説明

電子機器の操作装置

【課題】部品点数を増やすことなく、しかもオペレータに不快感を与えずに静電気を除去する。
【解決手段】画像形成装置1は、画像形成装置本体2の操作面に取り付けた操作パネル30と、この操作パネル30の裏面側に取り付けたプリント基板40とを備え、このプリント基板40に配設されたスイッチ41を押操作により制御可能なテンキー33を有している。そして、このテンキー33を導電性部材で構成し、かつこの導電性部材を、プリント基板40の接地パターン48を介して接地した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押操作又はタッチ操作可能な操作ボタンを有する画像形成装置、プリンタ、スキャナ、ファックス等の電子機器の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器としての複写機等の画像形成装置は、本体操作面に操作パネルを備え、この操作パネルには、複写動作には欠かせない表示を行うディスプレイ画面や複写機能設定キー等を有している。
【0003】
上記のような画像形成装置の複写機能の設定は、まず、複写動作を行う前に、オペレータが操作パネルに設けられたディスプレイ画面や複写機能設定キーで、予め画像濃度、枚数設定、給紙段等の設定を行い、設定が確定した後、プリントスイッチを押して複写動作を行う。また、搬送経路で用紙が詰まったときには、ディスプレイ画面にJAM表示を行い、オペレータに用紙処理のメッセージを促す。
【0004】
ところで、従来の画像形成装置においては、オペレータの身体に蓄積された静電気が複写機能設定キー等に放電して、そのときの放電電流により、操作パネルの裏面側に取り付けられたプリント基板上の回路部品を破壊したり、或いは、瞬時に静電気が放電することによりオペレータに不快な感じ(ショック)を与えるため、静電気を電気的に逃がす技術が提案されている。これにより、オペレータが静電気により受けるショックを回避したり、内部の電子回路の損傷を防止するようにしている。
【0005】
このような静電気除去技術として、例えば、電子機器の筐体の外表面に、導電性材料からなる開閉ボタンを設け、この開閉ボタンを、10〜1011Ωの抵抗値の抵抗体を介してアース線に接続したものが公知である(特許文献1参照)。
【0006】
また、他の従来技術として、プリンタ装置のカバーを開くときに操作するカバー開放スイッチを、導電性材質により形成し、このカバー開放スイッチとACコンセントのFG(フレームグランド)端子との間を導電性のFG線にて結線し、オペレータに蓄積された静電気を、FG線を介してグランドに流すようにした技術が公知である(特許文献2参照)。
【0007】
更に、電子機器における操作装置を、金属板で構成し、この金属板と信号グランドラインとの間に抵抗体を接続して、静電気が帯電したオペレータの手が金属板に触れると、放電電流が発生するが、この放電電流を、抵抗体を介して信号グランドラインに流すことで、制御回路の誤動作と素子の破壊を防止した技術が公知である(特許文献3参照)。
【0008】
更にまた、電子機器における操作パネルの裏面側に、複数の柱状の支持脚部を突設し、この支持脚部の先端に先端突起部を設け、この支持脚部及び先端突起部の外周面から操作パネルの裏面側に亘って金属メッキにより導電性層を形成し、更に上述した先端突起部にビス(固定具)によりアース線を接続して、金属メッキした導電性層とアース線とを接続した技術が公知である(特許文献4参照)。
【0009】
【特許文献1】実開平5−87899号公報
【特許文献2】特開平5−221085号公報
【特許文献3】特開平11−40388号公報
【特許文献4】特開平11−119884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した夫々の従来技術において、特許文献1及び特許文献3の技術では、オペレータに不快な感じ(ショック)を与えることを防止できても、開閉ボタンとは別部材の抵抗体を新たに必要とするため、部品点数が増加し製造コストが増大してしまう。また、特許文献1のように、抵抗値が1011Ωの抵抗体を用いたのでは、静電気がアース線側に流れず蓄積されてしまうおそれもある。
【0011】
また、特許文献2の技術では、電子回路の破壊は防止できても、オペレータに蓄積された静電気が、FG線を介して急激にグランド側に流れるため、オペレータに不快な感じ(ショック)を与えることになる。
【0012】
更に、特許文献4の技術では、電子回路の破壊を防止することはできても、オペレータに蓄積された静電気が、FG線を介して急激にグランド側に流れるため、オペレータに不快な感じ(ショック)を与えると共に、操作パネルの裏面側に金属メッキを施さなければならない等、作業工数及び部品点数が増加するという課題があった。
【0013】
本発明は、斯かる課題を解決するため、部品点数を増やすことなく、しかもオペレータに不快感を与えずに静電気を除去することのできる電子機器の操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、機器本体の操作面に取り付けた操作パネルと、該操作パネルの裏面側に取り付けた制御基板と、を備え、前記制御基板に配設されたスイッチ類を押操作によりオン・オフ制御可能な操作ボタンを有する電子機器の操作装置において、
前記操作ボタンを導電性部材で構成すると共に、該導電性部材を前記制御基板に形成された接地パターンを介して接地した、ことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子機器の操作装置において、前記導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、押操作される操作ボタンを導電性部材で構成し、この導電性部材を制御基板に形成された接地パターンを介して接地したので、部品点数を増やすことなく簡単な構造で、オペレータに蓄積された静電気を操作ボタンと接地パターンを介して逃がすことができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとしたので、オペレータに蓄積された静電気を除々に逃がすことができ、オペレータに不快な感じ(ショック)を与えるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
[画像形成装置の構成]
図1は、本発明が適用された電子機器としての画像形成装置の外観の斜視図である。
【0019】
同図において、画像形成装置1は、画像形成装置本体2の上部前面側の操作面に、操作装置28が配設されている。この操作装置28は、操作パネル30を有し、この操作パネル30の左端側に機能選択キー31、略中央側に液晶表示ユニットを使用した表示パネル32、右端側に操作ボタンとしてのテンキー33等を備えている。前記表示パネル32は、画像形成動作に関する各種情報を文字やアイコン等によってオペレータに知らせると共に、タッチ操作により、表示した情報のうち任意の情報をオペレータが選択して指示できるようになっている。なお、テンキー33等については後述する。
【0020】
また、画像形成装置1は、図2に示すように、画像形成装置本体2の内部にプリンタ部3及びスキャナ部4が収容されている。そして、この画像形成装置本体2の上部には、奥行き側に、原稿をコンタクトガラス(画像読み取り部)5に一枚づつ自動的に送り込む原稿自動送り装置6が取り付けられている。
【0021】
この画像形成装置1は、原稿自動送り装置6によってコンタクトガラス(画像読み取り部)5に送り込まれた原稿の画像情報をスキャナ部4で読み取って光電変換し、その光電変換したデジタルデータをプリンタ部3の画像形成部7に出力するようになっている。
【0022】
このプリンタ部3は、給紙トレイ14から送り出されたシート材P(紙、プラスチックフィルム、OHPシート等の記録材)に画像形成部7でトナー画像を形成(転写)し、そのトナー画像が転写されたシート材Pを定着部10によって加熱・加圧し、シート材Pにトナー像を定着させた後、プリント済みのシート材Pを排紙トレイ15上に排出するようになっている。
【0023】
なお、スキャナ部4は、走査ユニット12が画像読み取り位置(HP)に固定されて、原稿自動送り装置6によって搬送される原稿を流し読みする他に、走査ユニット12が画像読み取り位置(HP)から図1の右側方向に移動して、プラテンガラス(画像読み取り部)13の上面に固定された原稿の画像面を走査することも可能となっている。
【0024】
原稿自動送り装置6は、画像形成装置本体2の背面側(図1の奥行き側)の上部に上下回動可能に取り付けられており、画像形成装置本体2から上方に持ち上げるように回動させることで、画像形成装置本体2の上部に固定されたプラテンガラス13の上面を開くことができるようになっている。
【0025】
この原稿自動送り装置6により、給紙トレイ8上の原稿は、給紙部17で1枚づつ原稿搬送路に送り出され、こうして送り出された原稿は搬送部18によりコンタクトガラス(画像読み取り部)5まで搬送され、ここで走査ユニット12によって画像情報が読み取られ、読み取り後の原稿は排紙部20によって排紙トレイ11上に排出される。
[操作装置の構成]
図3に、操作装置28の詳細を示している。すなわち、操作パネル30の左端側に、「コピー」、「プリンタ」、「スキャナ」、「ファックス」等の機能選択キー31が設けられ、操作パネル30の中央側に、液晶表示装置の表示面の上面にタッチパネルを有する表示パネル32が設けられ、操作パネル30の右端側に、テンキー33やスタートキー34が設けられている。これらテンキー33やスタートキー34は、押操作により下方のスイッチを押圧してオン状態にするようになっている。
【0026】
また、表示パネル32は、操作面に表示されたタッチキー(符号35〜38)をタッチ操作することにより、その選択された機能に応じて画像形成動作を行う。具体的には、この表示パネル32は、給紙段設定表示キー35、画面拡大/縮小倍率表示キー36、画像濃度設定表示キー37、ソートモード設定表示キー38等を有している。
[操作パネルの内部構成]
図4は、本実施の形態における操作パネル30の要部断面図を示している。
【0027】
同図において、操作パネル30の裏面側には、制御基板としてのプリント基板40が取り付けられている。また、このプリント基板40に配設された各種のスイッチ41は、テンキー33を押操作することによりオン・オフ制御可能となっている。すなわち、操作パネル30の裏面側に向けて、ガイド部42が突設され、このガイド部42により平面視円形の開口部43が形成されていて、この開口部43に、テンキー33が上下移動自在に配設されている。
【0028】
なお、上記ガイド部42から、プリント基板40に向けて突起部52が突設され、更にこの突起部52からプリント基板40に向けて取付軸53が突設されている。そして、この取付軸53が、プリント基板40に形成された貫通孔40aに嵌合されている。この取付軸53とプリント基板40とは、ネジ46により固定されている。
【0029】
テンキー33は、合成樹脂等の弾性体からなる鍔付きの中空円筒状をなしていて、その操作面であるキー表面は滑らかな曲面に形成されている。このテンキー33は、中央裏面側に突起部44が突設されていて、この突起部44の真下には、プリント基板40に配設されたスイッチ41が対向配置されている。更に、図において、テンキー33の下端部(プリント基板40側)には、鍔部45が外方(略水平方向)に突設されている。この鍔部45の上面は、操作パネル30から裏面側に突設されたガイド部42の下面42cに当接されている。更にまた、鍔部45の外方には、プリント基板40側に湾曲するような接点47が実線(及び一点鎖線)のように形成されていて、該接点47は、プリント基板40の表面に接触している。この接点47は、突起部52及び取付軸53に当接しない範囲で、鍔部45の外方に設けられている。
【0030】
一方、プリント基板40には、メッキ又は蒸着等により接地パターン48が形成されていて、この接地パターン48は、アース線50を介してグランドに接続されている。そして、前記接点47とプリント基板40の接地パターン48とは、電気的に導通した状態で接触されている。なお、テンキー33は、プリント基板40に対して回転しないように、適宜のストッパ手段により移動規制されている。また、接点47は、接地パターン48と電気的に接触しているが、他の信号線とは接触させないでショートを回避している。
【0031】
以上において、オペレータがテンキー33を下方に押せば、テンキー33は自身の弾性により接点47を支点として下方に撓む。すると、テンキー33の裏面中央の突起部44がスイッチ41を押圧してオン状態にするようになっている。また、オペレータがテンキー33から手を放せば、テンキー33は自身の弾性により元の位置に復帰する。
【0032】
本実施の形態では、テンキー33を導電性部材で構成すると共に、この導電性部材をプリント基板40に形成された接地パターン48を介して接地し、更に、導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとした。そして、上記導電性部材として、例えばプラスチック部材にカーボンや銀等の粉末を所定量添加した導電性プラスチックで構成したものを用いた。
【0033】
この構成により、テンキー33は、鍔部45→接点47→接地パターン48→アース線50を介して接地されることになる。このため、オペレータがテンキー33を押したときに、オペレータに帯電していた静電気は、このテンキー33から、鍔部45→接点47→接地パターン48→アース線50を介してグランドに流れる。そして、テンキー33を構成する導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとしたので、オペレータに蓄積された静電気による電流が急激にグランドに流れることはなく除々に流れる。この結果、オペレータの手指とテンキー33との間に火花が発生することはなく、オペレータが不快感(ショック)を受けることはない。
【0034】
なお、発明者が実験したところによると、静電気により不快感(ショック)を感じるか否か等は感覚的なものであって、かつ個人差が大きいが、例えば導電性部材の抵抗値を10Ω以下とした場合は、オペレータに蓄積された静電気による電流がテンキー33を通って急激に流れ、オペレータの手指とテンキー33との間に火花が発生して不快感(ショック)を生じる。また、導電性部材の抵抗値を10Ω以上とした場合は、オペレータに蓄積された静電気がテンキー33からグランドに流れずに、人体やテンキー33等に蓄積されてしまう。
【0035】
これに対し、導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとした場合、オペレータに蓄積された静電気による電流が除々に流れる結果、オペレータの手指とテンキー33との間に火花が生じることもなく、不快感(ショック)を生じなかった。
【0036】
以上説明した通り、本実施の形態によれば、部品点数を増やすことなく、オペレータに蓄積された静電気をテンキー33からプリント基板40の接地パターン48を通じてグランドに流すことができ、しかもオペレータに不快感を与えることもない。これにより、オペレータに蓄積された静電気により、プリント基板40に取り付けられた電子部品を破壊等するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、或いはこれらの機能を併有した複合機等の画像形成装置の分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】電子機器としての画像形成装置の全体斜視図である。
【図2】画像形成装置の側面断面図である。
【図3】操作装置の平面図である。
【図4】操作装置の断面側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1……画像形成装置、2……画像形成装置本体(機器本体)、28……操作装置、30……操作パネル、33……テンキー(操作ボタン)、40……プリント基板(制御基板)、41……スイッチ、48……接地パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体の操作面に取り付けた操作パネルと、該操作パネルの裏面側に取り付けた制御基板と、を備え、前記制御基板に配設されたスイッチ類を押操作によりオン・オフ制御可能な操作ボタンを有する電子機器の操作装置において、
前記操作ボタンを導電性部材で構成すると共に、該導電性部材を前記制御基板に形成された接地パターンを介して接地した、
ことを特徴とする電子機器の操作装置。
【請求項2】
前記導電性部材の抵抗値を10〜10Ωとした、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器の操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54120(P2006−54120A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235355(P2004−235355)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】