを判断する。本処理ステップは、所定回数の読み取りを行っても、集計した総数と投票した選挙人の数とが一致しない場合はエラーを集計用PC402に表示して、当該投票箱301に対する開票動作を終了し、所定回数の読み取りを行っていない場合は、ステップS202に戻ってステップS202からステップS204までの処理を繰り返す。
【0081】
ここで、ステップS205において、集計用PC402で集計した総数と投票した選挙人の数とが一致しない場合は、読み取れない投票用紙153が存在することになる。この場合は、読み取り不良が発生した可能性があるので、再び読取装置401による読み取り操作を行う。複数回読み取りを行っても投票用紙の枚数と集計用PC402での集計数とが一致しない場合は、投票用紙153のICチップ201の不良などが考えられるので、当該投票箱301を開けて投票用紙153に印字されている投票内容を人間が確認する従来通りの開票作業を行う。これにより、誤った投票結果が集計されたり、無効投票になることを防止できる。
【0082】
(ステップS206)集計用PC402は、読取装置401で読み取って集計した総数と投票した選挙人の数とが一致した場合は、投票箱301に投函されている全ての投票用紙153のICチップ201に記憶されている投票内容を集計したと判断して、当該投票箱301の開票を完了する。
【0083】
(ステップS207)複数の投票箱301がある場合に、全ての投票箱の開票が完了していない場合はステップS202に戻って、ステップS202からステップS206までの処理を繰り返す。全ての投票箱の開票が完了した場合はステップS208に進む。
【0084】
以上の一連の開票手順で、1つの開票所での開票が終了する。もし、開票所が1つしかないような地方の小さな選挙の場合は、ここで開票を終了し、開票録701を作成して、選挙結果を公表する。
【0085】
続いて、複数の開票所がある場合の開票の手順について説明する。
【0086】
(ステップS208)複数の開票所の集計用PC402の集計データは、専用のネットワーク(地域イントラネット161)を介して接続される各市町村レベルに設置された情報通信センタ施設162の集計用サーバ163に送信される。
【0087】
ここで、複数の開票所がある場合の電子投票システム100aの全体構成について図11を用いて説明する。尚、図11において、図1と同符号のものは同じものを示す。
【0088】
図11において、×開票所に車で運ばれる投票所は、××投票所と、×××投票所と、××××投票所の3ヶ所の投票箱301である。尚、これら3ヶ所の投票所には、先に[投票手順]で説明した電子投票機101が設置され、選挙人は電子投票カード151を用いて投票を行い、投票用紙153を投票箱301に投函して投票する。
【0089】
同様に、○開票所に車で運ばれる投票所は、○○投票所と、○○○投票所と、○○○○投票所の3ヶ所の投票箱301aである。尚、これら3ヶ所の投票所にも、先に[投票手順]で説明した電子投票機101aが設置され、選挙人は電子投票カード151aを用いて投票を行い、投票用紙153aを投票箱301aに投函して投票する。
【0090】
そして、×開票所に運ばれてきた3ヶ所の投票箱301の投票内容を集計した集計用PC402と、○開票所に運ばれてきた3ヶ所の投票箱301aの投票内容を集計した集計用PC402aは、地域イントラネット161を介して、情報通信センタ施設162に送信され、情報通信センタ施設162に接続された集計用サーバ163で受信される。
【0091】
(ステップS209)集計用サーバ163は、各開票所から送られてくる集計データをさらに集計する。そして、候補者毎或いは政党毎などの得票数を求め、例えば市町村レベルの開票を完了する。
【0092】
尚、都道府県レベルや国レベルの選挙の場合は、各市町村レベルの複数箇所の情報通信センタ162の集計用サーバ163から総合行政ネットワーク(LGWAN)164を介して上位の集計用サーバ165に送信される。そして、上位の集計用サーバ165は、複数箇所の情報通信センタ162の集計用サーバ163から送られてくる市町村レベルの集計データを統合して都道府県レベルや国レベルの集計結果を出す。つまり、都道府県レベルの選挙や国レベルの選挙の場合は、集計用サーバ165での集計結果が最終的な集計結果となる。
【0093】
このようにして、全ての選挙人の投票結果が集計される。
【0094】
(ステップS210)集計結果は、各候補者や政党毎の得票数が記載された開票録701(紙に印刷された集計結果)にまとめられる。
【0095】
(ステップS211)選挙管理委員会は、開票録701にまとめられた開票結果を一般に公表する。
【0096】
このように、本実施形態に係る電子投票システム100は、選挙毎に全候補者リストを電子投票機101に記憶する必要がなく、投票時に選挙人毎に配布する電子投票カード151(電子投票媒体)に予め全候補者リストを記憶しておくことにより、選挙の種別に依らず、電子投票カード151の記憶内容を書き換えるだけで、同じ電子投票機101を用いることができる。この結果、ベンダーは電子投票システムのビジネスが成立し、選挙を実施する側(国や地方自治体など)にとっても電子投票システムを安価で運用することが可能となり、電子投票システムの導入がし易くなる。特に、ベンダーは、電子投票カード151への候補者リストの書き込みビジネスや、投票用紙の提供などでもビジネスを展開することが可能になる。また、電子投票カード151に予め全候補者データを記憶しておくことにより、電子投票機101の本体には候補者データ書き込み用の外部接続用のコネクタが不要となり、セキュリティを保つためにコネクタを機械的に塞ぐ必要もないので、安全でコストダウンになる。
【0097】
また、本実施形態に係る電子投票システム100は、全候補者リストを電子投票機101の表示部103に表示せず、全ての候補者名や政党名などを一度に見ることができる候補者一覧表を見て、投票したい候補者や政党を決めることができるので、選挙の公平性を維持することができる。
【0098】
さらに、本実施形態に係る電子投票システム100は、投票時に、選挙人が入力した候補者を特定する情報から電子投票カード151に予め保持された全候補者リストから選択して投票用紙153に電子データで記録するので、開票の迅速化が可能になる。
【0099】
また、本実施形態に係る電子投票システム100は、投票用紙153のICチップ201に候補者情報や白票などの投票内容を記録すると共に、プリンタ106でも同じ投票内容を投票用紙153に印字するので、選挙人は自分が投票する内容を確認することができ、安心して投票箱に投票用紙153を投函することができる。特に、投票用紙153のICチップ201が部品不良や輸送時の破損など何らかの原因によって開票時にICチップ201に記録された投票内容が読めなくなった場合でも、人間が投票用紙153の印字部分202に印刷されている文字を読み取ることによって、投票内容を確認することができる。この結果、電子投票機101やシステムの不具合によって投票結果が反映されないという問題を回避することができ、無効票の撲滅や選挙の安全性および信頼性を確保することができる。また、選挙の信頼性が向上し、システムトラブルによる選挙のやり直しや訴訟などを回避することができる。
【0100】
このように、本実施形態に係る電子投票システム100は、選挙人や候補者だけでなく、選挙管理委員会やベンダーにとっても安心できる電子投票システムを実現することができる。
【0101】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る電子投票システムおよびそのプログラムの第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る電子投票システムは、第1の実施形態とは異なり、投票所から投票箱301を開票所に車で輸送する必要がない。
【0102】
図12は、第2の実施形態に係る電子投票システム100bの構成を示す図である。図12において、投票所内に設置された集計用PC451を投票箱452の内部に搭載された読取装置453に接続しておき、選挙人が投票用紙153を投票箱452に投函する毎に投票用紙153に電子データで記録された投票内容を読み取るようになっている。そして、集計用PC451は、図11で説明したように、地域イントラネット161に専用の回線や電話回線或いは無線回線(暗号化された無線LANなど)によって接続されているので、読取装置453で読み取った投票内容を地域イントラネット161を介して直接情報通信センタ施設162に送信することができる。そして、情報通信センタ施設162に接続された集計用サーバ163で複数箇所の投票所に設置された集計用PC451から送られてくる投票内容を集計することができる。この結果、投票所から開票所に投票箱を車で輸送する必要がなくなり、より迅速な開票を行うことができる。このように、本実施形態では、第1の実施形態の集計用PC402の代わりに集計用PC451を用い、集計用PC451に予めインストールされた電子投票用プログラムに従って集計処理される。
【0103】
ここで、投票箱452の内部に設けられた読取装置453は、第1の実施形態の図7(a)で説明したような投票用紙153を用いる場合は、投票用紙153に搭載されたICチップ201の記録された投票内容を読み取る装置に対応する。図7(b)に示した投票用紙153aや図7(c)に示した投票用紙153bを用いる場合は、読取装置453はレーザースキャナやイメージセンサで構成される。或いは、投票用紙153,153a,153bの印字部分202に印字された文字情報を読み取るOCR(光学式文字読取装置)で読取装置453を構成しても構わない。この場合は、手書き文字ではなく、電子投票機101が印刷した文字なので、OCRの認識精度は良く、実用レベルの高い文字認識率を実現することができる。
【0104】
このように、本実施形態に係る電子投票システム100bおよびプログラムは、第1の実施形態の効果に加えて、人手による開票作業から機械による開票作業に移行できるので、開票の迅速化と開票費用の削減および無効投票(手書きの判読不能文字などによる無効投票)を撲滅することができる。
【0105】
また、投票所と地域イントラネット161を介して情報通信センタ施設162に接続することができ、さらに第1の実施形態の図11で説明したように、LGWAN164を介して全国レベルのネットワークに接続することができる。このため、投票所の受付に受付用PCを配備して、図12の集計用PC451と同様に、地域イントラネット161を介して情報通信センタ施設162に接続したり、さらに上位のLGWAN164を介して全国レベルのネットワークに接続できるようにすれば、全国にあるいずれの投票所でも選挙人本人の確認を行うことができる。尚、この場合は、予め選挙人に送付された投票所入場券を元にネットワークを介して本人確認を行うネットワーク認証装置(ネットワーク認証装置用PC)167と、ネットワーク認証装置167が接続する選挙人名簿データが格納されたサーバ(選挙人名簿用サーバ)166とをLGWAN164に接続しておく必要がある。
【0106】
このように、本実施形態に係る電子投票システム100bは、将来の遠隔投票の実現のベースとなるものである。
【0107】
さらに、図12の集計用PC451と同様に、電子投票機101を地域イントラネット161を介して情報通信センタ施設162や所定の選挙管理センタなどに接続できるようにしておけば、電子投票機101の運用状況を所定の選挙管理センタに送信して、各投票所にある電子投票機101の運用状況を一括して管理することができる。尚、この場合は、電子投票機101のアラーム報知部108の代わりに、地域イントラネット161を介して所定の選挙管理センタに運用状況を通信する運用状況通信部を設ける必要がある。或いは、アラーム報知部108とは別に運用状況通信部を設けても構わない。
【0108】
以上、各実施形態において説明してきたように、本発明に係る電子投票システムおよびそのプログラムは、以下に示すような効果が期待できる。
(1)電子投票機101の表示部103に全候補者名を表示するための大型モニタや、候補者を選択するためのタッチパネルなどが不要になる。この結果、電子投票機101など電子投票システム100の価格が安くなり、格納スペースも小さくできるので、コストダウンを図ることができる。
(2)電子投票機101の本体に候補者データを保持する必要がないので、様々な選挙への対応が容易になる。そして、電子投票カード151を様々な選挙に合わせて作成するだけなので、電子投票機101の本体のソフトウェアやハードウェアの変更が不要となり、電子投票機101を汎用化することができる。この結果、電子投票機101を安価に製造することができる。また、数年に一度の国政選挙などで使用しない場合でも、他の選挙に流用できるのでレンタル頻度が高くなり、レンタル料を安くしたいという選挙実施側の要望に対応したとしても、レンタルビジネスが成立する。
【0109】
さらに、電子投票カード151への候補者データの書き込み作業は、作業スペースの取らないICカードである上、非接触方式でまとめて行うことができ、場所の取る電子投票機101本体への書込み作業に対して作業費のコストダウンが可能となる。特に、電子投票カード151は、汎用カードに各選挙毎や選挙区が異なる各自治体向けの候補者データを書き込むだけで、投票所内においても使い回しを行うので、選挙が終わったら候補者データを消去して、他の選挙向けに再び電子投票カード151を使用することができる。このため、電子投票カード151を選挙人の数だけ準備する必要はなく、コストダウンが可能になる。
【0110】
また、候補者データは電子投票カード151から供給するので、電子投票機101の本体にデータ書き込み用の外部接続コネクタが不要になる。一般に、投票関連装置のコネクタは悪戯防止のために物理的に塞ぐことが要求されているので、この作業も不要となり、さらなるコストダウンが可能になる。
(3)大量の候補者や大量の政党数が立候補する選挙の場合でも、全候補者名を表示部に表示しないので、スクロール画面の作成が不要となり、ソフトウェア開発やハードウェアのコストダウンを図ることができる。特に、スクロール表示で候補者を表示する必要がないので候補者に公平で安心でき、訴訟されるリスクを回避することができる。
(4)第1の実施形態の場合は、電子投票システム100のための主なハードウェア装置は電子投票機101(投票用紙を含む)のみで、電子投票カード151は汎用のICカードに特別な暗号キーを用いるだけで済み、開票所での読み取り装置401も汎用の読み取り装置を利用することができ、集計用PC402も汎用のパソコンに専用のソフトウェアを搭載するだけでよい。また、第2の実施形態の場合でも、上記に加えて読み取り装置453付きの投票箱452が必要になるだけで、この投票箱452も選挙によらず共通化できるので、大きなコストアップにはならず、第1の実施形態の場合の投票箱301の輸送コストや、開票の迅速化および開票の安全性や信頼性と相殺できるものである。
【0111】
このように、本発明に係る電子投票システムおよびそのプログラムは、開票の迅速化だけでなく、選挙の種別に依らず汎用性の高い装置を実現することができる。また、低コストでビジネス性が高く、選挙の公平性・無効投票の撲滅・システムトラブルなどにも対応することができ、万が一システムトラブルが発生した場合でも、投票用紙153に印字された投票内容を人手で開票することができるので、選挙を実施する側にとっても安心で信頼性が高く、導入し易い。さらに、地域イントラネット161やLGWAN164に接続できるようにすることで、将来の遠隔投票も視野に入れた電子投票システムを構築することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】電子投票システム100の構成例を示す説明図である。
【図2】投票手順を示すフローチャートである。
【図3】電子投票カード151の一例を示す説明図である。
【図4】電子投票機101の外観例を示す説明図である。
【図5】電子投票機101の構成例を示すブロック図である。
【図6】候補者一覧表の一例を示す説明図である。
【図7】投票用紙153,153a,153bの構成例を示す説明図である。
【図8】投票箱301の一例を示す説明図である。
【図9】開票手順を示すフローチャートである。
【図10】読取装置401,401a,401bの構成例を示す説明図である。
【図11】電子投票システム100aの構成例を示す説明図である。
【図12】電子投票システム100bの構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
100,100a,100b・・・電子投票システム
101・・・電子投票機
102・・・カード挿入口
103・・・表示部
104・・・制御部
105・・・操作部
106・・・プリンタ
107・・・ICカードI/F
108・・・アラーム報知部
109・・・電子記録部
105a・・・数字ボタン
105b・・・投票ボタン
105c・・・変更ボタン
105d・・・白票ボタン
151・・・電子投票カード
153,153a,153b・・・投票用紙
155・・・投票用紙排出口
161・・・地域イントラネット
162・・・情報通信センタ施設
163・・・集計用サーバ
164・・・LGWAN
165・・・集計用サーバ
166・・・選挙人名簿用サーバ
167・・・ネットワーク認証装置用PC
201・・・ICチップ(無線タグ)
202・・・印字部分
203・・・一次元コード
204・・・二次元コード
301・・・投票箱
401,401a・・・読取装置
402・・・集計用PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投票時に本人確認済みの選挙人に配布する電子投票媒体と、前記電子投票媒体を装着して投票を行う電子投票機とからなる電子投票システムにおいて、
前記電子投票媒体は、予め記憶された全候補者リストを保持し、
前記電子投票媒体とは別に前記全候補者リストを一見できる全候補者一覧表と、
前記全候補者一覧表から選んだ候補者情報を入力する候補者情報入力手段と、
前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を投票用紙に書き込む記録手段と
を有することを特徴とする電子投票システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子投票システムにおいて、
候補者名を表示する表示手段を更に設け、
前記電子投票機は、前記候補者情報入力手段により入力された候補者情報に対応する候補者名を前記電子投票媒体から読み出して前記表示手段に表示する
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子投票システムにおいて、
前記投票用紙には情報を読み書きできる記憶媒体が一体化され、
前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を前記投票用紙の記憶媒体に記憶する
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
前記投票用紙に文字や図形を印刷する印刷手段を更に設け、
前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者名を前記印刷手段によって前記投票用紙に印刷する
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電子投票システムにおいて、
前記投票記録手段は、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者名と、前記候補者情報入力手段により入力された特定の候補者情報を示すデジタルコードとを、前記印刷手段によって前記投票用紙に印刷する
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電子投票システムにおいて、
前記印刷手段が印刷するデジタルコードは、二値階調で印字された一次元コードまたは二次元コードである
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
前記電子投票機は、前記電子投票媒体が装着された時点で起動し、投票終了後に前記電子投票媒体を排出して動作を終了する
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
前記投票用紙の情報を読み取る読み取り装置を有する投票箱と、
前記投票箱の読み取り装置が前記投票用紙から読み取った情報をネットワークを介して所定のサーバに送信する通信手段と
を更に設けたことを特徴とする電子投票システム。
【請求項9】
請求項8に記載の電子投票システムにおいて、
前記読み取り装置は、前記投票用紙に一体化された記憶媒体から候補者情報を読み取る
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項10】
請求項8に記載の電子投票システムにおいて、
前記読み取り装置は、前記投票用紙に印刷されたデジタルコードを読み取る
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項11】
請求項10に記載の電子投票システムにおいて、
前記読み取り装置が読み取るデジタルコードは、二値階調で印字された一次元コードまたは二次元コードである
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項12】
請求項8に記載の電子投票システムにおいて、
前記読み取り装置は、前記投票用紙に印刷された候補者名を読み取って電子データに変換するOCR(光学式文字読取装置)である
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
通報手段を更に設け、
前記電子投票機は、動作エラーが生じた場合に、前記通報手段で動作エラーの発生を知らせる
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
前記電子投票機にネットワークを介して運用状況を所定の管理センターに送信する運用状況通信手段を更に設けたことを特徴とする電子投票システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の電子投票システムにおいて、
前記電子投票機は、装着された電子投票媒体に記憶されている所定コードが一致しない場合は、前記電子投票媒体を利用不可とする
ことを特徴とする電子投票システム。
【請求項16】
請求項1に記載の電子投票システムにおいて、
予め選挙人に送付された投票所入場券を元にネットワークを介して本人確認を行うネットワーク認証装置と、
前記ネットワーク認証装置が接続する選挙人名簿データが格納されたサーバーと
を更に設け、
投票時に前記電子投票媒体を配布する際の本人確認を前記ネットワーク認証装置で行うことを特徴とする電子投票システム。
【請求項17】
投票時に本人確認済みの選挙人に配布する電子投票媒体と、前記電子投票媒体を装着して投票を行う電子投票機とからなる電子投票システムで、前記電子投票機を構成するコンピュータが実行する電子投票システムのプログラムにおいて、
予め記憶された全候補者リストを保持する前記電子投票媒体が前記電子投票機に装着された場合に動作を起動する起動手順と、
前記電子投票媒体とは別の全候補者一覧表を見て選挙人が選択した候補者情報を入力する候補者情報入力手順と、
前記候補者情報入力手順により入力された特定の候補者情報を投票用紙に書き込む投票記録手順と
を有することを特徴とする電子投票システムのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−39753(P2010−39753A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201833(P2008−201833)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】