説明

電子機器

【課題】複数の通信モジュールの間の温度差を低減できる電子機器を得ること。
【解決手段】電子機器は、冷却液が流れる主流路を内部に有する冷却板と、前記冷却板の一主面に前記主流路に沿って配された複数の通信モジュールとを備え、前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記主流路から分配された冷却液がそれぞれ流れる複数のマイクロチャネル流路を内部に有するマイクロチャネルヒートシンクと、前記マイクロチャネルヒートシンクに接触された被冷却素子とを有し、第1の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路は、前記第1の通信モジュールより上流側に配された第2の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路より細い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフェーズドアレイアンテナ(APAA)は、素子アンテナ、通信モジュール(例えば、送信モジュール又は送受信モジュール)、給電回路、アンテナ筐体などから構成されている。そして、この通信モジュールの内部には、FETやMMICなどの半導体素子で構成される高出力増幅器(HPA)が搭載されている。FETやMMICなどの半導体素子はその動作に伴い発熱するため、通信モジュールを安定に動作させるためには、通信モジュールにおける半導体素子を冷却する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通信モジュールにおける半導体素子を冷却するための構造として、冷却液が流れる主流路を内部に有する冷却板を設け、この冷却板上に主流路に沿って複数の通信モジュールを配置したものを考える。この構造では、上流側に配された通信モジュールの近傍から下流側に配された通信モジュールの近傍へ冷却液を流して冷却しており、この冷却液は下流側へいくほどに高発熱部品である半導体素子から熱を吸収して温度が上昇する。すると、上流側に配された通信モジュールに比べて下流側に配された通信モジュールの冷却が不十分となり、複数の通信モジュールの間で温度分布の勾配が生じ、複数の通信モジュールの間で半導体素子の電気特性にばらつきが生じる傾向にある。これにより、複数の通信モジュールを含むフェーズドアレイアンテナ(電子機器)の全体として十分に性能を発揮させることが困難となる。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の通信モジュールの間の温度差を低減できる電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる電子機器は、冷却液が流れる主流路を内部に有する冷却板と、前記冷却板の一主面に前記主流路に沿って配された複数の通信モジュールとを備え、前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記主流路から分配された冷却液がそれぞれ流れる複数のマイクロチャネル流路を内部に有するマイクロチャネルヒートシンクと、前記マイクロチャネルヒートシンクに接触された被冷却素子とを有し、第1の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路は、前記第1の通信モジュールより上流側に配された第2の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路より細いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下流へ行くほど高熱伝達化により冷却性能の向上を図ることができ、上流と下流との通信モジュールの温度勾配を無くすことが可能となる。すなわち、複数の通信モジュールの間の温度差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施の形態にかかる電子機器の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかる電子機器の構成を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態における複数の通信モジュールの温度分布を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態の変形例における通信モジュールの構成を示す図である。
【図5】図5は、比較例にかかる電子機器の構成を示す図である。
【図6】図6は、比較例における複数の通信モジュールの温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
実施の形態.
実施の形態にかかる電子機器1について図1を用いて説明する。図1(a)は、電子機器1の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、電子機器1の構成を示す分解斜視図である。
【0010】
電子機器1は、例えば複数の高発熱部品を含むフェーズドアレイアンテナである。冷却液循環ポンプ9は、図1(a)に示すように、各高発熱部品を冷却するための冷却液が電子機器1の内部を通って冷却液循環ポンプ9との間で循環するようにしている。
【0011】
電子機器1では、図1(b)に示すように、筐体5及びプレートPLに囲まれた空間内に複数のブロック体BLが収容されている。プレートPLでは、複数の通信素子2が2次元的に配列されている。通信素子2は、例えば、アンテナ素子である。
【0012】
各ブロック体BLは冷却板4及び複数の通信モジュール3を有している。複数の通信モジュール3は、筐体5及びプレートPLに囲まれた空間内に収容されたときにプレートPLにおける複数の通信素子2と対応して位置するように、冷却板4の上に配されている。各通信モジュール3は、例えば、送信モジュール又は送受信モジュールである。
【0013】
次に、各ブロック体BLの構成について図2(a)を用いて説明する。図2(a)は、左側が上流側、右側が下流側となるようにブロック体BLを配置した場合のブロック体BLの断面構成を示す図である。
【0014】
冷却板4は、主流路41を内部に有する。主流路41には、冷却液循環ポンプ9(図1(a)参照)により冷却液が流される。例えば、図1(b)に示す冷却板4では、図1(b)中の上から下へ向かう方向に冷却液が流される。
【0015】
冷却板4の一主面4a上には、図2(a)に示すように、複数の通信モジュール3b〜3dが主流路41に沿って配されている。また、冷却板4の一主面4aと反対側の主面4b上には、図2(a)に示すように、複数の通信モジュール3e〜3gが主流路41に沿って配されている。以下では、一主面4a上に配された複数の通信モジュール3b〜3dを中心に説明するが、反対側の主面4b上に配された複数の通信モジュール3e〜3gについても同様である。
【0016】
複数の通信モジュール3b〜3dは、図2(b)〜(e)に示すように、基本的な構成が共通している。
【0017】
例えば、図2(b)に示すように、通信モジュール3bは、ケーシング13内にマイクロチャネルヒートシンク7及び半導体素子(被冷却素子)6を有している。マイクロチャネルヒートシンク7は、複数のマイクロチャネル流路8b1、8b2を内部に有する。各マイクロチャネル流路8b1、8b2には、主流路41から分配された冷却液が流れる。半導体素子6は、高発熱部品であり、マイクロチャネルヒートシンク7に接触されることで冷却される。
【0018】
また、図2(e)に示すように、通信モジュール3bは、複数の第1の連通路11及び複数の第2の連通路12を有する。各第1の連通路11は、第2の連通路12の上流側で、対応するマイクロチャネル流路8b1、8b2と主流路41とを連通する。各第2の連通路12は、第1の連通路11の下流側で、対応するマイクロチャネル流路8b1、8b2と主流路41とを連通する。
【0019】
また、複数の通信モジュール3b〜3dは、図2(b)〜(e)に示すように、上流側と下流側とで次の点が異なる。
【0020】
例えば、下流側の通信モジュール3cにおける各マイクロチャネル流路8c1〜8c4は、上流側の通信モジュール3bにおける各マイクロチャネル流路8b1、8b2より細い。あるいは、例えば、下流側の通信モジュール3dにおける各マイクロチャネル流路8d1〜8d6は、上流側の通信モジュール3cにおける各マイクロチャネル流路8c1〜8c4より細い。マイクロチャネル流路を細く(流路幅を狭く)するほどマイクロチャネルヒートシンク7の熱抵抗は下がっていくため、パラメータを適切に設定し冷却板4の下流へ行くほどマイクロチャネルヒートシンク7の性能を上げることができる。
【0021】
例えば、下流側の通信モジュール3cにおけるマイクロチャネル流路8c1〜8c4の数(例えば、4つ)は、上流側の通信モジュール3bにおけるマイクロチャネル流路8b1、8b2の数(例えば、2つ)より多い。あるいは、例えば、下流側の通信モジュール3dにおけるマイクロチャネル流路8d1〜8d6の数(例えば、6つ)は、上流側の通信モジュール3cにおけるマイクロチャネル流路8c1〜8c4の数(例えば、4つ)より多い。マイクロチャネル流路の数を多くするほどマイクロチャネルヒートシンク7の冷却能力が向上するため、パラメータを適切に設定し冷却板4の下流へ行くほどマイクロチャネルヒートシンク7の性能を上げることができる。
【0022】
このように、パラメータを適切に設定し冷却板の下流へ行くほどマイクロチャネルヒートシンクの性能を上げることで、下流へ行くほど上昇する冷却液の温度を相殺でき、モジュールの温度を均一にできる。
【0023】
次に、マイクロチャネルヒートシンク7のパラメータと冷却性能との関係について説明する。マイクロチャネルヒートシンク7の熱抵抗Rfiは対流熱伝達による熱抵抗Rfと冷媒(冷却液)の熱輸送による熱抵抗Raを用いて、壁面温度と冷却液入口温度の対数平均温度差から下記の式(1)で表すことができる。
【0024】
Ra
Rfi=─────────── ・・・(1)
1−exp(−Ra/Rf
【0025】
式Rfiを小さくするには、式(1)に示されるように、Ra、Rfをバランス良く下げる必要がある。対流熱伝達による熱抵抗Rfは下記の式(2)で表すことができる。第一項はヒートシンクのフィン部の熱抵抗、第二項はヒートシンクのベース部の熱抵抗を表している。
【0026】
Ra Hb
Rf=────────+──── ・・・(2)
hf×(Ao+Af×φ) λHS×Ab
式(2)において、hfはマイクロチャネルヒートシンクのフィン部の熱伝達率である。Afはマイクロチャネルヒートシンクのフィン部の表面積である。Aoはマイクロチャネルヒートシンクのフィン部を除いたベース面積である。φはフィン効率である。Hbはマイクロチャネルヒートシンクのベース厚さである。λHSはマイクロチャネルヒートシンクの熱伝導率である。Abはマイクロチャネルヒートシンクのベース面積である。
【0027】
また、マイクロチャネルヒートシンクの熱伝達率hfは、下記の式(3)で表すことができる。
【0028】
Nu×λf
hf=──── ・・・(3)

式(3)において、Dはマイクロチャネル流路の等価直径である。Nuはヌセルト数である。λfは冷却液の熱伝導率である。
【0029】
対流熱伝達による熱抵抗Rfを下げるためには、式(2)に示されるように、対流熱伝達率hfを上げることが効果的である。対流熱伝達率hfを上げるためには、式(3)に示されるように、マイクロチャネル流路の等価直径Dを小さくすることが効果的である。
【0030】
もう一つのパラメータである冷媒の熱輸送による熱抵抗Raは下記の式(4)で表すことができる。
【0031】

Ra=────── ・・・(4)
Cp×ρ×V
式(4)において、Cpは冷却液の比熱である。ρは冷却液の密度である。Vは冷却液の体積流量である。
【0032】
熱抵抗を下げるためには、式(4)に示されるように、冷却液の流量を増やすことが効果的である。
【0033】
一方、マイクロチャネルヒートシンクの圧力損失は管内の摩擦損失から下記の式(5)で表すことができる。
【0034】
ΔP=f×(4L/D)×((1/2)ρv) ・・・(5)
式(5)において、Lはマイクロチャネルの流路長さである。vは冷却液の流速である。
【0035】
マイクロチャネルヒートシンクの圧力損失を小さくするには、式(5)に示されるように、マイクロチャネル流路の等価直径Dを大きくことや冷却液の流速(流量)を小さくすることが効果的である。
【0036】
従ってマイクロチャネルヒートシンクの設置場所ごとに、マイクロチャネル流路の等価直径Dを適切に設定することで、上流と下流とで冷却性能を制御し、図3に示すように通信モジュールの温度を上流と下流とで均一にでき、かつ機器全体として圧力損失を低減させることが可能となる。
【0037】
ここで、仮に、図5に示すように、複数の通信モジュール903b〜903dがマイクロチャネルヒートシンク7を有さない場合を考える。この場合、冷却板904内の主流路9041における上流側の通信モジュール903bの近傍から下流側の通信モジュール903bの近傍へ冷却液を流して冷却しており、この冷却液は下流側へいくほどに高発熱部品である半導体素子から熱を吸収して温度が上昇する。すると、上流側に配された通信モジュール903bに比べて下流側に配された通信モジュール903dの冷却が不十分となり、複数の通信モジュール903b〜903dの間で図6に示すような温度分布の勾配が生じる。これにより、複数の通信モジュール903b〜903dの間で半導体素子の電気特性にばらつきが生じる傾向にあるので、複数の通信モジュールを含む電子機器(フェーズドアレイアンテナ)の全体として十分に性能を発揮させることが困難となる。
【0038】
それに対して、実施の形態では、通信モジュール内部の高発熱部品である半導体素子ごとに直下にマイクロチャネルヒートシンクを埋め込み、冷却板から各マイクロチャネルヒートシンクへ冷却液を分配する構成とし、マイクロチャネルヒートシンクのマイクロチャネル流路を冷却板の下流へ行くほど細くする。また、マイクロチャネルヒートシンクのマイクロチャネル流路の数を冷却板の下流へ行くほど多くする。これにより、下流へ行くほど高熱伝達化により冷却性能の向上を図ることができ、図3に示すように、上流と下流との通信モジュールの温度勾配を無くすことが可能となる。すなわち、複数の通信モジュールの間の温度差を低減できる。
【0039】
したがって、複数の通信モジュールを含む電子機器の全体として、安定した電気特性が得られるとともに、モジュールの温度を自在に制御できることから、電気特性を自在に制御することが可能となる。
【0040】
あるいは、仮に、複数の通信モジュール3b〜3dのそれぞれが、多数の細い各マイクロチャネル流路を有するマイクロチャネルヒートシンクを有している場合について考える。この場合、複数のマイクロチャネルヒートシンクへ冷却液を流す場合、極小の各マイクロチャネル流路に冷却液を流さなければならないため、高圧力損失となり、冷却液循環ポンプ9の大型化を招く傾向にある。
【0041】
それに対して、実施の形態では、マイクロチャネルヒートシンクのマイクロチャネル流路を冷却板の上流へ行くほど太くする。これにより、上流へ行くほど圧力損失を低減させることができるので、電子機器の全体として低圧力損失化を図ることができる。この結果、冷却液循環ポンプ9の小型化が可能となる。
【0042】
また、実施の形態では、各通信モジュールにおいて、各第1の連通路11は、第2の連通路12の上流側で、対応するマイクロチャネル流路8b1、8b2と主流路41とを連通する。各第2の連通路12は、第1の連通路11の下流側で、対応するマイクロチャネル流路8b1、8b2と主流路41とを連通する。これにより、主流路41の冷却液を各マイクロチャネル流路へ分配でき、マイクロチャネル流路を通った冷却液を主流路41へ戻すことができる。
【0043】
なお、電気機器1iの各通信モジュールにおける複数の第1の連通路及び複数の第2の連通路は、図4に示すような構成を有していても良い。例えば、通信モジュール3biにおいて、各第1の連通路11iは、上流側から下流側へ徐々にマイクロチャネル流路へ近づくように傾斜して延びていてもよい。また、各第2の連通路12iは、上流側から下流側へ徐々にマイクロチャネル流路から遠ざかるように傾斜して延びていてもよい。これにより、圧力損失をさらに低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる電子機器は、電子機器の冷却に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 電子機器
2 通信素子
3、3b〜3g 通信モジュール
4 冷却板
4a、4b 主面
5 筐体
6 半導体素子
7 マイクロチャネルヒートシンク
8b1〜8d6 マイクロチャネル流路
9 冷却液循環ポンプ
11 第1の連通路
12 第2の連通路
41 主流路
903b〜903d 通信モジュール
904 冷却板
9041 主流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液が流れる主流路を内部に有する冷却板と、
前記冷却板の一主面に前記主流路に沿って配された複数の通信モジュールと、
を備え、
前記複数の通信モジュールのそれぞれは、
前記主流路から分配された冷却液がそれぞれ流れる複数のマイクロチャネル流路を内部に有するマイクロチャネルヒートシンクと、
前記マイクロチャネルヒートシンクに接触された被冷却素子と、
を有し、
第1の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路は、前記第1の通信モジュールより上流側に配された第2の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路より細い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
第1の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路の数は、前記第1の通信モジュールより上流側に配された第2の通信モジュールにおけるマイクロチャネル流路の数より多い
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の通信モジュールのそれぞれは、
前記主流路と前記複数のマイクロチャネル流路とを連通する複数の第1の連通路と、
前記複数の第1の連通路より下流側で、前記主流路と前記複数のマイクロチャネル流路とを連通する複数の第2の連通路と、
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222234(P2012−222234A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88304(P2011−88304)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】