説明

電子楽器及び演奏練習の進捗状態表示方法

【課題】演奏者が自分のレベルを理解した上で、次のレベルに進むための練習意欲を高めることができるようにする。
【解決手段】ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて生成された演奏データの内容と、楽曲データ記憶手段から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価するとともに、上記評価結果に応じて上記ユーザの演奏練習の進捗状態を距離に換算して表示装置に表示して視覚化するようにして、演奏者が自分のレベルを客観的に理解できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子楽器及び演奏練習の進捗状態表示方法に関し、特に、演奏者に対して演奏練習意欲を積極的に増大させるために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器の演奏レベルを点数で評価し表示するものが種々提案されている。例えば、特許文献1に記載の電子楽器では、鍵盤楽器を演奏練習する際に、練習しようとする演奏情報と鍵を操作した情報とを比較して"正押鍵数"/"演奏情報イベント数"等を計算することで正解率を算出し、逐次リアルタイム表示するようにしている。
【0003】
また、特許文献2の楽器演奏データ評価装置では、所定の評価項目について教習者の課題曲演奏による楽器演奏データと同一曲の模範演奏データとを比較し、所定の評価基準に従って点数を計算して演奏を評価するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−76032号公報(第4図:82〜89)
【特許文献2】特公平7−120138号公報(図3:S14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電子楽器または特許文献2に記載の楽器演奏データ評価装置の方法では、演奏レベルを点数で単純に評価するだけであり、演奏者の演奏レベルを向上させるために、演奏者に対して演奏練習する意欲を積極的に増大させるように仕向ける機能が不十分であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上述の問題点にかんがみ、演奏者が楽器を練習する意欲を高めることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子楽器は、楽曲データ記憶装置に記憶されている楽曲データをユーザの指定に応じて読み出す楽曲データ読み出し手段と、上記ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて演奏データを生成する演奏データ生成手段と、上記演奏データ生成手段により生成される演奏データに基づいて、演奏練習の進捗状態を算出する進捗状態算出手段と、上記進捗状態算出手段により算出される演奏練習の進捗状態を距離に換算する距離換算手段と、上記距離換算手段により換算された距離を累計して通算距離を算出する通算距離算出手段と、上記通算距離算出手段によって算出された通算距離に対応する場所情報を表示装置上に表示する表示制御手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の電子楽器の他の特徴とするところは、上記演奏練習の進捗状態に対応する場所情報を格納しておく場所情報格納手段を有し、上記通算距離の近傍に位置する場所にちなんだ画面情報を上記場所情報として記憶しておくことを特徴とする。
また、本発明の電子楽器のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容と、上記楽曲データ記憶手段から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価する演奏レベル評価手段を有し、上記進捗状態算出手段は、演奏レベル評価手段の評価結果に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
また、本発明の電子楽器のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容に基づいて運動量を検出し、上記検出した運動量からカロリー消費量を計算する消費カロリー計算手段を有し、上記進捗状態算出手段は、上記消費カロリー計算手段により計算されたカロリー消費量に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
また、本発明のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容に基づいて上記ユーザが演奏した時間を計測する演奏時間計測手段を有し、上記進捗状態算出手段は、上記演奏時間計測手段によって計測された演奏時間に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
【0008】
本発明の演奏練習の進捗状態表示方法は、楽曲データ記憶装置に記憶されている楽曲データをユーザの指定に応じて読み出す楽曲データ読み出し工程と、上記ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて演奏データを生成する演奏データ生成工程と、上記演奏データ生成工程において生成される演奏データに基づいて、演奏練習の進捗状態を算出する進捗状態算出工程と、上記進捗状態算出工程において算出される演奏練習の進捗状態を距離に換算する距離換算工程と、上記距離換算工程において換算された距離を累計して通算距離を算出する通算距離算出工程と、上記通算距離算出工程において算出された通算距離に対応する場所情報を表示装置上に表示する表示制御工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の演奏練習の進捗状態表示方法の他の特徴とするところは、上記演奏練習の進捗状態に対応する場所情報を格納しておく場所情報格納工程を有し、上記通算距離の近傍に位置する場所にちなんだ画面情報を上記場所情報として記憶しておくことを特徴とする。
また、本発明の演奏練習の進捗状態表示方法のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容と、上記楽曲データ記憶工程から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価する演奏レベル評価工程を有し、上記進捗状態算出工程は、演奏レベル評価工程の評価結果に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
また、本発明の演奏練習の進捗状態表示方法のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容に基づいて運動量を検出し、上記検出した運動量からカロリー消費量を計算する消費カロリー計算工程を有し、上記進捗状態算出工程は、上記消費カロリー計算工程において計算されたカロリー消費量に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
また、本発明の演奏練習の進捗状態表示方法のその他の特徴とするところは、上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容に基づいて上記ユーザが演奏した時間を計測する演奏時間計測工程を有し、上記進捗状態算出工程は、上記演奏時間計測工程において計測された演奏時間に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて生成された演奏データの内容と、楽曲データ記憶手段から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価するとともに、上記評価結果に応じて上記ユーザの演奏レベルを距離に換算して表示装置に表示するようにしたので、演奏者が自分のレベルを客観的に理解できるようにすることができる。これにより、演奏者が次のレベルに進むための練習意欲を高めることができる。
また、本発明の他の特徴によれば、楽器を演奏したときの運動量からカロリー消費量を計算し、そのカロリー消費量を距離に換算して表示装置に表示するようにしたので、演奏者が自分の演奏練習量を客観的に理解できるようにすることができる。これにより、演奏者が次のレベルに進むための練習意欲を高めることができる。
また、本発明のその他の特徴によれば、楽器を演奏したときの時間を距離に換算して表示装置に表示するようにしたので、演奏者が自分の演奏練習時間を客観的に理解できるようにすることができる。これにより、演奏者が次のレベルに進むための練習意欲を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
【0011】
図1は、本実施形態の電子楽器の概略構成の一例を示すブロック図である。
図1において、本実施形態の電子楽器1は、中央処理装置(以下、CPUと称する)2と、リードオンリメモリ(ROM、以下ではフラッシュメモリと称する)3と、ランダムアクセスメモリ(以下、RAMと称する)4と、信号バス5と、キーボード部6と、操作パネル部7と、楽音発生部8と、デジタル/アナログ変換部(以下、D/A変換部と称する)9と、アナログ信号処理部10と、パワーアンプ11と、スピーカ部12、レコーダ13、外部記憶装置14、及びインターフェース部15とを有している。
【0012】
図1に示すように、CPU2、ROM3、RAM4、キーボード部6、操作パネル部7、及び楽音発生部8は、それぞれ信号バス5に接続され、相互に通信することが可能である。
【0013】
キーボード部6は、演奏を行なうための複数の鍵とその鍵の各々に対応して設けられた鍵スイッチとを含む複数の鍵盤を有している。上記鍵スイッチは、上記鍵盤の押鍵や離鍵を検出するとともに、各鍵の動作スピードに関するKeyタッチレスポンス信号を検出するように構成されている。
【0014】
操作パネル部7は、音色や音量などを選択及び設定するための各種操作子7aと、これらの選択および設定状態を表示するための液晶表示装置7bとを有している。
【0015】
なお、上記音色や音量などを選択したり、設定したりするための各種操作子7aは、例えば、音色設定スイッチ、音量設定ボリューム、自動伴奏設定スイッチ、及び図示しているフェードアウトスイッチなどである。
【0016】
上記音色設定スイッチと上記音量設定ボリュームは、出力する楽音の音色と音量を設定するためのものであり、これら音色設定スイッチと音量設定ボリュームにより所望の音色と音量が設定されると、設定内容に応じた音色と音量を有する楽音が出力される。
【0017】
上記自動伴奏設定スイッチは、上記鍵盤の押鍵及び離鍵に応じたメロディー(演奏音)を発音させて行なうマニュアル演奏を補助する伴奏機能を実行するときに設定されるスイッチである。この自動伴奏設定スイッチにおける具体的な設定内容としては、例えば、自動伴奏を行なう楽音(音符)、音色、及びリズムなどである。
【0018】
上記液晶表示装置7bは、上記各種操作子7aの設定状態、フラッシュメモリ3に記録されたID情報、ユーザに対するコメント、楽曲データの譜面、その他の情報を表示するために設けられている。本実施形態においては、上記液晶表示装置7bに演奏者の演奏レベルを表示したり、次のレベルに進むために練習意欲を高めることができるようにするための表示をしたりするために用いられる。
【0019】
CPU2は、本実施の形態の電子楽器1の全体を統括制御するためのものであり、フラッシュメモリ3に格納されている制御プログラムに従って、RAM4をワークメモリとして利用しながら処理を行う。以下に、CPU2で行われる処理の一例について説明する。
【0020】
CPU2は、キーボード部6の各鍵スイッチのスキャン処理を行って、鍵の押鍵または離鍵に基づいて発生する楽曲データ(演奏データ)を楽音発生部8に割り当てる処理を行う。この楽曲データ(演奏データ)は、各鍵の操作が押鍵(キーオン)であるか離鍵(キーオフ)であるかを示すキーオン/オフ信号や、音高データであるキーナンバ(ノートナンバ)や、音量制御データであるベロシティデータや、各鍵の動作スピードに関するキータッチレスポンス信号や、ある音に対応する鍵が押鍵されたときから、次の音に対応する鍵が押鍵されるまでの時間を表すステップタイムデータや、鍵が押鍵されたときから、その鍵が離鍵されるまでの時間を表すゲートタイムデータなどから構成される。
【0021】
また、CPU2は、操作パネル部7に配設されている録音ボタンのスキャン処理も行なう。この結果、録音ボタンがユーザにより操作され、録音指示がなされたと判断した場合、マニュアル演奏に基づく楽曲データ(演奏データ)をレコーダ13に記録する。
【0022】
さらに、CPU2は、操作パネル部7に配設されている再生ボタンのスキャン処理も行なう。この結果、再生ボタンがユーザにより操作されたと判断した場合、CPU2は、レコーダ13に記録されている楽曲データ(演奏データ)を読み出して、楽音発生部8に割り当てる処理を行う。
【0023】
また、CPU2は、操作パネル部7に配設されている音色設定スイッチ、及び音量設定ボリュームのスキャン処理を行って、設定内容に応じた所望のデジタル楽音信号DMSを楽音発生部8から発生させるための処理を行う。
具体的に説明すると、CPU2は、音色設定スイッチの操作内容を表す音色情報や、音量設定ボリュームの操作内容を表す音量情報などを、楽音発生部8に出力するなどの処理を行う。
【0024】
また、CPU2は、外部記憶装置14やレコーダ13に記録された楽曲データに基づいて譜面データを作成し、作成した譜面データに基づく譜面を操作パネル部7に配設されている液晶表示装置7bに表示させる。
【0025】
具体的に説明すると、まず、CPU2は、操作パネル部7に配設された操作子などの操作に基づいて演奏者により指定された楽曲データを外部記憶装置14から読み出す。また、レコーダ13に楽曲データが記録されている場合には、演奏者による再生ボタンの操作に基づいてレコーダ13は、楽曲データを読み出す処理を行なう。
【0026】
インターフェース部15は、インターネットなどの通信ネットワーク(図示せず)と繋がり、通信ネットワークを経由して電子楽器1と音楽教室の本部に設置されているサーバ(サーバコンピュータ)と接続し、楽曲データや評価データなどの種々の情報を授受することが可能に構成されている。
【0027】
例えば、サーバの外部記憶装置には、多数の楽曲データがデータ記憶領域に蓄積されている。また、サーバのユーザ情報記憶領域には、電子楽器1を夫々使用する各ユーザ(ID)毎に、既に提供した楽曲データの曲目を表わす曲目情報、演奏評価データや演奏解析データなどの演奏履歴情報が蓄積されている。サーバは、電子楽器1で演奏練習するための楽曲データを各電子楽器1の外部記憶装置14にダウンロードしたり、各ユーザの演奏履歴情報を各電子楽器1からアップしたりすることができる。
【0028】
(第1の具体例)
次に、演奏者が楽器を練習する意欲を高めることができるようにする具体例を説明する。
第1の具体例として、楽器の演奏機能の採点結果を距離に換算して液晶表示装置7bに表示する例について説明する。この場合、進捗状態算出手段が算出する進捗状態は演奏の採点結果である。
【0029】
先ず、本実施形態の電子楽器1において行われる演奏者の演奏レベル判定処理について説明する。
本実施形態においては、内蔵されている練習曲(バイエルやチェルニーなど)の中から難易度が同程度のものをグループ分けしている。例えば、難易度1の各曲はレベル1のグループに分けられているように、レベル1〜レベルnにグループ分けされている。
【0030】
次に、演奏者の演奏レベル判定を行ない、次のレベルに進むために練習意欲を高めることができるようにする実施形態の一例を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、ステップS201において、演奏者が操作パネル部7の操作子7aを操作して入力される指示に応じて演奏するレベルを選択する。この選択は、上述したようにレベル1〜レベルnにグループ分けされている中から、演奏者が現在のレベルに応じたレベルを選択する。
【0031】
次に、ステップS202に進み、ステップS201で選択したグループの中から、演奏者が演奏する曲を、演奏者が操作パネル部7の操作子7aを操作して入力される指示に応じて選択する。
【0032】
次に、ステップS203に進み、演奏者の演奏データを解析してレベル評価を行なう。ここで行われる演奏操作毎のレベル評価として、本実施形態においては4つの項目について評価するようにしている。
【0033】
すなわち、(1)押鍵は正しいか否か、(2)キーオンタイミングのずれ、(3)キーオフタイミングのずれ、(4)押鍵強度(ベロシティ)の違い、等について正規データと比較して評価を行なっている。なお、演奏レベルを評価する方法は任意の方法を用いることができるので、本実施形態においては詳細な評価方法の説明を省略する。
【0034】
次に、ステップS204に進み、ステップS203で行われた評価結果を距離に換算する処理を行なう。次に、ステップS205に進み、今回の演奏で獲得した距離と今までの演奏で獲得した距離とを加算して通算距離を算出する。
【0035】
次に、ステップS206に進み、ステップS205で算出した通算距離に対応する場所にちなんだ表示内容をフラッシュメモリ3から読み出して取得する。フラッシュメモリ3に記憶されている表示内容については後述する。次に、ステップS207に進み、ステップS206で取得した表示内容に応じた表示処理を行なう。
【0036】
次に、図3を参照しながら本実施形態において液晶表示装置7bに表示する内容の一例を説明する。
図3は、行きたい場所(目的地)を設定する画面の一例を示している。本実施形態の目的地設定画面30は、北海道31、東京32、沖縄33、及び名古屋34を設定する例を示している。例えば、浜松から出発して目的地を北海道31に設定し、「評価点100=10km」に設定した例を説明する。
【0037】
上述のように設定して演奏練習を行なうと、演奏内容が上述の採点機能により採点され、採点結果が距離に換算されて累積されていく。本実施形態においては、距離の累積結果が所定の距離に達した場合には、その距離に対応する場所を液晶表示装置7bに表示するようにしている。
【0038】
例えば、出発してからの累積距離が浜松〜東京間の距離に達した場合には、図4(a)に示す表示画面41において、テキスト表示41aで示すように、「本日の練習で東京まで進みました」のような表示、及び画像表示で示す東京タワー41bのように、東京に関して良く知られた絵や写真等を表示するようにしている。
【0039】
そして、さらに演奏を続けることによって、最初に設定した北海道に到達した場合には、図4(b)に示す表示画面42において、テキスト表示42aで示すように、「北海道に着きました。おめでとう!!」のような表示、及び画像表示で示す時計台42bのように、北海道に関して良く知られた絵や写真等を表示するようにしている。
【0040】
このように、演奏者のレベルに応じて目的地に近づいているように実感させる表示を液晶表示装置7bに行なうことにより、演奏者の演奏レベル及びその成長具合を視覚によって認識させることができる。また、このような表示を行なうことにより、次のレベルに進むために練習意欲を高めることができる。
【0041】
(第2の具体例)
上述の具体例においては、ユーザの演奏レベルに応じて目的地に近づいているように実感させる表示を液晶表示装置7bに行なう例を示した。
それに対して、第2の具体例においては演奏データの内容に基づいて運動量を検出し、上記検出した運動量からカロリー消費量を計算するようにしている。すなわち、本実施形態における演奏練習の進捗状態は、ユーザが電子楽器を演奏した際の運動量に比例するカロリー消費量であり、例えば、「100kcal=10km」としている。
【0042】
したがって、演奏練習を多くすれば浜松を出発してからの累積距離を多くすることができ、目的地に早く到着することができる。これにより、第2の具体例においても、ユーザが電子楽器を練習しようとする意欲を高めることができる。
【0043】
第2の具体例において、演奏量を運動量に換算する手段は、電子楽器が本来有している機能を使用して実現することができる。
すなわち、電子楽器においてはユーザが鍵盤を弾いたときの押鍵速度、押鍵回数を検出する機能を有しているので、これらの値を運動量に変換するアルゴリズムを用いて運動量を求めることができる。
【0044】
第2の具体例のポイントは、演奏練習の総量を距離に換算して、演奏練習の進捗状態を視覚化して表示することであるので、上述した運動量及びカロリー消費量は、必ずしも絶対的な数値である必要はない。したがって、押鍵速度、押鍵回数を検出する機能を有している電子楽器においては、特別の装置を追加することなく第2の具体例を実現することができる。
【0045】
(第3の具体例)
第3の具体例においては、電子楽器を弾いた時間を計測しておいて、演奏時間を距離に換算するようにしている。例えば、「10分=10km」としている。上記演奏時間と距離との関係はユーザのレベルまたはユーザの年令等に応じて、「10分=20km」などのように任意に設定することができる。
【0046】
したがって、演奏時間を多くすれば浜松を出発してからの累積距離を多くすることができ、目的地に早く到着することができる。これにより、第3の具体例においても、ユーザが電子楽器を練習しようとする意欲を高めることができる。
【0047】
第3の具体例において、電子楽器を弾いた時間を計測する手段としては、電子楽器の練習を開始してから終了するまでの時間を計測するようにしたり、あるいは鍵盤を弾いている実時間を計測するようにしたりすることで実現することができる。
【0048】
第3の具体例のポイントは、演奏練習の時間を距離に換算して、演奏練習の進捗状態を視覚化して表示することであるので、上述した演奏時間は、必ずしも絶対的な数値である必要はない。したがって、電源のオンオフを検出する機能、押鍵速度や押鍵回数を検出する機能を有している電子楽器においては、特別の装置を追加することなく第3の具体例を実現することができる。
【0049】
上述したように、本実施形態においては、演奏者の演奏レベルを液晶表示装置7bに表示するようにしたので、演奏者は自分の現在のレベルを視覚的に認識することが可能となり、次のレベルに進むために練習意欲を高めることができる。
【0050】
(本発明に係る他の実施形態)
上述した本発明の実施形態における電子楽器を構成する各手段、並びに演奏練習の進捗状態表示方法を判定して表示する方法の各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0051】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図2に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接、あるいは遠隔から供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータが上記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0053】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、上記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0054】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0055】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RWなどがある。また、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などもある。
【0056】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、上記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0057】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0058】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、ダウンロードした鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0059】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、上述した実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても上述した実施形態の機能が実現され得る。
【0060】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても上述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態を示し、電子楽器の構成例を示すブロック図である。
【図2】演奏練習の進捗状態表示方法の処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【図3】目的地を設定する画面の一例を示す図である。
【図4】演奏者の演奏レベルに応じた場所にちなんだ表示を行なっている様子を示す図であり、(a)は目的地の途中で表示している例を示し、(b)は設定した目的地に到着した際に表示する画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 電子楽器
2 CPU
3 ROM
4 RAM
5 信号バス
6 キーボード部
7 操作パネル部
7a 各種操作子
7b 液晶表示装置
8 楽音発生部
9 D/A変換部
10 アナログ信号処理部
11 パワーアンプ
12 スピーカ部
13 レコーダ
14 外部記憶装置
15 インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲データ記憶装置に記憶されている楽曲データをユーザの指定に応じて読み出す楽曲データ読み出し手段と、
上記ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて演奏データを生成する演奏データ生成手段と、
上記演奏データ生成手段により生成される演奏データに基づいて、演奏練習の進捗状態を算出する進捗状態算出手段と、
上記進捗状態算出手段により算出される演奏練習の進捗状態を距離に換算する距離換算手段と、
上記距離換算手段により換算された距離を累計して通算距離を算出する通算距離算出手段と、
上記通算距離算出手段によって算出された通算距離に対応する場所情報を表示装置上に表示する表示制御手段とを有することを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
上記演奏練習の進捗状態に対応する場所情報を格納しておく場所情報格納手段を有し、
上記通算距離の近傍に位置する場所にちなんだ画面情報を上記場所情報として記憶しておくことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容と、上記楽曲データ記憶手段から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価する演奏レベル評価手段を有し、
上記進捗状態算出手段は、演奏レベル評価手段の評価結果に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項4】
上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容に基づいて運動量を検出し、上記検出した運動量からカロリー消費量を計算する消費カロリー計算手段を有し、
上記進捗状態算出手段は、上記消費カロリー計算手段により計算されたカロリー消費量に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項5】
上記演奏データ生成手段により生成される演奏データの内容に基づいて上記ユーザが演奏した時間を計測する演奏時間計測手段を有し、
上記進捗状態算出手段は、上記演奏時間計測手段によって計測された演奏時間に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項6】
楽曲データ記憶装置に記憶されている楽曲データをユーザの指定に応じて読み出す楽曲データ読み出し工程と、
上記ユーザにより操作される演奏操作子の操作状態に応じて演奏データを生成する演奏データ生成工程と、
上記演奏データ生成工程において生成される演奏データに基づいて、演奏練習の進捗状態を算出する進捗状態算出工程と、
上記進捗状態算出工程において算出される演奏練習の進捗状態を距離に換算する距離換算工程と、
上記距離換算工程において換算された距離を累計して通算距離を算出する通算距離算出工程と、
上記通算距離算出工程において算出された通算距離に対応する場所情報を表示装置上に表示する表示制御工程とを有することを特徴とする演奏練習の進捗状態表示方法。
【請求項7】
上記演奏練習の進捗状態に対応する場所情報を格納しておく場所情報格納工程を有し、
上記通算距離の近傍に位置する場所にちなんだ画面情報を上記場所情報として記憶しておくことを特徴とする請求項6に記載の演奏練習の進捗状態表示方法。
【請求項8】
上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容と、上記楽曲データ記憶工程から読み出される楽曲データの内容とを比較して、上記ユーザの演奏レベルを評価する演奏レベル評価工程を有し、
上記進捗状態算出工程は、演奏レベル評価工程の評価結果に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項6または7に記載の演奏練習の進捗状態表示方法。
【請求項9】
上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容に基づいて運動量を検出し、上記検出した運動量からカロリー消費量を計算する消費カロリー計算工程を有し、
上記進捗状態算出工程は、上記消費カロリー計算工程において計算されたカロリー消費量に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項6または7に記載の演奏練習の進捗状態表示方法。
【請求項10】
上記演奏データ生成工程において生成される演奏データの内容に基づいて上記ユーザが演奏した時間を計測する演奏時間計測工程を有し、
上記進捗状態算出工程は、上記演奏時間計測工程において計測された演奏時間に基づいて上記演奏練習の進捗状態を算出することを特徴とする請求項6または7に記載の演奏練習の進捗状態表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−163576(P2007−163576A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356193(P2005−356193)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】