説明

電子機器

【課題】放熱効果の向上の対応した冷却装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】発熱体を実装した基板とキーボードなどの操作部を搭載した第一筐体2と、表示装置を搭載し第一筐体2の端部に回動支持され所定範囲内の角度で開閉する第二筐体10とを備え、発熱体に熱接続した第一の放熱部であるヒートシンク6を介した放熱と発熱体に熱接続した第二の放熱部である放熱板11を介した放熱の異なる2経路の放熱に第一筐体2の所定の位置に配置したファン装置7の送風を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体の内部に実装された中央処理装置(以下、CPUと称する)、チップセット、表示コントローラ、又はHDDなどの様々な発熱体の強制冷却を目的として液体冷媒の循環を強制的に行い放熱する液冷却装置、又はファンの送風により強制的に放熱するファン装置などを複合又は併用した冷却装置を備えたノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPCと称する)などの電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のコンピュータにおけるデータ処理の高速化の動きはきわめて急速であり、CPUのクロック周波数は以前と比較して格段に大きなものになってきている。その結果、CPUの発熱量が増大し、従来のように放熱部として複数個の放熱フィンから構成されたヒートシンクを発熱体に接触させて放熱する方法だけでなく、そのヒートシンクをファン装置で送風冷却する方法、受熱部からヒートパイプを用いて放熱部に熱接続したヒートシンクモジュールにおいてその放熱部をファン装置により送風冷却する方法、あるいは、液体冷媒をポンプにより強制的に液循環させ受熱部から放熱部へ熱輸送を行ないそれぞれにおいて熱交換をさせる液冷却方式による液冷却装置などが必要不可欠になっており、今後さらにその冷却能力の向上と併せて小型軽量化も必要とされている。
【0003】
さらに、CPU以外でもノートPCの表示装置の高性能化やメモリアクセス性能の向上のためのクロック周波数アップに伴いチップセット、表示コントローラ、又はHDDなどの様々な電子部品などの発熱体についても、冷却の必要性が高まっている。
【0004】
そこで、筐体の内部に実装された発熱体から発生する熱の放熱を行う冷却装置を備えたノートPCとしては、例えば(特許文献1)のように、液冷却装置による第二筐体の表面での自然放熱と併せてその液冷却装置の受熱部にヒートパイプの一方に端部を接続しその他方の端部に接続したヒートシンクまで熱輸送し、そのヒートシンクをファン装置の送風により放熱させるものが提案されている。
【0005】
図8は、そのノートPC101の冷却装置の全体構成図で、発熱体を実装した基板とキーボードなど(図示せず)の操作部を搭載した第一筐体102の内部には、破線で示した発熱体103の上部に熱伝導性グリース(図示せず)を介して受熱部104が熱接続され、その受熱部104が第一の管路105と第二の管路106に接続され、さらにその第一の管路105が表示装置(図示せず)を搭載した第二筐体107内に配管され、液体冷媒を強制循環するポンプ108を経て放熱板109の冷媒入口110に接続されている。
【0006】
つまり、液体冷媒は受熱部104で受熱した後、放熱板109の内部の破線で示した冷媒流路111に送りこまれる。さらに、その蛇行状に屈曲した冷媒流路111の中を流れながら放熱板109との熱交換を行い、冷やされた後に冷媒出口112に接続した第二の管路106を通過して受熱部104に戻される。すなわち、液体冷媒が受熱部104から放熱板109の方向に熱輸送を行っている。そして、放熱板109の熱は第二筐体107に伝わり、その第二筐体107の表面から自然放熱される。
【0007】
一方、受熱部104の上面の嵌合溝104aにはヒートパイプ113の一方の端部113aが嵌め込まれ、そのヒートパイプ113の他方の端部113bにはその外周面に複数の放熱フィンを形成したヒートシンク114が接続されているので、受熱部104の熱の一部がヒートシンク114に伝熱され、そのヒートシンク114の方向にファン装置115を用いて送風し強制的な放熱も行っている。
【0008】
ファン装置115は、金属製のファンケーシング116と遠心式の羽根車117とを備えており、吸込口118より吸気した空気をヒートシンク114に送風する構成となっている。
【0009】
したがって、このノートPC101の場合は、破線で示した発熱体103の強制冷却を目的として液体冷媒の循環を強制的に行い放熱する液冷却装置とファン装置115の送風により強制的に放熱するファン装置を併用することにより効率的な冷却を行っている。
【0010】
また、同様に筐体の内部に実装した発熱体の放熱を行う冷却装置を備えた他のノートPCとしては、例えば(特許文献2)のように、発熱体と熱接続した金属パイプを経由させて、表示部の裏面に蛇行的に配置された放熱板の方向に液体冷媒を循環することにより発熱体より受熱した熱をその放熱板で自然放熱させるのに加え、ファン装置により強制的に風を当てることによりさらに効率的に放熱したものも提案されている。
【0011】
図9は、そのノートPCの冷却装置の全体概略図で、図示しない基板とキーボードなどの操作部を搭載した第一筐体201の内部には発熱体202が実装され、その発熱体202には金属パイプ203が熱接続されており、発熱体202との熱交換により受熱した液体冷媒204は、金属パイプ203を経由して表示装置の搭載された第二筐体205の裏面に実装されている放熱板206にて熱交換を行い、自然放熱により冷却される。
【0012】
その後、冷やされた液体冷媒は第一筐体201に戻り再び発熱体202と熱交換により再度受熱するという動作を繰り返している。また、この自然放熱する放熱板206に対して第一筐体201の突出した背面部に収容されたファン装置207を用いて背面部の上面に設けた通風孔208を通過させて放熱板206の方向に送風し強制的に風を当てることにより、液体冷媒204を効率良く熱交換させることができる。
【特許文献1】特開2004−87841号公報(第12頁、図2)
【特許文献2】特開2004−302726号公報(第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の(特許文献1)記載の冷却装置を備えたノートPCでは、第二筐体の表面からの放熱は自然放熱であるので、発熱体と熱接続したヒートシンクをファン装置により強制冷却する効果を含めても放熱効果を効率的に向上することが困難であるという課題があった。
【0014】
また、従来の(特許文献2)記載の冷却装置を備えたノートPCにおいても、第二筐体の表面の自然放熱に加え、その第二筐体の一部を第一筐体の背面部に収容したファン装置により強制冷却する効果を含めてもやはり放熱効果を効率的に向上することが困難であるばかりでなく、第一筐体の背面部を突出させるので第二筐体より大きくする必要があり、第二筐体を連動させる場合にもヒンジ構造が複雑となるなど小型軽量化にも適さないという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡素な構成でより効率的な放熱効果が得られ、小型軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係わる電子機器は、第一筐体と第二筐体とを開閉可能に連結し、この2つの筐体の少なくともいずれか一方に設けた放熱体と、2つの筐体の双方に設けた発熱体の熱を放熱する放熱部を備えた電子機器であって、第一筐体又は第二筐体のいずれか一方の筐体に配置したファン装置により第一筐体及び第二筐体の放熱部あるいはその放熱部と熱接続した筐体に送風し放熱するように構成したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却装置を備えた電子機器によれば、第一筐体と第二筐体とを開閉可能に連結し、この2つの筐体の少なくともいずれか一方に設けた放熱体と、2つの筐体の双方に設けた発熱体の熱を放熱する放熱部を備えた電子機器であって、第一筐体又は第二筐体のいずれか一方の筐体に配置したファン装置により第一筐体及び第二筐体の放熱部あるいはその放熱部と熱接続した筐体に送風し放熱するように構成したので、簡素な構成でより効率的な放熱効果が得られ、例えば、実装するCPU、チップセット、表示コントローラ、HDDなどの様々な電子部品の小型集積化や性能向上に伴う発熱量の増大にも容易に対応でき、結果としてその電子機器の性能を向上でき、小型軽量化にも対応が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明は、第一筐体と第二筐体とを開閉可能に連結し、この2つの筐体の少なくともいずれか一方に設けた放熱体と、2つの筐体の双方に設けた発熱体の熱を放熱する放熱部を備えた電子機器であって、第一筐体又は第二筐体のいずれか一方の筐体に配置したファン装置により第一筐体及び第二筐体の放熱部あるいはその放熱部と熱接続した筐体に送風し放熱するように構成したことにより、第一筐体の放熱部を介した放熱と第二筐体の放熱部を介した放熱の2経路いずれの放熱に対しても同じファン装置の送風を用いているので、それぞれ強制的な放熱が可能となり、それら2経路の放熱効果を合わせた相乗効果により、簡素な構成でより効率的な放熱効果が得られ、小型軽量化にも対応が容易となる。
【0019】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に従属する発明で、第一筐体の放熱部を介した放熱経路と第二筐体の放熱部を介した放熱経路において、ファン装置の送風路を同一としたことにより、前述した請求項1記載の発明の効果に加え、第一筐体の放熱部を介した放熱経路の送風路と第二筐体の放熱部を介した放熱経路の送風路を同一の送風路で構成しているので、それぞれの送風路を別々に設けることが電子機器内のレイアウト設計上困難な場合にも対応ができ、より設計自由度を増すことができる。
【0020】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明に従属する発明で、第一筐体の第二筐体を回動支持する側の側面に、第二筐体の開閉動作に連動した可動ファンダクトを設けたことにより、前述した請求項1又は2記載の発明の効果に加え、第一筐体の側面に設けた第二筐体の開閉動作に連動した可動ファンダクトがそのファン装置の送風方向を大きく変えてその方向を規制するので、様々な使用態様に応じて第一筐体に対する第二筐体の開き角度が変化しても第二筐体へ所定の風量の送風が可能となり、その放熱効果を維持できる。また、通風孔を確保するため第一筐体の背面部を突出させる構造や、第二筐体を連動させる場合の複雑なヒンジ構造を必要としない簡素な構成であるので、小型軽量化にも対応が容易となる。
【0021】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明に従属する発明で、可動ファンダクトの異なる2方向のそれぞれの面に1乃至複数個の通風孔を設けたことにより、前述した請求項3記載の発明の効果に加え、第一筐体に対する第二筐体の開き角度が略全開となる態様で使用した場合には、可動ファンダクトの第二筐体に近接する側の面に設けた1乃至複数個の通風孔の略全体が塞がれるが、もう一方の面に設けた1乃至複数個の通風孔を通過させて第二筐体へ所定の風量の送風を確保でき、その放熱効果を維持できる。
【0022】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明に従属する発明で、可動ファンダクトの内面に傾斜角度が相互に異なる複数個の送風面を形成し、第二筐体の第一筐体に対する開き角度に対応して送風面がファン装置の送風方向を規制したことにより、前述した請求項3記載の発明の効果に加え、第二筐体の第一筐体に対する開き角度が略90度から全開に近い態様で使用した場合を考慮して、それぞれの第二筐体の開き角度に対応して第二筐体の方向に所定の風量が確保できるので、より冷却効果を維持できる。
【0023】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明に従属する発明で、可動ファンダクトの内面に形成した送風面において、第二筐体の第一筐体に対する開き角度が所定の範囲内で第二筐体の表面と略平行となる送風面の通風幅を他の送風面の通風幅よりも大きくしたことにより、その電子機器に最適でかつ使用頻度が高い態様に対応して第二筐体の方向により大きな風量が確保でき、その使用態様での冷却効果をより高められる。
【0024】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項1又は2記載の発明に従属する発明で、放熱部を設けたいずれかの筐体の表面又は内面に凹凸面を形成したことにより、ファン装置による送風がその放熱部を設けた筐体の表面又は内面に形成した凹凸面に沿って流れるのでその筐体の表面又は内面での空気流の拡散が低減し、加えてその筐体の放熱面の表面積を大きくでき、より放熱効果を高めることができる。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例は、冷却装置を備えた電子機器として、発熱体の強制冷却を目的として液体冷媒の循環を強制的に行い放熱する液冷却装置とファン装置の送風により強制的に放熱するファン装置を併用したノートPCに関するもので、以下、図面を用いて説明する。
【0026】
(実施例1)
図1〜図6において、図1は本発明の実施例1におけるノートPCの全体斜視図で、図2は本発明の実施例1におけるノートPCの平面図で、図3は本発明の実施例1におけるノートPCの側面図で、図4(a)〜(e)は本発明の実施例1におけるノートPCの第二筐体の開き角度と可動ファンダクトの連動の関係を示す図で、図5は本発明の実施例1におけるノートPCの可動ファンダクトの内面に形成した通風面の説明図で、図6は本発明の実施例1におけるノートPCの第二筐体の背面図とラインA−Aの断面拡大図である。
【0027】
図1は、本発明の実施例1におけるノートPCの全体斜視図で、冷却装置を備えたノートPC1の第一筐体2に搭載したキーボード3の下には、図示はしないがCPUなどの発熱体を実装した基板が配置され、その発熱体の上に第一の受熱部4が熱伝導性グリース又は熱伝導シートを介在して置かれ、その第一の受熱部4の上部に接続したヒートパイプ5により第一の放熱部であるヒートシンク6と熱接続されて第一の放熱経路を形成している。
【0028】
そして、第一筐体2のコーナー部に配置したファン装置7が吸気孔7aより吸気した空気を遠心方向に送風してヒートシンク6を通過させ第一筐体2の一方の側面に設けられた複数個の通風孔2aから外部への方向(矢印Aの方向)に送風し強制的な放熱を行っている。
【0029】
ここで、第一の放熱部であるヒートシンク6は、その放熱性を高めるためアルミニウム合金や銅など良好な熱伝導性を有する金属製の複数個の放熱フィンを通風方向に略平行となるように連結配置しており、ファン装置7の送風により強制的に放熱している。
【0030】
つまり、発熱体に熱接続した第一の放熱部であるヒートシンク6を介した第一の放熱経路を形成している。
【0031】
一方、第二の受熱部8は、第一の受熱部4と第一の放熱部であるヒートシンク6の中間に配置され、ヒートパイプ5が伝熱する熱の一部を受熱し、その熱を第二の受熱部8と接続した液体冷媒の循環路9を通じて、表示装置を搭載し第一筐体2の端部に回動支持され所定範囲内の角度で開閉する第二筐体10の内側に配置した第二の放熱部である放熱板11まで熱輸送する第二の放熱経路を形成している。
【0032】
そして、第二の放熱部である放熱板11は、蛇行状に屈曲した液体冷媒の流路11aを内部に形成し、少なくともその放熱板11の一部が第二筐体10と熱接続しているので、第二筐体10にも放熱板11から伝熱し外部の空気中に自然放熱を行っている。
【0033】
さらに、第二筐体10を回動支持する側の第一筐体2の側面、この場合第一筐体2の背面部には、第二筐体10の開閉動作に連動した可動ファンダクト12が設けられており、可動ファンダクト12の第二筐体10に近接する側の上面には複数個の通風孔12aが設けられ、その面とは異なる方向の背面にも通風孔12bが設けられている。
【0034】
そして、ファン装置7の送風は、可動ファンダクト12によりその送風方向が大きく変えられ通風孔12aを通過して第二筐体10の方向(矢印Bの方向)に向けられ、第二の放熱部である放熱板11から伝熱した第二筐体10の表面をその送風により強制的に放熱している。
【0035】
つまり、前述した自然放熱に加え、発熱体に熱接続した第二の放熱部である放熱板11を介した第二の放熱経路を形成している。
【0036】
ただし、この場合において、第二筐体10の下部にメッシュやスリットなどの開口部(図示せず)を設け、ファン装置7の送風を通過させて第二筐体10の内側に配置した第二の放熱部である放熱板11の方向に空気を送ることにより放熱を行ってもよい。
【0037】
図2は、本発明の実施例1におけるノートPCの平面図であり、第一筐体2と第二筐体10に搭載している冷却装置の主要部分を実線で示した図で、以下、図1を補足して説明する。
【0038】
破線で示した発熱体13は、第一の受熱部4の下方に置かれ、その間には前述したように図示しない熱伝導性グリース又は熱伝導シートを介在させ、熱接触性を高めている。
【0039】
次に、発熱体13から第一の受熱部4が受熱した熱は、その第一の受熱部4の上部に接続されその内部に水、エチレングリコール、あるいは腐蝕防止剤などの混合液を充填したヒートパイプ5により伝熱され、さらに第一の放熱部であるヒートシンク6まで熱輸送されそこで放熱している。
【0040】
前述したように、第一の放熱経路は、第一の受熱部4、ヒートパイプ5、及びヒートシンク6で形成され、第二の放熱経路は、第二の受熱部8、液体冷媒の循環路9、放熱板11で形成されている。
【0041】
そして、ファン装置7は、それぞれの放熱経路の放熱部であるヒートシンク6を経由して外部の方向(矢印Aの方向)と可動ファンダクト12を経由して第二筐体10の方向(矢印Bの方向)の異なる2方向へ送風している。
【0042】
図3は、本発明の実施例1におけるノートPCの側面図で、第二筐体10は、第一筐体2の端部に回動軸2bにより回動支持され、第一筐体2の側面に形成した円柱形の凸部2cと第二筐体10の側面に形成した円柱形の凸部10aは、案内板14の両端部に設けられた2個の摺動孔14a、14bにそれぞれ係合し、その案内板14の中間部に設けた摺動孔14cには可動ファンダクト12の側面に設けた円柱形の凸部12cが摺動可能に係合している。
【0043】
また、可動ファンダクト12も、第一筐体2の側面に形成した円柱形の凸部2cの近傍に設けた円柱形の凸部12d(図示せず)を中心に回動して、第二筐体10の開き角度に応じた案内板14の動きに合わせて可動ファンダクト12の側面に設けた円柱形の凸部12cが案内板14の摺動孔14cで摺動しながら案内されるので所定の範囲で連動する構成となっている。
【0044】
ファン装置7は、可動ファンダクト12に隣接する位置に配置され、通気孔7aから吸気した空気をファンダクト12の方向に送風できるようにしている。
【0045】
図4(a)〜(e)は、本発明の実施例1におけるノートPCの第二筐体10の開き角度と可動ファンダクト12の連動の関係を示す図で、図4(a)は第二筐体10の全閉状態図、(b)は第二筐体10の開き角度が略90度の状態図、(c)は第二筐体10の開き角度が略110度の状態図、(d)は第二筐体10の開き角度が略140度の状態図、(e)は第二筐体10の開き角度が略180度の状態図である。
【0046】
ここで、第二筐体10の開き角度に対応して案内板14が可動ファンダクト12を図4(a)〜(e)のそれぞれの図で示すように案内し、可動ファンダクト12の第二筐体10に近接する方の上面に設けられた通風孔12aが第二筐体10の方向に向けられ、それぞれ矢印で示した方向に所定の風量の送風が可能となり、第二筐体10の放熱効果がその開き角度の様々な使用態様に対応して維持できる。
【0047】
つまり、図4(b)に示した第二筐体の開き角度が略90度の場合、あるいは略90度以下の場合でも、第二筐体10の下部にメッシュやスリットなどの開口部(図示せず)を適宜設ければ、ファン装置7から送風され可動ファンダクト12により大きくその送風方向を変えられた空気がその開口部を通過して、放熱板11に送られ、同様に放熱効果を維持できる。つまり、ノートPCの様々な使用態様に対応して第二筐体10の開き角度が変化しても、放熱効果が維持できる。
【0048】
また、図4(e)に示したように、第二筐体10の開き角度が略全開となる態様で使用した場合には、可動ファンダクト12の第二筐体10に近接する側の上面に設けた1乃至複数個の通風孔12aの略全体が塞がれるが、もう一方の面に設けた1乃至複数個の通風孔12bを通過し第二筐体10への矢印で示した送風を確保できるのでその使用態様でも放熱効果を維持する。
【0049】
一方、図4(a)で示したように、第二筐体10の全閉状態では第一筐体2内に可動ファンダクト12の大部分が収容され、第二筐体10を回動支持する側の第一筐体2の背面部を突出させその上面部に通風孔を設ける必要もないので、背面部の突出スペースが不要となり、より第二筐体10の外形寸法を小さくでき電子機器全体を小型軽量化できる。
【0050】
さらに詳しく記述すると、通常ノートPCの操作時における第一筐体2に対する第二筐体10の開き角度は、そのノートPCを操作するオペレータの使用態様により大きく変わる。例えばノートPCの場合、それをオフィスデスク上での通常の使用状態であれば、第一筐体2に対し第二筐体10の開き角度は約100〜120度が最適とされている。
【0051】
しかし、全く異なる用途、例えば、自動搬送設備や各種生産設備などの制御用のシーケンスプログラムをテーチングなどする場合には、ノートPCをプログロマブルコントローラと長いケーブルを用いて接続し、そのままオペレータの足元の床面上に置かれほぼ真上からそのノートPCを操作することもよくあり、そのような使用状態であれば、第二筐体10の開き角度は、第一筐体2に対し120度を超えほぼ全開に近い180度近くで用いられることもよくある。
【0052】
一方、プログラムのコンパイラ作業や未導入のプログラムなどをそのノートPCにインストールする場合などには、比較的長い時間に亘って第二筐体10の第一筐体2に対する開き角度を90度以下にしてキーボードに触れないようにして作業を継続する場合もあるので、それら様々な使用態様に対応して冷却効果を維持することが従来は困難であった。
【0053】
つまり、第二筐体10の第一筐体2に対する開き角度の様々な使用態様に対応して冷却効果を維持することができる。
【0054】
図5(a)〜(c)は、同一の可動ファンダクト12を異なる3方向からみた図で、通風孔12aを有する上面を省略して示しており、図5(a)は可動ファンダクト12の内面に形成した通風面を右側面上方からみた図で、(b)は可動ファンダクト12の内面に形成した通風面を左側面上方からみた図で、(c)は可動ファンダクト12を背面からみた図である。
【0055】
ここで、第二筐体10の第一筐体2に対する開き角度が略垂直から全開に近い90〜180度の範囲で使用された場合、可動ファンダクト12の内面に形成した傾斜角度が相互に異なる3個の送風面12A、12B、12Cを形成しているので、いずれの開き角度においても所定の風量の送風を第二筐体10の方向に確保している。なお、可動ファンダクト12の側面には、円柱形の凸部12c、12dを、背面には、5個の通風孔12bを設けていることを示した。
【0056】
つまり、送風面12Aは図3(b)で示した第二筐体10の開き角度において、送風面12Bは図3(c)で示した第二筐体10の開き角度において、送風面12Cは図3(d)で示した第二筐体10の開き角度において、それぞれ第二筐体10の方向へ所定の風量の送風が確保できるように設定してある。
【0057】
したがって、第二筐体10が第一筐体2に対していずれの態様で使用されてもその放熱効果を維持できる。
【0058】
図6(a)は本発明の実施例1におけるノートPCの第二筐体10の背面図で、(b)はラインA−Aの断面拡大図で、可動ファンダクト12により上方向に大きく方向を変えられ送風される空気が第二筐体10の表面に形成された凹凸面15に沿って矢印Aで示した方向に円滑に流れるので、空気流の拡散が低減し、加えて凹凸面15が第二筐体10の表面積を大きくし空気流による放熱面積を大きくできるのでより放熱効果を向上している。
【0059】
なお、本実施例1の場合は、可動ファンダクト12からの送風領域を含めた一部の領域に凹凸面15を形成しているが、第二筐体10の全面に亘って形成してもよいし、十分な放熱効果が得られれば、もっと狭い領域でも構わない。また、凹凸面15の高さやピッチについても、放熱効果を考慮して適宜設定すればよいし、その領域内で均一である必要もない。
【0060】
なお、この場合は、凹凸面15は、第二筐体10の表面に形成したが、第二筐体10の下部にメッシュやスリットなどの開口部を設け、ファン装置7の送風を通過させて第二筐体10の内側に配置した第二の放熱部である放熱板11の方向に空気を送る場合には、第二筐体10の内面に形成するのも効果的であるし、第二筐体10の外面と内面の両方に形成してもよい。
【0061】
さらに、ファン装置7の配置を、第二筐体10の所定の位置に配置して第一筐体2の方向に送風する場合には、第一筐体2の表面又は内面に凹凸面を形成してもよい。
【0062】
以上説明したような構成によれば、例えば、第二の放熱経路を構成する冷却装置として液体冷媒の循環を強制的に行う液冷却装置を用い第二筐体10での自然放熱を行った場合に比較して、ファン装置7の送風を用い強制的な放熱を行うと、その放熱効果は倍増するので、第一の放熱経路の放熱効果を合わせるとそれ以上の放熱効果を得ることができ、効率的な放熱効果が得られる。
【0063】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2におけるノートPCの平面図で、ファン装置7の第二筐体10への送風路内に破線で示した発熱体13と熱接続した第一の放熱部であるヒートシンク6を設けてあり、異なる2経路の放熱の送風路をファン装置7の同一の送風路で構成しており、第二筐体10の背面の可動ファンダクト12への送風路の一部にヒートシンク6を設けている。
【0064】
以上の構成により、第二筐体10の方向(矢印Bの方向)のみに送風すればよいが、ヒートシンク6を通過することにより、温度上昇した空気が第二筐体10に送風されるので、熱交換が弱まりやや放熱効果は小さくなるものの、第二筐体10の方向への送風路とヒートシンク6の方向への送風路を第一筐体2のコーナー部の側面と背面に別々に設ける必要がないので、そのファン装置7を第一筐体2のコーナー部に配置しなければならないなどの制約がなくなり、第一筐体2の背面の幅方向中央に配置も可能で、その分第一筐体2の設計自由度が増し、狭スペース化への対応も容易となる。
【0065】
つまり、ノートPCの場合であれば、電源用接続端子、PCカード・メモリカード・LANカードなど各種カードの挿入用スロット、又はUSBポートなどの様々な接続端子をオペレータの接続作業性のよい第一筐体2の側面に設けることがより容易となり、それらの接続端子に第二筐体10の内部で接続する各種デバイスのレイアウト設計が容易となる。
【0066】
なお、以上の説明において、本発明の主要な要素である受熱部、ヒートパイプなどの熱接続部、液体冷媒の循環路などの熱輸送部、ヒートシンクや放熱板などの放熱部、それらそれぞれの形態や接続方法については、その冷却装置を組み込む電子機器内の配置スペースや放熱効果を考慮して適宜設定すればよい。
【0067】
例えば、本実施例では、第一の放熱経路として、ヒートパイプとヒートシンクを用いた構成、第二の放熱経路として、液体冷媒の循環路と内部に蛇行状に屈曲した液体冷媒の流路を形成した放熱板を用いた構成としたが、第一筐体と第二筐体は、相互に近設し、それぞれに放熱部を設けていればよく、それぞれの放熱経路の構成も本実施例には限定されず、両方いずれの放熱経路にもヒートパイプとヒートシンクを用いたり、両方いずれも放熱経路にも液体冷媒の循環路と内部に蛇行状に屈曲した液体冷媒の流路を形成した放熱板を用いたりしても問題はなく、それ以外の方式により放熱経路を構成しても構わない。
【0068】
また、本実施例では、液体冷媒の循環を強制的に行い放熱する液冷却装置には、その受熱部に構造も簡単なウエスコ型渦流ポンプを内蔵したが、ポンプは、その液体冷媒の循環路であればどこでもよく、取りつけ場所やポンプの方式にも限定はされない。
【0069】
さらに、ファン装置の配置は第一筐体ではなく、第二筐体の所定の位置に配置して第一筐体方向に送風してもよく、本実施例のような構成に限定されないだけでなく、本実施例では遠心型のファン装置を用いたが、その吸気方向と送風方向についても適宜設定すればよく、所望の風量や送風方向に応じて軸流型のファン装置を用いてもよい。
【0070】
そして、各冷却装置の受熱部、冷媒熱放熱部の形態についても、本実施例に限定はされず、例えば、さらに放熱性の向上を図る目的で、本発明の構成要素であるファン装置とは別のファン装置を第一筐体又は第二筐体いずれかの所定の位置に配置し、第一の放熱経路における放熱部又は第二の放熱経路における放熱部いずれか、あるいはそのどちらの放熱部に対して送風しさらに放熱効果の高めるような構成にしてもよい。
【0071】
最後に、本実施例においては、同一の発熱体の放熱を第一の放熱経路と第二の放熱経路の異なる2経路の放熱により行ったが、それぞれの放熱経路がそれぞれ別々の発熱体の放熱を行うような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、冷却装置を備えた電子機器で、ノートPCだけでなくPDA、ポータブルDVDプレーヤー、カーナビゲーションシステムなど開閉型の表示装置を搭載した各種電子機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1におけるノートPCの全体斜視図
【図2】本発明の実施例1におけるノートPCの平面図
【図3】本発明の実施例1におけるノートPCの側面図
【図4】(a)は第二筐体の全閉状態図、(b)は第二筐体の開き角度が略90度の状態図、(c)は第二筐体の開き角度が略110度の状態図、(d)は第二筐体の開き角度が略140度の状態図、(e)は第二筐体の開き角度が略180度の状態図
【図5】(a)は可動ファンダクトの内面に形成した通風面を右側面上方からみた図、(b)は可動ファンダクトの内面に形成した通風面を左側面上方からみた図、(c)は可動ファンダクトを背面からみた図
【図6】(a)は本発明の実施例1におけるノートPCの第二筐体の背面図、(b)はラインA−Aの断面拡大図
【図7】本発明の実施例2におけるノートPCの平面図
【図8】従来の特許文献1に記載のノートPCの備えた冷却装置の全体構成図
【図9】従来の特許文献2に記載のノートPCの備えた冷却装置の全体概略図
【符号の説明】
【0074】
1 ノートPC
2 第一筐体
2a 通風孔
2b 回動軸
2c 凸部
3 キーボード
4 第一の受熱部
5 ヒートパイプ
6 ヒートシンク
7 ファン装置
7a 吸気孔
8 第二の受熱部
9 液体冷媒の循環路
10 第二筐体
10a 凸部
11 放熱板
11a 液体冷媒の流路
12 可動ファンダクト
12a,12b 通風孔
12c,12d 凸部
12A,12B,12C 通風面
13 発熱体
14 案内板
14a,14b,14c 摺動孔
15 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筐体と第二筐体とを開閉可能に連結し、この2つの筐体の少なくともいずれか一方に設けた放熱体と、2つの筐体の双方に設けた前記発熱体の熱を放熱する放熱部を備えた電子機器であって、前記第一筐体又は前記第二筐体のいずれか一方の筐体に配置したファン装置により前記第一筐体及び前記第二筐体の放熱部あるいはその放熱部と熱接続した筐体に送風し放熱するように構成したことを特徴とした電子機器。
【請求項2】
前記第一筐体の放熱部を介した放熱経路と前記第二筐体の放熱部を介した放熱経路において、前記ファン装置の送風路を同一としたことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第一筐体の前記第二筐体を回動支持する側の側面に、前記第二筐体の開閉動作に連動した可動ファンダクトを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記可動ファンダクトの異なる2方向のそれぞれの面に1乃至複数個の通風孔を設けたことを特徴とする請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記可動ファンダクトの内面に傾斜角度が相互に異なる複数個の送風面を形成し、前記第二筐体の前記第一筐体に対する開き角度に対応して前記送風面が前記ファン装置の送風方向を規制したことを特徴とする請求項3記載の電子機器。
【請求項6】
前記可動ファンダクトの内面に形成した前記送風面において、前記第二筐体の前記第一筐体に対する開き角度が所定の範囲内で前記第二筐体の表面と略平行となる送風面の通風幅を他の送風面の通風幅よりも大きくしたことを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記放熱部を設けたいずれかの筐体の表面又は内面に凹凸面を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−222254(P2006−222254A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34030(P2005−34030)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】