説明

電子放出源の製造方法

【課題】表面の凹凸および針状炭素の突出状態が制御された均一かつ低電圧での電子放出が可能な電子放出源の製造方法を提供する。
【解決手段】カソード電極上に無機粒子1と針状炭素を含む第1膜を形成する工程と、前記第1膜上に無機粒子2と針状炭素を含む第2膜を形成する工程と、これらを同時に焼成する工程と、焼成後の第2膜を除去する工程とを含む電子放出源の製造方法であって、1)無機粒子1の焼結温度が無機粒子2の焼結温度よりも低いこと、および2)第1膜中の針状炭素と無機粒子の重量比ならびに第2膜中の針状炭素と無機粒子の重量比が、いずれも針状炭素100重量部に対して無機粒子が200〜8000重量部であることを特徴とする電子放出源の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源用ペーストを用いた電子放出源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
針状炭素は物理的・化学的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した先鋭な先端形状と大きなアスペクト比を持っている。そのため、針状炭素を電子放出源とした電界放出型ディスプレイ(FED)、電界放出を用いた液晶用バックライト(LCD−BLU)や照明等の研究が盛んに行われている。針状炭素の中でもカーボンナノチューブは特に優れた電子放出特性を持つことから、電子放出源として注目されている材料である。
【0003】
このカーボンナノチューブを用いた電子放出源を作製する方法の一つに、カーボンナノチューブをペースト状にして印刷することにより、カソード電極上にカーボンナノチューブを有する膜を作製する方法がある(特許文献1参照)。この方法では、カーボンナノチューブを有する膜からの電子放出特性を改善するために、粘着性を有する材料、例えば粘着テープ等をカーボンナノチューブを有する膜に接着し、剥離する表面処理方法等が行われている。この表面処理を行うと、カーボンナノチューブを有する膜の表面層が除去されて、新たな表面が形成される。その結果、膜表面にカーボンナノチューブが突出するため、電界を印可するとカーボンナノチューブ先端に電界集中が生じ、容易に電子放出を得ることができる。しかし、本方法では膜表面形状の制御が困難であり、膜表面に有る凹凸に起因して膜面内の高さ分布にばらつきが生じてしまう。この結果、電界を印可した際のカーボンナノチューブからの電子放出量にばらつきが生じ、膜面内での電子放出均一性が著しく低下するといった課題があった。
【0004】
膜表面の凹凸を制御する方法として、複数種類のカーボンナノチューブを含むペーストを用いてカーボン膜の積層構造を形成し、カーボン膜の積層界面において剥離が発生するように上層を除去する方法がある(特許文献2参照)。この方法は、カーボン膜間でガラス粒子等の接着剤の役割を果たす微粒子の重量混合比を変え、ガラス粒子濃度を低くして密着力を下げた上層のカーボン膜を粘着性テープによって除去するものである。この方法によれば、カーボン膜界面において剥離が発生し、新たな膜表面を形成することができるため、新たな膜表面での凹凸を少なくし、カーボン膜からの電子放出均一性を向上させることが可能である。しかし、この方法では、除去するカーボン膜のガラス粒子濃度を低くして密着力を下げているため、カーボン膜内部の接着力均一性が悪く、除去するカーボン膜の厚みを0.5μm以下に制御する必要があることや、テープ剥離による表面処理を1度しか行うことができないといった制約があった。また、前記理由よりカーボンナノチューブの起毛長さも短いことから電子放出電圧が高いといった課題があった。また、カーボンナノチューブの起毛長さと表面粗さの比が小さいため、電子放出に対する表面粗さの影響も無視できず、均一な発光が得られないという課題もあった。
【特許文献1】特表2004−504690号公報(第28段落)
【特許文献2】特開2007−287473号公報(第9段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に着目して、表面の凹凸および針状炭素の突出状態が制御された均一かつ低電圧での電子放出が可能な電子放出源の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明はカソード電極上に無機粒子1と針状炭素を含む第1膜を形成する工程と、前記第1膜上に無機粒子2と針状炭素を含む第2膜を形成する工程と、これらを同時に焼成する工程と、焼成後の第2膜を除去する工程とを含む電子放出源の製造方法であって、(1)無機粒子1の焼結温度が無機粒子2の焼結温度よりも低いこと、および(2)第1膜中の針状炭素と無機粒子1の重量比ならびに第2膜中の針状炭素と無機粒子2の重量比が、いずれも針状炭素100重量部に対して各無機粒子が200〜8000重量部であることを特徴とする電子放出源の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面の凹凸が少なく、針状炭素が均一に突出した電子放出源を得ることが可能であり、電子放出源からの電子放出特性を著しく向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明はカソード電極上に無機粒子1と針状炭素を含む第1膜を形成する工程と、前記第1膜上に無機粒子2と針状炭素を含む第2膜を形成する工程と、これらを同時に焼成する工程と、焼成後の第2膜を除去する工程とを含む電子放出源の製造方法であって、(1)無機粒子1の焼結温度が無機粒子2の焼結温度よりも低いこと、および(2)第1膜中の針状炭素と無機粒子1の重量比ならびに第2膜中の針状炭素と無機粒子2の重量比が、いずれも針状炭素100重量部に対して各無機粒子が200〜8000重量部であることを特徴とする電子放出源の製造方法である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
一般に電界放出型ディスプレイに用いられる電子放出源には、モリブデンに代表される金属材料や、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノツイストといった針状炭素、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、グラファイト、カーボンブラックに代表される炭素系材料があり、本発明では低い仕事関数特性によって低電圧駆動が可能であることから針状炭素を用いる。針状炭素の中でもカーボンナノチューブは高アスペクト比であるために良好な電気放出特性を持つことからより好ましい。以下、針状炭素の代表としてカーボンナノチューブを用いた電子放出源の製造方法について一例として述べる。
【0010】
カーボンナノチューブを含む電子放出源はカソード電極上もしくは少なくともカソード電極の一部と接触するように形成され、電子放出源とカソード電極間の電気的接触が保たれる。
【0011】
本発明の電子放出源の形成方法は、まず無機粒子1とカーボンナノチューブを含むペースト1をスクリーン印刷、スリットダイコーター、スピンコーター法、スプレー法、インクジェット法、グラビア印刷、オフセット印刷といった一般的な塗布方法を用いて、カソード電極上もしくは少なくともカソード電極の一部と接触するように塗布する。次に、熱風乾燥機などを用いて溶媒を除去することで、無機粒子1とカーボンナノチューブを有する第1膜を形成する。この第1膜に含まれる無機粒子1は、カソード電極との接着力を得るための接着剤としての役割がある。なお、第1膜は、単層であっても良いし、上記方法を繰り返すことにより形成された複数の層であっても良い。
【0012】
次に無機粒子2とカーボンナノチューブを含むペースト2を第1膜上に塗布、乾燥することで第2膜を形成する。第2膜の塗布、乾燥は、前記第1膜と同様の方法で行うことができる。この第2膜に含まれる無機粒子2は、第1膜と第2膜の接着力を得るための接着剤としての役割がある。なお、第2膜も、単層であっても良いし、上記方法を繰り返すことにより形成された複数の層であっても良い。以上より、カソード電極上に無機粒子1とカーボンナノチューブを含む第1膜、無機粒子2とカーボンナノチューブを含む第2膜の積層膜を得ることができる。
【0013】
次に、前記カソード電極上の積層膜を焼成する。このとき、積層膜とカソード電極との接着力を得るため、無機粒子1および無機粒子2の焼結温度よりも高い温度で焼成することが好ましい。この焼成により、無機粒子1および2が溶融し、第1膜中のカーボンナノチューブとカソード電極との接着力、および第1膜と第2膜の接着力を生み出すことができる。焼成温度は無機粒子の焼結温度以上であればいかなる温度でもよいが、カーボンナノチューブの耐熱性が500〜600℃であること、基板ガラスとしてソーダライムガラス(軟化点500℃程度)を用いることなどを考慮すると、500℃以下であることが好ましく、450℃以下がさらに好ましい。特にカーボンナノチューブの耐熱性に問題がある場合は、NやArなどの不活性ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで焼成することが好ましい。
【0014】
焼成後の積層膜表面ではカーボンナノチューブは水平方向に倒れているため、電圧を印可してもカーボンナノチューブの先端に電界集中が生じにくく、良好な電子放出特性を得ることができない。従って、カーボンナノチューブを膜表面から垂直方向に突出させるための処理が施される。本発明の電子放出源の製造方法においては、積層膜の第2膜を除去することで第1膜表面にカーボンナノチューブを突出させることができる。
【0015】
本発明の電子放出源の製造方法では、無機粒子1の焼結温度は無機粒子2の焼結温度よりも低いことを特徴とする。積層膜を焼結温度以上の温度で焼成すると、焼結温度の低い無機粒子1を含む第1膜は、焼結温度の高い無機粒子2を含む第2膜よりも高い接着力を有する膜となる。これは無機粒子の焼結温度が低い方が膜中での無機粒子の流動が起こりやすく、カーボンナノチューブ間、またはカーボンナノチューブとカソード電極を接着する無機粒子被覆率が向上するためであると考えられる。
【0016】
このように接着力の異なる積層膜では、第1膜と第2膜の接着力が第1膜とカソード電極との接着力よりも低くなり、第2膜を剥離する程度の力を有する処理を施して第2膜を除去することで、第1膜と第2膜の界面にて新しい膜表面を形成することが可能である。従って、従来よりも表面の凹凸が少ない平坦な膜を得ることができる。
【0017】
また、第1膜と第2膜の界面におけるカーボンナノチューブは、第2膜の除去後には第1膜表面に突出する。第1膜と第2膜の界面に存在するカーボンナノチューブは、無機粒子1および無機粒子2との間にそれぞれ接着力が得られている。第2膜が除去される際に、界面に存在するカーボンナノチューブは無機粒子2との間に働く接着力に応じて、膜表面から垂直方向に引っ張り上げられる。一方、引っ張り上げられたカーボンナノチューブは無機粒子1との間に働く接着力に応じて膜表面に残存することができる。以上より、膜表面の凹凸を平坦に保ちつつ、多数の突出したカーボンナノチューブを有する膜を得ることができる。
【0018】
本発明の電子放出源の製造方法では、第1膜と第2膜の接着力の差を無機粒子1と無機粒子2の焼結温度に差を設けることによって容易に制御することができる。さらに、従来のように膜中の無機粒子濃度を制御する方法と比べて、第2膜内部の接着力均一性が向上し、第2膜を除去した際に第1膜表面の凹凸を低減することができる。また、第2膜の膜厚を制御することでカーボンナノチューブの突出する長さ(以下、「起毛長さ」と呼ぶ)を制御することができる。この結果、電子放出に対する表面凹凸の影響を低減し、電子放出の均一性が良く電子放出電圧が低い良好な電子放出特性を有する電子放出源を得ることができる。
【0019】
電子放出源に含まれるカーボンナノチューブと無機粒子の重量比は、第1膜および第2膜のいずれにおいても、カーボンナノチューブ100重量部に対し、無機粒子が200〜8000重量部である。また、該重量比は200〜3000重量部であることがさらに好ましく、300〜1500重量部であることが特に好ましい。200重量部未満だと十分な接着性が得られず、第2膜の除去工程において第1膜と第2膜の界面で均一に第2膜を除去することができない。また、8000重量部より大きいとペースト粘度が高くなりすぎてゲル化することや、膜の接着性が高くなりすぎて第2膜の除去が困難となるため好ましくない。上記の重量比の範囲であれば、第1膜中の針状炭素と無機粒子1の総重量に占める無機粒子1の重量濃度(N1)と第2膜中の針状炭素と無機粒子2の総重量に占める無機粒子2の重量濃度(N2)は、特に制限されるものではないが、N1とN2の比(N2/N1)が0.8以上1.25未満であることが好ましく、0.9以上1.1未満であることがさらに好ましい。N2/N1が前記範囲内にあると、無機粒子1と無機粒子2の焼結温度差により、容易に第1膜と第2膜の接着力の差を制御することができ、特に良好な電子放出特性を有する電子放出源を得ることができる。
【0020】
第1膜と第2膜の膜厚は電子放出源の構造および電子放出源を用いた電子放出素子の構造によって適宜決められる。例えば一般的なトライオード型電界電子放出型ディスプレイなどに用いられる場合、第1膜の膜厚は0.5〜5μmであることが好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。前記範囲内に膜厚を制御することで、ゲート電極との非接触を保ちつつ、均一な電子放出を有する電子放出源を得ることができる。
【0021】
第2膜の膜厚は0.5〜5μmであることが好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。これは第2膜の膜厚を制御することで、電子放出源の表面からのカーボンナノチューブの起毛長さを制御することができためである。具体的には、第2膜の膜厚が厚いほどカーボンナノチューブの起毛長さも長くなる。第2膜の膜厚を0.5μm以上とすることで、電子放出電圧をより低くすることができる。また、第2膜の膜厚を5μm以下とすることで、カーボンナノチューブの起毛長さのばらつきを抑え、電子放出均一性をより高めることができる。
【0022】
電子放出源の表面凹凸の程度は、表面粗さによって評価することができる。表面粗さは0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。前記範囲に表面凹凸を制御することで、電子放出均一性の向上させることができる。
【0023】
また、カーボンナノチューブの起毛長さと表面粗さの比は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの起毛長さと表面粗さの比が5以上であると、表面凹凸による電子放出均一性の低下を抑制しつつ、電子放出の電圧が低い良好な電子放出源を得ることができる。
【0024】
本発明において第2膜を除去する方法としては、電子放出源の膜表面の平坦性と、膜表面から多数の突出したカーボンナノチューブが得られるといった点で、粘着性のある材料を付着して剥離する方法が好ましい。このような方法の具体例としては、粘着テープ、粘着ローラー、粘着フィルム等を付着して剥離する方法が挙げられる。また、接着性のある高分子材料を含む粘着溶液を膜上に塗布し、熱風乾燥機などで乾燥して溶媒を除去した後、形成された高分子膜を剥離することで第2膜を除去することもできる。いずれの場合においても、粘着性材料の粘着力は第2膜の接着力よりも強いことが好ましく、第1膜の接着力よりも弱いことがさらに好ましい。前記範囲に粘着力があることで、第2膜を容易に剥離しつつ第1膜の形状を保持することができる。粘着性のある材料としてはアクリル系材料、シリコン系材料などが挙げられ、粘着力は第1膜および第2膜の接着力により適宜決めることができるが、0.5〜10N/cmのものが好ましく、1〜5N/cmのものがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明の電子放出源の製造方法において、良好な電子放出特性を得るためには第1膜の無機粒子1と第2膜の無機粒子2の焼結温度の差は10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。前記範囲の焼結温度の差によって第1膜の接着力と第2膜の接着力に差が生じ、第2膜を除去する表面処理による電子放出特性の向上が得られ、粘着性材料の選択性も広がることから好ましい。
【0026】
本発明の電子放出源の製造方法において、無機粒子1および無機粒子2は接着剤としての役割を果たすものであればいずれも用いることができる。カーボンナノチューブの耐熱性が500〜600℃であること、基板ガラスとしてソーダライムガラス(軟化点500℃程度)を用いることなどを考慮すると、無機粒子の焼結温度は500℃以下が好ましく、450℃以下がさらに好ましい。前記焼結温度を有する無機粒子を用いることで、カーボンナノチューブの焼失を抑制し、ソーダライムガラスなどの安価な基板ガラスを使用することができる。このような無機粒子の具体例としては銀、銅、ニッケル、合金、はんだなどの金属粉末、ガラス粒子、もしくはそれらを混ぜて使用することができる。金属粉末は触媒作用によってカーボンナノチューブの焼失を促進することから、本発明の電子放出源の製造方法においてはガラス粒子が好ましく用いられる。
【0027】
ガラス粒子の焼結温度を表すガラス軟化点はガラス組成によって異なるため、ガラス組成の選択によって制御することができる。無機粒子1に用いるガラス粒子としてはBi系ガラス、アルカリ系ガラス、SnO−P系ガラス、SnO−B系ガラスが好ましく用いられ、ガラス軟化点は300℃〜450℃であることが好ましく、350℃〜420℃であることがさらに好ましい。無機粒子2に用いるガラス粒子としてはBi系ガラス、SnO−B系ガラスが好ましく用いられ、ガラス軟化点は350℃〜500℃であることが好ましく、380℃〜450℃であることがさらに好ましい。前記ガラス粒子を選択することで第1膜の接着力と第2膜の接着力に差が生じ、第2膜を除去する表面処理によって著しく電子放出特性の向上した電子放出源が得られる。
【0028】
無機粒子の平均粒径は0.05〜1μmであることが好ましい。0.05μmより小さいと、強固なマトリックスが形成されず、焼結した無機粒子が1μmより大きいと表面凹凸が大きくなり、電子放出の不均一化の原因となる。さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。ここで無機粒子の平均粒径は累積50%粒径(D50)のことをさす。これは一つの粉体の集団の全体積を100%として体積累積カーブを求めたとき、その体積累積カーブが50%となる点の粒径を表したものであり、累積平均径として一般的に粒度分布を評価するパラメータの1つとして利用されている。なお、無機粒子の粒度分布の測定はマイクロトラック法(日機装(株)製マイクロトラックレーザー回折式粒度分布測定装置による方法)で測定することができる。
【0029】
本発明では、カーボンナノチューブと無機粒子を含有するペースト(以下、電子放出源用ペーストと呼ぶ)には、バインダー樹脂、溶媒、分散剤、感光性有機成分、導電性粒子、可塑剤、増粘剤、レベリング剤、カップリング剤、熱分解性金属化合物等を適宜含むことができる。前記電子放出源用ペーストはカソード電極上に塗布・乾燥して溶媒を除去し、ペースト塗布膜である第1膜および第2膜を形成する。
【0030】
本発明で用いるカーボンナノチューブには単層、または2層、3層等の多層カーボンナノチューブがある。層数の異なるカーボンナノチューブの混合物としてもよいし、未精製カーボンナノチューブ粉末はアモルファスカーボンや触媒金属等の不純物を含むことがあるため、精製することによって純度を高めて使用することもできる。また、カーボンナノチューブの長さを調整するため、ボールミルやビーズミル等でカーボンナノチューブ粉末を粉砕してもよい。
【0031】
電子放出源用ペースト全体に対するカーボンナノチューブの含有量は0.1〜20重量%である。また0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの含有量が0.1重量%未満であると、ペーストの塗布性が低下して均一で緻密な電子放出源用ペーストの塗布膜が得られなくなり、塗布膜中にピンホールが発生したり、電子放出源からの電子放出量が小さくなり、輝度が低下する。ここでいうピンホールとは、電子放出源用ペーストの塗布膜中において生じる塗布膜に覆われずに下部の基板が露出している部分を意味する。カーボンナノチューブの含有量が20重量%を越えると、電子放出源用ペースト中でのカーボンナノチューブの分散性が悪くなり、ペーストの塗布性が低下することや均一なパターン形成性が得られなくなる。特に一般的な電子放出源は1〜5μm程度の薄膜であり、また膜厚の薄い範囲ではピンホールなどの欠陥が生じるため、膜の優れた均一性や緻密性を得ることは容易ではないが、カーボンナノチューブの含有量を適切な範囲にすることによって、ピンホールなどの欠陥がない均一な電子放出源を得ることができる。
【0032】
前記ペースト塗布膜の表面平坦性および形状保持安定性を得るために、電子放出源用ペーストはバインダー樹脂を含むことが好ましい。このようなバインダー樹脂として、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリレインなど単量体のうち少なくとも1種からなる重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などが挙げられ、これらバインダー樹脂は焼成工程において焼失する。
【0033】
本発明の電子放出源の製造方法において、ペースト塗布膜である第1膜および第2膜は、感光性有機成分を含むことによってフォトリソグラフィーによるパターン加工性を付与することができる。感光性有機成分としては、紫外線を照射した時に化学的な変化が生じることによって、紫外線照射前には現像液に可溶であったものが露光後は現像液に不溶になるネガ型感光性有機成分と、紫外線照射前には現像液に不溶であったものが露光後は現像液に可溶になるポジ型感光性有機成分のいずれかを選ぶことができるが、本発明は特にネガ型感光性有機成分を用いた場合に好適に使用することができる。ネガ型感光性有機成分としては、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー樹脂、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分を含むものが好ましい。
【0034】
電子放出源のパターン形成方法は、前記の積層膜を作製する方法に従って、カソード電極上もしくは少なくともカソード電極の一部と接触するように積層膜を形成する。この積層膜に対してフォトマスクを通じて紫外線を照射し、積層膜にフォトマスクのパターンを転写する。パターン転写後の積層膜はアルカリ溶液や有機溶剤などで現像すると、不溶部は現像液に溶解し、現像液に不溶なパターン部分が残ることで所望のパターンを形成することができる。パターンを形成した積層膜は、焼成工程を経て、前記表面処理を行うことで電子放出源を得ることができる。
【0035】
溶媒はバインダー樹脂等有機成分を溶解するものが好ましい。例えば、エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール、アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート)などが挙げられる。より具体的には、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテートなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0036】
分散剤はアミン系くし形ブロックコポリマーが好ましい。アミン系くし形ブロックコポリマーとしては、たとえば、アビシア(株)製のソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース24000SC、ソルスパース24000GR、ソルスパース28000(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0037】
本発明では、電子放出源用ペーストは導電性粒子を含んでも良い。導電性粒子の平均粒径が0.1〜1μmのものを用いると、電子放出源の接触抵抗が低下し、良好な電子放出特性が得られることから好ましい。導電性粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さいと、導電性粒子の接点の数が多くなり、逆に抵抗が増加する。接点にはバインダーなどの有機成分の焼成残分などのアモルファスカーボンが堆積することが多いため、接点の数が多くなると導電性粒子間の抵抗が接点の数だけ加算され、直列抵抗としては大きくなるためであると推定される。また、1μmより大きいと表面の凹凸が大きくなり、均一な電子放出を得ることが難しくなる。より好ましくは、導電性粒子の平均粒径が0.1〜0.6μmである。0.6μm以下では、さらに表面凹凸を小さくすることができる。
【0038】
導電性粒子は、導電性のあるものであれば特に限定されないが、導電性酸化物を含む粒子、あるいは酸化物表面の一部または全部に導電性材料がコーティングされた粒子であることが好ましい。金属は触媒活性が高く、焼成や電子放出により高温になったときにカーボンナノチューブを劣化させることがあるためである。導電性酸化物としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛などが好ましい。また、酸化チタン、酸化ケイ素などの酸化物表面の一部または全部にITO、酸化スズ、酸化亜鉛、金、白金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、鉄、コバルトなどがコーティングされたものも好ましい。この場合も、導電性材料のコーティング材料としては、ITO、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性酸化物が好ましい。
【0039】
電子放出源用ペースト中における導電性粒子の添加量は、カーボンナノチューブ1重量部に対して導電性粒子0.1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。導電性粒子の添加量が前記範囲内であると、カーボンナノチューブとカソード電極の電気的接触がより良好となることから特に好ましい。
【0040】
本発明の電子放出源の製造方法において、電子放出源用ペーストは各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラー、ボールミル、ビーズミル等の混練機で均質に混合分散することによって作製することができる。ペースト粘度は、無機粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法以外にスピンコート法やスプレー法で行う場合は、0.001〜5Pa・sが好ましい。
【0041】
以下に、本発明の電子放出源の製造方法を用いたトライオード型とダイオード型の電界放出型電子放出素子の作製方法について説明する。なお、電子放出素子の作製は、その他の公知の方法を用いてもよく、後述する作製方法に限定されない。
【0042】
はじめにトライオード型電子放出素子用背面基板の作製方法を説明する。ガラス基板上にITO等の導電性膜を成膜し、カソード電極を形成する。次いで、絶縁材料を印刷法により5〜15μm積層し絶縁層を作製する。次に、絶縁層上に真空蒸着法によってゲート電極層を形成する。ゲート電極層上にレジスト塗布し、露光、現像によりレジスト層にパターンを形成し、ゲート電極および絶縁層をエッチングすることによって、エミッタホールパターンを作製する。この後、電子放出源用ペーストをエミッタホールパターン内のカソード電極上にスクリーン印刷法により塗布した後、熱風乾燥機などで溶媒を除去して第1膜を形成する。同様にして第1膜上に第2膜を形成し、得られた積層膜に対して、上面(電子放出源用ペースト側)からフォトマスクを通じて紫外線を照射するか、もしくはカソード電極にITO等の透明な導電性膜を用いた場合は、背面(ガラス基板側)から積層膜に紫外線を照射することでパターンを転写する。パターン転写した積層膜はTMAH(テトラメチルアンモニウム)水溶液で現像し、エミッタホール内のカソード電極上に積層膜のパターンを形成する。これを窒素雰囲気中において450℃で焼成し、粘着テープによって第2膜を除去することで電子放出源を得る。
【0043】
次に、前面基板を作製する。前面基板はガラス基板上にITOを成膜してアノード電極を形成し、アノード電極上に赤緑青の蛍光体を印刷法により積層したものである。背面基板と前面基板はスペーサーガラスをはさんで対向に貼り合わされ、内部を10−4Pa程度まで真空排気した後にスペーサーガラスを溶解して封着することでトライオード型電子放出素子を作製することができる。電子放出状態を確認するために、カソード電極に0V、ゲート電極に50〜100V、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、カーボンナノチューブから放出された電子による蛍光体の発光を得ることができる。
【0044】
ダイオード型電子放出素子用背面板の作製は、絶縁層およびゲート電極を作製しないこと以外は前記方法と同様にして、カソード電極上に電子放出源を有する背面基板を作製する。前面基板についても前記方法と同様に作製する。背面基板と前面基板はスペーサーガラスをはさんで対向に貼り合わされ、内部を10−4Pa程度まで真空排気した後にスペーサーガラスを溶解して封着することでダイオード型電子放出素子を作製することができる。電子放出状態を確認するために、カソード電極に0V、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、カーボンナノチューブから放出された電子による蛍光体の発光を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明を実施例に具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に用いた材料は次の通りである。
【0046】
A.針状炭素
カーボンナノチューブ:2層カーボンナノチューブ(東レ(株)社製)
B.無機粒子
ガラス粉末I:Bi(84重量%)、B(7重量%)、SiO(1重量%)、ZnO(8重量%)の組成を有するガラス粒子で、軟化点は380℃、平均粒径は0.3μmであった。
【0047】
ガラス粉末II:B(50重量%)、SnO(50重量%)の組成を有するガラス粒子で、軟化点は393℃、平均粒径は0.3μmであった。
【0048】
ガラス粉末III:Bi(85重量%)、B(4重量%)、SiO(1.5重量%)、ZnO(9.5重量%)の組成を有するガラス粒子で、軟化点は415℃、平均粒径は0.3μmであった。
【0049】
ガラス粉末IV:Bi(50重量%)、B(21重量%)、SiO(7重量%)、ZnO(22重量%)の組成を有するガラス粒子で、軟化点は447℃、平均粒径は0.3μmであった。
【0050】
ガラス粉末V:SnO(46.5重量%)、P(26.5重量%)、SiO(21重量%)、Al(6重量%)の組成を有するガラス粒子で、軟化点は350℃、平均粒径は0.3μmであった。
【0051】
C.有機成分
バインダー:エチルセルロース
分散剤:“ソルスパース24000GR”(アビシア(株)製)
溶剤:テルピネオール。
【0052】
D.ガラス軟化点の測定
用いたガラス粒子のガラス転移温度を熱機械分析装置(セイコーインスツル(株)製、EXTER6000 TMA/SS)を用いて測定した。ガラス粒子を800℃で溶融し、直径5mm、高さ2cmの円柱状に加工して測定サンプルとした。
【0053】
E.ガラス粒子の平均粒径測定
用いたガラス粒子の累積50%粒径を粒子径分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック9320HRA)を用いて測定した。
【0054】
F.カーボンナノチューブ起毛長さの評価
表面処理後の電子放出源を有する基板断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所S4800)により観察し、電子放出源の表面から突出するカーボンナノチューブの起毛長さを測定した。ここで、カーボンナノチューブの起毛長さは、電子放出源の最表面からカーボンナノチューブ先端までの垂直方向の高さとした。また、カーボンナノチューブの起毛長さは異なる10点で観察された値の平均値である。
【0055】
G.発光面積の評価
真空度を5×10−4Paにした真空チャンバー内に、ITO膜付きガラス基板上に1cm×1cm角の電子放出源が形成された背面基板と、ITO膜付きガラス基板上に厚み5μmの蛍光体層(P22)を形成した前面基板を、100μmのギャップフィルムを挟んで対向させ、電圧印可装置(菊水電子工業(株)製耐電圧/絶縁抵抗試験器TOS9201)によって0.5kVの電圧を印加して、前面基板を発光させた。発光面積はCCDカメラによって発光像を取り込み、1cm×1cm角の電子放出源内での発光部分割合を測定し、数値化した。
【0056】
H.電子放出源の表面粗さ評価
東京精密(株)製サーフコム1400を用いてJIS B0601−1982に準じて
触針式で、電子放出素子表面の10点平均粗さRzの測定を行った。
【0057】
I.1mA/cmに達する電界強度の測定
真空度を5×10−4Paにした真空チャンバー内に、ITO膜付きガラス基板上に1cm×1cm角の電子放出源が形成された背面基板と、ITO膜付きガラス基板上に厚み5μmの蛍光体層(P22)を形成した前面基板を、100μmのギャップフィルムを挟んで対向させ、電圧印可装置(菊水電子工業(株)製耐電圧/絶縁抵抗試験器TOS9201)によって0.25V/秒で電圧印加した。得られた電流電圧曲線(最大電流値10mA/cm)から1mA/cmに達する電界強度を求めた。電界強度の値が小さいものほど電子放出特性は良好である。
【0058】
実施例1
2層カーボンナノチューブ(東レ(株)社製)を直径3mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕し、ガラス粒子、バインダー、分散剤、溶剤を表1に示す組成比で添加して3本ローラーにて混練し、ペーストを作製した。
【0059】
次に、ITO膜付きガラス基板上にペースト1を1cm×1cm角のパターンでスクリーン印刷した後、熱風乾燥機において85℃で15分間乾燥して第1膜を得た。同様にして第1膜上にペースト3を用いて第2膜を形成し、第1膜と第2膜の積層膜を得た。積層膜を窒素雰囲気中で450℃にて焼成した後、第1膜および第2膜の膜厚を走査型電子顕微鏡で測定した結果、それぞれの膜厚は2μmであった。焼成後の積層膜は、ポリエステル基材にアクリル系粘着剤が塗布された粘着力5.0N/cmの粘着テープを用いて第2膜を除去し、第1膜上にカーボンナノチューブが起毛した電子放出源を得た。
【0060】
得られた電子放出源について、表面粗さ、カーボンナノチューブの起毛長さ、発光面積、1mA/cmに達する電界強度についてそれぞれ測定した結果を表2に示した。この結果、表面に凹凸が少なくてカーボンナノチューブの起毛長さが長い電子放出源であり、電子放出均一性が良く、電子放出電圧が低い良好な電子放出特性が得られた。
【0061】
実施例2
粘着テープの代わりにシリコンゴムローラーの表面にアクリル系粘着剤が塗布された粘着力3.7N/cmの粘着ローラーを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表1に示す組成比のペーストを用いた電子放出源を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0062】
実施例3〜21
実施例1と同様にして、表1に示す組成比のペーストを用いた電子放出源を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2〜3に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
比較例1
2層カーボンナノチューブ(東レ(株)社製)を直径3mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕し、ガラス粒子、バインダー、分散剤、溶剤を表1に示す組成比で添加して3本ローラーにて混練し、ペーストを作製した。
【0067】
次に、ITO膜付きガラス基板上にペースト1を1cm×1cm角のパターンでスクリーン印刷した後、熱風乾燥機において85℃で15分間乾燥して第1膜を得た。同様にして第1膜上にペースト1を用いて第2膜を形成し、第1膜と第2膜の積層膜を得た。積層膜を窒素雰囲気中で450℃にて焼成した後、第1膜および第2膜の膜厚を走査型電子顕微鏡で測定した結果、それぞれの膜厚は2μmであった。焼成後の積層膜は、ポリエステル基材にアクリル系粘着剤が塗布された粘着力5.0N/cmの粘着テープを用いて第2膜を除去し、第1膜上にカーボンナノチューブが起毛した電子放出源を得た。
【0068】
得られた電子放出源について、表面粗さ、カーボンナノチューブの起毛長さ、発光面積、1mA/cmに達する電界強度についてそれぞれ測定した結果を表4に示した。この結果、表面に凹凸が多く、電子放出均一性が悪く、電子放出電圧が高い電子放出源であった。
【0069】
比較例2
粘着テープの代わりにシリコンゴムローラーの表面にアクリル系粘着剤が塗布された粘着力3.7N/cmの粘着ローラーを用いたこと以外は比較例1と同様にして、表1に示す組成比のペーストを用いた電子放出源を作製し、比較例1と同様の評価を行った。結果を表4に示した。
【0070】
比較例3〜5
比較例1と同様にして、表1に示す組成比のペーストを用いた電子放出源を作製し、比較例1と同様の評価を行った。結果を表4に示した。
【0071】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極上に無機粒子1と針状炭素を含む第1膜を形成する工程と、前記第1膜上に無機粒子2と針状炭素を含む第2膜を形成する工程と、これらを同時に焼成する工程と、焼成後の第2膜を除去する工程とを含む電子放出源の製造方法であって、(1)無機粒子1の焼結温度が無機粒子2の焼結温度よりも低いこと、および(2)第1膜中の針状炭素と無機粒子1の重量比ならびに第2膜中の針状炭素と無機粒子2の重量比が、いずれも針状炭素100重量部に対して各無機粒子が200〜8000重量部であることを特徴とする電子放出源の製造方法。
【請求項2】
第2膜の膜厚が0.5〜5μmである請求項1記載の電子放出源の製造方法。
【請求項3】
第1膜中の針状炭素と無機粒子1の総重量に占める無機粒子1の重量濃度(N1)と、第2膜中の針状炭素と無機粒子2の総重量に占める無機粒子2の重量濃度(N2)の比(N2/N1)が0.8以上1.25未満である請求項1または2記載の電子放出源の製造方法。
【請求項4】
前記第2膜を除去する工程が、粘着性のある材料を第2膜に付着して剥離する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電子放出源の製造方法。
【請求項5】
無機粒子1の焼結温度と無機粒子2の焼結温度の差が10℃以上である請求項1〜4のいずれか記載の電子放出源の製造方法。
【請求項6】
無機粒子1および無機粒子2はガラス粒子である請求項1〜5のいずれか記載の電子放出源の製造方法。

【公開番号】特開2009−205943(P2009−205943A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47354(P2008−47354)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】