説明

電子素子のための材料

本発明は、式(I)〜(XII)の化合物、その化合物の電子素子での使用、本発明の化合物を含む有機電子素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の環架橋を有するアリールアルキニル基を含む化合物に関する。本発明は、さらに、本発明の化合物の、電子素子での、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用と本発明の化合物の製造方法に関する。本発明は、さらに、本発明の化合物を含む電子素子に関する。
【0002】
以下に開示された本発明の化合物のような有機半導体は、電子業界における一連の異なる用途のために開発されている。化合物は、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)で使用されている。有機半導体が機能性材料として使用されるこれら素子の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。
【0003】
電子素子での使用のための新規な材料に関する引き続くニーズ、特に、以下の観点での改善に関しての引き続くニーズが存在する:
1.電子素子における駆動電圧の減少のために、適切なHOMOまたはLUMO位置を有し、そのために、電子注入がより容易である化合物が必要とされる。
【0004】
2.長い寿命を有する高品質の用途、特に、青色発光素子のためにそれらを使用することを目的として、電子素子の寿命の改善の必要性が、未だ存在する。
【0005】
3.電子素子に使用される化合物の熱安定性に関して改善の必要性が、未だ存在する。高い熱安定性は、大量の昇華による材料の精製中と、熱蒸発による材料の適用中の両工程において必要である。高いガラス転移温度は、長い寿命を有する熱的に安定な電子素子での化合物の使用のためにも望まれる。
【0006】
4.有機エレクトロルミネッセンス素子の効率は、特に、高品質の用途に関して、さらに増加する必要がある。
【0007】
JP 2005174735は、有機エレクトロルミネッセンス素子での機能性材料として、一般構造式Ar-C≡C-Arで要約することのできる複数の化合物を記載している。しかしながら、代替材料が、特に、上記一以上の観点に関して改善された特性を有する材料に対する需要が引き続き存在する。
【0008】
蛍光OLEDのために、縮合芳香族化合物、特に、アントラセンまたはピレン誘導体が、たとえば、9,10-ビス(2-ナフチル)アントラセン(US 5935721)が、先行技術にしたがって、特別に、青色発光エレクトロルミネセンス素子のためのマトリックス材料として使用される。さらなるアントラセン誘導体は、WO 01/076323、WO 01/021729、WO 04/013073、WO 04/018588、WO 03/087023もしくはWO 04/01858に開示されている。アリール置換ピレンおよびクリセン系のマトリックス材料は、WO 04/016575に記載されている。高品質の用途のためには、入手可能なさらなるマトリックス材料、好ましくは、一以上の上記観点での改善をもたらすものを得ることが望まれる。
【0009】
青色発光化合物の場合に言及されてもよい先行技術は、アリールビニルアミンの使用である(たとえば、WO 04/013073、WO 04/016575、WO 04/018587)。これら化合物の場合に改善の必要性が、特に、熱的安定性と所望の深青色色座標の達成に関して存在する。
【0010】
先行技術にしたがう電子素子においては、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用される電子輸送化合物は、AlQである(アルミニウムトリスヒドロキシキノリナート)(US4539507)。
【0011】
ここでもまた、好ましくは、高い熱安定性、良好な合成入手性と低い吸湿性を有し、さらに、好ましくは、高い電荷担持移動性をもたらす電子輸送特性を有する代替材料への引き続く需要が存在する。
【0012】
要するに、電子素子における使用のための代替材料、特に、蛍光ドーパントと燐光ドーパントのためのみならず、ドーパントのための、特に、青色発光ドーパントのためのマトリックス材料、正孔輸送材料、および電子輸送材料であって、好ましくは、以下の一以上の有利な特性を有する代替材料に対する需要が存在する:高い熱安定性、効率における改善、代替化合物を含む素子の寿命における改善、素子の性能プロファイルの再現性、良好な合成入手性。
【0013】
本発明が基礎とする目的は、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用のための、この型の改善された化合物の提供に存する。
【0014】
一般式(I)の複数架橋アリールアルキレン誘導体が、有機エレクトロルミネッセンス素子における機能性材料として非常に高度に適切であることがいまや見出された。
【0015】
本発明は、以下の式(I)の化合物に関する。
【化1】

【0016】
式中:使用される記号と添え字は、以下が適用される:
Xは、出現毎に同一であるか異なり、C(R)、Si(R)、NR、C=O、C=S、C=NR、COO、CONR、O、S、SO、SO、P(=O)RまたはC(=CR)であり、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
vは、互いに独立して、0または1であるが、ただし、添え字vの合計値は、少なくとも2であり、すなわち、少なくとも二個の単位Xが存在し、さらに、ただし、少なくとも一つの芳香族環は、少なくとも二個の単位Xにより置換されて存在し;ここで、v=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに基Rがその位置に結合することを意味し、ここで、隣接する芳香族環が夫々の位置で架橋のために存在しないならば、v=0が基本的に適用され、
a、eは、互いに独立して、同一であるか異なり、0または1であり、
b、c、dは、互いに独立して、同一であるか異なり、0、1または2であり、
x、yは、互いに独立して、同一であるか異なり、0または1であり、ただし、x+y≧1であり、
a、b、c、dおよびeの合計:a+b+c+d+e≧2であり、
および、すべての自由結合位置は、随意にRにより置換されてよく、ここで、Rは以下のとおり、定義される。
【0017】
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、または1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有するアルケニル基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(前記基は、夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、RC=CR、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、COOもしくはCONRで置き代えられてよく)、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、フェニレン基および/またはナフチレン基および/または置換基Ar上の二個以上の置換基は、互いに結合し、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、1〜40個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、ここで、加えて、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、OR、SRもしくはN(Rで置き代えられてよく、ここで、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、RC=CR、COOもしくはCONRで置き代えられてよく;ここで、二個以上の隣接あるいは非隣接の基Rは、互いに結合し、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基(加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい)であり、;ここで、二個以上の隣接あるいは非隣接の基Rは、互いに連結され、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。
【0018】
基Rは、好ましくは、互いに結合することにより、フェニレンもしくはナフチレン上で縮合されたポリ環状芳香族構造を形成せず、特に、たとえば、アントラセンもしくはピレン等の二個以上の芳香族核を有するポリ環状芳香族構造を形成しない。
【0019】
本発明の意味でのアリール基は、6〜60個のC原子を含み;本発明の意味でのヘテロアリール基は、2〜60個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、ただし、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。ここで、アリール基もしくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリールもしくはヘテロリアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびインドール等の何れかを意味するものと解される。
【0020】
本発明の目的のために、上記所与の定義にしたがう基Arは、特に、好ましくは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェンおよびインドールから選ばれ、夫々は、一以上の基Rにより置換されてよい。
【0021】
本発明の意味でのアラルキル基は、アリール基により置換されたアルキル基であって、用語アリール基は、上記のとおりに理解されるべきであり、アルキル基は、1−40個のC原子を有する非芳香族有機基として定義され、さらに、個々のH原子もしくはCH基は、RおよびRの定義における上記基により置換されてよい。
【0022】
本発明の意味でのヘテロアラルキル基は、ヘテロアリール基により置換されたアルキル基であって、用語ヘテロアリール基は、上記のとおりに理解されるべきであり、アルキル基は、1−40個のC原子を有する非芳香族有機基として定義され、さらに、個々のH原子もしくはCH基は、RおよびRの定義における上記基により置換されてよい。
【0023】
本発明の意味での芳香族環構造は、6〜60個のC原子を環構造中に含む。本発明の意味での複素環式芳香族環構造は、5〜60個の芳香族環原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含む。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選ばれる。本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールもしくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリールもしくはヘテロアリール基は、たとえば、sp混成のC、Si、NあるいはO原子、sp混成のCあるいはN原子のような非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により連結されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、二個以上のアリール基が、たとえば、直鎖あるいは環状アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基もしくはシリル基により連結される構造であることから、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、本発明の意味での芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。さらに、二個以上のアリールもしくはヘテロアリール基が、一以上の単結合を介して互いに結合される構造も、本発明の意味での芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を意味するものと解される。
【0024】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、RおよびRの定義における上記基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、nオクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルあるいはオクチニルを意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。
【0025】
5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、芳香族もしくは複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-もしくはトランス-インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0026】
本発明の好ましい具体例では、基Xは、出現毎に同一であるか異なり、C(R)、NR、O、SもしくはC=Oから選ばれる。基Xは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、C(R)である。
【0027】
なおさらなる好ましい具体例では、添え字vの合計値は、2、3または4であり、すなわち、2、3または4個の架橋単位Xが、分子の中央構造単位に存在し、添え字vの合計値は、特に、好ましくは、2または3であり、非常に、特に、好ましくは、2である。
【0028】
本発明の好ましい具体例では、a+b+c+d+eは、2、3または4であり、特に、好ましくは、2または3である。
【0029】
個々の添え字b、cおよびdが、同一であるか異なり、0または1であることが、さらに、好ましい。
【0030】
本発明の好ましい具体例では、cが1であるならば、すなわち、ナフチル基が分子の中央構造単位に存在する。
【0031】
添え字xとyの合計値が1であるならば、本発明のさらに好ましい具体例である。
【0032】
さらなる好ましい具体例では、Rは、H、D、CN、または1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2〜20個のC原子を有するアルケニル基、または3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、前記基は、夫々1以上の同一であるか異なる基Rにより夫々置換されてよい。
【0033】
Rは、特に、好ましくは、H、D、CN、または1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2〜10個のC原子を有するアルケニル基、または3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または5〜20個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であって、前記基は、夫々1以上の同一であるか異なる基Rにより夫々置換されてよい。
【0034】
Rは、非常に、特に、好ましくは、H、D、CN、または1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基であって、前記基は、1以上の同一であるか異なる基Rにより随意に置換されてよい。
【0035】
一般式(I)の化合物の好ましい具体例は、式(II)の化合物である。
【化2】

【0036】
式中:記号と添え字は、式(I)と同じであり、上記で定義されるとおりであり、さらに、添え字g、h、kおよびlは、互いに独立して、0、1または2であり、添え字f、i、jおよびmは、互いに独立して、0または1であり、ここで、添え字f、g、hおよびiの合計値は、2以上であり、wは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;さらに、ここで、v=0またはw=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに基Rがその位置に結合することを意味し;ここで、隣接する芳香族環が各位置で架橋のために存在しないならば、v=0がまたはw=0が、基本的に適用される。
【0037】
さらに、本発明の式(II)の化合物中の添え字vの合計値は、少なくとも2である必要があり、ここで、少なくとも二個の単位Xにより置換される少なくとも一つの芳香族環が存在する。
【0038】
本発明の式(II)の化合物のために、個々の添え字f、g、h、i、j、k、lおよびmは、好ましくは、互いに独立して、0または1であり、j+k+l+m≧1であり、添え字wの合計値は少なくとも1である、すなわち、少なくとも一つの単位Xが、分子の右手側に存在する。
【0039】
添え字f、g、h、i、j、k、lおよびmに対しては、特に、好ましくは、以下が適用される:
4≧f+g+h+i≧2および/または
4≧j+k+l+m≧2
基Xのためには、上記で明らかに言及された具体例がさらに好ましい。
【0040】
添え字gとlの合計値は、1または2であることが好ましく、非常に、特に、好ましくは、2である。
【0041】
さらに、本発明の式(II)の化合物のために、式(I)の化合物のために好ましいとされる上記言及された同じ具体例が好ましい。
【0042】
一般式(I)の化合物の好ましい具体例は、さらに式(III)の化合物である。
【化3】

【0043】
式中:記号と添え字は、式(I)と同じであり、上記で定義されるとおりであり、さらに、添え字nとqは、互いに独立して、0または1であり、添え字oとpは、互いに独立して、0、1または2であり、Yは、出現毎に同一であるか異なり、CR、NまたはPである。加えて、添え字vの合計値は、2以上であり、ここで、少なくとも二個の単位Xにより置換される少なくとも一つの芳香族環が存在し;ここで、v=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに基Rがその位置に結合することを意味し、ここで、隣接する芳香族環が各位置で架橋のために存在しないならば、v=0が基本的に適用される。ただし、式(III)中の添え字n、o、pおよびqの合計値は、少なくとも2である。
【0044】
Yは、CRまたはNである。Yは、さらに、好ましくは、CRまたはNであり、2を超えない基Yは、互いに一緒に、Nを表す。
【0045】
添え字oは、値1または2を有し、特に、好ましくは、値1を有することが同様に好ましい。
【0046】
Arは、好ましくは、夫々1以上の基Rにより置換されてよい、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ピラジニル、ピリダジル、ピリミジルもしくはトリアジニル基である。
【0047】
さらに、本発明の式(III)の化合物のために、式(I)または式(II)の化合物のために好ましいとされる上記言及された同じ具体例が好ましい。
【0048】
さらに、本発明の化合物の好ましい具体例は、式(IV)〜(XII)の構造の化合物である。
【化4】

【0049】
式中:ArおよびRは、上記で定義されるとおりである。
【0050】
上記言及されるRのための好ましい具体例は、式(IV)〜(XII)のうちの一つの化合物に適用される。
【0051】
本発明の目的のために、上記定義にしたがう式(IV)〜(XII)中の化合物中の基Arは、特に、好ましくは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、チオフェン、ベンゾチオフェンおよびインドールから選ばれ、夫々は、一以上の基Rにより置換されてよい。
【0052】
本発明の化合物中に、一以上の重合可能な官能基または一以上の電子吸引性もしくは電子供与基が存在することが、一般的には好ましい。
【0053】
本発明の化合物の例は、以下に示される:
【化5−1】

【化5−2】

【化5−3】

【化5−4】

【化5−5】

【0054】
本発明による式(I)〜(XII)の化合物は、当業者に一般的に知られる合成工程により調製することができる。したがって、種々の骨格が、たとえば、遷移金属触媒クロスカップリングと引き続く対応する三級アルコールの酸触媒環化の順序によって調製することができる。以下のスキーム1および2で示される合成経路が例として役立つことを意図している。
【0055】
合成で使用される出発化合物は、たとえば、ジメチルブロモイソフタレート(Organic Letters 2006, 8(25), 5841-5844)または4-メチルナフタレンボロン酸(WO 1999/10339)である。
【0056】
スキーム1
【化6】

【0057】
スキーム2
【化7】

【0058】
本発明によるアルキニル誘導体は、好ましくは、スキーム3にしたがって、アリールハライドの、対応するアルキン誘導体へのソノガシラカップリングにより、調製される。ここで、化合物Ar’-Brは、スキーム1および2で示される中間体に対応する。
【0059】
スキーム3
【化8】

【0060】
本発明は、以下の工程により特徴付けられる、本発明による一般式(I)〜(XII)の化合物の調製方法にも関する。
【0061】
a)得られた親構造の官能化、たとえば、遷移金属触媒クロスカップリングと引き続く架橋導入のためのフリーデル-クラフツ反応とハロゲン化による複数の芳香族環の構築、および
b)アルキン誘導体とのカップリング反応、好ましくは、ソノガシラ反応、および
c)随意に、骨格を構築するための、またはさらなる官能化のためのさらなる工程。
【0062】
前記工程は、重合またはオリゴマー化反応により続かれてもよい。
【0063】
本発明による化合物の調製方法は、アリール基とアルキニル基との間の少なくとも一つのカップリング反応を含む、好ましくは、ソノガシラ反応を含む合成順序が、特に、使用されることを特徴とする。
【0064】
重合可能な官能基が上記定義の化合物中に存在するならば、これらは、化合物の重合のために使用することができる。こうして、ダイマー、オリゴマー、ポリマーあるいはデンドリマーを調製することができる。このために、特に、好ましいものは、臭素、沃素、ボロン酸もしくはボロン酸エステルのような反応性脱離基により置換される化合物である。これらは、対応する共役、部分共役もしくは非共役ポリマー、オリゴマーあるいはデンドリマーの核として使用することができる。ここで、ポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基を介して生じる。
【0065】
本発明の目的のために、用語オリゴマーは3〜9個の繰り返し単位を含む化合物に適用される。本発明の意味でのポリマーは、10個以上の繰り返し単位を含む化合物を意味するものと解される。
【0066】
対応して、本発明は、さらに、上記定義されるとおりの一以上の式(I)〜(XII)の一以上の化合物を含む、ダイマー、オリゴマー、ポリマーあるいはデンドリマーに関し、式(I)〜(XII)の化合物中の基Rへの結合は、隣接する繰り返し単位への結合によって、置き代えられてもよい。化合物の結合に応じて、化合物は、オリゴマーあるいはポリマーの主鎖またはオリゴマー、ポリマーあるいはデンドリマーの側鎖またはポリマー、オリゴマーあるいはデンドリマーの末端基の一部である。オリゴマー、ポリマーあるいはデンドリマーは、共役、部分共役あるいは非共役であり得る。オリゴマーあるいはポリマーは、線状あるいは分岐状あるいは樹状であり得る。線状で連結された構造においては、式(I)〜(XII)の単位は、互いに直接的に連結し得るか、または、2価の基を介して、たとえば、置換あるいは非置換アルキレン基を介してか、ヘテロ原子を介してか、もしくは、2価の芳香族基あるいは複素環式芳香族基を介して、互いに直接連結し得る。分岐状構造においては、たとえば、3個以上の式(I)〜(XII)の単位は、たとえば、三価あるいは多価基、たとえば、三価あるいは多価芳香族基もしくは複素環式芳香族基を介して連結し、分岐状あるいは樹状オリゴマーもしくはポリマーを生じてもよい。
【0067】
オリゴマーおよびポリマー中の式(I)〜(XII)の繰り返し単位に対して、上記記載のとおりの同じ好ましい具体例が適用される。
【0068】
オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの調製のために、一般式(I)〜(XII)の官能化化合物は、さらなるモノマーとホモ重合もしくは共重合される。コポリマーの調製の場合、式(I)〜(XII)の化合物は、0.1〜50モル%の範囲で存在することが好ましい。適切で好ましいコモノマーは、(たとえば、EP 842208もしくはWO 00/22026にしたがう)フルオレン、(たとえば、EP 707020、EP 894107もしくはWO 06/061181にしたがう)スピロビフルオレン、(たとえば、WO 92/18552にしたがう)パラ-フェニレン、(たとえば、WO 04/070772もしくはWO 04/113468にしたがう)カルバゾール、(たとえば、EP 1028136にしたがう)チオフェン、(たとえば、WO 05/014689にしたがう)ジヒドロフェナントレン、(たとえば、WO 04/041901もしくはWO 04/113412にしたがう)シス-およびトランス-インデノフルオレン、(たとえば、WO 05/040302にしたがう)ケトン、(たとえば、WO 05/104264もしくはDE 102005037734にしたがう)フェナントレンまたは複数のこれら単位から選択される。これらのポリマーは、通常、さらなる単位を、たとえば、(たとえば、DE 102005060473にしたがう)ビニルトリアリールアミンまたは(たとえば、WO 06/003000にしたがう)燐光金属錯体および/または電荷輸送単位、特に、トリアリールアミン系のもののような、たとえば、発光(蛍光あるいは燐光)単位をも含む。
【0069】
一または二個のハロゲン官能基、好ましくは、臭素は、本発明の化合物中に選択的に導入することができることから、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー等を特別に構築することもできる。したがって、二個の一官能化化合物は、スズキカップリングあるいはヤマモトカップリングによりカップルし、対応するダイマーを得ることができる。対応するテトラマーは、ハロゲンと一官能化化合物へのさらなるカップリングにより選択的に入手できる。さらに、二個の一官能化化合物が二官能化化合物とカップルし、対応するトリマーを得ることができる。ここで、カップリング反応は、好ましくは、スズキカップリングである。対応するペンタマーは、ハロゲン化、好ましくは、臭素化と一官能化化合物へのさらなるカップリングにより選択的に入手できる。たとえば、さらに、それらをハロゲン化し、ハートウイッグ-ブーフバルトカップリングでそれらをジアリールアミンと反応させ、対応する芳香族アミンを得ることにより、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー等を官能化することも同様に可能である。
【0070】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式(I)〜(XII)の化合物および/または式(I)〜(XII)の化合物の少なくとも一つを含む少なくとも一つのオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーと少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む調合物に関する。
【0071】
本発明は、さらに、電子素子における本発明による化合物の使用または本発明による化合物を含むダイマー、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの使用に関する。有機電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)または有機レーザーダイオード(O-laser)である。有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)における使用が、特に、好ましい。
【0072】
本発明による化合物は、好ましくは、電子素子内で、ドーパントとして、マトリックス材料として、正孔輸送化合物としておよび/または電子輸送化合物として使用される。
【0073】
正孔注入もしくは正孔輸送材料としての使用に関して、本発明による化合物は、好ましくは、一以上の電子供与基、たとえば、ジアリールアミノ基を含む。電子輸送材料としての使用に関して、本発明による化合物は、好ましくは、一以上の電子吸引基、たとえば、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ルもしくはトリアジン誘導体を含む。蛍光もしくは燐光ドーパントのためのマトリックス材料としての使用のために、本発明による化合物は、好ましくは、非置換形態もしくは一芳香族あるいは脂肪族置換形態が適切である。ドーパントとしての使用のために、少なくとも一つの置換基Rは、ジアリールアミノ基N(Ar)またはCR=CRAr基であることが好ましい。
【0074】
本発明は、さらに、本発明による化合物の、好ましくは、対応する層での電荷輸送材料および/または電荷注入材料としての使用に関する。一以上の本発明による化合物を含む電子素子の層は、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層の何れかであり得る。電荷障壁材料、たとえば、正孔障壁材料もしくは電子障壁材料としてのおよび励起子障壁材料としての使用も可能である。
【0075】
本発明は、さらに、一以上の上記定義のとおりの式(I)〜(XII)の化合物を含む電子素子もしくは有機エレクトロルミネッセンス素子(有機発光ダイオードあるいはポリマー発光ダイオードOLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光検査素子、有機光受容素子、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)または有機レーザーダイオード(O-laser)に関するが、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子(=有機発光ダイオード、OLED)に関する。
【0076】
本発明による有機エレクトロルミネセンス素子は陰極、陽極および少なくともひとつの発光層を含む。これらの層に加えて、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、励起子障壁層および/または電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機あるいは無機p-n接合を含んでもよい。たとえば、励起子障壁機能を有する一以上の中間層が、同様に、二個の発光層の間に導入されてもよい。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないことが指摘されねばならない。これらの層は、上記定義のとおりの一般式(I)〜(XII)の化合物を含んでもよい。
【0077】
本発明の好ましい具体例では、式(I)〜(XII)の化合物は、発光層で発光化合物として使用される。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層あるいは、複数の発光層を含んでもよく、ここで、少なくとも一つの発光層は、好ましくは、少なくとも一つの上記定義のとおりの式(I)〜(XII)の化合物を含む。しかしながら、本発明の化合物は、発光層以外の層、たとえば、電子輸送層もしくは正孔輸送層にもっぱら存在してもよい。
【0078】
複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じる。蛍光もしくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に好ましいものは、3層構造であり、ここで、3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。
【0079】
式(I)〜(XII)の化合物が、発光層中で発光化合物として使用されるならば、化合物は、好ましくは、一以上のマトリックス材料(=ホスト材料)と組み合わせて使用される。マトリックス(=ホスト)とドーパント(=エミッター)とを含む系中のマトリックス材料は、より高い割合で系中に存在する成分を意味するものと解される。1つのマトリックスと複数のドーパントを含む系では、マトリックス材料は、混合物中で最も高い割合を有する成分を意味するものと解される。
【0080】
これらの場合に、式(I)〜(XII)の化合物とマトリックス材料を含む混合物は、ドーパントとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、1〜50体積%、好ましくは、2〜50体積%、特に好ましくは3〜40体積%、特に、5〜15体積%の式(I)〜(XII)の化合物を含む。対応して、混合物は、ドーパントとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、99〜50体積%、好ましくは、98〜50体積%、特に好ましくは97〜60体積%、特に、95〜85体積%のマトリックス材料を含む。
【0081】
適切なマトリックス材料(ホスト材料)は、種々なクラスの物質からの材料である。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461に記載されるとおりの2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 04/081017にしたがう)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 04/058911にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 05/084081およびWO 05/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 06/048268にしたがうに)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 06/177052にしたがう)、ベンゾアントラセン(たとえば、DE 102007024850にしたがう)またはベンゾフェナントレン誘導体(たとえば、未公開出願DE 102009005746.3にしたがう)のクラスから選択される。特に、好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選択される。非常に、特に、好ましいマトリックス材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の目的のために、オリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールあるいはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解されることを意図している。非常に、特に、好ましいものは、少なくとも1個のアリール基が縮合アリール基である9,10-ジアリールアントラセン誘導体、または少なくとも1個のアリール基が縮合アリール基である2.9,10-トリアリールアントラセン誘導体である。
【0082】
好ましくは、蛍光ドーパントのための適切なマトリックス材料は、以下の表に示される材料およびWO 04/018587、 WO 08/006449、 US 5935721、 US 2005/0181232、 JP 2000/273056、 EP 681019、 US 2004/0247937 および US 2005/0211958に開示されたとおりのこれら材料の誘導体である。
【化9−1】

【化9−2】

【化9−3】

【0083】
さらに好ましい用途は、蛍光もしくは燐光ドーパント、特に、蛍光ドーパントのためのマトリックス材料としての化合物の使用である。
【0084】
発光層中の式(I)〜(XII)のマトリックス材料の割合は、50〜99.9体積%、好ましくは、80.0〜99.5体積%、特に、好ましくは、90.0〜99.9体積%である。対応して、ドーパントの割合は、0.1〜50体積%、好ましくは、0.5〜20.0体積%、特に、好ましくは1.0〜10.0体積%である。
【0085】
好ましい蛍光ドーパントは、本発明の化合物に加えて、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンのクラスから選択される。モノスチリルアミンは、1個のスチリル基と少なくとも1個のアミン、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。ジスチリルアミンは、2個のスチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。トリスチリルアミンは、3個のスチリル基と少なくとも1個の、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。テトラスチリルアミンは、4個のスチリル基と少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。本発明の目的のために、アリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含み、これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。スチリル基は、特に、好ましくは、スチルベンであり、二重結合上または芳香族構造上でさらに置換されていてもよい。この型のドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、たとえば、WO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、WO 07/065549およびWO 07/115610に記載されるさらなるドーパントである。好ましいドーパントは、さらに、たとえば、WO 06/122630にしたがう化合物である。好ましいドーパントは、さらに、たとえば、WO 08/006449あるいはWO 07/140847にしたがうジアリールアミン誘導体もしくはモノベンゾインデノフルオレンあるいはジベンゾインデノフルオレンのビス(ジアリールアミン)誘導体である。なおさらに好ましいドーパントは、DE 102008035413に記載された化合物である。
【0086】
本発明のさらなる具体例では、式(I)〜(XII)の化合物は、燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用される。この場合、一以上の置換基Rおよび/またはブリッジXは、好ましくは、少なくとも一つの基C=O、P(=O)、SOおよび/またはArを含み、これらは、好ましくは、トリアジンである。これらの基は、特に、好ましくは、本発明の中央単位に直接結合しており、さらに、特に、好ましくは、一個の、ホスフィンオキシドの場合は二個のさらなる芳香族置換基を含む。
【0087】
燐光素子において、ドーパントは、好ましくは、20より大で、好ましくは、38より大で、84より小な、特に好ましくは、56より大で、80より小な原子番号を有する少なくとも一つの元素を含む金属錯体のクラスから選ばれる。好ましいものは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウム、特に、イリジウム、白金もしくは銅を含む金属錯体の使用である。先行技術にしたがって使用される燐光材料が、この目的のために一般的には適切である。
【0088】
燐光ドーパントは、特に、好ましくは、式(P1)〜(P4)の化合物から選ばれる。
【化10】

【0089】
ここで、
DCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する、少なくとも一つのドナー原子、好ましくは、窒素、カルベンの形態の炭素もしくは燐を含む環状基であり、順に一以上の置換基Rを有してよく、基DCyとCCyは、共有結合を介して互いに結合し、
CCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する炭素原子を含む環状基であり、順に一以上の置換基Rを有してよく
Aは、出現毎に同一であるか異なり、モノアニオン性二座キレートリガンド、好ましくは、ジケトンリガンドであり、
Rは、上記定義のとおりである。
【0090】
燐光ドーパントのさらなる例は、出願WO 00/70655、WO 01/41512、 WO 02/02714、WO 02/15645、 EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO 05/033244 、WO 05/019373およびUS2005/0258742により明らかにされる。一般的に、燐光OLEDのために先行技術で使用され、有機エレクトロルミネッセンス分野で当業者により知られるあらゆる燐光錯体が適切である。当業者は進歩性を必要とすることなく、有機エレクトロルミネッセンス素子において本発明の化合物と組み合わせて、さらなる燐光錯体を使用することができる。
【0091】
式(I)〜(XII)の化合物の可能な更なる使用は、正孔輸送または正孔注入層における正孔輸送または正孔注入材料としての使用である。この使用は、一以上のブリッジXが、SまたはNRを表し、および/または一以上の基Rが、N(Ar)を表すならば、特に、好ましい。この型の化合物は、さらに、電子障壁層に使用されることもできる。
【0092】
式(I)〜(XII)の化合物の可能な更なる使用は、電子輸送層における電子輸送材料としての使用である。この目的のために適切なものは、特に、少なくとも一つの電子欠損複素環式芳香族基により置換された式(I)〜(XII)の化合物の化合物である。電子欠損複素環式芳香族基は、好ましくは、少なくとも一つの窒素原子を有する六員環複素環式芳香族環と対応する縮合構造、たとえば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリンもしくはフェナントロリン、または少なくとも一つの窒素原子および一つのさらなるN、OあるいはSから選ばれるヘテロ原子を有する五員環複素環式芳香族環と対応する縮合構造、たとえば、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾールもしくはベンズイミダゾールである。式(I)〜(XII)の化合物が電子輸送材料として使用されるならば、ブリッジXは、好ましくは、C(R)である。少なくとも一つのブリッジX、好ましくは、両ブリッジXが、C=O、P(=O)R、SOもしくはSOを表すならば、化合物は、電子輸送材料としてさらに好ましくは、適切である。この型の本発明による化合物は、好ましくは、正孔障壁材料中で使用されることもできる。
【0093】
本発明の電子素子中で夫々の機能のため、あるいは夫々の機能層中で、好ましくは、使用される材料が、以下に示される。さらに、本発明の化合物のために上記で示される好ましい使用は、以下に適用する。
【0094】
本発明の化合物に加えて、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層あるいは電子輸送層で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示される化合物または先行技術にしたがって、これらの層中で使用される他の材料である。
【0095】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層あるいは正孔注入層で使用することができる好ましい正孔輸送材料の例は、インデノフルオレンアミンおよび誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO 06/100896にしたがう)、EP 1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806にしたがう)、縮合芳香族環構造を含むアミン誘導体(たとえば、US 5,061,569にしたがう)、WO 95/09147に開示されたアミン誘導体、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 08/006449にしたがう)またはジベンゾインデノフルオレンジアミンン(たとえば、WO 07/140847にしたがう)である。さらに適切である正孔輸送および正孔注入材料は、JP 2001/226331、 EP 676461、 EP 650955、 WO 01/049806、 US 4780536、 WO 98/30071、 EP 891121、 EP 1661888、 JP 2006/253445、 EP 650955、 WO 06/073054 および US 5061569に記載されたとおりの化合物の誘導体である。
【0096】
適切な正孔輸送もしくは正孔注入材料は、さらに、たとえば、以下の表に挙げられる材料である。
【化11】

【0097】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子で使用することのできる電子輸送あるいは電子注入材料は、たとえば、以下の表で示される材料である。さらに適切である電子輸送あるいは電子注入材料は、AlQ、BAlQ、LiQおよびLiFである。
【化12−1】

【化12−2】

【0098】
エレクトロルミネッセンス素子の陰極は、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造を含む。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含む合金、たとえば、マグネシウムと銀を含む合金が、さらに、適切である。多層構造の場合、たとえば、AgあるいはAlのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Ca/Ag、Mg/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。高い誘電定数を有する物質の薄い中間層を金属陰極と有機半導体との間に挿入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)。リチウムキノリナート(LiQ)が、さらに、この目的のために使用することができる。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0099】
陽極は、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。陽極は、好ましくは、真空に対して4.5eV超の高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(有機太陽電池)もしくは光のアウトカップリング(OLED/O−LASER)の何れかを可能とするために、透明であるか、部分的に透明でなければならない。ここで、好ましい陽極材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。
【0100】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0101】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。
【0102】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要とされる。これらの方法は、特に、本発明の化合物を含むオリゴマーおよびポリマーの有機エレクトロルミネッセンス素子での使用のためにも、適切である。
【0103】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層を溶液から適用し、一以上の他の層をOVPDもしくはキャリアガス昇華により気相堆積により適用することによるハイブリッドプロセスにより製造されることを特徴とする。
【0104】
上記プロセスは、当業者に一般的に知られており、上記のとおりの式(I)〜(XII)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、問題なく適用することができる。
【0105】
本発明の化合物の有利な面は、芳香族環とアルキレン基との間のΠ電子の共役に基づいて、フロンティア軌道電子密度の均一な分布が全分子上に一般的に存在することにある。これが、非常に良好な正孔および電子の移動性をもたらす。しかしながら、これに関連して限定がなされてはならない。
【0106】
さらに、良好なルミネッセンス量子効率とそれゆえの良好なエネルギー効率が、本発明の化合物により好ましく達成することができる。
【0107】
本発明の化合物のさらなる有利な面は、化合物中に存在する環ブリッジが分子の回転自由度数を減少することである。これは、好ましくは、低い値のストークスシフトを引き起こし、高度に望ましい特性を生じる。
【0108】
本発明の化合物は、さらに、好ましくは、高い熱安定性と高いガラス転移温度を有する。これは、昇華法による精製の場合に、化合物の達成可能な純度に有利な効果を有する。特に、高温での用途に対して、高いガラス転移温度は、電子素子の寿命の拡張をもたらす。
【0109】
最後に、本発明の化合物のすべての特徴と上記好ましいと明示的に言及されないすべての特徴と、それらの電子素子での使用と電子素子自体は、所望により互いに組み合わせることができることに留意すべきである。すべての得られる組み合わせも、同様に、本発明の一部である。
【0110】
以下の例は、本発明をより詳細に説明することを意図しているが、それにより限定するものではない。特に、関連する例が基礎とする定義された化合物について記載された特徴、性質と優位性は、詳細には言及されない化合物にも適用することができ、他に断らない限り、クレームの保護範囲内のものである。
【0111】
使用例
例1:化合物(1)の合成
二架橋臭素化物Aの合成のための詳細な手順は、未公開出願DE 102008054141.9から得ることができる。
【0112】
トリメチルシリルアルキレンB
【化13】

【0113】
10.0g(26.5ミリモル)の臭素化物Aが、1000mlのトリエチルアミン中に溶解され、11.3ml(79.5ミリモル)のエチニルトリメチルシランが、添加される。混合物は、保護ガスを通すことにより脱気され、1.5g(2.12ミリモル)のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)と0.5g(2.65ミリモル)のCuIが添加され、混合物は、16時間還流される。冷却した反応混合物は、引き続き氷水に注意深く注がれ、ジクロロメタンで抽出され、乾燥され、蒸発され、シリカゲル上のカラムクロマトグラフにより精製され、7.9g(71%)の生成物を、黄色油状物として得る。
【0114】
アルキレンC
【化14】

【0115】
7.9g(18.9ミリモル)のBが、200mlの水と200mlのMeOHの脱気混合物中に溶解され、6.4g(68.4ミリモル)のKF2HOが、室温(RT)で5分割で添加される。反応混合物は、RTで2時間、攪拌される。反応溶液は水で希釈され、ジクロロメタンで抽出され、有機相は、MgSOで乾燥され、蒸発され、ヘプタン/EA10:1とシリカゲルで精製され、3.4g(10.04ミリモル)の生成物を、茶色油状物として得る。
【0116】
化合物(1)
【化15】

【0117】
12.0g(37.23ミリモル)のCが、81mlの脱気されたトリエチルアミン中に溶解され、4.7ml(44.7ミリモル)のブロモベンゼンが添加され、混合物は、引き続き、脱気される。1.02gのジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(1.45ミリモル)と0.55gのCuIが添加され、反応溶液は、再度、短時間脱気される。混合物は、引き続き、2時間還流される。反応が終わると、反応溶液は、水に添加され、ジクロロメタンで抽出され、有機相は、MgSOで乾燥される。粗生成物はDMSOから再結晶化され、引き続き昇華され、4.2g(11.1ミリモル)の生成物を、白色固形物として得る。
【0118】
例2:化合物(2)の合成
二架橋臭素化物Dの合成のための詳細な手順は、公開出願WO 2008/006449から得ることができる。
【0119】
化合物(2)
【化16】

【0120】
15.3g(34.8ミリモル)の臭素化物Dが、76mlのトリエチルアミン中に溶解され、全混合物が脱気される。4.97ml(45.2ミリモル)のフェニルアセチレンと、0.95g(1.36ミリモル)のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)と0.90g(4.73ミリモル)のCuIが、引き続き添加され、反応混合物は、再び、脱気される。混合物は5時間還流され、反応が終わると、冷却された反応溶液は、水に添加され、ジクロロメタンで抽出され、MgSOで乾燥され、蒸発される。生成物はDMSOから再結晶化され、引き続き昇華され、9.8g(21.2ミリモル)の生成物を、黄色固形物として得る。
【0121】
例3:化合物(3)の合成
二架橋臭素化物Aの合成のための詳細な手順は、未公開出願DE 102008054141.9から得ることができる。
【化17】

【0122】
10.0g(26.5ミリモル)の臭素化物Aが、300mlのトルエンと150mlの脱気ジオキサン中に溶解され、132ml(2M、265ミリモル)のNaCO溶液が、3.25g(31.8ミリモル)のボロン酸Eと1.53g(1.32ミリモル)のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムが添加され、反応混合物は、引き続き、16時間還流される。冷却した反応混合物は、引き続き水で洗浄され、有機相は乾燥され、蒸発され、シリカゲル上のカラムクロマトグラフにより精製され、6.8g(55%)の生成物を、黄色油状物として得る。
【0123】
例4:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術によるOLEDが、WO 04/058911に記載されるとおりの一般的プロセスにより製造されるが、これは、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用される材料)に対して適合される。
【0124】
種々のOLEDの結果が、以下の素子例a〜eに示される(表1参照。)。150nmの厚さを有する構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された硝子板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(水からスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))で被覆される。これらの被覆された硝子板は、OLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、主として、次の層配列から成る:基板/随意に、5nmの正孔注入層(HIL1)/140nmの正孔輸送層(HTL)/20nmの電子障壁層(EBL)/30nmの発光層(EML)/随意に、10nmの正孔障壁層(HBL)/20nmの電子輸送層(ETL)および最後に陰極。陰極は、厚さ100nmのAl層により形成され、使用される電子輸送材料に応じて、1nm厚のLiFあるいはLiQを含む電子注入層(EIL)が、陰極と電子輸送層との間に挿入される。OLEDの製造のために使用された材料は、表2に示される。
【0125】
すべての材料は、真空室での熱気相堆積により適用される。ここで発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、マトリックスあるいはマトリックス材料とある体積割合で共蒸発により前混合されるエミッター(ドーパント)とから成る。ここで、H1:(1)(95%:5%)等の表現は、材料H1が95体積%の割合で層中に存在し、化合物(1)が5体積%の割合で層中に存在することを意味する。
【0126】
OLEDは、標準方法により特性決定される;この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)と外部量子効率(EQE、パーセントで測定)および寿命が測定される。寿命は、輝度がある初期輝度から半分に低下した時間として定義される。この値は、当業者に知られた変換式により他の初期輝度の値に変換することができる。ここで、1000cd/mに対する寿命が、通常の値である。
【0127】
表1中のa〜cの例は、発光層中のドーパントとして式(I)の化合物を含む本発明によるエレクトロルミネッセンス素子である。e〜fの例は、先行技術の化合物CD1とCD2が使用される比較例である。
【0128】
例は、改善された寿命と改善されたエネルギー効率等のエレクトロルミネッセンス素子のための顕著により良好な性能データが、本発明による化合物により得られることを示す(表1参照。)。
【0129】
表1
【表1】

【0130】
表2:使用された材料の構造式
【化18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】

(式中:使用される記号と添え字は、以下が適用される:
Xは、出現毎に同一であるか異なり、C(R)、Si(R)、NR、C=O、C=S、C=NR、COO、CONR、O、S、SO、SO、P(=O)RまたはC(=CR)であり、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
vは、互いに独立して、0または1であるが、ただし、添え字vの合計値は、少なくとも2であり、すなわち、少なくとも二個の単位Xが存在し、さらに、ただし、少なくとも一つの芳香族環は、少なくとも二個の単位Xにより置換されて存在し;ここで、v=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに基Rがその位置に結合することを意味し、ここで、隣接する芳香族環が夫々の位置で架橋のために存在しないならば、v=0が基本的に適用され、
a、eは、互いに独立して、同一であるか異なり、0または1であり、
b、c、dは、互いに独立して、同一であるか異なり、0、1または2であり、
x、yは、互いに独立して、同一であるか異なり、0または1であり、ただし、x+y≧1であり;
a、b、c、dおよびeの合計:a+b+c+d+e≧2であり、
および、すべての自由結合位置は、随意にRにより置換されてよく、ここで、Rは以下のとおり、定義される、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、または1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有するアルケニル基、または3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(前記基は、夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、RC=CR、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S、COOもしくはCONRで置き代えられてよく)、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、フェニレン基および/またはナフチレン基および/または置換基Ar上の二個以上の置換基は、互いに結合し、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、1〜40個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、ここで、加えて、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、OR、SRもしくはN(Rで置き代えられてよく、ここで、1以上の隣接あるいは非隣接のCH基は、RC=CR、COOもしくはCONRで置き代えられてよく;ここで、二個以上の隣接あるいは非隣接の基Rは、互いに結合し、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基(加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい)であり、;ここで、二個以上の隣接あるいは非隣接の基Rは、互いに連結され、随意に、モノあるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
添え字a、b、c、d、eの合計値は、2、3または4であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(II)の請求項1記載の化合物。
【化2】

(式中:記号と添え字は、式(I)と同じであり、請求項1で定義されるとおりであり、さらに、添え字g、h、kおよびlは、互いに独立して、0、1または2であり、添え字f、i、jおよびmは、互いに独立して、0または1であり、ここで、添え字f、g、hおよびiの合計値は、2以上であり、wは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、添え字vの合計値は、少なくとも2であり、ここで、少なくとも二個の単位Xにより置換される少なくとも一つの芳香族環が存在し;さらに、v=0またはw=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに置換基Rがその位置に結合することを意味し;さらに、隣接する芳香族環が各位置で架橋のために存在しないならば、v=0またはw=0が適用される。)
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項で示される定義が、記号と添え字に適用され、加えて、以下の条件が存在する、請求項3記載の化合物。
f、g、h、i、j、k、lおよびmは、互いに独立して、0または1であり、j+k+l+m≧1であり、添え字wの合計値は、少なくとも1である。
【請求項5】
式(III)の請求項1記載の化合物。
【化3】

(式中:記号と添え字は、式(I)と同じであり、請求項1で定義されるとおりであり、さらに、添え字nとqは、互いに独立して、0または1であり、添え字oとpは、互いに独立して、0、1または2であり、添え字n、o、pおよびqの合計は、少なくとも2であり、Yは、出現毎に同一であるか異なり、CR、NまたはPであり、加えて、添え字vの合計値は、2以上であり、ここで、少なくとも二個の単位Xにより置換される少なくとも一つの芳香族環が存在し;ここで、v=0は、対応する基Xが存在せずに、その代わりに置換基Rがその位置に結合することを意味し、ここで、隣接する芳香族環が各位置で架橋のために存在しないならば、v=0が基本的に適用される。)
【請求項6】
添え字oが、値1または2を有することを特徴とする、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Arが、夫々1以上の基Rにより置換されてよい、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ピラジニル、ピリダジル、ピリミジルもしくはトリアジニル基であることを特徴とする、請求項5または6記載の化合物。
【請求項8】
式(IV)〜(XII)の請求項1乃至7何れか1項記載の化合物。
【化4】

(式中:ArおよびRは、請求項1で定義されるとおりである。)
【請求項9】
Rは、H、D、CN、または1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2〜20個のC原子を有するアルケニル基、または3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、前記基は、夫々、1以上の同一であるか異なる基Rにより置換されてよいことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
架橋基Xは、C(R)であることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の化合物。
【請求項11】
アリール基とアルキニル基との間の少なくとも一つのカップリング反応を含む、好ましくは、ソノガシラ反応を含む合成順序が使用されることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の化合物の調製方法。
【請求項12】
請求項1〜10何れか1項記載の一以上の同一か異なる化合物を含み、ここで、化合物中の基Rへの結合が、隣接する繰り返し単位への結合により置き代えられることを特徴とする、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマー。
【請求項13】
請求項1〜10何れか1項記載の少なくとも一つの化合物および/または請求項12記載のオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーと少なくとも一つの溶媒を含む調合物。
【請求項14】
電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子における請求項1〜10何れか1項記載の化合物または請求項12記載のオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの使用。
【請求項15】
請求項1〜10何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項12記載の少なくとも一つのオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを含む有機電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)もしく有機光受容素子より成る群から選ばれる、有機電子素子。
【請求項16】
請求項1〜10何れか1項記載の化合物が、蛍光ドーパントもしくは燐光化合物のためのマトリックス材料として、発光材料(ドーパント)として、正孔輸送材料として、正孔注入材料としてまたは電子輸送材料として使用されることを特徴とする、請求項15記載の、有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公表番号】特表2012−532900(P2012−532900A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519901(P2012−519901)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003660
【国際公開番号】WO2011/006568
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】