説明

電子機器

【課題】コイルスプリングや板バネを用いないクリック機構を実現することで、電子機器の小型化を図るとともに、組立性の向上を図る仕組みを提供する。
【解決手段】デジタルカメラの操作部材10は、周方向に複数のクリック溝10abが形成される操作ダイアル10aと、操作ダイアル10aを回転可能に保持する保持部材10cと、を備える。保持部材10cには、クリック溝10abに係脱可能な鋼球10fを収納する収納部10caを形成し、操作ダイアル10aを回転させると、収納部10caが弾性変形することで、鋼球10fをクリック溝10abに係合する方向に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等の電子機器では、例えば機器本体の背面にLCD等の表示装置を配置し、表示装置に隣接する位置に操作入力装置を配置するものがある。
【0003】
ところで、近年の電子機器の高機能化により、表示装置が大画面化し、また、操作入力装置についても回転操作部材や押圧操作部材等の複数の操作部材が表示装置に隣接して配置される。
【0004】
また、回転操作部材には、回転操作時にユーザに対してクリック感を付与するクリック機構を備えるものが多く、この場合、機器本体の内部にクリック機構の占有スペースを確保する必要がある。このため、上述した表示装置の大画面化や操作部材の複雑化とあいまって電子機器の大型化を招く原因になる。
【0005】
そこで、回転軸部に周方向設けられた複数の凹部からなる係合部と、係合部に径脱可能に係合する鋼球と、鋼球を係合部側に付勢するコイルスプリングや板バネとを有するクリック機構を備える電子機器が提案されている。
【0006】
この提案では、操作部材の回転操作に伴い、コイルスプリングや板バネにより付勢された鋼球が係合部と係脱を繰り返すことでクリック感を得ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−327218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1では、コイルスプリングや板バネについて、強度や耐久性を考慮すると、充分な大きさや長さが必要となる。このため、コイルスプリングや板バネの収納スペースが大きくなり、電子機器の大型化を招くことになる。
【0009】
また、上記特許文献1では、コイルスプリングや板バネが小さいため、組付けが難しく、部品の紛失等による組立性の悪化が問題となる。
【0010】
そこで、本発明は、コイルスプリングや板バネを用いないクリック機構を実現することで、電子機器の小型化を図るとともに、組立性の向上を図る仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、操作部材を備える電子機器であって、前記操作部材は、複数の第1のクリック溝が周方向に形成される操作ダイアルと、前記操作ダイアルを回転可能に保持する保持部材とを備え、前記保持部材には、前記第1のクリック溝に係脱可能な係合部材を収納する収納部を形成し、前記操作ダイアルを回転させると、前記第1の収納部が弾性変形することで、前記係合部材を前記第1のクリック溝に係合する方向に付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリック機構にコイルスプリングや板バネを必要としないため、電子機器の小型化を図ることができるとともに、組立性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の電子機器の第1の実施形態であるデジタルスチルカメラを正面側から見た斜視図、(b)は(a)に示すデジタルスチルカメラを背面側から見た斜視図である。(c)は、(b)に示すデジタルスチルカメラの背面カバーを取り外した状態を斜め下方向から見た斜視図である。
【図2】(a)は複合操作部材を斜め上から見た分解斜視図、(b)は複合操作部材を斜め下から見た分解斜視図である。
【図3】環状マグネットの平面図である。
【図4】(a)は複合操作部材をカメラ本体に組み込んだ状態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】図4(b)のC−C線断面図である。
【図6】(a)は本発明の電子機器の第2の実施形態であるデジタルスチルカメラにおける複合操作部材を斜め上から見た分解斜視図、(b)は複合操作部材を斜め下から見た分解斜視図である。
【図7】(a)は複合操作部材をカメラ本体に組み込んだ状態を示す平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の電子機器の第1の実施形態であるデジタルスチルカメラを正面側から見た斜視図、図1(b)は図1(a)に示すデジタルスチルカメラを背面側から見た斜視図である。図1(c)は、図1(b)に示すデジタルスチルカメラの背面カバーを取り外した状態を斜め下方向から見た斜視図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態のデジタルスチルカメラは、カメラ本体1の正面側(被写体側)に、レンズ鏡筒2やストロボ発光窓3等が設けられ、カメラ本体1の上面には、レリーズボタン5等が設けられている。
【0017】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、カメラ本体1の背面には、LCD等の表示装置4、操作ボタン群9、撮影モード設定レバー7、及び複合操作部材10等が設けられている。複合操作部材10は、十字キー操作、回転操作、及び押圧操作が可能とされている。
【0018】
図2(a)は複合操作部材10を斜め上から見た分解斜視図、図2(b)は複合操作部材10を斜め下から見た分解斜視図である。
【0019】
図2に示すように、複合操作部材10は、フレキシブル配線基板12、操作ダイアル保持部材10c、摺動プレート10d、操作ダイアル10a、押圧ボタン10b、及びカバー部材10gを備える。
【0020】
フレキシブル配線基板12には、カメラ本体1を構成するシャーシ11に突設された位置決め軸11aに嵌合される嵌合穴12bが形成されている。フレキシブル配線基板12には、略中央部に金属ドームスイッチ10e1が実装され、また、金属ドームスイッチ10e1の上下左右(十字)にもそれぞれ金属ドームスイッチ10e2が実装されている。
【0021】
金属ドームスイッチ10e1,10e2の頂点には、スウィートスポットを広げるためのアクチュエータ10eaが取り付けられている。また、フレキシブル配線基板12には、磁界の強さの変化を検出するホール素子等の検出素子12aが所定の位置に複数(本実施形態では、2カ所)実装されている。
【0022】
操作ダイアル保持部材10cの外周部には、フランジ10ceが径方向外側に突設されており、フランジ10ceに形成された穴がフレキシブル配線基板12から突出する位置決め軸11aに嵌合される。これにより、操作ダイアル保持部材10cがフレキシブル配線基板12上に位置決めされる。ここで、操作ダイアル保持部材10cは、エラストマー等の弾性材料で形成されている。
【0023】
操作ダイアル保持部材10cには、フレキシブル配線基板12の金属ドームスイッチ10e1に対向する穴10cdが形成されている。また、操作ダイアル保持部材10cの裏面側には、4つの金属ドームスイッチ10e2を押すための押し軸10ccが設けられている。
【0024】
更に、操作ダイアル保持部材10cの表面側の外周部には、鋼球収納部10caが4つの押し軸10ccに対して45°位相をずらして周方向に略等間隔で4カ所設けられている。鋼球収納部10caの内側を向く面には、鋼球10fを収納する凹部が形成されている。ここで、鋼球10fは、本発明の係合部材の一例に相当する。
【0025】
また、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caの内側には、押圧ボタン10bを保持する保持部10cbが周方向に略等間隔で4カ所設けられている。保持部10cbの外側を向く面にも、鋼球10fを収納する凹部が形成されている。
【0026】
本実施形態では、複数の鋼球収納部10caの凹部および複数の保持部10cbの凹部のいずれかを選択して鋼球10fを圧入等により収納する。ここで、複数の鋼球収納部10caは、それぞれ後述する操作ダイアル10aのクリック溝10abと鋼球10fとの間に発生するクリック力が異なるように配置される。
【0027】
例えば、複数の鋼球収納部10caと操作ダイアル10aの回転軸との距離を夫々異なせたり、もしくは複数の鋼球収納部10caの肉厚を夫々異なせたりしている。これにより、量産のロットや部品形状寸法のバラツキ等に応じてクリック力を調整出来る為、クリック力の管理や組付け作業が煩雑になるのを防止することができる。
【0028】
摺動プレート10dは、円盤状に形成され、複数の鋼球収納部10caと複数の保持部10cbとの間で、操作ダイアル保持部材10cの上に重なるように配置される。摺動プレート10dは、摩擦係数の小さい金属材料で形成され、操作ダイアル10aが回転操作された際の摺動抵抗を小さくする。摺動プレート10dの外周部に突設された位置決め部10daがシャーシ11の位置決め軸11aに嵌合することで、摺動プレート10dは、操作ダイアル保持部材10cに位置決めされる。摺動プレート10dは、上述した鋼球収納部10caの凹部または保持部10cbの凹部に鋼球10fを圧入する前に、操作ダイアル保持部材10cの上に重なるように配置される。これによって、摺動プレート10dを操作ダイアル保持部材10cに組み付ける際に、摺動プレート10dの縁を鋼球10fで損傷させることがない。
【0029】
摺動プレート10dが操作ダイアル保持部材10c上に位置決めされると、摺動プレート10dの外周部が鋼球収納部10caの凹部より下側に当接し、摺動プレート10dの内周部が保持部10cbの凹部より下側に当接する。
【0030】
操作ダイアル10aは、二重円筒形状に形成されている。操作ダイアル10aの外周部にクリック溝10abが周方向に略等間隔で複数形成されている。(本実施形態では、8つ)操作ダイアル10aの内周部にも、クリック溝10acが周方向に略等間隔で複数形成されている。(本実施形態では、8つ)ここで、クリック溝10abは、本発明の第1のクリック溝の一例に相当し、クリック溝10acは、本発明の第2のクリック溝の一例に相当する。
【0031】
摺動プレート10dを操作ダイアル保持部材10cの上に配置し、鋼球収納部10caまたは保持部10cbの凹部に鋼球10fを圧入した後、操作ダイアル10aは、摺動プレート10dの上に重なるように配置される。したがって、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caと保持部10cbとの間には、摺動プレート10dと操作ダイアル10aとが重なって配置される。
【0032】
鋼球収納部10caの凹部に鋼球10fを収納した場合には、鋼球収納部10caと保持部10cbとの間に、操作ダイアル10aを配置すると、操作ダイアル10aの外周部は、鋼球収納部10caに収納された鋼球10fを径方向外側に押す。これによって、鋼球収納部10caは径方向外側方向に弾性変形した状態で、操作ダイアル保持部材10cは操作ダイアル10aを保持する。このとき、鋼球収納部10caの凹部に収納される鋼球10fは、操作ダイアル10aに形成されるクリック溝10abに係合可能な状態となる。
【0033】
一方、保持部10cbの凹部に鋼球10fを収納した場合には、鋼球収納部10caと保持部10cbとの間に、操作ダイアル10aを配置すると、操作ダイアル10aの内周部は、保持部10cbに収納された鋼球10fを径方向内側に押す。これによって、保持部10cbは径方向内側に弾性変形した状態で、操作ダイアル保持部材10cは操作ダイアル10aを保持する。このとき、保持部10cbの凹部に収納される鋼球10fは、操作ダイアル10aに形成されるクリック溝10acに係合可能な状態となる。
【0034】
操作ダイアル10aは、操作ダイアル保持部材10cに回転可能に保持される。操作ダイアル10aを回転操作すると、鋼球収納部10caの凹部に収納される鋼球10fとクリック溝10abとの間で、係脱を繰り返すとともに、保持部10cbの凹部に収納される鋼球10fとクリック溝10acとの間で、係脱を繰り返す。これによって、操作ダイアル10aの回転操作の際に、クリック力を得ることができる。
【0035】
操作ダイアル10aの裏面には、環状マグネット10aaがインサート成形されている。本実施形態では、環状マグネット10aaは、図3に示すように、周方向にN極とS極とが交互に8極ずつ着磁され、着磁パターンの角度ピッチが22.5°とされている。
【0036】
また、フレキシブル配線基板12に2つの検出素子12aが周方向に168.75°離間して実装されている。操作ダイアル10aの回転操作に伴って、環状マグネット10aaが回転することで、検出素子12aに加わる磁場が変化して、回転量と回転方向を検出するロータリエンコーダとして機能する。
【0037】
なお、操作ダイアル10aに取り付けられた摺動子(ブラシ)が摺動パターン上を摺接して回転量と回転方向を検出するロ−タリエンコーダであっても良い。
【0038】
押圧ボタン10bは、フレキシブル配線基板12の略中央部に実装された金属ドームスイッチ10e1を押すための押し軸10baを有する。ここで、押し軸10baは、本発明の押圧部の一例に相当する。押圧ボタン10bを操作ダイアル10aの中央に挿入すると、押し軸10baは操作ダイアル保持部材10cの中心部の穴10cdを貫通する。このとき、押圧ボタン10bの保持片10bbは、操作ダイアル保持部材10cの保持部10cbで保持されて、押圧ボタン10bの回転止めがなされる。これによって、操作ダイアル保持部材10cは、押圧ボタン10bを押圧可能に保持する。
【0039】
カバー部材10gは、操作ダイアル10aと押圧ボタン10bの間に挿入され、3カ所の保持爪10gaが操作ダイアル保持部材10cに形成される係止穴10cfに係合する。これによって、カバー部材10gは操作ダイアル保持部材10cに対する回転が規制される。また、カバー部材10gの内周部には、押圧ボタン10bのフランジ部10bcに係合することで押圧ボタン10bの抜け止めとして機能する段差が設けられている。
【0040】
本実施形態では、操作ダイアル保持部材10cとカバー部材10gとの間に摺動プレート10d、操作ダイアル10a、押圧ボタン10bを挟んだ状態で、カバー部材10gの保持爪10gaが操作ダイアル保持部材10cにスナップフィット結合される。
【0041】
図4(a)は複合操作部材10をカメラ本体1に組み込んだ状態を示す平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図、図5は図4(b)のC−C線断面図である。
【0042】
図4に示すように、複合操作部材10をカメラ本体1に組み付けた状態では、操作ダイアル保持部材10c、摺動プレート10d、押圧ボタン10bおよびカバー部材10gの回転が規制され、操作ダイアル10aのみの回転操作が可能となる。
【0043】
そして、複合操作部材10のフレキシブル配線基板12以外の部分は、位置決め軸11aに拘束されて揺動可能とされている。
【0044】
したがって、操作ダイアル10aの上下左右いずれかの部分を押すことで、操作ダイアル10aが押した方向に傾いて操作ダイアル保持部材10cの4つの押し軸10cbのいずれかで金属ドームスイッチ10e2が押され、これにより、4方向キーとして機能する。また、押圧ボタン10bを押圧操作することで、押圧ボタン10bの押し軸10baにより金属ドームスイッチ10e1が押されることになる。
【0045】
更に、操作ダイアル10aを回転操作すると、操作ダイアル10aの外周部が鋼球収納部10caに収納された鋼球10fに対して摺動しながら回転する。このとき、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caは、操作ダイアル10aの外周部により鋼球10fを介して径方向Bの外側に押されて弾性変形しているため、径方向内側への付勢力を発生させている。
【0046】
操作ダイアル10aのクリック溝10abが鋼球10fの位置に達すると、鋼球収納部10caの径方向内側への付勢力によりクリック溝10abに鋼球10fが係合してクリック力が発生する。
【0047】
また、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caの周方向の両側には、図5に示すように、径方向内方に向けて切り欠かれた切欠き部10ceが形成されている。これにより、鋼球収納部10caの径方向の変形量が増加して、操作ダイアル10の回転操作時におけるクリック力を低トルクで得ることができ、操作性及び耐久性の向上を図ることが出来る。
【0048】
なお、本実施形態では、複数の鋼球収納部10caの凹部および複数の保持部10cbの凹部のいずれかを選択してに鋼球10fを収納しているが、これに限定されない。
【0049】
例えば、図5に二点鎖線(鋼球10f)で示すように、周方向に互いに180°離間配置された2つ鋼球収納部10caの凹部にそれぞれ鋼球10fを収納するようにしてもよい。このようにすると、操作ダイアル10aの回転操作時にクリック力が分散されて、操作ダイアル10aの傾き、偏心等を抑制することができる。
【0050】
また、保持部10cbの凹部に鋼球10fを収納するようにしてもよい。
【0051】
この場合、保持部10cbの凹部に収納された鋼球10fと操作ダイアル10aの内周部に形成されたクリック溝10cとの間でクリック力を発生させる。保持部10cbは、押圧ボタン10bを保持することから、鋼球収納部10caに比べて径方向の変形量が小さい。
【0052】
したがって、保持部10cbの凹部に鋼球10fを収納する方が、鋼球収納部10caの凹部に鋼球10fを収納する場合に比べて大きなクリック力を発生させる。このため、用途に応じて機種毎に使い分けることが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caの弾性力を用いて操作ダイアル10aのクリック溝10abに鋼球10fを係合させて操作ダイアル10aの回転操作時にクリック力を発生させている。これにより、複合操作部材10のクリック機構に従来必要であったコイルスプリングや板バネが不要となり、コイルスプリングや板バネの収納スペースが削減されて、複合操作部材10の小径化ひいてはデジタルスチルカメラの小型化を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態では、小さなコイルスプリングや板バネの組付け作業が不要になるため、デジタルスチルカメラの組立性の向上を図ることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、図6及び図7を参照して、本発明の電子機器の第2の実施形態であるデジタルスチルカメラについて説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態に対して重複又は相当する部分の符号を流用しつつ相違点についてのみ説明する。
【0056】
図6(a)は本発明の電子機器の第2の実施形態であるデジタルスチルカメラにおける複合操作部材を斜め上から見た分解斜視図、図6(b)は複合操作部材を斜め下から見た分解斜視図である。図7(a)は複合操作部材をカメラ本体1に組み込んだ状態を示す平面図、図7(b)は図7(a)のA−A線断面図である。
【0057】
本実施形態では、フレキシブル配線基板12から突出するシャーシ11の位置決め軸11aが2本設けられている。これに対応して、位置決め軸11aに嵌合される操作ダイアル保持部材10cのフランジ10ce及び摺動プレート10dの位置決め部10daは、それぞれ周方向に互いに180°離間して2カ所設けられている。
【0058】
また、鋼球収納部10caは、操作ダイアル保持部材10cの表面側に一箇所設けられ、鋼球10fが収納される凹部は、操作ダイアル10aの底面側に開口している。鋼球収納部10caには、上記第1の実施形態と同様に、摺動プレート10dの外周部が当接する。
【0059】
また、操作ダイアル10aの底面には、鋼球収納部10caに収納された鋼球10fが係脱可能に係合する複数(本実施形態では、8つ)のクリック溝10abが周方向に略等間隔で形成されている。
【0060】
本実施形態では、操作ダイアル10aは、底面部で鋼球収納部10caに収納された鋼球10fをシャーシ11側の方向に押して鋼球収納部10caを同方向に弾性変形させた状態で操作ダイアル保持部材10cに組み込まれる。
【0061】
なお、本実施形態では、操作ダイアル10aの底面に設けられる環状マグネット10aaをクリック溝10abの内周側に配置しているが、環状マグネット10aaをクリック溝10abが形成される領域に配置してもよい。
【0062】
このようにすると、環状マグネット10aaに鋼球10fが磁気吸引されることにより、操作ダイアル10aの回転トルク及びクリック力を強く設定することができる。また、磁気吸引による鋼球10fの脱落防止の効果も得られる。
【0063】
本実施形態では、操作ダイアル10aを回転操作すると、操作ダイアル10aの底面部が鋼球収納部10caに収納された鋼球10fに対して摺動しながら回転する。
【0064】
このとき、操作ダイアル保持部材10cの鋼球収納部10caは、操作ダイアル10aの底面部により鋼球10fを介して回転軸方向Dのシャーシ11側に押されて弾性変形しているため、操作ダイアル10aの底面側への付勢力を発生させている。
【0065】
従って、操作ダイアル10aのクリック溝10abが鋼球10fの位置に達すると、鋼球収納部10caの操作ダイアル10aの底面側への付勢力によりクリック溝10abに鋼球10fが係合してクリック力が発生する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、鋼球収納部10caに鋼球10fの組み込まれる方向と操作ダイアル10aの組み込み方向(回転軸方向)とが一致している。
【0067】
したがって、上記第1の実施形態のように、操作ダイアル10aを操作ダイアル保持部材10cに組み込む際に、操作ダイアル10aの外周部で鋼球10fを介して鋼球収納部10caを径方向B外側に押して弾性変形させる作業を必要としない。このため、複合操作部材の組立性が向上する。
【0068】
その他の構成、及び作用効果は、上記第1の実施形態と略同一であるため、第1の実施形態に対して重複又は相当する部分については、各図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0069】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 カメラ本体
10 複合操作部材
10a 操作ダイアル
10b 押圧ボタン
10c 操作ダイアル保持部材
10ca 鋼球収納部
10d 摺動プレ−ト
10e 金属ドームスイッチ
10f 鋼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材を備える電子機器であって、
前記操作部材は、
複数の第1のクリック溝が周方向に形成される操作ダイアルと、
前記操作ダイアルを回転可能に保持する保持部材とを備え、
前記保持部材には、前記第1のクリック溝に係脱可能な係合部材を収納する収納部を形成し、
前記操作ダイアルを回転させると、前記収納部が弾性変形することで、前記係合部材を前記第1のクリック溝に係合する方向に付勢することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記保持部材の前記操作ダイアルを保持する面の裏面に配置される配線基板を備え、
前記保持部材の前記操作ダイアルを保持する面の裏面には、前記配線基板に実装されるスイッチを押す押圧部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記保持部材は弾性材料で形成され、
前記操作部材は、前記保持部材と前記操作ダイアルとの間に配置され、前記操作ダイアルが回転操作された際の摺動抵抗を小さくする摺動プレートを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記収納部は、前記保持部材の周方向に複数形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記操作ダイアルは二重円筒形状を有し、外周部に前記複数の第1のクリック溝が形成されるとともに、内周部に複数の第2のクリック溝が形成され、
前記操作部材は、前記操作ダイアルの前記内周部に配置される押圧ボタンを備え、
前記保持部材には、前記押圧ボタンを押圧可能に保持する保持部が形成され、
前記保持部には、前記第2のクリック溝に係脱可能な係合部材が収納され、
前記操作ダイアルを回転させると、前記保持部が弾性変形することで、前記係合部材を前記第2のクリック溝に係合する方向に付勢することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97970(P2013−97970A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238794(P2011−238794)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】