説明

電子放出素子、電子源、画像表示装置および情報表示再生装置、並びにそれらの製造方法

【課題】 長期に渡って変動の少ない安定した電子放出特性を有する電子放出素子、電子源を提供する。
【解決手段】 基板の表面上で第1方向において離隔して設けられた一対の導電性膜と、各々が、該一対の導電性膜を接続し、間隙を備え、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向において互いに離隔して設けられた、複数のカーボン膜と、を備える電子放出素子であって、 前記第2方向における前記複数のカーボン膜の間に、前記基板の表面の一部が露出しており、前記露出している部分が、前記基板の表面の一部であって前記複数のカーボン膜で覆われている部分を構成する材料よりも炭素の堆積を抑制する材料で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子放出素子及びそれを用いた電子源、画像表示装置および情報表示再生装置、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子には電界放出型や表面伝導型などの電子放出素子がある。
【0003】
図13(a)は、表面伝導型電子放出素子を模式的に示した平面図である。図13(b)は図13(a)のB−B’線における断面模式図である。この電子放出素子は、基板(1)上に一対の補助電極(2,3)を備え、一対の補助電極(2,3)間に第1の間隙(7)を挟んで対向する一対の導電性膜(4a、4b)を備えている。そして、第1の間隙(7)内の基板(1)上および第1の間隙(7)近傍の導電性膜(4a、4b)上に導電性のカーボン膜(21a、21b)が設けられている。
【0004】
上記電子放出素子から電子を放出させる際には、一方の補助電極(2または3)に印加する電位を他方の補助電極(3または2)に印加する電位よりも高くする。この様に補助電極(2)と補助電極(3)に電圧を印加する事で、第2の間隙(8)に強い電界が生じる。その結果、低電位側の補助電極(3または2)に接続するカーボン膜(21aまたは21b)の端縁であって、第2の間隙の外縁を構成る部分の多数の箇所(複数の電子放出部)から電子がトンネルし、その電子の一部が放出されると考えられている。
【0005】
特許文献1には、基板(1)の材料によって、電子放出特性を改善する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−293448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の画像表示装置では、表示画像を長期に渡って輝度の変動が少なく、安定して表示できることが求められる。そのため、電子放出素子を複数個配列した電子源を備えた画像表示装置においては、各電子放出素子が良好な特性を長期に渡って変動が少ない状態を維持することが求められる。
【0007】
しかしながら、従来の表面伝導型電子放出素子を駆動させた場合、上記導電性膜(4)のシート抵抗によっては(低い場合)、電子放出量の「ゆらぎ」(短時間に電子放出電流の変動が起こる現象)が生じてしまう問題があった。
【0008】
また、前述したように一方のカーボン膜(21aまたは21b)の端縁の一部であって、間隙(8)の外縁を構成する多数の箇所から、電子がトンネルすると考えられている。例えば、第1補助電極(2)の電位を第2補助電極(3)の電位よりも高くして駆動させた時には、第2補助電極(3)に第2導電性膜(4b)を介して接続する第2カーボン膜(21b)がエミッターに相当する。その結果、第2カーボン膜(21b)の端縁であって、第2の間隙(8)の外縁を構成する部分に多数の電子放出部が存在するものと想定される。即ち、第2の間隙(8)に沿って、低電位が印加される補助電極(3または2)に接続するカーボン膜(21aまたは21b)の端縁に、電子放出部が多数並んでおり、個々の電子放出部は、カーボン膜が有する抵抗値で電気的に連結されていると考えられる。よって、たとえカーボン膜(21aまたは21b)より高いシート抵抗を持った導電性膜(4)を配置しても、カーボン膜(21aまたは21b)の端縁に配置された電子放出部同士の連結抵抗により、電子放出量の「ゆらぎ」は十分に抑制されない場合があった。
【0009】
そのため、上記電子放出素子を多数配列した電子源では、導電性膜(4)の抵抗値、あるいは、カーボン膜による電子放出部同士の連結抵抗に起因すると見られる、電子放出量の「ゆらぎ」が生じていた。また、上記電子放出素子を用いた画像表示装置では、上記電子放出量の「ゆらぎ」に起因すると見られる、隣接画素の輝度バラツキや輝度変動が生じる場合があった。そのため、高精細で良好な表示画像を得ることが難しかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、長期に渡って変動の少ない安定した電子放出特性を有する電子放出素子、電子源を提供することを目的とする。そして、同時に、変動の少ない長寿命な画像表示装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1は、基板の表面上で第1方向において離隔して設けられた一対の導電性膜と、各々が、該一対の導電性膜を接続し、間隙を備え、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向において互いに離隔して設けられた、複数のカーボン膜と、を備える電子放出素子であって、前記第2方向における前記複数のカーボン膜の間に、前記基板の表面の一部が露出しており、前記露出している部分が、前記基板の表面の一部であって前記複数のカーボン膜で覆われている部分を構成する材料よりも炭素の堆積を抑制する材料で構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2は、基板の表面上で第1方向において離隔して設けられた一対の導電性膜と、各々が、該一対の導電性膜を接続し、間隙を備え、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向において互いに離隔して設けられた、複数のカーボン膜と、を備える電子放出素子の製造方法であって、酸化シリコンを主体とする第1部分と、酸化シリコンに比べて炭素の堆積を抑制する材料を主体とする第2部分とが、前記第2方向において交互に且つ隣合うように設けられた表面を備えた基板上に、前記1方向において対向し且つ離隔された前記一対の導電性膜を設ける工程と、炭素を含む雰囲気中で、前記一対の導電性膜の間にパルス電圧を繰り返し印加することで、前記複数の第1部分の各々の上に設けられ、前記第2方向において互いに離隔し、且つ、各々が間隙を備える、前記複数のカーボン膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な電子放出特性を長期に渡って維持できる電子放出素子を提供することができる。その結果、輝度変化の少ない高品位な表示画像を表示できる画像表示装置や情報表示再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の電子放出素子およびその製造方法について説明するが、以下に示す材料や値は一例である。本発明の目的、効果を奏する範囲内であれば、上記材料や数値などは、その応用に適するように、種々の材料や値の変形例を採用することができる。
【0015】
以下に本発明の電子放出素子の様々な形態例を説明する。
【0016】
図1(a)〜図1(c)を用いて、本実施形態例の基本的な構成について説明する。図1(a)は、本実施形態例における典型的な構成を示す模式的な平面図である。図1(b)及び図1(c)は、それぞれ、図1(a)のB−B’、C−C’における断面模式図である。
【0017】
基板(1)上に、第1補助電極(2)と第2補助電極(3)とが間隔L1離れて配置されている。即ち、第1補助電極(2)と第2補助電極(3)はX方向(第1方向)において離隔されている。第1補助電極(2)及び第2補助電極(3)の幅はWである。ここでは補助電極(2、3)を備える電子放出素子を説明するが、補助電極(2,3)は省略することもできる。
【0018】
第1導電性膜(4a)は、補助電極(2)と接続しており、且つ、複数の第1カーボン膜(21a)を共通に接続している。同様に、第2導電性膜(4b)は、補助電極(3)と接続しており、且つ、複数の第2カーボン膜(21b)を共通に接続している。
【0019】
複数の第1カーボン膜(21a)同士は直接接続しておらず、第1導電性膜(4a)を介して並列に接続されている。同様に、複数の第2カーボン膜(21b)同士は直接接続しておらず、第2導電性膜(4b)を介して並列に接続されている。この様な構成を採用することで、電子放出量の「ゆらぎ」を抑制することができる。
【0020】
第1導電性膜(4a)及び第2導電性膜(4b)は幅W’を備えている。
【0021】
第1導電性膜(4a)と第2導電性膜(4b)は、第2の間隙7を挟んで、X方向(第1方向)において対向している。即ち、第1導電性膜(4a)と第2導電性膜(4b)とが第1方向において離隔して基板上に配置されている。換言すると、一対の導電性膜(4a、4b)が第1方向において離隔して基板上に配置されている。同様に、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)は、第1の間隙8を挟んで、X方向(第1方向)において対向している。即ち、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)とが第1方向において離隔して基板上に配置されている。換言すると、一対のカーボン膜(21a、21b)が第1方向において離隔して基板上に配置されている。
【0022】
尚、図1では、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)が完全に分離された形態を示した。しかし、間隙(8)は非常に狭い幅であるので、間隙(8)と第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)とをまとめて、「間隙を備えるカーボン膜」と表現することができる。そのため、各々が間隙を備える複数のカーボン膜(21a、21b)は、X方向(第1方向)とは異なる方向(典型的には垂直な方向)である第2の方向において互いに離間して設けられている。
【0023】
基板(1)は、少くとも間隙7内に露出されるように設けられた、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)とを備える。活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)は、図1のY方向(第2方向)に沿って交互に且つ隣合うように複数配置されている。即ち、基板(1)は、その表面において第2方向に沿って並設された、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)とを備え、活性化抑制部と活性化促進部が、間隙7内に位置している。ここでは、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)とをそれぞれ膜状に、基板(1)の表面上に設けた。しかしながら、後述するように、活性化抑制部(9)または活性化促進部(10)は、基板(1)の一部で構成される場合もある。尚、活性化促進部は第1部分、活性化抑制部(9)は第2部分と言い換えることができる。
【0024】
活性化抑制部(9)は、幅(図1のY方向における長さ)L2を備え、活性化促進部(10)は、幅L3を備えている。図1で示す例では、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)の長さ(図1のX方向における長さ)は、共に、L1よりも長く設けている。しかしながら、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)の長さは、少なくとも、間隙(7)の幅(図1のY方向における長さ)以上であれば良い。
【0025】
また、図1の例では、Y方向における導電性膜(4a、4b)の両端の直下に活性化促進部(10)を設けた例を示したが、Y方向における導電性膜(4a、4b)の両端の直下に活性化抑制部(9)を設けても良い。また、Y方向における導電性膜(4a、4b)の両端の直下に活性化促進部(10)を設ける場合には、図1(a)に示すように、導電性膜(4a、4b)で覆われていない(露出している)基板(1)の表面は活性化抑制部(9)を設けることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、電子放出素子を駆動している最中に、新たなカーボン膜が堆積することによる電子放出特性の変動を抑制することができる。即ち、活性化抑制部(9)は、活性化促進部(10)に比べて、カーボン膜の堆積(炭素の堆積)を抑制することが可能な部分である。換言すると、活性化抑制部(9)は、活性化促進部(10)に比べて、カーボン膜の堆積(炭素の堆積)レートが低い部分である。このため、複数のカーボン膜(21aまたは21b)同士が、駆動中においても、また、後述する「活性化」処理中においても、直接接続することを避けることができる。
【0027】
また、間隙7内では、第1カーボン膜(21a)および第2カーボン膜(21b)のそれぞれは、活性化促進部(10)上のみに実質的に配置されている。従って、複数のカーボン膜の対(各々が第1カーボン膜21(a)と第2カーボン膜21(b)からなる)が、互いにY方向に距離L2離れて、設けられている。尚、一対のカーボン膜の幅(Y方向における長さ)はL3に相当する。
【0028】
図1(a)では、導電性膜(4a、4b)の直下で、2つの活性化抑制部(9)と3つの活性化促進部(10)が、Y方向において、交互に複数配置されている例を示した。しかしながら、本実施形態の電子放出素子では、2組以上のカーボン膜の対が、互いに直接接続することなく設けられている必要がある。そのため、本実施形態の電子放出素子では、少なくとも、間隙7内(即ち、第1導電性膜と第2導電性膜との間)で、Y方向において、1つの活性化抑制部(9)が2つの活性化促進部(10)で挟まれていれば良い。基板1の表面のうち、上記のように規定された活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)以外の部分は、活性化抑制膜(9)でも活性化促進膜(10)でも良い。また、図1のY方向における長さL2及びL3は、導電性膜(30a、30b)の幅W’よりも小さい。L2は実用上、100nm以上に設定される。そして、L3/L1およびL2/L1を、0.05以下とすることで、特に、放出電流Ieのゆらぎを低減することができるので好ましい。
【0029】
間隙(8)の幅(図1のX方向における長さ)は、ドライバーのコストなどを考慮して駆動電圧を30V以下にするため、及び、駆動時の予期せぬ電圧変動による放電を抑制するために、実用的には1nm以上10nm以下に設定される。間隙(7)の幅(図1のX方向における長さ)は間隙(8)の幅よりも常に広い。
【0030】
尚、図1では、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)を完全に分離された形態を示した。しかし、間隙(8)は上述したように非常に狭い幅であるので、間隙(8)と第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)とをまとめて、「間隙を備えるカーボン膜」と表現することができる。従って、前述した「カーボン膜の対」は「間隙を備えるカーボン膜」と表現することができる。そのため、本発明の電子放出素子は、駆動する際に、間隙を備えるカーボン膜の一方の端部と他方の端部との間に電圧を印加することで電子を放出する電子放出素子、ということができる。
【0031】
また、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)は極めて微小な領域で繋がっている場合もある。極めて微小な領域であれば、その領域は高抵抗であるので電子放出特性への影響は限定的であるため許容できる。この様な、第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)が一部で繋がった形態も、「間隙を備えるカーボン膜」と表現することができる。
【0032】
図1(a)では、間隙(8)が直線形状である例を示した。しかしながら、間隙(8)は、直線形状であることが好ましいが、直線形状に限定されるものではない。特定の周期性をもって折れ曲がったり、円弧状であったり、円弧と直線を組み合わせた形態などの所定の形態であっても良い。
【0033】
ここで、間隙(8)は、第1カーボン膜(21a)の端縁(外縁)と第2カーボン膜(21b)の端縁(外縁)とが対向することで構成されている。
【0034】
そして、駆動時(電子放出時)に、例えば第1補助電極2の電位よりも高い電位を第2補助電極3に印加する場合、第1カーボン膜(21a)の端縁の一部であって、間隙(8)の外縁を構成する部分に、多数の電子放出部が存在すると考えられる。第1補助電極(2)に接続する第1カーボン膜(21a)がエミッターに相当すると考えられる。即ち、第1カーボン膜(21a)の端縁の一部であって、間隙(8)の外縁を構成する部分に多数の電子放出部が存在すると考えられる。
【0035】
間隙(7)や間隙(8)は、FIB(集束イオンビーム)などのナノスケールの各種高精細な加工方法を導電性膜に施すことによっても形成することができる。そのため、本発明の電子放出素子の間隙(7)や間隙(8)は、後述する「通電フォーミング」処理や「活性化」処理で形成するものに限定されることはない。
【0036】
以上の様な構成を採用することで、本実施形態の電子放出素子は、従来の表面伝導型電子放出素子に比べて電子放出量の「ゆらぎ」を抑制することができる。
【0037】
第1導電性膜(4a)、第2導電性膜(4b)の材料としては、金属や半導体などの導電性材料を用いることができる。例えばPd、Ni、Cr、Au、Ag、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属又は酸化物、或はそれらの合金等を用いることができる。導電性膜(4a、4b)は、本発明の効果である電子放出量の「ゆらぎ」抑制のために、Rs(シート抵抗)がカーボン膜(21a、21b)の抵抗値よりも高い10Ω/□以上の抵抗値で形成される。導電性膜(4a、4b)の抵抗値は、好ましくは、10Ω/□以上10Ω/□以下の抵抗値とする。
【0038】
上記抵抗値を示す膜厚としては、具体的には5nm以上100nm以下の範囲にあることが好ましい。なおRsは、厚さがt、幅がwで長さがlの膜の長さ方向に測定した抵抗Rを、R=Rs(l/w)とおいたときに現われる値で、抵抗率をρとすればRs=ρ/tである。また、導電性膜(4a、4b)の幅W’は、好ましくは補助電極(2、3)の幅Wよりも小さく設定される(図1(a)参照)。WをW’よりも広く設定することで、補助電極(2,3)から各電子放出部への距離のばらつきを低減できる。W’の値に特に制限はないが、実用的な範囲として10μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0039】
第1補助電極(2)と第2補助電極(3)とが対向する方向(X方向、第1方向)における間隔L1及び補助電極のそれぞれの膜厚は、電子放出素子の応用形態等によって適宜設計される。例えば、後述するテレビジョン等の画像表示装置に用いる場合では、解像度に対応して設計される。とりわけ、高品位(HD)テレビでは高精細さが要求されるため、画素サイズを小さくする必要がある。そのため、電子放出素子のサイズが限定されたなかで、十分な輝度を得るために、十分な放出電流Ieが得られるように設計される。上記間隔L1の実用的な範囲としては50nm以上200μm以下、好ましくは、1μm以上100μm以下に設定される。尚、前述したように、第1補助電極(2)と第2補助電極(3)は、本実施形態の電子放出素子には必須の構成要件ではない。
【0040】
基板(1)としては、特に限定されないが、例えば石英ガラス、青板ガラス、ガラス基板に酸化シリコン(典型的にはSiO)を積層したガラス基板、あるいは、アルカリ成分を減らしたガラス基板等、を用いることができる。
【0041】
補助電極(2、3)の材料としては、金属や半導体などの導電性材料を用いることができる。例えばNi、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属或は合金およびPd、Ag、Au、RuO、Pd−Ag等の金属或は金属酸化物等を用いることができる。
【0042】
活性化抑制部(9)の材料としては、金属や半導体などの酸化物、窒化物またはそれらの混合物が好ましく用いられる。例えば、W、Ti、Ta、Al、Ni、Co、Cu、Geの酸化物、又は、Si、Al、Geの窒化物、或はそれらの混合物が挙げられる。特には、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、のいずれかであることが好ましい。
【0043】
活性化促進部(10)の材料としては、酸化シリコン(典型的にはSiO2)、酸化シリコンを主成分とするガラス等、が挙げられる。従って、基板1が酸化シリコンを主体(主成分)とするガラスである場合には、基板1の表面の一部を活性化促進部(10)として用いることができる。即ち、基板1の表面に活性化抑制部9を所定のパターンに(例えば膜状に)設ければ、活性化抑制部9で被覆されていない基板1の表面が活性化促進部(10)の機能を果たすことができる。活性化抑制部(10)の厚みが無視できない程大きい場合には、基板1の表面のうち、活性化抑制部(10)を設ける領域を、エッチングするなどして掘り下げればよい。同様に、基板1が活性化抑制部9として機能する材料で構成されていれば、基板1の表面に活性化促進部10を所定のパターンに(例えば膜状に)設ければ良い。
【0044】
次に、本実施形態の電子放出素子の製造方法の一例について図2を用いて説明する。尚、図2(a)〜(d)は、図2(a’)〜(d’)のA−A’における断面模式図である。本発明の製造方法は、例えば以下の工程(1)〜工程(5)によって行うことができる。
【0045】
(工程1)
基板(1)を十分に洗浄し、活性化抑制部(9)を形成するための材料を、CVD法、スパッタ法等により堆積する。そして、フォトリソグラフィー技術などを用いてパターニングすることにより、活性化抑制部(9)を基板1上に設ける。次に、活性化促進部(10)を形成するための材料を、CVD法、スパッタ法等により堆積する。そして、フォトリソグラフィー技術などを用いてパターニングすることにより、活性化促進部(10)を基板1上に設ける。活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)の材料や、幅(L2,L3)などは、前述した実施形態例で述べた値を適宜適用すれば良い。
【0046】
次に、補助電極(2,3)を形成するための材料を、真空蒸着法、スパッタ法等により堆積する。そして、フォトリソグラフィー技術などを用いてパターニングすることにより、第1補助電極(2)および第2補助電極(3)を基板1上に設ける(図2(a))。
【0047】
補助電極(2,3)の材料や、膜厚や、間隔(L1)や、幅(W)などは、前述した実施形態例で述べた値を適宜適用すれば良い。
【0048】
(工程2)
続いて、基板1上に設けられた第1補助電極(2)と第2補助電極(3)との間を接続する導電性膜(4)を形成する(図2(b))。
【0049】
導電性膜(4)の形成方法としては、例えば、まず、有機金属溶液を塗布して乾燥することにより、有機金属膜を形成する。そして、有機金属膜を加熱焼成処理し、金属膜あるいは金属酸化物膜などの金属化合物膜とする。その後、リフトオフ、エッチング等によりパターニングすることで所定のパターンの導電性膜4を得ることができる。
【0050】
導電性膜(4)の材料としては、金属や半導体などの導電性材料を用いることができる。例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属或は金属化合物(合金や金属酸化物など)を用いることができる。
【0051】
なお、ここでは、有機金属溶液の塗布法により説明したが、導電性膜(4)の形成法はこれに限られるものではない。例えば、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法、インクジェット法等の公知の手法によっても形成することも出来る。
【0052】
導電性膜(4)は、Rs(シート抵抗)が10Ω/□以上10Ω/□以下の抵抗値の範囲で形成される。
【0053】
以下に示す工程3以降の処理は、例えば、図3に示す真空装置内に上記工程1〜2を終えた基板(1)を配置し、内部を真空にした後で行うことができる。なお、図3に示した測定評価装置は真空装置(真空チャンバー)を備えており、該真空装置には不図示の排気ポンプ及び真空計等の真空装置に必要な機器が具備されている。内部は、所望の真空下で種々の測定評価を行えるようになっている。また、本測定評価装置には、不図示のガス導入装置を付設することで、後述する「活性化」処理に用いる炭素含有ガスを所望の圧力で真空装置内に導入することができる。また、真空装置全体、及び真空装置内に配置された基板(1)は、不図示のヒーターにより加熱することができる。
【0054】
(工程3)
導電性膜4に間隙7を設ける(図2(c))。
【0055】
間隙7を設ける方法の一例としては「通電フォーミング」処理などを用いることができる。「通電フォーミング」処理は、パルス波高値が定電圧(一定)であるパルス電圧を繰り返し第1補助電極(2)と第2補助電極(3)との間に印加することによって行うことができる。(図2(c))また、パルス波高値を徐々に増加させながら、パルス電圧を印加することによって行うこともできる。パルス波高値が一定である場合のパルス波形の例を図4(a)に示す。図4(a)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔(休止時間)であり、T1は1μsec〜10msec、T2は10μsec〜100msecとすることができる。印加するパルス波形自体は、三角波や矩形波を用いることができる。
【0056】
次に、パルス波高値を増加させながら、パルス電圧を印加する場合のパルス波形の例を図4(b)に示す。図4(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔(休止時間)であり、T1は1μsec〜10msec、T2は10μsec〜100msecとすることができる。印加するパルス波形自体は、三角波や矩形波を用いることができる。印加するパルス電圧の波高値は、例えば0.1Vステップ程度ずつ、増加させる。
【0057】
以上説明した例においては、第1補助電極(2)と第2補助電極(3)との間に三角波パルスを印加している。しかしながら、補助電極(2,3)間に印加する波形は三角波に限定することはなく、矩形波など所望の波形を用いてもよい。また、その波高値及びパルス幅、パルス間隔等についても上述の値に限ることない。第1の間隙(7)が良好に形成されるように、電子放出素子の抵抗値等にあわせて、適切な値を選択することができる。
【0058】
この工程により、第1導電性膜(4a)と第2導電性膜(4b)が基板(1)上に形成される。
【0059】
尚、前述したように、間隙7は、上述した「通電フォーミング」処理に限られるものではない。種々のエッチング(例えばFIBを用いたエッチング)で、間隙7は形成することもできる。
【0060】
(工程4)
次に、間隙(8)を備えるカーボン膜(21a、21b)を設ける(図2(d))。
【0061】
カーボン膜は例えば「活性化」処理によって形成することができる。「活性化」処理は、例えば、図3に示した真空装置内に炭素含有ガスを導入し、炭素含有ガスを含む雰囲気下で、補助電極(2,3)間に図5(a)や図5(b)に示す様な、両極性のパルス電圧を複数回印加することで行う。即ち、第1電極(4a)と第2電極(4b)との間に、両極性のパルス電圧を複数回印加する。
【0062】
この処理により、雰囲気中に存在する炭素含有ガスから、間隙(8)を備えるカーボン膜(21a、21b)を、基板1の表面に位置する活性化促進部(10)上に堆積させることができる。堆積した第1カーボン膜(21a)と第2カーボン膜(21b)は、間隙(8)を介して対向して設けられる。具体的には、第1電極(4a)と第2電極(4b)との間の基板(1)の表面に位置する活性化促進部(10)上およびその近傍の電極(4a、4b)上にカーボン膜(21a、21b)が堆積する。即ち、間隙7内においては、第1カーボン膜(21a)の一部と第2カーボン膜(21b)の一部とが活性化促進部(10)上に設けられる。また、活性化抑制部(10)上では、カーボン膜(21a、21b)が実質的に堆積せず、間隙(7)が維持される。
【0063】
従って、活性化抑制部(9)で隔てられた複数の活性化促進部(10)の各々の一部であって、間隙(7)内に位置する部分の上に、第1カーボン膜(21a)の一部と第2カーボン膜(21b)の一部とが設けられる。その結果、複数の「カーボン膜の対」が、互いに離間して、基板(1)上に設けることができる。
【0064】
上記炭素含有ガスとしては例えば有機物質ガスを用いることができる。有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来る。具体的には、メタン、エタン、プロパンなどC2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2n等の組成式で表される不飽和炭化水素が使用できる。また、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等も使用できる。特にはトルニトリルが好ましく用いられる。
【0065】
上記「活性化」処理中に印加する両極性のパルス電圧の波形は、補助電極(2)または第1電極(4a)の電位と、補助電極(3)または第2電極(4b)の電位との関係を所定のタイミング又は所定の周期で逆転させる波形である(図5(a)、(b)参照)。上記電位の関係の逆転は、交互に逆転する波形であることが好ましいが、必ずしも交互に逆転させる形態に本発明は限定されるものではない。
【0066】
両極性のパルス電圧の印加としては、例えば、以下のように行うことで実現することができる。即ち、補助電極(2)または第1電極(4a)の電位を、補助電極(3)または第2電極(4b)の電位よりも高くせしめるパルス電圧を印加する。その後、補助電極(2)または第1電極(4a)の電位の電位を補助電極(3)または第2電極(4b)の電位よりも低くせしめるパルス電圧を印加する。そして、この行為を繰返すことが好ましい。尚、補助電極(2)または第1電極(4a)の電位と、補助電極(3)または第2電極(4b)の電位とのどちらを先に高電位にするかは任意に設定することができる。
【0067】
印加する最大電圧値(絶対値)は、実用的には、10V以上25V以下の範囲で適宜選択することが好ましい。
【0068】
図5(a)中、T1は、印加するパルス電圧のパルス幅、T2はパルス間隔である。この例では、電圧値は正負の絶対値が等しい場合を示しているが、電圧値は正負の絶対値が異なる場合もある。また、図5(b)中、T1は正の電圧値のパルス電圧のパルス幅であり、T1’は負の電圧値のパルス電圧のパルス幅である。T2はパルス間隔である。尚、この例においては、T1>T1’に設定し、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている場合を示しているが、電圧値は正負の絶対値が異なる場合もある。「活性化」処理は、素子電流(If)の上昇が緩やかになった後に終了することが好ましい。
【0069】
尚、ここでは、「活性化」処理により、カーボン膜(21a、21b)及び間隙(8)を形成する例を説明した。しかしながら、カーボン膜(21a、21b)の形成方法は「活性化」処理に限られるものではない。例えば、スパッタ法により基板(1)上にカーボン膜を堆積し、間隙8を種々のエッチング(例えばFIBを用いたエッチング)で形成することで、カーボン膜(21a、21b)を形成することもできる。
【0070】
以上の工程1〜工程4により図1に示した電子放出素子を形成することができる。
【0071】
作製された電子放出素子は、駆動を行う前(画像表示装置に適用する場合には発光体に電子線を照射する前)に、好ましくは、真空中で加熱する処理である「安定化」処理を行う。
【0072】
「安定化」処理を行うことで、前述した「活性化」処理などによって基板(1)の表面や、その他の箇所に付着した余分な炭素や有機物を除去することが好ましい。
【0073】
具体的には、真空装置内で、余分な炭素や有機物質を排気する。真空装置内の有機物質は極力排除することが望ましいが、有機物質の分圧としては1×10―8Pa以下まで除去することが好ましい。また、有機物質以外の他のガスをも含めた真空容器内の全圧力は、3×10―6Pa以下が好ましい。
【0074】
以上の工程により、本発明の電子放出素子を形成することができる。
【0075】
尚、ここで示した前述した実施形態例の電子放出素子の製造方法は一例であり、これらの製造方法により製造された電子放出素子に上述した第1〜第2の実施形態例の電子放出素子は限定されることはない。
【0076】
次に、上述した本発明の電子放出素子の基本特性について、図6を用いて説明する。図3に示した測定評価装置により測定される、本発明の電子放出素子の放出電流(Ie)及び素子電流(If)と補助電極(2,3)印加する素子電圧(Vf)の関係の典型的な例を図6に示す。なお、図6は、放出電流(Ie)は素子電流(If)に比べて著しく小さいので、任意単位で示されている。図6からも明らかなように、本発明の電子放出素子は放出電流(Ie)に対する3つの性質を有する。
【0077】
まず第1に、本発明の電子放出素子は、ある電圧(しきい値電圧と呼ぶ;図6中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加する。一方で、しきい値電圧Vth以下では放出電流(Ie)がほとんど検出されない。すなわち、放出電流(Ie)に対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0078】
第2に、放出電流(Ie)が素子電圧Vfに依存するため、放出電流(Ie)は素子電圧Vfで制御できる。
【0079】
第3に、アノード電極44に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電極44に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0080】
以上のような電子放出素子の特性を用いると、入力信号に応じて電子放出特性を容易に制御できることになる。
【0081】
次に、上述した実施形態例に示した本発明の電子放出素子の応用例について以下に述べる。
【0082】
本発明の電子放出素子を複数個基板上に配列することで、例えば、電子源や、フラットパネル型テレビジョンなどの画像表示装置を構成することができる。
【0083】
基板上の電子放出素子の配列形態としては、例えば、マトリクス型配列が挙げられる。この配列形態では、前述の第1補助電極(2)が基板上に配置されたm本のX方向配線のうちの1本に接続される。そして、前述の第2補助電極(3)が基板上に配置されたn本のY方向配線のうちの1本に電気的に接続される。尚、m、nは、共に正の整数である。
【0084】
次に、このマトリクス型配列の電子源基板の構成について、図7を用いて説明する。
【0085】
上述したm本のX方向配線(72)は、Dx1,Dx2,……,Dxmからなり、絶縁性基板(71)上に、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成される。X方向配線(72)は、金属等の導電性材料からなる。n本のY方向配線(73)は、Dy1,Dy2,…,Dynのn本の配線よりなり、X方向配線(72)と同様の手法、同様の材料により形成することができる。これらm本のX方向配線(72)とn本のY方向配線(73)との間(交差部)には、不図示の絶縁層が配置される。絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成することができる。
【0086】
また、前記X方向配線(72)には、走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が電気的に接続される。一方、Y方向配線(73)には、走査信号に同期して、選択された各電子放出素子(74)から放出される電子を変調するための変調信号を印加する不図示の変調信号発生手段が電気的に接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧Vfは、印加される走査信号と変調信号との差電圧として供給される。
【0087】
次に、上記のようなマトリクス配列の電子源基板を用いた電子源、及び、画像表示装置の一例について、図8と図9を用いて説明する。図8は画像表示装置を構成する外囲器(ディスプレイパネル)(88)の基本構成図であり、図9は蛍光体膜の構成を示す模式図である。
【0088】
図8において、電子源基板(リアプレート)(71)上に本発明の電子放出素子(74)をマトリクス状に複数配列している。フェースプレート(86)はガラスなどの透明基板(83)の内面に蛍光体膜(84)と導電性膜(85)等が形成されたである。支持枠(82)はフェースプレート(86)とリアプレート(71)の間に配置される。リアプレート(71)、支持枠(82)及びフェースプレート(86)は、接合部にフリットガラスやインジウムなどの接着剤を付与することにより封着されている。この封着された構造体で外囲器(ディスプレイパネル)(88)が構成される。尚、上記導電性膜(85)は、図3を用いて説明したアノード(44)に相当する部材である。
【0089】
外囲器(88)は、フェースプレート(86)、支持枠(82)、リアプレート(71)で構成することができる。また、フェースプレート(86)とリアプレート(71)との間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器(88)を構成することができる。
【0090】
図9(a)、(b)は、それぞれ、図8で示した蛍光体膜(84)の具体的な構成例である。蛍光体膜(84)は、モノクロームの場合は単色の蛍光体(92)のみから成る。カラーの画像表示装置を構成する場合には、蛍光体膜(84)は、少なくともRGB3原色の蛍光体(92)と、各色の間に配置される光吸収部材(91)とを含む。光吸収部材(91)は好ましくは、黒色の部材を用いることができる。図9(a)は、光吸収部材(91)をストライプ状に配列した形態である。図9(b)は、光吸収部材(91)をマトリクス状に配列した形態である。一般に、図9(a)の形態は「ブラックストライプ」と呼ばれ、図9(b)の形態は「ブラックマトリクス」と呼ばれる。光吸収部材(91)を設ける目的は、カラー表示の場合必要となる3原色蛍光体の各蛍光体(92)間の塗り分け部における混色等を目立たなくすることと、蛍光体膜(84)における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。光吸収部材(91)の材料としては、通常良く用いられている黒鉛を主成分とする材料だけでなく、光の透過及び反射が少ない材料であればこれに限るものではない。また、導電性であっても絶縁性であっても良い。
【0091】
また、蛍光体膜(84)の内面側(電子放出素子(74)側)には、「メタルバック」などと呼ばれる導電性膜(85)が設けられる。導電性膜(85)の目的は、蛍光体(92)からの発光のうち、電子放出素子(74)側へ向かう光をフェースプレート(86)側へ鏡面反射することで輝度を向上させることである。また、電子ビーム加速電圧を印加するためのアノードとして作用させること、及び、外囲器(88)内で発生した負イオンの衝突による蛍光体のダメージを抑制すること等である。
【0092】
導電性膜(85)は、好ましくは、アルミニウム膜で形成されることが好ましい。導電性膜(85)は、蛍光体膜(84)作製後、蛍光体膜(84)の表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後Alを真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0093】
フェースプレート(86)には、更に蛍光体膜(84)の導電性を高めるため、蛍光体膜(84)と透明基板(83)との間にITOなどからなる透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0094】
上記外囲器(88)内の各電子放出素子(74)は図7を用いて前述したX方向配線(72)およびY方向配線(73)に接続している。そのため、各電子放出素子(74)に接続する端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを通じて電圧を印加することにより、所望の電子放出素子(74)から電子放出させることができる。この時、高圧端子(87)を通じ、導電性膜(85)に5kV以上30kV以下、好ましくは10kV以上25kV以下の電圧を印加する。尚、フェースプレート(86)と基板(71)との間隔は1mm以上5mm以下、更に好ましくは1mm以上3mm以下に設定される。この様にする事で、選択した電子放出素子から放出された電子は、メタルバック(85)を透過し、蛍光体膜(84)に衝突する。そして蛍光体(92)を励起・発光させることで画像を表示するものである。
【0095】
なお、以上述べた構成においては、各部材の材料等、詳細な部分は上記した内容に限られるものではなく、目的に応じて適宜変更される。
【0096】
また、図8を用いて説明した本発明の外囲器(ディスプレイパネル)(88)を用いて情報表示再生装置を構成することができる。
【0097】
具体的には、受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる信号を、ディスプレイパネル(88)に出力してスクリーンに表示または再生させる。上記受信装置は、テレビジョン放送などの放送信号を受信することができる。また、上記選曲した信号に含まれる信号としては、映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを指す。尚、上記「スクリーン」は、図8で示したディスプレイパネル(88)においては、蛍光体膜(84)に相当すると言うことができる。この構成によりテレビジョンなどの情報表示再生装置を構成することができる。勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本発明の情報表示再生装置はデコーダーも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段に出力して、ディスプレイパネル(88)に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0098】
また、映像情報または文字情報をディスプレイパネル(88)に出力してスクリーンに表示および/あるいは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。まず、受信した映像情報や文字情報から、ディスプレイパネル(88)の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、ディスプレイパネル(C11)の駆動回路(C12)に入力する。そして、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路からディスプレイパネル(88)内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。
【0099】
図10は、本発明に係るテレビジョン装置のブロック図である。受信器であるところの受信回路(C20)は、チューナーやデコーダ等からなり、衛星放送や地上波等のテレビ信号、ネットワークを介したデータ放送等を受信し、復号化した映像データをI/F部(インターフェース部)(C30)に出力する。I/F部(C30)は、映像データを表示装置の表示フォーマットに変換して上記ディスプレイパネル(C11)に画像データを出力する。画像表示装置(C10)は、ディスプレイパネル(C11)、駆動回路(C12)及び制御回路(C13)を含む。制御回路は、入力した画像データに表示パネルに適した補正処理等の画像処理を施すともに、駆動回路(C12)に画像データ及び各種制御信号を出力する。駆動回路(C12)は、入力された画像データに基づいて、ディスプレイパネル(C11)の各配線(図8のDox1〜Doxm、Doy1〜Doyn参照)に駆動信号を出力し、テレビ映像が表示される。受信回路(C20)とI/F部(C30)は、セットトップボックス(STB)として画像表示装置(C10)とは別の筐体に収められていてもよいし、また画像表示装置(C10)と同一の筐体に収められていてもよい。
【0100】
また、インターフェースには、プリンター、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルビデオディスク(DVD)などの画像記録装置や画像出力装置に接続することができる構成とすることもできる。そして、このようにすれば、画像記録装置に記録された画像をディスプレイパネル(C11)に表示させることもできる。また、ディスプレイパネル(C11)に表示させた画像を、必要に応じて加工し、画像出力装置に出力させることもできる情報表示再生装置(またはテレビジョン)を構成することができる。
【0101】
ここで述べた情報表示再生装置の構成は、一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の情報表示再生装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等のシステムと接続することで、様々な情報表示再生装置を構成することができる。
【0102】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳述する。
【0103】
(実施例1)
本実施例では、第1の実施形態例で説明した電子放出素子を作成した例を示す。本実施例の電子放出素子の構成は、図1と同様である。以下、図1、図2を用いて、本実施例の電子放出素子の基本的な構成及び製造方法を説明する。
【0104】
(工程−a)
清浄化した青板ガラス上に活性化抑制部(9)として厚さ500nmの窒化シリコン膜をCVD法で成膜したのち、活性化促進部(10)となる領域に相当する部分をフォトリソを用いてエッチングして除去することにより、活性化抑制部(9)を設ける。この結果、膜状の活性化抑制部に、複数の、互いに平行な、ライン状の開口が設けられる。次に、活性化促進部(10)を形成するために厚さ500nmの酸化シリコン膜をCVD法で成膜したのち、活性化抑制部(9)上に設けられた酸化シリコン膜をフォトリソを用いて除去する。これにより、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)を基板1上に設ける。
【0105】
基板(1)上に作製した活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)は図1X方向にL1の長さとY方向にL2及びL3の長さの形状でY方向に沿って交互に複数配置されている。L2及びL3が、200nm、1μm、3μm、5μm、10μm、20μm、100μmとなるように条件を振り分けた。
【0106】
次に、補助電極2,3のパターンに対応する開口部を有するホトレジストのマスクパターンを形成し、真空蒸着法により厚さ5nmのTi、厚さ100nmのPtを順次積層する。その後、ホトレジストを有機溶剤で溶解しPt/Ti膜をリフトオフして、補助電極2,3を形成した。素子電極の間隔Lは20μm、電極幅Wは300μmである(図2(a))。尚、図2では、理解を容易にするために、各々が活性化抑制部(9)で挟まれた3つの活性化促進部(10)を補助電極2,3の間に設けて図示している。しかしながら、本実施例では、上述したL2及びL3の値において、補助電極の幅W内に収まる範囲で、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)を最大数配置している。
【0107】
(工程−b)
続いて、それぞれの基板(1)上に、有機パラジウム化合物溶液を回転塗布した後に、加熱焼成処理をした。こうしてPdを主元素として含む導電性膜(4)が形成された。続いて導電性膜(4)をフォトリソでパターニングし、幅W‘の導電性膜(4)は200μmに統一した。形成された導電性膜(4)のRs(シート抵抗)は、1×10Ω/□であり、膜厚は、10nmとした。
【0108】
(工程−d)
次に、上記工程―a〜工程−cを経た各基板(1)を図3の真空装置内に設置し、真空ポンプにて排気し、1×10−6Paの真空度に達した後、電源(41)を用いて補助電極(2、3)間に電圧Vfを印加し、フォーミング処理を行う。これにより導電性膜(4)に間隙(7)を形成して、第1導電性膜(4a)と第2導電性膜(4b)を形成した(図2(c))。フォーミング処理における電圧波形は図4(b)に示したものを用いた。
【0109】
図4(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1msec、T2を16.7msecとし、三角波の波高値は0.1Vステップで昇圧させることで、フォーミング処理を行った。また、フォーミング処理中は、間欠的に、0.1Vの電圧の抵抗測定パルスを補助電極(2、3)間に印加し、抵抗を測定した。尚、フォーミング処理の終了は、抵抗測定パルスでの測定値が、約1MΩ以上になった時とした。
【0110】
(工程−e)
続いて、「活性化」処理を行った。具体的には、トルニトリルを真空装置内に導入した。その後、図5(a)に示した波形のパルス電圧を、最大電圧値±20V、T1が1msec、T2が10msecの条件で、補助電極(2、3)間に印加した。「活性化」処理を開始後、素子電流(If)が緩やかな上昇に入ったことを確認し、電圧の印加を停止し、「活性化」処理を終了した。その結果、カーボン膜(21a、21b)を形成した(図2(d))。
【0111】
以上の工程で電子放出素子を形成した。
【0112】
(工程−f)
次に、それぞれの電子放出素子に対し、「安定化」処理を行った。具体的には、真空装置及び電子放出素子をヒーターにより加熱して約250℃に維持しながら真空装置内の排気を続けた。20時間後、ヒーターによる加熱を止め、室温に戻したところ真空装置内の圧力は1×10−8Pa程度に達した。
【0113】
続いて、図3に示した測定装置で、各素子に対し実用的な駆動を行い、放出電流Ieを長時間に渡り測定した。実用的な駆動では、アノード電極(44)と電子放出素子の間の距離Hを2mmとし、高圧電源(43)によりアノード電極(44)に5kVの電位を与えた。また、電源(41)を用いて各電子放出素子の補助電極(2、3)の間に、波高値17V、パルス幅100μs、周波数60Hzの矩形パルス電圧を印加した。
【0114】
電流計(42)により、本実施例の電子放出素子の放出電流Ieを測定し、放出電流Ieのゆらぎ値は、全ての素子において、同じ測定時間間隔で複数回行い、得られた複数データーの(標準偏差/平均値×100(%))を計算することで求めた。以下の表1に各素子の放出電流Ieのゆらぎ値を示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1からも明らかなように、L3/L1およびL2/L1が0.05以下の場合に、放出電流Ieのゆらぎ値が大きく減少した。尚この傾向は、L1の値を変えても同様であった。
【0117】
(実施例2)
本実施例では、第1の実施形態例で説明した電子放出素子において、導電性膜(4)のRS(シート抵抗)を変化させた場合の例を示す。本実施例にかかわる基本的な電子放出素子の構成は、図1と同様である。以下、図1、図2を用いて、本実施例の電子放出素子の製造方法を説明する。
【0118】
(工程−a)
最初に、清浄化した石英基板(1)を6個用意し、それぞれの基板(1)上に、活性化抑制部(9)として厚さ200nmの窒化シリコン膜をCVD法で成膜したのち、実施例1と同様にして、活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)を設ける。
【0119】
基板(1)上に作製した活性化抑制部(9)と活性化促進部(10)は図1X方向にL1の長さとY方向にL2及びL3の長さの形状でY方向に沿って交互に複数配置されている。L2及びL3が、200nmとなるようにした。
【0120】
その上に、スパッタ法を用いてTiを厚さ5nm形成し、その後Ti上にPtを厚さ40nm形成した。その後、フォトリソを用いて補助電極(2、3)を基板(1)上にパターン形成した。間隔L1が20μmのものを5個作製した。また、補助電極(2,3)の幅W(図1参照)は600μmとした(図2(a))。
【0121】
(工程−b)
続いて、工程―aを経た基板(1)上に、有機パラジウム化合物溶液を回転塗布した後に、加熱焼成処理をした。有機パラジウム化合物の濃度と塗布時の回転数を調整し、膜厚が、10nmと100nmとなるように、3種類それぞれ1基板に対して施した。形成処理後の導電性膜(4)のRs(シート抵抗)は、膜厚5nm、10nm、100nmそれぞれ、5×10Ω/□、1×10Ω/□、1×10Ω/□であった。
【0122】
また、(工程−a)を経た他の基板(1)上に、スパッタ法を用いて、ITO(In 95%、SnO 5%)薄膜を、膜厚が20nm、100nmとなるように、2種類それぞれ1基板に対して形成させた。形成後の導電性膜(4)のRs(シート抵抗)は、膜厚20nm、100nmそれぞれ、100Ω/□、25Ω/□であった。
【0123】
また、(工程−a)を経た残りの基板(1)上に、電子ビーム蒸着法を用いて、Au薄膜を、膜厚が100nmとなるように、残り1基板に対して形成させた。形成後の導電性膜(4)のRs(シート抵抗)は、0.8Ω/□であった。
【0124】
続いて導電性膜(4)をフォトリソでパターニングし、幅W3の導電性膜(4)は500μmに統一した。
【0125】
こうして、Rs(シート抵抗)が異なる導電性膜(4)がそれぞれ1基板ずつに形成された。
【0126】
続いて、(工程−b)を経た各基板(1)に実施例1で説明した(工程−c)〜(工程−f)と同じ処理を施し、電子放出素子を作製した。
【0127】
続いて、図3に示した測定装置で、各素子に対し実用的な駆動を行い、放出電流Ieを長時間に渡り測定した。実用的な駆動では、アノード電極(44)と電子放出素子の間の距離Hを2mmとし、高圧電源(43)によりアノード電極(44)に5kVの電位を与えた。また、電源(41)を用いて各電子放出素子の補助電極(2、3)の間に、波高値17V、パルス幅100μs、周波数60Hzの矩形パルス電圧を印加した。
電流計(42)により、本実施例の電子放出素子の放出電流Ieを測定し、放出電流Ieのゆらぎ値は、全ての素子において、同じ測定時間間隔で複数回行い、得られた複数データーの(標準偏差/平均値×100(%))を計算することで求めた。以下の表2に各素子の放出電流Ieのゆらぎ値を示す。
【0128】
【表2】

【0129】
表2より、導電性膜(4)のRs(シート抵抗)が1×10Ω/□以上の場合に、放出電流Ieのゆらぎ値が減少した。
【0130】
(実施例3)
本実施例では、上述した実施例1で作成した電子放出素子と同様の製造方法によって形成した電子放出素子を多数基板上にマトリクス状に配列して電子源を形成した例である。そして、この電子源を用いて図8に示した画像表示装置を作成した例でもある。以下に本実施例で作成した画像表示装置の製造工程を説明する。
【0131】
〈補助電極作成工程〉
まず、補助電極(2、3)を、基板71上に多数形成した(図11)。具体的には、チタニウムTiと白金Ptとの積層膜を40nmの厚みで基板71上に成膜した後、フォトリソグラフィー法によってパターニングして形成した。また、補助電極(2)と補助電極(3)との間隔L1を20μmとし、長さWを200μmとした。
【0132】
〈Y方向配線形成工程〉
次に、図12(a)に示すように、銀を主成分とするY方向配線(73)を、補助電極(3)に接続するように形成した。このY方向配線(73)は変調信号が印加される配線として機能する。
【0133】
〈絶縁層形成工程〉
次に図12(b)に示すように、次の工程で作成するX方向配線(72)と前述のY方向配線(73)を絶縁するために、酸化シリコンからなる絶縁層(75)を配置する。後述するX方向配線(72)の下であって、且つ、先に形成したY方向配線(73)を覆うように、絶縁層(75)を配置する。X方向配線(72)と補助電極(2)との電気的接続が可能なように、絶縁層(75)の一部にコンタクトホールを開けて形成した。
【0134】
〈X方向配線形成工程〉
図12(c)に示すように、銀を主成分とするX方向配線(72)を、先に形成した絶縁層(75)の上に形成した。X方向配線(72)は、絶縁層(75)を挟んでY方向配線(24)と交差しており、絶縁層(75)のコンタクトホール部分で補助電極(2)に接続される。このX方向配線(72)は走査信号が印加される配線として機能する。このようにしてマトリクス配線を有する基板(71)が形成される。
【0135】
〈導電性膜形成工程〉
上記マトリクス配線が形成された基(71)上の補助電極(2)と補助電極(3)の間にインクジェット法により、導電性膜(4)を形成した(図12(d))。本実施例では、インクジェット法に用いるインクとして、有機パラジウム錯体溶液を用いた。この有機パラジウム錯体溶液を、補助電極(2)と補助電極(3)間をつなぐように付与した後、この基板(71)を空気中にて、加熱焼成処理をして酸化パラジウム(PdO)からなる導電性膜4とした。
【0136】
その後、上記導電性膜(4)にFIBを用いて、W1が1μmで隣り合う導電性膜(4)の間隔が1μmの電気的に独立した50本の導電性膜(4)を全ての素子に対し形成させた。
【0137】
その後、実施例1と同様にして、各導電性膜(4)に間隙7を形成し、その後、「活性化」処理を行った。「活性化」処理において、各ユニットに印加する電圧の波形などは、実施例1の電子放出素子の作成方法で示したとおりである。
【0138】
以上の工程で、本実施例の電子源(複数の電子放出素子)が配置された基板(71)が形成された。
【0139】
次いで、図8に示したように、上記基板(71)の2mm上方に、ガラス基板(83)の内面に蛍光体膜(84)とメタルバック(85)とが積層されているフェースプレート(86)を支持枠(82)を介して配置した。
【0140】
そして、フェースプレート(86)、支持枠(82)、基板(71)の接合部を、低融点金属であるインジウム(In)を加熱し冷却することによって封着した。また、この封着工程は、真空チャンバー中で行ったため、排気管を用いずに、封着と封止を同時に行った。
【0141】
本実施例では、画像形成部材である蛍光体膜(84)は、カラー表示するために、ストライプ形状(図9(a)参照)の蛍光体とした。そして、まずブラックストライプ(91)を所望の間隔を置いて形成した。続いて、ブラックストライプ(91)間にスラリー法により各色蛍光体(92)を塗布して蛍光膜(84)を作製した。ブラックストライプ(91)の材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。
【0142】
また、蛍光膜(84)の内面側(電子放出素子側)にはアルミニウムからなるメタルバック(85)を設けた。メタルバック(85)は、蛍光体膜(84)の内面側に、Alを真空蒸着することで作製した。
【0143】
以上のようにして完成した画像表示装置のX方向配線およびY方向配線を通じて、所望の電子放出素子を選択し、17Vのパルス電圧を印加した。そして同時に、高圧端子Hvを通じてメタルバック(73)に10kVの電圧を印加したところ、輝度むらが少なく、輝度の変動も少ない明るい良好な画像を長時間に渡り表示することができた。
【0144】
以上説明した実施形態および実施例は、本発明の一例に過ぎず、上記した各材料、サイズなどについての様々な変形例を本発明は除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の電子放出素子の構成例を模式的に示す平面図及び断面図である。
【図2】本発明の電子放出素子の製造方法の概要を示す模式図である。
【図3】電子放出素子の測定評価機能を備えた真空装置の一例を示す模式図である。
【図4】フォーミング処理時に印加するパルスの一例を示す模式図である。
【図5】活性化処理時に印加するパルスの一例を示す模式図である。
【図6】本発明の電子放出素子の電子放出特性を示す模式図である。
【図7】本発明の電子放出素子を用いた電子源基板を説明するための模式図である。
【図8】本発明の画像表示装置の一例の構成を説明するための模式図である。
【図9】蛍光体膜を説明するための模式図である。
【図10】本発明のテレビジョン装置のブロック図である。
【図11】本発明による電子源の製造工程の一例を示す模式図である。
【図12】本発明による電子源の製造工程の一例を示す模式図である。
【図13】従来の電子放出素子の一例を示す平面および断面模式図である。
【符号の説明】
【0146】
1 基板
2、3 補助電極
4a、4b 導電性膜
7 第一の間隙
8 第二の間隙
9 活性化抑制層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上で第1方向において離隔して設けられた一対の導電性膜と、各々が、該一対の導電性膜を接続し、間隙を備え、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向において互いに離隔して設けられた、複数のカーボン膜と、を備える電子放出素子であって、
前記第2方向における前記複数のカーボン膜の間に、前記基板の表面の一部が露出しており、
前記露出している部分が、前記基板の表面の一部であって前記複数のカーボン膜で覆われている部分を構成する材料よりも炭素の堆積を抑制する材料で構成されていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
前記一対の導電性膜のシート抵抗が、10Ω/□以上であることを特徴とする電子放出素子。
【請求項3】
前記露出している部分を構成する材料が、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、のいずれかであり、前記複数のカーボン膜で覆われている部分を構成する材料が、酸化シリコンを主体とする材料であることを特徴とする請求項1または2に電子放出素子。
【請求項4】
複数の電子放出素子を有する電子源であって、各々の前記電子放出素子が請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子であることを特徴とする電子源。
【請求項5】
電子源と該電子源から放出された電子の照射によって発光する発光体とを備える画像表示装置であって、前記電子源が請求項4に記載の電子源であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
受信した放送信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、該受信器に接続された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置であって、前記画像表示装置が請求項5に記載の画像表示装置であることを特徴とする情報表示再生装置。
【請求項7】
基板の表面上で第1方向において離隔して設けられた一対の導電性膜と、各々が、該一対の導電性膜を接続し、間隙を備え、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向において互いに離隔して設けられた、複数のカーボン膜と、を備える電子放出素子の製造方法であって、
酸化シリコンを主体とする第1部分と、酸化シリコンに比べて炭素の堆積を抑制する材料を主体とする第2部分とが、前記第2方向において交互に且つ隣合うように設けられた表面を備えた基板上に、前記1方向において対向し且つ離隔された前記一対の導電性膜を設ける工程と、
炭素を含む雰囲気中で、前記一対の導電性膜の間にパルス電圧を繰り返し印加することで、前記複数の第1部分の各々の上に設けられ、前記第2方向において互いに離隔し、且つ、各々が間隙を備える、前記複数のカーボン膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする電子放出素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−67477(P2010−67477A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233167(P2008−233167)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】