説明

電子機器

【課題】 デジタル回路間におけるクロックスキューを調整することができる電子機器を安価に提供することを目的とする。
【解決手段】 第1クロック信号CK1を遅延させて第2クロック信号を生成する位相調整回路12と、第1クロック信号CK1に同期して動作する制御回路15と、第2クロック信号CK2に同期して動作し、制御回路15との間でデータ入出力を行う制御回路25と、制御回路15,25間の同期を判定する同期判定部153と、この判定結果に基づいて第2クロック信号CK2の遅延量を決定する遅延量制御部141とを備えている。位相調整回路12は、第1クロック信号CK1を遅延させるゲート回路120と、上記遅延量に基づく電源電圧をゲート回路120に供給する電源供給回路121とを備え、ゲート回路120の電源電圧を変化させることにより、制御回路15,25間のクロックスキューを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に係り、更に詳しくは、デジタル回路間におけるクロックスキューを調整可能な電子機器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、2つのデジタル回路が同一のクロック信号に同期して動作している場合、各デジタル回路へ供給されるクロック信号に位相差が生じることにより、これらのデジタル回路間で同期がとれなくなる現象、いわゆるクロックスキューが発生する。クロックスキューが発生しているデジタル回路間ではデータの受け渡しを正常に行うことができなくなる。このようなクロック信号の位相差を解消するためには、一方のデジタル回路へ供給されるクロック信号の位相を調整する必要がある。
【0003】
クロック信号の位相調整は、その周期に比べて十分に短い時間だけ、当該クロック信号を遅延させることによって行うことができる。クロック信号が低速である場合には、他の高速なクロック信号を利用し、高速なクロック信号の所定パルス分だけ、低速なクロック信号を遅らせる方法により、クロック信号の遅延量を調整することができる。
【0004】
しかしながら、クロック信号が高速である場合、この様な方法をとることができない。このため、PLL(Phase Locked Loop)を用いて正弦波の位相を調整し、この正弦波を矩形波に変換することによって、クロック信号の位相調整が行われている(例えば、特許文献1)。また、遅延素子を利用してクロックを遅延させ、接続数の異なる遅延素子のいずれかを選択することにより、クロック信号の位相調整が行われている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−216556
【特許文献2】特開昭59−151219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された位相調整方法では、PLLを用いて正弦波の位相調整を行うことにより、クロック信号の位相調整を行っているため、高コストになるという問題があった。また、特許文献2に記載された位相調整方法では、多数の遅延素子を直列に接続し、これらの遅延素子を動作させるため、チップサイズの増大や消費電力の増大を招くという問題があった。また、遅延素子の接続数を調整することにより遅延量を調整しているため、遅延量を連続的に調整できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、デジタル回路間におけるクロックスキューを調整することができる電子機器を提供することを目的とする。特に、クロック信号の周波数が高い場合であっても、デジタル回路間のクロックスキューを容易に調整することができる電子機器を提供することを目的とする。また、クロック信号の位相調整を簡単な構成により実現し、この様な電子機器を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明による電子機器は、第1クロック信号を生成するクロック生成回路と、第1クロック信号を遅延させて第2クロック信号を生成する半導体ゲート回路と、第1クロック信号に同期して動作する第1デジタル回路と、第2クロック信号に同期して動作し、第1デジタル回路との間でデータ入出力を行う第2デジタル回路と、第1デジタル回路及び第2デジタル回路間の同期を判定する同期判定手段と、上記判定結果に基づいて第2クロック信号の遅延量を決定する遅延量制御手段と、上記遅延量に基づく電源電圧を上記半導体ゲート回路へ供給する電源電圧調整手段とを備えて構成される。
【0009】
この様な構成によれば、第1デジタル回路及び第2デジタル回路間の同期を判定し、この判定結果に基づいて、半導体ゲート回路に供給する電源電圧を制御することにより、半導体ゲート回路における遅延量を変化させ、第2クロック信号の位相を調整することができる。このため、クロック信号が高速である場合であっても、コストを増大させることなく、第1デジタル回路及び第2デジタル回路のクロックスキューを抑制することができる。
【0010】
第2の本発明による電子機器は、上記構成に加え、上記電源電圧調整手段が、温度補償用のサーミスタを有し、上記サーミスタの検出温度に基づいて、上記半導体ゲート回路の電源電圧を制御するように構成される。この様な構成によれば、サーミスタを用いて、半導体ゲート回路に供給する電源電圧を制御し、半導体ゲート回路における遅延量の温度補償を行うことができる。
【0011】
第3の本発明による電子機器は、上記構成に加え、上記同期判定手段が、第1デジタル回路及び第2デジタル回路の一方が、他方へ要求信号を出力した後、上記他方から応答信号を受信するまでのアクセスタイムに基づいて、第1デジタル回路及び第2デジタル回路の同期を判定するように構成される。この様な構成によれば、第1デジタル回路及び第2デジタル回路が互いに同期しているか否かを容易に判別することができる。
【0012】
第4の本発明による電子機器は、上記の構成に加え、上記遅延量制御手段が、上記電源電圧調整手段を制御し、上記同期判定手段の判定結果に基づいて、第1デジタル回路及び第2デジタル回路間でデータ入出力が可能となる遅延量の範囲を求め、上記遅延量の範囲に基づいて、上記半導体素子の遅延量を決定するように構成される。
【0013】
この様な構成によれば、第1デジタル回路及び第2デジタル回路間でデータ入出力が可能となる遅延量の範囲を求め、この遅延量の範囲に基づいて、半導体ゲート回路の電源電圧を制御することにより、第1デジタル回路及び第2デジタル回路をより精度よく同期させることができる。例えば、半導体ゲート回路に対し、上記遅延量の範囲の中央に相当する電源電圧を供給することにより、電源電圧や温度の変動による影響を受け難くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電子機器は、デジタル回路間におけるクロックスキューを調整することができる。特に、クロック信号の周波数が高い場合であっても、デジタル回路間のクロックスキューを容易に調整することができる。また、クロック信号の位相調整を簡単な構成によって実現することにより、クロックスキューの発生を抑制した電子機器を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による電子機器100の一構成例を示したブロック図である。
【図2】図1の電子機器100の要部について詳細な構成例を示したブロック図であり、位相調整回路12、プロセッサ14及び制御回路15の内部の一構成例が示されている。
【図3】図1の電子機器100における遅延量決定処理の一例を示したフローチャートである。
【図4】図3におけるアクセスタイム計測処理(ステップS103)の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施の形態による電子機器100の一構成例を示したブロック図である。電子機器100は、シリアル通信線を介して相互にデータ入出力を行うことができるメイン基板1及びサブ基板2によって構成される。また、サブ基板2で使用されるクロック信号はメイン基板1から供給され、メイン基板1及びサブ基板2間のデータ入出力はクロック同期で行われている。
【0017】
メイン基板1上には、クロック発生器11、位相調整回路12、LVDSドライバ13、プロセッサ14及び制御回路15が設けられている。また、サブ基板2上には、LVDSレシーバ23及び制御回路25が設けられている。
【0018】
クロック発生器11は、第1クロック信号CK1を生成するクロック生成回路である。第1クロック信号CK1は、メイン基板1及びサブ基板2上の各制御回路15,25が、それぞれ同期動作を行うための基準となる周期信号である。例えば、周波数が50MHz以上で、矩形波ではなく正弦波に近い波形からなる第1クロック信号CK1が、水晶発振器を用いて生成される。
【0019】
位相調整回路12は、半導体スイッチング素子の特性を利用して、第1クロック信号CK1を遅延させ、第2クロック信号CK2を生成する遅延手段である。メイン基板1上において位相調整された第2クロック信号CK2をサブ基板2へ供給することにより、メイン基板1及びサブ基板2間のクロックスキューを抑制する。位相調整回路12における遅延量は、プロセッサ14からの遅延制御信号DLによって指定され、この遅延制御信号DLに基づいて、上記半導体スイッチング素子へ供給する電源電圧を調整することにより、クロック信号CK2の位相調整が行われる。このため、第1クロック信号CK1が高速であっても、PLLのような高価な回路を用いることなく、精度の高い位相調整を行うことができる。
【0020】
LVDSドライバ13は、小振幅差動信号方式(LVDS:Low-Voltage Differential Signaling)により、ツイスト線を介して、第2クロック信号CK2をサブ基板2へ送出する送信回路である。LVDSレシーバ23は、LVDSドライバ13からの第2クロック信号CK2を受信し、制御回路25へ出力する受信回路である。小振幅差動信号方式は、送信側から小振幅の差動信号を出力し、受信側では受信信号の一方を反転させて加算する通信方式であり、基板1,2間のデータ転送のように、比較的長距離の高速伝送に適した通信方式である。
【0021】
制御回路15,25は、異なる基板1,2上に設けられたデジタル回路、例えば、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)と呼ばれる半導体集積装置であり、これらの基板1,2を接続する通信ケーブルを介して、双方向のシリアル通信を行うことができる。また、制御回路15,25は、それぞれクロック信号CK1,CK2に同期して動作し、上記シリアル通信もクロック同期で行われる。
【0022】
さらに、制御回路15は、制御回路25との同期を判定し、その判定結果をプロセッサ14に出力する。この同期判定は、制御回路25に対するアクセスタイムやエラーレートに基づいて、互いに同期がとれているか否かを判別する処理であり、プロセッサ14の指示に基づいて行われる。プロセッサ14は、この同期判定の結果に基づいて、位相調整回路12における遅延量を制御する。
【0023】
図2は、図1の電子機器100の要部について詳細な構成例を示したブロック図であり、位相調整回路12、プロセッサ14及び制御回路15の内部の一構成例が示されている。
【0024】
制御回路15は、主制御部151、データ入出力部152及び同期判定部153からなり、第1クロック信号CK1に基づいて動作する同期回路である。主制御部151は、制御回路25と連携し、制御回路15の本来の機能を実現するための回路である。データ入出力部152は、サブ基板2上の制御回路25との間で、データ入出力を行う回路であり、主制御部151及び同期判定部153からの指示に基づいて、シリアル通信を行う。同期判定部153は、プロセッサ14からの指示に基づいて、制御回路15,25の同期を判定する同期判定手段であり、判定結果はプロセッサ14へ出力される。
【0025】
同期判定は、制御回路25に対し、データ書込又はデータ読出を行った場合におけるアクセスタイムやエラーレートに基づいて行われる。例えば、制御回路25の内部レジスタに対し、データを書き込んだ後、当該内部レジスタ内のデータを読み出すという一連の処理を繰り返し、データ書込及びデータ読出が正しく行われたのかを確認する。そして、正しいデータを読み出すことができなかった割合、つまり、エラーレートを求めている。このエラーレートが判定閾値を超えていれば、同期がとれていないと判断し、判定閾値以下であれば、同期がとれていると判断する。
【0026】
また、データ入出力部152が、エラーチェックを行っており、エラー発生時にはデータ読出のアクセスタイムが長くなるという場合、当該アクセスタイムを計測し、このアクセスタイムが判定閾値を超えていれば、同期がとれていないと判断し、判定閾値以下であれば、同期がとれていると判断することもできる。つまり、制御回路25から読出データとともに冗長データが出力され、制御回路15が冗長データに基づいて、読出データのエラーチェックを行い、エラー発生時に再送要求を行っている場合であれば、エラーレートに代えて、アクセスタイムを利用することもできる。なお、制御回路15,25は、互いに完全に同期していなくても、データ書込やデータ読出を一定の確率で行うことができる。このため、複数回のデータ書込又はデータ読出を行って、そのアクセスタイムを計測することにより、同期判定を正確に行うことができる。
【0027】
プロセッサ14は、遅延量制御部141及びD/Aコンバータ142からなる。遅延量制御部141は、同期判定部153の判定結果に基づいて、位相調整回路12における遅延量を決定し、遅延量に応じた遅延制御情報を生成する。この遅延制御情報は、D/Aコンバータ142によってアナログ電圧信号に変換され、遅延制御信号DLとして位相調整回路12へ出力される。
【0028】
遅延量を決定する場合、遅延量制御部141が、同期判定を行う遅延量を決定し、当該遅延量に応じた遅延制御信号DLがプロセッサ14から出力される。次に、遅延量制御部141は同期判定部153に対し同期判定を指示し、その判定結果を取得する。この様にして、2以上の遅延量について、遅延量ごとの同期判定結果を取得することにより、プロセッサ14は、制御回路15,25を互いに同期させることができる遅延量を決定することができる。
【0029】
位相調整回路12は、ゲート回路120及び電源供給回路121からなる。ゲート回路は、第1クロック信号CK1を遅延させて、第2クロック信号CK2を生成する信号遅延手段である。一方、電源供給回路121は、ゲート回路120へ電源を供給する電源電圧調整手段であり、電源電圧を遅延制御信号DLに基づいて制御し、ゲート回路120における遅延量を調整している。
【0030】
ゲート回路120は、半導体スイッチング素子からなる論理回路、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のゲート回路として構成される。このゲート回路120の電源は、電源供給回路121によって供給され、その電圧は、遅延制御信号DLに基づいて制御される。つまり、ゲート回路120における第1クロック信号CK1の遅延量は、遅延制御信号DLによって制御される。
【0031】
このようなゲート回路120では、電源電圧の低下により、半導体スイッチング素子の応答性が低下し、遅延量が増大することがよく知られている。また、電源電圧の低下により、第2クロック信号CK2の振幅が小さくなるため、LVDSドライバ13の閾値に至るまでの時間が長くなる。このようなゲート回路120の特性を利用して遅延量を制御すれば、簡単な構成により、高精度の調整を実現することができる。特に、第1クロック信号CK1波形が、矩形波ではなく正弦波に近い場合には、精度よく遅延量を調整することができる。
【0032】
電源供給回路121は、オペアンプOP、トランジスタTR、抵抗R1〜R3及びサーミスタRtを備え、オペアンプOPからなるボルテージフォロワ回路と、トランジスタTRからなるエミッタフォロワ回路とにより、遅延制御信号DLに応じた電源電圧をゲート回路120に供給する。また、サーミスタRtの抵抗値に応じて、遅延制御信号DLの増幅率を変化させ、温度補償を行っている。
【0033】
オペアンプOPは、反転入力端子及び非反転入力端子を有し、これらの入力端子間の電位差により動作する差動増幅回路である。オペアンプOPの非反転入力端子には、プロセッサ14からの遅延制御信号DLが入力され、反転入力端子は、抵抗R1及びサーミスタRtを介してグランド電位に接続されている。また、出力端子は、トランジスタTRのベース端子に接続され、オペアンプOPの出力電圧は、トランジスタTRのベース−エミッタ間及び抵抗R2を介して、反転入力端子にフィードバックされる。つまり、オペアンプOPは遅延制御信号DLを増幅する非反転増幅回路を構成し、その増幅率は、抵抗R1,R2及びサーミスタRtの抵抗値によって決まる。
【0034】
トランジスタTRは、コレクタ端子が定電圧源に接続され、エミッタ端子が抵抗R3を介してグランド電位に接続されたNPN形のバイポーラトランジスタであり、エミッタフォロワ回路を構成している。このため、トランジスタTRのエミッタ端子に接続されたゲート回路120の電源端子に対し、増幅された遅延制御信号DLを電源電圧として印加することができる。
【0035】
サーミスタRtは、温度に応じて抵抗値が変化する素子であり、温度に応じて、オペアンプOPによる遅延制御信号DLの増幅率を変化させて、ゲート回路120の温度特性を補償する。半導体スイッチング素子の応答特性に温度依存性があることもよく知られており、電源供給回路121に温度補償用のサーミスタRtを用いることによって、ゲート回路120の温度特性に起因する遅延量の変化を抑制することができる。
【0036】
本実施の形態による電子機器では、メイン基板1からサブ基板2へのクロック信号の伝送遅延により、クロックスキューが発生した場合に、ゲート回路120の遅延量に電源電圧依存性があることを利用して、当該クロックスキューを解消することができる。つまり、制御回路15,25を同期させるために必要な遅延量をプロセッサ14が求め、位相調整回路12が、第1クロック信号CK1を遅延させた第2クロック信号CK2を生成することにより、制御回路15,25を同期させている。このとき、制御回路25に入力される第2クロック信号CK2は、制御回路15に入力される第1クロック信号CK1に比べて、その周期の整数倍だけ遅延させた信号になっている。
【0037】
図3のステップS101〜S107は、図1の電子機器100における遅延量決定処理の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、外部からの遅延量決定指示に基づいて実行される。例えば、工場出荷前の製品検査時や、出荷後のメンテナンス時に実行されるものであってもよいし、電子機器100への電源投入時に実行されるものであってもよい。
【0038】
ここでは、遅延制御信号DLを1〜255に変化させ、それぞれの場合について同期判定を行うことにより、制御回路15,25を同期させることができる遅延制御信号DLの範囲を求めている。この様にして求められた範囲の中央値を遅延制御信号DLの最適値とする。
【0039】
まず、遅延量制御部141が、遅延制御信号DLを変化させるための変数jを初期化しる(ステップS101)。ここでは、jを最小値1にしているが、位相調整回路12が動作可能な最低電圧にすることが望ましい。次に、遅延量制御部141からD/Aコンバータ142へ遅延制御情報jが出力され、位相調整回路12へ遅延制御信号DLとして電圧jが出力される(ステップS102)。
【0040】
遅延量制御部141は、D/Aコンバータ142の出力が安定するまで、一定時間待機した後、同期判定部153に対し、同期判定を指示する。この同期判定指示に基づいて、同期判定部153は、データ入出力部152に対し、制御回路25からの所定回数のデータ読出を指示し、そのアクセスタイムを計測する(ステップS103)。次に、同期判定部153は、計測されたアクセスタイムを予め定められた判定閾値と比較し、同期判定を行う(ステップS104)。すなわち、アクセスタイムが判定閾値を超えていれば、同期がとれていないと判定し、判定閾値以下であれば、同期がとれていると判定する。
【0041】
同期判定が終わると、遅延量制御部141は、変数jをカウントアップする(ステップS105)。このとき、jが最大値255を超えなければ、ステップS102に戻り、同様の同期判定を繰り返す(ステップS106)。一方、jが最大値を超えた場合には、255回の判定処理によって求められた同期がとれる遅延量の範囲に基づいて、遅延量を決定する(ステップS107)。例えば、同期がとれていた遅延制御信号DLの範囲の中央値を最適な遅延制御信号DLとする。
【0042】
この様にして、遅延量を変化させながら、同期判定を行うことによって、同期がとれる遅延量の範囲を判別することができる。そして、この遅延量の範囲に基づいて、遅延量を決定することにより、十分なマージンが確保された遅延量を決定することができる。
【0043】
図4のステップS201〜206は、図3におけるアクセスタイム計測処理(ステップS103)の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、遅延量制御部141からの同期判定指示に基づいて、同期判定部153によって実行される。
【0044】
まず、同期判定部153が、アクセスタイムを計測するためのタイマーをクリアする(ステップS201)。また、データ読出の回数を計数するための変数iを初期化し、i=1とする(ステップS202)。次に、データ入出力部152に対し、制御回路25からのデータ読出を指示する。この読出指示に基づいて、データ入出力部152は、制御回路25に対しデータ読出の要求信号を送出し、制御回路25から応答信号を受信する。データ入出力部152は、この応答信号から読出データ及び冗長データを分離し、冗長データを用いて受信エラーをチェックする。このエラーチェックにおいてエラーが検出された場合には、正しいデータが受信できるまで、制御回路25に対し、データ読出又は再送の要求信号の送出を繰り返す。
【0045】
この様にして1回のデータ読出が終わると、同期判定部153は、変数iをカウントアップする(ステップS204)。このとき、iが所定の繰返回数を超えなければ、ステップS203に戻り、同様のデータ読出を繰り返す(ステップS205)。一方、iが繰返回数を超えた場合には、タイマーの計数値を読み出し、所定回数のデータ読出に要したアクセスタイムを取得する(ステップS206)。
【0046】
このようにして、データ読出又はデータ書込のアクセスタイムを求め、判定閾値と比較することにより、同期判定を容易に行うことができる。また、2回以上のデータ読出又はデータ書込を行うのに要したアクセスタイムを計測することにより、同期判定を正確に行うことができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、本発明の好適な適用例として、制御回路15,25が、それぞれ異なる基板1,2上に設けられている場合の例について説明したが、本発明は、この様な場合には限定されない。例えば、制御回路15,25が同一基板上に設けられている電子機器の場合であっても、クロックスキューが発生し得る場合には、本発明を適用することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、メイン基板1からサブ基板2へ、クロック信号がLVDS方式により伝送される場合の例について説明したが、この様な場合には限定されない。つまり、LVDS以外の方法でクロック信号を伝送する電子機器の場合であっても、クロックスキューが発生し得る場合には、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 メイン基板
2 サブ基板
11 クロック発生器
12 位相調整回路
13 LVDSドライバ
14 プロセッサ
15 制御回路
23 LVDSレシーバ
25 制御回路
100 電子機器
120 ゲート回路
121 電源供給回路
OP オペアンプ
TR トランジスタ
141 遅延量制御部
142 D/Aコンバータ
151 主制御部
152 データ入出力部
153 同期判定部
CK1,CK2 クロック信号
DL 遅延制御信号
R1〜R3 抵抗
Rt サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロック信号を生成するクロック生成回路と、
第1クロック信号を遅延させて第2クロック信号を生成する半導体ゲート回路と、
第1クロック信号に同期して動作する第1デジタル回路と、
第2クロック信号に同期して動作し、第1デジタル回路との間でデータ入出力を行う第2デジタル回路と、
第1デジタル回路及び第2デジタル回路間の同期を判定する同期判定手段と、
上記判定結果に基づいて第2クロック信号の遅延量を決定する遅延量制御手段と、
上記遅延量に基づく電源電圧を上記半導体ゲート回路へ供給する電源電圧調整手段とを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記電源電圧調整手段は、温度補償用のサーミスタを有し、上記サーミスタの検出温度に基づいて、上記半導体ゲート回路の電源電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
上記同期判定手段は、第1デジタル回路及び第2デジタル回路の一方が、他方へ要求信号を出力した後、上記他方から応答信号を受信するまでのアクセスタイムに基づいて、第1デジタル回路及び第2デジタル回路の同期を判定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
上記遅延量制御手段は、上記電源電圧調整手段を制御し、上記同期判定手段の判定結果に基づいて、第1デジタル回路及び第2デジタル回路間でデータ入出力が可能な遅延量の範囲を求め、上記遅延量の範囲に基づいて、上記半導体ゲート回路の遅延量を決定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−95965(P2011−95965A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248688(P2009−248688)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】