説明

電子機器筐体

【課題】特殊工具を用いなければ機器のカバーが開けられない保護機構を備え、非専門家による機器の内部操作を防止できる電子機器筐体を提供する。
【解決手段】合成樹脂製のケース本体11及びカバー12により電子機器筐体を構成し、例えば前端左側に本体側ネジ形成部31とカバー側ネジ形成部32からなる特殊ネジ取付部30を設ける。本体側ネジ形成部31は、円筒状に形成した中心部に通し穴33とネジ形成穴34を設ける。カバー側ネジ形成部32は、円筒状に形成した中心部にネジ形成穴35を設ける。ネジ形成穴34、35は特殊ネジの呼び径より大きな円弧に均等に3等分した3箇所を直線の辺とし、この辺で囲まれた三角の形状を特殊ネジの呼び径よりも小さくする。そのためネジ形成穴34、35に特殊ネジを螺入すると、三角の辺の部分に雌ネジが形成され、ケース本体11とカバー12を締結できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばFTTx(Fiber To The x)用受信端末等の一般家庭に設置される電子機器に係り、特に当該装置について専門的知識の無いあるいは操作に未熟な者(以下非専門家という)によるケースの開閉を防止する構造を備えた筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケーブルテレビシステムにおいては、テレビに対するサービスだけでなくインターネットに対するサービスが行なわれるようになってきている。このため高速、大容量のデータ伝送が要求され、従来用いられていた同軸ケーブルに代わって各家庭へ光ファイバを引き込むFTTH(Fiber To The Home)等のFTTx(Fiber To The x)システムが普及している。このFTTxシステムにおいて使用される光受信端末(例えば特許文献1参照)は、加入者宅に設置される。
【特許文献1】特開平8−18514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に電子機器は特殊用途のものを除いて、ケースのカバーを通常のネジ、あるいはネジ自身で予め設けた下穴にネジ穴を形成して締め付けることができるタッピングネジによりケース本体部と固着されている。このため非専門家が通常のドライバによりネジを緩めてカバーを取り外すことができ、ケース内の調整部分、切替部分、内部接続端子類に触れることが可能な状態になっている。このように非専門家がケース内の上記部分に容易に触れることにより事故や故障が懸念される。
【0004】
FTTxシステムにおいて使用される光受信端末等の電子機器は、一般加入者宅に設置されるが、光受信端末内には、光ファイバの余長処理部や光コネクタ等、触れられると信号劣化や機器の故障につながる繊細な部分が多い。このため非専門家が機器の内部を操作できないような保護機構が必要である。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、特殊工具を用いなければ機器のカバーが開けられない保護機構を備え、非専門家による機器の内部操作を確実に防止することができる電子機器筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成樹脂製のケース本体と、前記ケース本体の開口部に設けられるカバーと、前記ケース本体側に設けられ、通し穴及びネジ形成穴を備えた本体側ネジ形成部と、前記カバー側に前記本体側ネジ形成部と対向して設けられ、ネジ形成穴を備えたカバー側ネジ形成部からなる特殊ネジ取付部とを具備し、
前記本体側ネジ形成部に設けられたネジ形成穴及びカバー側ネジ形成部に設けられたネジ形成穴は、特殊ネジの呼び径より大きな円弧に均等に3等分した3箇所を直線の辺とし、この辺で囲まれた三角の形状を特殊ネジの呼び径よりも小さく形成し、特殊ネジを螺着できるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特殊ネジ取付部に特殊ネジを使用してケース本体とカバーとを締結することができるので、電子機器を加入者宅に設置した場合であっても、特殊工具がなければ特殊ネジを緩めてカバーを開くことが不可能であり、このため非専門家が電子機器の内部に触れることに起因する機器の故障等を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器例えば光受信端末の外観構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図である。
【0009】
図1において、10は例えばABS樹脂等の合成樹脂により形成した電子機器筐体で、ケース本体11及びカバー12により構成される。上記電子機器筐体10は、例えば住宅の外壁面等に垂直に取付けられて使用される。
【0010】
上記カバー12は、ケース本体11の上面開口部を覆うようにヒンジ13により回動可能に設けられている。ヒンジ13は、ケース本体11の後部両側に設けられ、カバー12を回動可能に保持している。
【0011】
上記ケース本体11の前面側の上部には、弾力性を持たせたフック14が設けられ、カバー12の前端側には上記フック14に対応する位置に開閉操作部15が設けられる。この開閉操作部15には、上記フック14に対応して係止穴16が設けられており、カバー12を閉じた際に開閉操作部15の係止穴16内にフック14が挿入されてカバー12がロックされるようになっている。カバー12を閉じた状態では、フック14の上端が係止穴16より上部に突出しており、フック14の上端をカバー12の例えば前端方向(手前)に押すとロックが解除され、カバー12を上方に回動させて開くことができる。
【0012】
上記ケース本体11内には、図示しないが受信部、電源部等が設けられる。そして、ケース本体11の前面側には、上記受信部に対する光ファイバのドロップケーブル導入溝17及び信号出力用の接栓18、19が設けられる。また、上記電源部に設けられる電源コード20は、ケース本体11内の側部を通ってケース前端側から外部に導出され、その先端に電源プラグ21が接続される。
【0013】
上記ケース本体11の両側及び後端の外側面には、図示しないが防滴用の突条が形成される。また、カバー12の後端内側面にも防滴用の突条が形成される。上記各突条は、カバー12を閉じた際にケース本体11及びカバー12の対向面に相互に接して防滴作用を持つようになっている。
【0014】
そして、上記ケース本体11及びカバー12には、例えば前端左側に特殊ネジ取付部30を構成している。この特殊ネジ取付部30は、上記防滴構造を損なわない部分に形成することが望ましい。また、ケース本体11及びカバー12の前端右側には、相互に対向して位置する結合部22を設け、この結合部22に透孔23を形成する。この透孔23は、ケース本体11及びカバー12の結合部22を貫通するように設けられる。カバー12を閉じた状態で透孔23部分を施錠することにより、カバー12の開放を阻止できるようになっている。上記透孔23に対する施錠は、必要に応じて実施する。
【0015】
次に上記特殊ネジ取付部30の詳細について説明する。
図2は特殊ネジ取付部30の構成を示したもので、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は同図(a)のA−A断面図である。図3(a)は、図2(a)のB−B断面図、(b)は同C−C断面図、(c)は同D−D断面図である。図4は、特殊ネジ取付部30に特殊ネジ29を取付けた場合における図2(a)のA−A断面図である。
【0016】
特殊ネジ取付部30は、図2に示すようにケース本体11に設けた本体側ネジ形成部31とカバー12側に設けたカバー側ネジ形成部32からなっている。本体側ネジ形成部31は、ケース本体11の前端左側において、中央より少し上方部位に円筒状に形成され、その中心部に通し穴33とネジ形成穴34が設けられる。通し穴33は、ネジ形成穴34の開口側に位置し、特殊ネジをそのまま挿入できるように特殊ネジの径より大径に形成される。
【0017】
一方、カバー側ネジ形成部32は、カバー12の前端左側において、本体側ネジ形成部31と対向するように円筒状に形成され、その中心部にネジ形成穴35が設けられる。この場合、ネジ形成穴35の上端側には、特殊ネジの頭部を収納するためのネジ頭部収納部36が設けられる。この場合、本体側ネジ形成部31の上部にカバー側ネジ形成部32の下部が接して設けられ、且つ通し穴33とネジ形成穴34及びネジ形成穴35の中心軸が一致するように設けられる。
【0018】
上記ケース本体11側のネジ形成穴34及びカバー12側のネジ形成穴35は、図5に示すように特殊ネジをセルフタッピングできる形状に形成される。すなわち、特殊ネジの呼び径より大きな円弧41に均等に120°の角度で3等分した3箇所を直線の辺42とした形状をしており、この辺42で囲まれた三角の形状は特殊ネジの呼び径よりも小さくなっている。そのためネジ形成部31、32に特殊ネジを挿入すると、三角の辺42の部分に雌ネジが形成され、ケース本体11とカバー12を締結することができる。また、カバー側ネジ形成部32は、作業者がカバー12を開く際に特殊ネジを緩めた場合に、ネジを保持して脱落を防止する。
【0019】
図5において、破線で示す径43は雄ネジの山の径であり、点線で示す径44は雄ネジの谷の径である。具体的な例として直径が3mmの特殊ネジ(メートル並目)を使用する場合、特殊ネジの呼び径より大きな円弧41は直径φが3.5mm、雄ネジの山の径43は直径φが2.8mmである。
【0020】
図4は、上記カバー側ネジ形成部32及び本体側ネジ形成部31に特殊ネジ29を取付け、カバー12をケース本体11に固定した状態を示している。特殊ネジ29の先端をカバー側ネジ形成部32のネジ形成穴35に当てて特殊工具により締め付けると、特殊ネジ29の先端がネジ形成穴35に雌ネジをセルフタッピングしながら進み、本体側ネジ形成部31の通し穴33を挿通し、ネジ形成穴34に雌ネジを形成して螺着される。この場合、本体側ネジ形成部31の通し穴33は径が大きいので、特殊ネジ29の先端は通し穴33内を通ってネジ形成穴34に雌ネジを形成することができる。特殊ネジ29の締付けを終了した状態では、特殊ネジ29の頭部は、カバー側ネジ形成部32のネジ頭部収納部36内に位置した状態に収まる。
【0021】
セルフタッピングによりネジ止めするためのネジとして、例えば図6に示すようなタッピングネジ51が規格化されている。
このネジは硬度の高いねじ部をもち、強引にねじ込むことで雌ネジが切られていない材料にねじ切りをしながらねじ込んで行くためセルフタッピングネジとも呼ばれるものである。
【0022】
一方、図7は、イタズラ防止用途の特殊ネジ29の一例を示したもので、(a)は側面図、(b)は頭部29a側から見た図である。特殊ネジ29の頭部29aには、例えば複数の穴や多角形の溝等、特殊な形状が形成されており、それに対応した特殊工具を使用しないとネジを締めたり、緩めたり等の回転操作を行なうことができないようになっている。
【0023】
しかし、特殊ネジ29は、通常は一般的な並目ピッチのナットと螺着するものが市販されているため、単に円状のネジ形成穴(下穴)を設けただけではセルフタッピングにより雌ネジが形成されず、螺着することができない。
【0024】
これに対し上記規格化されたタッピングネジには、上記特殊ネジのような頭部が特殊形状のものがない。したがって、上記特殊ネジを電子機器ケースのカバーの固定に用いようとすると、上記通常のネジ目の特殊ネジ29を使用する場合は、対応する雌ネジ部には雌ネジを予めタッピング加工しておくか、雌ネジの部材(ナット等)を埋め込んでおくことが必要となる。セルフタッピングで螺着するのであればタッピングネジ部を有する特殊ネジを特別に注文して製作しもらう必要がある。いずれにしても加工点数の増加や特殊品の使用により製造コストの上昇や効率の低下を招くことになる。
【0025】
このため本実施形態では、特殊ネジ取付部30に図5に示したような特殊形状のネジ形成穴34、35を形成し、合成樹脂製の部材に特殊ネジ29を容易に取付けられるようにしている。
【0026】
以上説明したように上記実施形態によれば、特殊ネジ取付部30に特殊ネジ29を使用してケース本体11とカバー12とを締結することができるので、電子機器を一般加入者宅に設置した場合であっても、特殊工具がなければ特殊ネジ29を緩めてカバー12を開くことが不可能である。このため非専門家が電子機器の内部を操作することに起因する機器の故障等を未然に防止することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、特殊ネジ取付部30をケース本体11及びカバー12の前端左側に設けた場合について説明したが、その他の場所に設けても良いことは勿論である。
【0028】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【0029】
また、本発明の実施形態の説明は一例として光受信端末の筐体について行なったが、適用範囲はこれに限定されるものでなく合成樹脂製のケース、カバーを有する電子機器一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の外観構成を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図である。
【図2】同実施形態における特殊ネジ取付部の構成を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は同図(a)のA−A断面図である。
【図3】(a)は、図2(a)のB−B断面図、(b)は同C−C断面図、(c)は同D−D断面図である。
【図4】同実施形態において、特殊ネジ取付部に特殊ネジを取付けた場合における図2(a)のA−A断面図である。
【図5】同実施形態におけるケース本体側のネジ形成穴及びカバー側のネジ形成穴の形成例を示す図である。
【図6】タッピングネジの外観構成例を示す図である。
【図7】特殊ネジの外観構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10…電子機器筐体、11…ケース本体、12…カバー、13…ヒンジ、14…フック、15…開閉操作部、16…係止穴、17…ドロップケーブル導入溝、18、19…接栓、20…電源コード、21…電源プラグ、22…結合部、23…透孔、29…特殊ネジ、29a…特殊ネジの頭部、30…特殊ネジ取付部、31…本体側ネジ形成部、32…カバー側ネジ形成部、33…通し穴、34、35…ネジ形成穴、36…ネジ頭部収納部、41…円弧、42…辺、43…雄ネジの山の径、44…雄ネジの谷の径、51…タッピングネジ、51a…タッピングネジの頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のケース本体と、
前記ケース本体の開口部に設けられるカバーと、
前記ケース本体側に設けられ、通し穴及びネジ形成穴を備えた本体側ネジ形成部と、前記カバー側に前記本体側ネジ形成部と対向して設けられ、ネジ形成穴を備えたカバー側ネジ形成部からなる特殊ネジ取付部とを具備し、
前記本体側ネジ形成部に設けられたネジ形成穴及びカバー側ネジ形成部に設けられたネジ形成穴は、特殊ネジの呼び径より大きな円弧に均等に3等分した3箇所を直線の辺とし、この辺で囲まれた三角の形状を特殊ネジの呼び径よりも小さく形成し、特殊ネジを螺着できるように構成したことを特徴とする電子機器筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−327555(P2007−327555A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158891(P2006−158891)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】